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Exhausted? Talk Yourself Out of It: 病は気から、疲労も気から?「もうだめだ」のその先へ。

私事なんですが、いよいよテキサスのアパートを引き払ってネブラスカへやってきました。16年間続いたアメリカ生活もいよいよ最後の4日間です。

さて。少し古い(2014年発表)1記事なんですが、最近SNSで見かける機会があって興味を持ったので読んでみました。
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この論文、冒頭がめっちゃ面白いです。Exhaustion(疲労限界、枯渇)という状態が「有酸素運動を続ける身体・生理学的能力が限界にきて、筋肉疲労が訪れた状態」である『生理学的現象』説と、いやいや、Exhaustionというものは「有酸素運動をもうやめよう」と思う運動者本人の意志によってこそ起こるものだ、という『Psychobiological(心理生物学的)モデル』に基づく説と、二種類存在するんだそうです。後者は、そのタスクを遂行するために必要な努力が自分が捧げられる努力量を上回ったとき、もしくはもう努力が最大の限界量に達していると本人が感じていて、タスクの続行が不可能であると判断したときに訪れるのがExhaustionであるという見解らしいです。な、なるほど…。今までは確かに前者のみの認識でしたが…これは頷いてしまう…。
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もし後者の定義も一理あるとしたら、競技者が「限界が近いかも」と感じ始めたときに心理学的な介入でもって「いやいやまだまだ」と思いこませることが可能である→疲労限界状態から脱することも可能なのかもしれません。そういった介入法のひとつである「Self-talk(セルフトーク、自己会話)」を使うことで、高強度のサイクリング運動中の1) 有酸素運動そのもののパフォーマンス(Time-to-Exhaustion Test、TTEテスト); 2) 自覚疲労度(Rated Perceived Exertion、RPE)と表情の変化(Facial Expression of Effort、顔をしかめるなど、辛いという感情表現に関わるもの)にどう変化が生まれるか検証した、というのが今回の実験内容になっています。

んで。

被験者になったのは健康で、(義務ではなく)趣味の一環として定期的に運動をしている("recreationally trained")24人(男15人、女9人、平均24.6±7.5歳)。各テスト法の解説等はここでは割愛しますが(興味のある方は該当論文を各自でご確認ください)、測定機器のカリブレーション法と頻度や、テスト中の試験者の立ち位置、サイクリング中の扇風機の配置ルールなどかなり細かい描写があり、丁寧にデザインされた研究であることが伺えます。つまるところ、流れはこういうことだったみたいです。

Visit #1: 全被験者のPPO、VO2maxのベースライン測定
  ↓
  最低でも72時間空けて
  ↓
Visit #2: 全被験者をTTEテスト(介入なし)、テスト終了後Randomizationをしてグループ分け。コントロール組(男7人、女5人)とSelf-talk組(男8人、女4人)のいずれかに。
  ↓
  最低でも2週間空けて
  ↓
Visit #3: 全被験者再TTEテスト。コントロール組はVisit #2と全く同じ手順で、Self-talk組は事前に各自で決めてあった「4つのSelf-talk Statements」をテスト中に実践。テスト後、Self-talkをする/しないの指示通りにしっかり従ったかを質問形式で確認する(これはあくまで自己申告なので100%真実とは限りませんが、とりあえず本人の努力という見えない部分を計測しようとした努力は認められます)。

この4つのSelf-talk Statementsを選ぶ手順も論文には詳しく書いてあるのですが、ここんとこも面白いです。要約すると、Visit #2のTTEテストが終わってから、Self-talk組に入った被験者は「Visit #2のTTEテスト中に(指示されなくとも自然と)自分で使っていたモチベーションを上げるための最大5つのSelf-talkのフレーズ」と、「過去の文献から抜粋した(有効であると報告されている)既存の12のフレーズ*」を見比べて、「序盤~中盤に使いたいフレーズ2つ(i.e. "feeling good")」と「終盤に使いたいフレーズ2つ(i.e. "push through this")」の合計4つに絞りこみ、Visit #3 TTEテストまでの2週間の間で、各自運動する機会があればこれら4つのフレーズを使う練習をしていたそうなんです。で、満を持してのVisit #3 TTEテストであったと。
*これ、どんなものたちなのか非常に興味があって引用されていた文献にまでさかのぼって調べてみたのですが、具体的にどんなものだったのかはわからずじまいでした。残念…。例には"drive forward"や"you're doing well"などが挙げられています

結果を要約します。

- ベースライン時点でPPO、VO2maxの値のグループ間の差はなし。つまり、実験開始時の両グループの被験者共に最大パワー出力、有酸素運動能力は似たり寄ったりであった、と。
- Visit #3で用いたSelf-talkの使用量は、コントロール組とSelf-talk組で明らかな差があった(p=0.001)。つまり、「介入」の有無が確かに存在したと言える。
- Exhaustionに達した際のRPE、Facial Expression of Effort、心拍数、血液中乳酸濃度はグループ間の差なし(=身体的能力に差が出たわけではない)。
- しかし、「疲れた、もう限界だ」と感じるまでの時間(Time to Exhaustion)には著しい差が存在した。予想通り、というかなんというか、コントロール組のTTEテストパフォーマンスはVisit #2 vs #3で大差がなかった(487±157秒 vs 475±169秒, p>0.05)ものの、Self-talk組はSelf-talkを使用した際に、より長い時間サイクリングを続けることができた(Visit #2: 637±210秒 vs Visit #3: 751±295秒, p<0.05)
- しかしpre-testのパフォーマンスにグループ間で大きな差があったのもまた事実なので、それをcovariateとしてANCOVAを使って分析しなおしてもみたが、やはりSelf-talkの効果はハッキリと認められた(p=0.046)。
- Self-talkをすると毎分ペダル回転数は上がり、労力が上がった際のRPEもより低いまま保たれた。タイトル通り、自らを「いやいや、疲れてなんかいないぜ」と説得する(= talk yourself out of exhaustion)ことが可能、ということが分かったわけである。
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この結果はモロに冒頭の「疲労困憊とは運動者本人の意志によって起こるものだ」という『Psychobiological(心理生物学的)モデル』の考え方を支持する形になりました。でも、私もトレッドミルや外をてけてけ走ったりするので、ここらへんのSelf-talk効果は身をもって体感しています。疲れたなーと思っても次の瞬間にココロがいいところにスポっとハマってしまえば延々と走れてしまう日もあるし、逆に調子よく走っていたつもりでも「ああだめだ」とふと思ってしまうと途端に足が動かなくなったりするので。

精神は肉体を凌駕する、とはよく言ったものです。解剖学とか生理学とかの考えに縛られるとこういった「精神」の影響は忘れてしまいがちになりますが、やはり高いパフォーマンスを生み出すうえで、ココロを整えることがいかに重要かってことですよね…。スポーツ心理学大事…。まぁもちろん、健康な身体だから健康な精神が生まれるという考え方もあるとは思いますけど。ちきんおあえっぐ。

どういうタイミングでどういった内容のSelf-talkが最も効果的なのかという最善の追求の検証など、この研究の応用性は多岐にわたるんじゃないかと思いますねー。やー面白かった!意外とね、この研究の肝って、Self-talk組の被験者たちが、しっかりと自分の意志で好みのフレーズを選び、それを練習・使用したってとこにあるんじゃないかと思うんですよ。私もありますもん、私にだけ効果があるだろうと思えるフレーズたち。後続研究を読むのを楽しみにしています!

1. Blanchfield AW, Hardy J, De Morree HM, Staiano W, Marcora SM. Talking yourself out of exhaustion: the effects of self-talk on endurance performance. Med Sci Sports Exerc. 2014;46(5):998-1007. doi: 10.1249/MSS.0000000000000184.

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  by supersy | 2018-05-30 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

世界で一番静かな場所に行ってきました: What You See and Hear When You Become Sensory-Deprived

PRIのImpingement and Instabilityという講習を取りにミネソタに行ってきました。講習も講習で非常に実りが多かったのですが、実は今回の旅は、滞在地からほど近いところに位置するOrfield Laboratories(オーフィールド研究所)に行く!という「おまけ」付きでした。

ん、オーフィールド研究所って何かって?実は「地球上最も静かな場所」というギネス記録を持つ場所なのです。興味のある方はこんな記事(日本語)をどうぞ。
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事前に1時間半のツアーを申し込んでおり、友人の吉本さんとふたりで一緒にお邪魔しました(建物の見た目がチョー怪しい!スタイリッシュな研究所をイメージしていたので、着いてびっくりしました)。あっさっそく公式ギネス記録が飾ってある!こんな見た目なんですね…。

気のいいおじさまが色々と施設を案内してくださったのですけど…衝撃的!の一言でした。相当期待していったのですけど、期待以上に楽しかったです。ここね、元々は音楽スタジオだったらしいんです。プリンスやボブ・ディランがここでレコーディングをしたりもしてたんですって。でも今は文字通りLaboratories(研究所)なんです。 でも、音が専門の研究所って、実際なにやってるのさ?って思うでしょ?

例えば…とある冷蔵庫メーカーが「うちの冷蔵庫を『世界一静かな冷蔵庫』として売り出したいんです」と言っているとします。そうすると、実際にこの会社の製品が他の会社のどの冷蔵庫よりも本当に静かなのかという検証をする必要がありますよね。なので、「世界一静かな場所」と言われる無響室に自社製品を含む様々な冷蔵庫をひとつずつ運び込み、電源を入れて、それぞれの製品が出す音(ノイズ)を録音する。そして、一般の方(Sound Juryという言い方をしていました、「音の陪審員」ですか、なるほど)を研究施設に呼んでそれぞれの冷蔵庫を「聞き比べ」てもらい、静かな順にランク付けをしてもらう…。この検証の結果、見事自社製品が「最も静か」とランク付けされれば、正式に「うちの製品は世界一静かなんです」と宣伝できるというわけです。
(しかし興味深いのは、「電化製品は静かすぎるものもそれはそれで嫌われるんですよ…主婦の方なんか、冷蔵庫にしても食器洗浄機にしても、あまりに無音だときちんと動いているのか不安になるみたいで。少し騒音があるくらいが結局好まれるんですよね。掃除機なんかもっと面白くて、音がうるさければうるさいほど、掃除をしている実感が生まれてお客さんの満足度が上がる」というおじさまの言葉…うーん…ノイズって「何かをしている実感」を生むために必要なものでもあるんですよね)

それから、もうひとつ。ハーレー・ダビッドソンのバイクってあるじゃないですか。あのオートバイをヨーロッパに輸出しようってなったときに、ヨーロッパの路上で許される騒音レベル(アメリカのそれよりも厳しい)までエンジン音を下げる必要があったらしいんですね。しかし、ハーレーのエンジン音、あの重低音の三拍子が好きでファンはあれに乗るわけで、単純にボリュームを下げてしまうとせっかくのトレードマークの「らしい音」が失われてしまうかもしれない。そんなわけで、ライダーが運転中に聞いている音を特殊なマイクを使って録音し(これは「世界一静かな場所」ではなく、路上で行ったそうなんですが)、その音を様々な周波数に分解しながら、ハーレーファンを研究所に集めて「聞き比べ」をしてもらい、一体どの周波数のどの音が「ハーレーらしいエンジン音」という実感を作っているのか研究・分析したそう。それでハーレーをハーレーにさせる周波数を特定し、その他の周波数の音を消すことで「騒音レベル」を下げたと。そうして「合法」かつ「ハーレーらしさ」を失わないエンジン音を作ったんだそうな!へーーー!

実際に「録音した音から特定の周波数の音を抽出するスピーカー」とか、「音源とその反響を映像化するプログラム」なんかもツアーで見せてもらえました。す、すごい…。

それから「反響の部屋」も面白かった。一見なんてことないコンクリ張り+金属板をいくつか天上から吊るしている部屋なんですが、長い周波数の音をだし、それが壁や金属板に跳ね返ることで、音の波がお互いをcancelしたり(=音が消えて静かになる)、amplifyしたり(=音が大きくなる)するので、部屋をてくてく歩いていると異様に静かな場所があったり、騒がしい場所があったりするんです。音は波なんだ!ということを実感できる場所でしたね。

そしてツアーの目玉はなんといっても「無響室」!何重にもなる特殊構造でできたこの部屋(↓)は、発される音の全てを天上と壁が吸収してしまうので、音の反響が一切無いのです。おじさまの喋ってくれる声も、おじさまの口からまっすぐ私の耳に届く声のみは普通に聞こえるのですが、壁に反射して入ってくる他の方角からの音が一切ない。聞こえ方があまりに不自然で、非常に違和感があります。
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色々と説明してもらったあとで、「では今からこの部屋に貴方を残して扉を閉め、20分間無音状態を体感してもらいます。ついでに部屋の明かりも消しますか?」と聞かれたので、少し悩んで「では明かりもお願いします」と答え、部屋の照明も消してもらいました。せっかくなので聴覚だけでなく視覚も奪われた状態で私の身体がどう反応するのか感じてみたかったのです。おじさんは出てゆき、扉が閉められて部屋の中は完全に暗闇になります。何も見えません。



その時の20分間の体験を覚えているうちに言葉に残しておきたいと思います。



まず、真っ暗闇、無響空間のはずのその部屋の中で最初に感じたのは意外にも「眩しさ」でした。

床(であるはずの部分)から白い光が放たれているように感じたのです。暗い部屋でその「地面」は煌々とそれはそれは眩しく光っており、目を開けていられないほどでした。しかし、目をつぶってみてもこの光は瞼の裏に張り付いてでもいるかのように私を睨み続けるのです。「これは自分の思い込みが作っている光なのだ」「消せるはずだ」と何度か意識してみたのですが、この電気を消すことはしばらくできませんでした。

次に気になり始めたのは、自分の身体の中の音でした。そうなんです、無響空間では、周りからの音が全く耳に入ってこないので、自分の体内の音が聞こえ始めるのです。首を右に、左に向けると、頸椎のギシギシ軋む音が聞こえてきて自分がとたんに油の切れたドアヒンジになったように感じました。首をひねると同時に複数の箇所がギシギシ、ミシミシいうので、あっこれがOAで、あっちがC1/C2か?身体の動きって複雑な箇所が同時に動いて実現しているんだなー、と、他人ごとのように考えたりしていました。

その次に浮かんできた感情は「うるさいな」でした。地球で最も静かな空間で「うるさい」と感じたなんて、おかしいかもしれません。でも高い周波数の、例えるなら夏場にどこか遠くでセミの大群が一斉に鳴いているような音と、低い周波数の「ぼー」という音が同時に聞こえてきて、それがうるさいなぁと思ったのです。これも先ほどの光同様、「脳が勝手にない音を作り上げているのだ」と言い聞かせて、静かさに集中しようとしてみたのですが、その努力はセミの鳴き声をより大きくしただけでした。この音は、残りの時間ずーっと続きました。

終盤で感じた視覚体験もまた異様でした。前もっておじさまに「purple haze(紫の霞)のようなものが見えたりするからね」と言われていたのですが、本当に紫のモヤが目の前に現れ、上下左右にユラユラ揺れ始めたのです。まさか?と何度も目を凝らしてみたのですが(…という表現はおかしいかもしれません、意識を集中してこのモヤの正体を見つめようとしたのですが)、これはハッキリと紫色でした。なぜ紫なのか、理由は分かりませんが、私の所縁ある団体の象徴カラーが紫なので、あまりの偶然に少し笑ってしまいそうになりました。何も見えない究極の暗闇では紫が見えるんだよと、後でロンに教えてあげなきゃ、と思ったのを覚えています。
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20分は、長いようであっという間でした。部屋を出てから、周りの何気ないノイズが耳に流れてきて、それと共に止まっていた時間がやっと流れ始めたような妙な感覚を覚えました。いやもう、なんと表現したらいいか、とにかく本当に面白かったです。他ではできない感覚欠如体験です。興味のある方、時間のある方は是非この奇妙な研究所に一度足を延ばしてみることをお勧めします。**ツアーと見学は事前申し込み(支払いも含め、2週間前までに)が必要ですのでご注意ください。私は研究所に事前にメールして予約をし、それから電話でカード番号を口頭で伝える形で支払いを済ませました。
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最後におじさまと一緒に写真を撮りました。研究所の所長、Steven Orfield氏とも直接お話することもできて、ほくほくで今テキサスへの帰路についています。はー楽しかった…。「アメリカでやり残したことトップ6」のうちひとつがチェックできました(ちなみにもうひとつの「NYで博物館・美術館巡り」も3月に完遂できたので順調といってもいいでしょう)。残り4つはまた戻ってきたときに。

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  by supersy | 2018-05-22 21:30 | PRI | Comments(0)

真面目なエビデンスの話。

この業界の「中堅」と呼ばれる年齢になり、辺りを見回してみて、現在私が真剣に懸念していることがあります。

笑われるかもしれません。偉そうにと怒られるかもしれません。しかし、いつか誰かが言わなければいけないことだと思うので(もう私より大きな声で叫ばれている方がいても不思議じゃありませんし、既にいらっしゃるのかもしれません)、ここに書いておきます。


それは「業界内の知識格差が年々広がっている」ということです。

そして、この知識格差は「情報を探す能力の格差」から来ているのでは、と私は推測します。

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こういう時はどうしたらいいんだろう?これはどうしてこうなんだろう?と臨床で感じる疑問の答えを素早く的確に見つける能力が高ければ、じゃあこれは?あれは?と疑問が出てくるスピードも増し、それに比例して「回答された疑問」の数も増えていく。つまり、臨床経験年数を重ねれば重ねるほど知識量が爆発的に増えていくわけです。一方で、疑問が出てきても調べる習慣が欠如していたり、そのやりかたが分からなければ、学校で習った方法しか知らないままできないまま、それ以上知識が増えていくことはありません。学校を卒業したころのままで知識がほぼ止まってしまうことになります。

これが格差の生まれるメカニズムだと思います。


知識は現場で積んでなんぼだと仰る方もいるかもしれません。実践してこそ臨床であると。しかし、私が今回言及しているのは絶対的知識量の差。実践に繋がらない知識は意味がないというのは私も賛同しますが、知っているべき最低ラインの知識すらも持っていない臨床家は思いのほか多いではと感じているのです。私が責任を持ってお話できるのはAT界のことのみですが、私の見立てが正しければ理学療法士、作業療法士、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師でも同様の現象が起こっているのではないでしょうか。


この業界の「正解」は刻一刻と変わるものですし、「10年前」の正解を知っていて、それを「今」実践できることは全く大事ではありません。「今」の正解を「今」実践できることこそに意味があります。情報があふれる現代だからこそ特に、各臨床家が「今」の答えをいち早く選別し、掴む個々の能力の差が今如実に出始めているのかもしれません。

若い世代が賢くてベテランの知識が足りないとか、年齢のことを言っているわけではありません。確かに卒業したばかりの若い子の知識は皆似たり寄ったりで、差がつきにくい分、目立ちにくいことはあるかも知れませんが、医療界の「正解」は毎日ものすごいスピードでアップデートされています。年齢に関係なく、「情報を探す能力」が欠如している臨床家はあっという間には取り残されてしまうというのが現状です。現に、つい先月発表された「National Athletic Trainers’Association Position Statement: Evaluation, Management, and Outcomes of and Return-to-Play Criteria for Overhead Athletes With Superior Labral Anterior-Posterior Injuries」を読まずにO'Brien's Testの陽性を未だに「SLAP損傷あり」と解釈している卒業後一年目ATも全米にかなりの数いることでしょう。逆に情報にハングリーで、誰よりも真摯に学び続けているベテランの大先輩を私は何人も知っています。強調しますが、これは年齢の差によるものではなく、学びに対する姿勢と、その手段の有無の違いではないかと思います。



様々な意見があるでしょうけれど、私はこの業界で最低ラインとして業界全員が持つべき共通理解事項に、真っ先に『正しく「Evidence-Based Practice (EBP、エビデンスに基づく実践)」のコンセプトを理解し、そのやり方を知る』ことを挙げます。正しく遂行されたEBPは患者と臨床家の選択肢を増やし、最善の医療の選択をする上での基礎となる思考システムを構築・提供してくれます。EBPは、我々の臨床と患者の生活を豊かにしてくれるツールであるはずです。

「エビデンスの言いなりになるのはまっぴらだ」とか「エビデンスがあるものは逆に実践する気がしない」という意見を稀に見かけることがありますが、一般の方はともかく、医療を専門とする我々がそんな軽率な発言をしていてはいけません。そういう方は、まず心を一度オープンにして、EBPの本質を学ぶことを強くお勧めします。EBPは貴方に噛みつくようなものでもなければ、貴方の立場を脅かすようなものでも、貴方の選択肢を狭めるものでもない。くどいですが、貴方の思考の幅を広げてくれる道具のひとつなのです。使い方が分かってさえしまえば、実践していて非常に楽しいものであるというのは、私が個人的に大きな大きな太鼓判を押せます。


しかし、気持ちもわかるのです。同情心もあるのです。EBPという概念に全く触れる機会なく学校を卒業した方にとって(そしてそれは本人の努力や実力が反映されたものではなく、完全に「時代」という運による要素によるものでしかないのですから、皆さんのせいではありません。「不運」だったとしか言いようがありません)、EBPは独自で学ぶにはハードルが高く、とっつきにくいコンセプトです。さぁ学びやがれと言われても、どこから始めれば、という気持ちの方もいるでしょう。

教育者の端くれとして、学校を既に卒業をされ、学びの機会に限りがある方にもきちんとEBPとはなんぞやということを学ぶ機会を提供したい、と考えて私が私なりに構成し、何年もかけて作ったのが現在のEBP講習シリーズです。別に私はエビデンスのスペシャリストではないので、講師は別に私でなくても良かったのでしょうけど、それなりに本腰を入れて、EBPをきちんと学んでみたいと思う方を継続的に支援する教育システムが日本にもあってはいいのではないかと思って、こういうシリーズを作るに至りました。

現在定期的にオファーしているのが、
EBP基礎編: スポーツ傷害評価編
EBP基礎編: 治療介入編
EBP基礎編: 予防医学編

の、「基礎から応用まで一気に齧ってみよう」という基礎編3講習と、

EBP臨床応用編: 治療介入 - AMIと抑制解除療法
EBP臨床応用編: 治療介入 - 腱障害とリハビリ

の、「テーマを定めてそのエビデンスを掘り下げ、論議する」という臨床応用編の2講習です。

現在、年内を目途に以下の講習も鋭意作成中です。
EBP臨床応用編: 評価 - ACL損傷評価法
EBP臨床応用編: 評価 - 手首の痛み評価法

いずれは「予防」の臨床応用編も用意できればと思っています。

近日開催予定は以前にもお伝えした通り、

2018年7月14日(土)
9:30am-12:45pm  EBP基礎編 - エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで
            *途中休憩15分含む3時間講習
12:45pm-14:00pm 昼食(各自)
14:00pm-16:00pm EBP臨床応用編 - エビデンスに基づく治療介入: AMIと抑制解除療法
16:15pm-18:15pm EBP臨床応用編 - エビデンスに基づく治療介入: 腱障害リハビリ

のみですが、希望があってそれなりの参加人数が見込めれば他講習も随時オファーできますし、依頼があれば東京外にも伺います。全てのご要望にお応えすることはできないかもしれませんが、興味のある方はとりあえずためらわずに一声おかけください。

結局私の講習の宣伝のようになってしまって申し訳ないのですが、これらは「この場合の正解はこれです、これしかないんです!」と指し示すような講習ではなく、「こういう時に、こういうデータがあるとして、どういう風に考えたらいいと思います?」とエビデンスを発信源として「思考する」練習をする、「情報の吟味をする」練習の講習なのです。私がEBPという概念を学ぶとしたらどういう構成が最適か、自分なりに推敲を重ねて作った内容です。私が知る限り、これだけEBPの基礎理念に重きを置いてデザインされた講習シリーズは他にないのではと思っています。私の知識が足りないだけで、実はそういった講習に溢れていたらズケズケと失礼なことをすみません(その場合はこんなのもあるよーと是非教えて頂けたら嬉しいです、EBPを学びたいんだという方にそういう情報を今後もシェアしていきたいと思っていますので)。EBPが臨床の全てだとは思いませんし、EBPを知っていれば皆一流の臨床家なのかと言われたらそんなことは当然ありません。しかし、最低限の統計学の知識や、エビデンス用語の理解なしにいっぱしの臨床家にはなれないとも思います。こういった講習を通じて少しでもEBPを楽しく実践する方が増えてくれればと思っています…。

*以前にも書きましたが、これらの講習は参加資格は一切設定しておらず、学生さんも大歓迎です。こういった内容を今通っている学校で直接学べるのが一番だとは思いますが、そうでない場合もあるかとは思いますので。EBPを学ぶのに、早すぎるということはないと思います(そして私も長年大学生相手にこれらを教えていたのですから、難しすぎるということもまたありません)。

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  by supersy | 2018-05-19 18:30 | Just Thoughts | Comments(3)

ストロボ眼鏡を用いた視覚介入で着地メカニクスは変わるのか。

Injury-Induced Neuroplastic Changes: 膝の怪我が脳に与える影響?(2016年1月31日)

以前、整形外科外傷に伴うNeuroplastic change(脳の可塑的変化)と、そのリハビリとしてストロボ眼鏡の可能性があるんじゃないかなんて記事をまとめたんですが、今回はその続編というか、続きとなるCohort Study (↓)1 が発表になったので読んでみます!Leading Authorは前回2 と同じGrooms氏ですね。
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まぁ前置きは前回の記事にも書いたので省くとして、今回の研究の趣旨は「ACL再建手術を受けた患者さんを対象に、Stroboscopic glassesを装着してもらい、stroboscopic visual-feedback disruption (SVFD)を作ることで視覚的フィードバックに頼れない状況を作り出したら、Drop Landingのメカニックスに変化は生まれるか?」ということ。

15人のACL再建手術を受けた患者と、年齢、性別、身長体重に利き手・足、現在のactivity levelと教育レベルがマッチした15人の健康な被験者(多項目!被験者の人数は少なく感じるけど一応統計パワー的に各グループ14人いればいい、という最低値はクリアしているし、ここまで詳細なdemographicsをマッチさせたのはすごいです。でもここまでやるなら、何故効き目は考慮しなかったのか?)を集め(それぞれ男7人、女8人、平均は21.41±2.6歳 vs 23.15±3.48歳)、1) Full vision; 2) low SVFD (不透明100ms vs 透明100ms); 3) high SVFD (不透明250ms vs 透明100ms)の状態で各条件下3回ずつ、「高さ30cmのボックスから飛び降りて、地面に着いた直後に垂直跳び。自己最高の高さの90%の位置にあるターゲットに触れる」…という、つまりかなり強度の高い着地・ジャンプをさせ、その間の下肢のメカニックスを分析したというわけです。わーおもしろそう…。かなり丁寧にデザインされている研究だなぁという印象です。正直言ってこういうバイオメカニックスの分析は詳しくないというか、全く専門ではないんですが、先行研究によれば今回の研究で用いられたバイオメカニックス測定法は信頼性が高く、様々な実験のスタンダートとして使われているプロトコルなんだとか。そういわれると、詳しくない分野は信じるしかないっ。すごいに違いないっ。ちなみにこの実験で使われたストロボ眼鏡はNikeのSPARQ Vapor Strobeブランドだったそうだそうな。これ今買おうとしたらいくらかな、$700-800くらいかな?

計測したアウトカムは
- sagittal-plane knee excursion (着地の瞬間から最大で膝がどれほど屈曲するか)
- frontal-plane knee excursion (着地の瞬間から最大で膝がどれほど内転するか)
- peak knee flexion moment (normalized)
- peak knee abduction moment (normalized)
- peak vertical ground reaxtion force (normalized)
の5項目。で、結果を書いてしまうと…

1. ACL再建患者・健康な被験者に関わらず、SVFDがあると着地メカニズムに変化が生じる。具体的には、膝の内転角度が1.98±1.53°下がり(p = 0.001, Cohen = 0.70, moderate)、peak vertical ground reaction forceが38.72±26.63%body mass上がり(p < 0.001, Cohen = 1.45, large)、peak knee-abduction momentが0.04±0.04Nm/kg上がる(p < 0.001, Cohen = 2.20, large)。着地時に内転を上手く使って力を溜め、それを効率良く利用してジャンプする力に変えられているということでしょうか…。

2. ACL再建患者と健康な被験者を比較すると、ACL再建患者のほうがSVFDをしているときに膝の屈曲角度が平均3.12±3.76°増えた(p = 0.001, Cohen = 0.96, large)、というのが唯一の違いであった。つまり、ACL再建患者はストロボ眼鏡を装着している時の方が、着地の際に膝をco-contractionによって固めて衝撃を(非効率に)真正面から受け止めようとせずに(stiffening strategy)、膝を上手く使って衝撃を吸収できていたということに。
*3.12°程の変化なんて大したことないと思われるかもしれませんが、これはインシーズンのACL予防Neuromuscular Training(3.1°)、plyometrtic-jump training program(3.0°)、landing feedback intervention (3.5°)らによってもたらされる膝の屈曲度の変化とほぼ同じ。低く見積もっても数時間、長く見積もれば数週間分のトレーニング成果が眼鏡をかけただけで得られるという結果になっているというのは、うーむ、興味深いです。

ここからは個人による個人のための見解を書き残しということで、今回の結果をPRI Visionのセオリーになぞらえながら解釈してみたいと思います。ACL再建患者がその回復のプロセスで、痛みの継続的認知や患側の筋力低下、筋神経制御の低下などで今までのパターンがより色濃くなっていたと仮定して、ACL再建患者がより右の主(ともしかしたら副)視野からのフィードバックに頼って自我を成立させていた可能性は大いにあります。しかし今回のこの実験では、ストロボ眼鏡の影響で右視野からの情報が十分に得られなくなり、結果、患者は自分を見失い、「自分はどこにいるのか」「何をしているのか」という自我を新たな感覚情報を元に見つけなおさなければいけなくなったわけです。

この際、1) 事故的に左副視野を発見して従来の感覚依存(= パターン)から出る→骨盤が後傾し、それに伴って股関節屈曲・膝関節屈曲; 2) もしくは視野以外の情報、例えばグラウンディングの感覚によって地面からの知覚刺激で自我の再発見を図ろうと、(両)踵を使っての着地になるようメカニックスが変化し、結果的、(両)股関節・膝関節屈曲が増えた…つまり、今までよりも相対的に左の踵から入ってくる知覚量が増えるので、パターンから出やすくなる、みたいな変化が起こっているんじゃないですかね。だから、パターンにはまっている場合のトレードマークであるlumbar extensionが消えている(= 膝の屈曲が出ている)んじゃないかと。

なので、膝の屈曲角度が増えたという結果は本当に面白いです。多くの患者がストロボ眼鏡の着用でメカニズムは複数あり得るにしても事故的に屈曲を発見し、自分自身をunlockできたことになります。しかしここで本当に興味深いのが、ストロボ眼鏡自体は患者をlateralizeするまでには至らなかった(= frontal planeの変化は見られなかった)ということ。unlockして胸郭前部から空気が抜けても、右の肺と左の肺に空気が自在に出たり入ったりするような状態(= 右にも左にもlateralizeできる選択肢が十分にある状態、つまりPRI neutral)に行くまでには足らなかったということじゃないかと。もちょっとPRI的に分かりやすくいうと、これらの患者さんはAdduction Drop Testは落ちるようになったけど、Hruska Adduction Liftは2-3をふらふらしてるあたりですかね。4-5までいけてない。やっぱり、眼鏡だけじゃいけないんだなぁ。

感覚としては、ストロボ眼鏡って、PRIがパターンにどっぷりハマっている患者の左歯にTongue Depressorかますのと似てるのかもしれませんね。Take the right bite out. 本人の支えになっているものを敢えて取っちゃいましょう、と。今回の検証結果はとても面白いと思うんですけど、ストロボ眼鏡は左の歯にかますTongue Depressorよりは少しギャンブル性が高いんじゃないかって気はしています。なぜかというと、ひとつはお値段がTongue Depressorと比べ物にならないくらい高いこと。二つ目は、左を与えずに右を(完全ではないにせよ)奪ってしまうと、患者がより一生懸命右を探してしまうという、狙いとは真逆のことが起こってしまう可能性があるということ。「右が見えない!」「じゃあ左も見てみよう(→で、結果左見つける)」ならいいんですけど、絶対に「右が見えない!」「もっともっと右をよく見なくっちゃ!(→より右しか見なくなる)」ってなっちゃう患者さんが絶対にいると思うんです。決して少数ではないはずです。患者が持てる知覚全部使って右の限られた視野の中からできる限りの情報を掬い取り、それでなんとか立ったり歩いたり着地しようものなら、本来の患者のパターンはなくなるどころか結果的により強くなって帰ってきてしまうかもしれません。余計治療しにくくになってしまう。

事故狙いのセラピーってのもね、どうかなとは思いますね。$700-800使ってとなると、特に。もう少し治療介入ってのは意図的じゃないと。

PRIのアプローチを使って患者を診る際には、どの感覚刺激を使えば一番成功率が高そうか考えながら介入を決めるので、今のところこのストロボ眼鏡が治療のNo.1ツールになることはないかな、と思ってしまうんですが、sensory lost(感覚的迷子)な状態を作るには面白い道具じゃないかなとは思っています。うーー、やっぱり個人で所有してちょっと遊んでみないと勝手が分からないかなー?ちょっと買ってみちゃうにはなかなかなお値段だからさすがに躊躇するなー、どうしようかなー、むーーーー。

1. Grooms DR, Chaudhari A, Page SJ, Nichols-Larsen DS, Onate JA. Visual-motor control of drop landing after anterior cruciate ligament reconstruction [published online ahead of print on May 11, 2018]. J Athl Train. 2018. doi: 10.4085/1062-6050-178-16.
2. Grooms D, Appelbaum G, Onate J. Neuroplasticity following anterior cruciate ligament injury: a framework for visual-motor training approaches in rehabilitation. J Orthop Sports Phys Ther. 2015;45(5):381-393. doi: 10.2519/jospt.2015.5549.

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  by supersy | 2018-05-15 13:29 | Athletic Training | Comments(0)

AT学生と、セクハラ。

最初は告知です。

この夏もEBP講習を開催します!今回は基礎レベルの「治療介入編」と(3時間、3.0 EBP CEUs)、臨床応用レベルの「治療アプローチ・AMI編」「治療アプローチ・腱障害編」(各2時間、それぞれ2.0 EBP CEUs)をまとめて一日で開催します。全3講習に出席すればBOC EBP CEUを一気に7.0も獲得可能です。この講習は今まで昨年12月に一回開催したのみなんですが、ATC資格保持のためのCEU Reporting Cycleは皆さん昨年末でリセットされてますので、前回参加した方も再受講すればまた新たなEBP CEUとして申請可能ですよ。日程と構成は以下の通りです。

<講習日時>
2018年7月14日(土)
9:30am-12:45pm  エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで
           *途中休憩15分含む3時間講習
12:45pm-14:00pm 昼食(各自)
14:00pm-16:00pm エビデンスに基づく治療アプローチ: AMIと抑制解除療法
16:15pm-18:15pm エビデンスに基づく治療アプローチ: 腱障害リハビリ

ちなみに、基礎レベルの講習は「エビデンス(科学的根拠)に基づく…」とかよく耳にするけれど、どういうことか実はよくわからない、今更ヒトにも聞きにくい、という完全初心者さんウェルカムな講習で、むしろエビデンスに対して不信感とか苦手意識のある方にこそ来ていただきたいと思っています。エビデンスに基づく実践って思ったほど難しくないや、結構楽しいかも!と思って帰っていただければそんな幸せなことはありません。

午後に行う講習ふたつはどちらも「臨床応用レベル」の講習で、今まで教えてきた「基礎レベル」の講習から一歩踏み込み、p値や効果量というコンセプトを踏まえた上で実際に臨床の現場で皆さんがぶつかっていそうな症例にとびかかり食らいついていきます。「エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで」講習の事前履修を強くお勧めしますが、必須ではありません。p値や効果量の何たるかがわかっている方であれば問題なく楽しめる内容になっております。

AMI編では「Arthrogenic Muscle Inihibition (関節因性筋抑制)って何?」「どんな悪影響がある?」など紐解いた後で、「では、実際に現場ではどうすれば?」というところまで、腱障害編では「腱障害とはなんぞや?」「エキセントリック・エクササイズってそんなに効くの?」という話をしてから、「では、実際に現場で腱障害の患者がいたら、どうすれば?」というところまでをエビデンスを探し、読み解きながら検証します。「エビデンスを探す」部分では、私の愛用するPubMedのちょいとした小技もご紹介できればと思っています。

全講習、参加者の資格は問いません。元々ATC資格保持者さんのためにと思って企画した講習でしたが、今までPT、OT、柔道整復・あんま・鍼灸師さん、医師の方や大学教員・研究者さんなど幅広くご参加頂いています(ありがたやー)。学生さんも大歓迎です!リピーターさんも、リフレッシュにまたという方も結構いらっしゃいます。

<会場>
〒190-0022 東京都立川市錦町3-3-20
   JR中央線立川駅南口より、徒歩13分
   JR南武線西国立駅より、徒歩7分
   多摩モノレール立川南駅より、立川南通りを直進、徒歩12分

<定員> 各講習45名

今回も主催は高橋さんにお願いしています。お申し込みはGuardians Athletic Training & Therapyのウェブサイト上のこちらから。参加は一番興味のあるコースひとつだけでも、お好きな組み合わせで1つや2つでも、3つ全てでももちろん可能です(お手数ですが、複数講習参加する場合は、リンク先から各イベントひとつずつお申し込みください)。複数参加される方には一昨年から導入した『セット割引』システムが適応、そして『学生割引』も健在です。

<受講料> 
一般 3時間講習(基礎編) 9,000円; 2時間講習(臨床応用編) 各6,000円
   2講習同時申込で10% off
    (例: 基礎+臨床応用で1,500円引き、臨床応用講習2つで1,200円引き)
   3講習以上同時申込で15% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで3,150円引き)
学生 3時間講習(基礎編) 8,100円 (10% off - 900円引き);
   2時間講習(臨床応用編) 各5,400円 (10% off - 600円引き)
   2講習同時申込で20% off
    (例: 基礎+臨床応用で3,000円引き、臨床応用講習2つで2,400円引き)
   3講習以上同時申込で25% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで5,250円引き)
     *現役大学・専門学校生(国内外不問)さん対象。申込後に学生証の提示が必要です、

より多くの皆様にお会いできるのを楽しみにしております!セミナーの内容に関して質問があればここのコメントか私に直接ご連絡ください。会場、参加費など運営に関しての質問は高橋まで(tdtakahashi@guardiansatt.com)お願いいたします。



さて、さらっと論文ひとつだけまとめます。

最近世界的にセクハラが話題になっていますが、アスレティックトレーニング(AT)界隈も例外ではありません。もちろんATやAT学生が加害者側に回ってしまう可能性もありますが、2018年現在、現役ATの6割と現役AT学生の7割が女性である1 ことを考えれば、まだまだ男性社会である大学スポーツ・プロスポーツの現場等で実習経験を積む中で、セクハラ被害の場面に出くわすことも少なくないのではと思います。実際に、女性ATの64%が学生時代もしくはプロになってからセクハラに遭ったという報告2 もあるそうです。64%って…高い…。
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…というわけで今回の論文3です。ちなみにセクハラの定義を初めてこの論文でちゃんと呼んだのですけれど、
According to the Office of Civil Rights, sexual harassment prohibited by Title IX can include touching of a sexual nature; making sexual comments, jokes, or gestures; writing graffiti or displaying or distributing sexually explicit drawings, pictures, or written materials; calling students sexually charged names; spreading sexual rumors; rating students on sexual activity or performance; or circulating, showing, or creating e-mails or Web sites of a sexual nature.4
…ということなんだそうです。Sexually charged nameで呼ぶとアウト(でかパイちゃん、とか?)、や、容姿に点数を付けたり、抱きたい女ランキング、なんかをつけるのもアウトってことですね。こうして文字になっていると、おおおなるほど!と新鮮な気がします。

んで。きちんと学生と教育者を対象としたセクハラとジェンダー・センシティビティについてのトレーニングを実施すると、医学部内でのセクハラ、性差別が減る5…というエビデンスがある一方で、医学部と異なり、セクハラに関するトレーニングは必須ではないのが現代のATプログラム教育。今、実際にどのくらいの割合の大学で、どんな媒体でトレーニングが行われているのかという調査は行われたことがないそうです。とりあえず現状を調べてみるべか!というのが本論文の内容。

885人の現役AT学生(男272人、女613人、平均21.33±2.95歳)にアンケート調査を行った結果、セクハラトレーニングを受けたことがあるという学生は全体のたった41.0%だったそうな。割合としては、男子学生のほうが女子学生よりもトレーニングを受けている割合が多かった(46.9% vs 38.5%, p = 0.026)とのこと。それから、トレーニングを受けた学生のほうが圧倒的にセクハラに関するリソースの在処を知っている(91.5% vs 63.6%, p < 0.001)、とも。トレーニングを受けたことがあると答えた学生の半数以上は大学初年度時に受けた(新入生オリエンテーションなど)のだそうで、大学外では「夏の間にしたバイトで」「インターン先で」などの回答が多かったそうな。

これ、まとめると、「女性AT学生は男性AT学生に比べてセクハラ・トレーニングを受けていない場合が多く、トレーニングを受けたことのない学生は、受けたことのある学生よりも6倍、どこにセクハラに関するリソースがあるか分かっていない=実際にセクハラを受けても、どう対処していいかわからない可能性が高い」ということでしょうか。最後は少し飛躍かもしれませんけど。被害者になる可能性が高そうな女性AT学生がトレーニングを十分に受けていないというのは問題であると思います。…とはいえ、我々ATのSpecialtyはセクハラではありませんから、しっかりしたトレーニングを積ませようとなったら、大学内の他の部署に依頼をしたり、外部の専門家を呼ぶなどして積極的に外のチカラを借りる必要がありそうですね。これらのトレーニング対象には学生だけでなく、AT教授やPreceptorも含まれるべきだとも思います。



話が変わるようで続くのですが、実は私先学期、大学内で行われたトランスジェンダーのワークショップ(教授・スタッフ対象で無料)に行ってきました。これがなかなかどうしてかなり目からウロコの内容でして。一番驚いたのは、「Genderは男か女かの二択ではない。Genderにも細かく複数の種類が存在し、それらはスペクトラムとして考えられるべきだ」という考え方です。有名なのがSam Killermann氏が考案した"The Genderbread Person"というこの絵(↓ フリーリソース)。興味のある方は是非リンク先に飛んでじっくり読んでみてください。
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簡単にまとめると、
 - ジェンダーとは、男女「どちらかひとつ」ではなく、多くの場合は一個人の中に男女「どちらも」含まれているものである
 - Gender Identityとは、自分自身の「男性らしさ」「女性らしさ」がどれほどあると認識しているか
 - Gender Expressionは服装や仕草、言葉遣いからどれほど「男性らしさ」「女性らしさ」を表現する傾向にあるか
 - Biological Sexは身体的特徴や声の高低、ホルモンや遺伝子的観点からどれほど「男性らしい」「女性らしい」かを示したもの…で、
 - 性的に惹かれる対象は「男性・男性らしさ」「女性・女性らしさ」なのか
 - 心が惹かれる対象は「男性・男性らしさ」「女性・女性らしさ」なのか
…という風に、なんて言うんでしょうね、各項目に対して自分のプロファイリングができるようになっているんです。これ、自分について考えてみると非常に面白くないですか?例えばBiological Sex...私は身体特徴は100%女性ですけども、身長も高いし肩幅も広いし、顔も中性的とよく言われます(実際に髪を短くしていた大学生まではよく男の子と間違えられていました)。Gender Identifyでいうと特に自分を男らしいとも女らしいとも思わないし、服装や髪形などの自分のプレゼンテーション(Gender Expression)はどちらかというとさっぱり男性よりのことのほうが多いです。目盛で表すとこんな感じですかね。
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皆さんも「自分は男だからどの項目も男性目盛が目いっぱいで、女性目盛はゼロのはずだ!」「私は女だから恋愛対象も性的対象も男性でなければいけないはず」と自分の言い聞かせるように思いこむのではなく、ひとつひとつの項目について改めて見つめ直してみてはいかがでしょうか?いやー今思い返してもあのワークショップは面白かったです。開眼体験っていうんでしょうか。日本でもああいうことをもっと勉強できる機会があるなら是非参加したいです。ちなみに講師の方はどこからどう見ても普通の中年のおじさまだったのですが、元・女性のトランスジェンダーの男性だったというのもびっくりです…。日本にだって、そういう方がまだまだ発言権を得ていないだけで、たくさんいらっしゃると思うです…。

最近、アメリカでも性別の欄に「女性」「男性」のほかに、「トランスジェンダー」や、「どちらもでもない」、「Prefer not to answer (不回答、が一番近い日本語ですかね?)」という選択肢が増えてきました。本来二択でないものに対して二択で迫るからおかしなことになるのです。もう少しin-betweenに対して寛容な社会でも、いいんではないかと思いますね。

1. Winkelmann ZK, Neil ER, Eberman LE. Athletic training students' knowledge of ethical and legal practice with technology and social media. Athl Train Educ J. 2018;13(1):3-11.
2. Shingles RR, Smith Y. Perceptions of sexual harassment in athletic training. Athl Train Educ J. 2008;3(3):102–107.
3. Mansell J, Moffit DM, Russ AC, Thorpe JN. Sexual harassment training and reporting in athletic training students. Athl Train Educ J. 2017;12(1):3–9.
4. Hill C, Kearl H. AAUW Report: crossing the line: sexual harassment at school. http://www.aauw.org/files/2013/02/Crossing-the-Line-Sexual-Harassment-at-School.pdf. Published November 2011. Accessed September 2014.
5. Jacobs CD, Bergen MR, Korn D. Impact of a program to diminish gender insensitivity and sexual harassment at a medical school. Acad Med. 2000;75(5):464–469.

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  by supersy | 2018-05-10 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

AT学生と、SNSの使い方。

これから医療教育界で大きなトレンドになるだろう(もうなっている?)と言われているトピックのひとつに、Health Informaticsがあります。InformaticsとはInformation Engineering (情報エンジニアリング)のことで、私もこの16年間で患者の医療記録の入力、保存、(医療者間での)共有の仕方が著しく変わるのを目の当たりにしてきました。様々な医療情報が電子データ化され、オンラインシステムで管理されるようになっていく中で問題・課題として絶対に話されるべきは、患者情報の保護(=医療情報流出の予防)。そして、Health Informaticsと切っても切り離せない関係にあるのが、本来医療情報とは関りがないはずのツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどのSocial Media (SNS)です。
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日本でも日々こういったSNSで様々な人や議題が「炎上」していたりしますが、ひとたび「投稿」すれば数分のうちに取り返しがつかないくらい拡散("go viral")してしまうのがSNSの恐るべき特徴。その情報の波に乗ってしまうのは未成年の飲酒やコンビニアイス売り場で遊ぶ客の写真だけではありません。実は日米問わず、患者の写真を顔入り、所属入り、場合によっては名前入りで投稿してしまう医療従事者・学生というのは沢山いて、大学教育という観点からも「SNSとの付き合い方をどう教えるべきなのか?」ということが問題になっているのです。

アメリカにはthe Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996 (HIPAA)という法律があり、まぁザックリいうと患者さんの同意書類なしに医療従事者が医療情報を第三者に開示することは違法と定められています(警察による介入や伝染病のアウトブレイク時など、限定的な例外はあるのですけれど)。高校や大学であれば、HIPAAに加えてthe Family Educational Rights and Privacy Act (FERPA)という生徒の教育情報(ワクチン接種歴などの医療情報も含む)保護法という法律も適応されるため、教育機関に勤務するアスレティックトレーニング(AT)と、そこで学ぶAT学生は患者の医療情報の管理について特に徹底していなければならないのです。

一方でHIPAAを一部改正する形で2009年に制定されたのがHealth Information Technology for Economic and Clinical Health (HITECH)という、医療情報の電子化を許す法律。これを期に驚くほどにまぁ一気にElectronic Health Recordが主流になって、2018年の今では手で書類にちまちま記入している医院やクリニックのほうが珍しいほどなのではないでしょうか。…ということは、そうなんです。現役医療従事者、教育者と学生は「電子化された医療記録の持ち運び、持ち出しのしやすさ」と「電子化しようとも変わらずにある守秘義務」とのバランスを、つまり、HITECHとHIPPA/FERPAのバランスをしっかり保たなければならない、という新たなチャレンジが生まれたわけなんです。
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で、この論文1 の冒頭では、こういうこともしっかりATプログラムで教えなければいけないと、教えなくても分かるだろうと思ってはいけないと説かれており、まぁ現状把握をしましょうか、というのが主な検証内容になっています。652人の現役AT学生(平均21.96±8.47歳、男191人、女456人に不明・未回答5人…やっぱり女性が約70%と圧倒的に多いですねー)がアンケートに回答し、その89.8%が現在学士レベルで勉強中だったんだそうです。うち、92.2%がHIPAAに関するトレーニングを受けた経験があったそうなんですが…HIPAA/FERPAのトレーニングは全てのCAATE認定プログラムで義務付けられているはずですから、これが100%でないことに私は少し疑問を感じています。好意的に考えるとすれば、もしかしたらプログラムに入ったばかりで「まだ」トレーニングが行われる前にこのアンケートが実施されたということかな?

んで。びっくりするのが、学生一人当たり、平均でSNSのアカウント(active accounts = 日常的に使っているアカウント)を6.81±2.75も持っていたということ。へ、平均約7つって…多くないですか?特に多かったのはFacebook(93.4%)、Snapchat(85.3%)、Instagram(80.4%)、Twitter(68.4%)、Pinterest(55.1%)、Skype(51.2%)、YouTube(51.2%)、LinkedIn(31.7%)あたり。ああ、まぁSkypeもひとつに数えるのか…。それにしても7つとは…。私はActiveなのは3つくらいですよ…。

細かい回答内容も見ていくと興味深いです。ほとんどの回答者(93.4%)が「自分と患者の顔がフルに写っている写真はSNS上にはない」と答えたものの、1.6%(n = 10)が「SNSで他人がHIPPA違反を犯しているのを発見し、報告をした」、0.2%(n = 1)は「自分がHIPAA違反を犯してしまい、報告された」が回答しているというのは衝撃です。自己報告ですから、実際の違反頻度はもっと高い可能性もあります。加えて、13.8%(n = 87)の学生が「所属プログラム内の人間(学生仲間やスタッフも含む)がSNS上で倫理上の問題のある行動をしている」と思っているんだそうで。

ATプログラムがSNSポリシーを定めていると答えたのはたった24.2%で、ポリシーがあるかどうかも分からないと答えた学生の方が多かった(32.2%)という結果になっています。

この論文の考察にはE-professionalismという言葉が紹介されていて(= "the attitudes and behaviors that reflect through digital media")、もう少しこれに特化したトレーニングなり教育が必要だと論じられています。患者の顔付きの写真投稿は比較的明確にアウトだと分かる常識人がほとんとでしょうけれど、例えば簡単にアクセスできるようになった患者の医療記録そのものの取り扱いもトラブルが後が断たないそうで…。実際にNFL選手の怪我に関連して、ESPNのレポーターが特定選手の医療レコードを無許可で写真に撮り(これがまずアウト↓)、投稿されたあとで、見たくなったんでしょうね、同病院勤務の医療従事者2名がその医療記録に不当にアクセスしたという理由で解雇されたというケースも過去にありました。そうなんです。リークに直接関わったわけではないんですが、興味本位で自分に関係ない患者の医療情報を「見た」ことが問題になったんです。
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ちなみに例えば電子機器が盗まれたりパスワードが流出したりなどして第三者が医療記録にアクセスできるようになってしまった場合も、元の持ち主の管理責任が問われるので、電子記録の保護もしっかりと確立しておく必要と義務があります。例えば、車上荒らしで某NFLチームのATの車からノートパソコンが盗まれてしまった、という過去のケースでは、そのパソコンはパスワードがかかっていた(password-protected)にも関わらず、コード置換されていなかった(unencrypted)という理由でATのHIPAA違反としてみなされうるとされた出来事もありました。悪意のある、意図的な違反でなくても巻き込まれてしまう可能性が十分にあるということです。

HIPAA/FERPAのみならず、医療従事者としてのSocial Media Presenceというものについて、各プログラムがしっかり教える必要があるようですね。これをしてはいけない、あれをしてはいけない、というポリシー作成が必要なだけでなく、プログラム内で違反があった場合、どう報告し、対処するのかというメカニズムを作っておくことも同様に重要だと思います。うちのプログラムでは学生とSNSポリシーの確認は毎年一度行っていますし、誓約書にサインもさせてますけど、だからといって私たちが積極的に彼らのアカウントを監視しているわけではないですから、実行・施行というところもまた難しいですね…。正直そういうところ(SNSアカウント監視)に時間とエネルギーを使いたくない…。怠惰だと思われるかもしれないけど…。うーん難しいところ…。

私の基準はアメリカでも厳しいほうなのかもしれませんが、個人的には学生と教授、学生とPreceptor、学生と患者、医療従事者と患者がSNSで繋がること自体がそもそもアウトだと捉えています(LinkedInは例外かもしれませんが)。在学中に繋がるメリットが分かりません。卒業まで待てよ、と。SNSに写真を載せる場合、学生・医療従事者と選手(athlete)との写真は許容されても、(治療や施術中である・ないに関わらず)患者(patient)との写真は不適切じゃないかとも思います(ちなみにathleteがpatientに変わる瞬間はその人にchief complaint、主訴があるかないかだと定義します)。それが例え「この患者さんが完治して競技復帰します!」という投稿だとしても、その患者さんが何らかの怪我でその医院・クリニックに通っていたという医療情報の流出にはなるわけですから。自分の投稿はもちろん、他人の投稿に対してイイネ!やRT/シェアすることも同様ではないかと。個人的な見解ですけど。

もちろんこれが患者さん側からの発信だったらいいんですよ。「この医院・クリニックにお世話になって競技復帰までこぎつけました!ありがとう!」的な投稿だったら。あくまで医療従事者側からの発信がアウトだと考えているというわけです。患者の許可をもらって投稿しています、というなら、その「許可」は口約束でなく書類に残した方がいいです。訴えられて「そんなこと言った覚えはない」と言われたら負けてライセンス剥奪されますから。

うちのATセンターで意識して禁止しているのが、施設内のスタッフ・学生・患者さんのセルフィ―(自撮り)です。患者さん自身が「膝の怪我しちゃって治療中なう134.png」とセルフィ―をアップするのは上の流れからいったらオッケーじゃないかと考える人も多いかもしれませんが、うっかり背景に他の患者さんが写ってしまう危険性は常にあります。いちいち撮る写真全てを確認するのも我々の通常業務の妨げになりますし、医療施設であるATセンターでの写真・動画撮影は一貫して禁止、というほうが分かりやすくていいのです(Facetimeをする患者さんもいるのですが、これも同じ理由で遠慮していただきたいです)。

…とはいえ、矛盾するようですが、私はプログラムの実習教育コーディネーターとして学生の実習現場に頻繁に足を運び、学生のアクション写真を撮ることに実はプライドをかけています。私自身がATとして活動していた際の写真がほとんど手元になくてちょっと悲しかったという個人的体験から、学生の写真は目いっぱい撮ってあげたいなー、記録に残しておきたいなーと思っているからです。実際にそういう写真をSNSにアップすると、「That's my girl (私の娘最高)!」「Way to go (がんばってるね)!」「We are so proud of you (誇らしいわー)!」と数々の熱いコメントが付いたりと、親元や地元を離れて努力している学生と家族・友人をつなげることができているような気がしており、自己満足なのかもしれませんが、密かに成果を感じています。こういうのが、長い目で見て業界そのもののプロモーションに繋がるんじゃないかという、ちょっといやらしい狙いもあります。しかしプログラムのフェイスブック・アカウントにそれらを投稿する際は個人が特定可能な患者の顔、背番号や身体的特徴(髪型や腕のタトゥーなど)はモザイクをかけるよう、特に特に気を付けています。SNSを建設的な理由で使うことと、患者の医療情報を守ることの両立は絶対に可能なはずで、その線をきちんと引くとはどういうことなのかを各プログラムがしっかり教える必要があるというのは、その通りだなーと思いますね。私自身も学び続けなければいけないトピックかも。

1. Winkelmann ZK, Neil ER, Eberman LE. Athletic training students' knowledge of ethical and legal practice with technology and social media. Athl Train Educ J. 2018;13(1):3-11.

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  by supersy | 2018-05-07 02:40 | Athletic Training | Comments(0)

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