ATなら知っておきたいSpondylolysis/listhesis (脊椎分離症・すべり症)の的確な診断法。

わーもう8月になっちゃいましたね。ロンが帰ってからちょっとゆっくりできるかなと目論んでいたんですけど、結局なんだかんだで忙しいです。7月はEBP講習やクローズドの毎年恒例・おおすか整形&船橋整形さんの合同講習に呼んでいただいたりと、個人の仕事をあれこれしておりました。もちろんPRI講師としても広島ポスチュラルや東京ぺルビスなどちょこちょこやってます。今週末は京都に行って、その翌々週は大阪だー。
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EBP講習(↑)はいつも通りというかいつにも増して、新幹線はもちろん深夜バスや飛行機などで日本全国津々浦々から様々な方に来ていただいて本当にありがたいです…。学割導入してから学生さんの受講者も増えてきて、こんなに嬉しいことはないです!参加してくださった皆さん、筋肉痛はなかったですかー。

おおすか・船橋整形合同講習は肩に足首にと盛りだくさんでお送りしました!詰めすぎた説もありますが。
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どこかで見たようなエクササイズも…(著作権許可は頂いてます)。

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約50名の参加者さんと楽しい一日でした!講習会の後も色々それはそれは楽しかったんですけど、あんまり言うとまずいのでやめておきますふふふ…。

んで。
EBP講習なんですが、講習中にもお伝えした通り、年内にもうふたつの新しい講習(臨床応用レベル・評価編)を作成・開催する予定です(↓下の写真の「New!」の部分です)。日程など、詳細が決まり次第ここでお知らせします。かなり現場での実用性のあるわくわくどきどきな内容になる予定ですので、アナウンス楽しみにしていてくださいー。
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さて、ちょっと事情があってSpondylolysis/Spondylolisthesis(脊椎分離症/すべり症、通称Spondy)関係の診断知識をアップデートしてました。この怪我は以前にも書いた通り、「若いスポーツ選手に多い」「治療が厄介(疲労骨折なのでスムーズに回復しないこと多し)」「症状が無い(= asymptomatic)ケースも多く、見逃しやすい」など診断・その後のアプローチが非常に難しい傷害ですよね。

さて、その診断方法というと私の頭の中にあったのは前回更新した分だったのですが、これ書いたのってかなり前…と、思って見てみたら5年前の2013年でした。ですので今回は2015年、2016年、2017年に発表されたシステマティック・レビューを中心に情報をまとめてみようと思います。

●Alqarni et al., 20151
1950年から2014年までに発表された文献を対象に、4件の論文をレビュー
*PRISMAガイドラインに沿った手法で行われたレビューですが、Retrospective case control/case-based studyも含まれていたというのは特筆すべきかも知れません。患者の年齢・性別制限は無し。レントゲン、CT、MRI、SPECTとBone Scintigraphyは全てReference Testとしてアリと設定したらしいですが、本文中に「外側からのレントゲン、MRIは脊椎管狭窄症を伴うSpondyの診断に"most effective tool"であり、MRIが禁忌の場合はCTも有効であるが、「[どの画像診断法も]その他の腰椎疾患があれば偽陽性が出てしまうことは頻繁にある」と明記してあるのにそれは少々乱暴では?という気もしますね。私の記憶が正しければSpondyの診断ゴールドスタンダードはSPECT Bone Scanだったはずだけど?
**それからこのレビューではQUADASのスコアを14点満点ではなく26点満点で記載しています。特定のアイテムの点数比重を高くしているみたい。このやり方は初めて目にしました!びっくり!でも言われてみれば確かに全てのアイテムが同じだけweighedであるというのは違和感でしたから納得できるようなできないような。このスコアシステムで研究の質が本当に推し量れるというverificationはされてるのかな、確認してみたい。

結果は私の私による私のためのテーブルに作り替えてみたものがあるのでそちらを張ります。
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Alquarni et al., 2015のTable 1と2を元に作成
これを見てみると、私が読んだことある研究ばかりだったこともあり、それほど驚くような数値や新発見はありませんかね。やはり結果としては
 - One-Legged/Single Leg Hyperextension TestはSpondyの診断に有効ではない
 - 現段階で最も有効なのは腰椎棘突起の触診によるすべり(= Step Deformity)の確認である
…ということが言えそうです。バランス的に次に惜しいのはDouble Leg Raiseですかねぇー…。他にも局所的に、確定だけに使えそうなものは幾つかあるんですけど(i.e. 観察による「すべり」の確認、Femoral Nerve Stretchや感覚異常など)、全体的な実用性としてはバランスが悪いかな。

●Grødahl et al., 20162
それでは次に翌年発表されたレビューです。この論文の冒頭では、Spondyの患者の性別比が男女で2:1であるとか、スポーツ選手独特の既往歴も考慮すべきであるとか論じられており、テストはもちろん、既往歴的発見もどう絡めて診断に繋げていけるか?というところを検証しています。切り口としては好きです。

Cochraneのプロトコルに則り、2015年11月までに発表された8件の論文をレビュー
*仕様したデータベースの数が多かったからか、はたまた多彩なキーワードを用いたからか、先のレビューよりも多い数の研究が含まれています。これらの研究の質はQUADAS-2を使って推し量られており、単純に「Low Risk」か「At Risk」の二択でまとめられています。先のレビューと違って95%CIが求められていないのが残念かな。

まず、先のレビューでもまとめられた棘突起の触診(Step Deformity)ですが、
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2015年発表のAhn et alの研究が足されていますね(↑)。やはり変わらず「確定・除外共に効果あり」というところでしょうか。Selective Tissue Testはというと…(↓)
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有効なものは特になし。除外も確定も全然かなー。2013年発表のSundell et alの研究では随分色んなテストが検証されているんですね。知らないものもあるけど、どれも別に使えないっていうなら全て詳細に把握しておく必要はないかな。
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Grødahl et al., 2016のTable 1, 3, 4, 5, 6を元に作成(一部欠落していたLRなどは私が計算して記入)
既往歴のデータはこちら。うーん、「この既往歴さえある/なければ確定/除外できる!」という完璧なものは当然というかまぁやっぱりないので、これらを組み合わせて将来的にClinical Prediction Ruleを作れるかな?って可能性があるという感じでしょうか。でも95%CIの記載もないし、どれが決定的とは言いづらいというのが現状。

結論にははっきりと「Spondylolysis(脊椎分離症)診断にはどの既往歴項目も身体検査も決定的ではない - が、年齢要素や突然の発症、スポーツの参加の有無などはこれからさらに研究する価値はある」「Step Deformity触診は、Spondylolisthesis(脊椎すべり症)診断に有効な唯一の感度・特異度共に高いテストである。One-legged Hyperextension Testの診断的価値は低く、使われるべきではない("is NOT recommended")。既往歴項目はこれと言って特筆すべきものはない」と書かれており、最後は「Spondyの診断はひとつのテストを使ってどうこうではなく、有効なものをいくつか組み合わせたCluster診断がこれから確立される必要がある」とまとめられています。これは私が5年前のブログでも書いたことですよね。

●Petersen et al., 20173
んでんで。ごたくはいいからもういい加減腰椎の傷みを手際よく分類できるClinical Prediction Rules(この論文ではClinical Diagnostic Rules = CDR)作っちゃおうぜ!というのが最後のこの、2017年発表のレビュー。この論文はSpondyのみでなく椎間板ヘルニアとか仙腸関節痛とか骨折とか様々なものを含みますので、Spondylolisthesis部分だけ切り取ってまとめます(Spondylolysisについては検証されていないようです、残念!)。

PRISMAガイドラインに則り、2015年5月までに発表された64件の論文をレビュー(うち、8件がSpondy関連のもの)
*同じ8件なのに、2016年のレビューと文献ラインナップが少し異なる(↓)のが興味深いですね。ただ個人的にFritz et al., 20054とAbbott et al., 20055論文がSpondy関連の文献に分類されているのは納得いきません。これらの論文は両方フルテキストを読んでみましたが、内容としては棘突起を前後に動かすPPIVMsなとど呼ばれるテストを使って腰椎の不安定性を診るできるかっつーことを検証している論文でした。これらの研究で焦点が当てられているのは分離症やすべり症の有無ではなく、あくまでLumbar Segmental Instability…ということを考慮すれば、ここに含まれていること自体が不適切なのではと思ってしまいます。うーむ。

まぁいいや。結論に飛びます。このレビューで推奨されているSpondylolisthesis診断に有効であろうCDRは「観察もしくは触診によるStep Deformityの確認("Intervertebral slip by inspection or palpation")」と「徒手を用いての腰椎の不安定性の確認("Segmental hypermobility by use of manual passive physiological intervertebral motion test、"具体的には腰椎棘突起にHypothenar Eminence、つまり小指球を当てて前後に押し、不安定性があるかをテストする)」のコンビネーションだそうです(ついでに年長者が患者の場合はPassive Lumbar Extension Testを足してもいい、と書かれていますが、これは私が頭に想像する若いスポーツ選手からは逸脱するので言及しないでおきます)。しかもこれは「充分なエビデンスに基づいたCDRである("The strength of our recommendation for the CDR is STRONG")」と明言されており、著者らの自信のほどが伺えます。
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Petersen et al., 2017のTable 2を元に作成

個人的にこのレビューのまとめには少し賛成しない箇所もありますが、このCDRそのもの、特にSpondyのそれに関しては全体として現存のエビデンスに基づいた非常にフェアなものであると感じています。触診、観察、簡単なマニュアル・テストだけであれば手軽で特殊な道具もいりませんし、棘突起を押すだけな比較的シンプルなテストにそれほど練習や特訓も要らないでしょう。実用性も高いと言えるかと。そのどちらか、あるいは両方が確認できればSpondylolysis/dylolisthesisの除外の必要あり→画像診断のために医師にreferral、でいいんじゃないですかね。

私の偏見をたっぷり含むまとめです。ATなら知っておくべきと私が思うSpondyの診断的アプローチとは:

- 腰痛を訴える若い(10代)スポーツ選手がいた場合、Spondyは真っ先に除外すべき項目として考慮する
- 患者が男性であったり、突然の発症が既往歴にある場合、その可能性は除外できない
- One-legged Hyperextension Testは臨床的診断価値はないので使う意味は殆どない
- Step Deformityが触診・観察によって確認できたら、and/or 徒手で腰椎の不安定性が確認できたらSpondyの確率が高いためReferralを行う
- 医師の判断により、X線やMRI、CT、Bone Scanなどの画像診断で最終診断を下す

こんなとこでどうでしょうか。難しい障害ではありますが、骨折を見逃すようではありたくないものですよねぇ。

1. Alqarni AM, Schneiders AG, Cook CE, Hendrick PA. Clinical tests to diagnose lumbar spondylolysis and spondylolisthesis: A systematic review. Phys Ther Sport. 2015;16(3):268-275. doi: 10.1016/j.ptsp.2014.12.005.
2. Grødahl LH, Fawcett L, Nazareth M, Smith R, Spencer S, Heneghan N, Rushton A. Diagnostic utility of patient history and physical examination data to detect spondylolysis and spondylolisthesis in athletes with low back pain: A systematic review. Man Ther. 2016;24:7-17. doi: 10.1016/j.math.2016.03.011.
3. Petersen T, Laslett M, Juhl C. Clinical classification in low back pain: best-evidence diagnostic rules based on systematic reviews. BMC Musculoskelet Disord. 2017;18(1):188. doi: 10.1186/s12891-017-1549-6.
4. Fritz JM, Piva SR, Childs JD. Accuracy of the clinical examination to predict radiographic instability of the lumbar spine. Eur Spine J. 2005;14(8):743-50.
5. Abbott JH, McCane B, Herbison P, Moginie G, Chapple C, Hogarty T. Lumbar segmental instability: a criterion-related validity study of manual therapy assessment. BMC Musculoskelet Disord. 2005;6:56.

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  by supersy | 2018-08-02 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

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