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1月13日 第1・2回EBP講習 in 大阪 開催(全4回シリーズ)

1月13日(日)に第1・2回EBP講習 in 大阪を行います!9月に第1回として基礎レベルの「スポーツ傷害評価編」をやらせてもらいましたが、今回はそれを取り逃した人のためにリピート講習を午前中に、臨床応用レベルの「評価・ACL損傷編」「評価・手首の傷み編」を午後にお送りする形で、まとめて一日で開催します!**主催者が通常講習と異なるため、BOC EBP CEUsは尽きませんのでご了承ください**
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日程と構成は以下の通りです。お申し込みはこちらから。

<講習日時>
2019年1月13日(日)
9:15am-12:30pm 第1回: エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで
           *途中休憩15分含む3時間15分講習
12:30pm-13:30pm 昼食(各自)
13:30pm-15:30pm 第2回: エビデンスに基づくスポーツ傷害評価 ACL損傷の評価法
15:45pm-17:45pm 第2回: エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 手首の傷み評価法

ちなみに、基礎レベルの講習は「エビデンス(科学的根拠)に基づく…」とかよく耳にするけれど、どういうことか実はよくわからない、今更ヒトにも聞きにくい、という完全初心者さんウェルカムな講習で、むしろエビデンスに対して不信感とか苦手意識のある方にこそ来ていただきたいと思っています。エビデンスに基づく実践って思ったほど難しくないや、結構楽しいかも!と思って帰っていただければそんな幸せなことはありません。

午後に行う講習ふたつはどちらも新作の「臨床応用レベル」の講習で、今までの「基礎レベル」の講習から一歩踏み込み、感度や特異度というコンセプトを踏まえた上で実際に臨床の現場で皆さんがぶつかっていそうな症例にとびかかり食らいついていきます。「エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで」講習の事前履修を強くお勧めしますが、必須ではありません。感度や特異度、陽性/陰性尤度比の何たるかがわかっている方であれば問題なく楽しめる内容になっております。

ACL損傷編では「ACL損傷に使えるSelective Tissue Testにはどんなものがある?」「それぞれの有効性は?」「そういや結局Lelli Testとやらって使えるの?」など紐解いた後で、「では、実際に現場でこんな状況では、あんな状況どうすれば?」というところまで実技を交えて議論、手首の傷み編では臨床で見落とされがちな1) 舟状骨骨折; 2) 有鈎骨鈎骨折; 3) TFCC障害の3つに焦点を絞り、それぞれを「どう評価するのが最善か?」をエビデンスを探し、読み解きながらこちらも実践を交えて検証します。

第3回、4回のEBP講習は詳細は未定ですが、今のところ以下のように予定しています。
第3回: 2019年4〜5月開催予定
④EBP基礎編: 治療介入編
⑤EBP臨床応用編: 治療介入 - 腱障害とリハビリ

第4回: 2019年8〜9月開催予定
⑥EBP基礎編: 予防医学編
⑦EBP臨床応用編: 治療介入 - AMIと抑制解除療法

全講習、参加者の資格は問いません。元々ATC資格保持者さんのためにと思って企画した講習でしたが、今までPT、OT、柔道整復・あんま・鍼灸師さん、医師の方や大学教員・研究者さんなど幅広くご参加頂いています(ありがたやー)。学生さんも大歓迎です!リピーターさんも、リフレッシュにまたという方も結構いらっしゃいます。

<会場> 大阪リゾート&スポーツ専門学校

<定員> 各講習約50名

参加は午前のみでも、午後のみでも、両方でも。お申し込みはこちらから。全4回のシリーズもの講習ですので、継続して受講される方には『継続割引(取れば取るほどお得!)』が適応になります。

<受講料> 
午前(基礎編)のみ 10,000円(学生9,000円)
午後(臨床応用編x2)のみ 12,000円(学生11,000円)
午前+午後 20,000円(学生18,000円)
前回(9月)第一回を受講済みで今回第二回(午後のみ)を受講 10,000円(学生9,000円)

来やすいように色々割引を設定してみたら逆に表記がややこしいことになってしまってごめんなさい。でも午後はずーっとやりたかった、練りに練った内容ですので、実技も一杯の楽しい会になるかと思います。多くの方々にお会いできるのを楽しみにしておりますー。

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  by supersy | 2018-12-17 09:01 | Athletic Training

極寒のネブラスカより。

ここ一週間ほど大きな仕事と用事があってアメリカはネブラスカに来ておりました。明日帰国します。
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今回の訪問の大きな目的は、PRI本部でのAdvanced Integration(通称AI、4日間の年に一度の総会のようなもの、朝の8時からなんだかんだで夕方6時半頃まで講義が続く)に参加するということと、PRC (Postural Restoration Certified)という資格試験(AIの後の2日間)に同席して視察し、日本でのPRI資格について模索をするという2点でした。これだけでも考えることがいっぱい、お腹いっぱいになるところなんですが、加えて今回はほぼ全てのPRI Facultyが集まったこともあり(約1名を除いて)Faculty同士で質問をぶつけ合ったり、議論をしたり、お互いへの尊敬と愛を確認しあったりと(別に怪しい意味ではないです、非常に健全な意味で)非常に充実した時間が過ごせました。ロンのお家にお邪魔して、RJの手料理をご馳走になったりもしました!楽しかったー。

そんなわけでここ6日間の私の脳みそはわーわー大騒ぎだったわけなんですが…。しかし一度、たった一度、講習中ロンが「こんな患者さんだったらどうアプローチする?」という仮定の話をしている際に、彼が使った表現にハッと息を飲んで思考が止まった瞬間がありました。

その患者さんの描写には、こんなことが書かれていました。「主訴は右頸部の痛み」「プライベートでも仕事でもプレッシャーを抱えている」「首の痛みによって眠れない夜が多々ある」、と。

よくある話です。しかし、これらの情報…特に2つ目と3つ目はクリニシャン側が「適切な」質問をしないと引き出せない、重要な「正解」へたどり着く道へのヒントを含んでいます。

これらをゆっくり声に出して読んだ後、ロンは聴衆にこう問いました。「感じてごらん、この患者さんが自分の中に貯めこんでいっているストレスの多さを。毎日毎日蓄積されていく一方だ」

「患者さんが夜眠れていないと答えた、ということは私たちにとってどういう意味を持つかな」

「寝ていない、つまりこの患者さんは自分の身体を休めることもできていないんだよ」


そして彼はこう言ったのです。
治療できる身体も持ってきていない人に対してどう治療ができる?
充分に睡眠が取れていない=疲れている、ということは誰にも容易に想像がつくことかもしれません。しかしロンは、「この患者さんはこれから受けようという治療を神経的にプロセスできない状態にある」ということを「患者自身がクリニックに治療できる身体を持ってきてくれていない」と表現したのです。

そしてこう続けました、
「この人から大・小胸筋を取ってしまった(=過活動を起こしている筋肉に抑制をかけた)ところで、他にもっと呼吸が簡単にできる筋肉を与えなければ(=適切な筋肉を促通しなければ)この人はもっと苦しくなるだけだよ」と。


衝撃でした。

PRIをそれなりに長い期間学んでいるものとして、この患者さんがシナリオからしてAnterior neck inhibitionが必要なことは非常に明白です。しかし、彼はこの症例では我々クリニシャンがAnterior neck inhibitionに飛びつくことを「不正解」とした。何なら患者の状態を悪化させるリスクすらあると指摘したのです。

患者はreliefを求めてクリニックに足を運んでくれているのでしょう。しかし、彼らが引きずってくるものは何もその身体ばかりではありません。20年なら20年、30年なら30年生きた分の「歴史」も引き連れてクリニックのドアをたたく。それらを見極めないと「正解」だと思っていたものがあっという間に「不正解」になってしまうのだ、と暗に指摘され、背筋が伸びる思いでした。患者はパズルでなければ、治療の道はすごろくでもない。正解に向けてまっすぐ前にだけ進もうとすればいいというものではない、改めて患者さんを症状の塊ではなく一人の人間として時間をかけて見つめないといけない、ということを実感させられました。うぅむ、愛だなぁ…。



さて、話は大きく変わって最近読んだ論文についてです。

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多くの赤ちゃんは胴体を左に捩じり首を右に傾けながら産道を通ってこの世に生まれてきます(上図1)。この「首を右に傾ける傾向」は子宮内にいる赤ん坊にも生まれたばかりの赤子にも観察されており、2,3 特に仰向けに寝る赤ちゃんにはこの特徴が顕著に見られ、その後の右視野の発達と右視野優位性、右利き手の発生、歩行時の左右非対称性を説明するカギになっているのではと言われています。4,5

で。
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このhead-turning preference (頭の方向け方向の好み)は成長と共に消えると言われていましたが、大人になってもあるのでは?と説いているのがこの論文。6 本当に短い文章なので興味のある方は是非読んでいただきたいんですけど、ちょっとなんだか間抜けで面白い内容なんですよ(←褒めている)。

アメリカ、ドイツ、トルコの空港やビーチ、公園などで合計124のカップルがキスをするのをただただ観察したというこの研究。首の傾きはなんと、80/124(64.5%)の割合でカップル同志は首を右に、1/3ほどである44/124(35.5%)のカップルが左に首を傾けていて、統計的に有意な差が認められたというのです(p<0.05)。年齢幅が13-70歳だったらしいのですが(事後にインタビューしたんでしょうか…)、なんと年齢が高ければ高いほど首を右に傾ける傾向があったというのだから驚きです。年を取れば取るほど、ヒトの行動習慣は胎児時代に若返るのでしょうか?同じような割合(2:1)で足も左でなく右を、耳も右を、目も右を使うことを好む成人がいる、というのだから7 この「右好み」パターンは偶然ではないのかも知れません。

あれっ、右に首を傾け続けていたら、右頸部周りの筋肉は過活動を起こして、痛みが出るかも知れませんね。右の首が痛い患者さん、しかも痛すぎて夜も眠れないくらいだなんて、はて、なんだか、どこかで聞いたような…?



ついでといってはなんですが、最後に告知です!

1月13日(日)に第1・2回EBP講習 in 大阪を行います!9月に第1回として基礎レベルの「スポーツ傷害評価編」をやらせてもらいましたが、今回はそれを取り逃した人のためにリピート講習を午前中に、臨床応用レベルの「評価・ACL損傷編」「評価・手首の傷み編」を午後にお送りする形で、まとめて一日で開催します!**主催者が通常講習と異なるため、BOC EBP CEUsは尽きませんのでご了承ください**
日程と構成は以下の通りです。お申し込みはこちらから。

<講習日時>
2019年1月13日(日)
9:15am-12:30pm 第1回: エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで
           *途中休憩15分含む3時間15分講習
12:30pm-13:30pm 昼食(各自)
13:30pm-15:30pm 第2回: エビデンスに基づくスポーツ傷害評価 ACL損傷の評価法
15:45pm-17:45pm 第2回: エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 手首の傷み評価法

ちなみに、基礎レベルの講習は「エビデンス(科学的根拠)に基づく…」とかよく耳にするけれど、どういうことか実はよくわからない、今更ヒトにも聞きにくい、という完全初心者さんウェルカムな講習で、むしろエビデンスに対して不信感とか苦手意識のある方にこそ来ていただきたいと思っています。エビデンスに基づく実践って思ったほど難しくないや、結構楽しいかも!と思って帰っていただければそんな幸せなことはありません。

午後に行う講習ふたつはどちらも新作の「臨床応用レベル」の講習で、今までの「基礎レベル」の講習から一歩踏み込み、感度や特異度というコンセプトを踏まえた上で実際に臨床の現場で皆さんがぶつかっていそうな症例にとびかかり食らいついていきます。「エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで」講習の事前履修を強くお勧めしますが、必須ではありません。感度や特異度、陽性/陰性尤度比の何たるかがわかっている方であれば問題なく楽しめる内容になっております。

ACL損傷編では「ACL損傷に使えるSelective Tissue Testにはどんなものがある?」「それぞれの有効性は?」「そういや結局Lelli Testとやらって使えるの?」など紐解いた後で、「では、実際に現場でこんな状況では、あんな状況どうすれば?」というところまで実技を交えて議論、手首の傷み編では臨床で見落とされがちな1) 舟状骨骨折; 2) 有鈎骨鈎骨折; 3) TFCC障害の3つに焦点を絞り、それぞれを「どう評価するのが最善か?」をエビデンスを探し、読み解きながらこちらも実践を交えて検証します。

全講習、参加者の資格は問いません。元々ATC資格保持者さんのためにと思って企画した講習でしたが、今までPT、OT、柔道整復・あんま・鍼灸師さん、医師の方や大学教員・研究者さんなど幅広くご参加頂いています(ありがたやー)。学生さんも大歓迎です!リピーターさんも、リフレッシュにまたという方も結構いらっしゃいます。

<会場> 大阪リゾート&スポーツ専門学校

<定員> 各講習約50名

参加は午前のみでも、午後のみでも、両方でも。お申し込みはこちらから。全4回のシリーズもの講習ですので、継続して受講される方には『継続割引』が適応になります。

<受講料> 
午前(基礎編)のみ 10,000円(学生9,000円)
午後(臨床応用編x2)のみ 12,000円(学生11,000円)
午前+午後 20,000円(学生18,000円)
前回(9月)第一回を受講済みで今回第二回(午後のみ)を受講 10,000円(学生9,000円)

来やすいように色々割引を設定してみたら逆に表記がややこしいことになってしまってごめんなさい。でも午後はずーっとやりたかった、練りに練った内容ですので、実技も一杯の楽しい会になるかと思います。多くの方々にお会いできるのを楽しみにしておりますー。

1. Encyclopædia Britannica (2015). Child Birth. [image] Available at: https://www.britannica.com/science/parturition/images-videos/media/445271/2651 [Accessed December 11, 2018].
2. Ververs IA, de Vries JI, van Geijn HP, Hopkins B. Prenatal head position from 12-38 weeks. I. Developmental aspects. Early Hum Dev. 1994;39(2):83-91.
3. Konishi Y, Mikawa H, Suzuki J. Asymmetrical head-turning of preterm infants: some effects on later postural and functional lateralities. Dev Med Child Neurol. 1986;28(4):450-457.
4. Konishi Y, Kuriyama M, Mikawa H, Suzuki J. Effect of body position on later postural and functional lateralities of preterm infants. Dev Med Child Neurol. 1987;29(6):751-757.
5. Coryell JF, Michel GE. How supine postural preferences of infants can contribute toward the development of handedness. Infant Behav Dev. 1978;1:245-257. doi:10.1016/S0163-6383(78)80036-8.
6. Güntürkün O. Human behaviour: Adult persistence of head-turning asymmetry. Nature. 2003;421(6924):711.
7. Reiss M, Reiss G. Lateral preferences in a German population. Percept Mot Skills. 1997;85(2):569-574.

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  by supersy | 2018-12-11 23:30 | Athletic Training

第5回スポーツセーフティーシンポジウムに参加して: 紹介された文献を読んでみた。

タイトルの通りです。ずーっと参加したいと思っていたスポーツセーフティーシンポジウム、第5回となる会合に先日ついに足を運ぶことができました!
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Beat the Heat!というテーマで一日中熱中症について話す、というある意味とんでもなくマニアックな一日だったのですが、生理学や臨床実践の観点から様々な話を聞くことができて「おおっそれ面白い!」「この文献、読んでみたい!」と思ったものがボロボロ出てきたので、全文入手して目を通す機会があったものに関してなんとなく書き記しておきます。



①"Marathon is a planned mass casualty event."
4番目の演目、永田先生の講義でこんなフレーズを耳にしました。これは元々2013年のボストンマラソンのメディカルマニュアルにあった「Large scale sporting events, such as the Boston Marathon, create a number of complexities when managing medical programs, public safety partnerships, and interagency support. Boston and all of its stakeholders understand that events of this magnitude and side are more or less, planned mass casualty events.」という文章から取ったものらしいのですが(引用元のこれ以上の詳細は分からず、探してみたのですがそれらしい文献には行きつかずこのままで申し訳ありません)、これを聞いてそりゃそうだよなぁ確かになぁと思わず納得してしまいました。
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次いで紹介されていたこの文献1を読んでみたのですが、冒頭から痛いところをついてきます。
マラソンなどの規模の大きなイベントを執り行う場合、参加者の安全確保のために道路規制をかけたり、多数の医療スタッフをイベントに配置したりするなど特別な措置が取られる…が、これらの「準備」によって逆に参加していない一般人への医療提供に滞りが生じたりするなどして予期せぬ被害が生まれることはないのか、ということのようです。で、そういうことを調べている研究ってないよね、と。

この研究で検証されたのは
1) 大きなマラソンの当日に開催地近くの病院(Marathon-affected hospitals)に心筋梗塞・心停止で入院したMedicare保険適応患者
2) マラソンが起こった同曜日、イベント5週間前・後以内に同理由で入院したMedicare保険適応患者
3) 大きなマラソンの当日にマラソンの影響を受けなかった近隣の病院(Control hospitals)に同理由で入院したMedicare保険適応患者
それぞれの患者群で、救急車到着までと搬送にかかった時間、救急搬送中の搬送先の変更、病院で受けた治療、入院後30日間の死亡率等のデータを検証、比較したそうです。*Medicare患者に絞ったのは恐らくマラソンに参加しているようなpopulationではないだろう、という推測に基づくもので、実際これに含まれた「患者」がマラソン非参加者(non-participants)だったという確認は取っていないようです。ふーむ…。ランナー登録と照らし合わせるには個人情報の保護や手間などの問題があったんでしょうか…。

対象となったのは登録ランナー数が全米でもトップ11の大規模なマラソン(i.e. ボストンやシカゴ、ホノルルやヒューストンなど)で、unadjustedな死亡率と、死亡率に影響を与える年齢、性別、人種や慢性持病、収入中央値などを参考に病院ごとに数値をadjustしたものと両方で分析したそうな。
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で、結果です。まず、マラソン前5週間 vs 当日 vs マラソン後5週間では、患者の特徴に統計的に有意な差はなかったと(↑Table 1)。Medicaid適応資格、アルツハイマー病、A-fib、慢性腎臓疾患の有無には統計的傾向はあったみたいですけどね。ふーん。性別や人種も差が全くなかったというわけではなさそう。
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上のAとBがUnadjustedな30日以内の死亡率です。グラフAでは近隣の病院(Control hospitals、青線)ではpoint valueと95%CI共にマラソン前後5週間で比較的安定した死亡率(25%前後)を記録しているのに対し、マラソン地域の病院(Marathon-affected hospitals、橙線)では当日にグンと死亡率が上昇している(24.9%から28.2%まで、3.3%上昇; 95% CI 0.7-6.0%, p = 0.01)のが見て取れます。グラフBでも同様に、マラソンの日の影響は特に受けていないControl hospitalsと、マラソンの日に死亡率が上がっているMarathon-affected hospitalsが確認できますが、95%CIを見る限り統計的な有意性はないかな…?と思いきや、adjustedの分析(グラフC)ではマラソン日28.6% (95% CI 26.1-31.1%) vs 非マラソン日24.9% (95%CI 24.1-25.6%)ということでやはり3.7% (95%CI 1.1-6.4%)の死亡リスク上昇が見られたそうです。一方で、Control hospitalsではマラソン日25.0% (95% 23.6-26.4%) vs 非マラソン日24.7% (95% CI 24.3-25.2%)で、やはり差(0.3%, 95% CI -1.2~1.8%)はないよ、と。

原因となりうるものはなんなのか?
ひとつの導き出せる理由として、「マラソン当日と他の日とでは受け入れ病院に違いはなかった」、つまり、「マラソンやっていようがやっていまいが、心停止で運ばれる病院は一緒」ということがあり、要約すると、「マラソンでスタッフが出払って手薄の病院で、普段の患者ボリュームを支えなければいけなくなる」可能性を示唆しています。
なので、救急車両での搬送距離にはマラソン日 vs 非マラソン日で違いがなかったそう…なんですが、マラソン当日の午前中には搬送にかかった時間が著しく長かった(18.1 min vs 13.7 min, 差4.4 min, 95%CI 1.3-7.5 min, p = 0.005)のだとか。これはパーセンテージに直すと「マラソン当日、午前中の救急時搬送時間は通常より32.1%長くかかった」ということになるんだそう。この差は交通規制が解消される夕方には解消されているそうなんですが。
まとめると、著者らは「交通規制」「救急車両の散らばり」「病院でのケアの遅れ」がこれだけの「重篤(substantial)な死亡率の上昇を招いているのではないか」と考察しています。個人的には「救急車両の散らばり(diversion of ambulance resources)」がどこから導かれたのか理解に少し苦しみます(救急車両の到着時間に大差はなかったはずで、差が確認されたのは大会午前中の搬送時間のはず…これは交通規制によるものと考えられ、救急車両のリソースが散らばっていたからとは考えにくいです)。本文にも一か所typoがあり(p.1448の"a relative difference of 13.3%"というところは3.3%の間違いではと思います)、ちょっと終盤で「??」と考えてしまう個所が多いのですが…。

ともあれ、この論文の最後には「町全体を飲み込むようなイベント開催する際には、イベント参加者のみならず、非参加者の健康、救命も考慮に入れられるべきだ」と結論づけられていて、これには私も賛成です。近隣の住民の健康を犠牲にしてまで大きく危険なイベントを開催するメリットがどれだけあるのか…仮にそれに対する経済効果があるにしても、対価として我々が支払っている犠牲は何なのか…我々医療のプロはイベント運営スタッフと共に一度手を止めて熟考すべきなのではと思います。



②汗腺だって疲れる
3番目の登壇者、永島先生のこの一言も印象的でした。
発汗とそれによる蒸発で起こる熱放散は非常に効果的だ、と示した後で引用されたこの論文(↓)2はちょっと面白かったです。
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8人の思春期前の子供(平均9.4±0.6歳)、8人の若年成人(平均22.7±0.8歳)と8人の年配者(平均71.0±1.0歳)の運動中の発汗能力を検証したこの研究、運動と共に直腸音はどの年齢層でも同様に上昇していったが、比較して、1) 絶対発汗量、表面積当たりの発汗率は子供で著しく低く、2) 運動により代謝で生まれた発熱量(heat production)、環境からの熱利得量(heat gain)は子供のほうが著しく高い…つまり、子供は運動中、体温が成人よりも上がりやすいにも関わらずその熱を効率的に逃がすシステムが完成しきれていないという、非常に耐熱管理が不利な状況にあることが報告されています。ほうー。
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それでそれで。こちらの研究3では熱順化をした男性被験者を8名用意して、それぞれ体重の3%、5%、7%脱水させ、運動中発汗がどう変わるかや深部体温の変動を見た、というなかなかに過激な検証を行っています。現代では倫理審査に通らないかもねー…。
で、分かったこととしては、
1) 脱水していればいるほど、運動中深部体温が上がり、心拍数も上昇する
2) 脱水していればいるほど、運動中の発汗率は下がる
まとめると、こんなグラフ(↓)になるようです。
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ということは成人はもちろん、発汗能力が低い子供は運動中特に水分補給をこまめに行い、発汗能力を十分に高めておく必要がある、ということが見えてきます。

では、飲めば飲むだけいいというのか?…というところで、冒頭の言葉です。飲んだら飲んだだけ、蛇口をひねるように汗が出るようには我々の身体はできておらず、実際には汗腺が一生懸命働いてくれることで汗が作られているのです。運動して、いっぱい水分も取ってじゃんじゃか汗を作っていれば、汗腺もそのうち疲弊してきます。
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そんなことをまとめてあるのが上の論文4。1955年発表とかなり古いものなのですが、こちらも古いだけあってかなり過激な内容になっています。4人の暑熱順化していない若い男性被験者さん(年齢不明)を冬季にめちゃめちゃ暑い部屋に入れ(室温40-45℃、湿度60-90%)、ベッドに寝っ転がってもらって直腸温、発汗量、記録した、というもの。
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で、結果は激しい発汗を3~6.5時間ほど続けた後、発汗率は急に悪くなった(青い矢印; 最大値の30-60%にまで落ち込む)んだそうです。室温、直腸温共に上がり続けたにも関わらず、です(赤い矢印)。分析によると、これらの汗腺は急に活動をやめたというよりは、同じ活動レベルを続けていたそうなんですが、発汗アウトプット量ががくんと減ったと…つまり、汗腺が急にお休みモードになったわけではなく、なんとか汗を作ろうと努力は続けているけれども生産性を保てない状況(=疲労)に達したことを示しているそうです。

この論文では、「汗腺はその機能回復のスピードを需要が越えさえしなければずっと汗をかき続けられるが、機能回復能力以上の発汗需要がある場合、発汗率は汗腺の疲労によって低下していく」とまとめられています。暑熱順化すると発汗率が上がる、というのは有名な事実ですが、これは神経系の伝達メカニズムなどが向上して体内の発汗効率が良くなったというよりも、汗腺が鍛えられて疲労しにくくなったってことなのかしら?という新たなイメージを育むことができました(これが合っているのか分かりませんが)。

運動時はそれでなくても消化器官の血液循環は悪くなりますから、運動中にがぶがぶ水を飲んでも効率のいい発汗を保てるとは限らないんですねぇ(そもそも飲んだ水の吸収も悪くなるし、吸収できたとしても前述のように一定時間後に汗腺の疲労が起こってしまうから)。ですから、永島先生の仰る「(運動中の)飲水を過信するのは危険」「運動前に身体に水分が満ちている状態(euhydrated)にすることが大事」というのには大きく頷けました。非常に面白い講義でした。



③身体の水分量に関わる用語
素晴らしかったと言えば、最後のスピーカーであった細川由梨先生!今までに発表されたデータから、まだ未発表のものまで盛り沢山で本当に勉強になりました。彼女の操る日本語もとても美しく、私もああならねば…と憧れの眼差しで見ておりました。
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その由梨ちゃんから講演後、こんな本(↑)5を紹介してもらったんです。…というのも私が「学会中に使われていた用語に少し不一致があったかな?」とTwitterで言及し、誤用されやすいHypohydrationとDehydrationという用語を分かりやすく図解できないかと試行錯誤していたんですが、この図を見ると分かりやすいですよ、と丁寧に教えてくれたのです。これ、オンラインフルテキストの本みたいで誰でも閲覧可能なんですが、中にあったその図というのがこれです(↓)。すごくわかりやすい!目からウロコが落ちるようでした。
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この概念を少し反映させてもらって、元々私が作っていた図にさらに手を加え、完成したのがこちら(↓)です。
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Hypohydration (何かから水分が抜けてカサカサになっているような状態)と、Dehydration(何かから水が無くなっていくという過程)を両方とも「脱水」という日本語に訳してしまえるからそもそも分かりにくいんだと思いますが、元々健康的な領域を脱して水分を失ったHypohydratedという脱水「状態」は病理状態であり、そこに辿りつくまでの過程がDehydrationという脱水「行為」なのだということです。逆に言うと元々Hyperhydratedしている人がDehydrateしたからといってHypohydrateになるとは限らない(Hyperhydrate→Euhydrateになるだけかも)ので、Dehydration≠Hypohydrationということも分かりますし、必ずしもDehydrateが病理を示すものでもないということも分かるかと思います。

更に言及すると、このHypohydration、EuhydrationとHyperhydrationという身体の水分状態を示す言葉はスペクトラムを構成し、それぞれの状態に幅があります。「Euhydration寄りのHypohydration」や、「Hyperhydration寄りのEuhydration」、というものも存在するということです。一日を通じて水分状態はfluctuate...増えたり減ったりと揺らぐものであり、水をごくごく飲んだ2時間後程は身体の水分状態はこの図右へと傾くでしょうし、逆に汗をいっぱいかき、水分補給をする直前には左へ傾きます。それでいいんです。全く微動だにしない一定値に保たなければ!と思わなくていいし、その必要もないのです。

そこがうまいこと示されているのが、由梨ちゃんが共有してくれた先の図です。Euhydrationの部分に波のような線が描かれていますが、これは「Euhydrationは体内の水分が〇%という特定の状態を指しているのではなく、〇から〇くらい、という幅を持つものであり、一日を通じて波のように変動しますよ」「でもその波を『正常』の範囲内に保っておけば充分Euhydrateと言えますよ」ということを示唆しています。私はこれを矢印でスペクトラム状の図にすることで表現してみましたが(私の頭の中ではこういう風に生理されていたので)、この波モデルも揺らぎをたたえているようでなかなかに深みがあり、素敵だと思います。

由梨ちゃん、貴重な情報源をシェアしてくれてありがとう!スポーツセーフティー・シンポジウムの登壇者様、オーガナイズしてくださったスポーツセーフティージャパンのスタッフの皆様、重要な学びの場を設けてくださってありがとうございました!また来年も行きます。

1. Jena AB, Mann NC, Wedlund LN, Olenski A. Delays in emergency care and mortality during major U.S. marathons. N Engl J Med. 2017;376(15):1441-1450. doi: 10.1056/NEJMsa1614073.
2. Inbar O, Morris N, Epstein Y, Gass G. Comparison of thermoregulatory responses to exercise in dry heat among prepubertal boys, young adults and older males. Exp Physiol. 2004;89(6):691-700.
3. Sawka MN, Young AJ, Francesconi RP, Muza SR, Pandolf KB. Thermoregulatory and blood responses during exercise at graded hypohydration levels. J Appl Physiol (1985). 1985;59(5):1394-1401.
4. Thaysen JH, Schwartz IL. Fatigue of the sweat glands. J Clin Invest. 1955;34(12):1719-1725.
5. Freund BJ, Sawka MN. Influence of Cold Stress on Human Fluid Balance. In: Institute of Medicine (US) Committee on Military Nutrition Research; Marriott BM, Carlson SJ, eds. Nutritional Needs in Cold And in High-Altitude Environments: Applications for Military Personnel in Field Operations. Washington(DC): National Academies Press (US); 1996. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK232865/ doi: 10.17226/5197.

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  by supersy | 2018-11-26 21:00 | Athletic Training

スポーツ中に起こる内臓損傷の実態

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こりゃーワクワクするタイトルです!一昨日発表になったばかり!早速読んでみます。

アメリカでは現在、スポーツ現場で起こる障害を記録するシステム(Injury Surveillance)として3つの大きな枠組みが存在します。High School-RIO(高校スポーツで起こる怪我監視システム)と、NCAA-ISP(大学スポーツで起こる怪我監視システム)と、NCCSIR(高校・大学の全米規模のCatastrophic Sport Injury監視システム)。これらの超巨大情報バンクから毎年刺激的な論文がバンバン出ていますが、中でも内臓損傷(Internal Organ Injury)の論文ってなかったよね、需要はあるよね、ということで、過去10年(2005-2006年から2014-2015年まで)に起こったスポーツ中の内臓損傷を振り返ってみましょう!というのが今回の論文です(3つのスポーツ傷害監視システムの詳細については本文のTable 1をご参照ください)。

*ちなみに今回の論文、ターゲットにしたのはDirect Contact(i.e. ヒトや道具、地面による衝撃)による腹部ないしは胸部の内臓損傷(i.e. 肺や腎臓など)で、Commotio Cordisは臓器の直接的損傷というよりは心拍リズムの乱れが原因で起こるので当論文の対象からは除外しました、だそうです。個人的には入れてもよかったのではと思いますが。

では、結果です。

過去10年間で3つのシステムに報告されたスポーツ傷害データによれば、Direct-Contactによって起こった内臓損傷は全部で174件だったそうです。内訳は、
 High School-RIO: 124
 NCAA-ISP: 41
 NCCSIR-HS (catastrophic): 7
 NCCSIR-College (catastrophic): 2

怪我の75.3%(131/174)が高校で起きているんですね。しかし、競技人口が大学のそれより格段に多い点を考慮に入れ、受傷率(Injury Rate = IR, /1,000,000 AEs)に直すとやはりリスク同程度(高校:IR = 3.49, 95%CI 2.87-4.10; 大学: IR = 3.55, 95%CI 2.46-4.63)とのことですが。患者の性別はそのほとんど男性で(高校: 111/131, 84.7%; 大学: 18/20, 90.0%)、傾向としては1) 半数以上がフットボールで起こっている(高校: 65%, 大学: 58%)、2) 約半数からそれ以上が(練習ではなく)試合で起こっている(高校: 67%, 大学: 49%)、3) そして半数以上が他プレイヤーとの接触で起こっている(高校: 78%, 大学: 68%)、という点が挙げられます。

競技別に受傷率(IR, /1,000,000 AEs)を見ると…
 - 高校フットボール: IR = 11.68 (9.12-14.24)
 - 高校ラクロス: IR = 10.00 (3.07-16.93)
 - 大学フットボール: IR = 8.30 (4.98-11.62)
 - 大学アイスホッケー: IR = 7.85 (0.97-14.73)

…が一位と二位になるようで。やっぱりフットボールが高校・大学の両レベルで多いのは明確ですね。そこで過去10年間のフットボールにおける内臓損傷率を並べてみると…
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件数が少ない分決定的なことは言いにくいですが、明らかに増加傾向にあるとか、減少しているとか、そういうハッキリとしたことは言えないようです。個人的にはスポーツそのものの「アタリ」がキツくなったりはしていますが、練習量の制限がより厳しくなったり、タックルの技術に関しても安全指導が進んだことによってリスクの増減が相殺されているのかな、などと勝手に考察しましたが。ともあれ、過去10年に内臓損傷のリスクに大きな変化はなかった、というのがこの論文の結論でした。

NCCSIRによれば、内臓損傷による重篤な事故(catastrophic injury)は過去10年で9件報告されており、これらもやはり1) 高校で(7/9)、2) フットボールで(7/9)、3) 試合中に(5/9)、4) 多プレイヤーとの接触で起こった(6/9)という傾向はそのまま反映されています。うち、4件は死亡、5件はsemipermanent or permanent disabilityに繋がったそうです。
4件の死亡例の詳細は、
 - 14歳の高校生チアリーダー。バスケットトスの最中、回転が足らず、腹部から下に落ちる形でキャッチされる。腹部の痛み、息苦しさを訴えた後に意識消失。脾臓破裂で出血多量による死亡。
 - 18歳の高校生フットボール選手、タイトエンド。前後2プレイヤーにタックルされ、脾臓と小腸を損傷。手術をするも合併症で命を落とす。
 - 15歳の高校生フットボール選手、ワイドレシーバー。ボールキャッチの際、2人のプレイヤーに挟まれるようにタックルを受け、その後自力でサイドラインまで歩行するも意識消失。肝臓損傷で翌日死亡。
 - 20歳大学ロデオ選手。チェストプロテクターを装着していたが、牛に胸部を踏まれ死亡。詳しい臓器は不明だが、書き方からは複数の臓器の損傷が想像される。
…という感じ。読んでいるだけで痛々しい。ううう…。
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具体的な(非・死亡例も含む)内臓損傷について、残念ながらRIOのデータではどの臓器が、という情報が欠損しているため、NCAA-ISPとNCCSIRのシステムからのみの情報になりますが、詳細をまとめると…
 - 受傷数トップが腎臓(ISP = 33.9%, NCCSIR = 14.9%)と脾臓(ISP = 14.3%, NCCSIR = 57.1%)
 - 次いで肺、腸、肝臓、膵臓、そして複数の臓器の同時損傷

…とのこと。私、死亡例ばかり頭に残っていたからか脾臓・肝臓が一番多いのかと思ってました…。腎臓もかなり頻度は高いのね。死亡に繋がることが少ないってだけか。

そんなわけでまとめると、
 - スポーツ外傷において、内臓損傷が起こることは稀である
 - しかし、いざ起こると重篤な被害を起こすのもまた事実である。一次予防に取り組んでいくことはもちろん、現場で働くATが腎臓、脾臓、肺、腸、肝臓、膵臓などの内臓損傷の兆候をいち早く疑い、見つけ、迅速に適切な医療機関への受け渡しをすることが二次予防につながる。

というところに尽きるかなと。日本版NCAA…UNIVAS?でしたっけ?が始まったら願わくば各大学にアスレティックトレーナーが配属されることが義務付けられるようになるといいなと思っていますが(その際はJSPO-ATの資格保有を必須にすべきと個人的には感じています)、その際にNCAAで実際に行われているようなInjury Surveillanceのシステムを導入し、「日本大学スポーツで起こる全ての怪我がセントラル・ロケーションに記録されている」状態を作るのは今後この国でのスポーツ発展に必要不可欠だと思います。捻挫や前十字靭帯断裂といったスポーツ外傷のリスクマネジメントや、熱中症や頭部外傷などの死亡事故の予防もまず現状のリスクを把握するところから始まらなければいけませんからね。ここで得られた情報が我々の未来への知識の欲求を形成し、それが未来のAT育成の教育にも反映されるのですから、こういったシステムの構築についてUNIVAS内で活発に議論されていることを祈ります。私はそこから出てくる論文を将来読んで、NCAAのものと比較したりしてウハウハ楽しく勉強させてもらえるのを楽しみにしてます。

1. Kucera KL, Currie DW, Wasserman E, et al. Incidence of sport-related internal organ injuries due to direct-contact mechanisms among high school and collegiate athletes across 3 national surveillance systems [published online on October 30, 2018]. J Athl Train. 2018. doi:10.4085/1062-6050-271-17.

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  by supersy | 2018-11-01 19:30 | Athletic Training

NATA最新Position Statement、「Patellomofemoral Pain(膝蓋大腿疼痛)に対するマネジメント」を読み解く。

にゃー立て続けに!
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また新たなNATA Position Statement1 がリリースになりました!今度はPatellofemoral PainのManagementについて。これ結構前の全米学会で少し聞いたかも。とりあえず読んでみましょう。今回も各項目の推奨度がStrength of Recommendation(SOR) A, B, Cに分類されているので、いつも通り、A = what we must do、B = what we should do、C = what we can doと勝手に解釈して要約したいと思います。

【導入部】
Patellofemoral Pain(PFP)は運動を日ごろからする、特に女性に多く、この障害を発症する70-90%の患者は症状が再発したり慢性化するなど被害は甚大である。治療介入は短期で一定の効果を発揮するが、長期となるとなかなかアウトカムが思うように向上しないこともあり、整形外科界のブラックホールとも称されることもある。これは我々のPFPという障害に対する不十分な背景的知識の欠如を示しているのかもしれない。

【Risk Factors (危険因子)】
1. 1) 走行時、着地時などダイナミックな動作に伴う股関節内転と内旋(推奨度・B)、2) 走行時やドロップ着地時の膝外転的衝撃(推奨度・B)、3) 外側踵、第2・3中足骨を地面に叩きつける(increased vertical peak force)ように走る(推奨度・B)*1、4) 外側広筋と比較した、内側広筋、特にVMO部位の発火のタイミングの遅れ(約0.30~0.67ミリセカンド、推奨度・C)、5) 大腿四頭筋タイトネスと垂直飛びのパフォーマンス低下(推奨度・B)はPFPの危険因子である。同様に、6) 大腿四頭筋の出力低下*2はリスクを上げる(推奨度・B)が、一方で 7) 股関節外転・外旋・伸展のisometric出力低下とQアングル、足部のアラインメントや下腿から踵の角度などの静的計測はリスクに影響を及ぼさない(推奨度・B)、
*1Supination(回外)からの充分なPronation(回内)が起こっていないということか?Foot wobbleが足りずにhard landingになっている?
*2これはisometricなのかcon/eccentricなのか不明。元の論文読んでみないとなー…。

【アウトカム計測】
2. 治療介入をする段階になったら10段階のVASで痛みの変化を追い、前週と比較して2.0以上VASの数値に変化があれば「臨床的に有意な改善・改悪があった」と捕えられるべきである(推奨度・B)。
3. その他に使うPatient-Based Outcome MeasuresとしてはAnterior Knee Pain Scale (AKPS, MCID = 10.0)かLower Extremity Functional Scale (LEFS, MDC = 8.0)*3が挙げられる(推奨度・B)。
*3 いやいや、そこはどちらもMDC、MCID両方書いてくれないと!もしやここはまだestablishされてない?それを推奨するって、どゆこと?

【保存治療】
4. PFPは複数の要因が絡まって起こる障害であるからして、治療も多角的(multimodal)でないといけない。具体的には殿筋+大腿四頭筋の強化、Patient EducationとActivity Modificationなどを含むべきである(推奨度・A)。エクササイズプログラムは(大腿四頭筋よりも)殿筋の強化により重きを置き(推奨度・B)、内・外腹斜筋、腹直筋、腹横筋、脊柱起立筋、多裂筋*4に重きを置いたコアエクササイズも同時に処方されるべきである(推奨度・A)。
5. PF関節にかかる負担を減らすため、大腿四頭筋のエクササイズをする際は、NWBのポジションでは膝の屈曲角度は45-90°の間で、WBの場合は0-45°の角度で行うべし(推奨度・C)。この際、膝蓋骨テーピング(McConnell Tapeのことだと思われるが、明記なし)をすることで痛みを軽減しながらのエクササイズが実現することも(推奨度・B)。
6. リアルタイムの視覚や聴覚によるフィードバックを使いながら外側膝などの危険因子となる動作に介入していく(movement retraining)べし(推奨度・A)。
7. 必要があれば足底版や超音波、レーザー治療なども併用するべし(推奨度・B)。
*4 これ全部、本当に?と個人的には思いますが…。膝だけじゃなく、もう少しHolisticに行こう、というメッセージとしてならともかく…。腹直筋と脊柱起立筋鍛える必要あります?横隔膜と骨盤隔膜はどうした?この分野に関しては、他にも私は今はこれは絶対しない、と言いたくなるものも多くあります…。ぐぬぬ。

【手術介入】
8. 明らかな膝蓋骨の不安定症があったり、保存治療が失敗したときにのみ手術を考慮するべし(推奨度・A)。
9. Lateral Retinacular Releaseは 膝蓋骨の過度なlateral tiltingのみがあり、不安定症や軟骨の高度損傷が付随していない場合に限り有効である(推奨度・B)。
10. Tibial Tuberosity Osteotomyなどのリアラインメント手術もPFP、不安定症がある患者には有効である(推奨度・B)。

背景部分で面白いところを抜き出すと、危険因子の中にVMOの発火の遅さの言及などあるのだから、VMOをターゲットにトレーニングすればいいのでは?となりそうだけれども、この歴史的に良いとされてきたトレーニング法は、(特にVMOにターゲットに絞らず)大腿四頭筋全体を鍛えたトレーニングに何ら利益を足さないことが分かっている、という部分でしょうか。つまりもう、「はいーVMO鍛えますよ、Quad Setやりましょつんつんつんつん…」みたいなアプローチに拘ることはPFP患者にとって有益ではないということですね。本文中にRussianなどのNMESなどの電気治療を足すことによる追加利益はほとんどないと明記されていますし。これは聞かせてあげたいATがたくさんいる…。

大腿四頭筋強化に有効なエクササイズの一例として、本文では以下(↓)のようなものが挙げられています。まぁびっくりするようなものはありませんかね。総じて大腿四頭筋よりも殿筋、体幹の筋肉に重きを置いたトレーニングのほうが改善が早い、という個所も興味深かったです。
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ただね、やっぱり何度か読んでみても全体的に保存治療の箇所に納得がいかないんですよ。結局対処療法の域を出ていないように見える。例えば着地時に大腿が内転・内旋する→過度に膝外転し過ぎてはいかんと脛骨が外へ捻りかえし、足部は回外する…という多関節筋連鎖的リンクがあるとして、これによって膝部で捻じれが生じ、結果patellar pullが乱れPFPが起こっている…んだとしたら、問題は大腿を内旋位に持ってきている前傾した骨盤にありそうだし、それは当然殿筋群の活性を乱す原因になりえるでしょう。そう考えると臀部への介入でアウトカムが向上するのも納得がいきます。しかしその場合、介入すべきは本当に「臀部」なのか?そもそも骨盤を前傾させたのは誰なのか?ここらへんに私はこのPosition Statementが触れなかった横隔膜と骨盤隔膜が一役買っていると考えます。特に意志なく、言われた通り動く膝蓋骨を悪者に仕立て上げて、Lateral ReleaseしてみたりTibial Tuberosity移動させてみたりするような時代は完全に終わったと思っていたし、あそこらへんの手術が長期でそれほど有効なアウトカムを生んでいないのはエビデンスもそれなりにあるかと思っていたのですが(いや、よほどExtremeな形成異常がある患者の場合は有効かもしれませんが、少なくともTibial Tuberosity Osteotomy手術を受けた一人の患者としてこの手術は今の知識があったらしていなかったとは声を大にして言いたいです)。

そもそもの危険因子の研究がほぼ全て後ろ向きなので、因果関係の証明になっていないんですよね。だからそこに介入すればいい、という理論の裏付けが不十分なんです。何故損傷を起こしていないVMOの発火がVLに比べてほんの少し遅れてしまうのか、どうしてその発火パターンが見についてしまったのか?この原因究明と介入を話すことがない限りは、アウトプットをいくらいじっても仕方がないでしょう。このままでは「整形外科界のブラックホール」から完全に脱せるようになるまではあと10年はかかるんじゃないかと思ってしまうような内容でした。私が5年、10年前に捨てたPracticeが良しとされているのを見るのは衝撃的で、非常に複雑な思いです。私のリハビリの観点、人を見る視点がそれほど一般のATからズレてきてしまっているということかも知れませんが…。

ただ、この分野の専門家の集まりである著者らを責めることもできないのも事実です。文中に何度も書かれているように、そもそも現状、発表されている研究の一貫性やデザイン上の考慮が足りない部分が多すぎる。加えてPFPという障害が起こるにあたって患者の身体の中であまりに複雑に複数の要素が絡み合いすぎていて、このデータはどこのmanipulationによって変化があったのかなど判断し辛い。確かに「現時点で出ているエビデンスに基づいて、全ATに分かりやすいように無難に」書くならばこういう文章になるのもわかります。そうせざるを得ないのは、よーくわかります。悲しいですが、まだまだ患部に電気治療にアイシングする程度の狭い臨床感しかないATも数多くいるのでしょうから、「殿筋や体幹にも目を向けてね」というメッセージをNATAとして発信できただけでもう充分今回のPosition Statementには意味があったというのが現状の可能性はあります。

私はPosition Statementを読むのが好きです。しゃくしゃくもぐもぐ読んでいく中で、プロのATとして、我々は最低でもどこまでを知っていて、何ができることを「よし」とされているのか、それを自分の心に刻み込むように確認できるからです。

Position Statementの中には、エビデンスレベルが覆らないレベルでもう充分に高く、「完成形」に近い、と私が個人的に感じることもあれば、これはまだまだだなぁ、良質のエビデンスが圧倒的に足りないなぁ、と感じる分野もあります。今回のPosition Statementが出たことはいつものように有難く受け止め、専門家さんの尽力に感謝して誠意を持って読ませていただきましたが、この内容がまだまだ満足すべきレベルに達していないことは誰の目にも明らかだと思います。誰の悪口を言いたいわけじゃありません。PFPに関するエビデンスがもう一回り熟すのを待ちながら、その間ここに書かれた内容以上の治療が提供できるよう勉強し続けていきたいと思います。

1. Bolgla LA, Boling MC, Mace KL, DiStefano MJ, Fithian DC, Powers CM. National athletic trainers' association position statement: management of individuals with patellofemoral pain. J Athl Train. 2018;53(9):820-836. doi:10.4085/1062-6050-231-15.

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  by supersy | 2018-10-31 23:40 | Athletic Training

NATA最新Position Statement、「アスレティックトレーナーのWork-Lifeバランスの促進について」を読み解く。

How did I miss this? このPosition Statement, 発表は今年8月になっていますが、一週間ほど前まで目にしませんでした!早速読んでみましょう!
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まずはこのPosition Statementが発表されるに至った経緯についてざっと妄想したいと思います(注: あくまでも個人の妄想です)。正直言ってこのPosition Statementに特に我々が読んで目からウロコが落ちるような目新しい情報はないのですが、1) NATAがこのPosition Statementを出さなければいけないと危機感を感じるほど、現状、ATがWork-Lifeバランスを保てていない→結果、28~30代にかけて離職率が高いことを深刻に危惧しており、組織として何かアクションを取らなければと思っている、ということ。そして、2) 全米各地で働くATがこのPosition StatementをNegotiation Toolとして使って積極的に雇用主と労働環境について討論し、各職場環境を改善してほしいと思っていること…が背景にあるんじゃないかと思うんです。我々が今まで許してきた悪文化、例えば「on call 24/7(電話があれば24時間365日いつでもすぐに対応する)」から本気で脱却しようとしているその気持ちの表れだと思うんですよね。覚悟を感じます!

では、実際にPosition Statementに書かれている推奨事項をまとめていきたいと思います(いつもはかなり簡略化しながらさっぱり要約するのですが、今回はそれを殆どせずに原文に比較的忠実にまとめようと思います)。他分野のPosition Statementにあるように、今回も各項目の推奨度がStrength of Recommendation(SOR) A, B, Cに分類されているのですが(そしていつもA = what we must do、B = what we should do、C = what we can doと勝手に解釈してますが)、この分野のエビデンスはRCTをしてどうこうというものでもないので結局のところほぼ全ての項目が推奨度Cになっています。

管理職員や監督者が考慮・実践すべきこと
1. ATに対し、gender-、marital-、parent-neutralなWork-lifeポリシーを作成するべし。このポリシーにはpersonal leave(病欠、休暇などを含む欠勤)やpatient-care coverage(通常営業時間の設定やその例外、medical coverageの定義、イベントの予定変更はいついつまでに連絡する)についての規則などが含まれているべきで、全メディカルスタッフ、コーチや管理職員全員が持つ共通理解として伝達しておく必要がある(推奨度・C)。
2. ATとコーチ・管理職員とのミーティングを定期的に(最低でもシーズン開始前に一回)持ち、その際にはミーティングのアジェンダを前もって作っておくべし(推奨度・C)。
3. ATスタッフ一人一人の仕事量、ニーズを公平に評価するべし(推奨度・C)。
4. 新規雇用になったATには先輩職員をメンターに付け、組織としてWork-lifeバランスについての教育を積極的に行うべし(推奨度・C)。
5. それぞれが個の責任を全うしながら必要があれば仕事をシェアし合う、というModified Job Sharingシステムを採用し、イチ職員にとって重要な用事(病院のアポや友人の結婚式、子供の発表会な一日オフなど)がある場合、お互いをカバーし合う形で勤務できるようにすべし。例えば夏休みの間には全スポーツ選手用にATセンターを一か所だけ開けておき、シフト制の勤務に切り替えることで休みを取り合うシステムを実施するなど、秋学期開始前にリフレッシュする機会を積極的に設けるべし(推奨度・C)。
**この項目は個人的には画期的です!何故なら「個人的な用事」の例に実際に"...such as a wedding, a child's recital, or a day off(p.798)"と、本人にとって大事であれば周りの全員が大事だと賛成しなくてもいいような些細なこと…「(休みたいときの)a day off」まで明記されているからです。私もこの年になって、頑張るときは覚悟決めてシートベルト締めてアクセル全開で頑張るけど、「あーもう休まなきゃだめだ!」というときは休む以外ないと実感します。だましだましいくにも限界があります。本人の「ここで一日休みたい/休まないと仕事の質が保てない」という声には皆で耳を傾けるべき!もちろんそれを特定の個人が乱用するようなことがあってはダメだけど。

6. 職員が社会的・精神的サポートを要しているときは、それを提供すべし。ポリシーの積極的な実践を推奨し、形式的、非形式的の両方の手法でATがその価値を認められているという実感を作るべし(推奨度・B)。
7. スタッフの努力を認め、それに見合う褒美を与えるべし(これは金銭的なものばかりでなく、予期せぬ休日や「ありがとう」の言葉なども含む)(推奨度・C)。
**ああ、どうしてこんなことがわざわざ書かれなければいけないのか!しかし、ATは恐ろしいほどに上司からその「ありがとう」がもらえないこともあるということである。ちなみに私は大学で5年間ATをとして勤務したがAthletic Directorに直接感謝の言葉を伝えられたのは一回しかない。

8. 自己も健全なwork-lifeバランスの実践者であれ(推奨度・C)。
9. ホリデー・パーティーや一年お疲れ様会を設け、仕事内外のお祝い事を組織として喜ぶべし(推奨度・C)。
**個人的には仕事じゃないなら早く家に帰らせてくれと思うタイプですが(苦笑)、アメリカだったら喜ぶ人も多いでしょうねー。うちの昔の大学でも料理持ち寄りパーティーとかやったなー。

10. 仕事が終わっているなら早い帰宅を許すなど、可能な時に積極的に仕事から離させてあげるべし(推奨度・C)。
11. 学会参加など知識を広げよう、プロフェッショナルなネットワークを広げようという職員の努力を理解し、金銭的にも応援すべし(推奨度・C)。
12. 適切な時には仕事とプライベートの統合を許すべし。お昼休みに光熱費の支払いを済ませたり、職場に家族を連れてくるなど、仕事に支障が出ていなければ許すべし(推奨度・C)。
13. 仕事量の多い、責任の大きいクリニシャンに積極的により高い給与を払うことで、公平感を共有し仕事の満足度を上げるべし(推奨度・C)。
14. NATAの発表している"Recommendations and guidelines for appropriate medical coverage of intercollegiate athletics"2を参考に、フルタイムのATの雇用に積極的になるべし(推奨度・C)。
**それぞれのスポーツにHealth care unit(HCU)という単位を設け(各スポーツの受傷率や治療に必要な時間によって決定されるほか、遠征なども5日あたり0.25HCUにカウントされる)、一人のATあたり年間12HCUを越えないように、という旨のことが謳われている。詳しくはリンク先参照。

個々のATが職場で考慮・実践すべきこと
15. 緊急時以外は何時から何時までの連絡しか取らないなど、明確な境界線を引くべし。その際、「緊急事態」とは何を指すのかも明確に定義しておくべし(推奨度・C)。
16. 日々やるべき職務も、プライベートなニーズを満たすこともどちらもしっかり優先すべし(推奨度・C)。
17. 全スタッフ、コーチ、選手に管理職員とのコミュニケーションを明確にし、イベントのcoverageなどポリシーをしっかり共有しておくべし(推奨度・C)。
18. プロとして、そして一人の人間としての目標を設定し、それらを達成するための計画を前もって練るべし(推奨度・C)。
19. 仕事をしていく中で自分の役割や新たな機会などが徐々に明確になってきたら、豊かな人生を保つためにきちんと職場に対して交渉をするべし。時にはnoと言ったり、責任を他人に依託することも必要である(推奨度・C)。

個々のATが職場外で考慮・実践すべきこと
20. 職場を出たらATとしての役割に区切りをつけ、日常的にプライベートな時間を設けて自らにエネルギーをチャージするべし(推奨度・C)。
21. 助けが必要な時は助けを求めるべし(推奨度・C)。。
22. 定期的に運動したり、健康的な食事を摂ったり、睡眠を十分に取る、趣味を楽しむなど健康なライフスタイルを実践すべし(推奨度・C)。
23. 仕事で真っ当すべき役割と、プライベートでのそれを区別すべし。務める役割は一度にひとつに絞るべし(推奨度・C)。
24. チームプレイヤーとなり、仕事上の責任を同僚とシェアすべし(推奨度・C)。
25. Work-lifeバランスを整え、人生の質を上げるべし。ひとつの役割が充実してこなせれば他の役割もついてきて、QOLが向上する(推奨度・A)。

いやーなんか…書かれてるのが恥ずかしくなるくらいの内容も少なくないですね。大人が子供に言い聞かせてるような…。でもこうして書かれないと、実感として生まれない、真剣に取らない人もいるというのが事実なんでしょう。今のAT学生はこういうところ、結構しっかりプログラムで習っているとも思うんですけども。私たちの世代はこういう話一度もされてませんからね。

AT個人よりその上に立つ者への推奨事項(#1~14)のほうが多いというのがまぁ、私の「妄想」を裏付けているというかなんというか。補足といいましょうか、Background Informationから気になったところを抜粋すると…
- Work-family balanceという言葉は独身の職員に当てはまらないことから一般にはWork-life balanceという言葉が積極的に使われるべき(故に、このPosition Statementのタイトルである)
- Work-life conflictは3つの要素が複雑に絡まり合って起こる: Sociocultural factors (gender ideology, cultural norms and expectations), Organizational and structural factors (job demands, autonomy, flexibility, role strain, conflict, overload, lack of value, compensation, advancement)と、Individual factors (personality, gender, practice setting)である。中でもATにおいてはOrganizational and structural factorsの影響が特に大きい。
- Work-life conflictの割合に男女比はないが、NCAA Division-Iで子持ちの女性ATはなんと全米で22名しかいないそうな。3,4 まぁこれは2008年時点のデータとはいえ、今でもそう変わっているとは思えない…なぜなら私が結婚していて子供がいるD-I勤務の女性AT(臨床現役)の顔と名前を一人も思いつかないから…。アメリカに16年いたけど…知り合いは少なくないと思うけど…一人も…。

こうして咀嚼してみるといかにNATAが、Dr. MazerolleがこのPosition Statementを「キミにこのはがねのつるぎをあげるよ!これを武器に戦うんだ!」と言ってくれているかが分かります。これは手にしなければ、そして勇気を持って立ち上がり、戦わなければ損です。自分のために、職業の未来のために。ああ、っていうかDr. Mazerolle…この方もATの最新知見への貢献度が恐ろしく高いけど充分な評価がなされてこなかったという意味では今回のPosition Statementの筆頭著者になられて本当に嬉しい限り…。彼女は業界を変える、Milestoneとなりパラダイムシフトのきっかけとなる論文たちを世にも恐ろしいペースで発表しているんです…。興味がある人は調べてみて…。素晴らしいから…。時代に名前が残るべきだと思っていました…。

1. Mazerolle SM, Pitney WA, Goodman A, et al. National athletic trainers' association position statement: facilitating work-life balance in athletic training practice settings. J Athl Train. 2018;53(8):796-811. doi: 10.4085/1062-6050-51.11.02.
2. National Athletic Trainers' Association. Recommendations and guidelines for appropriate medical coverage of intercollegiate athletics. National Athletic Trainers' Association Web site. https://www.nata.org/sites/default/files/amcia-revised-2010.pdf. Accessed October 22, 2018.
3. Mazerolle SM, Bruening JE, Casa DJ. Work-family conflict, part I: Antecedents of work-family conflict in national collegiate athletic association division I-A certified athletic trainers. J Athl Train. 2008;43(5):505-512. doi: 10.4085/1062-6050-43.5.505.
4. Mazerolle SM, Bruening JE, Casa DJ, Burton LJ. Work-family conflict, part II: Job and life satisfaction in national collegiate athletic association division I-A certified athletic trainers. J Athl Train. 2008;43(5):513-522. doi: 10.4085/1062-6050-43.5.513.

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  by supersy | 2018-10-22 19:20 | Athletic Training

動画配信サービス絶賛入会申込受付中 & 12月16日EBP講習開催 in 立川

10月1日に公開、10月8日に入会募集を開始した新しいウェブサイト&その中の動画配信サービスですが、2週間足らずで会員申込件数が150件を越えました!こんなニッチなサービスに…!皆さまありがとうございます。
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先日(10月17日)、10月分の動画ふたつ(高気圧酸素治療についてのエビデンス・レビュー)を追加しました。これからもぽつぽつ動画アップしていきますので気長に気楽にお楽しみください。申込は常時受け付けておりますので興味のある方はこちらから詳細ご確認くださいませー。



さて、もひとつ。再告知です!

12月16日(日)にEBP講習スポーツ傷害評価編を行います!今回は基礎レベルの「スポーツ傷害評価編」と(3時間、3.0 EBP CEUs)、臨床応用レベルの「評価・ACL損傷編」「評価・手首の傷み編」(各2時間、それぞれ2.0 EBP CEUs)をまとめて一日で開催します。全3講習に出席すればBOC EBP CEUを一気に7.0も獲得可能です。新講習(両臨床応用レベル講習)が盛りだくさんですし、本年のEBP講習開催はこれが最後になりますのでこの機会をぜひお見逃しなく。日程と構成は以下の通りです。お申し込みはこちらから。

<講習日時>
2018年12月16日(日)
9:30am-12:45pm  エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで
           *途中休憩15分含む3時間講習
12:45pm-14:00pm 昼食(各自)
14:00pm-16:00pm エビデンスに基づくスポーツ傷害評価 ACL損傷の評価法 *NEW!!
16:15pm-18:15pm エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 手首の傷み評価法 *NEW!!

ちなみに、基礎レベルの講習は「エビデンス(科学的根拠)に基づく…」とかよく耳にするけれど、どういうことか実はよくわからない、今更ヒトにも聞きにくい、という完全初心者さんウェルカムな講習で、むしろエビデンスに対して不信感とか苦手意識のある方にこそ来ていただきたいと思っています。エビデンスに基づく実践って思ったほど難しくないや、結構楽しいかも!と思って帰っていただければそんな幸せなことはありません。

午後に行う講習ふたつはどちらも新作の「臨床応用レベル」の講習で、今まで教えてきた「基礎レベル」の講習から一歩踏み込み、感度や特異度というコンセプトを踏まえた上で実際に臨床の現場で皆さんがぶつかっていそうな症例にとびかかり食らいついていきます。「エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで」講習の事前履修を強くお勧めしますが、必須ではありません。感度や特異度、陽性/陰性尤度比の何たるかがわかっている方であれば問題なく楽しめる内容になっております。

ACL損傷編では「ACL損傷に使えるSelective Tissue Testにはどんなものがある?」「それぞれの有効性は?」「そういや結局Lelli Testとやらって使えるの?」など紐解いた後で、「では、実際に現場でこんな状況では、あんな状況どうすれば?」というところまで実技を交えて議論、手首の傷み編では臨床で見落とされがちな1) 舟状骨骨折; 2) 有鈎骨鈎骨折; 3) TFCC障害の3つに焦点を絞り、それぞれを「どう評価するのが最善か?」をエビデンスを探し、読み解きながらこちらも実践を交えて検証します。

全講習、参加者の資格は問いません。元々ATC資格保持者さんのためにと思って企画した講習でしたが、今までPT、OT、柔道整復・あんま・鍼灸師さん、医師の方や大学教員・研究者さんなど幅広くご参加頂いています(ありがたやー)。学生さんも大歓迎です!リピーターさんも、リフレッシュにまたという方も結構いらっしゃいます。

〒190-0022 東京都立川市錦町3-3-20
   JR中央線立川駅南口より、徒歩13分
   JR南武線西国立駅より、徒歩7分
   多摩モノレール立川南駅より、立川南通りを直進、徒歩12分

<定員> 各講習50名

参加は一番興味のあるコースひとつだけでも、お好きな組み合わせで2つでも、3つ全てでも。お申し込みはGuardians Athletic Training & Therapyのウェブサイト上のこちらから(お手数ですが、複数講習参加する場合はリンク先から各イベントひとつずつお申し込みください)。複数受講される方には一昨年から導入した『セット割引』システムが適応、そして『学生割引』も健在です。

<受講料> 
一般 3時間講習(基礎編) 9,000円; 2時間講習(臨床応用編) 各6,000円
   2講習同時申込で10% off
    (例: 基礎+臨床応用で1,500円引き、臨床応用講習2つで1,200円引き)
   3講習以上同時申込で15% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで3,150円引き)
学生 3時間講習(基礎編) 8,100円 (10% off - 900円引き);
   2時間講習(臨床応用編) 各5,400円 (10% off - 600円引き)
   2講習同時申込で20% off
    (例: 基礎+臨床応用で3,000円引き、臨床応用講習2つで2,400円引き)
   3講習以上同時申込で25% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで5,250円引き)
     *現役大学・専門学校生(国内外不問)さん対象。申込後に学生証の提示が必要です、

新作の講習2つは私が個人的にもうだいぶ長いこと、ずーっとやりたいなーと思っていた内容ですのでどきどきワクワク楽しいものになるんじゃないかと思っています。より多くの皆様にお会いできるのを楽しみにしております!セミナーの内容に関して質問があればここのコメントなどで講師の私に直接ご連絡ください。申し込みなど運営関係の問い合わせは主催の高橋(tdtakahashi@guardiansatt.com)までお願いします!

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  by supersy | 2018-10-21 23:00 | Athletic Training

スパインボードはもう撤廃すべき?脊髄・脊柱損傷疑い救急対応の最新知見レビュー。

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今回は先月発表になったこんな論文1 を読んでみます。しかしこの著者の方、興味深い資格歴ですね。LATだけどATCは持ってない?本職はNPの方なのかな?

American Academy of Orthopedic SurgeonsによってEMT向けに初めて教科書が出版されたのが1971年。その教科書には脊柱損傷(spinal injury)が疑われる際にはRigid Cervical CollarとLong Spine Boardを使って患者を固定しましょう、と推奨されていたのですが(↓)、当時はEBPの考えも浸透していない時代。患者の訴えや症状は関係なく、メカニズムが頸椎損傷を起こす可能性があるものだったら(交通事故や落下事故など)とにかくCervical CollarとLong Spine BoardによってSpinal Immobilization (SI, 脊柱固定)することが試みられていたようです。「患者の主訴がなんであれ」というのは興味深いですね。ふーむ。疑わしきはどんどん罰す!みたいなメンタリティーだったんでしょうか。
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で。結局のところSpine BoardによるSIが有効というはっきりしたエビデンスはない、というのがこの論文の論点です。それどころか、1980年代から「Spine Boardを使った脊柱固定はむしろ有害なのでは?」という声が出てきてるんだそうです。「悪効果」といわれるのは4つの理由があって、それらは…:
1. Increased pain - 結構硬い板ですからねぇ…。1時間Spine Boardに固定されていた患者は24時間後にも身体の痛みを訴えている、とか、腰痛が無かった人も出るようになっちゃうとか、色々過去にも報告されているようです。
2. Respiratory compromise - 胸部のストラップが(特に年配の患者に対して)呼吸機能の制限を生むんだそうな。
3. Tissue breakdown - 30分間固定しているだけでも、局所的な部位の圧迫によって仙骨や頸椎周りの組織がhypoxia(低酸素)状態になるとのこと。
4. Ineffective immobilization - 固定の際に必要以上に脊柱が動いてしまったり、プロ(paramedics)によって「固定」されたはずの患者の88%がストラップによる固定が甘かったり、ストラップが取れてたり…こちらも過去の研究によって色々と報告されているそうで。

こういったことが原因で2013年にNational Association of EMS Physiciansが発表したPosition PaperではLong Spine Boardの使用はもっと限定的であるべき - 具体的には1) blunt traumaや意識レベルの低下が見られる場合; 2) 脊柱の痛み・圧痛あり; 3) 感覚異常や筋力低下など、神経症状が見られる; 4) 脊柱の明らかな変形あり; 5) 泥酔状態でのhigh-energyメカニズムやコミュニケーション能力の欠如、牽引性の受傷メカニズムがある場合のみに使用されるべきだ、と推奨されるようになり、American College of Emergency Physiciansも同様のステートメントを発表しています。そして、もうひとつ特筆すべきはこういう限定的使用時でさえもLong Spine Boardは「extrication only (脱出目的のみ)」で使われるべきである、と論じられていること。つまり言い換えれば、フィールド・コートから救急車などの最低限の移動(=「脱出」)の際に超・限定的に使われるべきで、「脱出」を終えたらできる限り迅速にLong Spine Boardの使用は中止しましょ、ということみたいです。

んで。
Long-Spine Boardの代わりにSpinal-Motion Restriction(SMR)に着目した脊柱の動作制御のほうが重要であるというのがここ最近の複数の団体の共通の見解ですかね。SMRはSIとよく混同されるのですが、SMRは必ずしもLong Spine Boardを使うとは限らず、Anatomic positionを保ちながら、脊柱の動きが制限できればどんな固定方法を使ってもオッケーみたいな緩い定義なんだそうです。ここらへんについては前にも少しだけ書きましたよね。SMRのために具体的に何を使うかってのはハッキリと決まっていたり提唱されたりはしておらず、結局Local EMS次第なんだそう。この論文にはSelective Spinal Immobilizationという、メカニズムではなく患者の訴えを元に固定のニーズを決める方法も紹介されており、「落下した」→「Long Spine Boardによる脊柱固定」という短絡的な考えではなく、きちんとしっかり患者を評価した上でどんな固定法がベストか決めようという、当たり前のようで流動的な方法がいいのではないかと説明されています。そうすることで不必要なLong Spine Boardの使用が37%も減らせたのだとか。

では、ここいらでまとめるとして、ATとして今知っておくべきことは何か?
この論文には、"use of the [Long Spine Board] during transport should be discouraged based on the evidence."と明言されています。脱出限定のLong Spine Boardの使用は場合によってはオッケーだけれども、どうせだったらScoop式のストレッチャー(↓)のほうがよっぽど使い勝手がいいし、EMTは通常この道具を携帯していますよね、とも書かれておりますね。ふむふむ。
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EMT界は既にLong Spine Board文化から離れつつあるというのは改めて我々ATも認識すべきなのかも知れませんね。積極的にLocal EMTと連絡を取り、救急時に何を使ってどういう場合に頸椎をどう固定するのがベストなのか、シーズン前・Academic Year開始前に一度顔を合わせて確認や練習をしておくことが今まで以上に必要不可欠になってくるかと。救急のプロと、スポーツ医学のプロが事前に話し合って合意点を掴んでおけばいざというときに対応がスムーズですからね。

頸椎損傷の疑いがある場合は、毎回こうする!という絶対的な決まりがあると気分は楽ですよね。患者の命がかかっているかもしれない場面で、自分たちで考えて判断しろと言われたら途端に不安になる。今回のパラダイム・シフトがATの実践にジワジワと浸透していくためには、そんな自分の弱さや不安をきちんと認めるところからだなぁと。そんなことを考えながらこの論文を読んでいました。いやいやしかし、Best Practiceは「毎回必ずこれが正解」なんて単純にpre-determinedされてるわけじゃないですもんね。もっとこれからの研究で判明されるべきエビデンスはあるにしても、我々もきちんと現場で考える技術と知識を身に着けることが第一です。これからも真摯に学び続けていかなければと背筋が伸びる思いです!

1. Feld FX. Removal of the long spine board from clinical practice: a historical perspective [published online September 17, 2018]. J Athl Train. 2018;53(8). doi: 10.4085/1062-6050-462-17

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  by supersy | 2018-10-12 23:59 | Athletic Training

帝京大学スポーツ医科学センター開所とTASKパフォーマンス開設。

立ち上げた個人ウェブサイト、昨日の朝8時から会員受付が始まりましたが、募集開始6分で定員の30名に達したようでもう当事者の私も開いた口が塞がらない思いです。こんなにエビデンス好き、論文好きがヨノナカに隠れていたとは…!同志…!

先着30名様には本日入会案内のメールをお送りして、うち10名程の手続きがスムーズに完了しました(案内は@crm.wix.comのドメインからのメールになります、心当たりのある方でメールが見当たらなければジャンクメールボックスもご確認ください)。当初の予定では10月22日までは会員30名で、そこから徐々に人数制限解除していこうと思っていたんですけど、これだけ興味があると言って下さる方がいるならもっと頑張ろう!と慣れない事務仕事をもりもり張り切ってやっております。今月はちょっとイベントが詰まっており忙しく、どれくらいかかるかわからないのですが、全員をなるべく早くご案内できるよう最善を尽くします。

さて、ほんでもって再告知です!

12月16日(日)にEBP講習スポーツ傷害評価編を行います!今回は基礎レベルの「スポーツ傷害評価編」と(3時間、3.0 EBP CEUs)、臨床応用レベルの「評価・ACL損傷編」「評価・手首の傷み編」(各2時間、それぞれ2.0 EBP CEUs)をまとめて一日で開催します。全3講習に出席すればBOC EBP CEUを一気に7.0も獲得可能です。新講習(両臨床応用レベル講習)が盛りだくさんですし、本年のEBP講習開催はこれが最後になりますのでこの機会をぜひお見逃しなく。日程と構成は以下の通りです。お申し込みはこちらから。

<講習日時>
2018年12月16日(日)
9:30am-12:45pm  エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで
           *途中休憩15分含む3時間講習
12:45pm-14:00pm 昼食(各自)
14:00pm-16:00pm エビデンスに基づくスポーツ傷害評価 ACL損傷の評価法 *NEW!!
16:15pm-18:15pm エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 手首の傷み評価法 *NEW!!

ちなみに、基礎レベルの講習は「エビデンス(科学的根拠)に基づく…」とかよく耳にするけれど、どういうことか実はよくわからない、今更ヒトにも聞きにくい、という完全初心者さんウェルカムな講習で、むしろエビデンスに対して不信感とか苦手意識のある方にこそ来ていただきたいと思っています。エビデンスに基づく実践って思ったほど難しくないや、結構楽しいかも!と思って帰っていただければそんな幸せなことはありません。

午後に行う講習ふたつはどちらも新作の「臨床応用レベル」の講習で、今まで教えてきた「基礎レベル」の講習から一歩踏み込み、感度や特異度というコンセプトを踏まえた上で実際に臨床の現場で皆さんがぶつかっていそうな症例にとびかかり食らいついていきます。「エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで」講習の事前履修を強くお勧めしますが、必須ではありません。感度や特異度、陽性/陰性尤度比の何たるかがわかっている方であれば問題なく楽しめる内容になっております。

ACL損傷編では「ACL損傷に使えるSelective Tissue Testにはどんなものがある?」「それぞれの有効性は?」「そういや結局Lelli Testとやらって使えるの?」など紐解いた後で、「では、実際に現場でこんな状況では、あんな状況どうすれば?」というところまで実技を交えて議論、手首の傷み編では臨床で見落とされがちな1) 舟状骨骨折; 2) 有鈎骨鈎骨折; 3) TFCC障害の3つに焦点を絞り、それぞれを「どう評価するのが最善か?」をエビデンスを探し、読み解きながらこちらも実践を交えて検証します。

全講習、参加者の資格は問いません。元々ATC資格保持者さんのためにと思って企画した講習でしたが、今までPT、OT、柔道整復・あんま・鍼灸師さん、医師の方や大学教員・研究者さんなど幅広くご参加頂いています(ありがたやー)。学生さんも大歓迎です!リピーターさんも、リフレッシュにまたという方も結構いらっしゃいます。

〒190-0022 東京都立川市錦町3-3-20
   JR中央線立川駅南口より、徒歩13分
   JR南武線西国立駅より、徒歩7分
   多摩モノレール立川南駅より、立川南通りを直進、徒歩12分

<定員> 各講習50名

参加は一番興味のあるコースひとつだけでも、お好きな組み合わせで2つでも、3つ全てでも。お申し込みはGuardians Athletic Training & Therapyのウェブサイト上のこちらから(お手数ですが、複数講習参加する場合はリンク先から各イベントひとつずつお申し込みください)。複数受講される方には一昨年から導入した『セット割引』システムが適応、そして『学生割引』も健在です。

<受講料> 
一般 3時間講習(基礎編) 9,000円; 2時間講習(臨床応用編) 各6,000円
   2講習同時申込で10% off
    (例: 基礎+臨床応用で1,500円引き、臨床応用講習2つで1,200円引き)
   3講習以上同時申込で15% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで3,150円引き)
学生 3時間講習(基礎編) 8,100円 (10% off - 900円引き);
   2時間講習(臨床応用編) 各5,400円 (10% off - 600円引き)
   2講習同時申込で20% off
    (例: 基礎+臨床応用で3,000円引き、臨床応用講習2つで2,400円引き)
   3講習以上同時申込で25% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで5,250円引き)
     *現役大学・専門学校生(国内外不問)さん対象。申込後に学生証の提示が必要です、

新作の講習2つは私が個人的にもうだいぶ長いこと、ずーっとやりたいなーと思っていた内容ですのでどきどきワクワク楽しいものになるんじゃないかと思っています。より多くの皆様にお会いできるのを楽しみにしております!セミナーの内容に関して質問があればここのコメントなどで講師の私に直接ご連絡ください。申し込みなど運営関係の問い合わせは主催の高橋(tdtakahashi@guardiansatt.com)までお願いします!



それから、私が9月から勤務している帝京大学スポーツ医科学センターですが、この度、公式ウェブサイトが設立しました!いやーこれ私が言うのもなんですが、カッコいいんですよ!そして見やすい!やっぱりプロの方が作ったウェブサイトは個人のフリーのものとは違いますね…。
様々なメディア(↓)でも取り上げていただいていますが、新しく開設したこの帝京大学スポーツ医科学センターではTASKパフォーマンスという究極の「ジェネラリスト集団」を集結!アスレティックトレーナーとフィジカルコーチの連携を利用した、トータルヘルスケア・パフォーマンス向上目的の帝京外のアスリート受け入れを始めます(来年度から本格的に始動していく予定です)!いやだって正直なところ、これだけのハコですから帝京大学アスリートのみで独り占めするのは違うよねと。もっともっと多くの方々に活用していただきたいよねって話になったわけです。

怪我から復帰するスポーツ選手のリハビリは「メディカル・リハビリテーション」と「アスレティック・リハビリテーション」の2つのフェーズに分けておこなわれることは珍しくないのかもしれません。しかし「リハビリ」は「リハビリ」であり、それは「患者が患者の望む機能を再獲得するまでの包括的なプロセス」のことを指す言葉のはずです。個人的にはフェーズという区別は本来あるべきではないのでは、リハビリにメディカルもアスレティックもないんじゃないかと思うんです(「メディカルリハ」期でもスポーツ特有のニーズは考慮されてしかるべきだし、「アスリハ」期だからといってアスリートの日常生活部分の重要性が少なくなるわけではないじゃありませんか。その境界線は限りなくゼロに近いはずです)。患者がアスリートであっても非アスリートであっても、その人が望む機能を完全に復元できればそのリハビリを提供できたセラピストは素晴らしい!ってことだし、できなければその人はリハビリができないセラピストってわけだし…そういうシンプルなことなんじゃないかと。

ですから、我々はシンプルに行きます。もうただただ率直に、目の前のアスリートの最善を追求していきます。その人がフィールドで、コートで何秒で走るか何点取るか何センチ飛ぶかのみでなく、どう食べ、どう寝て、どう歩いているか…何を見て笑い、悲しみ、どう人として生きているかまでも考慮した「トータルヘルスケア」を提供したいのです。

確かに、複雑な若年脳卒中などのケースで神経系リハビリの専門家など、スペシャリストがその力を遺憾なく発揮する分野もあるでしょう(そこを否定しているわけではありません。専門家の知恵や力を借りなければいけない場面は多々出てきます)。しかし、(そこまで複雑な症例ではない)一般的なスポーツ外傷を抱えたアスリート患者のリハビリをフェーズ分けするデメリットに、「スペシャリストからスペシャリストの受け渡しで失われる時間、情報、治療哲学の一貫性の欠如」などが挙げられます。だからこそ、「きちんと訓練を積んだ同一機関に勤務するジェネラリストらが、一貫して一人のスポーツ選手患者のオペ後から競技復帰、さらに最大限のパフォーマンスを引き出すところまでを担っていく」メリットは大きいはずです。

TASKパフォーマンスでは、私もコアスタッフの一員として臨床の現場でバリバリ動こうと思っています。私が精通するコンセプトなんかを主軸にしながら、今まで日本にあまりなかったアプローチも積極的に使っていければと思っています。幸い仲間にはとってもとっても恵まれていますから!切磋琢磨してお互い学び合い、教え合いながら楽しく仕事できるに違いないとわくわくしております。もちろん、必要だとあればすぐに専門家に連携を頼みますよ。専門分野を生かし、尊敬し、力を合わせ合う。そのためのセンターですから。
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んで。

以前も告知しましたが、そんな帝京大学スポーツ医科学センターが一般公開になる数少ない機会が今週末、日曜日です!開所式を兼ねた内覧会、様々な友人に「行くよー」と言ってもらえていますが、スポーツ医学、栄養学、パフォーマンスサイエンスやトレーニングの専門家さん、スポーツ指導者に選手の方、この分野に興味のある学生さんなどの幅広い分野の方に訪問していただけたらいいなと思っています。私のセミナー時間も正式に決定しましたー。以下の通り、11:00amと13:15pmからですので是非お気軽に遊びに来てください。内覧会自体は10:00-15:00までやっています!前回も書いた通り、申込不要、参加完全無料の好きに来て好きに帰っていいスタイルですのでー。
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体験イベントも終日やってます!色々ありますのでチェックチェック!見学だけでもいいですし、身体を動かしたい方はこんなのもどうぞー。
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全体のスケジュールはこんな感じです(クリックで拡大)。
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多くの皆様にお会いできるのを楽しみにしています!

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  by supersy | 2018-10-09 23:59 | Athletic Training

画像診断による椎間板異常所見は、本当に「異常」なのか?Overdiagnosis(過剰診断)問題をもう一度考える。

異常と普通の境目: 画像診断の進歩による弊害、「Overdiagnosis」について考える(2017年11月14日)
スポーツは身体に良くない?NBA選手の「健康」な膝のMRIを撮ってみると…(2018年4月13日)

ここまで、過剰診断に関する記事を複数回書いてきました。一回目がSLAP損傷、二回目が膝の軟骨損傷・半月板損傷についてでしたが、今回は椎間板ヘルニアについてです。腰痛がある患者さんにMRIやCTでDisc bulge(椎間板膨隆)やDisc protrusion/extrusion(椎間板突出/脱出)があると「これが原因だったか!」と判断され、手術などの治療アプローチに繋がることが多いですが、果たしてこれは賢い判断と言えるのでしょうか?
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そんなわけで、ここまで腰痛がある被験者群と健康で腰痛のない被験者群を比較するような画像診断研究はいくつも出ているのだから、それを総合的に分析し直してみましょうや、というのがこの記事(↑)。1 15~50歳の被験者に絞って2014年4月までに発表された論文14件(総被験者数3097人)をレビュー、メタ解析しています。

健康な被験者(実験参加時点で腰痛がないだけでなく、過去の腰痛の既往歴も一切ない)の合計が1193/3097(38.5%)、腰痛ありの被験者(現在進行形も、既往歴も含む)が1904/3097(61.5%)だったそう。数としては十分ですね。個人的には各研究の被験者プロファイル情報をもうちょっと見てみたいですけど。年齢性別活動レベルなどなど。Competitive sportsをやってたpopulationはどれだけいたのかなぁ。
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で、早速ですが、結果です!上のテーブルを見れば一目瞭然なんですが、私が個人的にびっくりしたものをまとめます。
●健康な被験者での「病理的変化」の多さよ!中でも
- 線維輪亀裂(annular fissure): 11.3 (9.0-14.2%)
- 脊柱管狭窄症(central spinal canal stenosis): 14.0 (10.4-18.6)%
- 椎間板変性(disc degeneration): 34.4 (31.5-37.5)%
- 椎間板突出(disc protrusion): 19.1 (16.5-22.3)%
- 椎体異常(Modic change、腫脹や骨髄変性、骨折を全てのタイプを含む): 12.1 (9.6-15.2)%
これらは10人に一人から、多いもので3人に一人は見られるというのだからびっくり!!!
●健康な被験者と腰痛既往歴ありの被験者でハッキリとprevalenceに差があったもの(p<0.05)は赤でアンダーラインを引きましたが、言い換えれば線を引かなかったものは「既往歴に関わらず、痛みのない一般の人にも同じだけの頻度で見られる変化=normal varianceと言ってもいい?」ということになるのかなと。
●でも線を引いたものの中でも椎間板変性(disc degeneration)はそもそも健康な人でも3人に一人、椎間板突出(disc protrusion)は5人に一人いるのだから結局因果関係である「最終診断」には結びつかないわけで。ここらへんのClinical relevanceはどう判断するのがベストなのか?

むぅぅ、と色々考えたくなってしまうレビューでした。ついでにもうひとつ、こっち(↓)も面白いのでまとめます。2
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こちらは健康な(= 腰痛の既往歴ゼロの)被験者のMRI/CTを撮って結果を検証している2014年4月までに発表された33件の論文をレビューしたもの。20代、30代、40代、50代、60代、70代、80代の年齢層別に分けて分析しているところが面白いです。総患者数は3110人!こちらもなかなか数としては多いですね。性別や活動レベルは不明。
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結果、それなりに予測していたつもりなんですがそれでもjaw-droppingです。
ええっと、椎間板突出(disc protrusion)と線維輪亀裂(annular fissure)は20代から80代と加齢していってもそれほど増え幅は大きくないのかね(それぞれ29-43%の+14%; 19-29%の+10%)、ってことは言えるかもしれませんが、やはり加齢に伴ってどの椎間板・椎体・椎弓異常もグングン増えていくのね(多いもので+80%)ということ、特に70代越えてくると本当に大変ねーということが分かります。
それにしたって若い年齢層でも有病率のなんと高いことよ!40代でDiscに問題ない人のほうが少数派になるんじゃないですか。20代も30代も充分数字は大きいです。だから改めてですが、これらは健康な被験者を検証した結果だということを踏まえて、椎間板変性、膨隆や突出はincidental (偶発的なもの)であるケースが非常に多く、仮に患者が痛みを訴えていたとしても画像診断による異常所見が臨床的な原因として特定できるかというとそうではない、ということは改めて強調されるべきです。実際にこれらMRI画像診断の結果を元に手術をしたけど、アウトカム向上にはつながらなかった、という重要で恐ろしいと我々が感じるべき報告は複数存在します。3,4

これは想像でしかないですけど、アスリートに絞って見たらもっと多そうですよね。大学、プロにわけて種目別にとった1,000人超規模のデータも見てみたいです…。
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なので、アレですねぇ。どうしたら見ている画像と患者が訴えている症状の「因果関係」があぶりだせるか、という明確な答えが無い今は「
Diagnostic imaging studies should be performed
only in selected, higher-risk patients who have severe
or progressive neurologic deficits or are suspected of
having a serious or specific underlying condition. A thorough
history and physical examination are necessary to guide
imaging decision
(p.31).
5 という言葉に尽きるのかもしれません。ざっくり訳すと、「MRIやCTなどの画像診断は、重度や進行性の神経性症状のある患者や、その他深刻な病理的変化が疑われるハイリスクの患者のみに行われるべきである。画像診断が必要かどうかは問診や身体所見を慎重にしながら見極められるべきだ」ってことでしょうか。


いやまぁほんとに、前々から言ってることですけど、見えなくてもいいものって世の中にいっぱいあるってことなのかもしれません。見なくていいものを見てしまうことで患者が精神的に受ける影響はきっととっても大きい。私だってもし、人生で一度も腰痛を経験したことがなくても「線維輪完全に敗れて髄核出てますね」と言われたらエッってなります。腰が痛いような気がしてくるかもしれません。病は気から。難しいところです。そんなわけでやっぱり、これらの統計は我々は頭の片隅にしっかり入れておくべきものかと思います。読んでよかったー。

1. Brinjikji W, Diehn FE, Jarvik JG, et al. MRI findings of disc degeneration are more prevalent in adults with low back pain than in asymptomatic controls: a systematic review and meta-analysis. Am J Neuroradiol. 2015;36(12):2394-2399. doi: 10.3174/ajnr.A4498.
2. Brinjikji W, Luetmer PH, Comstock B, et al. Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. Am J Neuroradiol. 2015;36(4):811-816. doi: 10.3174/ajnr.A4173.
3. Carlisle E, Luna M, Tsou PM, Wang JC. Percent spinal canal compromise on MRI utilized for predicting the need for surgical treatment in single-level lumbar intervertebral disc herniation. Spine J. 2005;5(6):608-614.
4. Lurie JD,Moses RA, Tosteson AN, et al. Magnetic resonance imaging predictors of surgical outcome in patients with lumbar intervertebral disc herniation. Spine (Phila Pa 1976). 2013;38(14):1216–1225.
5. Wáng YXJ, Wu AM, Ruiz Santiago F, Nogueira-Barbosa MH. Informed appropriate imaging for low back pain management: A narrative review. J Orthop Translat. 2018;15:21-34. doi: 10.1016/j.jot.2018.07.009.

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  by supersy | 2018-10-05 21:30 | Athletic Training

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