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引き続き、口呼吸の話: 睡眠時無呼吸症候群に対する、口呼吸介入の可能性。

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若年性閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea, OSA)の患者にアデノイド口蓋扁桃摘出(↑)をしても予後は意外と良くないんだそうです。一時的にアウトカムが改善しても、長期的には悪化して、戻ってしまったりとか。1 そうなってると、何か見落としちゃってるんじゃないかなぁ、根本の原因は何だろなぁってなりますよね。
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で、この論文(↑)2の著者らが考えたのが「口呼吸が原因では?」という可能性。口呼吸は口腔顔面形成・成長異常(Abnormal Orofacial Growth)を引き起こす3-6→口腔顔面形成・成長異常は睡眠時の呼吸異常(Sleep-Disordered Breathing, SDB)につながる、7,8 というそれぞれの関係性は報告されているのだから、これらを繋げて考えれば全ての原因になっているかもしれない口呼吸の治療も考慮すべきなのでは、という理論展開のはまぁ、考えてみれば至極当然ですよねぇ(豆知識ですけど、起床時の呼吸の92%、睡眠時の呼吸の96%は鼻呼吸を介して行われているべき9 なんですって。へーへーへー)。

そんなわけで、この研究で後ろ向きに検証されたのは
1. アデノイド口蓋扁桃摘出手術前、そもそもOSA患者に口呼吸患者はどのぐらいの割合いるのか?
2. 手術をすることによって、この異常行動癖はどう変化するのか?
3. (手術が成功しなかった場合、エクササイズによる呼吸・口腔介入は有効なのか?)
…ということみたいです。それでは早速結果です。
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OSA改善のため、アデノイド口蓋扁桃摘出手術(T&A)を受けた64人の子供のうち全員が著しく睡眠時異常呼吸関連の症状が改善したのですが(Table 1)、うち、35人の口呼吸は改善されず。手術前と術後6ヵ月で比較するとほぼ全員が口呼吸(63/64, 98.4%)だったところから半数くらいには減った(35/64, 54.7%)んですねぇ。
しかしよくよくこの2グループ(口呼吸グループ、n = 35 vs 鼻呼吸グループ、n = 29)の違いを見てみると、口呼吸がなくならなかった35人の患者は、術後口から鼻呼吸に改善された29人と比較して総症状、AHI(Apnea-Hypopnea Index, 睡眠一時間あたり何回呼吸異常が見られたかを数値化したもの。ちなみに無呼吸は最低でも10秒間呼吸が止まった状態と定義される)、換気空気量制限に酸素飽和度も全て著しく悪かった(Table 2)という劇的な結果になっています。
*こういうの見てると、もしかしたら手術で口呼吸から鼻呼吸に自然に戻れた子は、あくまで閉塞性睡眠時無呼吸症候群が先行して、ほかに手段がなくて口呼吸に切り替わった(だから物理的な閉塞がなくなったら何もせずとも鼻呼吸に戻れた)のかな、と思いますけど、手術をしても口呼吸が治らなかった子は、もしかしたら口呼吸という異常行動ありきで、そこから閉塞が起こったのかなぁという妄想も膨らみますよね。だから手術で「症状」のひとつである閉塞を除去しても結局根本が治ってないから他の症状が残るんじゃないかなぁ、なんて…。

んで。
改善幅の低かった口呼吸患者(n = 35)はさらにこのあと、いかに口呼吸が悪い影響を及ぼすか、介入するべきことかという教育を受け、実際にこれから6ヵ月間続けるようにとエクササイズの処方を受けたそうです(渡された資料はこちらこちら)。専門セラピストへの紹介状も渡し、改善に取り組むよう指導されたとのこと。
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ただ、当然というかなんというか、取り組んでね、といった全員が実際に取り組んでくれるわけじゃありません。術後から12ヵ月のFollow-upに来てくれた口呼吸患者18人のうち、9人が実際にエクササイズ・トレーニングを実施、残り9人はそれを実践してくれなかったらしいのですが、この2つの患者サブグループの経過の違いは一目瞭然でした(Table 4)。AHI(p = 0.015)、換気空気量制限(p = 0.003)に酸素飽和度(p = 0.037)も全てエクササイズ介入したほうが著しく改善されており、逆にエクササイズをしなかった患者群は術後6ヵ月の数値と比べてどの値も全く改善されていない、という結果になったわけです。
*もちろんこの2つのサブグループの違いは呼吸介入に継続的に取り組んだかどうか以上のものがある可能性はあります。家庭の社会経済的地位(socioeconomic status)、教育的背景、Comorbidityにコンプライアンス…。ですのでこのグループ間の差がそのまんまエクササイズをしたかしなかったかどうかの差だっ!とは断言しづらいですけれど、それにしたってふむーと考えさせられる結果ですよね。

結論: アデノイドや扁桃腺の肥大があり、睡眠時無呼吸症候群を発症した患者は睡眠時に鼻呼吸を使わない(nasal disuse)傾向にある。こういった口呼吸傾向が強い患者の中には、手術で気道を閉塞しているものを物理的に取り除いても通常の呼吸パターン(鼻呼吸)に戻るとは限らず、その場合は鼻呼吸に重きを置いたエクササイズ介入が有効かも知れない

Follow-up期間がそれなりに長い+被験者がコドモ、というのもあってか、実験期間中被験者がどんどん減ってしまったのが残念ですが、この結果はなかなか面白い可能性を示唆しています。手術だけでは口呼吸徴候の強い患者は十分に改善しない。逆に言うと、摘出手術を受ける前にこういう呼吸介入をやっていたらどうなっていたのか…?それが根本治療となり換気空気量や肥大が改善され、無呼吸症候群がそれだけで消失可能性もあったのか…(手術が必要ないケースもあったのか…)?そうであれば、手術の決断をする前の保存治療の第一歩として、全ての患者が一定期間取り組むべきものなのか?事前に何らかの計測をすることで誰が手術にrespondするか、誰がしにくいか見極めるスクリーニングのようなことはできるのか?というところも気になりますね。

そんなわけで過去の記事の内容と、今回の内容と、私がさらに追加で見つけた論文の情報を合わせると、口呼吸は脳の不活性を起こすし、Forward Head Postureになり、呼吸能力低下して有酸素運動機能も落ちるし、口腔顔面形成にも異常をきたし、3-6 噛み合わせが悪くなって10咀嚼効率が落ち、11 ドライマウス12や虫歯になりやすくなる13,14という説もありますし、鼻のフィルターを介さない呼吸でアレルゲンに敏感になった結果喘息になりやすくなったり、15 気道が狭まり睡眠時無呼吸症候群になったり、7,8 睡眠の質が下がることで慢性的疲労感が生まれたり、イライラしたり、1 学習障害になる16 というエビデンスまであるしでまぁ踏んだり蹴ったりです。百害あって一利なしとはまさにこのこと。口呼吸こわい…。

そんなわけで今日はちゃんと口を閉じて寝ようと思います。おやすみなさい…。

1. Huang YS, Guilleminault C, Lee LA, Lin CH, Hwang FM. Treatment outcomes of adenotonsillectomy for children with obstructive sleep apnea: a prospective longitudinal study. Sleep. 2014;37:71–76.
2. Lee SY, Guilleminault C, Chiu HY, Sullivan SS. Mouth breathing, "nasal disuse," and pediatric sleep-disordered breathing. Sleep Breath. 2015;19(4):1257-1264. doi: 10.1007/s11325-015-1154-6.
3. Linder-Aronson S. Dimensions of face and palate in nose breathers and habitual mouth breathers. Odontol Revy. 1969;14:187–200.
4. Linder-Aronson S. Adenoids - their effect on mode of breathing and nasal airflow and their relationship to characteristics of the facial skeleton and the denition: A biometric, rhino-manometric and cephalometro-radiographic study on children with and without adenoids. Acta Otolaryngol Suppl. 1970;265:1–132.
5. Mcnamara JA. Influence of respiratory pattern on craniofacial growth. Angle Orthod. 1981;51:269–300.
6. Lime M. Orthognathic and orthodontic consequences of mouth breathing. Acta Otorhinolaryngol Belg. 1993;47:145–155.
7. Ricketss RM. Respiratory obstructions and their relation to tongue posture. Cleft Palate Bull. 1958;8:3–6.
8. Huang YS, Guilleminault C. Pediatric obstructive sleep apnea and the critical role of orofacial growth: evidences. Front Neurol. 2013;3:1–7.
9. Fitzpatrick MF, McLean H, Urton AM, Tan A, O'Donnell D, Driver HS. Effect of nasal or oral breathing route on upper airway resistance during sleep. Eur Respir J. 2003;22(5):827-832.
10. Grippaudo C, Paolantonio EG, Antonini G, Saulle R, La Torre G, Deli R. Association between oral habits, mouth breathing and malocclusion. Acta Otorhinolaryngol Ital. 2016;36(5):386-394. doi: 10.14639/0392-100X-770.
11. Nagaiwa M, Gunjigake K, Yamaguchi K. The effect of mouth breathing on chewing efficiency. Angle Orthod. 2016;86(2):227-234. doi: 10.2319/020115-80.1.
12. Musseau D. Mouth breathing and some of its consequences. Int J Orthod Milwaukee. 2016;27(2):51-54.
13. Mummolo S, Nota A, Caruso S, Quinzi V, Marchetti E, Marzo G. Salivary markers and microbial flora in mouth breathing late adolescents. Biomed Res Int. 2018;2018:8687608. doi: 10.1155/2018/8687608.
14. Choi JE, Waddell JN, Lyons KM, Kieser JA. Intraoral pH and temperature during sleep with and without mouth breathing. J Oral Rehabil. 2016;43(5):356-363. doi: 10.1111/joor.12372.
15. Izuhara Y, Matsumoto H, Nagasaki T, et al. Mouth breathing, another risk factor for asthma: the Nagahama Study. Allergy. 2016;71(7):1031-1036. doi: 10.1111/all.12885.
16. Um YH, Hong SC, Jeong JH. Sleep problems as predictors in attention-deficit hyperactivity disorder: causal mechanisms, consequences and treatment. Clin Psychopharmacol Neurosci. 2017;15(1):9-18. doi: 10.9758/cpn.2017.15.1.9.

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  by supersy | 2018-11-08 19:30 | PRI

人体には「5つの横隔膜」がある?身体の意外な繋がりの話。

人体に存在する横隔膜(Diaphragms)と言われて、皆さんはどの部位を思いつきますか?Respiratory Diaphragm(横隔膜)とPelvic Diaphragm(骨盤隔膜)?
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今までにも人体に横隔膜が3つある説1 や4つある説2はあったのですが、この論文3ではなんとっ!5つの横隔膜(five diaphragms)の存在について論じています。それらは…

  1. "The" Diaphragm = Diaphragm Muscle: 横隔膜
  2. Pelvic Diaphragm = Pelvic Floor: 骨盤隔膜
  3. Buccal Diaphragm = Floor of the Mouth: 口腔底
  4. Upper Thoracic Diaphragm = Thoracic Outlet: 胸郭出口
  5. Tentorial Diaphragm = Tentorium of the Cerebellum: 小脳天幕

…なんだそうです。著者ら(2名のDOさん)はこれらの組織はFascialを介して構造的に、また神経的に繋がっていると述べています。Roof of the mouth(口蓋)じゃなくてFloor(口底)なのか!へー。

以下が彼らが示す解剖学的根拠です。

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論点#1: 横隔膜と骨盤隔膜の繋がりは比較的明確である
ここは私個人としても疑いの余地がないので割愛します。吸気: 横隔膜下がる→骨盤隔膜下がる、呼気: 横隔膜上がる→骨盤隔膜上がる、ってことですね(↓)。この横隔膜と骨盤隔膜の同期性はDynamic MRI画像でも示されていますし、4 呼吸を吸う一瞬前に骨盤隔膜(と、腹横筋と、内腹斜筋)に筋活性が起こり、腹圧のコントロール、体幹の安定や排泄の自制などに一役買っていることは今までにも充分すぎるほど報告されているかなと。4-6 骨盤隔膜は文字通り下から呼吸を「支え」てくれているわけです。
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論点#2: 横隔膜と口底も繋がっている
実は呼吸で横隔膜が収縮するより一瞬前に収縮を始める筋肉は口底にもあり、その代表がオトガイ舌筋(genioglossus)や舌骨舌筋(hypoglossus)です(↓)。これらの筋肉は呼気に後方、吸気に前方に移動することによって呼吸と共に舌をリズミカルに動かしており7、文字通り空気をかき回して換気を助けています。ということは、咀嚼、嚥下と呼吸とは密接な関りがあり、ひとつが不全を起こすと他分野に連鎖するということも何ら不思議ではないわけです。8-10
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論点#3: 神経的全身への繋がり
横隔膜を支配している横隔神経はC3, 4, 5の神経根から伸びていると言われますが、この神経細胞(neuron)は頸脊髄腹側角(ventral horn of in the cervical spinal cord)に集まり周辺情報を受け取っています。一説によれば横隔神経の走行は腕神経叢全て、頸椎の全てのレベル(C1-T1)に関わっていることもあるようで、鎖骨下筋神経(C5, 6)とも吻合しているそうです。ということは、腕神経叢や頸椎異常が横隔神経活性異常を引き起こし、その異常シグナルが鎖骨下筋神経にも届き、鎖骨下筋が過活動→第一肋骨を引き上げ、胸郭出口症候群を招く、という障害連鎖のメカニズムなんかも考えられる、というわけですね。11,12
神経学的に、横隔神経は迷走神経(CN X)とも吻合しており、その迷走神経は横隔膜の脚部(crura)を支配、そして求心・遠心神経を介して内側縦束(そしてここには脳と脳神経と上部頸椎神経C1-3に繋がる線維も存在する)に、そして求心神経を介して三叉脊髄核に繋がっているわけです。つまるところ、横隔膜の機能不全が頸部、口底、硬膜と眼に出ることもあるだろうと…。まぁもうここらへんは話していくとキリがありませんね。
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論点#4: Fasciaの繋がりも
横隔膜を包んでいるTransversalis fascia(横筋筋膜)はEndothoracic fascia(胸内筋膜)の延長で、これは深部・中層のCervical fascia(頸椎筋膜)、さらには硬膜が起点となっています。ということは、頸部は筋膜を介して恥骨と繋がってるってわけです。Thoracolumbar fascia(胸腰筋膜)も仙骨⇔頸椎の同様の繋がりを後方で作ってますしね。前後でサンドイッチ状態です。
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んで。

筆者はこれらの組織の繋がりを訴えた上で、治療にもこの繋がりを考慮にいれたアプローチが取られるべきだとしています。まだ確固たるエビデンスはないとしながらも、自らの臨床経験から、これらの「5つの横隔膜」を意識した徒手療法の有効性を訴えているのです。例えば先天的心臓疾患や脳卒中患者の横隔膜は上昇位にあるのだから、13,14 これらの連動して動く「横隔膜」を徒手療法で抑制してあげればその症状は和らぐんじゃないか、といったところです。なるほど、その理論の全てに賛成はしませんが面白い臨床観点です。
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著者は「骨盤隔膜からアプローチを始めて徐々に上に上がっていく」アプローチを推奨しています。その一例が論文に示されています(写真でいうと右から左に進んでいく感じ↑)。

まぁまだ仮説段階で、実際の検証はまだまだなんですが、イチ専門家の意見としては非常に興味深い観点で書かれた論文でした。〆もなかなか素晴らしいです。
"The diaphragm muscle should not be seen as a segment but as part of a body system (p.240).3"
だからこそ、患者さんの局所的な主訴に囚われず、システムのリンクを診て全体を治療すべきであるとBordoni氏らは説いています。これは私もココロから賛成しますし、二つ前の記事で書いたように、中枢呼吸リズムを常に刻みつづけ、感覚入力異常が感知されると意識下ではこらえきれないほど大きな呼吸衝動を起こす横隔膜は我々が思っているよりももっと敏感なのかもしれないし、だとしたらそれを治療で利用しない手はないです。私は人体にはまたBordoni氏らが提唱するものとは異なったDome (= Diaphragm)があるんじゃないかと思っていますが、それでもこの「5つの横隔膜」説は非常に刺激的で楽しかったです。かなり活発に論文を出している方のようなので、他のものも読んでみます!

1. Frymann V. The core-link and the three diaphragms. In: Academy of Applied Osteopathy Yearbook 1968. Indianapolis, IN: Academy of Applied Osteopathy, 1968.
2. Speece CA, Crow WT. Ligamentous Articular Strain: Osteopathic Manipulative Techniques for the Body. Seattle, WA: Eastland Press, 2001:93,146–147,161–168.
3. Bordoni B, Zanier E. The continuity of the body: hypothesis of treatment of the five diaphragms. J Altern Complement Med. 2015;21(4):237-242. doi: 10.1089/acm.2013.0211.
4. Talasz H, Kremser C, Kofler M, Kalchschmid E, Lechleitner M, Rudisch A. Phase-locked parallel movement of diaphragm and pelvic floor during breathing and coughing—a dynamic MRI investigation in healthy females. Int Urogynecol J. 2011;22:61–68.
5. Park H, Hwang B, Kim Y. The impact of the pelvic floor muscles on dynamic ventilation maneuvers. J Phys Ther Sci. 2015;27(10):3155-3157. doi: 10.1589/jpts.27.3155.
6. Park H, Han D. The effect of the correlation between the contraction of the pelvic floor muscles and diaphragmatic motion during breathing. J Phys Ther Sci. 2015;27(7):2113-2115. doi: 10.1589/jpts.27.2113.
7. Cheng S, Butler JE, Gandevia SC, Bilston LE. Movement of the tongue during normal breathing in awake healthy humans. J Physiol. 2008;586(17):4283–4294.
8. Cifra A, Nani F, Nistri A. Respiratory motoneurons and pathological conditions: lessons from hypoglossal motoneurons challenged by excitotoxic or oxidative stress. Respir Physiol Neurobiol. 2011;179:89–96.
9. Grace KP, Hughes SW, Horner RL. Identification of the mechanism mediating genioglossus muscle suppression in REM sleep. Am J Respir Crit Care Med. 2013;187:311–319.
10. LuoYM, Tang J, Jolley C, et al. Distinguishing obstructive from central sleep apnea events: diaphragm electromyogram and esophageal pressure compared. Chest. 2009;135:1133–1141.
11. Zhang Z, Dellon AL. Facial pain and headache associated with brachial plexus compression in the thoracic inlet. Microsurgery. 2008;28:347–350.
12. Laulan J, Fouquet B, Rodaix C, et al. Thoracic outlet syndrome: definition, aetiological factors, diagnosis, management and occupational impact. J Occup Rehabil. 2011;21:366–373.
13. Caruana L, Petrie MC, McMurray JJ, MacFarlane NG. Altered diaphragm position and function in patients with chronic heart failure. Eur J Heart Fail. 2001;3:183–187.
14. Voyvoda N, Yu¨cel C, Karatas G, Oguzu¨lgen I, Oktar S. An evaluation of diaphragmatic movements in hemiplegic patients. Br J Radiol. 2012;85:411–414.

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  by supersy | 2018-11-07 20:30 | PRI

口呼吸とForward Head Postureについて。

脳を活性したければ鼻呼吸をせよ!という記事はだいぶ前(2017年9月6月)に書きましたけど、今日は口呼吸に関する論文です。
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この論文1、初っ端から飛ばしてます。冒頭部分が鋭い & 面白い!慢性口呼吸のことを"Syndrome (症候群)"と呼び(断言しちゃっていいんだ!)、口呼吸は機能的、構造的、姿勢的、生体力学的、咬合的、そして行動学的な全身に影響を与える様々な問題を引き起こす2としています。

具体的には、口呼吸は1) 鼻の求心性神経、自律神経、交感三叉神経を抑制し、それによって呼吸の頻度と深さが変化する。2) 肺の抵抗(lung resistance)が増え、肺コンプライアンス(lung compliance)が減少する(メカニズムは後述)。3) 口腔内の気道確保と空気抵抗減少のため、頭部を前に突き出し、首が伸展(ここでは伸展と書いてありますが、具体的には頸部屈曲のOA伸展だと私は解釈しています)が起こる。口呼吸とForward Head Posture(FHP)との繋がりはもはやConsensusというレベルで疑いの余地なく確立されている3-7んだそうです。
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"This forward head posture will lead to disorganization of the muscle blocks (anterior, posterior, and transverse muscles), impairing diaphragm muscle mobility and, consequently, diaphragmatic function (p.472).1"

…という個所が特にこれといった文献引用なく断言されているのが面白いのですが(この論文、総じて文献引用は非常に甘い印象です)、内容は十分に頷けます。呼吸時、SCMなどの過活性によって胸郭上部を引き上げるような呼吸メカニズムが主流となり、胸腹部のモビリティーと横隔膜の機能が低下することで、呼吸がより努力・労力を要するものになると。不活性になる胸郭周りの(元来の)呼吸筋は筋力低下し、胸郭拡張力が落ちる→肺換気量も落ち、有酸素運動のキャパシティーにも影響が出るんじゃないか、というのがこの実験のキモ部分のようです。

んで。

口呼吸と通常(鼻)呼吸被験者の呼吸能力と有酸素キャパシティーを計りましょう、というのが実際の検証事項。口呼吸で専門医院を来院してきた8-12歳の患者と、小学校に通う健康な同年代の子供(コントロール群)に専門医が鼻、副鼻腔、喉や耳の診察を行ったのち、1) New York Testによる姿勢評価; 2) MIP(Maximal Inspiratory Pressure)、つまり吸気筋力・能力; 3) MEP(Maximal Expiratory Pressure)、つまり呼気筋力・能力; 4) 6MWD(6-min Walk TestによるDistance)、つまり呼吸機能を最大限活かして6分間でどれだけの距離を歩行できるかという運動機能テストを行ってグループ間の結果を比較したそうです。
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結果を(↑)ひとつのテーブルにまとめてみました。
患者のプロファイリングでいうと、気になるのは口呼吸患者の男児の割合ですかね。男性のほうが口呼吸に陥りやすい(今回は76.7% vs 37.1%, p < 0.001)、というような性差は実はこれまでにも報告されており2,8、男性のほうが女性よりも気道内径が狭く、慢性口呼吸と関係があると言われているアレルギー性鼻炎や閉塞性睡眠時無呼吸症候群も多いとの報告9 があったりするようです。ふむー、解剖学的な差?男女の呼吸差があるかもということか?鼻呼吸をする子供の半数以上(32/62, 51.6%)は正常な姿勢(非FHP)だったのに対して、口呼吸の子供のほぼ全員(29/30, 96.7%)がFHPだったというのは、さすがにConsensusと言い切るだけあるわ…という感じです。逆に一人の口呼吸且つ非FHP患者さんが気になっちゃいますね、この子の呼吸メカニズムどうなってんだろ?と。

吸気能力(MIP)は口呼吸と鼻呼吸との被験者間で約3倍以上(20.0 ± 7.1 cmH2O vs 62.5 ± 21.9 cmH2O, p < 0.001)、呼気能力(MEP)は2倍以上(25.3 ± 11.7 cmH2O vs 58.8 ± 22.3 cmH2O, p < 0.001)もの違いが出たのは衝撃ですし、6分間に歩ける距離(6MWD)も平均60mの差(568.1 ± 47.4 m vs 629.8 ± 47.6 m, p < 0.001)があります。同じ6分間という時間で、だいたい口呼吸の子供たちは鼻呼吸の子供たちの90%程度の距離しか歩けなかったということです。歩いてこうなんですから、走らせたり、もっと距離を伸ばしたりしたら…例えば1.5km走なんかやったりしたら…その差は90%では済まなくなるんじゃないですかね。これらの子供たちが例えばサッカーやバスケットボールの試合で対戦したら、どちらが優れたパフォーマンスを見せるかは既にgiven、といっても過言ではないかもしれません。

しかし、興味深いのがこのテーブルの*と¶部分ですかね。鼻呼吸の被験者内では、寧ろFHPがあるほうが呼気・吸気能力共に著しく高い(p = 0.003, p = 0.004)数値が出ています。それが有酸素運動パフォーマンスに反映されているか、というとそうではない(むしろ20m程劣っている?統計的には有意ではない、p = 0.181)みたいですけど。個人的には、鼻呼吸ができる能力をpreserveした状態で首を前に突き出し口呼吸も併用したら、理屈的に呼気・吸気量は増えるはずなのでこの数値は驚くようなものではないかなと思います。ただこれの状態は一時的なもので、個人的にはこれが本格的な口呼吸・FHPの前駆現象となり、徐々に口呼吸が鼻呼吸を凌駕する形で進行していくのではないかと推測します。あくまで推測ですけども。

結論: 口呼吸は男子に多くForward Head Postureを伴い、適切な鼻呼吸をしている同年代のコントロール群と比較して呼吸筋力が呼気・吸気共に低下し、有酸素運動パフォーマンスも低下した状態にある。

そんなわけで色々口呼吸については調べてはおりますが、今のところ「口腔スペースを広げ、一時的に口呼吸をやりやすくする(→さらに「通常」「正常」の口呼吸から遠ざかってしまう)以外は何もメリットがない(→つまり結局のところ長期的には何もメリットがなく、悪影響しかない」ということが言えると思います。

これから寒くなったら余計に冷たい外気温はしっかりフィルター通して湿らせて・温まらせてから吸ったほうがよいですよ。そのためにもハイ、鼻呼吸鼻呼吸~!
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1. Okuro RT, Morcillo AM, Ribeiro MÂ, Sakano E, Conti PB, Ribeiro JD. Mouth breathing and forward head posture: effects on respiratory biomechanics and exercise capacity in children. J Bras Pneumol. 2011;37(4):471-479.
2. Barros JR, Becker HM, Pinto JA. Evaluation of atopy among mouth-breathing pediatric patients referred for treatment to a tertiary care center. J Pediatr. 2006;82(6):458-464.
3. Huggare JA, Laine-Alava MT. Nasorespiratory function and head posture. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 1997;112(5):507-511.
4. Chaves TC, de Andrade e Silva TS, Monteiro SA, Watanabe PC, Oliveira AS, Grossi DB. Craniocervical posture and hyoid bone position in children with mild and moderate asthma and mouth breathing. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2010;74(9):1021-1027.
5. Yi LC, Jardim JR, Inoue DP, Pignatari SS. The relationship between excursion of the diaphragm and curvatures of the spinal column in mouth breathing children. J Pediatr. 2008;84(2):171-177.
6. Cuccia AM, Lotti M, Caradonna D. Oral breathing and head posture. Angle Orthod. 2008;78(1):77-82.
7. Neiva PD, Kirkwood RN, Godinho R. Orientation and position of head posture, scapula and thoracic spine in mouth-breathing children. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2009;73(2):227-236.
8. Di Francesco RC, Passerotii G, Paulucci B, Miniti A. Respiração oral na criança: repercussões diferentes de acordo com o diagnóstico. Rev Bras Otorrinolaringol. 2004;70(5):665-670.
9. Rappai M, Collop N, Kemp S, deShazo R. The nose and sleep-disordered breathing: what we know and what we do not know. Chest. 2003;124(6):2309-2323.

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  by supersy | 2018-11-06 19:30 | PRI

貴方はどれだけ息を止めていられますか?Gasping for Air: Breath Holding and What Drives Us at Its Breakpoint。

皆さんは「できるだけ長く息を止めてください」と言われたら、何秒くらい止められますか?
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意識を失い倒れるまで、その息を止めていられますか?

…無理ですよね。

ではその「息を吸うまい」とする努力の終わりに、貴方の意識を吸気へと駆り立て、空気を吸えと急かす衝動の正体はなんですか?
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そんな論文があったので読んでみました。1 面白いと思ったことをつらつらとまとめます。つーか、超面白いですコレ。呼吸好きは読んだほうがいい。視点がマニアックすぎる。変。おもしろい!
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この論文の冒頭にもあるのですが、生物が自らの意志で「息を止める」というのはそもそもなかなかに不自然、不可解な行動です。生きようとする努力とは逆の行動ですからね(このスイホウガンちゃんは超例外です 笑 ↑)。実際非人間が自らの意志で地上にいるにもかかわらず5秒以上息を止めることはないので、動物実験ができない、よってこのレビューに含まれているエビデンスは全て人間を被験者に行ったものである、とありますが言われてみればそりゃそうだ。加えて、水中に顔を付けると異なる神経反射が引き起こされる2 とのことで、水中でのbreath-holdingはこの論文では言及されていないそうです。へぇぇぇ。

そもそも、「息を止める」とはどういうことなのか?シンプルに声門(glottis)を気道を閉じ、空気の流れを止める、ということとこれは同義語ではありません。だって、そういった構造が開いていたって息は止められるんですから。そして、呼吸を止められる長さ(duration)に影響している要素とは何なのか?そもそも息を止めていられる長さはかなり個人差があり、そして同一の人物でも環境が違うと13-19%、高い時は37%変わってくるそうなんです。3 ほうほう。

まぁそれでも先の質問にあるように、人間が自分の意志で呼吸を止めた場合、いずれ「限界(breakpoint)」が訪れて我々はどうやったって我慢できずについつい息をしてしまいます(通常は短い呼気が起こり、直後に吸気が続くそうです)。意識消失するまで息を止めていられるニンゲンは普通はいない("practically impossible(p.2)1")というのが現在のエビデンスの示す見解のようで、つまり、それだけの大きな力…抑えきれない意識下(involuntary)の衝動が我々の中で沸き上がってくる、ということなんですけど、我々はこの正体を知らないのです。我々の強い意志をも乗り越え、書き換えるだけの強い「息をしろ」という命令…これは一体誰が出しているものなのか?

Chest Volume Shrinkage and Metabolic Rate
今のところ分かっていることとして、肺を大きく膨らませられればられるほど、息を止めていられる長さは長くなる。そして、代謝率が上がるほど、息を止めていられる時間は短くなるんだそうです(例えばステーショナリー・バイクを漕いでいて、代謝が2倍以上になると息を止めていられる時間も半分以下になるのだとか)。
ふむ。ところで、息を止めている間って、胸郭の体積(volume)は変わらないんだと思いません?胸郭内で酸素が体内に引き抜かれ、それと同量の二酸化炭素がそこに交換で入るんじゃないかと?実はこれは不正解で、実際には引き抜かれる酸素量に取って代わる二酸化炭素量がマッチせず、胸郭のボリュームは息を止めている間、だんだんしぼんでいくのだそうです。ということは、個人がどれだけ息を長く止めていられるかは、そもそもその人がどれだけ息を止め始める前に(変な日本語ですが)どれだけ胸郭を膨らませられるかにかかっているのではないか?という仮説が立てられます。しぼみ切ったところで呼吸衝動が高まり、呼吸強制再開(breakpoint)を迎えるのだろうと。
しかし、この仮説は仮説で否定されているようなんですよね。例えば息を止めている最中に呼気を交えて胸郭のしぼみを早めたり、異なる気圧下で同じ手順を繰り返してみた研究などでも呼吸を止めていられる長さが短くなるようなことはかなったそう。肺がしぼみ切った、というメッセージが脳に行かなきゃいいのか?ということで肺や心臓の移植手術を受けた患者や、硬膜外麻酔を受けた患者も検証してみたようなんですが、これらの患者にも正常な呼吸衝動が見られたことから、「胸郭がこれ以上しぼめなくなったら呼吸強制再開」という単純な今日からの神経信号によるメカニズムではないようです。

Oxygen and Carbon Dioxide
息を止めている間、動脈血酸素分圧(arterial partial pressure of oxygen, PaO2)と呼気終末酸素分圧(end tidal partial pressure of oxygen, PetO2)は減少、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)と呼気終末二酸化炭素分圧(PetCO2)は増大し、それぞれ通常値とされる100 mmHg/40 mmHgを下回る/上回るんだそう。一般的にBreakpointとなるときのPetO2は62±4 mmHgで、PetCO2は54±2 mmHgくらいなのだけれど、ここから我慢すればするほどさらにそれぞれの数値は減少・増大を続けるんだとか(理論上意識を失うのはPetO2が27 mmHg以下、PetCO2が90-120 mmHgあたりを越えてきたあたりなのではと推測される)。お、ということはBreakpointは酸素・二酸化炭素の閾値によって定義されており、これらの濃度に敏感なCarotid Chemoreceptor(頸動脈化学受容器)によって作られているのでしょうか?これを逆手に取れば、事前に高濃度の酸素を吸うなどしてPa/etO2を引き上げられる、もしくは過呼吸状態を作ってPa/etCO2を下げることができれば息を止めていられる時間も長くなるという、そして、hypoxia/hypercapniaの状態から始めればそれだけ止めていられなくなるという仮説が立てられそうです。ここらへん、どうなのでしょう?
実はこれらの仮説も実験によって既に否定されているんだそうです。元々のPa/etO2が高けりゃ高いまま、Pa/etCO2が低けりゃ低いままBreakpointを迎えるんですって。一度呼吸を停止させ、そのBreakpointを迎えたときに、窒素ガス(さらにPaO2を下げ、PaCO2を下げる)を吸わせればヒトはそこから再度20秒の呼吸停止ができるって研究もあるらしいですしね(なんて実験だ)。血中酸素・二酸化炭素濃度の目安数値こそあれ、これらはBreakpointをdictateしないんですね。頸動脈化学受容器を切除(denervation)してもBreakpointは起こるという研究も報告されていますし、単純に頸動脈化学受容器が感知できるChemical Imbalanceによって起こるものではなさそう。

まだ生きているのは、頸動脈の酸素・二酸化炭素バランスに敏感な頸動脈化学受容器でなくて、より作用が大きいのは横隔膜の形状やトーンに関わる横隔膜感覚受容器なのではないか、という説なんだそうです。PeripheralではなくCentral Chemoreceptorから主だったシグナルが来ているのではないかと。それに関わってくるのが、「リズム」というコンセプトです。

The Central Respiratory Rhythm
生命には2つのリズムが宿っています。心拍と、中枢呼吸リズム(central respiratory rhythm)です(この名前は、脳幹がセットする呼吸のアクティビティーレベルと、横隔神経による動的アウトプットを反映しているという意味で使われているそうな)。ヒトは心拍を意識レベルでほとんどコントロールできませんが(よーし、心拍数を毎分きっかり62にするぞ!なんてできませんよね)、呼吸リズムは比較的用意にコントロールが可能です(呼吸数を毎分15回にしよう、と思ったら時計見ながら合わせられますよね)。では、我々が息を止めている間、中枢呼吸リズムは完全に停止しているのでしょうか?
これは研究が難しく、様々な議論を呼んでいる分野らしいのですが、著者の意見は否!中枢呼吸リズムによって支配される呼吸性不整脈(respiratory sinus arrhythmia)、つまり呼吸に伴う心拍数の変化の変化を追った研究があるのですが(↓)、呼吸を止めている間にもこれらの活動(赤矢印や赤四角部分)は続いており、著者は「息を止めている間中、中枢呼吸リズムは継続して身体の中で刻まれている」とその解釈を示しています。

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ここから示唆される可能性は複数あって、
1. ニンゲンは、中枢呼吸リズムは絶対的制御ができない。我々が「呼吸を止めている」状態は、あくまで胸郭を固め、中枢呼吸リズムを「抑制(suppress)」しているだけであって、このリズムごと「止める」ことはできない(…恐らくそのメリットも必要もない、というのが私個人の考え)。
2. 息を「吸って止める(inspiratory breath-hold)」とか「吐いて止める(expiratory breath-hold)」という今までの研究に使われた概念や言葉は適切でない…何故なら実際は呼気、吸気で身体が「止まる」わけではないからだ。もっとシンプルに「inflation breath-hold(胸郭を膨らませた状態での息止め)」や「deflation breath-hold(胸郭をしぼませての息止め)」という言葉を用いるほうが好ましい。
3. これまでに行われたいくつかの研究は中枢呼吸リズムが止まるという前提で行われてきたが、この前提がそもそも成立していないことになる。
4. …となれば、人体における化学受容器の全てが中枢呼吸リズムに貢献していると考えられるべきか?(個人的には生命維持のシステムなのだから保険は三重、四重にかけてあるはず。そうでないほうがおかしい)

Paralysis of the Diaphragm
1960年代に、横隔膜を(d-ツボクラリンという強力な弛緩剤を注入し)人工的に麻痺させ自発呼吸停止状態を作り、そのBreath-holdを観察するという改革心と探求心に満ち溢れた研究4-6 が行われたんだそうです。被験者には人工呼吸器を入れ、被験者が望んだとき、もしくは意識消失した際にはすぐに呼吸を再開できるようにしていたらしいですが…現代では人道的、倫理的に絶対に繰り返すことのできない研究デザインですね。詳細は是非本文を読んでみてください。ひー、寒気がします。ここらへんから横隔膜を麻痺させると何らかのフィードバックシステムが阻害されて息が長く止められるようになりました、という考察が導けるそうなんですが、
①横隔神経からの感覚入力(phrenic afferents)は横隔膜の活動を調整(modulate)する。これは動物からのデータですが、猫や犬、ネズミの横隔神経の30%は求心性(500-800 afferent per nerve)なんだそうで。これらの感覚入力が無くなると呼吸衝動がより抑えられるということの反映にもなるということなのか…。
②しかしこれらの求心性フィードバックは主にどんな情報を脳に送っているのか?横隔膜の状態(proprioception)?その疲労度?興味深いことに、息を止めている間に横隔神経の運動的シグナリングがどう変化するかということを追った研究はないのだそう。ここらへんは単独で動くのか、前述した動脈血酸素・二酸化炭素濃度とも連絡しながら活動を決めるのか?
③そしてそれらのフィードバックはどう使われているのか?普通の人は横隔膜を「感じる」力に長けてはいないので(これだけ求心性感覚受容器が存在するのに…それも変な話だけど。我々が感じられないと思っているだけでは?)、筋活動の状態などを「不快感」として感じて、息をしなければというメッセージとして受け取っているのか?
④この感覚と動作の統合はどこで起こるのか?脳幹と考えるのが最も自然かもしれないが、皮質や脊髄レベルでの統合がないとも言い切れない。しかし意識的に変化させることができるものでもあるし…。むむむ。謎は深まるばかり。

Anesthetic Blockage of the Vagus Nerves
迷走神経(CN X)と舌咽神経(CN IX)にブロック注射(リグノカインという局所麻酔薬)することで息止め時間が3倍まで長くなった、という研究も複数7-9あるんだそうで。この際、「第3頸椎のブロック注射によって息止めの感覚("the sensation of breath-holding"...これが具体的に何を示すのかは不明)が薄まった」故に「この『感覚』は迷走神経反射起因の『もうちょっといい加減にしてよね』という横隔膜の収縮("frustrated contractions of the diaphragm")が生み出しているのではないか」と考察する研究者もいたそうです。9 この研究結果はもう少し陽の目を浴びてもいいのではないかと述べたうえで、これらの研究では横隔膜神経はintactだったことから、横隔膜の感覚入力は横隔神経より迷走神経の比重のほうが重大なのでは?とさらに著者は論じています。

そんなわけで、まとめです。著者は、この論文の結論に繰り返し「横隔膜のbreakpointへの貢献度」を強調しています。
- 横隔膜のproprioceptorとchemoreceptorが中枢呼吸リズムに及ぼす影響は大きく、これらの求心性刺激により横隔膜が収縮を起こしたくなる衝動を我々は「(息を止めている際の)不快感」と感じる。
- この衝動は無意識下から湧き上がってくるもので、脳幹によって制御されているというよりは脊髄反射に近いメカニズムかもしれない。
- 中枢呼吸リズムは我々が意識下で制御できる範疇を越えており、息を止めても止まらない。しかし、呼吸を止めることで抑制(suppress)することが可能なのであれば、過呼吸など呼吸需要が高まっていると患者が思い込んでいる(= 感覚と需要のミスマッチが起こっている)場合に息を止めることが治療として使えるのは納得がいく。
- 文中には「横隔膜からの感覚入力が増えればフィードバック量が増え、感覚的ミスマッチが増大する」とあるが、逆に言えば、息を吐ききって胸をしぼめ、横隔膜をリラックスさせてトーンを下げた状態で息を止めれば、フィードバック量が減って感覚ミスマッチが増えるということでもある?と私は考えます。これをBreakpointまでholdすると逆に求心性刺激が増えてしまうかもですが、呼気を作って数秒保持することで、患者の呼吸をしなければいけないという衝動と、いや、実際しなくても別に平気じゃん、横隔膜さん、もちょっとリラックスしましょうぜっていう抑制刺激とがもう少し調和をし始めるんじゃないか、と思ったり…。

最後は私自身の見解も入ってしまいましたが、なるほど、改めて私が普段使うエクササイズの中に「息を吐ききって、3-4秒止める」という表記があることへの理解、感謝が深まりました。横隔膜の感覚と、実際の呼吸実態とのミスマッチ…。息を止めるという観点からでも、これだけ論じられるものなんですね。ちょっと読みにくかったですが、読み応えは十分にある論文でした!

1. Parkes MJ. Breath-holding and its breakpoint. Exp Physiol. 2006;91(1):1-15.
2. Sterba JA, Lundgren CE. Diving bradycardia and breath-holding time in man. Undersea Biomed Res. 1985;12:139–150.
3. Bartlett D. Effects of valsalva and mueller maneuvers on breath-holding time. J Appl Physiol. 1977:42:717–721.
4. Campbell EJM, Freedman S, Clark TJ, Robson JG, Norman J. Effect of curarisation on breath-holding time. Lancet. 1966;ii:207.
5. Campbell EJM, Freedman S, Clark TJ, Robson JG, Norman J. The effect of muscular paralysis induced by tubocurarine on the duration and sensation of breathholding. Clin Sci. 1967:32;425–432.
6. Campbell EJM, Godfrey S, Clarke JH, Freedman S, Norman J. The effect of muscle paralysis induced by tubocurare on the duration and cessation of breath holding during hypercapnia. Clin Sci. 1969;36:323–328.
7. Guz A. Effects of blocking the vagus nerves in Man. In: Howell JBM, Campbell EJM, eds. Breathlessness. Oxford, UK: Blackwells;1966: 65–71.
8. Guz A, Noble MIM, Widdicombe JG, Trenchard D, Mushin WW, Makey AR. The role of vagal and glossopharyngeal afferent nerves in respiratory sensation, control of breathing and arterial pressure regulation in conscious man. Clin Sci. 1966:30;161–170.
9. Noble MIM, Eisele JH, Trenchard D, Guz A. Effect of selective peripheral nerve blocks on respiratory sensations. In: Porter R, ed. Breathing: Hering–Breuer Centenary Symposium. London, UK: Churchill;1970:233–247.

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  by supersy | 2018-11-05 19:30 | PRI

PRIに関する最新研究論文のまとめ。その2。

なぜ風船を使ってエクササイズをするのか?(2016-02-18)
PRIに関する最新研究論文のまとめ。(2018-03-02)

以前PRI関連の文献を4つ(全部インド研究者によるマイナー・ジャーナルのもの)をまとめましたが(2018年3月2日付↑)、今回新たにまた別のジャーナルでPRI関連の研究が発表された1と耳にしたのでレビューしておきます。何故かこれもインドの研究者によるもので、PRI本部も「なぜインドがアツいんだ??」と困惑しているようです(以前にも書きましたが、これらの研究者さんがPRI講習を受講したという記録が一切見つからないのです。どこでどう知ったのか…)。
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なんか…前回からの偏見かもしれませんがまず見た目が怪しいですね、第3著者の名前に「Prof.」って入ってますけど、普通そんなの入れませんもん。Global Journal for Research Analysisというジャーナル、見たことも聞いたことが無かったのでこれもついでに調べてみました。Impact Factor(IF)が5.156って該当ウェブサイトには書いてあるんですけど…(これが真実であればトップ6.5%に入る超優良ジャーナルということになりますが。記事左上にはIF 4.547と異なる数字が書いてあり、どれが最新なのか…)、うーん、とてもホントウとは思えません。インターネットでその評判を調べてみたら、最近増えてきているPredatory Journal(お金さえ払えば論文掲載させてくれる、学術的価値はほぼ無いとされる「エセ学術誌」)の類だと言われているようで、なんというか…納得です。正直、前回紹介したジャーナル4つ全てもPredatoryだと思います。

…で、肝心の記事なんですが、2ページしかありません。マトモな研究が2ページにまとめられるはずもないのでこれまた嫌な予感しかありません。

イントロ部分からして突っ込みどころがいっぱいです。「腰痛(LBP)はこういう風に定義されています」や「腰痛は発症率が異様に高い、世界的に深刻な問題なんです、そしてインドも例外ではありません…」という導入を書こうとしている狙いは分かりますし、その内容は間違っていないと思うのですが、例えば「WHOによって成人の84%は生涯のうち一度は腰痛を経験していると報告されている」という誰もが目にしたことのあるあの文句を引用なしで書いていたりとか、「インドでも腰痛発症率は23.09%と報告されている」という個所は(ここは唯一引用があり、それは評価しなければなりませんが)その数字が世界的なものと比べて圧倒的に低かったりとか(84% vs 23%? その程度ならインドはうまいこと腰痛をmanageできてるってことになりませんか?)…もし私の学生がこういうイントロを書いてきたら、「not a bad intention, need to cite more sources(意図は悪くないけど、文献引用が足りないから説得力に欠ける)」と批評されること間違いなしです。

腰痛におけるハムストリングと腹壁の活性の重要性についての論理的背景はこれ(↓)しか書かれていません。
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一文一文が無駄に長く、一般的に「論文を書く際に使うべき好まれる英語」ではありません。繰り返しも多く、分かりづらい構成です。最初の文に限っては文章が終わっておらず(ピリオドがない…)、ふわふわと浮いた状態になっています。私が書き換えるなら、

The Postural Restoration Institute has proposed the holistic approach to patients with LBP: Their principles emphasize the importance of 1) the restoration of the proper diaphragmatic mechanics and 2) hamstring and abdominal muscles activation as a mean of regulating polyarticular chains of muscles and thus altering Ober's test results. Recent case reports1-3 and a RCT4 support this point of view and have reported that exercises with such emphasis can decrease immediately pain and increase passive hip abduction ROM.

1. Robey JH, Boyle K. The role of prism glass and postural restoration in managing a collegiate baseball player with bilateral sacroiliac joint dysfunction: a case report. Int J Sports Phys Ther. 2013;8(5):716-728.
2. Tenney HR, Boyle KL, Debord A. Influence of hamstring and abdominal muscle activation on a positive ober's test in people with lumbopelvic pain. Physiother Can. 2013;65(1):4-11. doi: 10.3138/ptc.2011-33.
3. Fernandes J, Chougule A. Effects of hemibridge with ball and balloon exercise on forced expiatory volume and pain in patients with chronic low back pain: an experimental study. Int J Med Res Health. 2017;6(8):47-52.
4. Kage V, Naidu SK. Effect of iliotibial band stretching versus hamstrings and abdominal muscle activation on a positive ober’s test in subjects with lumbopelvic pain: a randomized clinical trial. IJTRR. 2015;4(4):111-116. doi:10.5455/ijtrr.00000075.

…という感じでしょうか。それにしたって一文目にまだ引用が必要だと思うけど。
まぁ文章の構成とか引用とか理論の立て方とか指摘しているとキリがないので、この研究のキモの話に移ります。

腰痛持ちでOber's Test陽性の30人の被験者(性別、年齢不明)をランダムにグループAかBに分類し、グループAはヒートパックとITバンドのストレッチ(側臥位で、1分間ホールドx3回)を、グループBはヒートパックとPRIエクササイズ(90-90 Hip Lift with Balloonと90-90 Hemibridge with Balloon)を、合計6セッション行って前後のテスト結果を比較したそうです。一週間に何セッションやったかは明記されていませんので、例えば一週間あたり3セッションで2週間かけてこれらのInterventionを行ったのか、はたまた一日に6セッション詰め込んで一気にデータコレクションを終わらせたのか(まぁこれはないとは思いますが、記述がない以上否定はできないので)は不明です。計測されたアウトカムはVAS、Oswestry Disability Index (ODI)、スマホを使ったInclinometer (Ober's Test時の股関節内転角度)とPelvic Inclinometer(骨盤の前傾度、しかしどのようなポジションで何をlandmarkに計測されたのか記述無し)だったそうで。
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結果はこちら(↑)です。ベースラインで腰痛が60mm程度ならば、VASのMCIDは19mmで、2 ODIのMCIDは12.8-12.9のはず3,4 ですから、「両グループとも等しく、統計学的にも臨床的にも有意な痛み(VAS 30-34mm)と機能(ODI 18-19)の向上が認められた」「両グループとも等しく股関節の内転度(約4°)は向上したが、骨盤の前傾度はグループBのみ改善(0.087°)が見られた…とはいえ、臨床的意味があるような角度とは考えにくい」と私ならば結論づけたくなるのですが…著者は「ストレッチも効果的だったが、PRIエクササイズのほうがより統計学的に大きな効果が見られた」「臨床的に、ストレッチの効果は短期で消失したのに比べ、PRIエクササイズは痛み・股関節可動域・骨盤傾度・機能においてよりその効果がより長持ちした」「つまり、総合的にOber's Test陽性の腰痛患者にはITバンドのストレッチよりPRIエクササイズのほうが有効」と結論づけています。個人的には、以下の理由で同意しかねます
- 「統計学的に」というならどういった統計的分析に基づいて「PRIエクササイズのほうが優れている」と断定できたのか?各グループ内のpre-とpost-interventionの比較こそあれ、グループ間の改善幅を直接比較したような統計的分析は一切見られないが?
- 文中にはセッション1を始める前とセッション6の終わりに(合計2回)アウトカムを計測、とあるが、それ以外のタイミングでもアウトカムを計測したならそのタイムラインはどのようなものだったのか?それらのデータを開示せずに「長持ちしました」というのはあまりに乱暴では?

むしろ、私はこの結果を見て、「意外とITバンドのストレッチも効果的じゃん」「いや、つーかヒートパックがストレッチ・PRIエクササイズの効果を凌駕するほどめちゃめちゃ有能なのでは?」という感想を抱くのですけれど…。

他にも、突っ込みどころとして、
- Inclusion/Exclusion Criteriaに基づき被験者を選んだ…と書いてありますが、その基準に関しての記述が一切ない
- スペーシングエラーが異様に多い
- 大文字・小文字の表記に一貫性がない
- 論文の最後に全部で5つの文献が列挙されているが、実際に文中で使われているのは1~3のみ。1と2は[1] 、[2]という風にカッコ表記なのに対して3はそのまま3と書かれているなど、こちらも一貫性がない
- スマートフォンをInclinometerとして使う妥当性の正当化が十分にされていない
- PRIエクササイズは90-90 Hip Liftと90-90 Hemibridgeをしたとあるが、これはどの被験者も両方を行ったのか?多分先行研究に則ってOber's 片側陽性患者がHemibridge、両側陽性患者がHip Liftをやったのだろうが、そうであればきちんと明記するべき
…などの「欠陥」が挙げられます。

うーん、改めて、これが私の学生(学部生)の提出する論文ならば、「よく頑張ったね、方向性と努力は悪くないから『AA』、でも論理的構成と統計的分析はまだまだだから『C+』だよ」と優しく成績をつけるんですけれど。仮にもジャーナルに掲載されている論文なのですから、その質は厳しく『F』レベルだと私は判断します。特に臨床家さんが読む価値も、考慮する価値もないでしょう。最近蔓延しつつあるPredatory Journalには気を付けなければいけない、Abstract(抄録)だけ読んでその論文を分かった気になってはいけないなと、改めて考えさせられます…。

1. Basu S, Kakade PP, Palekar TJ, Chitgopkar V. Influence of abdominal and hamstring muscle activation exercises over iliotibial band stretching on a positive ober's test in subjects with low back pain. Glob J Res Anal. 2017;6(15):704-705.
2. Katz NP, Paillard FC, Ekman E. Determining the clinical importance of treatment benefits for interventions for painful orthopedic conditions. J Orthop Surg Res. 2015;10:24. doi: 10.1186/s13018-014-0144-x.
3. Copay AG, Glassman SD, Subach BR, Berven S, Schuler TC, Carreon LY. Minimum clinically important difference in lumbar spine surgery patients: a choice of methods using the oswestry disability index, medical outcomes study questionnaire short form 36, and pain scales. Spine J. 2008;8(6):968-974. doi: 10.1016/j.spinee.2007.11.006.
4. Johnsen LG, Hellum C, Nygaard OP, et al. Comparison of the SF6D, the EQ5D, and the oswestry disability index in patients with chronic low back pain and degenerative disc disease. BMC Musculoskelet Disord. 2013;14:148. doi: 10.1186/1471-2474-14-148.

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  by supersy | 2018-08-15 19:30 | PRI

完全帰国しました、と、しゃっくりの話。

最終告知です!7月14日(土)のEBP講習があと一週間半後に迫っています。席がまだ若干数残っていますので、興味のある方はぜひ!

今回は基礎レベルの「治療介入編」と(3時間、3.0 EBP CEUs)、臨床応用レベルの「治療アプローチ・AMI編」「治療アプローチ・腱障害編」(各2時間、それぞれ2.0 EBP CEUs)をまとめて一日で開催します。日程と構成は以下の通りです。

<講習日時>
2018年7月14日(土)
9:30am-12:45pm  エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで
           *途中休憩15分含む3時間講習
12:45pm-14:00pm 昼食(各自)
14:00pm-16:00pm エビデンスに基づく治療アプローチ: AMIと抑制解除療法
16:15pm-18:15pm エビデンスに基づく治療アプローチ: 腱障害リハビリ

ちなみに、基礎レベルの講習は「エビデンス(科学的根拠)に基づく…」とかよく耳にするけれど、どういうことか実はよくわからない、今更ヒトにも聞きにくい、という完全初心者さんウェルカムな講習です。午後に行う講習ふたつはどちらも「臨床応用レベル」の講習で、今までの「基礎レベル」の内容から一歩踏み込み、実際に臨床の現場で皆さんがぶつかっていそうな症例についてお話をします。「エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで」講習の事前・同日履修を強くお勧めしますが、必須ではありません。p値や効果量の何たるかがわかっている方であれば問題なく楽しめる内容になっております。

全講習、参加者の資格は問いません。元々ATC資格保持者さんのためにと思って企画した講習でしたが、今までPT、OT、柔道整復・あんま・鍼灸師さん、医師の方や大学教員・研究者さんなど幅広くご参加頂いており、学生さんも大歓迎です!リピーターさんも、リフレッシュにまたという方も結構いらっしゃいます。


<定員> 各講習45名

参加は一番興味のあるコースひとつだけでも、お好きな組み合わせで2つでも、3つ全てでも。お申し込みはGuardians Athletic Training & Therapyのウェブサイト上のこちらから(お手数ですが、複数講習参加する場合はリンク先から各イベントひとつずつお申し込みください)。複数受講される方には一昨年から導入した『セット割引』システムが適応、そして『学生割引』も健在です。

<受講料> 
一般 3時間講習(基礎編) 9,000円; 2時間講習(臨床応用編) 各6,000円
   2講習同時申込で10% off
    (例: 基礎+臨床応用で1,500円引き、臨床応用講習2つで1,200円引き)
   3講習以上同時申込で15% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで3,150円引き)
学生 3時間講習(基礎編) 8,100円 (10% off - 900円引き);
   2時間講習(臨床応用編) 各5,400円 (10% off - 600円引き)
   2講習同時申込で20% off
    (例: 基礎+臨床応用で3,000円引き、臨床応用講習2つで2,400円引き)
   3講習以上同時申込で25% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで5,250円引き)
     *現役大学・専門学校生(国内外不問)さん対象。申込後に学生証の提示が必要です、




で、本題です。そういえば前回の更新で書き忘れたんですけど、完全帰国しました!日本に帰ってきてからはや一か月、イベント盛りだくさんで書きたいことがいっぱいあるんですけど、まずは順番に。

日本に帰国する直前はPRI本部のあるネブラスカはリンカーンにお邪魔していました。一番の目的は初開催のNon-Manual Workshopに参加することだったんですけど(余談ですがこの講習本当に濃く、有益な内容でした、PRC/Tの皆さん一度機会を見て行ったほうが良いです…)、その前日に諸々の打ち合わせも兼ねてぴょこっとPRIに顔を出したら、PRIVYにゲスト出演することになって3本ほど収録してきました。

PRIVYというのはPRIが行っている有料動画配信サービスで、毎月4-6つのペースで動画(20-50分程度)がアップされています。雑誌の定期購読の要領だと思っていただければ。一月あたり$37か、年間$360($84割引)でSubscribeすることが可能です。内容はエクササイズの紹介から、最近PRIが受けた質問に対する回答まで実に様々ですが、ロンのおしゃべりに同席している雰囲気の、インフォーマルさが個人的には大好きです。

ちょっとどんな感じか動画を見てみたい、と言う人は無料視聴用のサンプル動画3本をご覧ください。


今回のトピックは私の「月に一度くらいしゃっくりが出るんですよね。これは『多い』と言われたことがあるんですけど…ロンはしゃっくりをどのようにとらえています?」という質問です。ロンのしゃっくりに対する解釈と対処法についてのお話が聞けます。興味のある方はぜひ!

んで。

このお喋りの後、興味が沸いたのでしゃっくりに関する文献をいくつか読んでみました。分かったことをまとめます。

英語でしゃっくりは広くHiccupsと呼ばれますが、正式な専門用語ではSingultusっていうんですって。これは一般な米国医療従事者でもまず知らない名前だと思う…。定義としては「直後(35ミリ秒後)に声門閉鎖を伴う、リズミカルな横隔膜の痙攣1で、しゃっくりが起こっている最中は呼気筋肉が完全に抑制されてその活動が全く行えないんだそう。しゃっくりが48時間以上続けば「persistent」30日以上続けば「intractable」と医学的に名前がつくんですって。そんなに長く続けば不眠症になり、疲労は蓄積し、食事ができずに体重減少・栄養失調などを起こしかねず、QOLに影響が出ることは明らか。2 うわー想像するだけでもしんどい。

その原因には様々なものが挙げられるのですけど、術前に全身麻酔の処置をしている際や、その間でしゃっくりが出るケースは多いというのは初耳。慢性しゃっくりの既往歴がある患者さんには特に慎重に麻酔を行わないといけないのだとか。他にも、手術中Vagus nerveの損傷やdisturbance、投薬で電解質バランスが乱れたりなどが原因で手術中のしゃっくりが起こったりということもあるらしい。 2

しゃっくりは反射メカニズムによって引き起こされており、
1) Afferent impulsesがVagus nerve、Phrenic nerve、もしくはT6-12の交感神経鎖を通じてHypothalaus (視床下部)、Brainstem (脳幹)、脊髄C3-5にあるHiccup Reflex Centerに送られる
2) Hiccups Reflex Centerがそのメッセージを受け取り、Efferent limbにシグナルを送る
3) Efferent limbであるPhrenic nerveに刺激された横隔膜、Intercostal nerveに刺激された肋間筋、斜角筋とVagal branchに支配された声紋がそれぞれ収縮もしくは閉鎖という反応をする→しゃっくりが起こる、
という出来事が順番に起こって引き起こされる現象なのだそう。何目的の反射なのさ?ってのが気になるところですが、しゃっくりは胎児に頻繁に起こり、子供や成人すると頻度が減ることから「主に胎児用の羊水を飲み込んでしまわないための反射ではないか」と言われてはいます…が、詳しいことはまだまだ分かっていないんだそうな。2

しゃっくりはただの呼吸反射ではない、という文章も印象的で、しゃっくりは咽頭と喉頭にある二つの機能的コンプレックスがReciprocal inhibition (相反抑制)を適切にできなくなったことによって起こるのだと。「二つの機能的コンプレックス」というのは声門閉鎖コンプレックス (glottis closure complex)と吸気コンプレックス (inspiratory complex)というものなんだそうで。2 わーもうこのへん全然聞いたことない名前ばっかり。だから、これらAfferent nerveに圧を与えるような変化(i.e. 腫瘍や妊娠)や炎症などによるirritation(食道炎や喘息など)でしゃっくりが起こる例が多く報告されているというのは至極当然なことなんでしょうね。 しゃっくりの原因として最も多いのは消化器官の疾患、パーキンソン病や多発性硬化症に代表されるような神経疾患、そして胸郭内の疾患らしいのですが(頻繁に起こる慢性しゃっくりは脳幹障害の可能性を示唆している、という衝撃的なタイトルの症例報告もありました3)、他に、代謝系の疾患(i.e. 糖尿病、腎臓疾患)で電解質のバランスが崩れることで起こったり、なんと精神疾患と結びつけられることもあるとのこと。文献にあった表2を抜粋しますが、こんな感じ(↓)。ひゃー長いリスト。前述したように手術や投薬などの「治療」がしゃっくりの原因になることもあるし、しゃっくり患者の「原因」を特定することは非常に難しいのだとか。
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これだけ原因が多岐に渡ればその治療が単純じゃないというのは一目瞭然かと思います。診断にもその治療にも複数の専門家が関わるべきである、というレビュー論文の結論はなかなかに頷けました。2 その他の介入論文を読んだ中ではVagal activityを増やすための手段のひとつとして、Vagus nerveにe-stimで直接刺激してしまえ!というもの4と、いやいや呼吸介入をしてCO2 Retentionを増やせばしゃっくり止まるべ、5という論文が特に面白かったです。前者は少し乱暴な感じがしますが(一時的に止まるだけで、また始まってしまうのでは?)、後者はプラスチック・バッグを抱えて呼吸するだけなのでお金はかからないし自分でできるし、利点は大きくあるように思います。

少し飛躍になるかもしれませんが、これは以前言及した、一般的頸椎痛・腰痛の患者はHypocapniaに陥っている、という話ともつながるので少しゾクゾクしております。しゃっくりが血中CO2濃度を高めることで解消された→しゃっくりは血中CO2濃度が異様に下がったことで起きた可能性がある、と先の研究を解釈すると、実はしゃっくりもHypocapniaが原因のひとつとしてあって、つまりハイパーインフレーション(息を吸い過ぎて胸郭が膨らんでいる)患者に見られる現象なのではないか、ということが言えるんじゃないかと思うんです。そのような患者には(例えばPRIが推奨しているような)息を長く強く吐くような呼吸法を実践することで血中CO2濃度が上がり、しゃっくりが止まる可能性を大いに示唆していると言えます。ひゃー、つながるねー、つながるなー。この論文ロンに送っておこう。

1. Samuels L. Hiccup; a ten year review of anatomy, etiology, and treatment. Can Med Assoc J. 1952;67:315–322.
2. Kohse EK, Hollmann MW, Bardenheuer HJ, Kessler J. Chronic hiccups: an underestimated problem. Anesth Analg. 2017;125(4):1169-1183. doi: 10.1213/ANE.0000000000002289.
3. Shastin D, Nidamanuri P, Nannapaneni R. Recurrent hiccups may signal brainstem pathology and should be investigated. BMJ Case Rep. 2018;pii:bcr-2017-222926. doi: 10.1136/bcr-2017-222926.
4. Petroianu GA. Treatment of hiccup by vagal maneuvers. J Hist Neurosci. 2015;24(2):123-136. doi: 10.1080/0964704X.2014.897133.
5. Obuchi T, Shimamura S, Miyahara N, Fujimura N, Iwasaki A. CO2 retention: the key to stopping hiccups. Clin Respir J. 2018. doi: 10.1111/crj.12910.

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  by supersy | 2018-07-06 23:20 | PRI

世界で一番静かな場所に行ってきました: What You See and Hear When You Become Sensory-Deprived

PRIのImpingement and Instabilityという講習を取りにミネソタに行ってきました。講習も講習で非常に実りが多かったのですが、実は今回の旅は、滞在地からほど近いところに位置するOrfield Laboratories(オーフィールド研究所)に行く!という「おまけ」付きでした。

ん、オーフィールド研究所って何かって?実は「地球上最も静かな場所」というギネス記録を持つ場所なのです。興味のある方はこんな記事(日本語)をどうぞ。
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事前に1時間半のツアーを申し込んでおり、友人の吉本さんとふたりで一緒にお邪魔しました(建物の見た目がチョー怪しい!スタイリッシュな研究所をイメージしていたので、着いてびっくりしました)。あっさっそく公式ギネス記録が飾ってある!こんな見た目なんですね…。

気のいいおじさまが色々と施設を案内してくださったのですけど…衝撃的!の一言でした。相当期待していったのですけど、期待以上に楽しかったです。ここね、元々は音楽スタジオだったらしいんです。プリンスやボブ・ディランがここでレコーディングをしたりもしてたんですって。でも今は文字通りLaboratories(研究所)なんです。 でも、音が専門の研究所って、実際なにやってるのさ?って思うでしょ?

例えば…とある冷蔵庫メーカーが「うちの冷蔵庫を『世界一静かな冷蔵庫』として売り出したいんです」と言っているとします。そうすると、実際にこの会社の製品が他の会社のどの冷蔵庫よりも本当に静かなのかという検証をする必要がありますよね。なので、「世界一静かな場所」と言われる無響室に自社製品を含む様々な冷蔵庫をひとつずつ運び込み、電源を入れて、それぞれの製品が出す音(ノイズ)を録音する。そして、一般の方(Sound Juryという言い方をしていました、「音の陪審員」ですか、なるほど)を研究施設に呼んでそれぞれの冷蔵庫を「聞き比べ」てもらい、静かな順にランク付けをしてもらう…。この検証の結果、見事自社製品が「最も静か」とランク付けされれば、正式に「うちの製品は世界一静かなんです」と宣伝できるというわけです。
(しかし興味深いのは、「電化製品は静かすぎるものもそれはそれで嫌われるんですよ…主婦の方なんか、冷蔵庫にしても食器洗浄機にしても、あまりに無音だときちんと動いているのか不安になるみたいで。少し騒音があるくらいが結局好まれるんですよね。掃除機なんかもっと面白くて、音がうるさければうるさいほど、掃除をしている実感が生まれてお客さんの満足度が上がる」というおじさまの言葉…うーん…ノイズって「何かをしている実感」を生むために必要なものでもあるんですよね)

それから、もうひとつ。ハーレー・ダビッドソンのバイクってあるじゃないですか。あのオートバイをヨーロッパに輸出しようってなったときに、ヨーロッパの路上で許される騒音レベル(アメリカのそれよりも厳しい)までエンジン音を下げる必要があったらしいんですね。しかし、ハーレーのエンジン音、あの重低音の三拍子が好きでファンはあれに乗るわけで、単純にボリュームを下げてしまうとせっかくのトレードマークの「らしい音」が失われてしまうかもしれない。そんなわけで、ライダーが運転中に聞いている音を特殊なマイクを使って録音し(これは「世界一静かな場所」ではなく、路上で行ったそうなんですが)、その音を様々な周波数に分解しながら、ハーレーファンを研究所に集めて「聞き比べ」をしてもらい、一体どの周波数のどの音が「ハーレーらしいエンジン音」という実感を作っているのか研究・分析したそう。それでハーレーをハーレーにさせる周波数を特定し、その他の周波数の音を消すことで「騒音レベル」を下げたと。そうして「合法」かつ「ハーレーらしさ」を失わないエンジン音を作ったんだそうな!へーーー!

実際に「録音した音から特定の周波数の音を抽出するスピーカー」とか、「音源とその反響を映像化するプログラム」なんかもツアーで見せてもらえました。す、すごい…。

それから「反響の部屋」も面白かった。一見なんてことないコンクリ張り+金属板をいくつか天上から吊るしている部屋なんですが、長い周波数の音をだし、それが壁や金属板に跳ね返ることで、音の波がお互いをcancelしたり(=音が消えて静かになる)、amplifyしたり(=音が大きくなる)するので、部屋をてくてく歩いていると異様に静かな場所があったり、騒がしい場所があったりするんです。音は波なんだ!ということを実感できる場所でしたね。

そしてツアーの目玉はなんといっても「無響室」!何重にもなる特殊構造でできたこの部屋(↓)は、発される音の全てを天上と壁が吸収してしまうので、音の反響が一切無いのです。おじさまの喋ってくれる声も、おじさまの口からまっすぐ私の耳に届く声のみは普通に聞こえるのですが、壁に反射して入ってくる他の方角からの音が一切ない。聞こえ方があまりに不自然で、非常に違和感があります。
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色々と説明してもらったあとで、「では今からこの部屋に貴方を残して扉を閉め、20分間無音状態を体感してもらいます。ついでに部屋の明かりも消しますか?」と聞かれたので、少し悩んで「では明かりもお願いします」と答え、部屋の照明も消してもらいました。せっかくなので聴覚だけでなく視覚も奪われた状態で私の身体がどう反応するのか感じてみたかったのです。おじさんは出てゆき、扉が閉められて部屋の中は完全に暗闇になります。何も見えません。



その時の20分間の体験を覚えているうちに言葉に残しておきたいと思います。



まず、真っ暗闇、無響空間のはずのその部屋の中で最初に感じたのは意外にも「眩しさ」でした。

床(であるはずの部分)から白い光が放たれているように感じたのです。暗い部屋でその「地面」は煌々とそれはそれは眩しく光っており、目を開けていられないほどでした。しかし、目をつぶってみてもこの光は瞼の裏に張り付いてでもいるかのように私を睨み続けるのです。「これは自分の思い込みが作っている光なのだ」「消せるはずだ」と何度か意識してみたのですが、この電気を消すことはしばらくできませんでした。

次に気になり始めたのは、自分の身体の中の音でした。そうなんです、無響空間では、周りからの音が全く耳に入ってこないので、自分の体内の音が聞こえ始めるのです。首を右に、左に向けると、頸椎のギシギシ軋む音が聞こえてきて自分がとたんに油の切れたドアヒンジになったように感じました。首をひねると同時に複数の箇所がギシギシ、ミシミシいうので、あっこれがOAで、あっちがC1/C2か?身体の動きって複雑な箇所が同時に動いて実現しているんだなー、と、他人ごとのように考えたりしていました。

その次に浮かんできた感情は「うるさいな」でした。地球で最も静かな空間で「うるさい」と感じたなんて、おかしいかもしれません。でも高い周波数の、例えるなら夏場にどこか遠くでセミの大群が一斉に鳴いているような音と、低い周波数の「ぼー」という音が同時に聞こえてきて、それがうるさいなぁと思ったのです。これも先ほどの光同様、「脳が勝手にない音を作り上げているのだ」と言い聞かせて、静かさに集中しようとしてみたのですが、その努力はセミの鳴き声をより大きくしただけでした。この音は、残りの時間ずーっと続きました。

終盤で感じた視覚体験もまた異様でした。前もっておじさまに「purple haze(紫の霞)のようなものが見えたりするからね」と言われていたのですが、本当に紫のモヤが目の前に現れ、上下左右にユラユラ揺れ始めたのです。まさか?と何度も目を凝らしてみたのですが(…という表現はおかしいかもしれません、意識を集中してこのモヤの正体を見つめようとしたのですが)、これはハッキリと紫色でした。なぜ紫なのか、理由は分かりませんが、私の所縁ある団体の象徴カラーが紫なので、あまりの偶然に少し笑ってしまいそうになりました。何も見えない究極の暗闇では紫が見えるんだよと、後でロンに教えてあげなきゃ、と思ったのを覚えています。
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20分は、長いようであっという間でした。部屋を出てから、周りの何気ないノイズが耳に流れてきて、それと共に止まっていた時間がやっと流れ始めたような妙な感覚を覚えました。いやもう、なんと表現したらいいか、とにかく本当に面白かったです。他ではできない感覚欠如体験です。興味のある方、時間のある方は是非この奇妙な研究所に一度足を延ばしてみることをお勧めします。**ツアーと見学は事前申し込み(支払いも含め、2週間前までに)が必要ですのでご注意ください。私は研究所に事前にメールして予約をし、それから電話でカード番号を口頭で伝える形で支払いを済ませました。
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最後におじさまと一緒に写真を撮りました。研究所の所長、Steven Orfield氏とも直接お話することもできて、ほくほくで今テキサスへの帰路についています。はー楽しかった…。「アメリカでやり残したことトップ6」のうちひとつがチェックできました(ちなみにもうひとつの「NYで博物館・美術館巡り」も3月に完遂できたので順調といってもいいでしょう)。残り4つはまた戻ってきたときに。

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  by supersy | 2018-05-22 21:30 | PRI

PRIに関する最新研究論文のまとめ。

以前にPRI関連の文献を「なぜ風船を使ってエクササイズをするのか?」というタイトルで紹介したことがありましたが、今回はなんと、インドから新たに4つのPRIエクササイズ介入を検証した論文が発表されたのでまとめておきます。興味深いことに、本部曰く、これらのインドの研究者さんは一度もPRI講習を受講した記録がないんだそうです(笑)。どうやってこの研究者たちはPRIに出会ったんだろう?なんで検証しようと思ったんだろう?ここらへんのほうについつい私自身興味を持ってかれてしまいますね。

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最初はこの論文、2015年発表のもの1 です。仙腸関節痛、股関節痛、腰痛のいずれかを持っており、Ober's Testが片側、もしくは両側が陽性の患者30人を対象に1) Moist Heat Pack (以下MHP)を20分したのち、IT Bandのストレッチを1分3セットの「ストレッチ組(n = 15, 30.87 ± 9歳、男女比不明)」か; 2) MHP20分したのちPRIエクササイズ(片側陽性患者は90/90 hemibridge with balloon、両側陽性患者は90/90 hip lift with balloon)をする「PRIエクササイズ組(n = 15, 26.07 ± 5.8歳、男女比不明)」にランダムに分けられ、6セッション分の治療を繰り返したそう(どれくらいの期間に、どれくらいの頻度でセッションが行われていたかは不明)。んで、セッション前と後の股関節ROM、VAS、Modified Oswestry Low Back Pain Disability Questionnaire(MODQ)を使ってアウトカム計測したそうな。ここで浮かぶ疑問は二つ。股関節ROMはスマートフォンのinclinometerを使って計測したと書いてあるけれど、それがvalidated toolであるというエビデンスは被験者には股関節痛の患者も含まれていたはずだけど、何故にMODQが全員に使われたの

んで。結果です。VASはストレッチ組が7.33 ± 0.8から4.47 ± 1.68へPRIエクササイズ組は7.13 ± 1.3から2.27 ± 1.2へとどちらも著しく改善したもの(それぞれp = 0.0007, p = 0.0001)、改善幅を差として比較すると、PRIエクササイズ組の改善の方が統計的に有意に大きかった(p = 0.0004)そうな。同様に股関節外転角度も(from 21.60 ± 2.85 to 23.30 ± 2.38 vs from 19.80 ± 3.43 to 29.27 ±1.98, p = 0.00001)、MODQも(from 76.13 ± 7.26 to 52.73 ± 17.62 vs from 62 ± 12.32 to 24 ± 8.8, p = 0.0006)「両グループ共に改善したが、PRIエクササイズ組の方がはっきりと良い」という結果が出ています。ただね、ここでひとつ…特に股関節外転、SEMとかSDを考慮すると、あまりにp値が低すぎやしませんか?これ、この数値でたった15人の被験者でこんなに低い値になる!?!?ちょっと統計がおかしい気がするんすけど…。小数点もそろってないし…。怪しすぎる…。

この論文の結果には「どちらも効果あったけれど、PRIエクササイズのほうが効果が長く続いた」とありますが、「長く続いた」ってどういうこと?全く同じ時系列でアウトカム計測をしたんじゃないの?結果と結論が一致していません。「同期間行った場合、ストレッチよりもPRIエクササイズのほうがより痛みの軽減、可動域の向上と機能の改善につながる」だったらまだわかるんですけど。

この論文は、はっきり言って挙げ切れないほどの問題点があります。単純なスペルミススペーシングエラがいくつも目につきますし、文中のテーブルの線や数字もバラバラだし、英語もところどころおかしいし(意味が分からない文章も多々ある)、Table 3の股関節可動域が何故右側だけの表記なのかなんの説明もないし、テーブルに書いてある数字と本文の数字が合わないし、何より決定的なのは引用の文献番号が本文と文献リストとでズレていること。これでpeer reviewed journalとは恐ろしい…。こういった論文を手放しで「わーい。PRIの言っていることをサポートしてくれた論文が出たよ、素晴らしいよー!」と言って紹介してしまうと、私はただただ論文の批判的な読み方も知らない大馬鹿ものであると露呈するだけになります…。だから私は敢えて言います、この論文の出来は世に発表されるにはあまりにお粗末。うちの学生がこれを課題で提出してきたらB-を付けて「やりたいことは面白いんだけどなぁ、もう少しちゃんとやらなあかんで」と突っ返しますよ。

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んで。こちらの論文は2017年発表2 です。見た所さっきの研究グループとは違うみたいですね。所属大学が違うんで。
冒頭に「IT bandは又の名をMaissiat's Bandとも呼ばれていますが…」と書いてあるんですがむしろその名前を初めて聞きました!そんな別名が!…勉強になります。IT Bandは多関節筋連鎖の一部なのに、「IT Bandが『張っている』となると、ストレッチだなんだと局所的な治療をすることが多いですよね」というところから始まり、PRIのエクササイズであるRight Sidelying Respiratory Lest Adductor Pull Back (以下Pull Back)を代わりに介入としてやってみるのはどうか、ということのようです。この理論の流れはもっともです。

被験者になったのは30人の左側IT Bandの張り(=左Ober's test陽性)があった患者さん(平均29.16 ± 3.11歳、男16人、女14人)。何故「左」にこだわったのか、私はPRIかじってるんで分かりますけど、文中では一切説明がありません。ちょっと不親切では…というか、単純に「片側」とすればよかったのでは?ちなみに両側陽性の患者は今回の被験者の対象外だったようです。んで、これらの被験者をランダムに1) MHP(20分一日二回)+ストレッチ(15-20秒を3-5回)+Pull Backエクササイズ(説明は省きます、5回を一日二回)を3週間のPRIエクササイズ組(Group 1, n = 15); と2) MHP(20分を一日二回)+ストレッチ(15-20秒を3-5回)のみを3週間のストレッチ組(Group 2、n = 15)との2グループにわけたそう。これらが毎日自宅で行われたのか(その場合、MHPはどうやって手配したのか)それとも実験期間中は毎日クリニックに通院したのかは不明で、もし自宅で行われた場合、どのようにして患者がしっかり規定数の治療・エクササイズを行ったか確認したのか(compliance rate)も気になります。それから、どうしてストレッチのプロトコルに幅があるんでしょう?「15秒を3回(合計45秒)」を3週間(= 945秒)やった人と「20秒を5回(100秒)」3週間(= 2100秒)にやった人とではdosageがかなり(倍以上)違うのでは?と思いますが…

ともあれ。計測したアウトカムは股関節の内転可動域のみ。結果は以下の通りです。
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つまるところ、「両グループともに著しく改善したけど、比べるとPRIエクササイズ組(Group 1)のほうが改善幅が統計的に有意に大きかった」というところでしょうか。個人的にはMHPとストレッチだけでもかなり可動域の改善という意味では上がっているのがびっくりですけどね。あと、どうしてOber's testをもう一度行ってテスト結果も計測しなかったんでしょう?せっかくだから陰性になるかどうか確かめればよかったのに。この論文の結論では「Pull BackエクササイズはIT Bandの張りに効果があっただけではなく、姿勢の左右非対称性の矯正、呼吸を整える効果がある」とまとめてあるんですが、おいおいちょっと、姿勢の矯正や呼吸への効果はこの論文では一切計っていないでしょう。どうしてそう話を飛躍させてしまうのか。「ただMHPとストレッチやるより、それにPull Backエクササイズを足した方が股関節内転可動域向上効果はより大きい」以上のことは言えないはずです。

うーん、やりたいことは分かりますし、確かにPRI理論を補足してくれている研究ではあるんですが、被験者の数も少ないですし、痛みなどの自覚症状がある患者さんってわけでもありませんし、「で?」という気はしないでもないです。今回読んだ論文の中では実はこれが一番マトモかとは思うんですが、個人的な感想や印象を書くと、やはりこの論文も少し怪しさが残ります。実験手順などで細かいところが省かれすぎてますし、あとは導入部分の文献引用が少なすぎて、多くの文章がふわふわと地面から浮いてしまっている印象です。もう少し丁寧に書かれている論文のほうが私の好みです。
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次はこちらー。2017年の3 です。これは最初の2015年の文献1 と同じ大学から発表されていますが、著者は異なりますね。んーしかしこの論文も冒頭の引用が甘いです。"Studies have found..."って言ってるのにその文章の終わりに複数どころかひとつの文献の引用もないって駄目でしょ。どの論文か予想はつきますけど、それでも著者がちゃんと自分で責任もって入れなきゃダメな個所なはずです。イントロで20は引用できる論文ありますよ。

ともあれ。この研究の対象は29人のtertiary care hospitalに来院した、最低でも12週間non-specific LBPに苦しんでいる慢性腰痛の患者さん(平均27.7 ± 7.5歳、男12人、女18人…つまるところ、通常よりもかなり深刻な腰痛患者と言ってもいいんじゃないでしょうか)。 3セッション参加してPRIエクササイズ(今回は90/90 Supported Hip Shift with Hemibridge with Balloonですね、文中に名前がハッキリ書かれていませんけど)を行い、VASとMODQとForced Expiratory Volume (FEV、1秒間の最大呼気量がFEV-1, 6秒間の最大呼気量がFEV-6)を計測したそうな。エクササイズは3日連続で行ったのか、間に数日空いたりしたのかは不明監督役のセラピストがいたのか、ホームエクササイズとして処方されたのかも不明。ここらへんの説明不足は実験の再現性をゼロにしてしまうので致命的かなー。1st Session時には被験者が46人いたのに3rd Sessionには29まで減ってる(17人もドロップアウト=37.0%!! 理由は「もっと早く効果が出ると思っていたから」と記述ありますが、17人が17人全く同じ理由ってことはありえるのでしょうか?12週間ずっと痛みがある、慢性腰痛の患者さんでしょ、3日の治療で「長すぎる」なんて言う?)のもかなり怪しい。PRIエクササイズそのものがドロップアウトの理由に深く関わっているなら、それらの患者さんを「そもそも存在しなかった」かのように消してしまって統計分析するのはバイアスの源にしかなりませんからね。今回の研究では比較対象になるコントロール群もいませんし。…まぁ、それはちょっと置いておいて、結果は以下の通り。
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p値、やっぱりこれもおかしくないですか?SDがここまで大きくて、p値がこんなに低い値になります?これらの数字を鵜呑みにすれば「PRIエクササイズはたった3セッションで慢性(>12週間)腰痛患者の痛み、6秒間の最大呼気量と機能を著しく向上させる」ってことになりますが、私はこれがどれもMCIDどころかMCDを満たしているとも思えないので、I am not soldって感じです。(最短でも)3日かけて、痛みが4.8から4.4に減ったって、MODQが0.9点上がったって、私が患者なら全くありがたくないです。せめて実感できるくらいの改善幅を見せてくれーい。
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最後です。これ4 も先に紹介した論文1,3と同じ大学の研究チームのものだ…よ、読む前から不安いっぱい!そして引用されているソースの多くが論文じゃない!うう…同じ文章をもっとちゃんとしたソースで書けるはずなのに!

50歳以上の膝のOA患者を対象にしたこの実験では、20人のGrade 2-3患者(後述する理由で年齢や性別などの詳細は不明)が集まったようで、ランダムに1) Short Wave Diathermy(15分)、TENS(最大20分)、3つのストレッチ・エクササイズ(15分を4回)と3つの筋力強化エクササイズ(ハムストリング、大腿四頭筋、ふくらはぎをそれぞれ強化する目的、10回3セット)行うコントロール群と、2) これら全てにPRIエクササイズ(これも90/90 Supported Hip Shift with Hemibridge with Balloonですね)を加えたPRIエクササイズ組に分け、それぞれの治療を10セッション10日間繰り返したそうです。前述した研究と同じで、10日連続だったのか、間に数日空いたりしたのかは全く記述がありませんTENSの「最大」20分という幅もナゾです。

そして、結果なんてすがええっとこの論文はここまでで一番やばいです。「結果はテーブル1-3参照」と書いてあるんですがテーブルが論文のどこにもひとつも見つかりません。こんなに読んでいて泣きたくなる論文は初めてです。

なので、文中から推測する結果を書くと「PRIエクササイズ組はコントロール組と比較して著しく痛みが減少、機能が向上した」ということらしいんですが、しかし、痛みに関しては直後に「これはminimal clinical differenceだった」とも報告いるので、初めてMCIDに言及しているのかなという感じです。これはいい傾向です。つまり、もう少し詳しく書くと「PRIエクササイズ組はコントロール組と比較して痛みはそこそこちょびっと減少、機能がそれなりにがっつり向上した」って感じなんでしょうか。しかしまぁくどいですが私自身の目でデータを確認せずにこの結論をそのまま飲み込むことはできないので、なんとかどうかエディター様様、データを…!テーブルを…!追加してください見てみたいんだー!

そんなわけで…ええと…何を書きたかったのか分からないブログになっていましたが、これらの論文全てでPRIエクササイズの効果が報告されてはいるんですが、全く手放しで喜べない、かなりお粗末な内容である、ということはここに書き記しておきます。同じ目的でももっと他にやりようはあったはず。怖いもの見たくて仕方ない皆様は、是非ご自分で下のリンクから各論文に飛んでみてください。Peer-reviewed journalの世界観変わりますよ、ふふ…。

1. Kage V, Naidu SK. Effect of iliotibial band stretching versus hamstrings and abdominal muscle activation on a positive ober’s test in subjects with lumbopelvic pain: a randomized clinical trial. IJTRR. 2015;4(4):111-116. doi:10.5455/ijtrr.00000075.
2. Shori G, Joshi A. Effect of right sidelying respiratory left adductor pull back exercise in subjects with iliotibial band tightness. Physiotherapy Quarterly. 2017;25(1):13-16. doi:10.1515/physio-2016-0014.
3. Fernandes J, Chougule A. Effects of hemibridge with ball and balloon exercise on forced expiatory volume and pain in patients with chronic low back pain: an experimental study. Int J Med Res Health. 2017;6(8):47-52.
4. Metgud S, Chougule A, Heggannaver A. Effects of hemibridge with ball and balloon exercise as an adjunct to conventional therapy in knee osteoarthritis patients: a randomized controlled trial. Asian J Med Health Res. 2017;2(6):42-50.

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  by supersy | 2018-03-02 23:59 | PRI

SWATA Competency Workshop & PRI Postural-Vision Integration Course

色々とイベントフルな週末でした。

一つ目のイベントはSWATA Competency Workshop。毎年1月末の木~土曜の3日に渡ってDistrict 6 (Texas & Arkansas)に住む現役のAT学生3・4年生(もしくは大学院1・2年生)を対象に行われるBOC試験対策勉強会です。会場となったのは私の母校のTexas State University-San Marcos! 訪問したのは実に4年ぶりでした。
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卒業してもう11年と言う年月が経っているのですが、奇跡的(?)に当時の恩師やPreceptorがまだ大学に残っているので押しかけていって挨拶をしたり、元同級生が今、ここで教職をやっているのでcatch upしたり、思いがけず定年退職した教授が私がくることを聞きつけてわざわざ会いに来てくれたりと、さながら小さな同窓会のようでした。
学生のころ通った教室やAT Clinic、Endzone Complexに足を踏み入れると思い出がとめどなく流れてくるので驚きました。ここで皆でくだらない冗談言ってゲラゲラ笑ったなー、とか、選手がミーティングに行っている間、この部屋で皆で勉強して時間潰したっけ、とか、ここで熱中症になって倒れたっけ(笑えない)、とか…。キャンパスはどんどん大きく立派になっていくけど、変わらない「ホーム」がここにあります。学部生時代を過ごした場所はやはり自分にとって少し特別ですよね。初心に帰る思いでした。

そもそもなんで学生対象の勉強会に参加したかって、実は講師としてお呼ばれしていたからです。昨年も講師として来てくれないかと声をかけていただいていたのですが、「すみません、既に申し込みをしてしまった講習と重なっていて…」と泣く泣く断らざるを得ず。今年はスケジュールががっつり合ったので是非に!ということで、私は日程の2日目、3時間の講義・実技を担当させていただきました。「BOCの試験に合格することはもちろん重要だ。でも受かった後も色々勉強しなきゃいけないことはたくさんあるよね、例えばATとして最低限の知識・技術をブラッシュアップするためにPosition Statementを読むとか…」という話から、「それからね、ATCになったあとは自分の好きなことを選んでがっつりずっぷり勉強できるという楽しみがあるよ!例えばこんなものがあるんだけど…」という流れでPRIのイントロの授業をやらせていただきました。講義と実技(↓)、結構みっちりやりましたよ。こんな斬新ともいえる切り口の講習を依頼してくれたCarlaのオープンさが素直にありがたいです。楽しんでもらえたかなー。
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Workshopが終わった後はダラスに移動し、土・日を利用してPRI Visionの講習を履修してきました。こっちは教えるほうでなく、受講するほうです。PRI Visionのコースは一般のPRIのコースに比べてまだまだ米国内でも関心が低いというか、参加者が限られていて非常にもったいない気がします(受講者の数が足らずに講習がキャンセルになることも度々あると聞きます)。私がこの講習を取るのは二回目なんですが、講師のRonもHeidiも「どうしたら受講者にもっとclinically applicableなやり方でmaterialを教えられるか?」を常に試行錯誤しているため、毎回切り口が少し違って、取るたびに大きな発見があります。今回も非常に実りの多い時間が過ごせました。講習を受けながら考えていたことを忘れないうちにまとめておこうと思います。

目は口ほどに物を言う、なんてことわざもありますが、目の外観以上に、各々がその二つの目をどう使ってどんな世界を見ているかもその人のヒトトナリを表しているのではという気もします。 
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その人がどんな風に世界を捉えているのか…というのは例えばその人の描く絵に大きく反映されますよね。「光の魔術師」と言われる有名画家のレンブラントの書き残した多くの自画像…それら見てみると、油絵もエッチングも(油絵は鏡を見て描いたものなので左右が反転し、エッチングは印刷の過程で再反転するので左右は結局元通りになるはずなのですが)関係なく、多くの絵の中の「自分(extension of self)」の左半身が陰に包まれているのが見て取れます。光の魔術師と言われるほどの光の使い手が、敢えて自らの左を影で塗りつぶしたその背景には、どんな意図があったのでしょうか?彼は自分自身の「左」をどういう風に見て、何を感じていたのでしょうか?色々と探求したくなる絵たちです。
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実は、これには参考になるかもしれない歴史的見解があるのです。それは、「レンブラントは目に異常があったのではないか」という説。論文も出ています。1,2 下のエッチングによる「自画像」では、左目が少し外に逸れており、目の焦点が定まりきっていないようにも見えます。一説には、レンブラントは外斜視(exotropia)があり、それによって物事を立体的に捉えることができなかったのではないか、つまり立体盲だったのではないかと推測されているのです。尤も、これは画家としては決して悪いことではないらしく(美術学校では生徒に「片目を瞑って対象物を見ろ」と指導したりすることもあるらしい)、寧ろ彼の強みになったのかもしれませんが…。1 どちらにしても、彼の世界の見方、捉え方は我々が一般的に考えるそれから少しばかり逸脱していたことは間違いなさそうです。
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「見ている世界」に影響を与えるのは、目の異常だけでなく、脳の異常も然りです。例えば脳卒中を経験した患者さんがUnilateral Spatial Neglect (半側空間無視、以下USN)をdevelopしてしまう、ということがあります。 空間無視とは文字通り、空間の存在に気が付かずそちらに注意を向けることができなくなってしまった状態を差し(= the inability to pay attention to people and things on one side)、その空間を見ることができなくなってしまった状態(= inability to see one side)とは異なります。見えてはいても、認識ができないのです。そちら側の世界に、意識が飛ばせないのです。

いまいちどういうことかよくわからない、という方もいるかもしれません。例えば、USNの患者さんに、「手本(↓左)を見てその通り絵をかいてみてください」と指示すると、こういった絵(↓右)を描くのが典型的なんだそうです。時計も家も花も、お手本の左半分が全く見えていないような、その存在を無視した絵になっているのが分かります。自分の左視野内に何があるのか、把握しきれていないのです。こういった患者さんは、日常生活の中でも、髭を剃るときは顔の右側だけを剃ったり、食事時も左側に置いてあるものに一切手を付けなかったり、車椅子を運転中も左側のものに何度もぶつかったりするそう。「左」という空間を把握する能力がぽっかりと欠如してしまう(そしてその本人は自らの『無視』に気が付いていない)というわけです。
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今「左の世界を」と言いましたが、これまた興味深いことに、USNの殆どは左に起こるのだそうです。これはwikipediaからの引用になりますが(信頼できるエビデンスではありませんけど 笑)

右半球障害による左側半側空間無視が一般的である。左半球障害による右側半側空間無視も存在するが、左半球障害が起こると通常失語症が前面に出てくる。左眼が失明している場合も多いが、見えていることもあり、半盲とは別の病気と捉えられる。
そうなんです、「左の空間無視が圧倒的に多い」のは、我々人間がそもそもどういうわけか右視野を把握する能力に長けていることに起因します。脳には頭頂葉(parietal lobe)と呼ばれる部位があり、これが空間把握を司どっている…というのは皆さんもご存知でしょうけれども、「右の頭頂葉は右と左の空間把握を司り、左の頭頂葉は右の空間把握のみを司っている」という左右の違いは知っていましたか("The right parietal lobe contains a spatial map for the both right and left visual field, while the left parietal lobe contains the right visual field only.")?私は恥ずかしながら一年前にPRI Visionの講習を初受講するまで知りませんでした。…ということは、そう、左脳で脳卒中が起きて頭頂葉が壊死しても左右の空間把握能力はそれほど影響されない一方で、右脳で脳卒中が起こって頭頂葉が影響を受けると、ヒトは左の空間把握能力のみを失ってしまうというわけなのです。

では実際に、脳卒中によって左の空間を感知できなくなってしまったUSNの患者さんたちは、一体どのように視野を「感知」、「処理」、そしてもしかしたら「修正」するのでしょうか?それについて書いてあるのがこの論文(↓)3 です。
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この論文の冒頭によれば、USNの患者は、回復早期の段階で、「右側のものに意識が向くようになる」というバイアスのため、自然と(無意識化で)gaze (注視点)が右にずれてくるんだそうですが、ひとたび自分自身の「neglect behavior (無視行動)」に気が付いて「あっ、私、左がちゃんと認識できていない」と自覚してからはgazeを意識的に左にずらすようになる人もいるんだそう。これをこの論文では「Compensatory Behavior」と呼んでいます(必ずしも悪い意味で使っているんではないと私は受け取っていますが)。

この実験では右脳・脳卒中患者(平均65.64±13.70歳)を対象にUSNに対する代償(= intentional left gaze shift)がどのように行われているか、行われている場合、脳の活性にどういった違いが見られるのかを検証。全49人の脳卒中患者さんのうち、(脳卒中こそ起こしたけれども)USNそのものがない患者は24人(脳の他の部位に損傷が認められたのか、USNを既に克服していたのかは不明)、USNが認められるが代償をしていない人が15人、USNがあり代償もしている人は10人いたそう。で、以下のタスクをこなしてもらい、その間の目の動きを観察・脳活動を計測したそうな。
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1. 5つの黒点が表示されたスクリーンを見るよう指示。
2. ビープ音の0.5秒後に、5つの点のひとつがランダムにフラッシュ(2秒間黒と赤の色の変化を交互に繰り返す)する。
3. 被験者はフラッシュしている点にできる限り速く目線を合わせ、見つめる。
4. 0.5秒の休憩を挟んでまたビープ音が鳴り、0.5秒後にまたひとつの点がフラッシュ…を合計25回繰り返す。

文章中に「4秒のインターバルで…」と書いてあるんですが、その下のFigure 1には「3秒のインターバル」とも表記してあり、図を見る限りではビープ音からフラッシュまでが0.5秒、2秒間フラッシュ、0.5秒の休憩を経てビープ音、0.5秒空いてまた2秒フラッシュ…という説明がありますから、足し算をすると一度目のフラッシュ開始から次のフラッシュ開始までは丁度3秒間。「3秒インターバル」という表現のほうが正しそうですね。

これらのタスクは2セット繰り返され、1セット目は特に指示を受けずに自然な状態で(= gaze shiftする人はするし、しない人はしない)行い、2セット目はフラッシュとフラッシュの間に画面の中央を見つめるように指示されて行った(= gaze shiftの要素を排除)そうな。
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結果は見たほうが早いですかね。こちらです。Experiment 1 (指示なし)の場合(↑図右)では、USNがない患者群(RHD、黒線)とUSNがあったけれども代償もしている患者群(USN+、青線)は全てのフラッシュに即時に対応できたのに対して、USNがあり且つ代償をしていない患者群(USN++、赤線)は左の点ふたつに反応しないこともあったり、反応に著しく時間がかかったりしたそう(p < 0.01)。目の移動線がそれを如実に表していますよね、3つの患者群で目の開始位置が全く違う。Experiment 1 (指示なし)の際に、USN+はそもそも目線が左に寄っているところから開始し、左から舐めるように右に移動することで左の見落としを防いでいるのに対して、USN++組は右寄りから開始し、そのまま中心線を割って左に行くことなく、右側にとどまり続けている(左半側空間無視)様子がよく分かります。Experiment 2ではどの組もそれほど差がなく、特にUSN+もUSN++も同様に左への反応が遅れているのが興味深いです。つまり、この両実験を比較することで「USN+の患者はleft gaze shiftという代償行動で見落としを防ぐ努力をしている」ということが言えます。

しかし、これはあくまで代償行為による見落とし防止が成功しているのであって、USN+の患者たちの脳の活性パターンは、RHDのそれとはハッキリ異なっていたそう(p < 0.05)。USN+の患者はタスク中前頭葉を過剰活性させ、頭頂葉の活動を補っているのであって(↓)、空間無視そのものを克服したわけではないのです。この論文の考察では、「USN発症」→「USNがあるという自覚が欠如しており、right gaze shiftが起こる」→「USNがあるという自覚が芽生え、前頭葉の活動を増やし、left gaze shiftをすることで左視野の把握に成功」→「左視野把握能力が徐々に脳の可塑性によって回復し、gaze shiftが消える」という流れでヒトがUSNを克服するのではないかと推測されています。なるほど、理には適っているように思います。
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左にgazeをshiftすることが、左の主視野(central vision)の再発見につながり、それがさらに広がって左の副視野(peripheral vision)の再習得につながるということなのかなー。副視野の取得がその後に起こるのであれば、gazeのshift(frontal plane movement)があくまで短期的なcompensatory strategyとして使われること事態はきっと何も問題ないはずだし、それはいわゆるプリズムを使った介入の目的(= 視界を一方向にズラす)とも非常に近いような気がする。というか、gazeが長期間経ってもshiftしない人たち(今回の研究でいうUSN++の人たち)は、そもそも左の副視野を有効活用できていなかった人たちなんじゃないかなー。認識できていない、その人にとって『存在』すらしていない世界にヒトが足を踏み込むことはないから、半側空間無視の患者さんは必然的にgaitの半分を失うことになる(左足のヒールストライク時には左の副視野からの感覚入力が必要不可欠。そこから左の立脚中期にかけて左副視野のoptic flowが生まれ、『前進している』感覚が生み出されるから)。…ん?そもそも左の世界を無視している人間が歩行をしたら、左荷重、左腕の前方スイングは生まれるのか?自分の目の前にスイングされた左腕すらも認識できないのに?認識できていない左地面に全ての体重をかけられるほど、その空間を信頼できるのか?もしかしてgaitのバイオメカニックスそのものが恐ろしいほど変化する?全てが右に偏った、lateralizeした世界で生きるのは窮屈だろうけれど、そんな狭まった選択肢で生きていることにも気が付かないなんてぞっとするし、もしかしたらその気が付かない理由が「そもそも脳卒中前から左が無かった」だったとしたら…。うーむ。色々考えてしまいます。

PRI Visionのコースを取ってから、歩行時に目の端でreferenceとなる背景を掴んでそれをさながら「視覚的足がかり」にしてぐいっと自分を引っ張るように進んでいる感覚が楽しくなっています。こうして人間は前進するのだと。歩行がいかに感覚統合の賜物かってこと、考えれば考えるほど圧倒されてしまいますね…。近視も乱視もがっつりある私ですが、PRI的に目の問題はどうやらそんなになさそうです。

空間無視…見えているのに把握できない…。実際に脳の中でどんな混乱が起きているのか、それとも私が思う以上に波一つない海のように静かで穏やかな世界なのか。脳卒中患者の頭の中、心の中をこっそり覗かせてもらいたい気持ちでいっぱいです。レンブラントがもしかしたら見えていなかったように、左にも光と色があり、空間が広がっているのだと実感しながら生きていきたいですね。PRI Visionを受講してのreflectionと絡めてのまとめになってしまいましたが、いやー、つまるところ、とても面白い論文でした!もうちょっとこの分野も読み込んでみるかなー。

1. Livingstone MS, Conway BR. Was Rembrandt stereoblind? N Engl J Med. 2004;351(12):1264-1265.
2. Mondero NE, Crotty RJ, West RW. Was Rembrandt strabismic? Optom Vis Sci. 2013;90(9):970-979. doi: 10.1097/OPX.0b013e31829d8d48.
3. Takamura Y, Imanishi M, Osaka M, et al. Intentional gaze shift to neglected space: a compensatory strategy during recovery after unilateral spatial neglect. Brain. 2016;139(11):2970-2982. doi: 10.1093/brain/aww226.

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  by supersy | 2018-01-30 23:30 | PRI

PRI Advanced Integration 4日目とそれに関連する文献色々。

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AIの一日目に、相棒のケニーと一緒にPRI Director's Dedication Awardsという非常に名誉ある賞を頂きました。これはPRIに大きな貢献をした人に与えられるもので、年に1-3人の受賞者が発表される(該当者がいない年もある)のですが、過去の受賞者を見てみると、Susan Henning, Joe Belding (2012); Kyndall Boyle, James Anderson, Michael Cantrell (2014); Jason Masek, Michal Niedzielski (2015); Jennifer Poulin, Lori Thomsen (2017)とまぁ、PRI Home of Fame(殿堂入り)といってもいいくらいの面子が並んでいて、恐縮しかありません。ありがたいことです。

仲間内で(賞を上げあって)何やってるんだ、と失笑されるかもしれませんが、私は未だにPRIを他人様のものだと強く思っていて、自分が内部の人間であるという認識は全くありません。PRI講習会に私自身が参加することは、Ronの頭の中を少し覗ける貴重な時間を分けてもらえることであり(そしてそれはあくまで私の知的探求心に基づく120%趣味の行為であり)、自分がPRI講師として活動させてもらう機会に恵まれているのもたまたまそういう話が出たときに私がいたからで(むしろ「これでがっつりPRIを勉強し続ける理由ができた!ラッキー!」と思い、利用させてもらうくらいの心づもりでいました)、別に私に代わる人材などこれからいくらでも出てくるでしょう。何ならPRIから「アンタはもういいから、これからは他の人にやってもらうわ」と言われるようなことがあれば「そうですか!今までありがとうございました」と講師の草鞋を脱いでイチ受講者に戻る準備はいつでもできています。

しかし、今回この賞を頂いて…それからこの日の夜にはRonがPRI講師を全員食事に招待し、感謝会を開いてくれたのですが、これもまた心温まる会合で、本当にもうすっかり名実ともに家族になったと言ってもいいのかなぁという気分になりました。PRI講習、日本で開催できたらきっと面白いだろうなぁ、と考え、その実現まで膨大な時間とエネルギーを費やしてきたのは、あくまで「私がそうしたかったから」なのですが、それをRonばかりか、PRIコミュニティーが認め、感謝をしてくれているという実感は素直に嬉しいものでした。「いつでもやめろと言われたらやめよう」ではなく、「いつまでも家族の一員として恥じない仕事をしよう、そしてそのプロセスを楽しもう」と考えを改めました。これからも一層帯を締めて頑張っていこうと思います。

しかし何より最も言及されるべきはケニーの存在、彼の努力と尽力っぷりです。私もPRIに対してそれなりの貢献はしてきたのかもしれませんが、彼のそれとは比べ物になりません。PRIに間違いなく最も精通している日本人、且つ、私の14年(+?)来の友人であり、共にATとして成長をしてきた仲間…。彼のことは兄弟というのも、親友というのもなんだかいまいちしっくりこないのです。親友と呼ぶにはあまりに私が彼に対して抱く尊敬の念が大きすぎるのかもしれません。渡米してから16年、これでも私は私なりに必死にここまで休むことなく勉強してきたつもりなのですが、彼は「さゆりさんたぶんこれ好きっすよ」「さゆりさんこの本おススメっすよ」といつでも私の2-3歩先を歩んでいて(そして彼がそういうものはたいがい私は大好きになり)、私にinspirationと道しるべを与え続けてくれた存在だからです。私にとってはまぁ、ちょっとした仏ですよ。神的存在。

だから、今回これだけの名誉な賞を、他でもないケニーと一緒に受け取れたということがもしかしたら私は一番光栄に感じているかもしれません。若いころ、気の合う仲間と「いつか何かでっかいことしようぜ!」と盛り上がることは誰にでもあることなのかもしれませんが、そういう仲間と実際に10年後くらいに「でっかいこと」ができる機会なんて、滅多にないでしょう?

相変わらずマイペースな私ですが、つながるご縁に感謝してこれからも頑張っていこうと思います。



さて。AIは終わって昨晩Corpusに帰ってきましたが、もうひとつだけそれに関係する内容で読む機会があった興味深い論文1 があるので、忘れないうちにまとめておきます。
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これは講習内で出た論文ってわけではないのですが、歩行と呼吸のphase-lockingについてケニーと盛り上がっていた時にケニーが見つけてきて「面白そうやん!」となったので(これがあるので気がある友人と一緒にいると勉強が終わらない止まらない)。

1) 歩行・走行時の矢状面での体幹屈曲によって起こる「ふいご(bellows)」効果
2) 慣性の法則によって生まれる「内臓ピストン(visceral piston)」効果
3) 多くの体軸筋(axial muscles)が呼吸とロコモーションの二役を担っていること(トカゲやトリ、イヌなどは、走っている最中はこれらの筋肉は呼吸筋としての活動を停止し、走行に貢献するんだそう。役割がスイッチで文字通り切り替わるんですね)
…などの要素から、呼吸とロコモーションは機械的、神経的相互作用してphase-lockし合い、Locomotor-respiratory coupling (LRC)を生み出す、そしてだからこそ四足歩行、ギャロップ歩行する哺乳類は1:1の割合でstride:breathを行うのだ…というのは、この前回の記事でも書きましたね。
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しかし人間は二足歩行なので、少しばかり力の作用の仕方が違ってきますよね。例えばfoot-strikeの際にズシンと地面からの力を受け、内臓の下降(downward displacement of the abdominal viscera)と胸郭の圧迫(compression of the thorax)、それから立脚初期から中期にかけてのアームスイングもそこに上から圧迫を足すんでしょうけども、全体的に四足歩行の動物と比べると、bellows効果やvisceral piston効果など、機械的・筋神経的相互作用は少ないような気がします。つまるところ、人間のロコモーション時にそれほどphase-lockingは見られないのでは?という説を唱えている人たちがいるのです。この説を「支持する」研究として、「トレッドミルで走行中、step-driven flow(歩行そのものによってもたらされる、体内の空気の流れ)はtidal volumeの1-2%程度にしかならない。これは、trivialと言えるくらいの量で、どうやらロコモーションは呼吸に影響をほとんど及ぼさないようである」というもの2 が紹介されていました。ふーむ。しかしこのclaimに対して今回の論文の著者らは「トレッドミルでジョギング中、腕を脇に休めるようにし、アームスイングをさせなかったことはこの結果に大いに影響を与えた可能性がある」と論じ、この「結論」に異議を唱えています。だから、今回の論文ではしっかり腕の振りも付けて走ってもらって、呼吸とロコモーションの関係性をもう一度見つめなおしてみよう!というわけです。

で。この研究では14人の被験者(平均36±2歳、男5人、女9人; うち、7人が一週間に最低20マイルは走るというレクリエーショナル・ランナー、7人は運動はしているがランニングはしていない人達)を対象に(人数は少なく、ランナーvs 非ランナーとグループ分けをされているわけでもないし、少し行き当たりばったりなsubject selectionという感じ。もう少し明確な比較目的などあればよかったかと思う)、「30分間走り続けられる各自お好みのペース」を選んでもらい、5分間のウォームアップののち、5分間ジョギング。その間の呼吸を計測。
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結果なんですが。被験者の全員に高い頻度(high frequency)で起こるstep-driven oscillations in flowがあることが判明。foot-strikeの直後に吸気衝動が、その直後の身体が最も加速する際に呼気衝動が起こるんだそうで、それぞれ動く空気量は-12.7±4.5%と10.7±3.2% (of total ventilation, = 2.5-3.0% tidal volume per step during 2:1 step her breath rhythm)と、前述の研究2 よりかなり高い結果になっています。例えば軽く息を吐いた時にズシン、とfoot-strikeが起こって吸気衝動が生まれれば、空気の流れが逆流し、吐いていた息が吸い込まれるくらい勢いがあって強いものなんだとか。

Stride:breathの比率は個人差が大きく、しかも走りながらペースを変化させる人も少なくなかったようですが、どんなロコモーション・呼吸パターンを見せた人たちでも、やはり「好きなタイミングで呼吸をさせた」場合のほうがstep-driven oscillation in flowに逆らわず、利用するように(=エネルギーの無駄を最小化して、最も効率良く)走行・呼吸をすることが多かったのだそうです。その際、LPCとしては2:1が最も多く、このテンポが一番効果的であるのではないか、というのが今回の研究の考察です。

被験者群にバラつきがあり、sample sizeも小さいので気を付けて解釈されるべき研究だとは思いますが、理想的なエネルギー消費、ついてはより長い距離を呼吸筋を披露させずに走る方法として、2:1の走行:呼吸のリズムが最適かもしれない、という結論は非常に興味が沸きますね。続報があったらまた読んでみたいです。面白かった!

1. Daley MA, Bramble DM, Carrier DR. Impact loading and locomotor-respiratory coordination significantly influence breathing dynamics in running humans. PLoS One. 2013;8(8):e70752. doi: 10.1371/journal.pone.0070752.
2. Banzett RB, Mead J, Reid MB, Topulos GP. Locomotion in men has no appreciable mechanical effect on breathing. J Appl Physiol (1985). 1992;72(5):1922-1926.

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  by supersy | 2017-12-11 23:30 | PRI

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