2018年 03月 05日 ( 1 )

 

超音波治療はお好きですか

私は好きです。いつかも書いたかもと思うのですが、私の理想のAT像は徒手療法、運動療法と物理療法を適材適所で効果的に使えるニンゲンで、徒手「ばっかり」とか運動療法「しか認めない」、物理療法「しかできない、」というバランスの悪いATは(現場にもよると思いますが)非常に効率が悪いと思うのです。(それが理想的か、現実的か、というところは置いておいて)一人のATあたり何十人、何百人というアスリートがいることも珍しくないですから、効率よく効果的な治療介入が提供できることは我々ATの大きな目標であり課題であるべきです。

…ええっと、話が逸れかけました。

物理療法の中では超音波とレーザーが特に好きなんですが、今回は超音波治療について少し書き記しておきたいと思います。超音波治療は日常的に数多くのクリニックで使われるほど非常にポピュラーな治療器具でありながら1、間違って使っている施術者が非常に多い2 と言われており、そのせいで十分な治療成果が認められない=超音波治療って使えない、と誤って判断されてしまうケースも少なくないのでは、と個人的には危惧しています。

しかし、超音波治療の闇は我々が思うよりもうちょっと深いのかもしれません。こんな研究はご存知でしたか?
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米国で現在治療に使われている83の超音波治療器を検査したところ、なんとそのうちの32のマシーン(32/83 = 38.6%)が超音波出力でCalibration Standard (機械調整基準)を満たしていなかったことが判明したのです。3 出力におけるCalibration Standardっつーのはマシーンに表示されている出力と、実際に出力されている超音波量の違いが±20%以内であることなんだそうですが(これも結構幅があってびっくりしますが)、15のマシーン(15/83 = 18.1%)では+20%越え(実際の出力が表示より出すぎている状態)を、17のマシーン(17/83 = 20.5%)では-20%を下回っていた(実際の出力が表示より出なさすぎでいる状態)だったとのこと。つまり、画面では1.0 W/cm2と表示されていても、実際の出力は1.2 W/cm2よりも上である確率が18.1%、0.8 W/cm2未満である確率が20.5%あるというわけです。

問題は出力だけでなく、内臓されているタイマーにも報告されています。デジタルタイマー内蔵タイプ(新しい超音波治療気はたいがいコチラですよね)はともかく、メカニカルタイマー内蔵(古いマシーンに使われている)の25のマシーンのうち、7つ(7/25 = 20.8%)は5分間の治療で±10%以上の誤差が、6つ(6/25 = 24.0%)10分間の治療で±10%以上の誤差が生まれていたんだそうな。ひえー。10分治療したつもりが9分も経ってなかったとか、11分以上経っちゃってたとか、そういうことですよね。ひえー。
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オーストラリアからのこちらの論文4 でも同じように「出力は±20%以内、タイマーは±10%以内の誤差まではacceptable」という基準を用いた場合、64の超音波治療器を使って行った492回の出力テストのうち291回(291/492 = 59.1%)がunacceptable (>±20%)だったそうで、誤差幅は-100%から+210%とマジ恐ろしい数字が出ています。つまり、画面では1.0 W/cm2と表示されていても、実際の出力は最低で0 W/cm2(-100%)だったり最大で2.1 W/cm2だったりする可能性があるわけです。2.1 W/cm2は高すぎます、私が現場で使おうと思う数字ではありません…。タイマーもメカニカル式は56のうち37(66.1%)、デジタル式は62のうち6(9.7%)でunacceptableな誤差が(±10%)報告されています。
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ブラジルの研究1 でも同様に出力・ERAの基準を満たしていたマシーンは全体のたった32.3%にしか満たず、31の超音波治療器のうち「理想」にそれなりに近いBNR(↓下のFigure 1 –A)をしているのはたった11で、残り(20/31 = 64.5%)はかなりunevenな作りである(Figure 1, B1-4)ということも報告されているので、この現象はワールドワイドと言えるでしょう。日本での研究は見かけませんでしたけど、恐らく同じくらいなのではないかと。BNRに関しては、最大出力が中心に集まっておらず、場合によっては山がふたつできてしまっているもの(B-1 & B-4)もあります。つまりホットスポットができやすい、組織の異常な温度上昇が起こりやすいということですね。
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どうせまともにCalibrationをしていないからでしょ?と思った方もいるかもしれません。この研究1 では51人のフィジオセラピストにアンケート調査もしているのですが、「どのくらいの頻度でCalibrationを行うか」という質問には2-24か月という回答の幅があったものの、ほとんど(43%)のセラピストが(一般的にメーカーが推奨している)一年に一回と答えたそうなんです。つまり、適切なCalibrationは行われていると少なくともセラピスト側は自信を持っていて、この数字だったんです。

クリニックにもよるかもしれませんが、特に超音波治療を頻繁に使う治療院などでは年に一回のCalibrationでは十分といえない可能性が大いにあるってことですよね。年に2回って統一した場合はもう少しいい結果が得られるのか、とかそこらへんに興味があります。そういう研究はまだ欠如しているので、何人治療毎に、とか、何分ぶん治療毎にCalibrationするべきである、という具体的な数値はまだ示すことはできませんが、企業側の品質向上努力と、使う側の適切なメンテナンス努力がもう少し合わさらないとこれからも「超音波治療は効果がなかった」という論文が出続けてしまうかもしれませんね。いち超音波治療ファン、Dr. DraperのAdmirerとしてはこれは黙っていられませぬ、というわけでブログに書いての皆さまとのシェアでした。Gives us something to thing about!

1. Ferrari CB, Andrade MA, Adamowski JC, Guirro RR. Evaluation of therapeutic ultrasound equipment performance. Ultrasonics. 2010;50(7):704-709. doi: 10.1016/j.ultras.2010.02.006.
2. Shaw A, Hodnett M. Calibration and measurement issues for therapeutic ultrasound. Ultrasonics. 2008;48(4):234-252. doi: 10.1016/j.ultras.2007.10.010.
3. Artho PA, Thyne JG, Warring BP, Willis CD, Brismée JM, Latman NS. A calibration study of therapeutic ultrasound units. Phys Ther. 2002;82(3):257-263.
4. Schabrun S, Walker H, Chipchase L. How accurate are therapeutic ultrasound machines? Hong Kong Physiother J. 2008;26:39-44.

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  by supersy | 2018-03-05 20:15 | Athletic Training

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