日本に帰ることにしました。と、Consensus Statement for Patellofemoral Instability。

ええっといきなりのタイトルですが、もうだいぶ長いこと色々考えていて、まぁそろそろかなぁと思ってそういうことにしました。今すぐにではなくて、今学期が終わってからなので本帰国は6月上旬になりますけども。どうして?とか、苦渋の決断?とか聞かれたりするのですが、そんなことは全然ないです。来るべき時が来たぜ!と思ったからで、アメリカでの生活は16年とちょっとで幕を閉じることになるんですが、後悔は全くないですし、やりたかったことをやりきれたので帰る、という私としては非常に分かりやすくてすっきりとした気持ちです。もちろんまだアメリカでしかできない勉強もあるので、講習に学会にと時々戻ってこようとは思いますが、これを機に生活の拠点と活動の基盤は日本にがっつり移そうと思っています。

18歳で渡米して16年間。人生のほぼ半分、成年初期の全てをアメリカで過ごしたことになりますが、振り返ってみればこれ以上ない濃さの、しかしあっという間の16年間でした。このブログは…たぶん帰国してもそのまま続けることになるとは思うんですが、まぁ何があるかはわからないので流動的に行こうかと思います。続けられれば続けるし、そうでなければやめるし、リニューアルなどするかもしれないし、ということで。



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さて。今回はすごく短いドキュメントではあるんですが、ほんの4日ほど前(1月30日)に発表になったAOSSM (American Orthopedic Society for Sports Medicine)とPFF (Patellofemoral Foundation)の合同声明(Consensus Statement)1 についてまとめておこうと思います。無料でPDFダウンロード可能です。


まず一番最初にどのような経緯でこのConsensus Statementがestablishされたのかという記述があるのですが、読んでみると16人の専門家(13人がMD、PTが1人とPhDが2人)を呼んで2016年9月にシカゴでワークショップを開き、一日かけて話し合った内容を2人の代表者が声明として書き起こし、16名の意見を聞きながら修正を加えて本合同声明の内容を導き出した、と書いてあります。16人って少ない気がするし、当然Patellofemoralの分野にも様々な派閥みたいなのもあるんだろうなと予想できます。そうなるとこの16人が特定の派閥のみから選ばれた人たちであったとか、逆に特定の派閥の人が全く入っていなかったとか、そういう面倒な可能性がありそうだなと…。どのような基準でこの16人が選ばれたのかを明記していない時点でこの合同声明の信憑性が薄れてきちゃいますね。一日のワークショップでこれだけのことを決めなければいけなかったとなれば、時間的なプレッシャーもあるでしょうし。しっかり草案見て全力でフィードバックを書く人もいれば、ロクに見もせずあーあーいいですよという人もいるだろうし。どちらにしても、厳しく言えばこの合同声明は少数の偏った専門家の意見の域を出ないというところは肝に銘じておいたほうが良さそうです(その証拠にこの論文には文献引用がひとつもありません)。

まぁこれを踏まえて読み進めます。冒頭には、各用語の定義がまとめられています。

Patellofemoral Stability: Constraint by passive soft tissue tethers and chondral/bony geometry that, with muscular forces, guide the patella into the trochlear groove and keep it engaged within the trochlear groove as the knee flexes and extends.

Patellofemoral Instability: Symptomatic deficiency of the aforementioned passive constraint (patholaxity) such that the patella may escape partially or completely from its asymptomatic position with respect to the femoral trochlea under the influence of displacing force. Such displacing force could be generated by muscle tension, movement, and/or externally applied forces.

Laxity: A physical examination finding that describes passive displacement under load.

Patholaxity: Abnormal laxity (too tight or too loose).
*normal vs abnormal laxityはこれから改めて定義される必要がある。

少しwordyに見えるものもありますが、読んでみるとなかなかに納得がいきます。私がここを数回読んだ理解としては、PatholaxityなくしてPatellodemoral Instabilityを有することはない。しかし、だからといってPatholaxity = Patellofemoral Instabilityというわけでもない。どうしてかと言うと、PatholaxityがあってもきちんとしたNeuromuscular controlがあればsymptomは発生しないからです。ってことですかね。ふーむ。

んで。

Patellamofemoral Instabilityを作りえる要素として挙げられるのが、
- Patholaxity of the medial/lateral patellar soft tissue constraints
- ↓constrain as a result of abnormal shape of the patella/trochlea
- Patella alta
- Abnormal skeletal alignment valgus/torsion
- Deficient proximal muscular strength and control

ここで興味深いのは"Proximal (hip) muscle control is important to maintain control of femoral rotation... Hyperpronation may also contribute to internal limb rotation.."という表記で、膝のメカニックスには膝だけでなく、股関節や足関節などのproximal/distal jointも関わっている可能性を示唆しています。

「問診の際に聞くべき質問」という項目もあってここも面白いのですが、個人的には私が聞かない質問はなかったので割愛します。興味のある方は本文をどうぞー。

急性障害の場合、Physical Examでチェックすべき項目は、
1. Patellar glide in extension and early flexion
2. Apprehension Test (at 30°)
3. Tenderness along medial patella/patellofemoral ligament
4. Effusion
5. Rotational alignment (i.e. femoral anteversion, tibial torsion, hyperpronation)
6. Beighton Score (↓) - 特に膝の過伸展
7. ACL, MCL, Meniscusなどの損傷と神経疾患についてもチェックすること。両側比較を忘れない
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*Beighton Score: 1-小指の過伸展90度、2-肘の過伸展、3-膝の過伸展、4-床に掌が付く、5-親指が前腕に付く
各1点のうち、2点以上あればhypermobile

慢性の場合は、先ほどの1,2,4,5,6,7に加えて、
8. 立位のアラインメント、gait
9. 可能であれば、Single-leg stance, スクワット、ステップダウン
10. J-sign, fixed lateral tracking
11. Hyperalgesia (どうやって見るの?)

なるほど、慢性の場合は動的な要素を可能な限り増やすイメージですかね。書かれていることたちにそんなに驚くことはないかもですが…。Qアングルとか大腿四頭筋や中殿筋のMMTとか、そういうことについては全く触れられていないんですね。意外!

画像診断についても割愛します。手術の項目から面白いと思ったのと書き出すと…
- Early flexionでpatellar instabilityが認められたら手術を勧めるべきである。しかし、isolated lateral retinacular release/lengtheningのアウトカムは総じて良くないため、やるならばmedial reconstructionと併せるべきである(Lateral tightnessと物理的なdisplacementがなければ寧ろlateral retinacular release/lengtheningは必要ない、とも)。
- Medial reconstructionに関してはこのテクニックが優れている、というのはなく、とにかく適切な位置に膝蓋骨を導くことが大事である。
- Tibial tuberosity medialization is NOT commonly included in surgery for instability. この手術、私高校生のころに膝蓋骨の亜脱臼という診断でやらされたんだけどなー(遠い目)…。お陰で膝が余計にぼっこり盛り上がってしまって今でも左で膝立ちができませんよ。アウトカムは"less than ideal"らしくて、今はもう全然勧められてない手術なんだ、ふーん…。
- Patella altaはCaton-Deschamps ratioが1.2以上(Insall-Salvatiのほうじゃないんだ!)でpatellotrochlear indexが15-20%の場合はsurgical correctionをせよ…という表記も面白いです。なんでもかんでも直せばいいってもんじゃないんですね。
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そんなわけで、一番学べたのは意外にも「手術」の項目でした。私が常々「これはいい手術なのか…?」と疑問に思っていた者たちがしっかりと否定された格好になっています(tightだから切っちゃえとか、trackがズレてるから骨を切って動かしてなんとなくまっすぐに並ぶようにしちゃえとか)。このstatementの〆には「ここに書かかれていること、全てが科学的に実証されているわけではない」と書いてありますが(くどいですけど、あくまでexpert's opinionですからね)、現役の膝専門Orthopedic surgeonが最低ここに書かれている内容だけでも把握して、日々の患者を診てくれればdo no harmは守られるだろうという気はします。ま、AT向けの論文ではなかったですかね。PTがもっとworkshop参加者に含まれていたら、リハビリなどの記述ももっと書けていたかも。将来的にはPatellofemoral Pain Syndromeに関するNATAのPosition Statementも将来的に出たりするんでしょうか、そちらにも期待したいです!

1. Post ER, Fithian DC. Patellofemoral instability: a consensus statement from the AOSSM/PFF patellofemoral instability workshop. Ortho J Sports Med. 2018;6(1):1-5. doi:10.1177/2325967117750352.

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  by supersy | 2018-02-03 21:30 | Athletic Training

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