アスレティックトレーナーの勤務中の怪我: その実態は?

これも一種の「職業病」、なんでしょうかね。アスレティックトレーナー(AT)はその身体をそれなりに酷使する仕事ではありますから、当然勤務中に「怪我」を負う可能性もゼロではないわけです。

で、気になるのが、どんな怪我が多いのか?どれくらいの頻度で起こるのか?なんですが、こう言った分野の研究やデータは看護師や理学療法士の間ではそれなりに報告としてまとめられているものの、ATのそれは皆無。台湾のAT103人を対象にした論文がひとつある1 程度で、意外にも大人数を対象にした大規模な調査はここまでに一度も行われていないんだそうです。

下の論文2(↓)では「しかもATは例え怪我をしても他人に『報告』を粉うことはせず、自分で何とかしてしまおうという傾向が強い」「だからこそ労働局の統計はこれに限っては当てにならない(=独自の調査をする必要がある)」と書かれていますが、これは確かに自分にも当てはまるので頷いてしまいます。私も恥ずかしいことに仕事をしていて数回身体を傷めました経験がありますが(学生の頃の話です、と言い訳をさせていただきます)、まぁこの怪我だろうな、と自己診断ができてしまうので、医者にかかろうとは(よっぽどのことでなければ)思わないのです。
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データがないなら取りましょう!ということで、BOC-certifiedで現役で働いている10000人のATを対象にアンケートを取った結果をまとめたのがこの論文。2 18.3%にあたる1826人から有効回答があったそうです。18.3%って低いな、と思うかもしれませんが、10000人に回答権を得ていないATが含まれていた可能性はありますし(i.e. 既に引退していた、とか、休職中・転職などで「現役AT」ではなかったなど)、この手の大規模なアンケート調査は一般的に2割強から3割の回答があれば上出来とも言われます。しかもこのアンケートは130問の質問項目があった(=非常に長い、つまり嫌がって回答しない人が多くなる)、とありますから、個人的には1826人というこの数字は決してものすごく悪いものではなかったと感じています。しかし、その分sample biasの可能性は高まります。回答者に回答したいという何らかの強いモチベーションがあった→それは何故か?と考えを巡らせれば…例えば最近大きな怪我をしたことがある人や現在職場環境に不満があってそれを世間に知ってもらいたいと思っている人が積極的に回答を行った可能性、つまり、このアンケートの回答は職業全体のそれをrepresentしきれていない可能性が残ります。実際に、回答をしたATはしなかったATに比べて性別、職歴、居住地域分布は統計的に有意な差はなかったそうですが、年齢が著しく高い(50歳以上が11.4% vs 9.5%, p = 0.02) 兼 大学・高校勤務者が著しく多い(大学勤務 25.6% vs 18.9%; 高校勤務 31.6% vs 26.7%, p < 0.0001)という違いがあったそうです。
今回の論文のデータはAT業界全体を代表するようなデータではない。この点は考慮して結果を解釈しなければいけませんね。

で。カギとなった質問は1) 過去一年以内に勤務中怪我をしたか? 2) もしあった場合、それをどう報告し、 3) どう処置・処理したか?ということだったんですが、結果へ飛びます。
*この研究では1) ちょっとした救急処置以上の処置が必要だった; 2) 通常勤務の妨げになった; もしくは3) 1日以上勤務ができなかったものを「怪我」として報告するよう指示されていたのこと

● 過去一年以内に勤務中の怪我があったか
これには全体の13.5%(95%CI 12.0-15.1%)である247人がyesと回答。怪我をしたAT(n = 247)としなかったAT(n = 1579)を比べると、これらの2グループ間には年齢、職歴、平均勤務時間等に大差はなかったものの、怪我をしたATはより 女性であり(58.7% vs 48.1%, p = 0.002)、高校勤務者である可能性が高く(44.1% vs 34.5%, p = 0.01)、勤務時間にバラつきがある(=一年の間で勤務時間が最も多い月と少ない月の差が週10時間以上ある、77.7% vs 67.6%, p = 0.01)ことが報告されています。

● 受傷率
247人が報告した怪我は全部で419件(一人あたり1.7件)。これはIncident Rateに直すと200,000勤務時間あたり21.6件という数字になるようです…と言われてもなんだかピンときませんが、つまるところ9,259勤務時間あたり1件の怪我が起こる、とも言い換えられますね。…とすると、私が大学で勤務していた経験を元に週80時間勤務x52週とざっくり計算して、端数切捨てで一年間約4,000時間働いていたと仮定すれば、約2.3勤務年毎に一件の怪我が起こっていた、ということになります。ここまで私が現場で働くATとして勤務したのが7年ですから、3件の怪我を受傷していればこの仮説は少なくとも私には成り立ちます。あれ、腰2回、右親指…丁度3件やってるなぁ…。

● 怪我をする職場環境・時期の傾向
怪我は「中・高校」の現場で最も多く起こっており、最も低いのが「クリニック・病院」。このふたつを比較すると、「クリニック・病院」に比べて「中・高校」勤務のATは怪我を約2.5倍起こしやすい(RR 2.45; 95%CI 1.76-3.41)んだそうです(ちなみに大学はRR 1.67; 95%CI 1.18-2.37)。勤務時間が長くなればなるほど、受傷率も上昇する(p = 0.02)そうで、なるほど下のテーブルを見る限りでは8、9、10月と4月の怪我が多く(棒グラフ)、これらの月は勤務時間も長い(折れ線グラフ)です。別の捉え方をすれば、アメリカの学校(中・高校や大学)に勤務をしていればこれらの月は年度初めと年度の終わりで、選手の出入りも激しくバタバタと忙しい時期でもあります。単なる勤労時間に反映されきらない、仕事の濃度というか密度というか、そこらへんも関係があるんでしょうか(「考察」では疲労やバーンアウトの影響があるのではと書かれています)。
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● 怪我の内訳と内容
怪我した部位で多かったトップ3が1) Trunk (30.8%)、2) Lower Extremity (25.9%)、3) Upper Extremity (18.2%)。もう少し細かく関節別に見ていくと、一番多いのは1) (25.9%)、次いで2) 手・指(8.9%)、3) (8.5%)となるようです。種類としてはTraumaticな筋肉・腱・靭帯・関節への怪我が最も多く(43.7%)、怪我のメカニズムは自発的な身体の動きが過半数を占め(63.2%)、次に物(i.e. ボール)や人との物理的な衝突(23.5%)、落下や転倒(3.6%)が挙げられています。自発的な身体の動きとは何ぞや?と思うところですが、これはこのうち23.1%はWater CoolerやIce Chestを持ったり運んだりしている最中のもの、そして12.2%は慢性的な動作の繰り返しで、そして7.0%は患者を動かす際に起きたものなんだそうです。ほうほう…。

● 怪我の処置
怪我をしたATの半数(125/247人、50.6%)が仕事に支障が出たと答えたにも関わらず、そのほとんど(111/125人、88.8%)が仕事を休まず、業務内容を修正(modify)する形で勤務を続行したとのこと。

で、こちらも同様にほぼ半数のAT(137/247人, 55.5%)が何らかの「医療ケア」を受けたそうなんですが、うち、自分で自分を診たのが最も多くて31.2%、自分のかかりつけの医師に診てみらったが30.8%、次いで同僚が23.9%、雇用主である医療従事者が9.7%、そして救急病院に行ったが4.0%だったそうな。

しかーし。実際に労災に報告をしたのはたったの22.7%(56/247人)というのだから驚き。報告を怠った理由としては「自分で何とかできる程度のものだから(71.2%)」、「報告基準を満たしていないと判断したから(20.4%)」、「仕事に悪影響が出ると思ったから(12.6%)」などなどなんだそうですが…すごいですね、実は私、どんな怪我なら報告するべきでどんなものなら報告しなくてもいい、というその基準すら知りません(そういったトレーニングや教育を受けた記憶がありません)。実際のコメントもいくつか紹介されていますが、「I wanted to select the physicians, not the WC coordinator」や「Paperwork sucks. I did not want to use industrial doctors to treat it」という内容のものもあってうむむむむなるほどなぁという感じです。労災が適応されると指定された医師のみしか受診できない。ローカルな医者について色々耳に入ってくる職業柄、あの人に診てもらいたくない・診てもらいたい、というのはどうしてもありますもんね。

この一年間の受傷率が13.5%というのは一般労働者(13.1%3)やPT/OTのそれ(13.5%4)と大差ないらしいんですが、医療のプロである我々が医療のシステムを活用していない(正規ルートで医者にかかっていない、労災にするべき報告していない)というのは見た目以上に多くの問題を含んでいる気がします。自分が使おうと思わないものをどうして人に勧めるのか、とか…。健康を推奨する立場の人間がどうして自分の身体のケアにしっかり時間を取らないのか、とか…。かくいう私もそのタイプの人間なんですけど。

いやいや、とにかくデータとして非常に興味深い論文でした!次はもう少し細かい分布も見てみたいです(中・高校のみ、大学のみ、プロでもNBA vs NFL vs MLBのATのデータ、などなど)。後続研究を待ちます!

1. Ju YY, Cheng HY, Hsieh YJ, Fu LL. Work-related musculoskeletal disorders in athletic trainer. J Occup Rehabil. 2011;21(2):190–198.
2. Kucera KL, Lipscomb HJ, Roos KG, Dement, JM, Hootman JM. Work-related injury and management strategies among certified athletic trainers [published online ahead of print June 13, 2018]. J Athl Train. 2018;53(6). doi: 10.4085/1062-6050-232-17.
3. Fan ZJ, Bonauto DK, Foley MP, Silverstein BA. Underreporting of work-related injury or illness to workers' compensation: individual and industry factors. J Occup Environ Med. 2006;48(9):914–922.
4. Darraugh AR, Huddleston W, King P. Work-related musculoskeletal injuries and disorders among occupational and physical therapists. Am J Occup Ther. 2009;63(3):351–362.

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  # by supersy | 2018-07-12 19:21 | Athletic Training | Comments(0)

完全帰国しました、と、しゃっくりの話。

最終告知です!7月14日(土)のEBP講習があと一週間半後に迫っています。席がまだ若干数残っていますので、興味のある方はぜひ!

今回は基礎レベルの「治療介入編」と(3時間、3.0 EBP CEUs)、臨床応用レベルの「治療アプローチ・AMI編」「治療アプローチ・腱障害編」(各2時間、それぞれ2.0 EBP CEUs)をまとめて一日で開催します。日程と構成は以下の通りです。

<講習日時>
2018年7月14日(土)
9:30am-12:45pm  エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで
           *途中休憩15分含む3時間講習
12:45pm-14:00pm 昼食(各自)
14:00pm-16:00pm エビデンスに基づく治療アプローチ: AMIと抑制解除療法
16:15pm-18:15pm エビデンスに基づく治療アプローチ: 腱障害リハビリ

ちなみに、基礎レベルの講習は「エビデンス(科学的根拠)に基づく…」とかよく耳にするけれど、どういうことか実はよくわからない、今更ヒトにも聞きにくい、という完全初心者さんウェルカムな講習です。午後に行う講習ふたつはどちらも「臨床応用レベル」の講習で、今までの「基礎レベル」の内容から一歩踏み込み、実際に臨床の現場で皆さんがぶつかっていそうな症例についてお話をします。「エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで」講習の事前・同日履修を強くお勧めしますが、必須ではありません。p値や効果量の何たるかがわかっている方であれば問題なく楽しめる内容になっております。

全講習、参加者の資格は問いません。元々ATC資格保持者さんのためにと思って企画した講習でしたが、今までPT、OT、柔道整復・あんま・鍼灸師さん、医師の方や大学教員・研究者さんなど幅広くご参加頂いており、学生さんも大歓迎です!リピーターさんも、リフレッシュにまたという方も結構いらっしゃいます。


<定員> 各講習45名

参加は一番興味のあるコースひとつだけでも、お好きな組み合わせで2つでも、3つ全てでも。お申し込みはGuardians Athletic Training & Therapyのウェブサイト上のこちらから(お手数ですが、複数講習参加する場合はリンク先から各イベントひとつずつお申し込みください)。複数受講される方には一昨年から導入した『セット割引』システムが適応、そして『学生割引』も健在です。

<受講料> 
一般 3時間講習(基礎編) 9,000円; 2時間講習(臨床応用編) 各6,000円
   2講習同時申込で10% off
    (例: 基礎+臨床応用で1,500円引き、臨床応用講習2つで1,200円引き)
   3講習以上同時申込で15% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで3,150円引き)
学生 3時間講習(基礎編) 8,100円 (10% off - 900円引き);
   2時間講習(臨床応用編) 各5,400円 (10% off - 600円引き)
   2講習同時申込で20% off
    (例: 基礎+臨床応用で3,000円引き、臨床応用講習2つで2,400円引き)
   3講習以上同時申込で25% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで5,250円引き)
     *現役大学・専門学校生(国内外不問)さん対象。申込後に学生証の提示が必要です、




で、本題です。そういえば前回の更新で書き忘れたんですけど、完全帰国しました!日本に帰ってきてからはや一か月、イベント盛りだくさんで書きたいことがいっぱいあるんですけど、まずは順番に。

日本に帰国する直前はPRI本部のあるネブラスカはリンカーンにお邪魔していました。一番の目的は初開催のNon-Manual Workshopに参加することだったんですけど(余談ですがこの講習本当に濃く、有益な内容でした、PRC/Tの皆さん一度機会を見て行ったほうが良いです…)、その前日に諸々の打ち合わせも兼ねてぴょこっとPRIに顔を出したら、PRIVYにゲスト出演することになって3本ほど収録してきました。

PRIVYというのはPRIが行っている有料動画配信サービスで、毎月4-6つのペースで動画(20-50分程度)がアップされています。雑誌の定期購読の要領だと思っていただければ。一月あたり$37か、年間$360($84割引)でSubscribeすることが可能です。内容はエクササイズの紹介から、最近PRIが受けた質問に対する回答まで実に様々ですが、ロンのおしゃべりに同席している雰囲気の、インフォーマルさが個人的には大好きです。

ちょっとどんな感じか動画を見てみたい、と言う人は無料視聴用のサンプル動画3本をご覧ください。


今回のトピックは私の「月に一度くらいしゃっくりが出るんですよね。これは『多い』と言われたことがあるんですけど…ロンはしゃっくりをどのようにとらえています?」という質問です。ロンのしゃっくりに対する解釈と対処法についてのお話が聞けます。興味のある方はぜひ!

んで。

このお喋りの後、興味が沸いたのでしゃっくりに関する文献をいくつか読んでみました。分かったことをまとめます。

英語でしゃっくりは広くHiccupsと呼ばれますが、正式な専門用語ではSingultusっていうんですって。これは一般な米国医療従事者でもまず知らない名前だと思う…。定義としては「直後(35ミリ秒後)に声門閉鎖を伴う、リズミカルな横隔膜の痙攣1で、しゃっくりが起こっている最中は呼気筋肉が完全に抑制されてその活動が全く行えないんだそう。しゃっくりが48時間以上続けば「persistent」30日以上続けば「intractable」と医学的に名前がつくんですって。そんなに長く続けば不眠症になり、疲労は蓄積し、食事ができずに体重減少・栄養失調などを起こしかねず、QOLに影響が出ることは明らか。2 うわー想像するだけでもしんどい。

その原因には様々なものが挙げられるのですけど、術前に全身麻酔の処置をしている際や、その間でしゃっくりが出るケースは多いというのは初耳。慢性しゃっくりの既往歴がある患者さんには特に慎重に麻酔を行わないといけないのだとか。他にも、手術中Vagus nerveの損傷やdisturbance、投薬で電解質バランスが乱れたりなどが原因で手術中のしゃっくりが起こったりということもあるらしい。 2

しゃっくりは反射メカニズムによって引き起こされており、
1) Afferent impulsesがVagus nerve、Phrenic nerve、もしくはT6-12の交感神経鎖を通じてHypothalaus (視床下部)、Brainstem (脳幹)、脊髄C3-5にあるHiccup Reflex Centerに送られる
2) Hiccups Reflex Centerがそのメッセージを受け取り、Efferent limbにシグナルを送る
3) Efferent limbであるPhrenic nerveに刺激された横隔膜、Intercostal nerveに刺激された肋間筋、斜角筋とVagal branchに支配された声紋がそれぞれ収縮もしくは閉鎖という反応をする→しゃっくりが起こる、
という出来事が順番に起こって引き起こされる現象なのだそう。何目的の反射なのさ?ってのが気になるところですが、しゃっくりは胎児に頻繁に起こり、子供や成人すると頻度が減ることから「主に胎児用の羊水を飲み込んでしまわないための反射ではないか」と言われてはいます…が、詳しいことはまだまだ分かっていないんだそうな。2

しゃっくりはただの呼吸反射ではない、という文章も印象的で、しゃっくりは咽頭と喉頭にある二つの機能的コンプレックスがReciprocal inhibition (相反抑制)を適切にできなくなったことによって起こるのだと。「二つの機能的コンプレックス」というのは声門閉鎖コンプレックス (glottis closure complex)と吸気コンプレックス (inspiratory complex)というものなんだそうで。2 わーもうこのへん全然聞いたことない名前ばっかり。だから、これらAfferent nerveに圧を与えるような変化(i.e. 腫瘍や妊娠)や炎症などによるirritation(食道炎や喘息など)でしゃっくりが起こる例が多く報告されているというのは至極当然なことなんでしょうね。 しゃっくりの原因として最も多いのは消化器官の疾患、パーキンソン病や多発性硬化症に代表されるような神経疾患、そして胸郭内の疾患らしいのですが(頻繁に起こる慢性しゃっくりは脳幹障害の可能性を示唆している、という衝撃的なタイトルの症例報告もありました3)、他に、代謝系の疾患(i.e. 糖尿病、腎臓疾患)で電解質のバランスが崩れることで起こったり、なんと精神疾患と結びつけられることもあるとのこと。文献にあった表2を抜粋しますが、こんな感じ(↓)。ひゃー長いリスト。前述したように手術や投薬などの「治療」がしゃっくりの原因になることもあるし、しゃっくり患者の「原因」を特定することは非常に難しいのだとか。
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これだけ原因が多岐に渡ればその治療が単純じゃないというのは一目瞭然かと思います。診断にもその治療にも複数の専門家が関わるべきである、というレビュー論文の結論はなかなかに頷けました。2 その他の介入論文を読んだ中ではVagal activityを増やすための手段のひとつとして、Vagus nerveにe-stimで直接刺激してしまえ!というもの4と、いやいや呼吸介入をしてCO2 Retentionを増やせばしゃっくり止まるべ、5という論文が特に面白かったです。前者は少し乱暴な感じがしますが(一時的に止まるだけで、また始まってしまうのでは?)、後者はプラスチック・バッグを抱えて呼吸するだけなのでお金はかからないし自分でできるし、利点は大きくあるように思います。

少し飛躍になるかもしれませんが、これは以前言及した、一般的頸椎痛・腰痛の患者はHypocapniaに陥っている、という話ともつながるので少しゾクゾクしております。しゃっくりが血中CO2濃度を高めることで解消された→しゃっくりは血中CO2濃度が異様に下がったことで起きた可能性がある、と先の研究を解釈すると、実はしゃっくりもHypocapniaが原因のひとつとしてあって、つまりハイパーインフレーション(息を吸い過ぎて胸郭が膨らんでいる)患者に見られる現象なのではないか、ということが言えるんじゃないかと思うんです。そのような患者には(例えばPRIが推奨しているような)息を長く強く吐くような呼吸法を実践することで血中CO2濃度が上がり、しゃっくりが止まる可能性を大いに示唆していると言えます。ひゃー、つながるねー、つながるなー。この論文ロンに送っておこう。

1. Samuels L. Hiccup; a ten year review of anatomy, etiology, and treatment. Can Med Assoc J. 1952;67:315–322.
2. Kohse EK, Hollmann MW, Bardenheuer HJ, Kessler J. Chronic hiccups: an underestimated problem. Anesth Analg. 2017;125(4):1169-1183. doi: 10.1213/ANE.0000000000002289.
3. Shastin D, Nidamanuri P, Nannapaneni R. Recurrent hiccups may signal brainstem pathology and should be investigated. BMJ Case Rep. 2018;pii:bcr-2017-222926. doi: 10.1136/bcr-2017-222926.
4. Petroianu GA. Treatment of hiccup by vagal maneuvers. J Hist Neurosci. 2015;24(2):123-136. doi: 10.1080/0964704X.2014.897133.
5. Obuchi T, Shimamura S, Miyahara N, Fujimura N, Iwasaki A. CO2 retention: the key to stopping hiccups. Clin Respir J. 2018. doi: 10.1111/crj.12910.

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  # by supersy | 2018-07-06 23:20 | PRI | Comments(0)

リンゴと罵声。科学的に検証する、を真面目に考える。

以前「『科学的に証明された』という表現の穴」(2018年3月23日)についてや、「真面目なエビデンスの話」(2018年5月19日)という記事を書きましたが、今回の内容もそれらに繋がっているような気がします。

さて、ツイッターで面白いツイートを発見しました。たぶんこれはいわゆるパクツイというものなんでしょうけれども、元のアカウントが誰だったかを辿っている時間が無いのでこのまま失礼します。


これを見て「はは何これバカっぽい」と嘲笑するのは簡単なんですが、私は「いや、これも科学的検証への第一歩ではあるし、きちんと検証方法を磨けば立派な学会学会誌に発表可能の『研究』になるぞ」と興味深く感じました。ではこのツイートを教材に、「科学的に検証する」という思考プロセスについて書き出してみたいと思います。

●Independent Variables (IVs; 実験条件である独立変数)を明確にする
このツイートのテーマは「声かけの内容」と「食べ物の腐敗」だと思うんです。もう少し具体的に言及すると、元ツイートでは「きれいな言葉」と「罵声」が「リンゴの腐敗に与える影響」を比較して検証しています。

まず定義すべきはIV(= 介入内容、と今回は考えていただいてかまいません)である「きれいな言葉」と「罵声」です。「きれいな言葉」と言われたときに受け手が共通して思い浮かべられるイメージがないといけませんし、「罵声」も然りです。「きれいな言葉」を英語に直訳すると"Beautiful words"ですが、これは日本語でも英語でも非常に曖昧な表現で(i.e. 私の感じる「きれい」と貴方の感じる「きれい」に差が生じるかも)、学術的にも定義されているとは思えません。この場合、「罵声」との対比を生むために、「褒め言葉(praise)」、もう少し詳しく「有声音化された褒め言葉(vocal praise)」という表現に置き換えてみたいと思います(褒め言葉を念じるのではなく、声に出して表現する。という意味を込めて)。

さて、この「褒め言葉(praise)」について先行研究を調べてみましたが、これだけでも一筋縄ではいきません。私がPubMedで5分間を費やしてPraiseについて学べたことを列挙してみます。
- 親に大げさに褒められる(inflated praise)と、子供の自尊心は下がり1、自信があまりない子供を相手にこれをすると自尊心はますます加速をつけて低下していく2。現実味のある誉め言葉が最も効果が高く、褒められた相手は環境への満足度、タスクに対する意欲やプロフェッショナリズムが向上する。3
- 誉め言葉も、人に重点を置いた場合(person-focused; i.e. 『君はよく頑張る子(you were a hard worker)だね』)では、行動やプロセスに重きを置いた場合(process-focused; i.e. 『君はよく頑張ったね(you worked hard)』と比べてより効果が小さいか2、場合によっては悪影響も出てしまう(失敗した際に努力の欠如ではなく才能の欠如を言い訳にする場合がある)4
- 飼い犬は言葉で褒められるよりも撫でられるのがお好き5
*ちなみに、リンゴやその他植物を褒めたり罵倒したりしてその反応を見る、という具体的な先行研究は私は見つけることができませんでした

これを踏まえて、こんな疑問点が浮かんできます。
- 誰が褒める・罵声を言うのか?例えば我々も、「親」や「上司」のような自分に対して一般的に影響力の高い相手から褒められたり罵倒されたりするのと、顔も名前も知らない通りすがりの人に何か声をかけられるのとでは、言葉の重さが変わってきます。「言う」相手がリンゴと全く関係のない第三者なのか、毎日愛を込めて育ててくれたリンゴ農家さんなのかどうかで、リンゴの反応が変わってくる可能性は否定できません。
- 大げさに褒める(i.e. 『美しすぎる!君はリンゴ史上最高のリンゴだ!』)のか、現実的な誉め言葉を選ぶ(i.e. 『その茶色くなってきた肌もかわいいよ』)のか?リンゴそのものを褒める(person-focused; i.e. 『なんて美しい種の形なんだ』『品評会に出せるフォルムだね』)のか、リンゴの行動(process-focused; i.e. 『今日も頑張って光合成をしているね』)を褒めるのか?これらもリンゴの自尊心と行動に影響を与える可能性があります。
- リンゴがより家畜に近いのかニンゲンに近いのか分かりませんが、言葉で褒めることがリンゴ側にとって最も効果的な「褒められた実感」に繋がるのでしょうか?もしかしたらリンゴは撫でられたほうが「褒められた」と実感してくれるかもしれません。

…ですので、1) 褒める人物の定義(同一人物が実験期間中一貫して褒め続けるのが理想的です); 2) 誉め言葉の内容の定義; 3) 撫でる可能性の考慮なども一通り考え、詳細を設定していく必要があります。 「罵声」も同様です。誰が罵倒するのか、何を罵倒するのか。どの程度の頻度で、どの程度の距離から罵倒するのか。てやんでぇべらんめぇ調なのかなにしてくれてまんねん調なのか、男性なのか女性なのか。日本で育ったリンゴが日本語で声をかけられるのと、見知らぬ多言語で声をかけられるのとでどう反応が変わってくるのかも個人的に興味があります。もしどの言語でも同じように「褒められると長持ちする、罵倒されると腐敗が進む」という実証ができれば、次に疑問になってくるのが検者の表情です。もしかしたらリンゴは言葉そのものに対して反応しているというよりは、褒めている・けなしている相手の表情を読み取ってそれに反応しているのかもしれません。その場合、怒った表情で褒めてみたり、笑顔で罵倒したりすると結果は変わってくるのか?後続研究の可能性がどんどん広がっていきますね。

あとは、リンゴの性癖…リンゴがSなのかMなのかにもよりますかね。Mのリンゴならば、罵声されて嬉しく感じてしまい、一段と活き活きしてきてしまう可能性も…。であれば、リンゴをS組とM組にサブグループ分けしてここも別途に二次的分析を行って検証を…(以下自粛)。

●Dependent Variable (DV; 結果となる従属変数)を明確にする
次は、今回の検証対象であるアウトカムも定義しましょう。今回のツイートの写真ではリンゴの状態の変化、中でも「明らかな腐敗」を強調しようとしているように見受けられますが、これもきちんと共通理解を設けなければいけません。変色=腐敗なのか?味の変化か、匂いか、ニンゲンが食べたいと思えるかどうかの感覚(perception)で腐敗度を定義するか?それともリンゴの中に繁殖するカビやバクテリアの数=腐敗の度合い?

これは難しいところですが、今までの研究で食べ物の腐敗がどう定義・検証されてきたかを少し時間をかけて調べる必要があります。あまり奇抜なことをやってしまうと、そのアウトカムそのものの汎用性、臨床応用性が傷つきますので丁寧なコンセプト構築が必要不可欠です。

●DVの計測方法を明確にする
腐敗とは何か、というコンセプトの定義が定まったら、次はその計測方法の決定です。先行研究に基づいて最も妥当性が高く、信頼性がある方法を選ばなくてはなりません。例えば、「ニンゲンが食べたいと感じるかどうか」は単純にランダムに人を呼び、「これ、貴方今食べろって言われたら食べられます?」と聞いてyes/noで返答してもらうだけのdichotomous(二択)にすればいい、シンプルでしょ。…と思うかもしれませんが、これも「食べろって普通に言われたら食べませんけど銃を突き付けられたら食べますかね」みたいなyesとnoの中間の曖昧な返答をどう分類するか、何人にその質問をするのか、何百人という大人数に回答してもらう場合、一番最初の回答者と最後の回答者でリンゴの状態が変わってしまうのであれば、「同じ状況で検証した」とは言えなくなるのではないか。では写真判定をしてもらうほうがいいか、そうするとどんなカメラを使って、どのような角度で照明具合で、誰が写真を撮るのか、など、「決まり」としてあらかじめ設定しなければいけない詳細が山のように出てきます(ああ面倒くさい…ここらへんが一番労力と時間がかかるところです)。

カビやバクテリアの数を検証するとなれば、恐らく染色法(stain)を用いた検証になるのかなと思うのですが(ここらへんは専門分野ではないので間違っていたらごめんなさい)、どういったケミカルを使って何を主にターゲットとした染色をするのか、そして染色の際にリンゴの一部を採取するとしたら、その新たな「傷口」がその後腐敗に与えてしまう影響はあるのかどうかなと、やはり考えなければいけない事柄は多いです。そして、その検証を行う試験者の経験や知識も一定のものでなければなりません(例えば、カビやバクテリアの計測のベテラン専門家さん一人に一貫して実験期間中協力してもらうのが、不慣れな非・専門家が入れ替わり立ち代わりテストするよりも確実そうですが、それは実現可能なのか?など)。

●サンプル対象を明確にする
今回検証するのは「リンゴ」ですが、これは「国産リンゴ」限定でしょうか?出荷地は青森?長野?特定の農家さんが作ったもののみ?それとも海外産も加える?赤リンゴのみ?青りんごも含む?みかんやぶどうはどうします?無農薬のものなのかどうかでも、果物の状態が変わってくるかもしれませんね。先ほど「自尊心が高ければ…低ければ…」という表現もありましたので、可能であれば各リンゴの自尊心もベースライン時に計測できれば(そして両グループ、実験開始時に値が近いことが確認できれば)理想的です。

ツイートではひとつのリンゴを二つに割って検証したようですが、これではあくまでn = 1です。被験者サンプル数(n = リンゴの数)はいくつにしますか?これは、先行研究に基づいた総計学的パワー分析を行って数を決めるのが妥当ですが、求める統計的優位性と効果量を確認するには、いくつリンゴが必要になるのでしょう?

対人研究である場合、年齢、性別、日常的なアクティビティーレベル、既往歴など実に細かな被験者の選択・除外基準 (inclusion/exclusion criteria)が設定されなければいけません。リンゴも同様です。既に傷んでいるリンゴは研究対象から排除するのか?その場合、「傷んでる」かどうかは誰がどう判断するのか?リンゴの直径や重さを測ってサイズも統一するべきか?色(i.e. 一定の赤みに達していないリンゴは除外するなど)は重要要素になるのか?熟し具合はどう定義・判断する?出荷時の梱包状態も考慮するべき?

「実験施設最寄りの青空青果店の店頭に並ぶ青森産の無農薬リンゴを20個使って検証」という風に立地のみの条件に絞ってサンプル対象を限定する(convenience sampling)のはひとつの手ですが、その場合、この実験の普遍性(generalizability)に大きく不信感を持たれることになるでしょう。「ふーん、面白い結果だけど、それはあくまで青空青果の青森産無農薬リンゴを使った場合での話でしょ」「うちの近所の曇り空青果店の長野産の非・無農薬リンゴには当てはまらないかもしれないじゃん」「みかんだったらどうかは全然わからないよね」と言われてしまう、ということです。

ニンゲンに同様の結果が出る、と思い込んでしまうなんてもってのほか。元ツイートを目にして、「やっぱり人間だって罵倒ばかりされたら腐っちゃうよね…」という感想を持つ人は多いのかもしれませんが、リンゴで出た結果がニンゲンでも全く同じように当てはまるに違いない、というのはあまりに大きすぎる話の飛躍です。今回は、あくまでリンゴの話。ニンゲンでの事象が知りたければニンゲンを対象にして実験しなければ無意味です。

●実験手順を明確にする
リンゴさん実験施設到着
 ↓
リンゴさん最終スクリーニング(発送中の傷みなどがありえるため)
最終参加者決定
 ↓
各リンゴを二つに割る
 ↓
実験開始前計測
その後、左右をランダムに「誉め言葉組」か「罵倒組」に分ける
 ↓
介入(一か月褒め続ける or 罵声を浴びせ続ける)
 ↓
実験後計測
 ↓
そのあとスタッフが美味しくいただきました

…という流れが元のツイートからは最も自然かなと思うのですが、ここで注目すべきは「ランダム化 (randomization)」、「盲検法 (blinding)」、「被験者準備 (sample prep)」と「介入期間 (intervention duration)」です。
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二つに割ったリンゴのうち、左右のどちらが「褒め」られ、どちらが「罵倒され」るのかは非常に重要な要素ですので、コンピューターのソフトウェアなどを用いてランダムに決められるべきです。なんでこれが大事なの?と思うかもしれませんが、例えば試験者が意識的・無意識的に状態の良さそうな半分を「誉め言葉組」に入れてしまって結果が左右されたり、リンゴを切る係の人の左手にたまたまバイキンがついていて、左手で持ったリンゴの全ての条件が変わってしまった、などの可能性を除外するために無視できないステップです。

盲検法も同様に重要です。例えばニンゲンに食べらえるか食べられないかを判断してもらって腐敗度を計測する場合、この質問をする相手は「このリンゴはどの組のリンゴなのか(= ここまで褒められてきたのか、罵倒されてきたのか)」を知らない(= blinded to the group assignments)状態で回答してもらうほうが、今のリンゴの状態のみに基づいた、より公平で純粋な意見が聞けるということになります。菌やバクテリアの有無を検証する場合の専門家さんも同様です。一般の人体研究では、被験者にもこの盲検法を用いたりするんですけど(= 被験者自身が自分がどちらのグループに分類されているのか分かっていない状態で実験が進む)、そして、被験者とアウトカム計測者の両方が盲目であることを二重盲検(double-blinding)といい、より崇高な実験手法とされているのですけど、この研究ではさすがにちょっとそれは無理ですかね。

検証開始までのリンゴの準備手順も決めなければいけません。実験開始時に、空気による酸化(腐敗とは違う、と個人的にはとらえています)を防ぐために全てのリンゴを一定濃度の食塩水に等しく浸してからー、とか、へたは取るのか取らないのかとか、そういう手順の統一ことです。二つに割る際に、誰がどう割るのか、人手を使って包丁とまな板で切る場合、左右が均等な大きさであることをどう確認するのか、使う包丁・まな板や手の殺菌はひとつ切ったごとに行うのか、何を使ってどう殺菌するのか、それが本当に効果的な殺菌法と言えるのか、などなど、などなど…。加えて、たまたま「罵倒組」のリンゴの一つに菌が辿りつき、そこから芋づる的に、ぶわーっと「感染」が広がらないためにも、それなりに間隔を置いてリンゴを並べなきゃいけないとか、複数同じ条件の部屋を用意するとか、あれこれ工夫が必要になります。

介入期間も、元ツイートでは一か月になっていますが、果たして一か月がベストなのかは疑問です。一か月は、一般的に実験界ではintermediate(中期)といわれるような長さかと思うのですが、short-term(短期)やlong-term(長期)での影響はどうなのか?もしかしたら、短期では褒められたほうが腐敗が進むけど、2週間を超えたあたりから罵倒組が巻き返してくる、とか、長期で検証したら大差なかった、とか、そういう可能性もありますよね?介入期間内にどれほどの頻度で各アウトカムを測定するのかも大事なところです。

●バイアスを減らす
さぁもうここまで考慮すればもう十分だろう、科学的な検証と胸を張って言えるだろう、と考える方もいるかもしれません。本当にそうでしょうか?他にも実験結果に(うっかり)影響を与えてしまうバイアス要素はないでしょうか?

例えば、カビやバクテリアの繁殖は、一般に温度や湿度に大きな影響を受けます。実験室の温度・湿度は常に一定に保てるような環境を作り、日照などの要素も全てのリンゴにとって一律になるように完璧な環境整備をすることが求められます。実験室に人が不要に出入りすればそれだけで菌の侵入を促しかねませんから、出入りを制限したり、容器に入れて密封する場合はいつ空けるかを限定するなど、管理が必要です。実験環境は完全に無菌状態でなくてもいいと思うのですが、同じレベルの菌環境が実験開始時にあり、実験期間中も外的要素の影響を受けなかったということだけは証明できなければいけないのです。

防音も考慮しなければいけませんね。二つのリンゴ片を並べて片方をなじり、もう片方をべた褒めしても、「リンゴがどちらの声も聞こえてしまう環境」ならば介入のCross-Contaminationが起こっており、本当の意味での対比、比較ができていないことになります。片方に声をかけている際はもう片方にはその音が聞こえない環境づくりが必要です。

他に考慮すべき要素として、元ツイートへのリプライに「罵倒時に唾が飛ぶ→細菌感染」の可能性への指摘がありました。なるほど、何かが飛んできて付着するような状況が無いようにカバー的なもの、ラップのようなものはかけたほうがいいのかも知れません。声の波長や声量も影響があるのでは?という指摘もありました。これらがリンゴの状態に影響をどれほど与えるのかは分かりませんが、確かに考慮してもいい要素のように感じます。全く同じ声の波長で、音量で毎回声掛けをするというのはもはや人間離れした技ですから、その場合、録音した音源を再生するというのが「最も安定した声の提供」ということになるのかもしれません。この場合、前述の「表情」の要素はなくなりますね。


ご察しの通り、まだまだ書こうと思えば延々と書き続けられますが、このへんで今日はやめておきましょう。でも、今回私が思うことは3つです。

1) 一見アホらしいとか非科学的、スピリチュアルに見えるような主張でも、科学的に検証することは十分に可能
2) しかし、良質な研究を遂行しようと思えば、実験を行う前に調べなければいけないことがいっぱいあるし、細部にまで気を配って研究をデザインしなければいけない
3) 研究者さんまじリスペクト

エビデンスなんて嫌いさっ、何の意味もないぜ!という方たちは果たして純粋生粋な研究者さんたちがどれほど膨大な時間と手間をかけて科学的検証を日々行っているのか本当に理解しているのでしょうか。美しい研究はため息が出るほど本当に美しいです…。惚れ惚れします…。

なるほど確かに世に出回っている研究には良質なものもあれば、目も当てられないひどい質のものもあり、研究によって抽出されたエビデンスの解釈は容易ではありません。専門家であるはすの我々も、エビデンスの読み方・使い方を熟知していなければ、騙されてしまう、罠にかかってしまうのも事実です。でもエビデンスを生んでくれる彼らがいなければ、我々クリニシャンの力や世間への説得力は軽く半減しますよ。彼らが遂行、発表してくれたエビデンスを今日も美味しくいただきましょう。もぐもーぐ。
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1. Brummelman E, Nelemans SA, Thomaes S, Orobio de Castro B. When parents' praise inflates, children's self-esteem deflates. Child Dev. 2017;88(6):1799-1809. doi: 10.1111/cdev.12936.
2. Brummelman E, Thomaes S, Overbeek G, Orobio de Castro B, van den Hout MA, Bushman BJ. On feeding those hungry for praise: person praise backfires in children with low self-esteem. J Exp Psychol Gen. 2014;143(1):9-14. doi: 10.1037/a0031917.
3. Sveinsdóttir H, Ragnarsdóttir ED, Blöndal K. Praise matters: the influence of nurse unit managers' praise on nurses' practice, work environment and job satisfaction: a questionnaire study. J Adv Nurs. 2016;72(3):558-568. doi: 10.1111/jan.12849.
4. Reavis RD, Miller SE, Grimes JA, Fomukong ANM. Effort as person-focused praise: "hard worker" has negative effects for adults after a failure. J Genet Psychol. 2018;179(3):117-122. doi: 10.1080/00221325.2018.1441801.
5. Feuerbacher EN, Wynne CD. Shut up and pet me! domestic dogs (canis lupus familiaris) prefer petting to vocal praise in concurrent and single-alternative choice procedures. Behav Processes. 2015;110:47-59. doi: 10.1016/j.beproc.2014.08.019.

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  # by supersy | 2018-06-07 04:30 | Just Thoughts | Comments(2)

Exhausted? Talk Yourself Out of It: 病は気から、疲労も気から?「もうだめだ」のその先へ。

私事なんですが、いよいよテキサスのアパートを引き払ってネブラスカへやってきました。16年間続いたアメリカ生活もいよいよ最後の4日間です。

さて。少し古い(2014年発表)1記事なんですが、最近SNSで見かける機会があって興味を持ったので読んでみました。
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この論文、冒頭がめっちゃ面白いです。Exhaustion(疲労限界、枯渇)という状態が「有酸素運動を続ける身体・生理学的能力が限界にきて、筋肉疲労が訪れた状態」である『生理学的現象』説と、いやいや、Exhaustionというものは「有酸素運動をもうやめよう」と思う運動者本人の意志によってこそ起こるものだ、という『Psychobiological(心理生物学的)モデル』に基づく説と、二種類存在するんだそうです。後者は、そのタスクを遂行するために必要な努力が自分が捧げられる努力量を上回ったとき、もしくはもう努力が最大の限界量に達していると本人が感じていて、タスクの続行が不可能であると判断したときに訪れるのがExhaustionであるという見解らしいです。な、なるほど…。今までは確かに前者のみの認識でしたが…これは頷いてしまう…。
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もし後者の定義も一理あるとしたら、競技者が「限界が近いかも」と感じ始めたときに心理学的な介入でもって「いやいやまだまだ」と思いこませることが可能である→疲労限界状態から脱することも可能なのかもしれません。そういった介入法のひとつである「Self-talk(セルフトーク、自己会話)」を使うことで、高強度のサイクリング運動中の1) 有酸素運動そのもののパフォーマンス(Time-to-Exhaustion Test、TTEテスト); 2) 自覚疲労度(Rated Perceived Exertion、RPE)と表情の変化(Facial Expression of Effort、顔をしかめるなど、辛いという感情表現に関わるもの)にどう変化が生まれるか検証した、というのが今回の実験内容になっています。

んで。

被験者になったのは健康で、(義務ではなく)趣味の一環として定期的に運動をしている("recreationally trained")24人(男15人、女9人、平均24.6±7.5歳)。各テスト法の解説等はここでは割愛しますが(興味のある方は該当論文を各自でご確認ください)、測定機器のカリブレーション法と頻度や、テスト中の試験者の立ち位置、サイクリング中の扇風機の配置ルールなどかなり細かい描写があり、丁寧にデザインされた研究であることが伺えます。つまるところ、流れはこういうことだったみたいです。

Visit #1: 全被験者のPPO、VO2maxのベースライン測定
  ↓
  最低でも72時間空けて
  ↓
Visit #2: 全被験者をTTEテスト(介入なし)、テスト終了後Randomizationをしてグループ分け。コントロール組(男7人、女5人)とSelf-talk組(男8人、女4人)のいずれかに。
  ↓
  最低でも2週間空けて
  ↓
Visit #3: 全被験者再TTEテスト。コントロール組はVisit #2と全く同じ手順で、Self-talk組は事前に各自で決めてあった「4つのSelf-talk Statements」をテスト中に実践。テスト後、Self-talkをする/しないの指示通りにしっかり従ったかを質問形式で確認する(これはあくまで自己申告なので100%真実とは限りませんが、とりあえず本人の努力という見えない部分を計測しようとした努力は認められます)。

この4つのSelf-talk Statementsを選ぶ手順も論文には詳しく書いてあるのですが、ここんとこも面白いです。要約すると、Visit #2のTTEテストが終わってから、Self-talk組に入った被験者は「Visit #2のTTEテスト中に(指示されなくとも自然と)自分で使っていたモチベーションを上げるための最大5つのSelf-talkのフレーズ」と、「過去の文献から抜粋した(有効であると報告されている)既存の12のフレーズ*」を見比べて、「序盤~中盤に使いたいフレーズ2つ(i.e. "feeling good")」と「終盤に使いたいフレーズ2つ(i.e. "push through this")」の合計4つに絞りこみ、Visit #3 TTEテストまでの2週間の間で、各自運動する機会があればこれら4つのフレーズを使う練習をしていたそうなんです。で、満を持してのVisit #3 TTEテストであったと。
*これ、どんなものたちなのか非常に興味があって引用されていた文献にまでさかのぼって調べてみたのですが、具体的にどんなものだったのかはわからずじまいでした。残念…。例には"drive forward"や"you're doing well"などが挙げられています

結果を要約します。

- ベースライン時点でPPO、VO2maxの値のグループ間の差はなし。つまり、実験開始時の両グループの被験者共に最大パワー出力、有酸素運動能力は似たり寄ったりであった、と。
- Visit #3で用いたSelf-talkの使用量は、コントロール組とSelf-talk組で明らかな差があった(p=0.001)。つまり、「介入」の有無が確かに存在したと言える。
- Exhaustionに達した際のRPE、Facial Expression of Effort、心拍数、血液中乳酸濃度はグループ間の差なし(=身体的能力に差が出たわけではない)。
- しかし、「疲れた、もう限界だ」と感じるまでの時間(Time to Exhaustion)には著しい差が存在した。予想通り、というかなんというか、コントロール組のTTEテストパフォーマンスはVisit #2 vs #3で大差がなかった(487±157秒 vs 475±169秒, p>0.05)ものの、Self-talk組はSelf-talkを使用した際に、より長い時間サイクリングを続けることができた(Visit #2: 637±210秒 vs Visit #3: 751±295秒, p<0.05)
- しかしpre-testのパフォーマンスにグループ間で大きな差があったのもまた事実なので、それをcovariateとしてANCOVAを使って分析しなおしてもみたが、やはりSelf-talkの効果はハッキリと認められた(p=0.046)。
- Self-talkをすると毎分ペダル回転数は上がり、労力が上がった際のRPEもより低いまま保たれた。タイトル通り、自らを「いやいや、疲れてなんかいないぜ」と説得する(= talk yourself out of exhaustion)ことが可能、ということが分かったわけである。
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この結果はモロに冒頭の「疲労困憊とは運動者本人の意志によって起こるものだ」という『Psychobiological(心理生物学的)モデル』の考え方を支持する形になりました。でも、私もトレッドミルや外をてけてけ走ったりするので、ここらへんのSelf-talk効果は身をもって体感しています。疲れたなーと思っても次の瞬間にココロがいいところにスポっとハマってしまえば延々と走れてしまう日もあるし、逆に調子よく走っていたつもりでも「ああだめだ」とふと思ってしまうと途端に足が動かなくなったりするので。

精神は肉体を凌駕する、とはよく言ったものです。解剖学とか生理学とかの考えに縛られるとこういった「精神」の影響は忘れてしまいがちになりますが、やはり高いパフォーマンスを生み出すうえで、ココロを整えることがいかに重要かってことですよね…。スポーツ心理学大事…。まぁもちろん、健康な身体だから健康な精神が生まれるという考え方もあるとは思いますけど。ちきんおあえっぐ。

どういうタイミングでどういった内容のSelf-talkが最も効果的なのかという最善の追求の検証など、この研究の応用性は多岐にわたるんじゃないかと思いますねー。やー面白かった!意外とね、この研究の肝って、Self-talk組の被験者たちが、しっかりと自分の意志で好みのフレーズを選び、それを練習・使用したってとこにあるんじゃないかと思うんですよ。私もありますもん、私にだけ効果があるだろうと思えるフレーズたち。後続研究を読むのを楽しみにしています!

1. Blanchfield AW, Hardy J, De Morree HM, Staiano W, Marcora SM. Talking yourself out of exhaustion: the effects of self-talk on endurance performance. Med Sci Sports Exerc. 2014;46(5):998-1007. doi: 10.1249/MSS.0000000000000184.

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  # by supersy | 2018-05-30 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

世界で一番静かな場所に行ってきました: What You See and Hear When You Become Sensory-Deprived

PRIのImpingement and Instabilityという講習を取りにミネソタに行ってきました。講習も講習で非常に実りが多かったのですが、実は今回の旅は、滞在地からほど近いところに位置するOrfield Laboratories(オーフィールド研究所)に行く!という「おまけ」付きでした。

ん、オーフィールド研究所って何かって?実は「地球上最も静かな場所」というギネス記録を持つ場所なのです。興味のある方はこんな記事(日本語)をどうぞ。
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事前に1時間半のツアーを申し込んでおり、友人の吉本さんとふたりで一緒にお邪魔しました(建物の見た目がチョー怪しい!スタイリッシュな研究所をイメージしていたので、着いてびっくりしました)。あっさっそく公式ギネス記録が飾ってある!こんな見た目なんですね…。

気のいいおじさまが色々と施設を案内してくださったのですけど…衝撃的!の一言でした。相当期待していったのですけど、期待以上に楽しかったです。ここね、元々は音楽スタジオだったらしいんです。プリンスやボブ・ディランがここでレコーディングをしたりもしてたんですって。でも今は文字通りLaboratories(研究所)なんです。 でも、音が専門の研究所って、実際なにやってるのさ?って思うでしょ?

例えば…とある冷蔵庫メーカーが「うちの冷蔵庫を『世界一静かな冷蔵庫』として売り出したいんです」と言っているとします。そうすると、実際にこの会社の製品が他の会社のどの冷蔵庫よりも本当に静かなのかという検証をする必要がありますよね。なので、「世界一静かな場所」と言われる無響室に自社製品を含む様々な冷蔵庫をひとつずつ運び込み、電源を入れて、それぞれの製品が出す音(ノイズ)を録音する。そして、一般の方(Sound Juryという言い方をしていました、「音の陪審員」ですか、なるほど)を研究施設に呼んでそれぞれの冷蔵庫を「聞き比べ」てもらい、静かな順にランク付けをしてもらう…。この検証の結果、見事自社製品が「最も静か」とランク付けされれば、正式に「うちの製品は世界一静かなんです」と宣伝できるというわけです。
(しかし興味深いのは、「電化製品は静かすぎるものもそれはそれで嫌われるんですよ…主婦の方なんか、冷蔵庫にしても食器洗浄機にしても、あまりに無音だときちんと動いているのか不安になるみたいで。少し騒音があるくらいが結局好まれるんですよね。掃除機なんかもっと面白くて、音がうるさければうるさいほど、掃除をしている実感が生まれてお客さんの満足度が上がる」というおじさまの言葉…うーん…ノイズって「何かをしている実感」を生むために必要なものでもあるんですよね)

それから、もうひとつ。ハーレー・ダビッドソンのバイクってあるじゃないですか。あのオートバイをヨーロッパに輸出しようってなったときに、ヨーロッパの路上で許される騒音レベル(アメリカのそれよりも厳しい)までエンジン音を下げる必要があったらしいんですね。しかし、ハーレーのエンジン音、あの重低音の三拍子が好きでファンはあれに乗るわけで、単純にボリュームを下げてしまうとせっかくのトレードマークの「らしい音」が失われてしまうかもしれない。そんなわけで、ライダーが運転中に聞いている音を特殊なマイクを使って録音し(これは「世界一静かな場所」ではなく、路上で行ったそうなんですが)、その音を様々な周波数に分解しながら、ハーレーファンを研究所に集めて「聞き比べ」をしてもらい、一体どの周波数のどの音が「ハーレーらしいエンジン音」という実感を作っているのか研究・分析したそう。それでハーレーをハーレーにさせる周波数を特定し、その他の周波数の音を消すことで「騒音レベル」を下げたと。そうして「合法」かつ「ハーレーらしさ」を失わないエンジン音を作ったんだそうな!へーーー!

実際に「録音した音から特定の周波数の音を抽出するスピーカー」とか、「音源とその反響を映像化するプログラム」なんかもツアーで見せてもらえました。す、すごい…。

それから「反響の部屋」も面白かった。一見なんてことないコンクリ張り+金属板をいくつか天上から吊るしている部屋なんですが、長い周波数の音をだし、それが壁や金属板に跳ね返ることで、音の波がお互いをcancelしたり(=音が消えて静かになる)、amplifyしたり(=音が大きくなる)するので、部屋をてくてく歩いていると異様に静かな場所があったり、騒がしい場所があったりするんです。音は波なんだ!ということを実感できる場所でしたね。

そしてツアーの目玉はなんといっても「無響室」!何重にもなる特殊構造でできたこの部屋(↓)は、発される音の全てを天上と壁が吸収してしまうので、音の反響が一切無いのです。おじさまの喋ってくれる声も、おじさまの口からまっすぐ私の耳に届く声のみは普通に聞こえるのですが、壁に反射して入ってくる他の方角からの音が一切ない。聞こえ方があまりに不自然で、非常に違和感があります。
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色々と説明してもらったあとで、「では今からこの部屋に貴方を残して扉を閉め、20分間無音状態を体感してもらいます。ついでに部屋の明かりも消しますか?」と聞かれたので、少し悩んで「では明かりもお願いします」と答え、部屋の照明も消してもらいました。せっかくなので聴覚だけでなく視覚も奪われた状態で私の身体がどう反応するのか感じてみたかったのです。おじさんは出てゆき、扉が閉められて部屋の中は完全に暗闇になります。何も見えません。



その時の20分間の体験を覚えているうちに言葉に残しておきたいと思います。



まず、真っ暗闇、無響空間のはずのその部屋の中で最初に感じたのは意外にも「眩しさ」でした。

床(であるはずの部分)から白い光が放たれているように感じたのです。暗い部屋でその「地面」は煌々とそれはそれは眩しく光っており、目を開けていられないほどでした。しかし、目をつぶってみてもこの光は瞼の裏に張り付いてでもいるかのように私を睨み続けるのです。「これは自分の思い込みが作っている光なのだ」「消せるはずだ」と何度か意識してみたのですが、この電気を消すことはしばらくできませんでした。

次に気になり始めたのは、自分の身体の中の音でした。そうなんです、無響空間では、周りからの音が全く耳に入ってこないので、自分の体内の音が聞こえ始めるのです。首を右に、左に向けると、頸椎のギシギシ軋む音が聞こえてきて自分がとたんに油の切れたドアヒンジになったように感じました。首をひねると同時に複数の箇所がギシギシ、ミシミシいうので、あっこれがOAで、あっちがC1/C2か?身体の動きって複雑な箇所が同時に動いて実現しているんだなー、と、他人ごとのように考えたりしていました。

その次に浮かんできた感情は「うるさいな」でした。地球で最も静かな空間で「うるさい」と感じたなんて、おかしいかもしれません。でも高い周波数の、例えるなら夏場にどこか遠くでセミの大群が一斉に鳴いているような音と、低い周波数の「ぼー」という音が同時に聞こえてきて、それがうるさいなぁと思ったのです。これも先ほどの光同様、「脳が勝手にない音を作り上げているのだ」と言い聞かせて、静かさに集中しようとしてみたのですが、その努力はセミの鳴き声をより大きくしただけでした。この音は、残りの時間ずーっと続きました。

終盤で感じた視覚体験もまた異様でした。前もっておじさまに「purple haze(紫の霞)のようなものが見えたりするからね」と言われていたのですが、本当に紫のモヤが目の前に現れ、上下左右にユラユラ揺れ始めたのです。まさか?と何度も目を凝らしてみたのですが(…という表現はおかしいかもしれません、意識を集中してこのモヤの正体を見つめようとしたのですが)、これはハッキリと紫色でした。なぜ紫なのか、理由は分かりませんが、私の所縁ある団体の象徴カラーが紫なので、あまりの偶然に少し笑ってしまいそうになりました。何も見えない究極の暗闇では紫が見えるんだよと、後でロンに教えてあげなきゃ、と思ったのを覚えています。
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20分は、長いようであっという間でした。部屋を出てから、周りの何気ないノイズが耳に流れてきて、それと共に止まっていた時間がやっと流れ始めたような妙な感覚を覚えました。いやもう、なんと表現したらいいか、とにかく本当に面白かったです。他ではできない感覚欠如体験です。興味のある方、時間のある方は是非この奇妙な研究所に一度足を延ばしてみることをお勧めします。**ツアーと見学は事前申し込み(支払いも含め、2週間前までに)が必要ですのでご注意ください。私は研究所に事前にメールして予約をし、それから電話でカード番号を口頭で伝える形で支払いを済ませました。
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最後におじさまと一緒に写真を撮りました。研究所の所長、Steven Orfield氏とも直接お話することもできて、ほくほくで今テキサスへの帰路についています。はー楽しかった…。「アメリカでやり残したことトップ6」のうちひとつがチェックできました(ちなみにもうひとつの「NYで博物館・美術館巡り」も3月に完遂できたので順調といってもいいでしょう)。残り4つはまた戻ってきたときに。

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  # by supersy | 2018-05-22 21:30 | PRI | Comments(0)

真面目なエビデンスの話。

この業界の「中堅」と呼ばれる年齢になり、辺りを見回してみて、現在私が真剣に懸念していることがあります。

笑われるかもしれません。偉そうにと怒られるかもしれません。しかし、いつか誰かが言わなければいけないことだと思うので(もう私より大きな声で叫ばれている方がいても不思議じゃありませんし、既にいらっしゃるのかもしれません)、ここに書いておきます。


それは「業界内の知識格差が年々広がっている」ということです。

そして、この知識格差は「情報を探す能力の格差」から来ているのでは、と私は推測します。

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こういう時はどうしたらいいんだろう?これはどうしてこうなんだろう?と臨床で感じる疑問の答えを素早く的確に見つける能力が高ければ、じゃあこれは?あれは?と疑問が出てくるスピードも増し、それに比例して「回答された疑問」の数も増えていく。つまり、臨床経験年数を重ねれば重ねるほど知識量が爆発的に増えていくわけです。一方で、疑問が出てきても調べる習慣が欠如していたり、そのやりかたが分からなければ、学校で習った方法しか知らないままできないまま、それ以上知識が増えていくことはありません。学校を卒業したころのままで知識がほぼ止まってしまうことになります。

これが格差の生まれるメカニズムだと思います。


知識は現場で積んでなんぼだと仰る方もいるかもしれません。実践してこそ臨床であると。しかし、私が今回言及しているのは絶対的知識量の差。実践に繋がらない知識は意味がないというのは私も賛同しますが、知っているべき最低ラインの知識すらも持っていない臨床家は思いのほか多いではと感じているのです。私が責任を持ってお話できるのはAT界のことのみですが、私の見立てが正しければ理学療法士、作業療法士、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師でも同様の現象が起こっているのではないでしょうか。


この業界の「正解」は刻一刻と変わるものですし、「10年前」の正解を知っていて、それを「今」実践できることは全く大事ではありません。「今」の正解を「今」実践できることこそに意味があります。情報があふれる現代だからこそ特に、各臨床家が「今」の答えをいち早く選別し、掴む個々の能力の差が今如実に出始めているのかもしれません。

若い世代が賢くてベテランの知識が足りないとか、年齢のことを言っているわけではありません。確かに卒業したばかりの若い子の知識は皆似たり寄ったりで、差がつきにくい分、目立ちにくいことはあるかも知れませんが、医療界の「正解」は毎日ものすごいスピードでアップデートされています。年齢に関係なく、「情報を探す能力」が欠如している臨床家はあっという間には取り残されてしまうというのが現状です。現に、つい先月発表された「National Athletic Trainers’Association Position Statement: Evaluation, Management, and Outcomes of and Return-to-Play Criteria for Overhead Athletes With Superior Labral Anterior-Posterior Injuries」を読まずにO'Brien's Testの陽性を未だに「SLAP損傷あり」と解釈している卒業後一年目ATも全米にかなりの数いることでしょう。逆に情報にハングリーで、誰よりも真摯に学び続けているベテランの大先輩を私は何人も知っています。強調しますが、これは年齢の差によるものではなく、学びに対する姿勢と、その手段の有無の違いではないかと思います。



様々な意見があるでしょうけれど、私はこの業界で最低ラインとして業界全員が持つべき共通理解事項に、真っ先に『正しく「Evidence-Based Practice (EBP、エビデンスに基づく実践)」のコンセプトを理解し、そのやり方を知る』ことを挙げます。正しく遂行されたEBPは患者と臨床家の選択肢を増やし、最善の医療の選択をする上での基礎となる思考システムを構築・提供してくれます。EBPは、我々の臨床と患者の生活を豊かにしてくれるツールであるはずです。

「エビデンスの言いなりになるのはまっぴらだ」とか「エビデンスがあるものは逆に実践する気がしない」という意見を稀に見かけることがありますが、一般の方はともかく、医療を専門とする我々がそんな軽率な発言をしていてはいけません。そういう方は、まず心を一度オープンにして、EBPの本質を学ぶことを強くお勧めします。EBPは貴方に噛みつくようなものでもなければ、貴方の立場を脅かすようなものでも、貴方の選択肢を狭めるものでもない。くどいですが、貴方の思考の幅を広げてくれる道具のひとつなのです。使い方が分かってさえしまえば、実践していて非常に楽しいものであるというのは、私が個人的に大きな大きな太鼓判を押せます。


しかし、気持ちもわかるのです。同情心もあるのです。EBPという概念に全く触れる機会なく学校を卒業した方にとって(そしてそれは本人の努力や実力が反映されたものではなく、完全に「時代」という運による要素によるものでしかないのですから、皆さんのせいではありません。「不運」だったとしか言いようがありません)、EBPは独自で学ぶにはハードルが高く、とっつきにくいコンセプトです。さぁ学びやがれと言われても、どこから始めれば、という気持ちの方もいるでしょう。

教育者の端くれとして、学校を既に卒業をされ、学びの機会に限りがある方にもきちんとEBPとはなんぞやということを学ぶ機会を提供したい、と考えて私が私なりに構成し、何年もかけて作ったのが現在のEBP講習シリーズです。別に私はエビデンスのスペシャリストではないので、講師は別に私でなくても良かったのでしょうけど、それなりに本腰を入れて、EBPをきちんと学んでみたいと思う方を継続的に支援する教育システムが日本にもあってはいいのではないかと思って、こういうシリーズを作るに至りました。

現在定期的にオファーしているのが、
EBP基礎編: スポーツ傷害評価編
EBP基礎編: 治療介入編
EBP基礎編: 予防医学編

の、「基礎から応用まで一気に齧ってみよう」という基礎編3講習と、

EBP臨床応用編: 治療介入 - AMIと抑制解除療法
EBP臨床応用編: 治療介入 - 腱障害とリハビリ

の、「テーマを定めてそのエビデンスを掘り下げ、論議する」という臨床応用編の2講習です。

現在、年内を目途に以下の講習も鋭意作成中です。
EBP臨床応用編: 評価 - ACL損傷評価法
EBP臨床応用編: 評価 - 手首の痛み評価法

いずれは「予防」の臨床応用編も用意できればと思っています。

近日開催予定は以前にもお伝えした通り、

2018年7月14日(土)
9:30am-12:45pm  EBP基礎編 - エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで
            *途中休憩15分含む3時間講習
12:45pm-14:00pm 昼食(各自)
14:00pm-16:00pm EBP臨床応用編 - エビデンスに基づく治療介入: AMIと抑制解除療法
16:15pm-18:15pm EBP臨床応用編 - エビデンスに基づく治療介入: 腱障害リハビリ

のみですが、希望があってそれなりの参加人数が見込めれば他講習も随時オファーできますし、依頼があれば東京外にも伺います。全てのご要望にお応えすることはできないかもしれませんが、興味のある方はとりあえずためらわずに一声おかけください。

結局私の講習の宣伝のようになってしまって申し訳ないのですが、これらは「この場合の正解はこれです、これしかないんです!」と指し示すような講習ではなく、「こういう時に、こういうデータがあるとして、どういう風に考えたらいいと思います?」とエビデンスを発信源として「思考する」練習をする、「情報の吟味をする」練習の講習なのです。私がEBPという概念を学ぶとしたらどういう構成が最適か、自分なりに推敲を重ねて作った内容です。私が知る限り、これだけEBPの基礎理念に重きを置いてデザインされた講習シリーズは他にないのではと思っています。私の知識が足りないだけで、実はそういった講習に溢れていたらズケズケと失礼なことをすみません(その場合はこんなのもあるよーと是非教えて頂けたら嬉しいです、EBPを学びたいんだという方にそういう情報を今後もシェアしていきたいと思っていますので)。EBPが臨床の全てだとは思いませんし、EBPを知っていれば皆一流の臨床家なのかと言われたらそんなことは当然ありません。しかし、最低限の統計学の知識や、エビデンス用語の理解なしにいっぱしの臨床家にはなれないとも思います。こういった講習を通じて少しでもEBPを楽しく実践する方が増えてくれればと思っています…。

*以前にも書きましたが、これらの講習は参加資格は一切設定しておらず、学生さんも大歓迎です。こういった内容を今通っている学校で直接学べるのが一番だとは思いますが、そうでない場合もあるかとは思いますので。EBPを学ぶのに、早すぎるということはないと思います(そして私も長年大学生相手にこれらを教えていたのですから、難しすぎるということもまたありません)。

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  # by supersy | 2018-05-19 18:30 | Just Thoughts | Comments(3)

ストロボ眼鏡を用いた視覚介入で着地メカニクスは変わるのか。

Injury-Induced Neuroplastic Changes: 膝の怪我が脳に与える影響?(2016年1月31日)

以前、整形外科外傷に伴うNeuroplastic change(脳の可塑的変化)と、そのリハビリとしてストロボ眼鏡の可能性があるんじゃないかなんて記事をまとめたんですが、今回はその続編というか、続きとなるCohort Study (↓)1 が発表になったので読んでみます!Leading Authorは前回2 と同じGrooms氏ですね。
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まぁ前置きは前回の記事にも書いたので省くとして、今回の研究の趣旨は「ACL再建手術を受けた患者さんを対象に、Stroboscopic glassesを装着してもらい、stroboscopic visual-feedback disruption (SVFD)を作ることで視覚的フィードバックに頼れない状況を作り出したら、Drop Landingのメカニックスに変化は生まれるか?」ということ。

15人のACL再建手術を受けた患者と、年齢、性別、身長体重に利き手・足、現在のactivity levelと教育レベルがマッチした15人の健康な被験者(多項目!被験者の人数は少なく感じるけど一応統計パワー的に各グループ14人いればいい、という最低値はクリアしているし、ここまで詳細なdemographicsをマッチさせたのはすごいです。でもここまでやるなら、何故効き目は考慮しなかったのか?)を集め(それぞれ男7人、女8人、平均は21.41±2.6歳 vs 23.15±3.48歳)、1) Full vision; 2) low SVFD (不透明100ms vs 透明100ms); 3) high SVFD (不透明250ms vs 透明100ms)の状態で各条件下3回ずつ、「高さ30cmのボックスから飛び降りて、地面に着いた直後に垂直跳び。自己最高の高さの90%の位置にあるターゲットに触れる」…という、つまりかなり強度の高い着地・ジャンプをさせ、その間の下肢のメカニックスを分析したというわけです。わーおもしろそう…。かなり丁寧にデザインされている研究だなぁという印象です。正直言ってこういうバイオメカニックスの分析は詳しくないというか、全く専門ではないんですが、先行研究によれば今回の研究で用いられたバイオメカニックス測定法は信頼性が高く、様々な実験のスタンダートとして使われているプロトコルなんだとか。そういわれると、詳しくない分野は信じるしかないっ。すごいに違いないっ。ちなみにこの実験で使われたストロボ眼鏡はNikeのSPARQ Vapor Strobeブランドだったそうだそうな。これ今買おうとしたらいくらかな、$700-800くらいかな?

計測したアウトカムは
- sagittal-plane knee excursion (着地の瞬間から最大で膝がどれほど屈曲するか)
- frontal-plane knee excursion (着地の瞬間から最大で膝がどれほど内転するか)
- peak knee flexion moment (normalized)
- peak knee abduction moment (normalized)
- peak vertical ground reaxtion force (normalized)
の5項目。で、結果を書いてしまうと…

1. ACL再建患者・健康な被験者に関わらず、SVFDがあると着地メカニズムに変化が生じる。具体的には、膝の内転角度が1.98±1.53°下がり(p = 0.001, Cohen = 0.70, moderate)、peak vertical ground reaction forceが38.72±26.63%body mass上がり(p < 0.001, Cohen = 1.45, large)、peak knee-abduction momentが0.04±0.04Nm/kg上がる(p < 0.001, Cohen = 2.20, large)。着地時に内転を上手く使って力を溜め、それを効率良く利用してジャンプする力に変えられているということでしょうか…。

2. ACL再建患者と健康な被験者を比較すると、ACL再建患者のほうがSVFDをしているときに膝の屈曲角度が平均3.12±3.76°増えた(p = 0.001, Cohen = 0.96, large)、というのが唯一の違いであった。つまり、ACL再建患者はストロボ眼鏡を装着している時の方が、着地の際に膝をco-contractionによって固めて衝撃を(非効率に)真正面から受け止めようとせずに(stiffening strategy)、膝を上手く使って衝撃を吸収できていたということに。
*3.12°程の変化なんて大したことないと思われるかもしれませんが、これはインシーズンのACL予防Neuromuscular Training(3.1°)、plyometrtic-jump training program(3.0°)、landing feedback intervention (3.5°)らによってもたらされる膝の屈曲度の変化とほぼ同じ。低く見積もっても数時間、長く見積もれば数週間分のトレーニング成果が眼鏡をかけただけで得られるという結果になっているというのは、うーむ、興味深いです。

ここからは個人による個人のための見解を書き残しということで、今回の結果をPRI Visionのセオリーになぞらえながら解釈してみたいと思います。ACL再建患者がその回復のプロセスで、痛みの継続的認知や患側の筋力低下、筋神経制御の低下などで今までのパターンがより色濃くなっていたと仮定して、ACL再建患者がより右の主(ともしかしたら副)視野からのフィードバックに頼って自我を成立させていた可能性は大いにあります。しかし今回のこの実験では、ストロボ眼鏡の影響で右視野からの情報が十分に得られなくなり、結果、患者は自分を見失い、「自分はどこにいるのか」「何をしているのか」という自我を新たな感覚情報を元に見つけなおさなければいけなくなったわけです。

この際、1) 事故的に左副視野を発見して従来の感覚依存(= パターン)から出る→骨盤が後傾し、それに伴って股関節屈曲・膝関節屈曲; 2) もしくは視野以外の情報、例えばグラウンディングの感覚によって地面からの知覚刺激で自我の再発見を図ろうと、(両)踵を使っての着地になるようメカニックスが変化し、結果的、(両)股関節・膝関節屈曲が増えた…つまり、今までよりも相対的に左の踵から入ってくる知覚量が増えるので、パターンから出やすくなる、みたいな変化が起こっているんじゃないですかね。だから、パターンにはまっている場合のトレードマークであるlumbar extensionが消えている(= 膝の屈曲が出ている)んじゃないかと。

なので、膝の屈曲角度が増えたという結果は本当に面白いです。多くの患者がストロボ眼鏡の着用でメカニズムは複数あり得るにしても事故的に屈曲を発見し、自分自身をunlockできたことになります。しかしここで本当に興味深いのが、ストロボ眼鏡自体は患者をlateralizeするまでには至らなかった(= frontal planeの変化は見られなかった)ということ。unlockして胸郭前部から空気が抜けても、右の肺と左の肺に空気が自在に出たり入ったりするような状態(= 右にも左にもlateralizeできる選択肢が十分にある状態、つまりPRI neutral)に行くまでには足らなかったということじゃないかと。もちょっとPRI的に分かりやすくいうと、これらの患者さんはAdduction Drop Testは落ちるようになったけど、Hruska Adduction Liftは2-3をふらふらしてるあたりですかね。4-5までいけてない。やっぱり、眼鏡だけじゃいけないんだなぁ。

感覚としては、ストロボ眼鏡って、PRIがパターンにどっぷりハマっている患者の左歯にTongue Depressorかますのと似てるのかもしれませんね。Take the right bite out. 本人の支えになっているものを敢えて取っちゃいましょう、と。今回の検証結果はとても面白いと思うんですけど、ストロボ眼鏡は左の歯にかますTongue Depressorよりは少しギャンブル性が高いんじゃないかって気はしています。なぜかというと、ひとつはお値段がTongue Depressorと比べ物にならないくらい高いこと。二つ目は、左を与えずに右を(完全ではないにせよ)奪ってしまうと、患者がより一生懸命右を探してしまうという、狙いとは真逆のことが起こってしまう可能性があるということ。「右が見えない!」「じゃあ左も見てみよう(→で、結果左見つける)」ならいいんですけど、絶対に「右が見えない!」「もっともっと右をよく見なくっちゃ!(→より右しか見なくなる)」ってなっちゃう患者さんが絶対にいると思うんです。決して少数ではないはずです。患者が持てる知覚全部使って右の限られた視野の中からできる限りの情報を掬い取り、それでなんとか立ったり歩いたり着地しようものなら、本来の患者のパターンはなくなるどころか結果的により強くなって帰ってきてしまうかもしれません。余計治療しにくくになってしまう。

事故狙いのセラピーってのもね、どうかなとは思いますね。$700-800使ってとなると、特に。もう少し治療介入ってのは意図的じゃないと。

PRIのアプローチを使って患者を診る際には、どの感覚刺激を使えば一番成功率が高そうか考えながら介入を決めるので、今のところこのストロボ眼鏡が治療のNo.1ツールになることはないかな、と思ってしまうんですが、sensory lost(感覚的迷子)な状態を作るには面白い道具じゃないかなとは思っています。うーー、やっぱり個人で所有してちょっと遊んでみないと勝手が分からないかなー?ちょっと買ってみちゃうにはなかなかなお値段だからさすがに躊躇するなー、どうしようかなー、むーーーー。

1. Grooms DR, Chaudhari A, Page SJ, Nichols-Larsen DS, Onate JA. Visual-motor control of drop landing after anterior cruciate ligament reconstruction [published online ahead of print on May 11, 2018]. J Athl Train. 2018. doi: 10.4085/1062-6050-178-16.
2. Grooms D, Appelbaum G, Onate J. Neuroplasticity following anterior cruciate ligament injury: a framework for visual-motor training approaches in rehabilitation. J Orthop Sports Phys Ther. 2015;45(5):381-393. doi: 10.2519/jospt.2015.5549.

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  # by supersy | 2018-05-15 13:29 | Athletic Training | Comments(0)

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