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Nothing will ever be "scientifically proven": 一流の人間が「科学的に証明された」という表現を嫌う理由。

SNSをやっていると変な人もいっぱい見かけますが(笑)、おっ、この人は良質な情報を、丁寧に言葉を選んで発信しているなぁ、プロとして見習いたいなぁ、と感じる嬉しい出会いがあることも多々あります(そういう方を私が一方的に知って喜んでいるだけなので、「出会い」という表現は大げさかもしれませんが)。

以前『女性医師 vs 男性医師?「死にたくなければ女医を選べ」は本当なのか』という記事でその論文について書かせてもらった津川友介さんという現UCLA大学助教授さんがいらっしゃるのですが、その方が4月に「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」というタイトルの本を出版する、という情報をツイッターで目にしました。津川先生は(前述のとおり一方的にですが)「良質な情報を丁寧に発信される方」だと見知っていたので、あらあら是非この本を手に取ってみたいわ、と思った反面、そのタイトルには少し引っ掛かるものを感じたのも事実です。率直に言ってしまうと「世界一シンプル」や「究極」はともかく、「科学的に証明された」という部分が、良識のある方が選んだにしてはあまりにキャッチーな誇張を含む表現じゃないかと感じたのです。しかし、先生の一連のツイートを見てなるほどねーと納得しました。




ちょっとつらつらと思ったことを書きますね。

「科学的に証明された事実」というのは「AはBである(A equals B)」とか、「AをすればBが起こる(A causes B)」とか、ちょっとやそっとのvariable(環境、状況付随する不確定要素)をいじってもびくともしない、絶対的に普遍な事柄(= The Reality)のことを指します。つまり、「AをすればBが起こる」という文章には「Aをすれば(いつなんどきも、誰が対象でも、どんな状況でも例外なく絶対に)Bが起こる」という隠された言葉たちが潜んでいるんです。見ていただければわかる通り、これらは非常に強い表現で、一切の限定性を許容しません。

はっきり言って、ここまで強い口調で断定できる事実なんてそうそうないんですよ。

もちろんこの多少のことではビクともしない「普遍的事実」を追いかけて、それをなんとか「証明」しようと研究者たちは日々努力を重ねているわけですが、研究で導き出せるのは限定的な関係性でしかありません。どんなに丁寧に研究をデザイン・実行しても、ひとつの研究で得られるのは「この環境、こういう被験者でこういう条件で実験を行ってみたらAがBを起こしました」という部分的な結論のみなんです。

例えば「平均年齢30.3歳の男性被験者200人を集めてAをやってみたらBになりました」という研究を受けて「へー、AをしたらBになるということが証明されたのか」という結論を出してしまうのは飛躍がすぎる考えで、これはOvergeneralization (過剰一般化)と呼ばれます。だってこの研究は被験者を女性に変えても同じ結果が得られるか、とか、被験者の年齢が50歳の場合はどうなんだ、とか、そんな多角的な検証を含んでいないからです。この研究が提供してくれるのはあくまで「snap shop(その一瞬、その場にいるメンツでぱちりと撮っただけの一枚の写真)」で、いつなんどき誰にでも当てはまる「普遍的な事実」は証明されきれていないのです。この非普遍性をより正確に表現しようと思ったら「AをしたらBになるということが報告(reported/documented)された」「可能性が示された(indicated)/示唆された(suggested)」という言い回しがより適切ですし、実際に論文などを読んでいて先行研究を振り返るような描写がある際にはこういう動詞しか使われません。

もうひとつ例を挙げます。例えば例えば、「ゴハンを食べたらウンチが出る」というのは極めて普遍的な事実で、科学的証明はきっと簡単だろうと思うでしょう?いえいえ、そんなことはないんです。実際にこの仮説を検証しようと思ったら、ありとあらゆる年齢層、性別、文化的背景の被験者を世界中から集めてゴハンを食べてもらって、実際にウンチが出るかどうかデータを取らなければいけません。中には深刻な腸梗塞を患っていて食べても食べてもウンチが出ません、という患者さんもいるでしょうし、逆に「私はゴハン食べなかったけどスムージー飲んだだけでウンチ出たわよ」って被験者さんもいるでしょう。そうなるともう「ゴハンを食べたらウンチが出る」という「絶対普遍的(であるはずの)事実」はアッという間に崩れてしまいますし、そもそも検証を行う前に何を「ゴハン」と定義すべきか(固形物限定なのか、飲み物の形態でもいいのか…)という用語の定義、コンセプトの共通理解も必要になってきますし、便秘気味かもしれない人も考慮して、「ゴハンを食べてからウンチが出るか確認するまでの期間は2日間と定義する」とか、色々と作らなければいけない約束事もあります。その場合、2.1日後に出たウンチはウンチと認められないわけ?と憤慨する人もいるでしょう。…ね、「事実」を科学的に検証、証明するって思った以上に骨の折れる、厄介なことでしょう?
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ドットアートっていうのがありますよね。ひとつひとつの「点」をキャンバスに落とすことで大きな像を作るという。研究者が追いかける「普遍的事実」が全体像だとしたら、一つの研究はそれに貢献するかもしれない(しないかもしれない)一つの点に過ぎません。「像」を完成させるのは、何千、何万人の研究者が何百年という時間をかけてポチポチポチと点を描き足していく必要があり、まぁそれはそれは気の遠くなるような作業なんです。研究者さんたちの気の長さには心から感服します…(ここらへんが私が研究者に向かない理由のひとつです)。

良識のある専門家は、「AをしさえすればBになる」と「事実」として何かを断言することがどれだけ難しいか知っています。今まで研究者が丁寧に積み重ねてきてくれた「点」に最大限の敬意を払うためにも、誇張を含む言葉を使わず「AがBということは有り得ますが場合によってはCという可能性もありまして…ここまでは報告されているのですが、ここから先はこういった検証をしてみないことには…」と言葉を選びながら丁寧に丁寧に表現するのが普通です。しかし世間一般の多くの人が知りたがるのはやはり「断定された事実」…つまり、結局全体像はなんなのよってところなのです。ウン時間寝れば長生きできる!とか、これさえ食べれば痩せる!とか、そういう無責任でテキトーで、解釈に難しくなくインパクトのある文句に目と興味を惹かれてしまうのです。ここにギャップが生まれるわけです。

普通に発信していては、この情報が一番届いて欲しいPopulationに情報が辿りつかない。ここで敢えて今回のキャッチーなタイトルを被せてきたのが編集さんのプロのマーケティング力ってやつなのかもしれません。津川先生自身もこの試みを「社会実験」と呼び、「正しい内容の本が軽いタイトルで売れるようになれは、それはそれで良いのかな」と仰っています。確かに、手に取らせたらあとはこっちのもん、ってところはありますよね。そこで初めて内容で勝負できる。逆に、手に取ってもらえなければ何もできない。私も今回のこの「社会実験」の結果に非常に興味があるので、果たしてこの本がどれだけ世間の心を掴むこととができるのか?わくわくしながら動向を見守りたいと思っています。

(あ、もちろん本のほうも帰国したら是非実際に読んでみたいと思ってます!)

ちなみに非医療従事者の方向けの「医療情報の読み方」で私が何かささやかでもアドバイスできることがあるとしたら、「文献引用表記の無い情報はまず読む価値がない」ということです。引用がある=信頼に足る情報であるとは限りませんが、引用がない=信頼に足らない、という公式はほぼ間違いなく全ての医療情報に当てはまることだと思います。専門家が書く文章はどんな対象に書かれたものであっても(専門家相手のカクカクの文章でも、一般の人相手のカジュアルな文章でも)必ず文献引用を伴わないといけません。それが丁寧に一つの点を置いてくれた研究者への最低限の礼儀ってものです。その礼儀の心もない方がまともなリソースを使ってまともな文章を書くとは思えないのです。

それから、本当に文章を書くのが上手な方は、文章のどの部分が誰の研究からのデータで、どこまでがその研究者さんの解釈で、どこからが著者独自の見解なのか、そしてどこからが筆者の(根拠に基づかない)個人的な意見なのか、はっきり区別して書いています。ここが曖昧な文章も、やはり怪しいと思ってください。

世間の皆様をがっかりさせるつもりはないのですが、世の中の殆どの事柄に対する答えは「It depends (時と場合による)」。真実とは「AはBだ」のような短絡的で断言可能なものでなく、「この場合はAに、あの場合ではBに、そして例外的にこういう状況ではCにもなったりします」という不格好で含みを持たせたものであるほうが圧倒的に多いのです。この曖昧さを少し気持ちが悪くても、仕方ねーなーと受け入れる心をお持ちください。情報の受け手である貴方が自らの責任で情報を吟味し、考え、それぞれの判断を下す手間をどうか面倒くさいと思わないでください。皆様自信の健康に関わることならば尚更です。個人的な意見とお願いではありますが。



ちなみに私も今回のブログのタイトルで少し「実験」をしています。私の仮説は以下の通りです(笑)。

1) 英語で始まるタイトルにしておくと、「お前絶対読んでないだろ!」と突っ込みたくなるアメリカ人の友達が絶対に一人はFacebookでイイネをしてくる。
**ちなみに私の知り合いでGoogle翻訳を駆使したりして、日本語で書いてあるこのブログを無理矢理読むツワモノもいないことはないのですが

2) 「一流の人間が~」などのチープな煽り文句を使うと、本当に一流の人間は「じゃあ自分ならきっともうやっていることだろう」と判断してこのブログを読まない。よって、このブログ記事に辿りつく人間の殆どが一流になることを夢見る二流三流の人間である。
**これは誰かを侮辱する意図はないので読み流してください…でもこんな長ったらしい文章を最後まで読んでくださった皆様は間違いなく超一流であることでしょう。ありがとうございます。

さぁ、マーケティングのセンスが皆無の私ですけど、この狙い、当たりますかね?

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  by supersy | 2018-03-23 22:00 | Just Thoughts | Comments(11)

"There's no such thing as an ITB Tightness"

学部生のころ、先生や教科書を疑うという思考が皆目無かったもので、『ITB (Iliotibial Band = 腸脛靱帯) Tightness』はこういう障害を引き起こす、とか、『ITB Tightness』の有無はこうやってテストするんだ、と習ったときには「へぇーそうなんだ!」と素直に夢中でノートを取っていました。

しかし大学院に行って献体解剖の授業を取った時に衝撃を受けたんです。大腿部を開く日に、TFL/大殿筋からGerdy's tubに向かって大腿部外側に沿って走るスジのような帯状の組織(= ITB)が見えるんだと信じて疑っていなかったのですが、私の目に実際に飛び込んできたのは大腿部の前・外側・後部を丸ごと包み込むような様々な走行の繊維からなる大きな強度の強い膜状(membrane)の組織…つまり、Fascia Lataでした(↓)。ナニコレ、大腿四頭筋やハムストリングにも伸びてるじゃん!全然独立した組織じゃないじゃん!大腿外側に沿った単独の帯なんてないじゃん!「大腿膜」に完全に飲み込まれてるんじゃん!とショックを受けて、思わず先生に、「If this is the so-called IT Band...then there's no such thing as an IT Band? (これがIT Bandだとしたら…IT Bandってものは…存在しないってことですか?)」と言ったら「I agree with you (僕もそう思うよ)」とあっけらかんと返されて、えええ!とまた驚いたりしたんでした。

*Fascia Lata、日本語に訳すと大腿筋膜とか大腿広筋膜とか呼ばれるそうなんですが、私はFascia = 筋膜という訳は正しくないと思っているのでそうは記述せずにおきます。本文中はこのまま英語表記で失礼いたしやす。
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(後から分かったことなんですが、ITBは確立した解剖学的構造ではなくて、Fascia Lataの外側の一部の少し厚みを増した部位に過ぎない1、とか、ITBの重要性とか膝に対する影響力は過大評価されすぎだ2、という説は今までにも発表されているそうです。私も全く同じ見解ということになりますね)
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あれからもう10年近い年月が経ってますが、私はやっぱりITBという教科書に書かれるような帯状・腱状の組織(↑)は存在しないと思うし、ITB Tightnessというコンディションも存在しないと思っています。もうちょっと分かりやすく言うと、ITBという独立した帯状の組織が自らの意志を持って自身を短縮させ、 "tighten up"することはないと思っています。ITBは筋肉ではないのだから収縮能力(contractility)がないし、自身を自ら"tight"にすることはそもそも不可能だと思うのです。そんなにactive(自動的)な組織じゃないでしょう。むしろ周りに引っ張られてフラフラ動く、passive(多動的)なコですよ。上や下の組織と癒着を起こしちゃうことはあるでしょうけど。

では、世の中でITB Tightnessと呼ばれるものは一体なんなのか?私はこういった症例のほとんどはITBが付着する筋肉の一つであるTFLのOveractivity (OA)に起因すると思ってます(もっと厳密にいうとそのTFLのOAでさえ他に原因があると思いますが、それを書き出すときりがないのでここでは省きます)。

TFLは筋肉なので、neural driveが増えてtonicityが上がれば理論上自身を「短縮・緊張状態」に持っていくことが可能です。TFLのOAが原因で二次的にそれに付着するITB(というかFascia Lataの外側一部)にもtensionがかかる(= 組織に緊張が生まれる)ってことです。まぁTFLの名前がTensor Fascia Latae (Fascia Lataをtense upするもの)なんですから(そしてITBはFascia Lataの一部と考えられることも可能なのだから)、そんなに驚くような新事実でもないかもしれません。つまり、私が言いたいのは「ITB Tightnessという幻影を追っかけてOber Test使って診断を下してみたり、ITBを直接的・局所的にフォームロールやグラストンやなんか使ってぐりぐり治療してみたりしても、原因はもっと近位にあるのだから、根本の解決には何にもならないだろう」ってことです。

そういうからにはよっぽど確立されたエビデンスに基づいているんでしょうね、と言われるかもしれませんが、これは私個人の臨床感なので確固たる科学的根拠はないです。でも面白い論文はあるのでこちらは紹介しておきます。
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18体の献体(年齢幅45-97歳、平均年齢78歳。単純に考えてその倍の36本の足…と思いきや、人工股関節全置換術や股関節・大腿部の損傷の既往歴がある2本の足は除外したそうなので、使われたのは全部で34本の足)を使って、1) ITB; 2) Gluteus Medius/Minimus(中・小殿筋); もしくは3) Hip Joint Capsule(股関節包)をそれぞれ切断する・しないでOber Testの結果がどう変わるかを検証したLaboratory Studyです。3

ちなみに組織の切断を行ったのは一人の20年以上の経験を持つ解剖学者さんで、テストを行った(↓写真の奥)のは献体の状態に対してblindedなPTさんだったそう。しかし結果を読む人(↓写真手前のInclinometerを持ってる人)はblindedじゃなかったみたいなんですよね。それでも同じ人が一貫してデータ収集をしたというのは評価できるけど、欲を言えばこの人もblindedしているとベストだったかしら。あとここまでで気になるのは、献体の年齢層が高いってことですかね。まぁ研究の性質上、こればっかりはしょうがない気もしますけど。
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計測したoutcomeはテスト時の大腿の角度。大腿外側部にInclinometerを置いて角度を測るこのやり方は先行研究4 によってreliableである(ICC = 0.90, 0.91)と報告されており、0°が水平、マイナスが外転、プラスの値が内転を示すそうな。結果を表にまとめなおして出しちゃうと…
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つまり、こういうことっすよね。
- ITBは切断してもしなくてもOber Testの結果、大腿の内旋角度に大きな変化はない
- しかし、中・小殿筋、そして股関節包を切断すると、Ober Testの際の大腿内旋角度がそれぞれ(6~10°、7~14°程)一気に上昇する
- 中・小殿筋よりも股関節包切断のほうが内旋上昇率は少しばかり高いようである(1~4°程)

つまるところ、Ober Testって全然ITBの状態を見てねーじゃん!という、このテストそのもののValidityに疑問を投げかけるような結果ですよね。寧ろ大腿の内旋度は中・小殿筋の状態、そして股関節包の状態により大きな影響を受けるんじゃん!と。この研究ではTFLや大殿筋の状態については検証されていませんが、私は個人的にこれらの組織がOber Testの結果に大きな影響を及ぼす可能性も大いにあると思っています。つまり、我々が今までITB Tightnessが原因で引き起こされると思っていた疾患や障害は、実際はITBよりもっと近位の筋肉・関節包の状態によって引き起こされていた可能性が高いわけです。これは、ここまでに発表されている複数の研究の主張(「ITBの問題の本当の原因は近位の股関節筋肉群だろう」という)とも一致します。5-7

でもね、これを見てDr. Oberを「なんてテスト作ってくれとんのじゃ!」と非難するのもおかしな話なんですよ。彼の書いた1936年発表の最もオリジナルのOber Testに関する論文(入手困難で苦労しました)8 も今回初めてじっくり読んでみたんですけど、彼の主張は「Ober Test(という名前すらそもそも彼は付けていないんだけど*)が陽性の人は腰痛・仙腸関節痛がある」、「これはITBとFascia Lataの緊張によるfascial pullで、骨盤・腰椎・仙腸関節に多大なleverage action(てこ作用)がかかって同側の骨盤の前傾、lumbar lordosisを生むからである」「Ober Testが片側で陽性だった場合にはFunctional Scoliosisができる」「(片側、両側に関わらず)Ober Test陽性は特定の筋肉の過活動、SLR制限、Ely's Sign陽性、各関節可動域の制限などの弊害に繋がる」と、単にOber Test陽性=ITB Tightnessに留まらない、「ITBとFascia Lataは腰痛・仙腸関節痛その形状に密接な繋がりがあるんじゃね?」ってもっとスケールの広い話をしていたんですよね(そもそもDr. Oberの専門は腰痛ですし)。そして、この論文ではもっと興味深いことに、Ober Test陽性の腰痛・仙腸関節痛患者に対してITBとFascia Lataの一部の切断手術を行ったら、腰椎・仙腸関節の痛み、可動域制限、過度なlumbar lordosisとscoliosisの消失が見られ、姿勢が改善、首の痛みまで無くなったと報告しています。

*ちなみに彼はこのテストをThe Abduction Sign/Testと呼んでいました。8 このテストがOber Testとして知られるようになったのはKendall氏らの影響が大きいですかね。Kendall氏らはOber Testの修正版であるModified Ober Test(内転する足の膝を屈曲位ではなく伸展位で行う)を発表しましたが9、しかしそれにしたってKendall氏らも「これはITB Tightnessかどうかを見極めるテストである」とは一度も言っていないんですよね。実は「TFL Tightness」のためのテストであると明記されています。

こうして色々と論文を振り返ってみると、Ober TestはITB Tightnessを診るものだ、というnarrow-mindedな思考は、私たち一般人が提言者の意図を汲み取りきらなかったことによって起こった「誤解」なのではないかとしか思えません。Homans' Signの悲劇みたいな感じですかね。

もういいでしょう。Holistic ApproachやRegional Interdependenceというモデルが一般に叫ばれるようになって10年以上経ちます。Ober Testが陽性だからITBをFoam Rollしなさい、という指示をATが出す時代は終わって然るべきだし、まだ終わってないとしたら我々の不勉強が過ぎます。私も教育者として「教えるべきこと(=資格試験に出題されること)」と「教えたいこと」のギャップによる葛藤は常にありますが、将来のATにこんなアプローチで満足してほしくない(Ober Test陽性→ITBぐりぐりごりごり)とは強く思います。なので授業では、少し気の毒かなぁとは思うんですが、教科書通りにOber Testを紹介したあとに、今回Willett氏らの論文の内容も話し合い、「我々がこのテストで見ているのはなんなんだろうね?」と疑問を投げかけて、ついでに5呼吸でOber Testを陽性から陰性にできる治療アプローチを見せたりして、身体の部位を超えた"treat a patient as a whole"という思考ができるよう学生の価値観を揺らしています。教科書を疑え、センセーを疑え(もちろん私自身も含めてです)、答えは自分自身で見つけろー!というのが私が一番学生に教えたいことです。望んでいてもいなくても、私が今教えていることの半分は5年もすれば「ウソ」になってしまうのだから。

1. Kaplan EB. The iliotibial tract; clinical and morphological significance. J Bone Joint Surg Am. 1958;40-A(4):817-832.
2. Fairclough J, Hayashi K, Toumi H, Lyons K, Bydder G, Phillips N, Best TM, Benjamin M. The functional anatomy of the iliotibial band during flexion and extension of the knee: implications for understanding iliotibial band syndrome. J Anat. 2006;208(3):309-316.
3. Willett GM, Keim SA, Shostrom VK, Lomneth CS. An anatomic investigation of the ober test. Am J Sports Med. 2016;44(3):696-701. doi: 10.1177/0363546515621762.
4. Reese NB, Bandy WD. Use of an inclinometer to measure flexibility of the iliotibial band using the Ober test and the modified Ober test: differences in magnitude and reliability of measurements. J Orthop Sports Phys Ther. 2003 Jun;33(6):326-30.
5. Fairclough J, Hayashi K, Toumi H, Lyons K, Bydder G, Phillips N, Best TM, Benjamin M. Is iliotibial band syndrome really a friction syndrome? J Sci Med Sport. 2007;10(2):74-76; discussion 77-78.
6. Falvey EC, Clark RA, Franklyn-Miller A, Bryant AL, Briggs C, McCrory PR. Iliotibial band syndrome: an examination of the evidence behind a number of treatment options. Scand J Med Sci Sports. 2010;20(4):580-587. doi: 10.1111/j.1600-0838.2009.00968.x.
7. Fredericson M, White JJ, Macmahon JM, Andriacchi TP. Quantitative analysis of the relative effectiveness of 3 iliotibial band stretches. Arch Phys Med Rehabil. 2002;83(5):589-592.
8. Ober FR. The role of the iliotibial band and fascia lata as a factor in the causation of low-back disabilities and sciatica. J Bone Joint Surg Am. 1936;18(1):105-110.
9. Kendall HO, Kendall FP, Boynton DA. Posture and Pain. Baltimore, MD: Williams & Wilkins; 1952.

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  by supersy | 2018-03-21 18:30 | Athletic Training | Comments(0)

ImPACT脳振盪テストが大学生アスリートにとって「有効でない」可能性?

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脳振盪の影響は頭痛や眩暈などの患者が自覚しやすい症状のみならず、思考や認知能力にまで及んでいるんだぞ、と世に知らしめたという点で、ImPACTテストが業界に残した功績は非常に大きいと思います。…と同時に、このテストが抱える問題点も公平かつ冷静に議論されるべきだと思います。例えば、このテスト結果を正式に分析・解析できる能力があるのは神経心理学者(neuropsychologist)のみであるというところ。そんな資格を持った医療従事者に、そうそう我々もアクセス持ってませんし、テスト毎にreferするのにはお金も手間もかかりますからね。ATはadministerできるけどinterpretできないっていうんじゃ、やっぱりそれは相当不親切で不便です。
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加えて、「これはそもそも大学生アスリートにとって妥当なテストなのかね?」という疑問の声ももうかなり前から出ているんです。例えば、やる気が欠如していてちゃんとインストラクションを読まずによくわからないまま適当にテストを受けてしまう被験者 (= result in "invalid profile")や、問題の真意を理解しながらわざと悪い点を取るような被験者(= "sandbagging"という行為なんだそう)がいるんじゃないかと。そうなっちゃうとこのテストの点数はもはやその人の神経認知能力の指針と言えなくなってしまうんじゃないか(= "妥当ではない")と。私の経験上、はい、確かに、こういう子たちは常に一定数いるんじゃないかと思ってましたね。

それを検証した研究もあるんですよ、例えばこの論文(↑)。1 大学アメフト選手159人(平均20.3±1.41歳)にImPACTテストを行ったところ、テストスコア全体の27.9%が「無効」レベルだったそうなんですよ。4人に1人以上ですね。ちなみに具体的には、4.1%が"invalid"のみ、17.5%が"sandbagging"、で6.3%が"invalid'と"sandbagging"の両方だったんだそうな。

ほんでほんで、この研究で面白いのが「どういう人物が『無効』なパフォーマンスをしやすいのか?」という分析も様々な要素からしているんですが、年齢や教育、脳振盪既往歴の回数などは関係なく、唯一統計的に有意であると認められたのが「特別教育(special education)を受けたかどうか」だったんですって(8.0%, n = 6 vs 2.1%, n = 4; p = 0.02)。それから、どうすればこういった「無効」なパフォーマンスを減らせるか、という観点からは「最近脳振盪に関する教育を受けても改善が見られない (p = 0.84)」とした上で、「『無効』だったらやりなおし(再テスト)させるぞ、と指導した場合のみ改善が見られた」というのも…おお…びっくり…でもなんかわかる!本文には、「点数が悪いのが脳振盪によるものなのか、努力の欠如なのか区別がつき難いと、そのテストの点数の解釈が非常にややこしくなり、選手のリスクが上がってしまうのが現状だ」とずっさりばっさり書いてあります。自分自身の健康と安全のために、ちゃんと受けてもらいたいものなんですが…。

(ちなみに『無効』云々とは関係ないんですが、ADHDがある選手はやはりスコアが低めになるようである、という報告もあり、ADHDがある患者さんに対する"norm"は一般の選手とはまた別に設定されるべきではないかという声も上がっています。2 大学アメフト選手を対象にした先の研究1でもLearning Disabilityがある選手は全体の7.4%いましたから、ここらへんは今後考慮されるべきなのかもしれませんね)

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こちらは最新の論文で、2月27日と2週間ほど前に発表になったものです。3
この論文では、アメリカ大学アスリート769人がImPACTを受験してるんですが、実験の流れがユニークで面白いです。下のフローチャートを見れば一目瞭然かもしれませんが、一度目のImPACTテストできちんとしたスコアが取れた受験者は「Valid (= 有効)」(n = 648, 84.3%)、全く持ってダメな被験者は(ImPACTのnormative dataによって自動的にフラッグされた)「Invalid (= 無効)」(n = 9, 1.2%)、そしてスコアが16th percentileだった被験者は「Valid but Invalid (= 有り得なくはないが、真面目にやっているにしては低すぎる、限りなく疑わしい点数)、VBI」(n = 112, 14.6%)と分類され、VBIのスコアを取った選手はその後最多で二回、スコアがValidになるまでテストを受けなおしさせられたそうな。
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ここで特筆すべきが、初回受験時には112人、14.6%の被験者がVBIになったにもかかわらず、再試験、再々試験をしたらそのうちのほとんど(98/112, 87.5%)がちゃんとValidなスコアを取れた、ということですかね。そんな短期間に神経認知能力が上がるとは思えないので、やはり努力や意識の問題ということなのかもしれません。ちなみに、VBIの被験者とValidな被験者の特徴の違いとして唯一認められたのが大学でのプレー年数で、比較してみると1.5±1.69年 (VBI) vs 1.1±1.27年 (Valid)でだったそうで(↑Table 2)。んー?大学で長くやればやるほど、つまりImPACTテストを毎年繰り返せば繰り返すほど、「またこれかよ」みたいになってテキトーにやる可能性が高まるってことなんですかね。ちなみにp値が報告されてないので分からないんですけど、VBI組はValid組に比べてADHDの割合が高かった(17/112, 15.2% vs 47/648, 7.3%)、そしてADHDと診断されていても薬による治療を受けている被験者と、薬を摂取していない被験者ではVBIを出す割合に差が見られた(4/29, 13.8% vs 12/34, 35.3%)とあり、ADHD…特にきちんと治療を受けていないADHD患者のImPACTテストスコアは患者本来の神経認知能力をフルに反映しきれていない、低いものになる可能性がやはり高いのかなと考えさせられます。適切に治療をされていないADHD患者はImPACTテスト中に集中できない、指示を理解しづらいなど具体的な症状を感じることが多いわけでしょうから。

ImPACTテストが自動的に付ける「有効」「無効」のラベリングだけでなく、「有効とされたものの実際は無効」であるテスト結果が12.7%くらいある可能性がある…というのはこれまたなかなか興味深く、怖い結果ですね。うちの大学でも毎年全アスリートがImPACTテストを受けていますが…。数字の示す本当の意味が分からない状態で、それを計測したり解釈したりすることは、臨床的に意味が無いだけでなく、間違った決断・判断に繋がってしまうのでは、と私は危惧します。診断や競技復帰を決める際にも、これらはあくまで参考にすべきデータのひとつとして参考にし、もっと客観的なテストも組み合わせながら総合的な決断を下すことこそがこれからATに求められる能力になってくるんでしょうね…。言うは易しですけど…。

1. Szabo AJ, Alosco ML, Fedor A, Gunstad J. Invalid performance and the ImPACT in national collegiate athletic association division I football players. J Athl Train. 2013;48(6):851-855. doi: 10.4085/1062-6050-48.6.20.
2. Gardner RM, Yengo-Kahn A, Bonfield CM, Solomon GS. Comparison of baseline and post-concussion ImPACT test scores in young athletes with stimulant-treated and untreated ADHD. Phys Sportsmed. 2017;45(1):1-10. doi: 10.1080/00913847.2017.1248221.
3. Walton SR, Broshek DK, Freeman J, Cullum CM, Resch JE. Valid but invalid: suboptimal imPACT© baseline performance in university athletes [published online ahead of print February 27, 2018]. Med Sci Sports Exerc. 2018. doi: 10.1249/MSS.0000000000001592.

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  by supersy | 2018-03-11 23:50 | Athletic Training | Comments(0)

Jimmy Butler選手の受傷シーンを振り返る。

わざわざまとめるほどのことでもないかなぁと思ったのですが、複数名から質問をいただきましたし、個別に返答するよりまとめて回答したほうが早いので、ちょっと迷いましたがこっちにあげちゃいますね。ツイッターを見てない人にはなんのこっちゃって感じかと思うんで、少し解説します。

アメリカ時間の2月23日に、ミネソタ・ティンバーウルブスのJimmy Butlerという選手が試合中に右ひざをケガしました。そんなに怖い動画ではないので、興味のある方はまずこちら(↓)を是非見てみてください。

この受傷動画がツイッターの私のTLに流れてきたので、職業病発動してついつい見てしまいました。このツイートに反応する形で多くのアメリカ人(一般人)が「前十字靭帯(ACL)やった!」「間違いない!」とわいわい騒いでいたのですが、私にはそうは見えなかったのでこんなことをぽつっと呟いたんです。
それから20時間後くらいですかね、MRI検査の結果「半月板損傷でした」というメディアリリースが流れて、スポーツライターの宮地陽子さんがこんなQTをしてくださいました。

お陰様でより多くの方がこのツイートを目にする機会があったのか、「何を根拠に半月板だと思ったんですか?」という質問を学生さんや現役のクリニシャンさんらからいくつか頂いたのでこの場を借りて回答します。ちょっと最近忙しくてですね、個別に対応できなくてごめんなさい。

率直に言うと、そう見えたから、です。ACLがぱちんと切れる音より、半月板のガリっていく音が聞こえたんです。ACLが切れるときって高い金切り声みたいな音が頭の中でするんですけど、今回の動画を何度見てもやっぱり聞こえてくるのは半月板の野太い雄叫びのほうでした。こんなこというと怪しく聞こえてしまうかもしれませんが、恐らくヒトの身体を毎日触ったり診たりしてると、肌より先のナカの組織が視えてくるようになって、色んな音とか声とかが聞こえるようになるんだと思います。これは私だけが持つ別に特別なスキルじゃなくて、経験さえ積めば誰でも見えたり聞こえたりしてくるようになるものなんでしょう。ショコラティエさんが温度計を使わなくても、テンパリングの微妙な温度調整をチョコレートのテクスチャーのみで完璧にこなせたり、お弁当の量り売りをしているスタッフさんが1g単位の重さの違いを手で感じられたりするみたいに(私にしたらこういう能力のほうがよっぽど神がかってるんですけど)するのと一緒です。

ただ、こんな回答では参考にはならないでしょうから、少し自分でも「挙げるとしたらこういう理由だったのかなぁ」と思うところを書いてみますね。

1) 受傷の瞬間の膝の屈曲角度は深めで、体重が膝にはきちんと乗っているように見えた
Lachman Testを思い出してほしいのですが、あのポジションであのテストが行われるのは、「膝20-30°屈曲位のいわゆるopen-packed positionでは、前十字靭帯が唯一の関節前方安定性をもたらす組織になる」から、つまり、膝屈曲20-30°という角度では前十字靭帯は他の組織の干渉を最も受けにくく「守り」が手薄になった(ACL becomes vulnerable)状態である、ということなんですね。しかし今回の動画では、受傷時の膝の屈曲角度はそれよりも深い約90°。…であれば、膝にかかったチカラはACLに行く前に大腿顆軟骨(femoral condyle)、脛骨プラトー(tibial plateau)、半月板(menisci)や関節包などの他の組織にまずぶつかったのであろうと予測が立てられます。あの膝の屈曲角度で前十字靭帯の単独断裂はまず考えにくいんです(不可能だとは思いませんが、可能性は低いです)。

加えて、今回の動画ではチカラは脛骨に沿って、ぐん、と軸圧(axial load)がかかったように私には見えました。これが体重が内側へ膝から逃げるよう、スコンと抜けるようにかかっていたら(i.e. valgus, tibial ER and femoral IR。↓下の動画のような受傷の仕方)、膝に捻じれが生まれ、もっと前十字靭帯断裂の疑いが色濃くなったかと思います。ACL、MCL、半月板のコンビネーション損傷(= unhappy triad)なんかもありえたでしょう。

この動画はザ・ACL断裂って感じですよね。膝の屈曲は甘く、膝が明らかに内反、大腿骨内旋、脛骨外旋している。

2) 受傷のタイミングが早かった
Jimmy選手が痛みを感じた(っぽく見えた)、「受傷の瞬間」は膝に着地をして荷重したまさにその瞬間で、かかったチカラとしては「圧!」という印象でした。90°くらい膝が屈曲してるとこれらの圧力がposterior hornにかなり集中するはずだったかと思うんです、何かで読んだ記憶が。だからタイミング的にはこの瞬間に損傷するとしたら半月板、もしくはくどいですけどそこに直に接触する組織である大腿顆軟骨か脛骨プラトーなんじゃないかなと。もしこれが前十字靭帯断裂だったら、「受傷の瞬間」はもう少し後…コンマ数秒くらい後に、膝が内側目いっぱいに崩れて組織が「伸び」た瞬間に「痛み」が走ったんじゃないかなと思うんです。でも「伸び」を感じる前に「圧」でケガが起こった。前十字にしては受傷のタイミングが早すぎだろうと感じました。

3) 受傷後の可動域が結構あった
これはね、一概に言えないことではありますけど。受傷直後に、Jimmy選手は膝を+90°曲げているんですよね。立ち上がろうとしてCPに止められてますけど、その気になれば立ち上がって、荷重も可能だったんじゃないかと勝手に思ってます。痛みの感じ方、受傷した際の反応は人それぞれで、私はJimmy Butler選手の性格を知らないのでここらへんはなんとも言えませんが、前十字靭帯断裂だったらもう少し可動域や機能に制限がある可能性が高いかなと…。まぁ前十字靭帯断裂して歩行可能の患者さん、何なら走ったり飛んだりできた選手も過去に見たことありますし、今回の怪我がそういった非典型的ケースだった可能性は否定できません。故に重ねて書くとこれは全くもって絶対的ではありませんが、受傷後の可動域が比較的あったというのは、半月板あたりが妥当かなと総合的に思わせてくれる要因のひとつではありました。

個人的に、動画を見た印象では1) 半月板損傷、2) 大腿顆軟骨欠損、3) 脛骨プラトー骨折あたりが可能性が高いトップ3かなと思ってました。疑わしさ順位としては前十字靭帯断裂はその次の4位くらいで、内側側副靭帯損傷はたぶんないだろうなーと。

まぁ偉そうに書いてますけど、所詮後出しじゃんけんですからね。もうMRIの結果出てますからね。なんとでも言えます。あんまり信用しないでください。

それから、勘違いはしないでいただきたいのですが、医療従事者に動画だけを見て正確な診断が下せる力が必要だとは全く思いませんし、私以外にも「半月板だ」と思った方はいっぱいいると思います。別に特別でもない、誰の役にも立たないトリビア能力です。ツイッターでも書いたんですけど、急性のスポーツ外傷の診断って、現場で下す臨床診断と画像による最終診断が一致したかどうかで「当たった」「外れた」と白黒で判断されがちですが、それは実はそこまで重要ではないんです。というか、それよりももっとずっと大事なのが、患者さんとの問診、観察、触診と身体テストの結果を照らし合わせながら可能性としてあり得る怪我を一通り全て網羅し考慮し、最も緊急・深刻度の高い怪我を的確に除外し(この場合は脛骨プラトー骨折と前十字靭帯断裂)、可能性の高い怪我(半月板、大腿顆軟骨欠損など)をいかに効率よく絞り込んでいけるかという能力。灰色の様々な可能性を踏み込んで吟味して薄めの灰色と濃い目の灰色を見分け、それを白と黒にいかに効率よくグループ分けできるかって能力…とでも言うんですかね。同じ動画を見て「前十字靭帯断裂だ」と仰ってるスポーツ整形外科医さんもツイッターで数多く見かけましたし、それらの人が間違っていたわけでは全くありません。だって、この受傷メカニズムで前十字靭帯断裂はあり得ないわけではなかったし、もしそうだとしたらJimmy選手の今後のプロとしてのキャリアに影響を与えかねない非常に大きな怪我になっていたでしょう?どっちかって言われればこの怪我はやっぱり「黒」組でしょう?名前を挙げるのはむしろ正解なんです。除外の必要性・緊急性が(私の見立てでは脛骨プラトー骨折の次に)2番目に高いこの怪我を「ありえるのでは?」と疑うことは非常に大切な能力なんですよ。

あれっ、端的に説明しようと思ったのに長くなっちゃったな、まぁいいや。他にも前十字靭帯と半月板のMOIの違いを教えてくださいとか、この動画はどうですかなどの質問もいただいたのですけど、すみません、ちょっとそこまでは丁寧にお返事を返せる時間的余裕がありません。ここらへんでご勘弁くださいませ。疑問に思ったことはご自分で教科書を読んでみたり、論文で調べてみたり、それから誰かとお話するなら、現場で一緒に働く同僚さんとか、学生さんなら診断の授業を担当している先生とか現場で実習を共にしているプリセプターさんとかとディスカッションするととても有意義で学びの多いものになると思いますよ。


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追記: あっ文献1 見つけた(↑)。ありました。
"The menisci transmit 50% of compressive load through the posterior horns in extension, with 85% transmission at 90° flexion (p.346)."
やっぱり結構負担大きいんですね、posterior horn...

1. Fox AJS, Bedi A, Rodeo SA. The basic science of human knee menisci: structure, composition, and function. Sports Health. 2012;4(4):340-351. doi:10.1177/1941738111429419.

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  by supersy | 2018-03-06 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

超音波治療はお好きですか

私は好きです。いつかも書いたかもと思うのですが、私の理想のAT像は徒手療法、運動療法と物理療法を適材適所で効果的に使えるニンゲンで、徒手「ばっかり」とか運動療法「しか認めない」、物理療法「しかできない、」というバランスの悪いATは(現場にもよると思いますが)非常に効率が悪いと思うのです。(それが理想的か、現実的か、というところは置いておいて)一人のATあたり何十人、何百人というアスリートがいることも珍しくないですから、効率よく効果的な治療介入が提供できることは我々ATの大きな目標であり課題であるべきです。

…ええっと、話が逸れかけました。

物理療法の中では超音波とレーザーが特に好きなんですが、今回は超音波治療について少し書き記しておきたいと思います。超音波治療は日常的に数多くのクリニックで使われるほど非常にポピュラーな治療器具でありながら1、間違って使っている施術者が非常に多い2 と言われており、そのせいで十分な治療成果が認められない=超音波治療って使えない、と誤って判断されてしまうケースも少なくないのでは、と個人的には危惧しています。

しかし、超音波治療の闇は我々が思うよりもうちょっと深いのかもしれません。こんな研究はご存知でしたか?
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米国で現在治療に使われている83の超音波治療器を検査したところ、なんとそのうちの32のマシーン(32/83 = 38.6%)が超音波出力でCalibration Standard (機械調整基準)を満たしていなかったことが判明したのです。3 出力におけるCalibration Standardっつーのはマシーンに表示されている出力と、実際に出力されている超音波量の違いが±20%以内であることなんだそうですが(これも結構幅があってびっくりしますが)、15のマシーン(15/83 = 18.1%)では+20%越え(実際の出力が表示より出すぎている状態)を、17のマシーン(17/83 = 20.5%)では-20%を下回っていた(実際の出力が表示より出なさすぎでいる状態)だったとのこと。つまり、画面では1.0 W/cm2と表示されていても、実際の出力は1.2 W/cm2よりも上である確率が18.1%、0.8 W/cm2未満である確率が20.5%あるというわけです。

問題は出力だけでなく、内臓されているタイマーにも報告されています。デジタルタイマー内蔵タイプ(新しい超音波治療気はたいがいコチラですよね)はともかく、メカニカルタイマー内蔵(古いマシーンに使われている)の25のマシーンのうち、7つ(7/25 = 20.8%)は5分間の治療で±10%以上の誤差が、6つ(6/25 = 24.0%)10分間の治療で±10%以上の誤差が生まれていたんだそうな。ひえー。10分治療したつもりが9分も経ってなかったとか、11分以上経っちゃってたとか、そういうことですよね。ひえー。
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オーストラリアからのこちらの論文4 でも同じように「出力は±20%以内、タイマーは±10%以内の誤差まではacceptable」という基準を用いた場合、64の超音波治療器を使って行った492回の出力テストのうち291回(291/492 = 59.1%)がunacceptable (>±20%)だったそうで、誤差幅は-100%から+210%とマジ恐ろしい数字が出ています。つまり、画面では1.0 W/cm2と表示されていても、実際の出力は最低で0 W/cm2(-100%)だったり最大で2.1 W/cm2だったりする可能性があるわけです。2.1 W/cm2は高すぎます、私が現場で使おうと思う数字ではありません…。タイマーもメカニカル式は56のうち37(66.1%)、デジタル式は62のうち6(9.7%)でunacceptableな誤差が(±10%)報告されています。
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ブラジルの研究1 でも同様に出力・ERAの基準を満たしていたマシーンは全体のたった32.3%にしか満たず、31の超音波治療器のうち「理想」にそれなりに近いBNR(↓下のFigure 1 –A)をしているのはたった11で、残り(20/31 = 64.5%)はかなりunevenな作りである(Figure 1, B1-4)ということも報告されているので、この現象はワールドワイドと言えるでしょう。日本での研究は見かけませんでしたけど、恐らく同じくらいなのではないかと。BNRに関しては、最大出力が中心に集まっておらず、場合によっては山がふたつできてしまっているもの(B-1 & B-4)もあります。つまりホットスポットができやすい、組織の異常な温度上昇が起こりやすいということですね。
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どうせまともにCalibrationをしていないからでしょ?と思った方もいるかもしれません。この研究1 では51人のフィジオセラピストにアンケート調査もしているのですが、「どのくらいの頻度でCalibrationを行うか」という質問には2-24か月という回答の幅があったものの、ほとんど(43%)のセラピストが(一般的にメーカーが推奨している)一年に一回と答えたそうなんです。つまり、適切なCalibrationは行われていると少なくともセラピスト側は自信を持っていて、この数字だったんです。

クリニックにもよるかもしれませんが、特に超音波治療を頻繁に使う治療院などでは年に一回のCalibrationでは十分といえない可能性が大いにあるってことですよね。年に2回って統一した場合はもう少しいい結果が得られるのか、とかそこらへんに興味があります。そういう研究はまだ欠如しているので、何人治療毎に、とか、何分ぶん治療毎にCalibrationするべきである、という具体的な数値はまだ示すことはできませんが、企業側の品質向上努力と、使う側の適切なメンテナンス努力がもう少し合わさらないとこれからも「超音波治療は効果がなかった」という論文が出続けてしまうかもしれませんね。いち超音波治療ファン、Dr. DraperのAdmirerとしてはこれは黙っていられませぬ、というわけでブログに書いての皆さまとのシェアでした。Gives us something to thing about!

1. Ferrari CB, Andrade MA, Adamowski JC, Guirro RR. Evaluation of therapeutic ultrasound equipment performance. Ultrasonics. 2010;50(7):704-709. doi: 10.1016/j.ultras.2010.02.006.
2. Shaw A, Hodnett M. Calibration and measurement issues for therapeutic ultrasound. Ultrasonics. 2008;48(4):234-252. doi: 10.1016/j.ultras.2007.10.010.
3. Artho PA, Thyne JG, Warring BP, Willis CD, Brismée JM, Latman NS. A calibration study of therapeutic ultrasound units. Phys Ther. 2002;82(3):257-263.
4. Schabrun S, Walker H, Chipchase L. How accurate are therapeutic ultrasound machines? Hong Kong Physiother J. 2008;26:39-44.

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  by supersy | 2018-03-05 20:15 | Athletic Training | Comments(0)

PRIに関する最新研究論文のまとめ。

以前にPRI関連の文献を「なぜ風船を使ってエクササイズをするのか?」というタイトルで紹介したことがありましたが、今回はなんと、インドから新たに4つのPRIエクササイズ介入を検証した論文が発表されたのでまとめておきます。興味深いことに、本部曰く、これらのインドの研究者さんは一度もPRI講習を受講した記録がないんだそうです(笑)。どうやってこの研究者たちはPRIに出会ったんだろう?なんで検証しようと思ったんだろう?ここらへんのほうについつい私自身興味を持ってかれてしまいますね。

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最初はこの論文、2015年発表のもの1 です。仙腸関節痛、股関節痛、腰痛のいずれかを持っており、Ober's Testが片側、もしくは両側が陽性の患者30人を対象に1) Moist Heat Pack (以下MHP)を20分したのち、IT Bandのストレッチを1分3セットの「ストレッチ組(n = 15, 30.87 ± 9歳、男女比不明)」か; 2) MHP20分したのちPRIエクササイズ(片側陽性患者は90/90 hemibridge with balloon、両側陽性患者は90/90 hip lift with balloon)をする「PRIエクササイズ組(n = 15, 26.07 ± 5.8歳、男女比不明)」にランダムに分けられ、6セッション分の治療を繰り返したそう(どれくらいの期間に、どれくらいの頻度でセッションが行われていたかは不明)。んで、セッション前と後の股関節ROM、VAS、Modified Oswestry Low Back Pain Disability Questionnaire(MODQ)を使ってアウトカム計測したそうな。ここで浮かぶ疑問は二つ。股関節ROMはスマートフォンのinclinometerを使って計測したと書いてあるけれど、それがvalidated toolであるというエビデンスは被験者には股関節痛の患者も含まれていたはずだけど、何故にMODQが全員に使われたの

んで。結果です。VASはストレッチ組が7.33 ± 0.8から4.47 ± 1.68へPRIエクササイズ組は7.13 ± 1.3から2.27 ± 1.2へとどちらも著しく改善したもの(それぞれp = 0.0007, p = 0.0001)、改善幅を差として比較すると、PRIエクササイズ組の改善の方が統計的に有意に大きかった(p = 0.0004)そうな。同様に股関節外転角度も(from 21.60 ± 2.85 to 23.30 ± 2.38 vs from 19.80 ± 3.43 to 29.27 ±1.98, p = 0.00001)、MODQも(from 76.13 ± 7.26 to 52.73 ± 17.62 vs from 62 ± 12.32 to 24 ± 8.8, p = 0.0006)「両グループ共に改善したが、PRIエクササイズ組の方がはっきりと良い」という結果が出ています。ただね、ここでひとつ…特に股関節外転、SEMとかSDを考慮すると、あまりにp値が低すぎやしませんか?これ、この数値でたった15人の被験者でこんなに低い値になる!?!?ちょっと統計がおかしい気がするんすけど…。小数点もそろってないし…。怪しすぎる…。

この論文の結果には「どちらも効果あったけれど、PRIエクササイズのほうが効果が長く続いた」とありますが、「長く続いた」ってどういうこと?全く同じ時系列でアウトカム計測をしたんじゃないの?結果と結論が一致していません。「同期間行った場合、ストレッチよりもPRIエクササイズのほうがより痛みの軽減、可動域の向上と機能の改善につながる」だったらまだわかるんですけど。

この論文は、はっきり言って挙げ切れないほどの問題点があります。単純なスペルミススペーシングエラがいくつも目につきますし、文中のテーブルの線や数字もバラバラだし、英語もところどころおかしいし(意味が分からない文章も多々ある)、Table 3の股関節可動域が何故右側だけの表記なのかなんの説明もないし、テーブルに書いてある数字と本文の数字が合わないし、何より決定的なのは引用の文献番号が本文と文献リストとでズレていること。これでpeer reviewed journalとは恐ろしい…。こういった論文を手放しで「わーい。PRIの言っていることをサポートしてくれた論文が出たよ、素晴らしいよー!」と言って紹介してしまうと、私はただただ論文の批判的な読み方も知らない大馬鹿ものであると露呈するだけになります…。だから私は敢えて言います、この論文の出来は世に発表されるにはあまりにお粗末。うちの学生がこれを課題で提出してきたらB-を付けて「やりたいことは面白いんだけどなぁ、もう少しちゃんとやらなあかんで」と突っ返しますよ。

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んで。こちらの論文は2017年発表2 です。見た所さっきの研究グループとは違うみたいですね。所属大学が違うんで。
冒頭に「IT bandは又の名をMaissiat's Bandとも呼ばれていますが…」と書いてあるんですがむしろその名前を初めて聞きました!そんな別名が!…勉強になります。IT Bandは多関節筋連鎖の一部なのに、「IT Bandが『張っている』となると、ストレッチだなんだと局所的な治療をすることが多いですよね」というところから始まり、PRIのエクササイズであるRight Sidelying Respiratory Lest Adductor Pull Back (以下Pull Back)を代わりに介入としてやってみるのはどうか、ということのようです。この理論の流れはもっともです。

被験者になったのは30人の左側IT Bandの張り(=左Ober's test陽性)があった患者さん(平均29.16 ± 3.11歳、男16人、女14人)。何故「左」にこだわったのか、私はPRIかじってるんで分かりますけど、文中では一切説明がありません。ちょっと不親切では…というか、単純に「片側」とすればよかったのでは?ちなみに両側陽性の患者は今回の被験者の対象外だったようです。んで、これらの被験者をランダムに1) MHP(20分一日二回)+ストレッチ(15-20秒を3-5回)+Pull Backエクササイズ(説明は省きます、5回を一日二回)を3週間のPRIエクササイズ組(Group 1, n = 15); と2) MHP(20分を一日二回)+ストレッチ(15-20秒を3-5回)のみを3週間のストレッチ組(Group 2、n = 15)との2グループにわけたそう。これらが毎日自宅で行われたのか(その場合、MHPはどうやって手配したのか)それとも実験期間中は毎日クリニックに通院したのかは不明で、もし自宅で行われた場合、どのようにして患者がしっかり規定数の治療・エクササイズを行ったか確認したのか(compliance rate)も気になります。それから、どうしてストレッチのプロトコルに幅があるんでしょう?「15秒を3回(合計45秒)」を3週間(= 945秒)やった人と「20秒を5回(100秒)」3週間(= 2100秒)にやった人とではdosageがかなり(倍以上)違うのでは?と思いますが…

ともあれ。計測したアウトカムは股関節の内転可動域のみ。結果は以下の通りです。
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つまるところ、「両グループともに著しく改善したけど、比べるとPRIエクササイズ組(Group 1)のほうが改善幅が統計的に有意に大きかった」というところでしょうか。個人的にはMHPとストレッチだけでもかなり可動域の改善という意味では上がっているのがびっくりですけどね。あと、どうしてOber's testをもう一度行ってテスト結果も計測しなかったんでしょう?せっかくだから陰性になるかどうか確かめればよかったのに。この論文の結論では「Pull BackエクササイズはIT Bandの張りに効果があっただけではなく、姿勢の左右非対称性の矯正、呼吸を整える効果がある」とまとめてあるんですが、おいおいちょっと、姿勢の矯正や呼吸への効果はこの論文では一切計っていないでしょう。どうしてそう話を飛躍させてしまうのか。「ただMHPとストレッチやるより、それにPull Backエクササイズを足した方が股関節内転可動域向上効果はより大きい」以上のことは言えないはずです。

うーん、やりたいことは分かりますし、確かにPRI理論を補足してくれている研究ではあるんですが、被験者の数も少ないですし、痛みなどの自覚症状がある患者さんってわけでもありませんし、「で?」という気はしないでもないです。今回読んだ論文の中では実はこれが一番マトモかとは思うんですが、個人的な感想や印象を書くと、やはりこの論文も少し怪しさが残ります。実験手順などで細かいところが省かれすぎてますし、あとは導入部分の文献引用が少なすぎて、多くの文章がふわふわと地面から浮いてしまっている印象です。もう少し丁寧に書かれている論文のほうが私の好みです。
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次はこちらー。2017年の3 です。これは最初の2015年の文献1 と同じ大学から発表されていますが、著者は異なりますね。んーしかしこの論文も冒頭の引用が甘いです。"Studies have found..."って言ってるのにその文章の終わりに複数どころかひとつの文献の引用もないって駄目でしょ。どの論文か予想はつきますけど、それでも著者がちゃんと自分で責任もって入れなきゃダメな個所なはずです。イントロで20は引用できる論文ありますよ。

ともあれ。この研究の対象は29人のtertiary care hospitalに来院した、最低でも12週間non-specific LBPに苦しんでいる慢性腰痛の患者さん(平均27.7 ± 7.5歳、男12人、女18人…つまるところ、通常よりもかなり深刻な腰痛患者と言ってもいいんじゃないでしょうか)。 3セッション参加してPRIエクササイズ(今回は90/90 Supported Hip Shift with Hemibridge with Balloonですね、文中に名前がハッキリ書かれていませんけど)を行い、VASとMODQとForced Expiratory Volume (FEV、1秒間の最大呼気量がFEV-1, 6秒間の最大呼気量がFEV-6)を計測したそうな。エクササイズは3日連続で行ったのか、間に数日空いたりしたのかは不明監督役のセラピストがいたのか、ホームエクササイズとして処方されたのかも不明。ここらへんの説明不足は実験の再現性をゼロにしてしまうので致命的かなー。1st Session時には被験者が46人いたのに3rd Sessionには29まで減ってる(17人もドロップアウト=37.0%!! 理由は「もっと早く効果が出ると思っていたから」と記述ありますが、17人が17人全く同じ理由ってことはありえるのでしょうか?12週間ずっと痛みがある、慢性腰痛の患者さんでしょ、3日の治療で「長すぎる」なんて言う?)のもかなり怪しい。PRIエクササイズそのものがドロップアウトの理由に深く関わっているなら、それらの患者さんを「そもそも存在しなかった」かのように消してしまって統計分析するのはバイアスの源にしかなりませんからね。今回の研究では比較対象になるコントロール群もいませんし。…まぁ、それはちょっと置いておいて、結果は以下の通り。
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p値、やっぱりこれもおかしくないですか?SDがここまで大きくて、p値がこんなに低い値になります?これらの数字を鵜呑みにすれば「PRIエクササイズはたった3セッションで慢性(>12週間)腰痛患者の痛み、6秒間の最大呼気量と機能を著しく向上させる」ってことになりますが、私はこれがどれもMCIDどころかMCDを満たしているとも思えないので、I am not soldって感じです。(最短でも)3日かけて、痛みが4.8から4.4に減ったって、MODQが0.9点上がったって、私が患者なら全くありがたくないです。せめて実感できるくらいの改善幅を見せてくれーい。
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最後です。これ4 も先に紹介した論文1,3と同じ大学の研究チームのものだ…よ、読む前から不安いっぱい!そして引用されているソースの多くが論文じゃない!うう…同じ文章をもっとちゃんとしたソースで書けるはずなのに!

50歳以上の膝のOA患者を対象にしたこの実験では、20人のGrade 2-3患者(後述する理由で年齢や性別などの詳細は不明)が集まったようで、ランダムに1) Short Wave Diathermy(15分)、TENS(最大20分)、3つのストレッチ・エクササイズ(15分を4回)と3つの筋力強化エクササイズ(ハムストリング、大腿四頭筋、ふくらはぎをそれぞれ強化する目的、10回3セット)行うコントロール群と、2) これら全てにPRIエクササイズ(これも90/90 Supported Hip Shift with Hemibridge with Balloonですね)を加えたPRIエクササイズ組に分け、それぞれの治療を10セッション10日間繰り返したそうです。前述した研究と同じで、10日連続だったのか、間に数日空いたりしたのかは全く記述がありませんTENSの「最大」20分という幅もナゾです。

そして、結果なんてすがええっとこの論文はここまでで一番やばいです。「結果はテーブル1-3参照」と書いてあるんですがテーブルが論文のどこにもひとつも見つかりません。こんなに読んでいて泣きたくなる論文は初めてです。

なので、文中から推測する結果を書くと「PRIエクササイズ組はコントロール組と比較して著しく痛みが減少、機能が向上した」ということらしいんですが、しかし、痛みに関しては直後に「これはminimal clinical differenceだった」とも報告いるので、初めてMCIDに言及しているのかなという感じです。これはいい傾向です。つまり、もう少し詳しく書くと「PRIエクササイズ組はコントロール組と比較して痛みはそこそこちょびっと減少、機能がそれなりにがっつり向上した」って感じなんでしょうか。しかしまぁくどいですが私自身の目でデータを確認せずにこの結論をそのまま飲み込むことはできないので、なんとかどうかエディター様様、データを…!テーブルを…!追加してください見てみたいんだー!

そんなわけで…ええと…何を書きたかったのか分からないブログになっていましたが、これらの論文全てでPRIエクササイズの効果が報告されてはいるんですが、全く手放しで喜べない、かなりお粗末な内容である、ということはここに書き記しておきます。同じ目的でももっと他にやりようはあったはず。怖いもの見たくて仕方ない皆様は、是非ご自分で下のリンクから各論文に飛んでみてください。Peer-reviewed journalの世界観変わりますよ、ふふ…。

1. Kage V, Naidu SK. Effect of iliotibial band stretching versus hamstrings and abdominal muscle activation on a positive ober’s test in subjects with lumbopelvic pain: a randomized clinical trial. IJTRR. 2015;4(4):111-116. doi:10.5455/ijtrr.00000075.
2. Shori G, Joshi A. Effect of right sidelying respiratory left adductor pull back exercise in subjects with iliotibial band tightness. Physiotherapy Quarterly. 2017;25(1):13-16. doi:10.1515/physio-2016-0014.
3. Fernandes J, Chougule A. Effects of hemibridge with ball and balloon exercise on forced expiatory volume and pain in patients with chronic low back pain: an experimental study. Int J Med Res Health. 2017;6(8):47-52.
4. Metgud S, Chougule A, Heggannaver A. Effects of hemibridge with ball and balloon exercise as an adjunct to conventional therapy in knee osteoarthritis patients: a randomized controlled trial. Asian J Med Health Res. 2017;2(6):42-50.

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  by supersy | 2018-03-02 23:59 | PRI | Comments(0)

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