完全帰国しました、と、しゃっくりの話。

最終告知です!7月14日(土)のEBP講習があと一週間半後に迫っています。席がまだ若干数残っていますので、興味のある方はぜひ!

今回は基礎レベルの「治療介入編」と(3時間、3.0 EBP CEUs)、臨床応用レベルの「治療アプローチ・AMI編」「治療アプローチ・腱障害編」(各2時間、それぞれ2.0 EBP CEUs)をまとめて一日で開催します。日程と構成は以下の通りです。

<講習日時>
2018年7月14日(土)
9:30am-12:45pm  エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで
           *途中休憩15分含む3時間講習
12:45pm-14:00pm 昼食(各自)
14:00pm-16:00pm エビデンスに基づく治療アプローチ: AMIと抑制解除療法
16:15pm-18:15pm エビデンスに基づく治療アプローチ: 腱障害リハビリ

ちなみに、基礎レベルの講習は「エビデンス(科学的根拠)に基づく…」とかよく耳にするけれど、どういうことか実はよくわからない、今更ヒトにも聞きにくい、という完全初心者さんウェルカムな講習です。午後に行う講習ふたつはどちらも「臨床応用レベル」の講習で、今までの「基礎レベル」の内容から一歩踏み込み、実際に臨床の現場で皆さんがぶつかっていそうな症例についてお話をします。「エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで」講習の事前・同日履修を強くお勧めしますが、必須ではありません。p値や効果量の何たるかがわかっている方であれば問題なく楽しめる内容になっております。

全講習、参加者の資格は問いません。元々ATC資格保持者さんのためにと思って企画した講習でしたが、今までPT、OT、柔道整復・あんま・鍼灸師さん、医師の方や大学教員・研究者さんなど幅広くご参加頂いており、学生さんも大歓迎です!リピーターさんも、リフレッシュにまたという方も結構いらっしゃいます。


<定員> 各講習45名

参加は一番興味のあるコースひとつだけでも、お好きな組み合わせで2つでも、3つ全てでも。お申し込みはGuardians Athletic Training & Therapyのウェブサイト上のこちらから(お手数ですが、複数講習参加する場合はリンク先から各イベントひとつずつお申し込みください)。複数受講される方には一昨年から導入した『セット割引』システムが適応、そして『学生割引』も健在です。

<受講料> 
一般 3時間講習(基礎編) 9,000円; 2時間講習(臨床応用編) 各6,000円
   2講習同時申込で10% off
    (例: 基礎+臨床応用で1,500円引き、臨床応用講習2つで1,200円引き)
   3講習以上同時申込で15% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで3,150円引き)
学生 3時間講習(基礎編) 8,100円 (10% off - 900円引き);
   2時間講習(臨床応用編) 各5,400円 (10% off - 600円引き)
   2講習同時申込で20% off
    (例: 基礎+臨床応用で3,000円引き、臨床応用講習2つで2,400円引き)
   3講習以上同時申込で25% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで5,250円引き)
     *現役大学・専門学校生(国内外不問)さん対象。申込後に学生証の提示が必要です、




で、本題です。そういえば前回の更新で書き忘れたんですけど、完全帰国しました!日本に帰ってきてからはや一か月、イベント盛りだくさんで書きたいことがいっぱいあるんですけど、まずは順番に。

日本に帰国する直前はPRI本部のあるネブラスカはリンカーンにお邪魔していました。一番の目的は初開催のNon-Manual Workshopに参加することだったんですけど(余談ですがこの講習本当に濃く、有益な内容でした、PRC/Tの皆さん一度機会を見て行ったほうが良いです…)、その前日に諸々の打ち合わせも兼ねてぴょこっとPRIに顔を出したら、PRIVYにゲスト出演することになって3本ほど収録してきました。

PRIVYというのはPRIが行っている有料動画配信サービスで、毎月4-6つのペースで動画(20-50分程度)がアップされています。雑誌の定期購読の要領だと思っていただければ。一月あたり$37か、年間$360($84割引)でSubscribeすることが可能です。内容はエクササイズの紹介から、最近PRIが受けた質問に対する回答まで実に様々ですが、ロンのおしゃべりに同席している雰囲気の、インフォーマルさが個人的には大好きです。

ちょっとどんな感じか動画を見てみたい、と言う人は無料視聴用のサンプル動画3本をご覧ください。


今回のトピックは私の「月に一度くらいしゃっくりが出るんですよね。これは『多い』と言われたことがあるんですけど…ロンはしゃっくりをどのようにとらえています?」という質問です。ロンのしゃっくりに対する解釈と対処法についてのお話が聞けます。興味のある方はぜひ!

んで。

このお喋りの後、興味が沸いたのでしゃっくりに関する文献をいくつか読んでみました。分かったことをまとめます。

英語でしゃっくりは広くHiccupsと呼ばれますが、正式な専門用語ではSingultusっていうんですって。これは一般な米国医療従事者でもまず知らない名前だと思う…。定義としては「直後(35ミリ秒後)に声門閉鎖を伴う、リズミカルな横隔膜の痙攣1で、しゃっくりが起こっている最中は呼気筋肉が完全に抑制されてその活動が全く行えないんだそう。しゃっくりが48時間以上続けば「persistent」30日以上続けば「intractable」と医学的に名前がつくんですって。そんなに長く続けば不眠症になり、疲労は蓄積し、食事ができずに体重減少・栄養失調などを起こしかねず、QOLに影響が出ることは明らか。2 うわー想像するだけでもしんどい。

その原因には様々なものが挙げられるのですけど、術前に全身麻酔の処置をしている際や、その間でしゃっくりが出るケースは多いというのは初耳。慢性しゃっくりの既往歴がある患者さんには特に慎重に麻酔を行わないといけないのだとか。他にも、手術中Vagus nerveの損傷やdisturbance、投薬で電解質バランスが乱れたりなどが原因で手術中のしゃっくりが起こったりということもあるらしい。 2

しゃっくりは反射メカニズムによって引き起こされており、
1) Afferent impulsesがVagus nerve、Phrenic nerve、もしくはT6-12の交感神経鎖を通じてHypothalaus (視床下部)、Brainstem (脳幹)、脊髄C3-5にあるHiccup Reflex Centerに送られる
2) Hiccups Reflex Centerがそのメッセージを受け取り、Efferent limbにシグナルを送る
3) Efferent limbであるPhrenic nerveに刺激された横隔膜、Intercostal nerveに刺激された肋間筋、斜角筋とVagal branchに支配された声紋がそれぞれ収縮もしくは閉鎖という反応をする→しゃっくりが起こる、
という出来事が順番に起こって引き起こされる現象なのだそう。何目的の反射なのさ?ってのが気になるところですが、しゃっくりは胎児に頻繁に起こり、子供や成人すると頻度が減ることから「主に胎児用の羊水を飲み込んでしまわないための反射ではないか」と言われてはいます…が、詳しいことはまだまだ分かっていないんだそうな。2

しゃっくりはただの呼吸反射ではない、という文章も印象的で、しゃっくりは咽頭と喉頭にある二つの機能的コンプレックスがReciprocal inhibition (相反抑制)を適切にできなくなったことによって起こるのだと。「二つの機能的コンプレックス」というのは声門閉鎖コンプレックス (glottis closure complex)と吸気コンプレックス (inspiratory complex)というものなんだそうで。2 わーもうこのへん全然聞いたことない名前ばっかり。だから、これらAfferent nerveに圧を与えるような変化(i.e. 腫瘍や妊娠)や炎症などによるirritation(食道炎や喘息など)でしゃっくりが起こる例が多く報告されているというのは至極当然なことなんでしょうね。 しゃっくりの原因として最も多いのは消化器官の疾患、パーキンソン病や多発性硬化症に代表されるような神経疾患、そして胸郭内の疾患らしいのですが(頻繁に起こる慢性しゃっくりは脳幹障害の可能性を示唆している、という衝撃的なタイトルの症例報告もありました3)、他に、代謝系の疾患(i.e. 糖尿病、腎臓疾患)で電解質のバランスが崩れることで起こったり、なんと精神疾患と結びつけられることもあるとのこと。文献にあった表2を抜粋しますが、こんな感じ(↓)。ひゃー長いリスト。前述したように手術や投薬などの「治療」がしゃっくりの原因になることもあるし、しゃっくり患者の「原因」を特定することは非常に難しいのだとか。
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これだけ原因が多岐に渡ればその治療が単純じゃないというのは一目瞭然かと思います。診断にもその治療にも複数の専門家が関わるべきである、というレビュー論文の結論はなかなかに頷けました。2 その他の介入論文を読んだ中ではVagal activityを増やすための手段のひとつとして、Vagus nerveにe-stimで直接刺激してしまえ!というもの4と、いやいや呼吸介入をしてCO2 Retentionを増やせばしゃっくり止まるべ、5という論文が特に面白かったです。前者は少し乱暴な感じがしますが(一時的に止まるだけで、また始まってしまうのでは?)、後者はプラスチック・バッグを抱えて呼吸するだけなのでお金はかからないし自分でできるし、利点は大きくあるように思います。

少し飛躍になるかもしれませんが、これは以前言及した、一般的頸椎痛・腰痛の患者はHypocapniaに陥っている、という話ともつながるので少しゾクゾクしております。しゃっくりが血中CO2濃度を高めることで解消された→しゃっくりは血中CO2濃度が異様に下がったことで起きた可能性がある、と先の研究を解釈すると、実はしゃっくりもHypocapniaが原因のひとつとしてあって、つまりハイパーインフレーション(息を吸い過ぎて胸郭が膨らんでいる)患者に見られる現象なのではないか、ということが言えるんじゃないかと思うんです。そのような患者には(例えばPRIが推奨しているような)息を長く強く吐くような呼吸法を実践することで血中CO2濃度が上がり、しゃっくりが止まる可能性を大いに示唆していると言えます。ひゃー、つながるねー、つながるなー。この論文ロンに送っておこう。

1. Samuels L. Hiccup; a ten year review of anatomy, etiology, and treatment. Can Med Assoc J. 1952;67:315–322.
2. Kohse EK, Hollmann MW, Bardenheuer HJ, Kessler J. Chronic hiccups: an underestimated problem. Anesth Analg. 2017;125(4):1169-1183. doi: 10.1213/ANE.0000000000002289.
3. Shastin D, Nidamanuri P, Nannapaneni R. Recurrent hiccups may signal brainstem pathology and should be investigated. BMJ Case Rep. 2018;pii:bcr-2017-222926. doi: 10.1136/bcr-2017-222926.
4. Petroianu GA. Treatment of hiccup by vagal maneuvers. J Hist Neurosci. 2015;24(2):123-136. doi: 10.1080/0964704X.2014.897133.
5. Obuchi T, Shimamura S, Miyahara N, Fujimura N, Iwasaki A. CO2 retention: the key to stopping hiccups. Clin Respir J. 2018. doi: 10.1111/crj.12910.

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  by supersy | 2018-07-06 23:20 | PRI

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