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「患者を見守りたい」はセラピストのエゴ?リハビリの中での「監督」有無の重要性。

セラピストとして、患者がリハビリをする際に貴方はそれをsupervise(監視・監督)する必要があると思いますか?それとも貴方無しで患者さんが一人でリハビリを行っても、同様の効果があると思いますか?

貴方が患者の場合はどうですか?貴方は一人でも指示された通りのリハビリをきちんと遂行し、期待された成果を出す自信はありますか?セラピストからしっかり説明やフィードバックを受けながらリハビリを行いたいですか、それとも週に数回リハビリ施設に通うより、自宅で自分で行えるならそちらほうが簡単でしょうか?

今日学生とこんな話になり、こんな論文見つけたでよー、と学生が紹介をしてくれたのでそこから芋づる式にずるずるっと色んな論文を引っ張り出して読んでいました。興味深かったので各内容を軽くまとめておきますね。
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この論文では、1 Total Hip Replacement (人工股関節全置換術) 手術を受けた患者さん98人(中央値64歳、年齢幅21-88歳、男41人、女57人)を対象に1) 4週間監視下で行うフォーマルなリハビリ(週に一回)と家での監視がないリハビリ(週の残り6日)の併用(= 一般的なリハビリスタイル); か2) 4週間監視は一切なく、家のみで行うリハビリを行った場合の比較を行っています。研究が研究なので患者がgroup allocationに対してblindになることは不可能でしたが、アウトカムの測定を行ったPhysiotherapist (便宜上以下PTと表記します)は患者のグループアサインメントに対してblindedでした(= single-blinded)。ランダムに患者をグループ分けしたところ、そしてblindingを行ったところは評価できますが、パワー分析の結果各グループに65人の被験者が必要と判明したにもかかわらず、監視有り組が56人、無し組が42人に留まったのはイタイですかね。
一応言及しておくと、手術後各患者は病院での同様の治療・リハビリ(詳細は論文に記載あり)を受けており、一定の基準を満たした(こちらも論文に詳細記載あり)平均5日後に退院。先のリハビリプロトコルを開始しています。この一貫性も評価できますDropoutは各グループ4名とかなり少なく(Dropout rate,は監視有り組で7.1%、監視無し組で9.5%)、ITT分析が行われた点も素晴らしいですね。

ちなみに介入をもう少し具体的に説明すると、1) 監視有り組は監視無しの自宅でのエクササイズ(8-10種類のエクササイズを一日に3回行う、詳細は論文参照)に加えて、一週間に一回施設に通って監視有りのリハビリ(9つのステーションのある、サーキットタイプのトレーニング)を行った一方、2) 監視無し組は自宅でのエクササイズのみを(同じ内容: 8-10種類のエクササイズを一日に3回行う)行い、質問があればいつでもPTに電話で質問できる、という環境だったそうな(実際連絡をしたのは42人中5人と少数だったそうですけど)。監視有りといっても実際の監視要素はかなり限定的だったんだなという印象です。これはグループ間の「違い」を生み出すのに十分だったと言えるのかな…?という疑問を持ちながら結果を吟味したいところです。

アウトカムはBaseline, 5, 12, 26週に計測。具体的に測ったのは…
 ●Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index (WOMAC): 0-100点形式、点数が高いほど機能が低い。MCID = 8.0。
 ●Short-Form 36-item (SF-36): 0-100点形式、点数が高いほどHRQOLも高い。
 ●Timed Up and Go Test (TUG Test): 椅子に座った状態から、起き上がって3m歩き、くるりと回って戻ってきて椅子に座るまでの時間を測る(↓ビデオ参照)。今回の患者に対するMCID = 0.8-1.4秒。
 ●UCLA Activity Index: 1-10のスケール形式、1は”no physical activity”で10は”regular participation in impact sports.”…これはスポーツをしないお年寄り向きではないのでは?
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Baselineでは患者のdemographicsや上記のoutcome measuresではグループ間の違いは認められなかったそうですが、TUG Test に関してはBaselineでなかなかの開きがあった模様(監視有り 10.3 ± 5.0 秒 vs 監視無し14.0 ± 9.0秒)。p値が報告されていなので統計的に有意な差だったのかどうかはわかりませんが。この研究、個人的にはp値の報告が論文を通して不十分に感じます。とりあえず出しておいて、こちらに判断させてくれーい。

結果は一目瞭然だと思うのでまずはこちらを。
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95% CIのオーバーラップがえぐいですね。これは統計的に十分な被験者数がいなかったこともあるでしょうが、point valueも似通っていることから、「THRのリハビリは監視があってもなくても等しく十分な効果を得られる」ということが言えそうです。これを鵜呑みにして「なるほど!では術後のリハビリに掛けていた人力は他のところに回して、もっとアウトカムを向上できることに力をいれよう!」と結論付けるのは簡単ですが(そしてそれが真実の可能性も十分ありますが)、この結果に対して、何かほかの説明の仕方があるかな?と考える癖もつけないといけません。この研究のPEDro scaleは8/10と悪くないとは思いますし、それなりに丁寧な研究ではありますが、決定的な穴としては 1) 余りに「監視」要素が限定的過ぎた?週に2-3回はPTとのセッションを設けてもよかったのでは?2) サーキットトレーニングの効果がそもそもなかったのでは?次回は全く同じメニューで監視有りと無しを純粋に比較すべきでは?3) Home Exercise Programがあまりに効果がありすぎて、監視有り・無しの要素を完全に隠してしまった可能性は?という点が挙げられます。あとは、国民性の違い…例えば、オーストラリア人は総じてHome Exerciseを真面目にやるけれど、ほかの国の人は…とか、その逆の可能性だってあります。ついでに、THR患者は我々が普段仕事をする機会の多い高校、大学、プロのアスリートとは年齢層も手術のタイプも大きく違うので、スポーツの現場で同じ結果が当てはまるかはわかりませんね。それを踏まえて…
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よりスポーツ選手を対象に働く機会の多い我々にrelevantな研究というとこちら2 でしょうか。2011発表の研究と少し古くなってしまうんですが、ACL再建手術を受けた普段から運動をしている患者のリハビリをPT-guided (Supervised) vs Home-based (Unsupervised)で行った場合の比較を行っています。これもオーストラリアですね、先ほどと同じsingle-blinded, randomized controlled trial (RCT)の形を取っています。面白い。

この研究では、手術前にrandom allocationを行い、患者を監視有り (n = 20, 平均28歳、男16人、女4人) vs 無し組 (n = 20, 平均27歳、男14人、女6人)に分けた後、BPTB手術でACLを再建してます(手術前にグループ分けを行った点、ハムストリングやAllograftの患者が混ざってなかった点は非常に評価できます。それから統計的には各グループ16名必要と出たそうですから、最低数は超えてきていますね)。手術後の治療や抜糸、退院からリハビリ開始のタイミングは全てスタンダード化した手順で行い、術後3,6,9,12か月の経過を追いました。この際、監視無し組は「詳細が記載された」プリントを受け取り、それに乗っ取って「それぞれのステージでの目標(i.e. 膝をまっすぐに伸ばせるようになる、膝を90°曲げられるようになる、など)を達成した場合のみ次のステージに進む」よう指示されたそう。一週間に何回エクササイズしなければいけないとか、具体的にどんなエクササイズをしたのかは不明で、「この本のこのページのプロトコルに則りました」という記述はあるものの、その本が古いものなので私が見ることはできずうーむ、再現性を考える上で、これは大きなマイナスポイントですかね。監視有り組は同一のPTによって全員監視されたそうで、ここは非常に評価できます。内容は監視無し組と全く同じで、しかし最初の6週間は一週間に一回、術後6週間~6か月は2週間に一回、そして術後6か月~9か月は一か月に一回の頻度で監視下でのリハビリが行われたそうな。個人的には、やっぱり「監視」の頻度が低いなぁと。ATなら週に5日は確実に監視・監督の機会がありますからね。週に5日監視下でリハビリvs監視全く無しの比較を見たいものです。そちらのほうが我々にはよりapplicableかと。

…まぁともかく。これ(週1回程度の監視・監督)が整形外来では最も現実的なのは事実でしょう。とにかく読み進めます。

計測されたアウトカムは
 ●Lysholm Score
 ●Tegner Activity Scale
 ●Single Hop or Distance, Times Hop, Vertical Jump
 ●Biodexで計測したQuadricepsとHamstringの筋力
…で、ここから一気に結論に飛んでしまうと、これらのほとんど全てのOutcome Measureで、グループ間に統計的に有意な差は認められませんでした。両グループとも等しく著しく改善していったとのこと。唯一統計的に有意だった「差」を挙げると…
 ●術後3か月後のLysholm Scoreは監視無しグループが有りグループよりも著しく高かった(85 vs 76, p = 0.001)
 ●術後3か月後の膝進展筋力は監視無しグループが有りグループよりも著しく高かった(71.1 ± 14 vs 56.4 ± 18.4, p = 0.01)
 ●膝屈曲30°時のIsometric屈曲筋群の両足出力差(Symmetry Index)は監視有りグループは手術前から術後12か月後までの期間に確実な回復(from 69.2 ± 18.2 to 86.3 ± 7.3, p = 0.005)を見せていたが、監視無しグループは統計的に有意な改善が見られなかった(from 78 ± 18 to 82.6 ± 7.9, p = 0.2)。手術前の監視無しグループの数値が異常に良かっただけの気もするが…。
 ●Isokinetic膝伸展筋群の両足出力差(Symmetry index)は監視有りグループは術後3か月から12か月にかけて著しく改善した(from 56.3 ± 21.6 to 82.7 ± 15.1, p = 0.04)が、監視無しグループのそれは統計的に有意ではなかった(from 62.2 ± 20.9 to 79.5 ± 24.1, p = 0.15)。

そんなわけで、研究の結論としてはこちらも「ACL再建手術後のリハビリにおいて、PTの監視が有るか無いかはそのリハビリのアウトカムに影響を与えない」ということなんだそうです。「スポーツをしている人ならリハビリの大切さは知っているだろう。それを理解して、モチベーションがある人は(監視があってもなくても)リハビリをやるし、ない人はやらない、ということなのかも知れない」という考察にはなるほどと思いました。

時代をさかのぼってみてみると、もう3つ同類のACL再建手術関連の研究が見つかりました。Beard & Doddが行った1998年の研究3 (監視有り無し共に13名ずつの小さな研究デザイン。被験者の大部分である80%超が男性ではありますが)と、2005年発表のGrant氏らの研究4、それから同研究グループが発表した2010年の研究5です。

せっかくなんでこれらも読んでみたんですが、総じて結論は「監視の有り無しはアウトカムに影響を及ぼさない」でしたね。興味深かったのが、Grant氏らの2005年4 と2010年5 の研究。これらの研究は実は繋がっていて、2005年発表のほうのsingle-blinded RCT研究(n = 145, 平均29.3歳、男85人、女60人)4 では術後3か月までの経過を追って「ROMは屈曲・伸展共に監視無し組のほうが良く、関節の安定性や筋出力などではグループ間に大差は見られなかった」と結論付けているんですが、2010年のほうの研究5 では同じ被験者群をより長期的(2-4年後、最終的に被験者は145→88人にまで減りましたが…)にフォローアップして「術後平均38か月後においてACL-QOLは監視無し組のほうが高かった(80.0 ± 16.2 vs 69.9 ± 22.20, p = 0.02)が、手術前のbaselineを考慮してそこからの差(45.8 vs 40, p = 0.26)として比較すると統計的に有意な差は認められなかった。その他のROM、筋出力と関節の安定性も大きな差は認められなかった」としています。つまり、二つの研究合わせて「短・長期的共に自宅で行うエクササイズと、セラピストの監視下の元行うリハビリでは差が認められなかった」という結論が出たわけですね。

他の怪我、例えば足首の捻挫などでも同様の比較研究があるのかなーと思ったのですが、該当するものは見つかりませんでした。Cardiac rehab系の論文は結構あったり、それから捻挫系の論文ではHome-basedのリハビリの効果を検証しているものはあったんですけど、Supervised rehabとの直接比較はしていないんですよね。肩の怪我とかでもいいので、面白い論文をご存知の方は教えてくださーい。

そんなわけで、意外な結果でした。セラピストのエゴとしては、「私たちが監視・監督していたほうがより質が高いリハビリが提供でき、アウトカムもより優れたものになるもんね!」と思いたいところですが、決してそうではないかもしれない、ということですもんね。もちろん、前述のとおり、この結果がそのままATの提供するリハビリにも当てはまるかどうかは怪しいです。我々はPTよりもはるかに高い頻度で患者を見る機会がありますし、我々がよくserveするpopulationは高校生や大学生など若い世代が多く、年齢的には最もリハビリに対するコンプライアンスが低い可能性がある(これは勝手な偏見です)かもしれないからです。

でももしこの結果が等しくどのセラピストにも当てはまる場合(PT, AT, OT, etc..)、我々の業務上の「時間の使い方」が大いに変わってくる可能性がありますね。リハビリはしっかり一回目に指示を出しておいて、あとは定期的にフォローアップするなり、患者が質問や疑問、不安などある際に自主的に連絡をしてくる形を取る、というので充分なのかもしれません。そうなると、診断やもしかしたら予防なんかに我々はもっともっと精力的に時間を費やせるようになるのかもしれませんね。それはそれで考えるとワクワクします。

1. Coulter C, Perriman DM, Neeman TM, Smith PN, Scarvell JM. Supervised or unsupervised rehabilitation after total hip replacement provides similar improvements for patients: a randomized controlled trial. Arch Phys Med Rehabil. 2017;98(11):2253-2264. doi: 10.1016/j.apmr.2017.03.032.
2. Hohmann E, Tetsworth K, Bryant A. Physiotherapy-guided versus home-based, unsupervised rehabilitation in isolated anterior cruciate injuries following surgical reconstruction. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2011;19(7):1158-1167. doi: 10.1007/s00167-010-1386-8.
3. Beard DJ, Dodd CA. Home or supervised rehabilitation following anterior cruciate ligament reconstruction: a randomized controlled trial. J Orthop Sports Phys Ther. 1998;27(2):134-143.
4. Grant JA, Mohtadi NG, Maitland ME, Zernicke RF. Comparison of home versus physical therapy-supervised rehabilitation programs after anterior cruciate ligament reconstruction: a randomized clinical trial. Am J Sports Med. 2005;33(9):1288-1297.
5. Grant JA, Mohtadi NG. Two- to 4-year follow-up to a comparison of home versus physical therapy-supervised rehabilitation programs after anterior cruciate ligament reconstruction. Am J Sports Med. 2010;38(7):1389-1394. doi: 10.1177/0363546509359763.

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  by supersy | 2018-02-26 19:30 | Athletic Training | Comments(0)

続・Stener Lesionに関する知識のアップデートまとめ。

昨日紹介した"Is There a Stener Lasion?"(一つ目の文献)1が引用していたHeyman et alの論文(↓)2なんですが、興味があったのでお取り寄せをして今日つらつらと読んでいたら、全然内容が紹介されていたものと違うので驚きました。「この論文ではこう言っていました」と書かれていた内容と、実際の論文の内容が合わない。これ、結構よくあるんですよね。これだから文献は常にオリジナルを読まにゃいかん…。二次引用はマジでしちゃいかんです…。
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せっかくなので昨日の記事の訂正も含めて、こちらの論文2もまとめておきます。これはかなり噛み応え読み応えありました!
この論文は2部構成になっていて、一部目では献体(14 fresh specimen hands)を、二分目では23人のUCL損傷を負った患者を被験者にしてそれぞれUCLの状態を診るためのValgus Stress Testの有効性を検証しています。

献体を使った部分では、人工的に人体の損傷を作り、Valgus Stress Testを伸展位(0°)と屈曲位(30°)で行って関節の開き具合を調べてみたとのこと。結果は…
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**このTableは論文のTableと本文の内容を元に書き起こしたものですが、論文では本文とTableの数値にズレがあり、恐らく本文のほうに誤植があると推測されます。この論文もこー、なんでこう多いんだろう、typo...。

という風に、Proper UCL (以下pUCL)のみが断裂している状態だと、伸展位ではそこそこまだ安定性が見られる(Accessory UCL、以下aUCLがまだ残っており、伸展時にtautになるから。↓以下の図参照3)にも関わらず、屈曲位の場合は不安定で関節がぱっかり開く(pUCLがPrimary Stabilizerとなるべき角度だから)、という「伸展位と屈曲位で関節の安定性に著しく大きな差が生まれる環境(平均16.0°、p < 0.01)」であるということが分かります。

一方、損傷の度が過ぎてpUCLのみならずaUCLにも損傷が及んでしまうと、伸展位でも屈曲位でも安定性が失われ、どちらのポジションでテストを行っても等しく関節がぱっかぱっか空いてしまうという結果になっています(平均8.7°、p > 0.10)。
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**一応明記しておくと、…というかまぁ、上の解剖図を見れば一目瞭然なんですが、それぞれの靭帯は親指が伸展位にあるか屈曲位にあるかでその状態が変わってきます。機能としてはpUCL resists valgus load with thumb in flexion; aUCL resists valgus load with thumb in extensionですね。ケガをする際にはまず先にPrimary StabilizerであるpUCLが損傷し、それでも止まらない力がかかった場合はaUCLも損傷する(= complete UCL rupture)が多いです。足首の捻挫でいうATFL→CFL→PTFLの順番に似ています。

…で、次に23人の急性UCL損傷を負った患者(性別・年齢不明、受傷から平均7日経過、range 0-14日)を被験者としたほうの検証では、患者をClinical Evaluation (触診とValgsus Stress Testを伸展位、屈曲位でそれぞれ行う)を通じて診察したのち、Operative Explorationを行い、身体所見と手術によって明らかになったケガの状態にどれほどの関係性が見られるかを判断。ここで一応注意しておくべきはStress Testの直前に1% Lidocaine (局所麻酔剤)を患部に注入していたということですかねー。本当に急性の怪我で、患者に痛みがあってguardingが激しい場合、今回の研究と同じ結果が得られるかは分かりません。それから、受傷から平均一週間経っているという時間軸も重要かな。目の前でUCL損傷を受傷した患者にこれらの結果が当てはまるかはわからない。

…ともあれ。
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23人中Stener lesionが確認された患者は16人だったそうなんですが、Prevalenceは69.6%となかなかに高いですね。で、被験者をStener lesionだった人とそうでない人に分けると、それぞれのテストの関節の開き具合はこんな感じ(↑)。なるほど、やはりこちらでも伸展位と屈曲位での差に違いが見られますね。Stener lesionになる患者はpUCLとaUCLの両方が断裂しており(伸展でも屈曲でもぱっかぱか)、そうでない患者はaUCLがintactである可能性が高い(= 伸展時に安定性が残っている可能性が高い)と仮説を立てると、この結果もなかなかに頷けます。p値も出しておいてよって感じですけども。
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記事にあったTable 2(↑)と本文を元に、Stener lesion有る・無しの診断基準になりそうな項目とその診断力を抜き出し・計算してみました(↓)。サンプル数が少ないので95%CI幅は広いですが、除外には1) 伸展位でのValgus Stress Testで35°よりも大きく関節が開く; 2) 伸展位と屈曲位のValgus Stress Testの開きの差が10°以上ある; というふたつの基準が、そして確定には3) Palpable Massがあることが使えるかなという印象です。
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最後にちゃちゃっともう一つだけ。
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昨日の記事で「Valgus Stress Testをする際にSupinationをしてはいけない。Neutralでやること」という内容をまとめましたが、これについてもうひとつこんな研究が出ていたのを見つけました。5 12体のFresh frozen specimenを用い、UCL Intact、pUCL断裂、UCL完全断裂(pUCL + aUCL)の状態で、それぞれNeutral, MAX Pronation, MAX SupinationでValgus Stress Testをしてみたところ、結果は以下の通り。
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とにかく一貫して言えるのが、Supinationしていると関節がパカパカ開きやすい。そしてPronationしていると関節に安定性が出るため、開きにくくなる、と。これは関節包や靭帯の弛緩・伸長が原因というよりも、PronationするとVolar Plateが背側・内側へ移動してきて、MCP関節に対して安定性を与えてしまうかららしいです。なるほど…。

そんなわけで、Supinationの状態でValgus Stress Testをすると、例えUCLがIntact (LI)でも高い角度が出てしまうことがある(= false positiveと取り違える可能性が上がる)。UCLによる関節の不安定性を見極めたい場合は、回旋によるバイアスをなくすためにSupinationはもちろん、Pronationもせず、Neutral Rotationで行うべきだ、という結論でした。うっほー、勉強になる!

そんなわけで、昨日と今日の研究結果を受けての私なりのStener lesion診断に対しての結論です。

触診Palpable massがあればStener lesionありと判断(確定)
Valgus Stress Test→テストを行う際にはSupinationとPronationの中間位(Neutral Rotation)で、特にSupinationをしないよう最善の注意を払って行う(= Displacementのリスクを最小限に抑え、且つFalse Positiveにつながるような不安定性を生まないように配慮するため)。患側と健側を比較して、患側が15°以上関節の開きが大きい場合は部分断裂(pUCL)以上の損傷がある可能性が濃く、且つ、患側の関節の開きが伸展位で35°に満たないもしくは伸展位と屈曲位での開きに10°以上の差がある場合はまだaUCLが断裂せずに残っている可能性が高く、故にStener lesionはない(除外)可能性が非常に高くなる(= あくまで部分断裂止まりか?Referの必要はなく、保存治療で回復の見込み高し)。逆に35°以上の開きがあり、伸展と屈曲位での開きにそれほど差が見られない場合はUCL完全断裂とそれに伴うStener lesionの可能性が否定しきれないので専門医にReferをするべきである(確固たる確定ができるわけではないが、これだけ条件が揃えばReferしても決して無駄ではないだろう)。
▶ 患者の痛みが激しく、十分な診察ができない場合はなるべくControlled, gentle matterでValgus Stress Testを試みる…が、それでも無理な場合は触診のみをして、一日ほど様子を見て再診察すべし。それでも症状に改善が見られない、もしくは上記のsignが確認できればRefer。

…というのが現実的なところですかね。
いやー、めっちゃ勉強になりました。楽しかった!また読みに帰ってきます。

1. Papandrea RF, Fowler T. Injury at the thumb UCL: is there a stener lesion? J Hand Surg Am. 2008;33(10):1882-1884. doi: 10.1016/j.jhsa.2008.09.025.
2. Heyman P, Gelberman RH, Duncan K, Hipp JA. Injuries of the ulnar collateral ligament of the thumb metacarpophalangeal joint. Biomechanical and prospective clinical studies on the usefulness of valgus stress testing. Clin Orthop Relat Res. 1993;(292):165-171.
3. Avery DM, Inkellis ER, Carlson MG. Thumb collateral ligament injuries in the athlete. Curr Rev Musculoskelet Med. 2017;10(1):28-37. doi: 10.1007/s12178-017-9381-z.
4. Mayer SW, Ruch DS, Leversedge FJ. The influence of thumb metacarpophalangeal joint rotation on the evaluation of ulnar collateral ligament injuries: a biomechanical study in a cadaver model. J Hand Surg Am. 2014;39(3):474-479. doi: 10.1016/j.jhsa.2013.11.044.

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  by supersy | 2018-02-12 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

Stener Lesionに関する知識のアップデートまとめ。

Stener Lesion。 (2008年12月27日付)

Stener Lesionその2。(2008年12月28日付)

大学院時代に地区学会で症例報告発表をする機会があり、その際にStener Lesion (ステナー病変)についてまとめましたが、この診断基準などについてアップデートはあるかな?と思ったのでエビデンスをさらってみました。そろそろClinical Prediction Ruleなどできてるだろう!と思ったんですけどね…。結論からいうとないです。大学院の症例報告で文献を洗いざらい読んでから早10年…意外とこの分野の研究は進んでないみたいなんです、びっくり。
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最初はこの論文1、以前斜め読みしたことがあったのですが、いい機会なので、ちょっと古いですけどまとめておきましょかね。「Stener Lesionを診断する際に我々が意識して確認すべきこと」の項目が、私が症例報告で出した結論とほとんど同じだったので発見したときに嬉しかったのを覚えています。Stener Lesionの診断基準になりえるのは、

- 30°1st MCPを屈曲した状態で行うValgus Stress Testで35°以上の弛緩が確認できる(Sensitivity 94%; Specificity 57%)2
これは伸展位でやれとか最大屈曲位でやれとか、20°開いたら陽性だとかいや健側と比較して>45°開いて初めて陽性だとか、諸説あります…というか、諸説ありすぎです。3
- MCP関節の僅かに近位にPalpable Tumor(↓)がある4
つまるところ、断裂した靭帯が「ダマ」を作っていて、これをごりっと触診中に確認できることがあるってことですね。これは好意的な解釈をすれば、Sensitivity 100.0% (59.0-100.0%); Specificity 94.1% (71.31-99.9%); +LR 17.0 (2.54-113.8); -LR 0.00と言えるのかもしれませんが、サンプル数24だし、きちんとした比較試験使ってないし、どうなのかな。
- USの画像診断力はSensitivity 76%にSpecificity 81%とまぁまぁ。MRIはSensitivity 100%にSpecificity 94%と「USよりはMRIのほうが少し診断力が高いか」という印象。
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この論文では論じられていませんでしたが、Supinated Appearanceっていうのもあると思います。UCLが断裂し、逆側のRCLが「綱引きに勝った状態」になるため、指そのものがSupinationに引っ張られるのです。文献がどれだったかは忘れちゃいましたけど。

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この論文5では、X-rayでは剥離骨折が確認できたものの、一見Displacementが確認できなかった(↓左)UCL断裂の症例を報告。その後のMRIと手術でStener Lesionが在ったことが確認されており、どうやら剥離骨折は内転筋に付着していた模様(= レントゲンで確認された骨折がUCL断裂部と一致していなかったことから、この論文でこの症例はOccult Stener Lesionと名前が付けられている)。後日撮影しなおしたX-rayでは(↓右)やっと、というかなんというか、UCLが付着した二つ目の欠片(Second Fleck)が見つかっていて、1) PA/Lateral Viewには限界があるかもしれないこと(そもそも痛みで理想的なPlaneに手を置けない場合も含め); 2) 場合によってはOblique Viewも撮るべきであるし; 3) 結局のところMRIを取ることで全体像が見えてくるのでは、と提案しています。剥離骨折の骨片が確認できた=UCLの断裂部位がCorrelateしているとはAssumeするな、最悪の場合(手術で)開けてみなきゃわからない、ということも書いてますね。ふーむ。
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この論文6が今回一番Relevantかなぁ、と思って読み始めたんですけど、歴史の話ばっかりでした。なんだかDr. Stenerの伝記のようなNarrative Reviewで、特にまとめることはなかったです…。ふたつ、記憶に残すために書き残しておくと、1) 冒頭、『年間20,000件起こるUCL断裂のうち、Stener Lesionの割合は14-88%』という興味深い統計の紹介があったこと。14-88%って、幅広っ!でもこれはUnderreportedってこともあるんじゃないかなぁ、信じるなら高いほうの数字かなぁということで、私個人的には「(部分断裂は保存療法が十分効果的なので手術が必要ないからreferしなくてもよいとして)UCL完全断裂の可能性が否定できなければ安全を期してReferせよ」という委託基準は変わっていません。2) MRIとUSの話が最後のほうに出てくるのですが、この論文では優劣をはっきりつけることはなく、どちらも有効であるが、これ!という所見はない、とまとめられています。これも、うっすらMRIのほうが優秀だとしても現段階では妥当な結論でしょうか。


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Valgus Stress Testを行うことでDispositionを起こしてしまうのでは?怖くて思い切った診察ができないよー、という不安を抱えるクリニシャンもいるかもしれません。そんな人にはこの論文(正直、今回の中でこれが一番面白かった)7!6体の献体(Preserved Specimenではなく、Fresh Frozen Cadavers)を使ってUCLが無傷の場合、Proper UCL(PL, pUCL)のみ断裂した場合、Accessory UCL(AL, aUCL)も断裂した(= 完全断裂)場合、Adductor Aponeurosisを含む周辺のFasciaも付随損傷していた場合…など様々な「想定」でValgus Stress Testを繰り返し、実際にUCLのDisplacementが見られるか(= Creation of Stener Lesion)を検証しています。ちなみに、Valgus Stress Testは通常通り基節骨と中手骨を持ち、"firm endpoint"があるまで最大Valgus Loadをかけていく、という形で行われたそうな。
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結果を言ってしまうと、UCLが完全断裂を起こしていても、Fasciaが無傷であればStener Lesionを作ってしまうことはない、とのこと。1) Fasciaにも損傷を起こさせた状態で、且つ2) 屈曲に3) Supinationを足してからValgus Testを行った場合、6人中2人の献体でStener Lesionができた(33.3%)そうなんですが、この3条件が整わなければDisplacementは起こらなかったとのこと。これは本文中の「Pronationをしてもそれほど関節の不安定性は引き出せないが、Supination位だと不安定気味(p = 0.39なので統計的有意差は無し)。同様に、指は1st MCPは伸展位よりも30°の屈曲位のほうが著しく不安定(= opens up more)である(p = 0.001、統計的に有意な差有り、↑上図参照)」なんだそうで、中でもSupinationと30°屈曲を合わせた際に関節が最も弛緩するようである(下Table 1参照)という所見とも一致します。

つまるところ、SupinationをさせないNeutralの状態で(これで3要素のうち一つが取り除けるので)、ゆっくり優しく力をかけながらテストを行えば("controlled, gentle manner")、Stener Lesionを作ることはない、と。Supinationさせんな!と明言している研究は私が知る限りこれひとつなので、忘れないようにしたいですね!
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…そんなわけで最後の論文が一番有益でした!皆さん、UCL Testする際は、Supinationを絶対にしないよう、Neutral Rotationで行うようにしてくださいね。

1. Papandrea RF, Fowler T. Injury at the thumb UCL: is there a stener lesion? J Hand Surg Am. 2008;33(10):1882-1884. doi: 10.1016/j.jhsa.2008.09.025.
2. Heyman P, Gelberman RH, Duncan K, Hipp JA. Injuries of the ulnar collateral ligament of the thumb metacarpophalangeal joint. Biomechanical and prospective clinical studies on the usefulness of valgus stress testing. Clin Orthop Relat Res. 1993;(292):165-171.
3. Patel S, Potty A, Taylor EJ, Sorene ED. Collateral ligament injuries of the metacarpophalangeal joint of the thumb: a treatment algorithm. Strategies Trauma Limb Reconstr. 2010;5(1):1-10. doi: 10.1007/s11751-010-0079-7.
4. Abrahamsson SO, Sollerman C, Lundborg G, Larsson J, Egund N. Diagnosis of displaced ulnar collateral ligament of the metacarpophalangeal joint of the thumb. J Hand Surg Am. 1990;15(3):457-460.
5. Thirkannad S, Wolff TW. The ''two fleck sign'' for an occult stener lesion. J Hand Surg Eur. 2008;33(2):208-211. doi: 10.1177/1753193408087106.
6. Lark ME, Maroukis BL, Chung KC. The stener lesion: historical perspective and evolution of diagnostic criteria. Hand. 2017;12(3):283-289. doi: 10.1177/1558944716661999.
7. Lankachandra M, Eggers JP, Bogener JW, Hutchison RL. Can physical examination create a stener lesion? J Hand Surg Asian Pac. 2017;22(3):350-354. doi: 10.1142/S0218810417500411.





追記です。翌日に続編をアップして、この記事に書いたことと少し異なる解釈についてまとめました。個人的にはそちらのほうが納得です。

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  by supersy | 2018-02-11 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

本帰国にあたって思うことその2。アメリカンフード。

私見たっぷりに書くと、アメリカと日本とでは日本のほうがご飯が美味しいです。ちょっとだけではなくて、格段にです。

ええっと、もう少し細かく正確に言うと、アメリカでも日本でも、高いお金を出して食べる「高級食」のレベルはもしかしたら同じくらいかも知れません。マンハッタンの高級レストランのご飯はそれはそれは美味しいことでしょう(食べたことないけど)。しかし、いわゆる「大衆食」のレベルが全く違うのです。職業柄、私は大学と言う場所でだいぶ長いこと働いていましたけど、例えば普通大学なんかで食べる学食って日本は安いものですし、バリエーションもありますよね。小鉢でサラダや煮物などの付け合わせが手軽に足せたりもできます。一方、アメリカは選択肢も少なく、値段設定はむしろ高いくらい。「色々なものを少しずつ」「なるべく彩り豊かに」という日本食と違い、アメリカ食は基本「一種類を山のように」「色は茶色が基本色」という感じで、多くの食事に塩か油か砂糖が入りすぎているというイメージです。くどいですが、個人の感想です。
(一例ですが、下はアメリカの中・高校で出る典型的な給食です。写真はインターネットで見つけたものですが、私は中・高校勤務経験もあるので言わせてもらうと、私が見た限りではこれと殆ど同じか、寧ろもっとひどい印象でした)
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でも、アメリカにももちろん美味しい大衆食ってあるんですよ!たまについつい無性に食べたくなっちゃうやつがあるんです…。私が日本に帰ったら食べられなくなって、時々「きー!」となるんだろうなー、というアメリカンフード五選を無意味にここに挙げてみます。


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1. Chipotle Mexican Grill
これが食べられなくなるのが一番不安です…一か月に2回は食べてるんで…。私の定番はCarnitasのBowl。ブラウンライスにブラックビーンズ、マイルドとコーンのサルサたっぷりにレタス多め。辛めのレッドソースはサイドに付けてもらって、好みで量を調節しながら食べるのが◎。最近発売したQuesoは…Quesoだけは…大失敗だったけど。


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2. Zaxby's
Raising Cane'sとほぼ同じ感じなんですけどね、一応Zaxby'sのほうが創立が少しだけ早いし、私が先に出会ったのもフロリダ時代のZaxby'sだったので個人的にはこっちが好きです、やっぱり懐かしくて。特製ソースがやみつきになります。ガーリッキーなトーストもさくさく美味しくて、コールスローの野菜付きなのも嬉しい。


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3. In-N-Out Burger
実はこれ、つい最近初めて食べたんです。テキサンとしてはWhataburgerが一番美味しいって言わないと怒られそう(Corpusが発祥の地)なんですが…あれ、ぺにょぺにょぺちゃぺちゃだしそんなに美味しいかー?よくわからん。バーガー系ではFive Guysも美味しいですけどあれは量が不必要に多く、30代半ばの胃袋にはキツイので、バーガーも小ぶりでポテトもさっくり揚がってるIn-N-Outがアメリカバーガーチェーンの中では一番美味しいと私は思います。また行きたいです…。


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4. Cracker Barrel
アメリカン・ブレックファストと言えばこれでしょう!IHOPとも少し迷ったのですが、バターの風味が香ばしくて私好みのパンケーキはこちらだし、分厚いカントリー・ハムやハッシュブラウン・キャセロールも、飲み放題のコーヒーも少しばかり味が格上だと思うのでCracker Barrelにしました。店員さんにはランキングがついていて、どの人もてきぱきニコニコ極上のサービスをしてくれるのも特徴的です。もう一回くらい行きたいなー。


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5. Mac & Cheese
これはどこのチェーン店のもの、というわけでもないんですが、このマカロニ&チーズは日本で言う「ツナマヨのおにぎり」くらいには確立されたメニューです。そんなに美味しいというわけでもないのに、ホテルのビュッフェとかにあるとついついいつも取ってしまう魔力があります。ソウルフードなんで、そのソウルに吸い込まれるんですかね…。これも恐らく日本では食べる機会が無いので、むしょーーーに食べたくなってしまうかも。


こんなことを言ってはいますが、日本に帰ったらゴハンが美味しすぎてコロッとアメリカンフードのこととか忘れたりなんかしてね。寿司、天ぷら、フジヤマー!アメリカに来る機会のある皆さんは、機会があったら是非ここらのチェーン店試してみてください。特にChipotleは、日本人にも受ける味だと思います(先日仲間内で、『あれなら日本でも流行るんじゃ?』と話していたら『あの値段($7-8くらいはする)では無理でしょ』と言われてしまいましたけども)。

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  by supersy | 2018-02-08 20:00 | Just Thoughts | Comments(3)

キツツキは脳振盪にこそならないが、長期的に脳のダメージは蓄積している可能性がある。

ひゃー面白い論文が出ましたね!2月2日発表なのでつい4日前ですよ!

以前「キツツキは何故脳振盪にならないのか、フクロウの頸動脈は何故切れないのか」という話を書いたことがありましたが、今回は「キツツキは脳振盪にこそならないものの、頭をぶつけることで起こる長期的な脳の進行性委縮の徴候が見られるのではないか?」という可能性を示唆した論文1 を紹介したいと思います。全文無料(オープンアクセス)なので、読みたい方は是非どうぞ。
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Boston UniversityはBrain Bankがあり、CTEの研究が盛んなことで有名2 ですが、まさかこういう人間以外をサンプルに使った動物実験もしているとは…!以前にいかにキツツキの頭蓋骨の造りが人間のそれと異なり、それによって効果的に脳を守れているか、そしていかに脳振盪を防げているか(ついでにいかに我々がそれらを応用したより安全なヘルメットを作ろうとしているか…)3 という話をまとめたのでこちらは割愛しますが、「キツツキは木をつついても脳の損傷はないみたいです」とハッキリ断言した論文は、実は1976年にひとつ5 発表されたっきりなんだそうです。今回の論文の著者に言わせれば細胞レベルの分析もあやふやで、信憑性に欠けるという厳しい指摘をしており、科学の進んだ今、より詳しい方法で脳の損傷が起こっていないことをしっかり確認しましょうよ、というのがこの論文の目的です。

2018年現在、CTEの診断に最も強く結び付けられている診察的所見は死後患者の脳を検死解剖し、染色することによって確認できるFocal accumulations of tau protein (局所的なタウ蛋白の蓄積)なのですが4、今回の実験での検証方法もそれに沿っており至ってシンプル。木をつつく習性のある10羽のキツツキ(実験群)と木をつつく習性の無い10羽の木をつつかないハゴロモガラス(コントロール群、英名 Red-Winged Black Birds、カラスという名前ですが種類としてはスズメのほうに近いらしい)の脳を取り出して染色し、その細胞を分析した、というものです。
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結果、軸索損傷の指針となるGallayas silver stainはキツツキの10羽中8羽に確認された一方で、ハゴロモガラスは5羽中1羽も変色が見られなかったとのこと(p.6にはn = 10とありますが、前後の文章と合わないのでn = 5の誤植なのではと推測します)。80% vs 0%という圧倒的な数字ですね。タウ蛋白の染色は少し残念なことが起こっていて、この分析のためのハゴロモガラスの脳は先ほどと同じ5羽分用意されたそうなんですが、キツツキの脳の保存状態が悪く、3羽分の脳でしかこの実験を行えなかったそう。そんなわけで制限はありながらですが、タウ蛋白の染色によってその蓄積が確認ハゴロモガラスは5羽中0羽、キツツキは3羽中2羽に確認できたそうです。限られたサンプルですが、パーセンテージにすると66.7% vs 0%ですね。まとめると、こんな感じ。

Gallayas silver stain woodpeckers 8/10 (80.0%) vs red-winged black birds 0/5 (0%)
Tau accumulation woodpeckers 2/3 (66.7%) vs red-winged black birds 0/5 (0%)

そんなわけでこの論文の結論は「キツツキの木をつつく習性とタウ蛋白蓄積の関係性が認められる」というものでしたが、それを少しばかり飛躍させると「キツツキは(脳振盪こそ起こさないかもしれないが)、長期に渡って木をつつくことで、キツツキも自覚症状がないレベルで脳の病理的変化、委縮が進んでいる」「sub-concussive forceの蓄積が、CTEにつながるという人間に見られる現象がキツツキにも起こっているかも」ということまでも言えるかもしれません。もちろん、それを断言するにはあまりに少ないサンプル数で、バイアスがある可能性は否定できませんが。どちらにしても、非常に興味深い研究です。続報を待ちたいです!

1. Farah G, Siwek D, Cummings P. Tau accumulations in the brains of woodpeckers. PLoS ONE. 2018;13(2):e0191526. doi: 10.17605/osf.io/cvupw.
2. Mez J, Daneshvar DH, Kiernan PT, et al. Clinicopathological evaluation of chronic traumatic encephalopathy in players of american football. JAMA. 2017;318(4):360-370. doi: 10.1001/jama.2017.8334.
3. Gibson LJ. Woodpecker pecking: how woodpeckers avoid brain injury. J Zoo. 2006;270(3):462-465.
4. Traumatic Brain Injury Resource Page. National Institute of Neurological Disorders and Stroke. 2017. Available from: https://www.ninds.nih.gov/Disorders/All-Disorders/Traumatic-Brain-Injury-InformationPage.
5. May PR, Fuster JM, Newman P, Hirschman A. Woodpeckers and head injury. Lancet. 1976;1(7957):454-455.

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  by supersy | 2018-02-06 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

本帰国にあたって思うことその1。英語。

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小さいころから公園で泥んこになりながら遊ぶのが好きなタイプだったので、英才教育とは無縁な幼少時代でした。英語に関しても、英会話を習うといったような特別なことはせず、同級生と全く同じように、中学校、高校と義務教育の一環としてフツーにフツーの英語を学んできた…だけといえばだけなんですよね。イズディスアペン、ノーイットイズントと先生の後をついて復唱していたわけですよ。英語が苦手科目だったわけではありませんし、学校のテストでもそこそこの点数は取れていたんですけれど、実際にそれを使って誰かとコミュニケーションする場があったわけでもないですからね。高校の時に「あー…このままいっても英語を話せるようにはならないだろうなぁ…」「どちらかというと苦手意識が残るかも…」「英語が話せない、というのがいつか自分のコンプレックスになってしまいそうだなぁ…」と漠然と感じたのは覚えています。

なので、全く別の理由で「大学は、アメリカに留学するという選択肢もあるかな?」と思い始めたときに、「ついでに英語を一度本気で勉強するいい口実にもなるじゃないか!」とも気が付きました。アメリカへ留学するとなったら英語やらないわけにはいきませんからね。自分を「やらざるを得ない」崖っぷちに追い詰めて、必死で全身全霊全力かけてやって、なんとか壁を越えてえいやっと話せるようになっちゃえばこの「将来コンプレックスになるであろう種」を未然に摘んでしまえるじゃないかと思ったんです。

ここらへんのロジックは今思い返してみても、「なかなか先見の明のある17歳だったな」と自分を褒めたくなります。言い訳のできない環境に自分を追い込んでおいてよかった。おかげで今、英語の文献を読むことを苦痛には感じませんし、英語でスピーチしろと言われて冷や汗をかくこともありませんし、英語で道を聞かれても(なぜか日本でよくある)ドギマギせず「あの背の高い茶色い建物の向かいあたりっすかね」と教えることができます。別に英語ができるから自分は他人より偉いわえっへんと言ってるわけじゃなくて、自分自身の中で「英語ができない」ことを言い訳にしたり、足かせにしたりして自分のやりたいことに対して躊躇したり、卑屈になったりすることがなくて良かった、と思うのです(まー英語以外の理由で卑屈になることは相変わらずありますけども)。

私は日本でフツーに育った日本人だったので海外に出るまでは気が付きませんでしたが、もうひとつ喋れる言語があるというのは純粋に、本当に、面白いことです。今私の脳は「日本語脳」と「英語脳」、それから「非言語的思考脳」みたいな三部構成になっていて、日常生活を送っているときはそれなりにその全ての部分にてらてらと血流が流れているのですが(日本の番組のDVDをバックグラウンドに流しながら英語で仕事したりしてるから)、例えば英語で面白い論文を見つけて「おっ?おっ?」と夢中で読んでいるときなんかは「英語脳」に血がめきめきと流れて活性化されていくのが分かるし、日本に帰国して日本語で講義をしているときは「日本語脳」がこれまためきめきと覚醒してくるしで、その「脳の言語スイッチが切り替わる感覚」が楽しいんです。英語で深い深い思考をしているときは日本語が邪魔に感じますし、日本語で美しい文章に触れているときは英語脳はちょっと黙っとけ!となったりします(笑)。どっちにも、浸かりたいときにどっぷりいける感覚が楽しいんです(…とかいって、ぼーっと考え事しているときに急に逆言語で話しかけられると日本語と英語が混ざった自分でもよくわからない言語が口から出ることがありますが)。物事の表現方法も日本語と英語では違いますし、考え方を二通り抱えて生きているような気分にもなります。バイリンガルの人は喋る言語によって性格が変わる、なんて聞いたことがありますけど、それは本当にそうなんじゃないかなと思いますね。

とはいえ、世界各国で話されている言語は何百、一説によれば何千とあります。英語が全てじゃありませんし、英語以外にももうひとつくらい言語が喋れたらなー、勉強する機会があればなー、と私も妄想してみたりもします。でも、英語を習得した経験から、「そんな生半可な『喋れたらいいな』程度の気持ちでは一生もうひとつの言語を習得することはないだろうな」ということくらいも分かります、分かっちゃいます。いろんなタイプの人間が世の中にはいるのでしょうけれど、あくまで作られたバイリンガルの私は生まれつき言語センスが特出しているわけでもないので、言語を習得しようと思ったらその言語環境に自分をimmerseしなければ無理です。5-6か国語とか喋れる人ってすごいですよね、そういう人の脳みそ、覗いてみたい…。
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日本人は英語ができない。
このレッテルは我々自身が作り上げているもの。アメリカ人はカタコトかどうかなんて気にしない。完璧にやろうとせず、失敗を恐れず、伝えたいという意志を持つことだ。めちゃくちゃな英語でもとにかく自信を持って話せ!…という日本人向けの文章を目にしたことが何度かあります。これは、例えば海外の人と一緒にホームパーティーに参加する、とか、留学生として授業に出席する場合だったらその通りだと思います。間違いを気にせず、伝えたいという意志を全面に出して、ガンガン適当でもとにかく話しちゃえばいい。

しかし、これはあくまで自分がお客さんの立場や、相手と対等の立場の場合にのみ「acceptable」なのであって、自分が海外でプロとして仕事をしている(もしくはしようとしている)ときにカタコトの英語では絶対にダメだと私は思います。カタコトの英語だから話を聞いてくれないヒトなんて実際は沢山いますからね(カタコトでも話を聞いてくれるって、相手が自分に興味を持ってくれているって前提で成り立つものじゃないですか)。

医療職であるAthletic Trainerも、教職としての大学教授も、相手あっての仕事です。患者さんに、学生に、伝えたいことを明確に伝える、プロとしてプロらしくどっしりとした自分を見せる、相手に安心感を与え、この人は信頼できると感じてもらい、質問があるなら遠慮なくぶつけてもらえる環境を作る…ということができなければ話になりません。それを自分は日本人だから日本訛りが強くてもいいんだ、カタカナ英語でもいいんだ、というのは自分へのハードルを下げているだけだと思うし、それでアメリカ人と対等やそれ以上のお給料をもらおう、ビザをもらおうなんて考えは甘いとも思います。カタコトで話されたらどんなに賢い人でもやっぱりuneducated, unconfidentに見えるし、信頼は得難いものですから。つまるところプレゼンテーションの問題だと思うんです。それなりの知識と技術を持ったプロとして、「自分」という人間のプレゼンがうまくできてない、ということになるじゃありませんか。

私は18歳という、言語を新たに習得するには遅すぎるタイミングで渡米しました。16年間の米国生活で発音や言い回しはそれなりに上達したつもりではいますが、やはりどうしても抜けないアクセント(訛り)というのがあり、なかなかどうしてネイティブのようには完璧には発音できません。渡米以来、とにかく周りの発音を聞いて一生懸命真似したし、覚えたフレーズはとりあえず使ってみたし、現在でも発音のややこしい単語を授業で言わなきゃいけないときは事前にインターネットで発音聞いて、こっそり幾度も練習してから授業に臨みます(笑)。その裏には、やっぱり「ネイティブみたいな完璧なアメリカ英語を話したいんじゃー!」というエゴがあるんです。そういうエゴやプライドも、立派な学習動機としてアリだと思いませんか。それを、「完璧なんて目指さなくていい、日本人丸出しの英語でもいいから話せ」と、わざわざ否定することもないと思うんですよ。アメリカでそれなりに腰を据えて勉強・仕事をしようと思っている若い子たちは、「どうせ日本人だからキレーな発音や華麗な言い回しはできっこない」ではなく、「ネイティブみたいに英語喋りたい!」というしっかりとしたエゴを持って、完璧な英語目指して、毎日少しずつ努力を重ねていってください。おねーさんは応援しますよ。高みを目指すのは悪いことじゃない。

つまり何を言いたいかというと、ここまで習得しかけた英語、日本に帰国して忘れたくないなーと…。恐らく今のように日常的に英語で講義をする、ということはなくなるので少し不安です。帰国された皆さん、英語力維持のためにどんなことをやってらっしゃるんでしょうか?英会話教室でも通うのが一番確実でしょうか。駅前留学、しようかな…。自宅で英語のドラマや映画DVDを流す、とか?ちょっと工夫しないといけませんねー。

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  by supersy | 2018-02-05 11:15 | Just Thoughts | Comments(0)

日本に帰ることにしました。と、Consensus Statement for Patellofemoral Instability。

ええっといきなりのタイトルですが、もうだいぶ長いこと色々考えていて、まぁそろそろかなぁと思ってそういうことにしました。今すぐにではなくて、今学期が終わってからなので本帰国は6月上旬になりますけども。どうして?とか、苦渋の決断?とか聞かれたりするのですが、そんなことは全然ないです。来るべき時が来たぜ!と思ったからで、アメリカでの生活は16年とちょっとで幕を閉じることになるんですが、後悔は全くないですし、やりたかったことをやりきれたので帰る、という私としては非常に分かりやすくてすっきりとした気持ちです。もちろんまだアメリカでしかできない勉強もあるので、講習に学会にと時々戻ってこようとは思いますが、これを機に生活の拠点と活動の基盤は日本にがっつり移そうと思っています。

18歳で渡米して16年間。人生のほぼ半分、成年初期の全てをアメリカで過ごしたことになりますが、振り返ってみればこれ以上ない濃さの、しかしあっという間の16年間でした。このブログは…たぶん帰国してもそのまま続けることになるとは思うんですが、まぁ何があるかはわからないので流動的に行こうかと思います。続けられれば続けるし、そうでなければやめるし、リニューアルなどするかもしれないし、ということで。



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さて。今回はすごく短いドキュメントではあるんですが、ほんの4日ほど前(1月30日)に発表になったAOSSM (American Orthopedic Society for Sports Medicine)とPFF (Patellofemoral Foundation)の合同声明(Consensus Statement)1 についてまとめておこうと思います。無料でPDFダウンロード可能です。


まず一番最初にどのような経緯でこのConsensus Statementがestablishされたのかという記述があるのですが、読んでみると16人の専門家(13人がMD、PTが1人とPhDが2人)を呼んで2016年9月にシカゴでワークショップを開き、一日かけて話し合った内容を2人の代表者が声明として書き起こし、16名の意見を聞きながら修正を加えて本合同声明の内容を導き出した、と書いてあります。16人って少ない気がするし、当然Patellofemoralの分野にも様々な派閥みたいなのもあるんだろうなと予想できます。そうなるとこの16人が特定の派閥のみから選ばれた人たちであったとか、逆に特定の派閥の人が全く入っていなかったとか、そういう面倒な可能性がありそうだなと…。どのような基準でこの16人が選ばれたのかを明記していない時点でこの合同声明の信憑性が薄れてきちゃいますね。一日のワークショップでこれだけのことを決めなければいけなかったとなれば、時間的なプレッシャーもあるでしょうし。しっかり草案見て全力でフィードバックを書く人もいれば、ロクに見もせずあーあーいいですよという人もいるだろうし。どちらにしても、厳しく言えばこの合同声明は少数の偏った専門家の意見の域を出ないというところは肝に銘じておいたほうが良さそうです(その証拠にこの論文には文献引用がひとつもありません)。

まぁこれを踏まえて読み進めます。冒頭には、各用語の定義がまとめられています。

Patellofemoral Stability: Constraint by passive soft tissue tethers and chondral/bony geometry that, with muscular forces, guide the patella into the trochlear groove and keep it engaged within the trochlear groove as the knee flexes and extends.

Patellofemoral Instability: Symptomatic deficiency of the aforementioned passive constraint (patholaxity) such that the patella may escape partially or completely from its asymptomatic position with respect to the femoral trochlea under the influence of displacing force. Such displacing force could be generated by muscle tension, movement, and/or externally applied forces.

Laxity: A physical examination finding that describes passive displacement under load.

Patholaxity: Abnormal laxity (too tight or too loose).
*normal vs abnormal laxityはこれから改めて定義される必要がある。

少しwordyに見えるものもありますが、読んでみるとなかなかに納得がいきます。私がここを数回読んだ理解としては、PatholaxityなくしてPatellodemoral Instabilityを有することはない。しかし、だからといってPatholaxity = Patellofemoral Instabilityというわけでもない。どうしてかと言うと、PatholaxityがあってもきちんとしたNeuromuscular controlがあればsymptomは発生しないからです。ってことですかね。ふーむ。

んで。

Patellamofemoral Instabilityを作りえる要素として挙げられるのが、
- Patholaxity of the medial/lateral patellar soft tissue constraints
- ↓constrain as a result of abnormal shape of the patella/trochlea
- Patella alta
- Abnormal skeletal alignment valgus/torsion
- Deficient proximal muscular strength and control

ここで興味深いのは"Proximal (hip) muscle control is important to maintain control of femoral rotation... Hyperpronation may also contribute to internal limb rotation.."という表記で、膝のメカニックスには膝だけでなく、股関節や足関節などのproximal/distal jointも関わっている可能性を示唆しています。

「問診の際に聞くべき質問」という項目もあってここも面白いのですが、個人的には私が聞かない質問はなかったので割愛します。興味のある方は本文をどうぞー。

急性障害の場合、Physical Examでチェックすべき項目は、
1. Patellar glide in extension and early flexion
2. Apprehension Test (at 30°)
3. Tenderness along medial patella/patellofemoral ligament
4. Effusion
5. Rotational alignment (i.e. femoral anteversion, tibial torsion, hyperpronation)
6. Beighton Score (↓) - 特に膝の過伸展
7. ACL, MCL, Meniscusなどの損傷と神経疾患についてもチェックすること。両側比較を忘れない
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*Beighton Score: 1-小指の過伸展90度、2-肘の過伸展、3-膝の過伸展、4-床に掌が付く、5-親指が前腕に付く
各1点のうち、2点以上あればhypermobile

慢性の場合は、先ほどの1,2,4,5,6,7に加えて、
8. 立位のアラインメント、gait
9. 可能であれば、Single-leg stance, スクワット、ステップダウン
10. J-sign, fixed lateral tracking
11. Hyperalgesia (どうやって見るの?)

なるほど、慢性の場合は動的な要素を可能な限り増やすイメージですかね。書かれていることたちにそんなに驚くことはないかもですが…。Qアングルとか大腿四頭筋や中殿筋のMMTとか、そういうことについては全く触れられていないんですね。意外!

画像診断についても割愛します。手術の項目から面白いと思ったのと書き出すと…
- Early flexionでpatellar instabilityが認められたら手術を勧めるべきである。しかし、isolated lateral retinacular release/lengtheningのアウトカムは総じて良くないため、やるならばmedial reconstructionと併せるべきである(Lateral tightnessと物理的なdisplacementがなければ寧ろlateral retinacular release/lengtheningは必要ない、とも)。
- Medial reconstructionに関してはこのテクニックが優れている、というのはなく、とにかく適切な位置に膝蓋骨を導くことが大事である。
- Tibial tuberosity medialization is NOT commonly included in surgery for instability. この手術、私高校生のころに膝蓋骨の亜脱臼という診断でやらされたんだけどなー(遠い目)…。お陰で膝が余計にぼっこり盛り上がってしまって今でも左で膝立ちができませんよ。アウトカムは"less than ideal"らしくて、今はもう全然勧められてない手術なんだ、ふーん…。
- Patella altaはCaton-Deschamps ratioが1.2以上(Insall-Salvatiのほうじゃないんだ!)でpatellotrochlear indexが15-20%の場合はsurgical correctionをせよ…という表記も面白いです。なんでもかんでも直せばいいってもんじゃないんですね。
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そんなわけで、一番学べたのは意外にも「手術」の項目でした。私が常々「これはいい手術なのか…?」と疑問に思っていた者たちがしっかりと否定された格好になっています(tightだから切っちゃえとか、trackがズレてるから骨を切って動かしてなんとなくまっすぐに並ぶようにしちゃえとか)。このstatementの〆には「ここに書かかれていること、全てが科学的に実証されているわけではない」と書いてありますが(くどいですけど、あくまでexpert's opinionですからね)、現役の膝専門Orthopedic surgeonが最低ここに書かれている内容だけでも把握して、日々の患者を診てくれればdo no harmは守られるだろうという気はします。ま、AT向けの論文ではなかったですかね。PTがもっとworkshop参加者に含まれていたら、リハビリなどの記述ももっと書けていたかも。将来的にはPatellofemoral Pain Syndromeに関するNATAのPosition Statementも将来的に出たりするんでしょうか、そちらにも期待したいです!

1. Post ER, Fithian DC. Patellofemoral instability: a consensus statement from the AOSSM/PFF patellofemoral instability workshop. Ortho J Sports Med. 2018;6(1):1-5. doi:10.1177/2325967117750352.

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  by supersy | 2018-02-03 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

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