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Medical Emergency。

Footballの試合というのは身体にかかる負担が半端じゃないため、週に一回しか試合がありません。高校でも、大学でも、プロでも、これは同じですし、Arena Footballでもそうでした。

これって、Athletic Trainerに関しても同じだと思うんですけどどうでしょう…。
木曜日にJVの試合、金曜日にVarsityの試合というのは相当身体に堪えます。
Texas Stateで働いていたときには10人くらいATがいたから仕事も分担できたけど、
今は一人で試合をまるまるカバーするわけだからそうもいかない。
今週は、木曜日にJVがHawthorneホームでP.K.Yongeとの試合、
金曜日はVarsityが相手ホームでP.K.Yongeとの試合、でした。
P.K.YongeのATCは私と同じようにGAとしてUFから派遣されているクラスメートで、事前に連絡を取り合っておけたのでその部分はいつもより安心。ただ、JVの試合には彼女が帯同できなかったため、“ATSを一人送るから、面倒を見てあげて”とのことでした。
(資格を有していないATSは、ATCのsupervisionの下でのみ仕事が可能になります)
なので、JVの試合中は自分のチームの怪我人も相手チームの怪我人も同時に見ていて、
いつにも増しててんやわんやでした。しかもこんなときに限って妙な怪我が起きたりして。
この件については後日書ければと思います。


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さて、そして翌日の金曜日はAwayでの試合。

Footballの試合って、ボールに人が集まってごちゃごちゃって何人もが倒れこんだりするじゃないですか。あれを私はいっつも、ちゃんと皆が起き上がるかどうか見るようにしてるんですけど、試合中、皆がむくむく動き出しても起き上がらない選手がひとり。うちの選手です。
あ、これは私が行かなければいけないかもしれない、と思ったら、案の定Injury timeoutが取られました。走っていってみると、“I can't see ahything! I can't see anything!”と叫んでいる彼。ただの怪我かも、と思っていた私はこれを聴いた瞬間に、これはとんでもないことになりそうだとスイッチを切り替えました。Cranial nerve?と最悪の状況を一瞬考えてみるも(そもそもそうだったら喋れているわけがないんですが)、次の瞬間に彼がとんでもなくconfusedしているのが分かる。だって、彼、硬く目を瞑っているんですもん。普通の精神状態じゃありません。むむ。ひどいConcussionかな?

落ち着かせて目を開けさせて、“今なら見える?”と聞いてみると“うん、見える”とのこと。
ほっとしたのも束の間、“何が起こったの?”と聞くと、“首が、首が…”
う、首か…。聞いてみるとタックルされてhyperextendedした様子。オオゴトです。
手、足の感覚・Strength共にweak。Medical Doctorにチェックしてもらっても同じ結果で、
すぐさまSpine Boardに乗せて救急車で病院へ、ということになりました。

実はこれ、私にとって初めてのホンモノのSpine Boardingでした。今まで練習でこそやったことは数あったけれど、ホンモノとなるとその緊張感も半端じゃありません。
それに、病院に送るとなるとやらなければいけないことも一杯です。
書類関係、親御さんに連絡、誰が病院に付き添うのか、AD・Principleへの報告…。
全てを一通り終え、去っていく救急車を見ながら、深い溜め息をつかざるを得ませんでした。
何でもナマでやるのって練習やシュミレーションとは全然違う。この一件、本当に勉強になりました。とりあえず全てが滞ることなくスムーズに進められたのは大きな成功だったけれど、自分の未熟なところもよく分かった。ああああああ。それにしたって試合はまだ続いているのだから、気は抜けません。彼のことが本当に気がかりだったけれど、残りの子達の面倒だってしっかり見なければ、と集中しなおして最後のQuarterを乗り切りました。

試合が終わったらすぐに彼の様子を見に病院に行かなければと思っていたけれど、
幸い彼は病院で症状が非常によくなり、私たちが試合を終えてP.K.Yongeを出発するよりも前に帰路につけるまでに回復しました。試合直後にそれを電話で聞いたときには、本当にほっとしました。
ただ、X-rayは撮らなかったようだし、直接彼と話したわけではないし、まだ心配も残ります。
その日は既に夜遅かったため、翌日の今日に彼の家に電話をすると、
“首を強く押すとまだちょっと痛いけれど、他は大丈夫”としっかりした声で話す彼。
“じゃあ、月曜日にこれを持ってきて、AT roomに会いにきてね。
 本当に無事で良かった、安静にするんだよ”と、話して電話を切った後に、
初めて、“彼が無事なんだ”と脳みそが認識してくれたのか、
涙がぶわーっと出てきて、
本当に神様に感謝したい気持ちになりました。守ってくれてありがとうと。
麻痺が残るかもとまで一瞬覚悟したけれど、本当に、本当に、良かった。
このとき初めて、“あああの瞬間は本当に怖かった”と思ったし、
自分の職業が人の命を扱うものなんだと、その重さと冷たさと心の芯から実感しました。
ああいう状況では、もちろん医者やEMSや他のMedical personnelと連携してモノゴトを進めていくわけだけど、Athletic Injuryというこの分野に関して特別にtrainされ、
最も信頼がおけるのはAthletic Trainer=自分自身だとも思いました。
選手を勝手に動かそうとするコーチに“触らないで下さい!”と思わず叫んでしまったけれど、
ああいうEmergencyでのcontrolをいち早く取って、理想の状況を作り出すのって大事だ。
誰だってこんな状況には置かれたくないけれど、Athletic Trainerは皆、こういう深刻な怪我を目の当たりにして、それから学んで乗り越えて成長していくのでしょう。私の場合、それが深刻すぎなくて、彼が結果的に無事でいてくれたことは本当に不幸中の幸いです。

まだまだ、学ぶことは沢山だ。

でも、ATとしてまたひとつ強くなれた気がします。

  by supersy | 2007-09-15 23:59 | Athletic Training

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