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Hook of Hamate Fracture: レントゲン陰性時に次にすべきは、さて?

以前書いたかどうか忘れちゃいましたが、
今学期は初めて上肢評価の授業を担当させてもらっています。
下肢評価の授業はここ4年ずっと教えていましたが、上肢評価は念願!楽しいです。

そんなわけで、今まであまりがっつり勉強したことのなかった診断についても
色々と文献を掘り起こして読んでいます。
中でも、手根骨(Carpals)について役立つ文献を発見したので幾つか。
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手(Hand)、って、ものすごい小さな組織が詰まってる部位なんですよねぇ。
腱や靭帯、関節もそうですが、もっと単純なところで、もちろん骨も。
この小さな部位に(sesamoidは除いて)27もの骨が集まっているというのだから驚き!
中でも手首周りには、Carpal boneと呼ばれる手根骨が8つ存在します。
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しかし本当にこの手根骨っていうのはパズルのようにひとつひとつが実にユニークなカタチをしながら、上手いことお互いの輪郭にハマりあっていて見れば見るほど面白いです。
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中でも特徴のあるカタチをしているのが
第5中手骨(5th MT)と第4中手骨(4th MT)の根本にある、有鉤骨(Hamate)という骨。
呼んで名の如く、するどく尖ったような鉤(カギ)形の突起が有り、
これは英語ではHook of Hamate (下写真の赤い部分)と呼ばれています。
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●Hook of Hamate Fracture (有鉤骨鉤骨折)
こんな妙なカタチをしているものですから、異常なチカラが掛かった時、
骨折は通常この骨本体(Body)よりは鉤部分(Hook)に集中することが多いのです。
『よくある骨折』というわけではありませんが、特にラケットを握っている時にこの部位が圧迫されやすく、テニスやバドミントン、野球などのラケットやバットを握るようなスポーツで稀に見られます。
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Hook of Hamate Fracture: レントゲン陰性時に次にすべきは、さて?_b0112009_14302114.png
しかし、この骨折はなかなか判別が難しい。
通常のPA viewでレントゲンを取っても、鉤(Hook)部分が有鉤骨本体(Body)に重なり、隠れるような格好になってしまうため、このdetectできないケースがほとんど。30-45°ほどSupinateさせたviewや、Carpal Tunnel Viewだと確認が出来るのですが、お医者さんがこれに気がつかない場合は、「骨折じゃありませんでした」と誤診されてATの手元に返されてくるケースも少なくありません。実際、初診で医師がHook of Hamate Fractureを正しく認識しそこなうケースは全体の50%以上になることもあるのだとか。1 では、
 1) TTP: Hook of Hamate(有鉤骨鉤の圧痛)があり、
 2) (-) Regular PA View Radiograph(通常面のレントゲンが陰性)の場合、
まだHook of Hamate Fractureは完全にはrule outできてないことになる。
…となれば、ATとして次に何をすれば更なるreferralが必要かどうか決められるか?

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●Hook of Hamate Pull Test
…で、私が唯一見つけたSpecial TestがHook of Hamate Pull Test!2
やり方は簡単。患者にFull ulnar deviationをさせた状態で、クリニシャンが患者のActive 4th & 5th Finger (DIP&PIP) Flexionに対して負荷をかける。Flexor Digitorum Superficialis/Profundusの収縮で有鉤骨の鉤部分に丁度腱が引っかかって引っ張られる格好になり、骨折があれば痛みが出るはず、というものです。理屈は通っているように思えます。
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*ちなみに、Full ulnar deviationなのがカギなんですって。
ちょっとばかりのUlnar deviationだと痛みは出ないそう。


Wright氏ら2が2010年に発表し、その2年後にShimizu氏ら1が一度検証したのみのまだまだ若いテストではありますが、彼らの発表を合わせると、(+) Hook of Hamate Pull Testの患者はもれなく全員骨折が認められたとのこと(9 out of 9, 100% Sensitivity)。つまり、
 1) TTP: Hook of Hamate(有鉤骨鉤の圧痛)があり、
 2) (-) Regular PA View Radiograph(通常面のレントゲンが陰性)の患者でも
 3) (+) Hook of Hamate Pull Testが認められれば、
Carpal Tunnel/Supinated ViewでX-rayを撮り直すなり、
CTスキャンを取るには十分の動機があると言える…というわけです。

もちろん実際に有鉤骨鉤骨折がない患者にもこのテストを試して、
Specificityも得てこそこのテストの真の価値がわかるというものですが、
50%以上の誤診率を少しでも下げるためにも、尺骨神経の合併症や、long-term morbidityを未然に防ぐためにも、道具箱に入れておくには今の所アリなツールかなと思います。
近い将来またこのテストを試した研究が発表されるといいのですが。

さて、他の骨折の話も少ししようかと思ったのですが、時間が無くなってしまったのでまた今度!

1. Shimizu H, Beppu M, Matsusita K, Arai T, Naito T. Clinical outcomes of hook of hamate fractures and usefulness of the hook of hamate pull test. Hand Surg. 2012;17(3):347-350. doi: 10.1142/S0218810412500293
2. Wright TW, Moser MW, Sahajpal DT. Hook of hamate pull test. J Hand Surg Am. 2010;35(11):1887-1889. doi: 10.1016/j.jhsa.2010.08.024

  by supersy | 2014-11-11 23:59 | Athletic Training

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