大阪EBP講習定期開催のお知らせ & 月経周期とそれに伴う呼吸の変化。

まずは告知です。

ありがたいことにご依頼を頂いて、来月の9月から大阪でEBP定期講習を行うことになりました。約3ヵ月に1講習のペースで大阪市立青少年センター(KOKOPLAZA、新大阪駅から徒歩5分)にて毎回異なるテーマでの定期開催(全4回、7講習)をする予定です。今のところの構想はこんな感じ。

第一回: 9月16日(日)
13:00ー16:30 ①EBP基礎編: スポーツ傷害評価編
16:45ー17:45 阿部と語ろう *質疑応答形式のワイワイお喋りタイム
受講費:10000円(学生9000円)
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お申し込みはこちらから

<継続受講割システム>
2回目以降も継続して受講される方には、2回目以降で継続受講割が適応になります。受講すればするほどお得!

第二回: 2019年1~2月開催予定
②EBP臨床応用編: 評価 - ACL損傷評価法
③EBP臨床応用編: 評価 - 手首の痛み評価法

第三回: 2019年4〜5月開催予定
④EBP基礎編: 治療介入編
⑤EBP臨床応用編: 治療介入 - 腱障害とリハビリ

第四回: 2019年8〜9月開催予定
⑥EBP基礎編: 予防医学編
⑦EBP臨床応用編: 治療介入 - AMIと抑制解除療法

楽しくエビデンスを使いこなせるようになろう!がテーマのこの講習。本来クローズドの講習であるところ、主催者さんのご厚意でオープンにして頂きました。資格関係なく誰でも参加可能です。初級者もエビデンス苦手な人も、もちろん学生さんも大歓迎!定員は50名で、満席になり次第締め切られます。今回は要望を受けての特別開催で、いつも主催をしてくださる高橋さんを介していない都合でBOC-CEUは一切つきません。ATC有資格者の方、ご注意下さい。



さて。Pelvic Floor/Pelvic Diaphragm (骨盤底・骨盤隔膜)と呼吸の関係なんかについてぽつぽつと文献を読んだりしていたわけですが、はたと面白い論文に出会いました。
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1999年発表の古い論文…というか編集後記に近い文章1 なんですが、「女性は黄体期*に過呼吸に陥る傾向がある」2 「閉経前の女性がObstructive Sleep Apnea(閉塞性睡眠時無呼吸症)になることは極めて稀である(…が、閉経後に発症が急増化する)」3 などのここまで報告されているエビデンスを列挙し、「Pelvic organ prolapse(骨盤臓器脱)が起こっている患者は下腹部周りの組織のコラーゲン代謝と繊維の構造に異常が起こるだけでなく、関節の不安定症など全身にも及ぶ影響を受けていることも分かっている。4 これを考慮すれば、肺組織のコラーゲン繊維も異常をきたしており、故に肺の力学的機能とガス交換能力が低下→低酸素状態になる、という流れもうなずけるし、同様のことが生理周期と共に起こっていても何ら不思議ではない」と自論を述べています。すごいなぁ、のびのびとした自由な発想!(←皮肉ではなく心から褒めています!こういうのが論文に載る時代だったのいうのは、豊かな思考に許容があったということ。今できないのが惜しい!)
*黄体期: 月経周期で排卵から次の生理までの約2週間の期間

んで。
疑問がふつふつと出てきたので私も色々調べてみました。

ニンゲンには動脈内の酸素レベルが下がると呼吸数を上げること(過呼吸をする=hyperventilate)でそれを補おうとするという代償反射(reflex hypoxic drive)があるのですけど、この反射反応は月経周期の黄体期に特に顕著に見られる5,6 と1980年代に10人前後の被験者を用いた実験で確認されており、さらに2013年発表の4000人規模の研究7 でも「月経がはじまる直前(黄体期中期~卵胞期中期くらい)にかけて呼吸障害(喘鳴、息切れや咳など)が引き起こされる頻度が最も高くなる」と報告されています。

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ではこの時期(黄体期)、運動時の呼吸にはどのような影響が出るのか?これも古い(↑1981年発表)研究8 で被験者の数も少ないですが(6人の月経がある女性アスリート、6人の月経がある非アスリート・コントロールと6人の無月経の女性アスリートの比較…合計18名)、結果にかなり興味深いものが多くあります。箇条書きでまとめると…

- 月経がある被験者はアスリート、非アスリート問わず黄体期に休息時の呼吸数(p = 0.0001)と歯の食いしばり圧(mouth occlusion pressures, p = 0.02)が著しく高なり、ハイパーカプニア・低酸素状態に陥りやすい
- しかし全体的な症状は非アスリートのほうがアスリートによりも如実に出る。黄体期中、非アスリートはアスリート比べてより重度の低酸素状態になる(p < 0.001)という結果が出たことに加え、最大強度での運動中、非アスリートのみ運動継続可能時間とVO2maxが黄体期中に著しく低下した(p < 0.05)。
- 無月経のアスリートは一か月のサイクルを通じて特に変化は見られなかった

…そんなわけで要約すると、月経がある女性において、アスリートも非アスリートも黄体期には休息時も運動時にも呼吸の効率が落ちる・呼吸の需要が高まると言える。しかし、アスリートにおけるその影響は生理学的レベルでは認められるものの「パフォーマンスに影響が及ぶ」レベルには達していない

うっわー…面白くないですかコレ…。比較的最近の研究(↓2012年発表)9 でも健康な女性被験者10人において1) 休息時の呼吸頻度・呼吸深度共に黄体期のほうが著しく高かったこと、2) 60分ほどの運動の際に黄体期の間は皮膚血管拡張が起こりにくくなっており、体温調節にも影響が出るかもしれないことなどが指摘されています(…ということは黄体期の女性は熱中症になりやすいのか?なんて完全に脱線した疑問も湧きますけれども…)。
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こういった月経周期に伴う呼吸の変化は喘息患者により如実に出るという報告10,11 もあり、黄体期に特に吸気能力が低下するため、喘息患者トレーニングを調整する必要があるのでは、と提案する研究者らもいます。11

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月経に関してはあれこれ記事を今までも書いてきましたが(↑)、やっぱり深いトピックですなー…。まとめると、「黄体期に女性は低酸素状態に陥りやすく、その代償として過呼吸状態になっていることが多い。それはパフォーマンスにハッキリと影響を与えるほどではないかもしれないが、喘息など呼吸器系の問題がある患者さんの場合、トレーニングメニューなどを再考慮する必要はあるかもしれない」ということかと。

こういった変化が起こる理由として「ホルモン」が様々な文献で挙げられていますが、1980年代の文献がそれをコラーゲン繊維の変質と絡めて「原因か?」と述べていた一方で、私はCNS(中枢神経)の影響も否定できないと感じています。生理直前、多くの女性がPMS(イライラなど)を経験するというでしょう?感情が揺さぶられているということは、神経学的に脳に影響が出ているということですよね。そして脳は呼吸を司どっているコントロール・センターでもある。生理学的なコラーゲン繊維云々ももちろん要因のひとつとして挙げられるとは思うんですが、自律神経などの影響も考慮・これからもっと検証されるべきじゃないかと思います。

いやー面白かったです。古い文献が多かったですが、良質な呼吸関連の文献は80-90年代が一番アツかったと個人的には思っています。ここらへんの分野、また読みたい!

1. Cherniack NS. The pelvic-pulmonary connection. Respiration. 1999;66(5):396.
2. Eterović D, Strinić T, Dujić Z, Boban, M: Blood gases and sex hormones in women with and without genital descensus. Respiration. 1999;66:400–406.
3. Popovic RM, White DP: Upper airway muscle activity in normal women – influence of hormonal status. J Appl Physiol. 1998;84:1055–1062.
4. Rechberger T, Donica H, Baranowski W, Jakowicki J: Female urinary stress incontinence in terms of connective tissue biochemistry. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 1993;49:187–191.
5. Takano N. Reflex hypoxic drive to respiration during the menstrual cycle. Respir Physiol. 1984;56(2):229-235.
6. Takano N. Changes of ventilation and ventilatory response to hypoxia during the menstrual cycle. Pflugers Arch. 1984;402(3):312-316.
7. Macsali F, Svanes C, Sothern RB, et al. Menstrual cycle and respiratory symptoms in a general Nordic-Baltic population. Am J Respir Crit Care Med. 2013;187(4):366-373. doi: 10.1164/rccm.201206-1112OC.
8. Schoene RB, Robertson HT, Pierson DJ, Peterson AP. Respiratory drives and exercise in menstrual cycles of athletic and nonathletic women. J Appl Physiol Respir Environ Exerc Physiol. 1981;50(6):1300-1305.
9. Hayashi K, Kawashima T, Suzuki Y. Effect of menstrual cycle phase on the ventilatory response to rising body temperature during exercise. J Appl Physiol. 2012;113(2):237-245. doi: 10.1152/japplphysiol.01199.2011.
10. Farha S, Asosingh K, Laskowski D, et al. Effects of the menstrual cycle on lung function variables in women with asthma. Am J Respir Crit Care Med. 2009;180(4):304-310. doi: 10.1164/rccm.200904-0497OC.
11. Stanford KI, Mickleborough TD, Ray S, Lindley MR, Koceja DM, Stager JM. Influence of menstrual cycle phase on pulmonary function in asthmatic athletes. Eur J Appl Physiol. 2006;96(6):703-710.

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  by supersy | 2018-08-13 06:30 | Athletic Training

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