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SWATA Annual Conference in Houston その6: Tensegrity!

SWATAのまとめも、今回で最後です!…キリがないので。

最終日である7月16日(土)に行った講義は、“Regenerative Injection Therapy”でした。
ProlothetapyとPRPについての基本概念と、ケーススタディーの紹介、という構成で。

この講義では、内容と直接全然関係がないところで大発見がありました!
それは、Tensegrityという言葉。お恥ずかしながら、初めて聞きました。
Tension + Structural Integrityという、造語なんですけどね。

この説明のために、講義の最中に、こんな写真(↓)を見せられました。
これ、Washington D.C.にある、Hirshhorn Museum外に展示されている、
Kenneth Snelson氏という芸術家のNeedle Towerという作品なんですけれども。
タワーと言ってもこの作品、アルミ製のチューブが細いステンレスのワイヤで繋がれているだけなのです。特に中心部にがっしりした柱になるような構造も無く、また、チューブ同士も接触していません。それらが浮き上がるように高さ60フィートまで高々と、けれどもしっかり積み上がって、タワーの形を成している。数々の嵐に揺らぐことなく耐えてきた、耐久性もあります。
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この作品は、“Tensegrity”の象徴である、と言われます。
つまり、Tension(ピンと張った緊張状態)とStructural Integrity(構造的総合体)の融合である、と。
Tensegrity describes a closed structural system composed of a set of three or more elongate compression struts within a network of tension tendons, the combined parts mutually supportive in such a way that the struts do not touch one another, but press outwardly against nodal points in the tension network to form a firm, triangulated, prestressed, tension and compression unit.

このTensegrityというコンセプトは、人体にも当てはまるのではないか、というのです。
この構造(↑)のアルミチューブを骨、ワイヤをSoft tissueと考えると合点が行く。
SWATA Annual Conference in Houston その6: Tensegrity!_b0112009_4284881.jpg
私達の身体の構造は、単純明快なジェンガとは違います。
人体において、骨と骨が直接触れることは通常ありません。
よって、骨だけで人体というStructural Integrityを成立させることは不可能です。
SWATA Annual Conference in Houston その6: Tensegrity!_b0112009_4313712.gif
2つの骨が出会うところには「関節」が造られ(↑)、関節包、関節液、靭帯、腱、滑液包、筋膜…様々なものがそれぞれの役割を果たしています。それらの組織が身体の至る所にTensionを張り、緊張状態を作るからこそ、骨は骨の意味を持ち、私達の体を支えてくれるFramework(=文字通り、“骨組み”)として力を発揮できるのです。
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例えば、これ(↑)がTensegrityの構造を最も単純化したものなのですが、
それぞれのCompression member(灰色のロッド)の先端に対し、3本の糸(黒い線)が繋がる事で、
この構造の緊張状態を一定に保ち、バランスを攣り合わせる役割を果たしています。
もし、この3本の糸のうち、どれかが切れてしまったとしたらどうなるでしょう?
一本の糸が切れただけで、それに繋がるロッドがまずバランスを崩し、それに伴って周りの糸が緊張を失い、それらを介して繋がる他のロッドたちもcollapsしていきます。
ひとつのtensionの変化が、構造全体のバランス崩壊をもたらすのです。

これと同様、私達のカラダがひとつの構造としてバランスの取れたものであるには、
人体にかかるTensionが均一に保たれていなければならないわけです。
各部位はもちろん、人体全体としても、です。
なので、もし、例えばカラダの一部でFascia(筋膜)に小さなTear(損傷)が起きたときに、
(損傷そのものは痛みを起こすほど大きくなく、仮に本人が気がついていなかったとしても)
その部位の中でacute or subacute loss of tensionが起きてしまいます。
しかし、Tensionは保たれないと構造は崩壊してしまう。このままではまずい!
これを補おうとして、周りの構造である健康な筋肉たちは緊張を始め、構造としてのEquilibriumを保とうとします。筋肉に慢性的なSpasmやTensing upが起こる理由は、ここにあります。
結果、常にfireして緊張状態を保っていなければいけない筋肉には過度の負担がかかりますし、さらにはBiomechanicsも通常時とは異なるものになり、怪我にもproneな状態になってしまうわけです。つまり、こういったCompensateは最終的にどこかに“痛み”として症状が出てしまうんですね。

人体の中のこのワイヤが、徐々に見え始めてきてはいるんですよねぇ。
このワイヤのここんとこがやられたら、それがこのロッドを影響して、
それがこのワイヤと、あのロッドと…とCascadeになっていく連鎖作用が、
もう一歩で8割方掴めそうなんですけども…(←まだまだ)。
そんなことを考えて毎日現場に向かっている私としては、この、Tensegrityという言葉が非常にしっくりきて、おお!と感動を覚えました。そうなのよ、Tensionなのよ。見えないからこれが厄介なのよ!これからこの言葉を意識してPracticeしてみよう!とちょっと新しい試みにうきうきしています。

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肝心のInjection Therapyに関して特に実は目新しい情報もなかったんですけどね…。
以前PRPについてはまとめたこともあるし。
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シンプルに上手にまとめてあるな、と思ったのは、PRPの簡単な理論について。
これ(↑)は皆さんご存知の通常のHealing Processをグラフにしたものですが、
PRPがやろうとしていることはつまりこういうこと(↓)。
SWATA Annual Conference in Houston その6: Tensegrity!_b0112009_5412586.jpg
人工的にHealing Processの先陣であるPlateletをboostしてやることで、
残りのHealing Processも刺激されて振り幅を増すんではないか、という。
PlateletsはGrowth Factorを作り出しますから、それを集中的に治りが遅い部位にinjectすればその分治癒が促進される、という狙いなわけです。

この流れで、NSAIDの話にもなりました。プレゼンターのひとりであったDr. Matthew Hammitは、「炎症反応を抑えるということは、一時的には良いかも知れないが、長い目で見るとLess inflammation→less proliferation→less remodeling(↓)につながるんではないかと思う。」「だから私は患者にはIbuprofen(NSAIDの一種)ではなく、Tylenol(NSAIDではない)を処方するようにしている。」と論じられていました。プロチームにも炎症はさせるだけさせておけ、というコンセプトから氷を一切使わないところがあるくらいですから、こういう意見の方たちもいるんですよね。私もそのArgumentはよく分かります。
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NSAIDに関しては実は大賛成なのだけれど、以前にも書いたとおり、
個人的には他に考えるべきFactorが色々あるから、私はやっぱり氷を使う側に落ち着いてます。
まだ“そう教えられたから”とりあえずIce bag作って選手に渡してます、
みたいな学生さんにはぜひ一度掘り下げてみてほしいトピックではあります。

●Be Open-minded & Skeptical
要約すると、こういうことにもなるんですよね。これ、EBPの真髄なんじゃないかと思います。
この言葉(↑)を講師の一人が仰ったのです。物事に対して、オープン且つ懐疑的であれ、と。
彼はPRPやProlotherapyのような、新しい技術に対してこう言ったのですが、
私はこれを、新しい技術だけでなく、私達が既に当たり前と思って使っているコンセプトや技術にも持つべきかな、と思います。何でだろう?と疑問を抱いてみること。学生にもいつも言っているんですけどね。まだまだあの子たち、私が言ったこといつも鵜呑みにしている。もっと疑ってChallengeしてきてほしいな!この新たな一年でも、このコンセプトを強調していきたいな、と思っています。


さて、長くながーくなってしまいましたが、SWATAで学んだことのリポートはこれで終わり!
皆でまたわいわいと、4時間ほどの道のりを運転して、無事にCorpus Christiに帰ってきました。
SWATAのカンファレンスに参加したのは今回が初めてで、
内容としてはNATAのほうが刺激的かなと思うのですが、ローカルでお手軽な分、
大学(undergrad)時代の先生・先輩・同級生たちが多く参加していて、
Alumni Partyがとんでもなく楽しかった!というのが特に印象に残りました(笑)。
一緒にバカやってた仲間たちと、「お前今先生やってるの?ありえなーい」みたいな
話をお互いにしたりして(苦笑)。気心知れた仲間はいいですね。

そんなわけで、SWATA、思いっきり楽しませてもらいました!
来年もいくぞう。

  by supersy | 2011-07-19 23:30 | Athletic Training

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