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CEU Workshopをホストします!&Isolated PCL tearをどう扱う?

個人的な宣伝になりますが…。

Texas A&M University-Corpus Christi ATEPでは、
この夏に幾つかのWorkshopやCamp等のイベントを開催します!
第一弾は、Manual Therapy Workshopです。
日時: June 2, 2012
費用: $50 for certified professionals and $15 for students, lunch included
タイムテーブル:
  9:00-10:30am  Tensegrity and Scar Tissue Mobilization - Sayuri Hiraishi
  10:45-12:15pm An Introduction to Joint Mobilization Techniques - Dan Huffman
  12:15-1:00pm  Lunch
  1:00-3:00pm   Neuromuscular Inhibition and Corrective Techniques
             for Lower Extremities
- Brett McQueen
  3:00-4:30pm   Manual Therapy Implements - Dr. Chad Peters

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(↑上は公式のFlyerです。クリックで拡大)

講義ももちろんですが、Hands-on sessionやInteracting labも交えて
アクティブに皆さんと交流しつつ充実したものにする所存です!
興味のある方は是非お気軽にSayuri.Hiraishi@tamucc.eduまでご連絡下さい!
その他のWorkshopも随時また宣伝させて頂きますが、詳しい情報はこちらから。

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ちなみに2週間ほど前の話になりますが、ATEPのニュースレター今年度最終号を刊行しました。
5月号です。な…長かった!殺人的なスケジュールの中、全号を無事に刊行できるか不安でもあったので、「休まず刊行!」という地味な目標を一人で達成できたことを嬉しく思っています。
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今回のトピックに私が選んだのは、「How to treat an isolated PCL tear (後十字靭帯の単独損傷時の治療オプション)」というものでした。後十字靭帯を単独で損傷する、しかも断裂する、となればかなりレアですが、私自身その怪我を見る機会があり、Evidence-basedで見る最善の治療法ってどんなもんなんだろう?と興味が湧いたのです。
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PCLを完全断裂したうちの子は、いわゆるFalling on the flexed knee(↑)っていう教科書通りのMOIをやってしまったわけですが、当時はposterior painが全く無く、膝を打った箇所のみの痛みを訴えたので、私は深く考えずにKnee (tibial bone) contusionとして扱っていました。同じ試合で別の選手がACLを断裂したこともあり(一試合で後十字と前十字断裂…。今思い返せばすごい試合だったわけです)、その選手の評価・治療・プランニングに私自身が時間を費やした一方で、PCLを断裂した子は痛みも症状もほとんど無く、その日も、翌日の試合も、ほとんど影響なくプレーできていたので、大したことないかな、大丈夫だろうと。ところが、それから2週間ほどして、ランダムにjoint effusionが出始め、膝全体のdiscomfortを彼女が訴え始めた時に「あれ?」と頭に大きなはてなマークが。整形外科医にreferしてPCL断裂が判明。後十字完全にいってます、と聞いたときはもう、ぶっとびそうになりましたよ。

結局この選手は、それでも症状がほとんど無く、普通にプレーができていたので、お医者さんに「なら続けて大丈夫です」と言われ、Custom knee braceをつけて、そのまま2010-11シーズン丸々プレーをし切りました。その後、彼女は事情があって去年の2011-12シーズン一年はチームから離れていて、いよいよ来年から正式に復帰します。

…で。3月末ポストシーズンから、一年ぶりに練習に参加し始めた彼女。痛みというほどでもないんですが、膝の違和感はまだあるようなんですよね。「不安定な感じはしないし、どこが痛いというわけでもない。でもなんかおかしい感じ」という彼女。定期的にメンテナンスの治療に来させているのですが、これ、シーズン始まったら悪化するのかなぁ、とか、もしや、手術をしておいたほうが正解だったのだろうか、とか、私も密かに色々と心配が膨らんできて。何か今のうちにできることがあったら是非知っておきたいしやっておきたい!と思ったのでこの機会に詳しく調べてみることにしたのです。
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で、いよいよ本題です。
あんまりAnatomyについては細かい解説は省きます…が、ACLとPCLは膝の関節の中で十字を描くようにクロスしていて、ACLはAnterior knee stabilityを、PCLはPosterior knee stabilityを担っています。MCL(= provides medial stability)、LCL(= provides lateral stability)も含めたこれらは4方向を固める4 major ligaments in the kneeとよく分類されるわけですが、中でもPCLは最も強靭な膝の靭帯として知られています。
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PCLは、よくblow-out knee injury(膝ぐっちゃぐっちゃになるような派手な怪我、例えば↑写真左)で見られますが、PCLを単独損傷するにはものすごく的確な力を的確なタイミングで受けないといけません。詳しく言うと、膝を約90度に曲げた状態で、膝の前方から後方に向けた強い力を腓骨上部に受けないといけないのです。よく言われるのが「Dashboard injury」というやつで、車に座っている状態で、例えば前方の車に追突事故を起こしたとします。車は衝撃で止まりますが、慣性の法則が働き、運転手自身の体は前方に動き続け、結果、膝を曲げた状態のままダッシュボードに激しくぶつける(↑写真右)ことがよくあるのです。なので、PCLの単独損傷は交通事故で見られることはそこそこ多いんですね。ただ、まぁ、スポーツとなると…こういう状況はなかなか起こりにくいので、ほとんど起こらない、というわけです。膝から地面に着地する(↓)くらいですかね。
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ここで面白いのが、
1) PCL is responsible for 95% of the posterior knee stability.
なのに対して、
2) The signs and symptoms associated with a PCL tear could be subtle or even non-existent in some cases.
という事実です。なんだか矛盾しているようにも思えます…が、本当なのです。
興味深いのはParolie & Bergfeldによる研究で、NFL combineに参加する大学生フットボール選手達をexamineした結果、2%の選手にasymptomatic PCL injuryを発見したというのだから驚き。isolated PCL injuryは膝全体に起こる怪我の中で3%と極稀と言われていますが、知らないだけで、実はそれなりの数の選手が負っている怪我なのかも知れません。うちの選手の場合もそんな感じでしたし…。

そんな中で、がっつり症状が出てしまう患者さんもいます。
慢性的な痛みだったり、ぐらぐら感だったり、腫れが出たり引いたり、instabilityが原因で半月板損傷や関節面軟骨のdegenerationに繋がるケースも幾つか確認されています。機能障害にも同じことが言えます。生活に支障が出たり、アスリートにおいては以前のactivity levelに戻れなかったりと、弊害は色々とあるのです。

ここで大きく問題になってくるのは、PCL損傷はConservativeに扱うべきなのか?それとも、こういったchronic issuesを防ぐためには、手術してrepairやreconstructionをしたほうがベターなのか?ということです。
うちの選手に関しても、怪我から1年半ほど経過した今、症状が徐々に悪化しているように思えます。もしかして、「手術しない」は間違いだったのか?シーズンが終わった段階でするべきだったのか?はて。どちらが良かったのでしょう?
過去はもう変えられないけれど、もし似たようなケースが今後起こった場合、どう対応するのがベストなのでしょうか。

…ということをこれからまとめたかったのですが、
すでに長くなってしまったので、明日に続きます!

  by supersy | 2012-05-18 13:00 | Athletic Training

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