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日本で働くアスレティックトレーナーの勤務実態: 日本教育 vs 米国教育に見る違い

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やっとこの論文1についてまとめることができそうです。オープンアクセスですので日米のアスレティックトレーナーの違いや比較に興味のある方はぜひ本文をご覧になってください。メッセージ性が非常に高い、社会的価値のある論文になっております。

さて、では読んでみましょう。論文冒頭にも書かれている通り、日本のアスレティックトレーナー(AT)というのはドメスティック、インターナショナル、様々な文化が混在しており、世界でも稀にみる独特な環境の相違と調和を生み出していると思います。ここでは論文に習って便宜上、日本スポーツ協会認定によるアスレティックトレーナーの資格を持つ方をJSPO-AT、米国のBoard of Certification公認のアスレティックトレーナーの資格を有する人たちをBOC-ATと表記して話を進めていきたいと思います(歴史の流れで認定団体が異なる名称だったこともそれぞれありますが、現状呼称推しということで)。

JSPO-ATのプログラム開始が1994年、JSPO-AT有資格者は現在3,825人(2018年10月時点)いるとされる一方で、日本人初のBOC-ATが誕生したのは1977年、現在日本に帰国しているBOC-ATは200人以上いるんだそうです。BOC-ATのほうが古いけど、人数は1/20くらいに少ないんですね。ATという職業、資格が日本国内でここ25年ほどで爆発的に大きくなった、と言い換えることもできるかもしれません。

さて、本研究では2018年7-8月の間に日本スポーツ協会とJATOを介してEメールでアスレティックトレーナー対象にアンケートを実施。1) 日本スポーツ協会認定(JSPO-AT)またはBOC認定のAT(ATC)の資格を有しており、2) 日本在住で、3) フルタイム、パートタイム、ボランティア、教育のどんな形でもAT職に従事している人にターゲットを絞り、教育背景や業務の実情などを調査したそうな。さっそくですが、結果を見ていきましょう。一部割愛しておりますのでご了承を。

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【性別・年齢】
どちらの資格も男性が圧倒的に多かった(JSPO-AT 81.3%, BOC-AT 70.3%)が、BOC-ATのほうが女性の割合は著しく多かった(18.7% vs 29.7%, p = 0.03)。…とはいえ、米国協会NATAの会員割合は女性が56.1%2であることを考えると、「日本AT界は完全に男社会」であることが言えますね。考察部分でも日本のプロスポーツが男性主体である→男性ATの雇用機会のほうが太い、という趣旨の指摘がされていますし、あとは日本の大学スポーツは米国のようなTitle IX(米国高等教育機関の男女機会均等を定めた法律 - 大学内の学生アスリートの男女比も学生総数の男女比と同じでなければいけない)があるわけじゃありませんからね。競技レベルが上がれば上がるほど男性スポーツが主体、という実態と、男性スポーツに女性ATはあまり求められない「ジェンダー縛り」がまだまだ根強く残っている証拠でしょうか。AT教育・臨床現場のジェンダーの多様性はこれからもっともっと広がっていって欲しいと非男性としては切に願います。
年齢はJSPO-ATの半数以上(51.2%)が35歳以下と若い結果に。これは、学歴の違い(4年制大学を卒業しなくてもよいから早く世に出られる - 後述)か、離職率が高い(一定の年齢に達したらキャリアチェンジをする人が多い)のか、はたまた職業そのものがまだ若いからか?妄想が広がりますね。

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【学歴、実務年数】
学歴はJSPO-AT: 学士 33.2%、修士 12.4%、博士 5.8%、その他 48.6%となっており、その他(n = 372)の内訳は高校卒業 (n = 7)、専門学校卒(n = 345)、短大卒(n = 20)だったそうな。ということは、専門学校卒が最も多い(45.1%)ですね。本文中にも、全国に68あるJSPO-AT承認校プログラムのうち、32(47.1%, 32/68)は専門学校であるという記載があります。これをほぼそのまま反映した形になりますね。
対してBOC-AT: 学士 42.2%、修士 46.9%、博士 10.9%となっています。JSPO-ATより高学歴ということになるけれど、米国ATの70%超が修士号を取得している3と考えると、「現在日本在住のBOC-AT」もかなり偏ったPopulationである(有している学位が米国と比較して恐らく著しく低い)ことが分かります。
実務年数は先ほどの年齢の違いを反映してか、「10年以下」がJSPO-ATでは半数以上(56.0%)だったのに対し、BOC-ATでは23.5%に留まりました。まぁこのへんはね、「AT米国留学者数が近年減っている」とか「BOC-ATは資格を取得してから帰国するまで数年米国で働く人が一部いる」などのタイミングもあるのではないかなと個人的には思います。

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【その他の保有資格】
JSPO-ATは他の医療資格を同時に有している場合が多く(JSPO-AT 73.1% vs BOC-AT 20.3%)、中でも鍼師 (34.6% vs 15.6%, p < 0.01)、灸師(35.0% vs 15.6%, p < 0.01)、あん摩マッサージ指圧師(19.7% vs 9.4%, p < 0.05)、柔道整復師(16.6% vs 4.7%, p = 0.01)、理学療法士(16.6% vs 4.7%, p < 0.01)に見られる差は顕著だったそうな。日本でATとして現場に出たければ医療資格を持っておけ ― と明確に言われることも少なくないらしい、と私も風の噂で耳にしたことがあります。
エクササイズ・栄養・教育の分野での資格で、統計的に有意な差が認められたのはCSCS (CSCS*Dも含む)、NASM-PES, NASM-CESの3つで、いずれもBOC-ATの保有率が高かった(28.1%, 35.9%, 6.3% vs 11.4%, 6.3%, 0.1%, p < 0.01)とのこと。ぎゃ、私この3つもれなく全部持ってるわ…。BOC-ATはエクササイズ系の資格を有していることが多い、というのは、アメリカではATそのものが医療資格だからという側面が大きいでしょうね。

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【雇用形態・労働環境】
JSPO-ATはパートタイム(43.9%)、BOC-ATはフルタイム(54.7%)での雇用が最も多かったという結果に。労働環境はJSPO-AT、BOC-AT共にエリートの競技レベルが最も一般的(46.3%, 51.9%)だった一方で、大きな差が出たのは"Organized School Sports - 学校活動中のスポーツ"でしょうか(JSPO-AT 32.8%、BOC-AT 13.5%)。これは私は「中学や高校の部活動」という文脈ではないかと読解しております。日本って部活単位でAT雇ったりしてますもんね。

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【年収】
この結果は多くの方の興味を引くものだと思います。JSPO-ATとBOC-ATの年収中央値カテゴリーを比較すると、JSPO-ATは0-200万円、BOC-ATは401-600万円だった、とのこと。
もう少し詳しく示すと、JSPO-AT: 0-200万円 51.6%、201-400万円 24.4%、401-600万円 13.2%、601-800万円 6.8%、>801万円 4.0% (グラフも明らかに左寄り)…なのに対し、BOC-AT: 0-200万円 31.8%、201-400万円 15.9%、401-600万円 23.8%、601-800万円 11.1%、>801万円 17.5% (グラフはどちらかというとフラット)です。この差は本当に…興味深いです。日本にATとしての仕事がないわけではなく、日本という共通の土台で、同じだけの仕事の可能性が散らばっていて、これだけの年収格差が生まれるとは。

ここからは個人の意見と感想になりますが、これは必ずしもBOC-ATのほうが給与の高い仕事に就ける(=能力が高い)ということを示しているわけではない、という可能性は考慮すべきだと思います。例えば、私はアメリカで幾度となく、様々な指導者やメンターから「下積みだから、若いからという理由で安い給与の仕事に飛びつくな。その職はこの業界全てを侮辱しうるもので、貴方がその仕事を取ることによって職業全体の価値が下がってしまうかもしれない可能性を十分に考えろ」と教えられてきました。そして同じことを学生に伝え続けてきました。自分の仕事の価値を、自分が信じているなら、それに見合わない仕事は取ったらあかんよってことですね。実際に、アメリカでの職業を上げてのATの認知・価値の向上というのは、ここ15年ほどで革新的に進んだと感じています。Salary Survey4にもそのあたり、反映されていますよね。下のグラフは2008年から2018年までの全米のATの平均給与の推移をまとめたものです。
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そのメンタリティを引き継いでいるBOC-ATが多いのであれば、単純に年収に納得しなければその仕事を取らない、とか、交渉して引き上げる、という信念の方もまた、多いのではないでしょうか。逆に言えば、JSPO-ATの方々も現状に納得していないのであれば、職業一丸となって行動を取り始めるべき時期なのかもしれません。例えば、NATAはメンバー専用ウェブサイトに求人広告が出せるようになっているのですが(そしてそれは米国内で就職活動をしている人たちのメインの情報源なのですが)、私の知っている限りでここ5年くらいから、一定の給与を越えていないと求人すら出させてもらえない規則が設けられるようになりました。言い換えると、「ATとしての職業価値を下げるような安い仕事は、NATAが支持しない」という姿勢をハッキリと協会レベルで示しているわけです。

さて、みなさんはこの論文のデータをどう解釈しますか。どう利用して、ATという仕事をよりよいものにしていけそうですか。こういった話題はタブーじゃない。もっともっとオープンに、職業全体で語られるべきものなのです。理想を膨らませ、現実を咀嚼して、それらをどう繋げられるか一緒に知恵を出しましょう。

泉先生、細川先生、論文を通じて様々な業界人に考える機会を与えてくださって、ありがとうございます!

1. Izumi H, Hosokawa Y. Athletic training services in japan: a comparison of the united states and japan based on educational background. Athl Train Ed J. 2019;14(4):305-314. doi: 10.4085/1404305.
2. National Athletics Trainers' Association. Ethnicity demographic data - December 2020. NATA Member Statistics website. https://members.nata.org/members1/documents/membstats/2020-12.htm. Accessed February 23, 2021.
3. National Athletics Trainers' Association. Athletic Training Education. NATA Education Overview website. https://www.nata.org/about/athletic-training/education-overview. Accessed February 23, 2021.
4. National Athletics Trainers' Association. 2018 NATA Salary Survey Executive Summary. NATA Salary Survey website.https://members.nata.org/members1/salarysurvey2018/2018-Salary-Survey-Executive-Summary.pdf. Accessed February 23, 2021.

  # by supersy | 2021-02-23 23:30 | Athletic Training

ノルディック・ハムストリング・エクササイズのセット間レストについて考察する。

ノルディック・ハムストリング・エクササイズのセット間レストについて考察する。_b0112009_11305063.jpg
ノルディック・ハムストリング・エクササイズ (NHE)、というエクササイズは有名ですよね。写真のように膝を地面につけ、胴体を地面に直立させた状態から、徐々に前に倒してハムストリングに遠心性のストレスをかける例のアレです。ノルディック・ハムストリング・カール、と呼ばれたりもします。

そんでもって。エクササイズには調整可能な変数というのが非常に多くあります。レップ数とか、セット数とか、重量とか。中でもセットとセットの間にどれくらいの休憩時間を入れるかという「Inter-set Rest Interval (ISRI, セット間レスト)」という概念が今回紹介する論文1の焦点になっています。

一般的なレジスタンス・トレーニングをおこなう際、このISRIは「短い(例: 1分間)より長い(例: 3分間)ほうがATPやPCの貯蓄回復を促せ、より高い筋力改善/筋肥大の効果が促せる」とされていますが、このあたりの研究2が主に求心性エクササイズ (Concentric Exercises)を扱ったものであるのもまた事実です。このセオリーがそっくりそのまま遠心性エクササイズ (Eccentric Exercises)にも当てはまるのか?というのは、別途検証してみないとわかりませんよね。この論文の著者らは、遠心性エクササイズのほうが求心性よりエネルギーコスト効率がよいこと、遠心性筋活動のほうが耐疲労性が高いことを挙げ、「例えばNHEだったら、長いISRIが必ずしも良いとは限らないのでは?」と仮説を立てています。

んで。

研究デザインはRandomized Repeated Measures Crossover。そうなんです。Crossoverしているくらいだから、あくまでも1セッションでのパフォーマンス結果を見ているだけで、長期的なトレーニング効果を追ったものではありません。(『求心性中心』エクササイズを扱った結果として)比較対象となっている研究のトレーニング期間が8週間だったことを考えると、仮に今回の研究で仮設通り「ISRIを長くしても大きな効果はない」という結果が出たとして、筋力強化や筋肥大効果についてはまだ不明、という事実は変わらないように思います。目的にデザインが100%そぐわない…このFlawは結構、致命的なんではないかなー。

まぁそれはそれとして。
被験者はNHEを6回を2セットから成るセッションを一回おこない、76-96時間のWash-Out期間後に2度目のセッションをおこなったとのこと。で、1st vs 2nd セッションで1分または3分のISRIがランダムで使われたというわけですね。右・左それぞれのハムストリングの最大筋力、左右最大筋力のバランス(非対称性)、そしてレップ数を重ねるにつれ、筋力がどの程度低下していくか(= Fatigue)をアウトカムとして計測したそうな。やっぱり、前述したように「トレーニング効果」を推し量ったわけじゃないということはここでも強調しておきたいですね。

ここまででも引っかかることがもう2点。
一つ目は、「6回2セット」という数の妥当性です。NHEは基本的にLow Volumeでも効果があるエクササイズであるとされていますけど、それでも6回2セットって結構初期の数字で、徐々にVolumeが増えていくプロトコル3が一般的じゃないかと思うんですよ。若くて健康な男性アスリートであれば最終的に6-10回を3セットくらいまでは増やしたりする3,4じゃないですか。特に今回はISRIを検証しようという内容なので、できれば2セットの場合も3セットの場合も、結果を出して並べて見てみたかったなぁと個人的には思います。

二つ目は、被験者が厳選なる基準によって選ばれた(highly-selective)者たちであること。選考基準は 1) 若い男性チームスポーツアスリート(サッカーとかなら比較できる先行研究がアホほどあるのでわかるけど、なぜ『チームスポーツ』というふわりとした定義の条件を設けたのか?あと、「若い」の年齢が定義されていないけど具体的に何歳から何歳?)、2) 週に2-3回、監督下でのレジスタンス・トレーニングを、週に3-5回は競技に特化した練習をおこなっている(=つまりそこそこ身体できており、いわゆる"Trained"な状態である)、3) NHE経験者であり、3-i) NHE中のPeak Forceが≧337N、 3-ii) Peak Forceの左右差が<15%、3-iii) 現在最低でも週に一回程度のペースで定期的にNHEを実施中、3-iv) 過去6か月以内に下肢傷害の既往歴がない、と多岐に渡ります。我々がテキトーに選手を見つけて、ほいアナタ当てはまりますね、と気軽に確認できるようなCriteriaじゃありませんね。臨床的応用性は残念ながら高くないかなという印象。
経験者相手にも関わらずきちんと事前にエクササイズ指導を全員におこなった点(=我流でやられてしまうリスクを軽減)、ウォームアッププロトコルが事細かに決まっていた点、パワー分析をおこなって被験者の数を決定した点などは素晴らしいと思います。

で。結果です。
第1セット、第2セット問わず、レップ数を重ねるごとに最大筋力は低下していったそうですが、この結果は利き足にも非利き足にも、そして短い(1分)ISRIでも長い(3分)ISRIでも関係なく確認されたそうです。つまるところNHEとはレップ数を重ねるとハムストリングに疲労が蓄積し、左右や利き足非利き足、セット間のレストの長さに関係なく、筋出力が同じように低下していくものである、ということがわかりました。言い換えると、NHEをおこなう際、セット間のレストが1分であっても3分であっても、セットを通じて同じ質の筋活動の維持(Peak Forceの93%)が期待できる、ゆえに無駄に3分待つより、1分のレストでさくさく進行したほうが効率がよいとも言えます。Injury Preventionの実践に立ちはだかる障壁の筆頭に「時間がない」という理由が挙げられることが多いのだとしたら、この微々たるように見えるレスト時間の違いは、実はとても大きな臨床的意義を持つものなのかもしれません。

ただ、1分がベストなのか?実はもっと短くてもいいんじゃないか?という疑問はまだ残されたままですし、もしかしたら決定的な違いは3セット目に露呈していた可能性もあります。個人的にはそのあたりの検証も是非見てみたいですし、くどいかもしれませんが、筋力、筋肥大、ハムストリング肉離れの傷害予防効果までは本研究で可視化できていません。あくまでもおこなわれていたエクササイズそのものの質が悪くなかったよね、というお話ですので、このあたりは注意して解釈する必要がありますね。

とはいえ、読みやすく、シンプルで楽しい研究でした!これに触発されて先ほど生まれて初めてNHEをやってみましたが、左のハムストリングが悲鳴を上げかけたので早めにやめておきました。6回2セットをやるとなると…ええと、ちょっとレストを長めにもらってもいいですかね?

1. Drury B, Peacock D, Moran J, Cone C, Ramirez-Campillo R. Effects of different inter-set rest intervals during the nordic hamstring exercise in young male athletes [published online January 6]. J Athl Train. 2021. doi: 10.4085/318-20.
2. Schoenfeld BJ, Pope ZK, Benik FM, et al. Longer interset rest periods enhance muscle strength and hypertrophy in resistance-trained men. J Strength Cond Res. 2016;30(7):1805-1812. doi: 10.1519/JSC.0000000000001272.
3. Mjølsnes R, Arnason A, Østhagen T, Raastad T, Bahr R. A 10-week randomized trial comparing eccentric vs. concentric hamstring strength training in well-trained soccer players. Scand J Med Sci Sports. 2004;14(5):311-317. doi: 10.1046/j.1600-0838.2003.367.x.
4. de Oliveira NT, Medeiros TM, Vianna KB, et al. A four-week training program with the nordic hamstring exerciwe during preseason increases eccentric strength of male soccer players. Int J Sports Phys Ther. 2020;15(4):571-578.

  # by supersy | 2021-02-02 21:22 | Athletic Training

脳振盪受傷を隠しがちなアスリートに共通する要素は?予測因子を分析する。

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またも面白い論文1が!
直訳すると、「大学アスリートにおける、脳振盪受傷非開示傾向の予測因子」ってところでしょうか。これもE-pubでつい2週間前くらいに発表になったもののようです。面白いのずんずか出るなー。



該当論文をまとめてみます。さて、脳振盪の評価は患者の主観的症状の有無を見極める必要がどうしてもあり、実際のところこれが、なかなかに難しい。なぜなら、アスレティックトレーナー(AT)と選手の間の信頼関係が絶対条件となってくるからです。「なんかさっきタックルされてからちょっとおかしい、気分が悪い」って言ってもらわないとそもそも始まらない脳振盪評価ってのがあるんですよね。

ですので、アスリート側に情報の非開示(= 頭痛があるのに隠すとか)があった場合は脳振盪の見逃しに繋がってしまい、アスリートの健康を第一に考えるATとしては死活問題です。だからこそ、今回の論文タイトルのように、「こういう要素を兼ね備えているアスリートは脳振盪受傷の事実を隠しやすい」という予測因子をATは知っておいて損はないですよね。

んで。
この研究では、NCAA Division-Iの大学4校、Division-IIの大学2校の18歳以上の現役アスリート741名に取ったアンケートを分析する形で、予測因子をあぶりだしています(…とはいえ、Table 1のDemograhic infoにはDivision-IIIのアスリートが84名いたとも記載があり、矛盾!?と思ってしまっております。どういうことだろ?)。もうさっそく結果を示してしまいますと、えーと、私が興味深いなと思ったのが、

- 741名のアスリートの内訳は、男性448名(60.5%)、女性293名(39.5%)で平均年齢は19.89 ± 1.32歳。
- 参加している主な競技はアメリカンフットボール(n = 179, 24.2%)、ラクロス(n = 81, 11.1%)、サッカー(n = 77, 10.4%)がトップ3だが、ボート、ゴルフ、ボウリング、水球など幅広い。
- うち、脳振盪受傷歴(ATまたは医師に診断されたもの)があった選手は218名(29.4%)。様々な競技も含まれていることを考えると、結構多いですね。細かい内訳は、1回が147名(67.4%)、2回が44名(20.2%)、3回以上が27名(12.4%)。
- 「脳振盪かな?と思ったけれどコーチ、AT、保護者やチームメイトに報告をしなかった経験がある(=つまりこれが『非開示』)」人は741人中116人(15.6%)。これも結構多いなと感じます。個人的な感想ですが。
…あたりですかね。

で、キモの部分です。脳振盪非開示と関連性があった要素は…
  - 選手の性別
  - 参加しているスポーツの種類
  - 脳振盪受傷歴の有無
  - 脳振盪に関する知識
  - コーチからのプレッシャー
…なんです。ただ、具体的にどう関連があったのか、というところに我々の予想に反する発見が多いかもしれません。それぞれをもうちょっと詳しく見ていきましょう。

●選手の性別
選手が男性であると、女性に比べ、脳振盪発生を非開示しやすい (OR 2.28, 95%CI 1.40-3.7)。
これは他の文献でも繰り返し見た記憶がありますが。女性の方がきちんと報告しやすいんですよね。男ならこれくらい耐えられるだろう、とか、耐えなければ!という社会的なNormもあるのでしょうか。

●参加しているスポーツの種類
競技を(脳振盪発生)ハイリスク競技とローリスク競技*にわけると、ハイリスク競技に参加しているアスリートのほうが非開示しやすい(OR 1.8, 1.0-3.2)。
これも「こういう競技特性だし、脳振盪くらい当たり前/仕方ない」みたいな文化もあるのかもしれませんね。
*ハイリスク競技: Football, Lacrosse, Hockey, Ice Hockey, Soccer, Softball, Wrestling, Basketball, Volleyballなど
ローリスク競技: Baseball, Cross Country, Golf, Rowing, Swimming & Diving, Tennis, Track & Field, Water Poloなど

●脳振盪受傷歴の有無
脳振盪の受傷既往歴があると、脳振盪受傷を非開示しやすい(OR 2.3, 1.5-3.6)。
同様の結果は高校、大学アスリートや軍隊訓練生などを対象にした先行研究でも報告されているそう。未経験・無知だったというならともかく、既往歴が『ある』ほうが報告しないなんて、ちょっと意外だと思ってしまいません?理由は明らかになっていませんが、著者らは「(なまじ知識があって)前回と同じRecovery Processを経るのがイヤだから?」それとも(前回とにかく休むことのみで回復したりした場合)「自分でマネジメントできちゃう、と過信するから?」などと考察しています。なるほどこういう意味でも、専門家が今後、脳振盪患者に対してもっともっと積極的に治療・リハビリテーションに取り組んでいく(そしてもちろん良いアウトカムを出す)ことは非常に有意義なのかもしれませんね。アスリートがACL再建手術から復帰しようというときに、「専門家がいなくても自分ひとりでリハビリできるもん!」って思うことはあまりないのと一緒で、脳振盪もそれくらい専門家が有効な介入を展開できるのだ、ということがクリニシャン・アスリートの双方で当たり前になってくれば「迅速に報告し、介入を始めてもらうことに多大なメリットがある」と考えてもらえるのではないかな。

●脳振盪に関する知識
こちらも意外や意外。なんと、脳振盪諸症状に関する知識があるほうが脳振盪受傷を非開示しやすい(OR 1.1, 1.0-1.1)というのです。統計的にはギリギリ有意なので「ものすごく」というレベルの予測因子ではなさそうですが。
この研究では、49点満点の脳振盪諸症状に関する小テストを被験者に受けてもらっているのですが、1点獲得毎に7.3%、非開示のリスクが上昇するんだそうです。ここまでの先行研究でも、「脳振盪の知識を共有しただけではアスリートの行動変容は促せない」と繰り返し示唆されているとのこと。これは、私も肌感としてなんだかとてもよくわかります。
ただこれはアスリートに脳振盪の症状に関する教育を『するな』、と言っているわけではなく、アスリートに脳振盪の症状に関する教育をするだけでは『不十分』だ、という風に受け取ってはどうでしょうか。個人的には、「競技を長く続けて、大学に入ってようやく脳振盪教育、では遅すぎるのでは?」と思うこともあります。もっと早く、高校や中学校、場合によっては小学校くらいからスポーツを嗜むにあたって脳振盪教育をしておけば、『脳振盪になったら報告するのは当たり前』という文化が根付きやすいかなと思うんですよね。あとは、えーと、次の項目ともリンクしますが、教育する対象も増やす必要があるのではないか、と強く思いますね。

●コーチからのプレッシャー
保護者、ファン、チームメイトからのプレッシャーというのも検証された要素に含まれてのですが、結果、これらは統計的に「予測因子」と呼ぶには不十分で。様々な要素の中でも実は最も影響力が高かったのは「(脳振盪なんかでアウトしてんじゃねーよという)コーチからのプレッシャー」だったのです。ORは2.7 (1.5-5.0)。実際、今回アンケートに回答したアスリートの中で、コーチからのプレッシャーを感じていると回答は18.2% (135/741)もあった、ということも合わせて考えるとここは最も改善の余地がある箇所とも言えるかもしれません。

そんなわけで、先のポイントと併せると、「影響力も考慮して、今最も力を入れて教育されるべきはコーチである」じゃないかなと思うんです。もちろん、NCAAが必須化しているような選手全員に対する脳振盪教育は継続すべきです。しかし、それ以上の時間と情熱をかけてコーチらを教育し、脳振盪の危険性を本当の意味で理解していただければ、彼らこそが選手に「脳振盪が起こったら即座にATまたはチームドクターに報告すべきだ」というメッセージを誰よりも効果的に伝えてくれる、心強い仲間になるのではないかと。

さぁそんなわけで、なかなか噛み応えのある内容でした。面白かった!勉強になったー。

1. Anderson M, Petit KM, Wallace J, Covassin T, Beidler E. Predictors of concussion nondisclosure in collegiate student-athletes [published online January 15, 2021]. J Athl Train. 2021. doi: 10.4085/1062-6050-0102.20.

  # by supersy | 2021-01-31 22:22 | Athletic Training

疼痛介入の一環としてのマインドフルネス・トレーニング: Patellofemoral Painに関する最新エビデンスを例に考える。

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やー、面白い論文たち1,2に出会いました!2つあるんですが、どちらも2020年11月25日に発表された最新論文。読み応えあり!まとめます(まだManuscript状態のPDFしかないので、記事タイトルの画像を挿入するのは正式に出版されてからにします。でもE-pubはされてますので、どなたでも全文オンラインで読めますよぅ)。

さて、議題は「Patellofemoral Pain(PFP、膝蓋大腿疼痛)」なんですが、広く言うと「慢性疼痛」全般に当てはまる考え方かなと思います。過大解釈な自覚はありますけども。

PFPというと症状がnagging且つ継続的で、反復性が高く、運動機能ひいてはHRQOLが低下する3-8、というイメージは皆様お持ちかと思いますが、「単にAlignment/Biomechanical(構造的・バイオメカニクス的)な問題でしょ?」と考えている方も多いのでは?もちろんそれも要素のひとつとしては言われていますが、それだけでは解決できない(例: AlignmentやBiomechanicalな問題に介入しそれらが改善したのに症状はよくならない、または、そもそもそういった問題がないのに症状が出ている症例など)のも事実。

そこで最近の疼痛関連の文献でよく目にするキーワードが「Central Sensitization (中枢感作)」です9。International Association for the Study of Pain (IASP、国際疼痛学会)はこの言葉を "Increased responsiveness of nociceptive neurons in the central nervous system to their normal or subthreshold afferent input.10" つまり、「正常あるいは閾値以下の求心性入力に対して示す中枢神経系の侵害受容ニューロンの亢進した反応性」と定義しています。平たく言ってしまえば、本来「痛み」と感じるに足らないような感覚入力に対して、侵害受容ニューロンが過敏に反応してしまい、「痛い!」と感じてしまうことですよね。具体的には、
- Allodynia: 無害刺激 (non-noxious stimuli)に対して痛みを感じてしまう
- Primary Hyperalgesia: 該当部位に起こる痛みへの過敏性
- Secondary Hyperalgesia: 該当部位外に起こる痛みへの過敏性 (例: 膝傷害が元で、上肢にも過敏性が広がる)
の3種類が代表的11です。もしかしたら今まで、疼痛のこういった側面を無視し、やれ筋力のバランスだ、ランニングフォームの修正だと、そういった力学的なことばかりに焦点を当ててきたから、治療効果がイマイチだったんじゃないの?とも言い換えられますね。このあたりは私も概ね同意します。

んで、他の多くの慢性疼痛と同じように、PFPもCentral Sensitizationによる影響ってのは大きいんじゃないかと。ちょっとそのあたりシステマティックレビュー・メタ分析して調査してみますわ、というのがひとつめの論文1です。



さて。まずは気になったところから。
私が見ているのがまだE-pub版なので、本編での発表時には修正されているかもしれませんが、「含まれた研究は全部で15編、うち15編はメタ分析、8編はシステマティックレビューに…」とあるところとフローチャートの文献数が一致しないのは問題です。このフローチャート自体も不明瞭な箇所は多く感じるのですが(例: スクリーンされた文献が56で、はじかれた文献が34と全文アセスメントをおこなった文献が21では、足しても56にならない?とか、そもそもスクリーンで弾いたものも内訳出したほうがいいのでは?Duplicatesを除いた文献数が78あったのにスクリーニングしたのは56とか、なんで20以上も文献いつのまにか減ってるの?とか)、この表では「含まれた研究は全部で15編、うち11編はメタ分析、8編はシステマティックレビュー」に含まれたことになっています。ただのTypoだといいのですが。
あと、「システマティックレビュー兼メタ分析」って論文はよくみますが、フツー、システマティックレビューに含まれる論文のほうが、メタ分析に含まれるそれよりも多いですよね?メタ分析できるほど詳細が含まれている論文をシステマティックレビューでは使わない理由ってなに?ぽつぽつと疑問が残る造りです。

さておき、中身です。メタ分析部分は…
Primary Hyperalgesia: 該当部位の著しいPressure Pain Thresholds(PPT、加圧疼痛閾値)低下に関する強いエビデンスあり(6 high- and 5 moderate-quality studies; n = 983; SMD -0.91, 95%CI -1.22~-0.60)
Secondary Hyperalgesia: 上肢のPPTが中程度低下する強いエビデンスあり(7 high- and 3 moderate-quality studies; n = 955; SMD -0.71, 95%CI -0.97~-0.46)
Primary & Secondary Hyperalgesia: Conditioned Pain Modulation (CPM、痛みが痛みを抑制するDescending Pain Inhibitionのメカニズム)抑制が小程度起こる強いエビデンスあり(5 high-quality studies; n = 554; SMD -0.42, 95%CI -0.61~-0.24)
Temporal Summation Response (時間的加重、侵害刺激が持続したり繰り返されると疼痛がどんどん増強されていく反応)が中程度起こるという強いエビデンスあり(4high-quality studies; n = 492; SMD 0.69, 95%CI 0.48~0.90)
 *ちなみにSMDはsmall = 0.2, medium = 0.5, large = 0.8と解釈されるのが一般的

システマティックレビュー部分は…
温・冷痛閾値に関しては矛盾するエビデンスが存在。温・冷痛閾値が著しく下がる(1.2, 99%CI 0.8~1.63)という報告が一件と、大差ないという報告が一件混在している。
 *ちなみに99%CIというのも95%CIのTypoじゃないかなぁ…。
Pain Mappingについては5つの良質な研究(n = 518)が報告をしていたが、その質が異なりすぎて情報のpoolingは不可。2件の研究では痛みがどれほど広がっていたという具体的な報告に欠け、残り3件の報告ではPFP患者は痛みのない健康な被験者と比較して、痛みを感じている部位が広きにわたって広がっている様子が確認されたとのこと。

んで、結論はシンプルに、「やはりPFP患者の間でCentral Sensitizationは起きている」。具体的には、上肢も下肢もより低い加圧で痛みを感じるようになっていたり、痛みの抑制メカニズムが上手く機能していなかったり、実際に日常的に痛みを感じている箇所が障害がないはずの広範囲に及んでいたり。では次に気になるのが、「じゃあそれらにどうやって介入していけばいいの?」ですよね。この疑問の答えを探るには、ふたつめの論文2を見てみましょう。



通常のリハビリテーションに、Mindfulness Practiceを足したらどうなるか?というのをRCT形式で検証しているのがこの論文。上のひとつめの論文内容とよくリンクしていますよね。

Mindfulnessというのは、日本語でもそのまま「マインドフルネス」でしょうか。ご存じの方も多いとは思うのですが、この言葉には「今この瞬間、感覚的に経験していることに深く意識を向けること(=そのことに対して何を思い、どう解釈するか考えることはせずに)」という意味合いがあり12ます。自分の中で自動的と言ってもいいほど自然に湧き上がってくる(出来事に対する)「感情的・認知的反応」に一時停止をかけ、今起きて感じている感覚的経験のみに客観的に向き合うというのは、それなりの努力を必要とします。だからこそのトレーニングというわけですよね。

慢性疼痛の患者さんは、痛みそのものについて考え、リフレクションする機会がどうしても多くなってしまうため、Pain Catastrophizing (痛みの強迫観念に捕らわれ常に考え続けてしまい、痛みを脅威として過大解釈し、絶望する)という負の循環にはまりがちです。だからこういったトレーニングを受け、『今この瞬間に実際に起きていること』と、『それを受けてうねり始める自分の中の感情や認知』を上手く切り離す能力が身に付けば、プラスになるのではないか?というような仮説でございます。

この研究、具体的には片または両膝にPFPの症状が最低でも3ヶ月出ている女性のRecreational Runner30名を被験者とし、マインドフルネス・トレーニングを受ける・受けないの2組で疼痛や機能等のアウトカムがどう変化するかを検証しています。1) 両グループともに18週間、週3回60-90回のセッションを繰り返す同一リハビリテーションプログラム(=エクササイズ)に従事してもらう(文中に詳細なプログラムの掲載あり)、2) 痛み、疲労感等を基準にエクササイズをProgress/Regressする共通プロトコルを適応しながらリハビリテーションが進行していく、3) 趣味のランニングに関しても、毎週専門家によるランニングテクニックの分析、アドバイスと、ランニングの距離・頻度に関しても指導があるなど、エクササイズ以外の要素も充実している、4) 評価者、分析者はGroup AllocationにBlinded、5) 全ての評価は一人のPhysiotherapistが一貫しておこなう、6) グループ分けはランダムに決定される…など、明文化されていることが多く、なかなか丁寧にデザインされた研究だなぁと思えます。…が、時間軸だけが表記に一貫性がなく、どうも理解できないところがあるんですよね。

文中には、1) マインドフルネスのトレーニングは8週間の長さで、18週間のリハビリテーションに追加される形でおこなう、2) エクササイズ開始の4週間前からマインドフルネス・トレーニングを開始、3) マインドフルネス・トレーニングの後半4週間はエクササイズと被る形で、同時進行でおこなう…と書かれているんですが、それ以上の記述はありません。んで、4) データ計測は、Baseline、Week 9 (mid-intervention)、Week 18 (@end of intervention)、介入終了2ヶ月後(Follow-up)の4回おこなった、とありますので、これを総合的に解釈すると、以下のふたつの可能性が考えられます。
疼痛介入の一環としてのマインドフルネス・トレーニング: Patellofemoral Painに関する最新エビデンスを例に考える。_b0112009_19221412.png
可能性1の孕む問題点は、エクササイズ組がBaseline測定をしてから4週間も放置されていること。この間、指導もなく自分の知識でランニングを続けていたら、症状が悪化していく可能性が考えられます。実際の臨床で、問題があることを認識していながら4週間もなにもしないってあまりないですよね。だとすると、この状況はClinically Applicableなのか?
可能性2の抱える問題は、グループ間で(広い目で見た)「介入期間」が18週 vs 22週と、4週間も違いが出てしまうこと。そしてアウトカム・アセスメントのタイミング(Week 9, 18、及び2ヶ月後)がグループ間でずれてくること。具体的には、マインドフルネス組のほうがアセスメントが起こるのが時間軸的に遅くなるので、そりゃ症状も和らいでくるかもしれないよね、という。どちらにしても、ややこしい!なぜこんな面倒な造りにしたんだろ。
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個人的には、「追加」っていうんだからシンプルにこうすればよかったのではないか(↑)と思ったりなどします。History Effectsのバイアスは取れますから。なにかできない事情もあったのかもしれないけど。

それから具体的なマインドフルネス・トレーニングについて。トレーニングは一対一ではなく、一人のスポーツ心理学者によって、7人、8人のそれぞれグループ形式でおこなわれたんだそう。ふーん、となると、被験者同志で交流する場があり、膝痛いですよねー!とか、どんな靴使ってます?とか、リハビリのあれ、キツくないですか?とか、元々共通項の多い方たちですから、もしかしたらとても仲良くなって「一緒に頑張ろう」という一体感が芽生えた可能性はあります*ね。実際、各グループの平均セッション参加率は
 エクササイズのみ: エクササイズ 87.7%
 マインドフルネス+エクササイズ: エクササイズ 92.3%、マインドフルネス・トレーニング 100%
…と、マインドフルネス・トレーニングも導入したグループのほうが高い数値が出ています。これはアウトカムにも影響し得た要素かと思います。

マインドフルネス・トレーニングの頻度は不明(たぶん一週間に一回?なのか?)、一回のセッションの長さも不明。内容は呼吸、瞑想、ヨガなどで、セッション後、家でも瞑想などを毎日最大45分実践するよう指導したそうな。この「家での実践頻度」は、紙のフォームで各自記録してもらい、それを研究チームが確認することで実践を促したらしいのですが、その結果は文中では触れられていません(実際はめっちゃ実践していたのか、はたまた全然やっていなかったのか?)。一応、本文中にトレーニング内容のアウトラインが記載されているんですけど、3-6つの箇条書きで簡単に要点がまとめられているだけで、実際どんな練習をしたのかなども不明です。少なくとも私が読んでいて、「ああ、アレね!」とピンとくる感じではない。これを見る限りでは、この実験で採用されたマインドフルネス・トレーニングの再現性は高いとは言えないのではないかな。スポーツ心理学者の誰もが同じマインドフルネス・トレーニングを提供してますってわけじゃないだろうし。

*ちなみにLimitationsの箇所でこっそりリハビリテーションもグループセッションでおこなった、と書かれています。こちらのセッションは具体的に何名だったのかは不明ですし、描写がない以上、2つのグループの被験者がここで混ざった可能性もあります(30名が一堂に会した可能性も)。となると、グループ間のコンタミネーションが起こった可能性があるのは否定できません。

さてさて、結果です。こちらは表を見たほうが早いので下のものを参照ください。文中Table 2と3を基に、もう少しスッキリさせて作成しなおしました。aがBaselineとの統計的に有意な差が認められたもの、*はグループ間の著しい差があったものにつけています。
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言葉でまとめると、「両グループ共に疼痛軽減、膝機能向上、治療効果の実感、動作に伴う恐怖感の現象、Pain Catastrophizingの緩和が見られたが、マインドフルネス・トレーニングもおこなったグループのほうがその全てにおいてより著しい効果が見られ、2ヶ月後のFollow-up時にもそれらのポジティブな効果は持続していた」というところでしょうか。この表ではややこしくなるので入れなかったのですが、他にもCoping Strategies(痛みが実際に生じた時の対処法)の活用も計測していて、Distraction, Ignoring Pain Sensations, Distancing from Painなどの具体的なメソッドも、マインドフル組のほうがより確実に活用できるようになった、という結果も本文には含まれています。つまり、「慢性疼痛というモンスターに立ち向かう際には、器質的なアプローチと平行してマインドフルネス・トレーニングに代表されるような認知・精神的介入も同時進行したほうが効果が格段に高そうだ」ということがわかったんですよね。ふむー!そうだろうと思ったけど、やっぱりそうかー!という気持ちと、それにしたってこんなに全てのアウトカムにこんなに綺麗に結果が出るとはねー、びっくりー!という感想でございます。

ただ、ここまでにも指摘しているように、この研究にもLimitationは多くあります。著者ら自身も言及していますが、「一時は98名も集められた被験者候補のうち68名が除外された」ということは、被験者がHighly selectiveだったということとも同意なわけで。我々が目にする多くの患者にはこの研究の結果が当てはまらない可能性があります(除外されたうち4名は理由不明ですし)。先の1) 研究デザイン上の不可解な点、2) 肝心のマインドフルネス・トレーニングの詳細の欠如と、再現性の低さ は大きな問題だと思いますし、それに加えて週3回の60-90分のリハビリテーションというのもATとしてはなかなか実践しづらい長さかもしれません。マインドフルネス・トレーニングそのものというより、被験者たちが交流をして得たSocial Support/Bondがアウトカムに影響を与えたかもしれない、というバイアスを減らすには、「週に一度集まってお喋りだけする」みたいなPlacebo介入も将来的には導入を検討すべきなのかもしれません。マインドフルネス・トレーニングの内容ももっともっとrefiningできるならば「どういった要素を含んでいるべきか」というところに踏み込んだ研究も見てみたい。いやいや、色々欲が出てきてしまいますね。あれもこれも知りたいなって欲が出てくるってことは、やっぱりいい研究だってことだと思うんですよね。

そんなわけで。ATとしてマインドフルネス・トレーニングをできるようになろう!というより、やはりこういった部分の影響も理解、考慮できるATでありたい、というところと、それからこういった介入をできる専門家さんときちんと繋がり、共通言語を話せるようにならないとね、というところが今回の自分のオトシドコロです。Interprofessional Practiceですよね。これが実践できる人材を世に出せるような教育をしていないと、いよいよ私も用無しになってしまうぞ。肝に銘じます。

1. Sigmund KJ, Hoeger Bement MK, Earl-Boehm JE. Exploring the pain in patellofemoral pain: A systematic review and meta-analysis examining signs of central sensitization [published online November 25, 2020]. J Athl Train. 2020. doi: 10.4085/1062-6050-0190.20.
2. Bagheri S, Naderi A, Mirali S, Calmeiro L, Brewer BW. Adding mindfulness practice to exercise therapy for female recreational runners with patellofemoral pain: A randomized controlled trial [published online November 25, 2020]. J Athl Train. 2020. doi: 10.4085/1062-6050-0214.20.
3. Lankhorst NE, Damen J, Oei EH, Verhaar JAN, Kloppenburg M, Bierma-Zeinstra SMA, van Middelkoop M. Incidence, prevalence, natural course and prognosis of patellofemoral osteoarthritis: the Cohort Hip and Cohort Knee study. Osteoarthritis Cartilage. 2017;25(5):647-653. doi: 10.1016/j.joca.2016.12.006.
4. Lankhorst NE, van Middelkoop M, Crossley KM, et al. Factors that predict a poor outcome 5-8 years after the diagnosis of patellofemoral pain: a multicentre observational analysis. Br J Sports Med. 2016;50(14):881-886. doi: 10.1136/bjsports-2015-094664.
5. Rathleff MS, Rathleff CR, Olesen JL, Rasmussen S, Roos EM. Is knee pain during adolescence a self-limiting condition? Prognosis of patellofemoral pain and other types of knee pain. Am J Sports Med. 2016;44(5):1165-1171. doi: 10.1177/0363546515622456.
6. Matthews M, Rathleff MS, Claus A, McPoil T, Nee R, Crossley K, Vicenzino B. Can we predict the outcome for people with patellofemoral pain? A systematic review on prognostic factors and treatment effect modifiers. Br J Sports Med. 2017;51(23):1650-1660. doi: 10.1136/bjsports-2016-096545.
7. Rathleff CR, Olesen JL, Roos EM, Rasmussen S, Rathleff MS. Half of 12-15-year-olds with knee pain still have pain after one year. Dan Med J. 2013;60(11):A4725.
8. Stathopulu E, Baildam E. Anterior knee pain: a long-term follow-up. Rheumatology (Oxford). 2003;42(2):380-382. doi: 10.1093/rheumatology/keg093.
9. Arendt-Nielsen L, Morlion B, Perrot S, et al. Assessment and manifestation of central sensitisation across different chronic pain conditions. Eur J Pain. 2018;22(2):216-241. doi: 10.1002/ejp.1140.
10. International Association for the Study of Pain. IASP Terminology website. Updated December 14, 2017. Accessed January 27, 2021. https://www.iasp-pain.org/terminology.
11. Woolf CJ. Central sensitization: implications for the diagnosis and treatment of pain. Pain. 2011;152(3 Suppl):S2-S15. doi: 10.1016/j.pain.2010.09.030.
12. Desbordes G, Gard T, Hoge EA, et al. Moving beyond mindfulness: defining equanimity as an outcome measure in meditation and contemplative research. Mindfulness. 2015;6(2):356-372. doi: 10.1007/s12671-013-0269-8.

  # by supersy | 2021-01-27 23:00 | Athletic Training

第9回日本AT学会学術大会オンライン開催中!と、脳を守る首輪?

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私も実行委員を務めさせていただいている、第9回日本アスレティックトレーニング学会学術大会がオンラインで開催中です!12/5-12/31という、年の瀬までみっちり学びを楽しめる開催期間となっておりますー。もしご登録・ご参加してくださっている方がいらっしゃいましたら、掲示板を利用した質問投稿期間は本日、12月11日までですので、ぜひぜひご活用くださいませ。

大会基調講演である、第9回学術大会会長の広瀬先生による「日本アスレティックトレーニングを考える」は一般公開をしております。どなたでも無料で視聴できますので、この機会にぜひ!どうやって手に入れたの?という資料とデータ満載の内容で、私も涙がちょちょ切れるほど感動/勉強させていただきました。この資料作成はとんでもない労力と時間がかかっていますよ。ひとつの学術大会の講演で納めてしまってもいいのか、という内容!貴重です…!皆様ぜひ…!

VNATAでも思ったんですけど、オンラインの学術大会というものもなかなかいいですよね。会場をフラフラしていて懐かしいあの人にばったり会う、ということだけがないのは残念だけど、移動の時間もお金もかからないし、仕事休まなくてもいいし(いや、本当は休んででも行けたら素敵だと思うけど、現実はなかなか休めるような環境はないし)、日常生活の合間合間にちょこっとずつ視聴できるし、面白いものは何度でも再生できるし、聞き逃した!と思ったら巻き戻せばいいし、参考文献はしっかりメモ取れるし…。

あとはハッシュタグとか上手く使えたら講演を聞いての「雑談」みたいなものもSNS上で上手く拾えたかなーと反省中。やっぱり意見感想聞きたいですよね、登壇者としても実行委員としても。顔を合わせる機会がないからこそ、このへんをうまく工夫していきたい。



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そんなわけで、今回は学術大会の教育講演の演題のひとつであった、中山晴雄先生の「脳振盪受傷後のマネジメント-最新エビデンスに基づいて-」という超絶面白い講演を聞いていて、その中で紹介されていた文献(↑)1に興味惹かれたので読んでみましたよ!という内容です。
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脳振盪予防のためのJugular Vein Compression (JVC) Collar、日本語では「頚静脈圧迫カラー」になるかと思うのですが、このデバイスはここ4年ほどで研究が進んできた分野かなと思います。静脈を圧迫することで頭蓋内の血流を増やし、頭蓋内で生じる脳のアソビを減らし、かかる力を減少させよう2という狙いがある…と初めて聞いたときは正直なところ、「そんなん効果あるの?」と懐疑的だったのですが、そうこうしているうちに研究も集まってきていますよね。

ただ、興味深いことに「どうして頚静脈を圧迫して頭蓋内の血流が増加するのか」というメカニズムはまだ解明できていないそうです。というのも、直立姿勢を取ったとき、頚静脈は機能的に閉じており(collapse)、脳内の血流は頚静脈叢からdrainされる3ようなんです。なんでかわからないけど、なぜか血流を増やす!2というのもなんか、座りが悪いですけどね。なんかあるんでしょうね、説明できる方法が。

…まぁ、それは置いておきまして。ここまで、

- 高校女子サッカー選手4や高校アメフト選手5で、カラーをして1シーズンプレーした vs していないで比較すると、していない被験者群のほうがWhite Matter (白質)の変性が著しくシーズン間で起きたにも関わらず、カラー装着被験者群では変化が見られなかった(ちなみに、女子サッカー選手対象の研究ではこの変性はオフシーズンの3ヶ月の間に消失することも確認されている)。4
- 同様に、高校女子サッカー選手6や高校アメフト選手7で、カラーをしていない選手らはシーズンを通じ、記憶作業をしている際の脳の代償活動(fMRI)が優位に増加した・記憶の正確性が低下したにもかかわらず、カラーをしていた選手たちはこれらの脳機能低下を防ぐことができた。

…などなど、全て同一の研究チームによるものなのが気になりますが、ここまでは主にこんな報告があります。ふむ。

で、冒頭の論文も同研究チームから出た、最新のもの1になります。この研究では今までの報告からもう一歩踏み込み、カラー装着がBrain Network Organizationにもたらす効果を検証してます。

Brain Network Organizationtって、どうやって測るの?と素人は思ってしますが、具体的には1) ネットワーク結合の割合はどれくらいか - measured as global clustering coefficient (クラスター係数、Cg)、値が高いほど機能分離が明確に起きており、高度に部下した集団が存在することを示す。2) 脳がどの程度、機能的に関連性があるコミュニティ(モジュール)を形成しているか - measured as modularity (モジュラリティ、Q)、こちらも値が高いほど機能分離が明確に起きており、高度に部下した集団が存在することを示す。3) 脳が様々な区画を越えて情報の伝達を行っているか - measured as characteristic path length (特徴的経路長、L)、小さい値ほどよく結合されていることを示す、…というあたりに集約されるのだそうです。この辺りは私も詳しく無さ過ぎて、こういった計測法がWell-acceptedなのかどうかすらわかりませんが…、このあたり8と読み合わせる限り、恐らくそうなのでしょう。
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調査対象は高校生女子サッカー選手128名。シーズン中は加速器計(↑乳様突起すぐ下に取り付けるタイプのもの)を付け、Head Impact(頭部にかかった衝撃)も記録。シーズン前と後で、もすこし正確には128名分の構造的結合(Structural Connectivity)分析データと、125名分の機能的結合(Functional Connectivity)分析データを収集、解析したとのこと。ちなみにシーズン中に脳振盪を受傷した選手は調査対象から外されており、これに該当する選手は全部で12名いたそうなんですが、いったいグループ間差があったのかどうか気になる…(内訳は報告なし)。
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Table 2を基に作成

さて。結果ですが、まず言及すべきにシーズンを通して受けたHead Impact(頭部衝撃)があるかと思います。カラーを装着しなかったグループの<20gの頭部衝撃が統計的に有意(p < 0.05)に多かったことは今後の結果を解釈していく際に留意すべきポイントになるかもしれません。その他のところは、グループ間の差はないですね。
*ちなみにそもそもの加速器計の信頼度の低さはLimitationsのところに言及されています。この点も現時点では調査結果に大きなバイアスを生じさせかねませんよね。

次は肝となる結果、つまり脳の変化はというと、1) カラーをしなかった被験者群でクラスター係数(Cg)、モジュラリティ(Q)、特徴的経路長(L)がシーズン前後で著しく上昇。一方で、2) カラーをした被験者群ではこのような変化は見られなかった、ということが明らかとなりました。ほー。

これを、著者らは「カラーをしない被験者では、Sub-concussive Impactによる軸索損傷が起こったのではないか。 → これにより結合性が低下し、脳内ネットワークを再配置する必要性が出てきたのでは」と考察しています。つまり、CgとQは低下してしまった結合性Lを補うための、やむを得ない変化であると解釈しているわけです。必ずしも高いCgとQは「(良い意味での)高度な変化」を示唆しない、ということですよね。「無理に頑張る必要がある」的な説明。
んで、「カラーをすることで脳のネットワークのreorganizationをする必要性がなくなったため、シーズン前と後で脳は大きく変化しなかった」、つまりカラーはSub-concussive Impactから脳を守る効果があったんではないか、というわけです。

この説明が妥当なのかどうか、少し慎重にはならなきゃいけないだろうなぁと思う反面、豚を使った動物パイロット実験9では「頭部外傷」を生じさせるようなより強い頭部衝撃でも脳損傷の程度がカラーを付けていた場合のほうがより低度で済んだということですから、そのうち、「脳振盪などのmTBIに予防/損傷軽減に効果がある」というような報告が出てくることもあるのかもしれません。Stay Tuned!ですね。

あとは絶対に考慮すべきは安全面ですよね。静脈を圧迫するというカラーをつけてヘルスリスクはないのか?ここまでの研究で悪影響の報告は無いようですが、若い被験者が中心ですし、成人被験者で、なんならコレステロール値も高くて血管健康も必ずしもよくない方の場合はどうなんだろう?とか、自覚はなくとも頚静脈に血栓形成がある方だといよいよ危ないんじゃないか?とか、なんなら血栓形成がある人はナチュラル・カラー効果的なことが起こってるんじゃないか?とか、色々妄想を膨らませられるだけのネタはたっぷり残っています。これらもこれからより長期で、様々な選手層での検証が進めば見えてくるのかなぁ、と思います。

あとは単純につけてみたいなぁ。結構カッコいいし、あんまり邪魔にもならなそうに見えるけど、プレー中このカラー、揺れてブレたりしないんだろうか。仮に効果があると広く認知されたとして、ルールとして、どのスポーツのどの競技レベルならこういったものの装着が許可されるんだろう。例えばラグビーとかは、ダメなんじゃないなぁなんて思うけど。一般に販売されているもので、Q-Collarという商品を見つけたんですが、お値段は$250のところ現在は約$200これはカナダでしか購入できないみたい…。うーん、試してみたい…。

1. Dudley J, Yuan W, Diekfuss J, et al. Altered functional and structural connectomes in female high school soccer athletes after a season of head impact exposure and the effect of a novel collar. Brain Connect. 2020;10(6):292-301. doi: 10.1089/brain.2019.0729.
2. Yeoh TY, Venkatraghavan L, Fisher JA, Meineri M. Internal jugular vein blood flow in the upright position during external compression and increased central venous pressure: an ultrasound study in healthy volunteers. Can J Anaesth. 2017;64(8):854-859. doi: 10.1007/s12630-017-0903-3.
3. Holmlund P, Johansson E, Qvarlander S, et al. Human jugular vein collapse in the upright posture: implications for postural intracranial pressure regulation. Fluids Barriers CNS. 2017;14(1):17. doi: 10.1186/s12987-017-0065-2.
4. Myer GD, Barber Foss K, Thomas S, et al. Altered brain microstructure in association with repetitive subconcussive head impacts and the potential protective effect of jugular vein compression: a longitudinal study of female soccer athletes. Br J Sports Med. 2019;53(24):1539-1551. doi: 10.1136/bjsports-2018-099571.
5. Myer GD, Yuan W, Barber Foss KD, et al. Analysis of head impact exposure and brain microstructure response in a season-long application of a jugular vein compression collar: a prospective, neuroimaging investigation in American football. Br J Sports Med. 2016;50(20):1276-1285. doi: 10.1136/bjsports-2016-096134.
6. Yuan W, Dudley J, Barber Foss KD, Ellis JD, et al. Mild jugular compression collar ameliorated changes in brain activation of working memory after one soccer season in female high school athletes. J Neurotrauma. 2018;35(11):1248-1259. doi: 10.1089/neu.2017.5262.
7. Yuan W, Leach J, Maloney T, et al. Neck collar with mild jugular vein compression ameliorates brain activation changes during a working memory task after a season of high school football. J Neurotrauma. 2017;34(16):2432-2444. doi: 10.1089/neu.2016.4834.
8. Onodera K. Basis of graph theory on brain imagining study. Japan J Physio Psych Psychphysio. 2015;33(3):231-238. doi: 10.5674/jjppp.1510tn.
9. Mannix R, Morriss NJ, Conley GM, et al. Internal jugular vein compression collar mitigates histopathological alterations after closed head rotational head impact in swine: a pilot study. Neuroscience. 2020;437:132-144. doi: 10.1016/j.neuroscience.2020.04.009.

  # by supersy | 2020-12-11 19:16 | Athletic Training

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