ビタミンCに風邪の予防効果・回復効果はあるのか。

風邪がっ!治らないんですよっ!ズルズルズルズル治りきらないまま、かかり始めからもう一か月以上経ちますわ。睡眠に気を付けたり、休める時はスパっと休んだりしてるつもりなんですけど、なんででしょ?もう歳ってことかな。ちょっとしたかすり傷も痕が残るようになっちゃったし、免疫機能、回復機能が落ちてるのは残念ながら近年身に染みて実感しております。
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ところで、風邪にはビタミンC!とよく言われたりしますね。免疫機能を助けると。実際風邪の引き始めにビタミンCサプリメントをせっせと飲んでる人を見かけるのも珍しいことではありませんし。…しかしながら私はサプリメントや薬の類がもともとあまり好きではなく、積極的にわさわさ取る方ではないので(少し補足すると、folic acidやomega-3など、取っておきたいと感じるサプリはいくつかあるのですが、アメリカではサプリメントは全くFDA規制が及ばない、どれに何が入っているか全くわからない闇鍋業界なのです)、今まではどちらかというとそういう人を冷ややかな目で見ていました。効くわけないじゃん(むしろ腎臓に負担かけてるだけじゃん)、と思っていたわけですね。しかし、よく考えたらそういう分野の論文をちゃんと読んだわけでもないので、「ビタミンCのサプリメントが風邪の予防・回復には効かない」というのは私の偏見でしかありません。一度くらいはちゃんとエビデンスを見てみないといけないな、ということで、ちょっとレビューしてみました。
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手始めに全体像を掴むため、最新(2013年)のCochrane Libraryによるメタ分析論文1を読んでみました。合わせて29(総患者数11,306人)の研究をレビューし、RRを計算した結果のまとめでは、1) 一般の人がビタミンCを摂取することによって起こる風邪の予防効果はRR 0.97 (95%CI 0.94-1.00)でほぼ全く効果なし; 2) マラソンランナーやスキーヤー、兵士など普段から身体を酷使する人らがビタミンCを摂取した場合の風邪予防効果はRR 0.48 (95%CI 0.35-0.64)で大いに効果あり; 3) 前もってビタミンC摂取をしておくと、風邪を引いている期間が成人では8% (95%CI 3-12%)、子供の場合は14% (95%CI 7-21%)短くなる傾向にあり、特に子供が多めのビタミンCを摂取した場合(一日当たり1-2g)、その効果はより大きくなる(18%); 4) 風邪の深刻度(severity - 仕事や学校を休まなければいけなかった日数や、symptom severity scaleなどによって推し量られる)も、普段からビタミンCを摂取している患者のほうがより軽い風邪にかかるのみで済んだ…などの報告がなされています。ほうほうほう。面白い。しかし、5) Therapeutic Vitamin C、つまり風邪の症状が出始めてからのビタミンC摂取に関してはまだまだ研究の数も少なく、結果にもバラつきがあって一貫性ある効果は今のところ認められていない…と言う感じなんだそうです。

副作用はないのか?というのも気になるところなんですけど、2490人のhigh-dose (≧1g/day)のビタミンCを取った被験者と2066人のプラシーボ薬を取った被験者を比較すると、「副作用発症」率は5.8% vs 6.0%と大差なし。つまり「気のせい」の範囲内ってことですね。深刻な副作用は全く報告されていないそうです。

…となると、日常的なビタミンCサプリメントの摂取は、1) 風邪予防には普段から身体を酷使していなければ効果はないが、2) 風邪の期間や深度を下げてくれる効果はそれなりに期待できる、且つ3) 深刻な副作用はない、ということが言えそうです。ほぉー!
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もうちょっと新しいオリジナル研究論文はないかな?と調べていて見つけたのがこちら(↑)。2 2014年発表のrandomized, double-blind, placebo-controlled study。サクッとまとめちゃいますね。

30人の健康で喫煙歴のない、年齢幅18-35歳の男性を対象に行われたこの実験。これらの被験者は現在ビタミンCサプリメントを摂取していない、且つ普段食事で取っているビタミンC量が“marginal (決して多くない、基準値ギリギリくらい)”であることが条件で、血液検査でビタミンC濃度が45 μmol/Lであることを確認した上で実験を行ったそう(血液中のビタミン濃度ってどれくらいのスパンで変化するものなのだろう…食べたものや飲んだものの影響をモロに受けやすいなら、これは『普段からビタミンCをあまり摂取していない』という事実を確認するのに十分なテストなのか?という疑問は浮かびます。どちらにせよ私自身あまり詳しくない分野なので、どうして45 μmol/Lを閾値としたのかなど、個人的にはもう少し説明してほしかったです)。

んで。ランダムにビタミンC組(n = 15, 平均23.0±3.1歳)とプラシーボ組(n = 15, 平均23.2±4.3歳)に分け、風邪が流行りやすい1-4月の期間に、各被験者が「ビタミンC (500mg x 2 tablets/day)もしくはプラシーボ錠剤 (ビタミンCサプリメントと見た目は全く同じ)のサプリメントを朝と夕方の一日二錠摂取を毎日8週間続ける、というデザインで、被験者は1) 実験期間中フルーツジュースを飲むことは禁止され (self-reportのみ?どうやって確認を取っていたのかの記述はなし。果物の摂取そのものについては記述が無かったので、これについては制限は無かったと思われる)ていたほか、2) Wisconsin Upper Respiratory System Survey-21(5点以上が複数日続いたら『風邪』と判断)を毎日、3) Godin Leisure-Time Exercise Questionnaireとshort food frequency measureを毎週記録していました。実験開始から4週間と8週間(実験終了時点)にビタミンCとヒスタミンの血中濃度も計測されていたとのこと。

プラシーボ組15人のうち2人(13.3%)が途中drop out(1人は指示通りに錠剤を飲まないnon-compliantな被験者、もう一人は実験開始直後に回復に24日かかる酷い風邪を引いたため)したので、最終分析に含まれたのはビタミンC組15人とプラシーボ組13人(元々サンプル数が少ないうえに13.3%のdrop out rateは少し高いかと。どうしてITT分析にしなかったのだろう?)。

んで結果です。ビタミンC組では4週間(41.3±10.9 vs 30.8±11.4 μmol/L; p = 0.02)と8週間(41.2±10.4 vs 33.9±10.9 μmol/L)時点でプラシーボ組よりも著しく高い血中ビタミンC血中濃度が確認された、というところはまぁ驚くことはないかと思います。食事ログによればグループ間での食事の質、食事によるビタミンC摂取量に大差はなかったそうですが、こういったログのcompletion rateが何パーセントなのか、それから錠剤をどれほどきちんと指示通りに飲んでいたのか、というcompliant rateなどについては全く記述がありません。ここらへんが雑だとせっかくのrandomized, double-blind, placebo-controlっぷりが台無しになってしまうと思うんですけどねー…。
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実験期間中の被験者の平均運動量については「ビタミンC組のほうが少しばかり活発に運動できた!」ということが書かれているんですが、p値が最小でも0.10ですし、そもそもbaselineでのMET数値がグループ間で著しく違った(57±24 vs 38±22でビタミンC組のほうがそもそも活動レベルが多い人たちが集まっていた; p = 0.03)ので、実験期間中の比較自体が成立しなくなります。Treatment effectsが週数を増すごとに増えているのも見受けられるんですが、95%CIは0をまたいでおり、統計的に決定的ではないことがわかります。ここは、筆者が強調しているほど重要ではない、trivialなfindingであると私は判断します。
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風邪を引いた人数、回数、深刻度や日数なんですが、これも上の表にあるように、統計的に有意な差が見られたのは「各グループ内で風邪を引いた人数(7 vs 11人; p = 0.04)」のみ。RRは0.55 (95%CI 0.33-0.94)と、うーん、イマイチピンとこないというか、ギリギリ効果があるんだかないんだかって結果というか…。風邪を引いてしまったあとの発症期間の比較は統計的にmarginalな違いがある、といってもいいとは思うんですが(2.2±1.4 vs 5.4±4.5日; p = 0.06)、そしてこれは平均してビタミンCを日常的に摂取しているヒトは、摂取していないヒトに比べて、風邪を引いても約3.2日回復が早い(p = 0.06)という風にも言い換えられるんですが、うーん、他の計測値で特筆すべきことはありませんね。

結論としては、「普段十分にビタミンCを摂取できていない若年男性にはビタミンCのサプリメント摂取は活動レベルを上げ、風邪にかかっている期間を短縮させる効果がある」と言い切る形で述べられているんですが、個人的にはタイトルや結論で言われているほど、飛び上がって興奮するような効果ではないと感じます。marginalって感じですよね。より大きいサンプルサイズで、しっかりサプリメント摂取ログも提出させ、compliance rateも推し測った上でもう一度検証を行ってほしいなぁと思いますね…もちろん、女性を被験者とした研究も見てみたいです。

…そんなわけで、今回こうして複数の研究を読んで、「なるほど、確かにビタミンCの日常的摂取は副作用も無いし、風邪をもしかしたら薄っすら予防、そして発症しても軽度に抑える効果はあるのかも」という風に認識しなおせるいい機会にはなったんですけど、よーーーく考えたらエビデンスで実証されつつあるのはそもそも「風邪を引く前からビタミンCサプリメントの摂取している人達」に対する効果であって、「風邪を引いてからのサプリメント摂取開始 (= therapeutic supplementation)」に関してはほとんどエビデンスがないのが盲点でしたっ!もうすでに風邪をひいてしまっている私にはあてはまらない内容だったので、そこは反省して、とりあえずアパートの部屋を気合い入れて今週末に徹底的に掃除してやろうと思います。今週中には治したるー!

1. Hemilä H, Chalker E. Vitamin C for preventing and treating the common cold. Cochrane Database Syst Rev. 2013;(1):CD000980. doi: 10.1002/14651858.CD000980.pub4.
2. Johnston CS, Barkyoumb GM, Schumacher SS. Vitamin C supplementation slightly improves physical activity levels and reduces cold incidence in men with marginal vitamin C status: a randomized controlled trial. Nutrients. 2014;6(7):2572-2583. doi: 10.3390/nu6072572.

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  by supersy | 2017-11-16 21:00 | Athletic Training

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