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大腿四頭筋腱(Quadriceps Tendon)を移植片に用いたACL再建術後マネジメントについて、アスレティックトレーナーが知っておくべきこと。

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面白そうな論文1を見つけたので読んでみます。
ACL再建手術の移植片は、患者の特徴・目標に合ったものであるべきで、individualizeされてもいい―とはいえ、アメリカではBone-Patellar Tendon-Bone (BPTB)を用いるのが圧倒的主流になって2いますよね。エビデンスもレビューレベルで見る限り、ハムストリング腱 (HT)よりこちらがFavorableかなぁというもの3,4が多いですし。
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ただ、BPTB移植片でAnterior Knee Painが後遺症として残ってしまうなど、問題が全く起こらないとも言いきれないわけで。その代替として最近研究が盛んになってきているのがQuadriceps Tendon (大腿四頭筋腱, QT)です。2019年に発表になったメタ解析論文5では、QTはBPTB、HTと同等、またはそれよりも優れたアウトカムを出しうる移植片である、という結論が出されています。QTは特に筋骨格的に未発達な小柄な患者や、既にBPTBやHLを用いた再建手術をしていて、そのRevisionが必要な患者に適しているんだそうな。へー。
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そんなわけで、これから目にする機会が増えるであろう、QT移植片を用いたACL再建手術を経た患者についてのあれこれ。ATが知っておくべきと思うことを、箇条書きでまとめてみます。

解剖
・大腿四頭筋腱は膝蓋腱と比較してより厚く(6.8mm vs 3.7mm, 11.0c㎥ vs 4.0c㎥)、長く、コラーゲン濃度も高い
 *移植腱が大きいのだから、掘るべき骨孔も大きくしなければいけないということ?と思うかもしれないがそうではない。BPTBの骨片のほうが大きいからである。
・厚み、長さともに十分にあるので、移植腱として小さすぎるということがない
 *他の移植片の場合、いざ使おうと思ったら小さすぎるということも
・侵襲性が低く、BPTBと比べて目立つ傷を作らない

バイオメカニクス
・膝安定性、移植不全率はBPTBやHLと変わらない
・BPTBと比較してAnterior Knee Painを起こす確率が引く、Donor Siteの痛みも誘発されにくい
・HLと比較してKOOSで推し量れる機能はQTのほうが優れている
 *QT移植片を使った患者のほうが、リハビリ期間中、HL移植片よりも膝伸展筋力を失うことなく膝屈曲筋力を向上させることができていた(伸展/屈曲のバランスがより整った)ので、これが機能向上につながったのでは?という考察がある
・ゆえに、総合的にQTのほうが実用性が高いであろうと。個人的に伸展機構の整合性が脅かされないというのは驚き。

リハビリテーションにおける留意点
・基本的にスタンダードなACL術後リハビリでよいが、腱が他の移植片よりも大きく強いことから、初期は他の移植片と比較してよりアグレッシブに進行してもよい。
・初期(0-6週)はHeel PropsやProne Knee Hangなどを用い、膝伸展完全可動域を復元することを最重要事項とすること。それができたら自動TKEに焦点を動かし、SLR, Quad Sets, Short-Arc Quadriceps Exerciseなどを組み込んでいく。OKC/CKCの両方を効果的に使うのが好ましく、OKCの早期活用に関して躊躇する必要はない。膝屈曲角度の目安は0-6週で100°。大腿直筋の股関節・膝関節でのストレッチと、下方パテラ・モビライゼーションなどを活用するとよい。
・6-12週からは膝の完全屈曲獲得と、OKCの継続をしながらCKCの負荷を増やしていく。

Complications (合併症)
・最も多い合併症は膝蓋骨骨折で、57人の患者を2年間フォローアップした研究では、5人(8.8%)が骨折箇所はDonor Siteである膝蓋骨尖で膝蓋骨骨折を経験したと報告6が存在されている。軟部組織関連としては、血腫と膝関節伸展最終可動域欠如があるそうで、中でも術後8週経っても完全伸展可動域が戻らない場合はLysis of adhesions (癒着溶解)をすべきとの記載がある。可動域の復元を怠ると筋力が十分に回復しきらない可能性もあるため、早期リハビリでのアグレッシブさが重要だ、とここにも重ねて書いてあります。
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かなり具体的で、すぐにでも応用できそうな実用例が並んでいるのがありがたいですね!
日本にこういった術式がどれほどの早さで入ってくるのかはわかりませんが、特に海外からの選手をチームに迎える際、QTを使った手術の既往歴があるを目にするケースなどは日本でもこれから十分に考えられると思います。それぞれの移植片の特徴、注意点などはなるべく満遍なく把握しておきたいものですね。

1. Hunnicutt JL, Slone HS, Xerogeanes JW. Implications for early postoperative care after quadriceps tendon autograft for anterior cruciate ligament reconstruction: a technical note[published online May 12, 2020]. J Athl Train. 2020. doi: 10.4085/1062-6050-172-19. doi:10.4085/1062-6050-172-19.
2. Shelton WR, Fagan BC. Autografts commonly used in anterior cruciate ligament reconstruction. J Am Acad Orthop Surg. 2011;19(5):259-264.
3. Samuelsen BT, Webster KE, Johnson NR, Hewett TE, Krych AJ. Hamstring autograft versus patellar tendon autograft for ACL reconstruction: is there a difference in graft failure rate? a meta-analysis of 47,613 patients. Clin Orthop Relat Res. 2017;475(10):2459‐2468. doi:10.1007/s11999-017-5278-9.
4. Bansal A, Lamplot JD, VandenBerg J, Brophy RH. Meta-analysis of the risk of infections after anterior cruciate ligament reconstruction by graft type. Am J Sports Med. 2018;46(6):1500‐1508. doi:10.1177/0363546517714450.
5. Mouarbes D, Menetrey J, Marot V, Courtot L, Berard E, Cavaignac E. Anterior cruciate ligament reconstruction: a systematic review and meta-analysis of outcomes for quadriceps tendon autograft versus bone-patellar tendon-bone and hamstring-tendon autografts. Am J Sports Med. 2019;47(14):3531‐3540. doi:10.1177/0363546518825340.
6. Fu FH, Rabuck SJ, West RV, Tashman S, Irrgang JJ. Patellar fractures after the harvest of a quadriceps tendon autograft with a bone block: a case series. Orthop J Sports Med. 2019;7(3):2325967119829051. doi:10.1177/2325967119829051.

  by supersy | 2020-05-16 13:30 | Athletic Training

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