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Wells ScoreはアスリートにおけるDVTの診断に100%失敗する。

まずは告知です!

それぞれのSNSにはポストしたんですが、ここに載せるのを忘れていました。

4月6日(土)にアスレティックトレーナーやスポーツ指導者等を対象とした「第1回身体を守る教育セミナー in 東京」を株式会社大塚製薬工場とスポーツセーフティージャパンさんが共催で開催します。そこに何のご縁か私を呼んでいただきましたので、一番目のスピーカーとして小一時間ほどお話を担当させてもらいます。お時間のある方は奮ってご参加ください!事前申し込み必要ですが、参加費は完全無料(!)で、場所も新宿駅から徒歩6分と便利です。お誘いあわせの上、是非ー!

第1回身体を守る教育セミナー in 東京

日時: 2019年4月6日(土) 15:00~18:30
会場: コンベンションルームAP西新宿6階東京都新宿区西新宿7-2-4
参加費: 無料
対象: アスレティックトレーナー、スポーツ指導者等

参加のお申し込みはメール一本のみ!大塚製薬工場 礒部様宛で以下の内容をご記入の上、メールでお申し込みください。

<宛先>isobea@otsuka.jp
<件名>身体を守る教育セミナー参加申込み
<内容>氏名:
    所属:
    参加人数:

質問などのお問い合わせ先: 株式会社大塚製薬工場OS-1事業部 東京支店 礒部篤
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さて、今日はひとつだけ、なかなかに衝撃的な論文1(↑)を読んだのでシェアです。

今までに何回か、Deep Vein Thrombosisについて書いてきました。
 ふくらはぎ肉離れで人が死ぬ??(2010-5-25)
 DVTのClinical Diagnosis: 良くないものは、淘汰される?(2013-1-21)
で。私の知見は「DVTのClinical DiagnosisにはHoman's Signは使えないけどCalf SwellingとWells Scoreはいいよね」ってところで長いこと止まっていたんですけど、最近revisitする機会があったので学んだことをまとめます。そこで出てくるのがZaleski et al1の上の論文です。

先に言います。この論文の結論は「アスリートがDVTを発症した場合、Wells Scoreは全くその力を発揮しない」というものです。
Wells Scoreは最も広く使われているDVT/PEのクリニカル・プリディクション・ルールで、その感度は特に重宝されている、という冒頭から、でもアスリートってDVT/PEでもこういう症状なかったりするし、逆にオーバートレーニングとかBaker's CystとかあるとDVTと似たような症状出ちゃうよね、じゃあ診断には有効じゃないかもしれないよね、と議論を展開しています。

で。この論文がやっているのは「アスリートがDVT/PEを発症した際のWells Scoreは何点だったのか?全ての症例報告を振り返ってまとめてみよう」というシステマティックレビューです。実際にレビューされたのは11件の症例報告。内訳は6人の長距離ランナー、3人のサッカー選手、1人のトライアスロン選手と1人の登山ガイド(男7人、女4人、平均34±15歳)…登山ガイドが「アスリート」かは意見が分かれるところかもしれませんが、長時間身体を動かす職業であることに間違いはないでしょう。

で、下がそれぞれの患者のWells Scoreの要約(論文中のTable 3とTable 4を元に作成)です。上から6名の患者がWells Score (Modified) for DVT (Unlikely ≦1、Likely ≧2)を、下の5人がWells Score for PE(Unlikely ≦4、Likely >4)を使っています。
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見てくださいこの点数の低さ。総得点(Total)は-1から1と、全ての患者がカテゴリー的には"Unlikely (to have DVT/PE)"という結論になっています。しかしこれらの患者全員がDVT/PEと診断されたのですから、もちろん全ての結果が「間違い」。著者は「診断失敗率は100%であった」、としています。総じてアスリートのDVT/PEは一般の人のそれより典型症状が出にくい→一見、軽症に見えやすい、ということが言えるでしょうか。「Wells Scoreに頼り、その結果が間違っていたせいで、DVT患者の正確な診断は平均20±14日遅れた」という恐ろしい統計までこの論文ではシェアされています。約3週間って…!命持っていかれなくてよかったね…!

この結論を受けて、私が考えることが3つあります。

1. アスリートのDVT/PEはこれからも症例報告として積極的に論文という形で発表されなければならない。そうでないと実態は見えてきません。ここまでの症例報告がたったの11件というのは少なすぎます。アスリートの見せる典型症状というものを積極的に具現化、言語化する努力をもっともっと積み重ねなければいけないのです。今回のシステマティックレビューを見る限りでは、アスリートのDVT診断は(-2点)の配点のある「他に尤もらしい鑑別診断が存在する」という項目に騙された感も否めません。ここらへんに惑わされ過ぎないようなアスリート用のWells Score(別に他の名前だっていいんでしょうけど)の構築が将来的に求められるのかもと感じています。

2. 「ほどんとのDVTの症例には共通で確認された症状があって」という一文がありました。それらは、1) 多くの場合は断続的且つ局所的な痛みがあり、それが運動と共に悪化するという痛みのパターンと、2) 健側と比較してふくらはぎ周径位が2-3cmほど長い、ということだったそうです。ふくらはぎの腫脹に関しては、Wells ScoreやCalf Swelling Testをご存知の方にはそれほど驚くような報告でもないかもしれせんが、注目すべきは2-3cmという程度です。Wells Scoreにもふくらはぎ周径位は項目として存在しますが、その項目が「あり(= 加点対象)」と見做されるためには「3cm以上」長くないといけません。今回のシステマティックレビューでは「3cmという閾値は達さなくても、十分『異常』と見られる下腿全体の腫脹があった」とのことですので、3cmという数字にはそれほどこだわらなくてもいいのかもしれません。

3. 他の論文でもWells Scoreの限界や落とし穴については触れられており、特にプライマリケアや入院患者(ガン患者も含む)への有効性は限られているのでは、と論じられたりもしていました2。実際に12件の論文を併せた(n = 10,002)メタ解析論文3によれば、Wells Scoreの結果が単独で「Unlikely」だったからと言ってそれだけを元にDVTを除外した気分でいると、まだDVTである可能性は12.8% (95%CI 10.2-16.2%)も残っているんだそうです。これは目をつぶるわけにはいかない、高い数字です。

ではどうすればいいのか?

現在エビデンスが「合意」している、と言えそうなのはWells ScoreとD-dimerの併用です2,4。D-dimerというのは血液検査で、ざっくり言うと「体内に血栓が存在しているときにそれを溶解する際に生じる分解産物」を見極めるテストであり、D-dimerの数値が高ければDVTの可能性が疑われます(他の疾患でもこの数値は高まるようなので、必ずしも確定に有効というわけではないようですが…逆は結構自信を持って言えるようで、除外力があるそうです)。Wells Scoreの結果が「unlikely」で、且つD-dimerの数値は低い場合、DVTが見逃されている可能性は1.2% (95%CI 0.7-1.8%)まで下がると先のメタ解析論文3でも示されており、この値は「acceptable」と見做されるんだそうです。色々論文読んでみたのですが、DVTの診断ゴールドスタンダードであるVenographyも完璧ではなく、時々DVTを見逃してしまうことがあることから、これと同程度の見逃し(= 2%, safety margin)くらいまではオッケー、というのが今のところの研究者の共通理解なんだそうで。まぁ当然本当にオッケーではないんでしょうけど、統計的にどうしようもないでしょってことみたいで。

ですので、改めて、Wells Scoreを単独で使ってDVTを診断しようとするのは危険すぎる。あくまでもその後におこなう追加検査(i.e. 超音波やD-dimerなど)と一緒に解釈をして初めて臨床に有意な意味を持つのかな、と思いました。
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DVT/PEに苦しめられたアスリートと言われて、やはり思いつくのがマイアミヒートの黄金時代を築いたクリス・ボッシュ。
彼は30歳のベテランながらも現役バリバリだった2015年シーズン途中に突然PEを発症、以降2014-15シーズンの欠場を余儀なくされます。翌2015-16シーズンは開幕戦で見事復帰を果たしたにもかかわらず、同シーズン中にDVT/PE再発、以降昨シーズン同様に欠場しました。複数回血栓の問題が続いたこともあり、医療スタッフは慎重になったのでしょう(よーーーくわかります…)。2016-2017シーズンのためのトレーニングキャンプ前の健康診断にチームドクターが首を縦に振ることはなく、その間も血栓の再発が続いたんだそうです。リスクが高すぎるという判断から、ボッシュはチームから「以降彼がうちでプレーすることはない」と事実上の引退通告をされてしまいます。
現役復帰をあきらめきれなかったボッシュは2018年にカムバックを切望していることを宣言、プレーさせてくれるチームを探してたものの、やはり命に関わるこの疾患を仮にもNBAでチームドクターを務める人たちが無視できるわけもなく…。つい先月(2019年2月)正式な引退表明をしました。彼にとってDVT/PEはCareer-Ending Injuryになったと言えますね。

彼の症例報告も(…まぁ、情報を隠したって誰かわかってしまうだろうし、プライバシーの問題もあるかも知れませんが)、できれば後世の為に症例報告として記録に残しておいてほしいですね。遺伝的な要素が強いこういった疾患は介入できる要素も限られており、本当に難しいところです…。

1. Zaleski AL, Taylor BA, Pescatello LS, Thompson PD, Denegar C. Performance of wells score to predict deep vein thrombosis and pulmonary embolism in endurance athletes. Phys Sportsmed. 2017;45(4):358-364. doi: 10.1080/00913847.2017.1355210.
2. Bernardi E, Camporese G. Diagnosis of deep-vein thrombosis. Thromb Res. 2018;163:201-206. doi: 10.1016/j.thromres.2017.10.006.
3. Geersing GJ, Zuithoff NP, Kearon C, et al. Exclusion of deep vein thrombosis using the Wells rule in clinically important subgroups: individual patient data meta-analysis. BMJ. 2014;348:g1340. doi: 10.1136/bmj.g1340.
4. Goodacre S, Sampson F, Stevenson M, et al. Measurement of the clinical and cost-effectiveness of non-invasive diagnostic testing strategies for deep vein thrombosis. Health Technol Assess. 2006;10(15).

  # by supersy | 2019-03-08 22:30 | Athletic Training

足部の種子骨についてのエビデンスまとめ。

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足部の種子骨について調べていたらこんな論文1 発見しました。マニアックー。

37件の足部種子骨に関する論文をレビュー、メタ解析したこの論文、面白かった発見をサクサクとまとめていきます。

1. 母趾MTP関節の種子骨(x2)
これはヒトの足で最もconsistentな種子骨で、種子骨が欠如していた足は13,066中7(0.054%)で、うち6件は内側種子骨がなく、外側種子骨が欠如していたケースはたった一件だったとのこと。逆に言えば、この種子骨は99.95%の確率で両側とも正常に認められる、ということ。
種子骨が分化(partition、↓下の左足内側種子骨)を起こしていることも稀にあるらしいのですが、この有病率は12%程で、2,321件の分化はその殆ど(92%)が二分化(bipartite)で、7.5%が三分化(tripartism)、0.2%が四分化(quadripartism)だったんだそうな。報告された分化の多くは内側で起こっており(95.83%、23/24)、外側種子骨の分化は非常に珍しい(4.17%、1/24)とのこと。男女でリスクの差こそないものの、種子骨の分化は外反母趾変形と関連性があり、外反母趾があると通常の足の人よりも3.0 (95%CI 2.1-4.4)倍種子骨の分化が起こる可能性が高まるのだとか。言われてみれば下の写真も左足のほうが外反母趾が角度ついてる…?
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2. 母趾IP関節の種子骨
総発症率は6,460の足のデータを併せて22.4%…結構高いですね。データは多くはないですが左右差はあまりないようで、もしかしたら男性のほうがある確率が多い(13/20件)…?
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3. 第2~5趾のMTP関節/IP関節種子骨
複数ある場合もあるのですが、少なくともひとつの母趾以外でのMTP関節種子骨が発生する可能性は第2趾で1.9% (1.1-2.8%)、第3趾で0.32% (0.20-0.50%)、第4趾で0.9% (0.5-1.4%)、第5趾で13% (9.4-17.1%)だそう。左右の足で発症率にあまり差はなく、男女差もない。これらが分化している可能性は10.5% (0.1-34.0%)程で、このデータは第5趾のみのもの、第2-4趾MTP関節種子骨の分化は現存の文献で一度も報告されていないんだとか。ほうほう!!第2-5趾IP関節については、第4趾のPIP/DIP、第5趾のDIPではまだ一件も種子骨の存在が報告されておらず、第2趾のPIP/DIPはそれぞれ0.29%と0.08%(14/4746と4/4746)、第3趾のPIP/DIPは両方とも0.19%(9/4746と9/4746)、第5趾のPIPは1.03%(49/4746)の発症率だったとのことで。へぇぇ。

こんな画像(AP, Lateral)をwikiで見つけましたが、これは副骨も含まれていて見ごたえがありますね。でも、種子骨に関しては今回の報告と食い違うものも少なくなさそうです。印象としては今回の論文で報告されている数字のほうが総じて高いかなって感じです。このデータはどこから持ってきたんだろう?

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ともあれ、ニンゲンの身体って余分な骨があったりなかったりで楽しいですね。教科書に書いてある「正常」の身体がいかに当たり前ではないか思い知らされます。皆自分なりの「普通」があってもいいんでしょうね。

1. Yammine K. The sesamoids of the feet in humans: a systematic review and meta-analysis. Anat Sci Int. 2015;90(3):144-160. doi: 10.1007/s12565-014-0239-9.

  # by supersy | 2019-02-16 15:00 | Athletic Training

呼吸が中枢神経系に及ぼす影響。

Credit: Itamar Terem, Stanford University, Palo Alto, CA,
and Samantha Holdsworth, University of Auckland, New Zealand

脳ってね、呼吸と共に動いてるんです。そりゃだったら横隔膜は中枢神経に影響を与えるよねって論文(↓)1についてまとめます。

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横隔膜はただ「呼吸」をするだけのもの、という存在を遥かに超越しており、expectoration(去痰)、vomiting(嘔吐)、defecation(排便)、urination(排尿)、swallowing(嚥下)とphonation(発声)をも助ける役目を果たす。それだけではない、横隔膜は代謝バランスも司り2,3、静脈やリンパ液の流れを作り、食道と胃の境界を明確にすることで胃酸の逆流を防ぎ4、姿勢、ロコモーション、上肢の適切な動きに貢献もする4-6。横隔膜は感情や精神面にも影響を及ぼすし、無呼吸症候群は全身の痛覚閾値を上げ、患者は痛覚に鈍感になることも知られている。7-9

…これは一番最初の段落のざっくりとした訳ですけど、ここだけでもゆっくり3回は声に出して読んで愛でたい文章ですね。唯一気になるところと言えばここで引用している文献が全てBordoni氏自身が筆頭著者の文献ばかりってところでしょうか。この方の論文は好きなのですが、説得力を持たせるには様々な研究者の文献を引用したほうがよかったかなという印象です。

…ともあれ。

面白いと思った内容を列挙していきます。

1. 横隔神経は行きっぱなしの神経ではなく、横隔膜からの感覚を脳に伝える求心性の役目も果たす。右の横隔神経はより垂直に走行しており、長さは短く、神経伝達は速い。共に横隔膜を支配する迷走神経は脳神経の中でももっと長く、その線維の20%が動作を、80%が感覚を司どるmixedタイプの神経である。

2. 脳は心拍、呼吸とそれぞれ連動性がある。具体的には心臓収縮期に脳全体と延髄(medulla oblongata)は尾側・内側に23ミリメートルほど移動し、拡張期に戻ることがMRI研究によって報告されている。10,11 呼吸のフェーズとの連動としては、呼気と共に尾側へ脳が移動、吸気と共に戻ることが明らかになっている。12 心拍と呼吸の大きな違いは脳移動に伴うCSF(脳脊髄液)の動きの質と量である。心拍と共に起こるCSFの動きはその「速さ」が特徴的だが、呼吸と共に動くCSFはゆっくりでありながら「移動量」が多い。13 気道閉塞や無呼吸症候群が見られるとくも膜下腔の空間減少が起こり、CSFの動きも阻害されるのではという報告もある。14,15 筆者はこの微細な神経の動きは健全な神経機能の維持には必要なものではと考察する。例えば心拍と共に視神経頭は収縮期に前へと「拍動」し、収縮期に戻る動作を起こす。16 これらの動作は最大で8.7μm、最低で2.9μmとほんの僅かなものだ。しかしこれと共に起こるほんの少しの組織のストレッチは組織合成や血流促進に役立っており、視神経と眼の健康を保っている17 ことを踏まえれば、呼吸が脳全体に対して同様の役割を果たしている可能性も高い。

3. 鼻呼吸と脳活性の話、それから呼吸と共に起こる脳活動の変化についての話もあったんですが、これらは前にもまとめたので省略。
ただ、横隔膜は血液の循環と頭蓋内圧にも影響を及ぼす、という観点から、呼吸と共に脳血流が変化すると頭蓋内圧が変わり、その際にaction potential(活動電位)が発生する…という観点は知らなかったのでメモ。まだまだ確固たるエビデンス出るの待ちっぽいですが、この分野は。呼吸と共に一次運動野の活性も起こるので、健全な呼吸をする→健全な動きが実行できる、というところも繋がってくるかも。

さて、この論文は〆もまた素晴らしい。

"Breath has patterns. Schemes create behavior. Breath is a behavior. Behavior represents the person. Breath reveals the
person (p.5)."1
呼吸にはパターンがある。人間の行動は適切なプランニングがあって生まれるもので、呼吸はその行動のひとつである。行動はヒトそのものを象徴するものであると考えれば、呼吸はヒトの本質を暴くものと言える。

脳の動きについてこれだけ細かい研究が既に出ているとは知りませんでした。この人の文章、癖があるけど癖になる…!これからも注目して追っていきたいauthorです。

1. Bordoni B, Purgol S, Bizzarri A, Modica M, Morabito B. The influence of breathing on the central nervous system. Cureus. 2018;10(6):e2724. doi: 10.7759/cureus.2724.
2. Bordoni B, Zanier E. The continuity of the body: hypothesis of treatment of the five diaphragms. J Altern Complement Med. 2015;21:237-242. doi: 10.1089/acm.2013.0211.
3. Bordoni B. Network of breathing. Multifunctional role of the diaphragm: a review. Adv Respir Med. 2017;85:290-291. doi: 10.5603/ARM.a2017.0047.
4. Bordoni B, Marelli F, Morabito B, Sacconi B, Caiazzo P, Castagna R. Low-back pain and gastroesophageal reflux in patients with COPD: the disease in the breath. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018,13:325-334. doi: 10.2147/COPD.S150401.
5. Bordoni B, Marelli F, Morabito B, Sacconi B. Manual evaluation of the diaphragm muscle. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016;11:1949-1956. doi: 10.2147/COPD.S111634.
6. Bordoni B, Marelli F. Failed back surgery syndrome: review and new hypotheses. J Pain Res. 2016;9:17-22. doi: 10.2147/JPR.S96754.
7. Bordoni B, Marelli F, Bordoni G: A review of analgesic and emotive breathing: a multidisciplinary approach. J Multidiscip Healthc. 2016;9:97-102. doi: 10.2147/JMDH.S101208.
8. Bordoni B, Marelli F, Morabito B, Sacconi B. Depression, anxiety and chronic pain in patients with chronic obstructive pulmonary disease: the influence of breath. Monaldi Arch Chest Dis. 2017;87:811. doi: 10.4081/monaldi.2017.811.
9. Bordoni B, Marelli F, Morabito B, Sacconi B. Depression and anxiety in patients with chronic heart failure. Future Cardiology. 2018;14. doi: 10.2217/fca-2017-0073.
10. Nelson KE, Sergueef N, Lipinski CM, Chapman, Glonek T. Cranial rhythmic impulse related to the Traube-Hering-Mayer oscillation: comparing laser-Doppler flowmetry and palpation. J Am Osteopath Assoc. 2001;101:163-173.
11. Bordoni B, Zanier E. Sutherland's legacy in the new millennium: the osteopathic cranial model and modern osteopathy. Adv Mind Body Med. 2015;29:15-21.
12. Maier SE, Hardy CJ, Jolesz FA. Brain and cerebrospinal fluid motion: real-time quantification with M-mode MR imaging. Radiology. 1994;193:477-483. doi: 10.1148/radiology.193.2.7972766.
13. Takizawa K, Matsumae M, Sunohara S, Yatsushiro S, Kuroda K. Characterization of cardiacand respiratory-driven cerebrospinal fluid motion based on asynchronous phase-contrast magnetic resonance imaging in volunteers. Fluids Barriers CNS. 2017;14:25. doi: 10.1186/s12987-017-0074-1.
14. Wszedybyl-Winklewska M, Wolf J, Swierblewska E, et al. Increased inspiratory resistance affects the dynamic relationship between blood pressure changes and subarachnoid space width oscillations. PLoS One. 2017;12:0179503. doi: 10.1371/journal.pone.0179503.
15. Kalicka R, Mazur K, Wolf J, Frydrychowski AF, Narkiewicz K, Winklewski PJ. Modelling of subarachnoid space width changes in apnoea resulting as a function of blood flow parameters. Microvasc Res. 2017;113:16-21. doi: 10.1016/j.mvr.2017.03.010
16. Singh K, Dion C, Godin AG, et al. Pulsatile movement of the optic nerve head and the peripapillary retina in normal subjects and in glaucoma. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2012;53:7819-7824. doi: 10.1167/iovs.12-9834.
17. An L, Chao J, Johnstone M, Wang RK: Noninvasive imaging of pulsatile movements of the optic nerve head in normal human subjects using phase-sensitive spectral domain optical coherence tomography. Opt Lett. 2013;38:1512-1514. doi: 10.1364/OL.38.001512.

  # by supersy | 2019-02-09 23:30 | Athletic Training

ブルーライトは目に、睡眠に悪いのか?2017年のシステマティックレビューまとめ。

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ブルーライトは目に悪い。

ブルーライトは睡眠を阻害する。

…って聞いたことありません?寝る直前までパソコンやケータイをいじっていると交感神経が刺激されて深い眠りにつけないとか、眼鏡を作るときなんかにブルーライトカットする加工を入れるべきだ(当然お値段も上がる)とか、色々と耳にしますよね。
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でもじゃあ実際に、ブルーライトをカットする眼鏡をかければ視覚パフォーマンス、目の健康、睡眠にポジティブな効果は見られるのでしょうか?これをシステマティックレビューという形で検証しているのが上の論文1 です。出ていることは知っていたんですがまぁそのうちねとスルーしていて、今回ちょっと個人的に良い機会があったのでちゃんと読んでみました。

そもそも、ブルーライトが目に悪いと言われた背景には動物実験や細胞実験で400-500nmの光を当てると網膜が傷つく…"can induce phototoxic retinal damage (p.645)"…と判明した、ということがあるんだそうで。損傷のメカニズムは大きく"Noell damage (長時間の暴露によって光受容体が、次いで網膜色素上皮の細胞破壊が起こる)"と"Ham damage (10秒から2時間ほどの短期、強程度の光への暴露によって起こる)"に分かれており、細胞損傷のピークは440nmと短い波長の光で最も起こりやすいのだとか。健康上の懸念から、こういったタイプの光の使用は控えましょうね、と国際学会などで推奨されていたものの、近年、技術の進歩に伴いスマートフォンやパソコンの画面はより明るいものが好まれるようになり、ブルーライトを多く含むLEDの使用が主流になってきてしまった…という時代的背景があるようです。

ふむふむなるほど。そもそもブルーライトが有害であるという根拠を生体で示したエビデンスは意外にも殆ど・全くないという感じなのかもしれませんね。そうなるとあれだけ悪者扱いされている根拠もあんまりないんじゃないかってことに…。

ともあれ。

「ブルーライトは目に悪い」というイメージが先行していたら、ブルーライトを軽減・遮断し、retinal toxicityを抑える効果も兼ね揃えている眼鏡やコンタクトレンズに需要が出るのも頷けます。実際市場に出回っているブルーライトカットのレンズも、網膜保護に加えて目の疲労軽減や睡眠の質向上も謳っていますしね、健康にいいんだろうなって思わされてしまいます。ただ、上の写真を見てもらって分かるように、ブルーライトカットのレンズは色彩感知が狂うこと(どうしてもレンズの色がアンバー・黄色寄りになります)、暗い環境でモノが見えにくくなり、その結果視覚能力が低下しかねないこと、24時間の周期リズムが乱れるかもしれないことなどがデメリットとして挙げられます。果たしてそれらのデメリットを上回るメリットはあるのか?気になるところです。

このシステマティックレビュー1 ではPRISMAガイドラインに則り、RCTとpseudo-RCTに限定してブルーライトカットレンズを使用した眼鏡の効果について過去の研究を検証しています。ただ、ふるいにかけて残ったのはたった3件。2-4 被験者の数はそれぞれ202、803、364人と決して多くはないですね。

まずはそれぞれの研究の概要要約から。Burkhart & Phelps2の研究では20人の成人被験者に寝る3時間前にブルーライトカット眼鏡もしくはただの黄色がかった何もカットしない眼鏡をかけてもらい、睡眠の質を検証。Leung et al3の研究では18-30歳の若い成人40名と40-55歳の中年成人40名を被験者に、めちゃカット組、少しカット組、カット無し(コントロール)組にランダムに分け、一か月一日最低2時間該当の眼鏡を着用してもらい、目のコントラスト感度テストを計測したそうな。そしてLin et al4は36人の成人被験者を同様にめちゃカット、少しカットとコントロールの3組にランダムに分け、レンズを使用して2時間パソコン作業をしてもらったあとの目の疲労度を計ったんだそうで。…とりあえずここまでだけでも、3つの研究がそれぞれ異なる環境下で異なるアウトカムを計測してたというのはわかりますね。3つの研究のバイアスも…決して低くはないです(↓)。
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結果として分かったのは以下のこと。
- 色の識別力はブルーライトカットレンズを使用してもしなくても変化なし。
- 2時間のコンピューター作業後の目の疲労度は、ブルーライトを少量カット程度では大差なし。大幅カットだと「目が痒くなりにくい」項目のみに効果があり、それ以外の項目はやはり大差なし(↓下記テーブル参照)。
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- 睡眠の質に関しては、一つの研究(被験者80名)3では大差なし、もう一つの研究(被験者20名)2では不眠症の被験者には大幅カットのほうが僅かに睡眠の質が向上したという報告が。
- 3つの研究全てで悪影響や副作用は報告されなかった。

この研究の結論では、高い質の研究が欠如していることと現在の研究でのバイアスの危険性を指摘しながらも、現段階でブルーライトカットレンズの視覚機能、眼精疲労や睡眠の質に対するポジティブな効果は認められなかったとまとめており、より研究の手法を統一した論文が将来発表されることの重要性を説いています。
ふーむ、今のところ、ブルーライトカットのレンズにそれほど大きな効果は見られない、つまり、ブルーライトそのものに視覚能力を下げたり、眼精疲労を促したり、睡眠の質を下げる効果はなかったのかもってことですよね。続報を待ちたいですが、言われているより悪者じゃないってことなんでしょうか?

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ついでだったので、スマートフォンやパソコン、タブレットなどの長時間の使用によって起こると言われているDigital Eye Strain (デジタル眼精疲労)関連の最新論文(2018-2019年)もいくつか(↑)5-7 目を通してみたんですが、
- Digital Eye Strainの定義は"visual disturbance and/or ocular discomfort related to the use of digital devices and resulting from a range of stresses on the ocular system, including glare, defocus, accommodation dysfunction, fixation disparity, dryness, fatigue and discomfort (p.18)7" (長い…)である(コンセンサスなのかは不明、恐らく違うかなって印象)。
- Digital Eye Strainの最も一般的な症状は眼精疲労(医学用語ではeye strainではなくasthenopiaというんだそう、初めて聞いた…)、頭痛、眼の霞みや複視、ドライアイ、首や肩、腰の張りや痛みである。目を細める動作を繰り返すことで眼輪筋が酷使され疲労感や痛みに繋がったり、目の調整能力が落ち、例えばスマートフォン使用後は視界切り替え時の視力調整、遠近の焦点調整が、3-D動画鑑賞後は輻輳能力が、それぞれ著しく低下するという報告があるのだそう。瞳孔拡張も遅れるとのこと。総じて、眼の緊張とリラックスの切り替えが鈍くなるとも表現できる。5-7 スマートフォンとパソコンの使用影響に関しては、下の一覧表が秀逸でしたので載せておきます(それぞれ電話マーク、パソコンマーク参照)。
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(Jaiswal et al6のFigure 1より)

- 有病率は推し量るのが難しいが、2016年の10,000人のアメリカ人を対象にした比較的大規模な研究では調査対象者全体の65%(男性60%、女性69%)が自覚症状ありとのこと。8 むむ、ここは男女差が気になる…。
- 原因には瞬きの回数の減少 (不完全な瞬き、incomplete blinkingが増えるという表現もありました、ふむむー!)、涙の絶対量とtear stabilityの減少 (これは面白い表現!調べても日本語が出てこなかったのだけど、私は目に留まっている涙量の一定性みたいなものだと捉えています)、画面を見ているときの姿勢と、対象物との距離の近さと角度、眼の輻輳の欠如などが考えられる。5-7
*敢えてブルーライトは外してますが言及している論文も当然あります。しかし先の論文の内容も受けて、私は個人的にブルーライト以外のこれらの要素の影響力のほうが強いのではと思っていますが…。
- 20/20/20 Strategy(20分スマートフォンやパソコンを使ったら20フィート先のものを20秒見る)というのがよく文献でも勧められるが、こういった休憩のみではManagementとして不十分かも。ドライアイには目薬の定期的な使用やオメガ3、ブルーベリーエキスなどのサプリメント摂取も効果を示している報告があるのだとか…(特にサプリの検証はまだまだこれからで、決定的ではないみたいだけど)。瞬きの回数を増やす目的で視覚刺激もしくは音声刺激で「瞬きしましょ」とリマインドするアプリ的なものも検証されたらしいのですが、いずれも被験者の気が散ったり(パソコンの作業効率が目に見えて落ちたというわけではないらしいんだけど)、瞬きの回数こそ増えど、症状は全く緩和しなかったりとあまり効果は見られなかったらしい。7

そんなわけで話の大筋からはずれちゃいましたが面白い発見がいっぱいある論文群でした!アジア圏は近視大国で、私も近視と乱視を併発している視覚の問題児の一人ですが、眼をどんどん披露させやすくなっているこの世の中、もう少し我々も時間とエネルギーを使って目の面倒を見てあげてもいいのかもしれませんね。

1. Lawrenson JG, Hull CC, Downie LE. The effect of blue-light blocking spectacle lenses on visual performance, macular health and the sleep-wake cycle: a systematic review of the literature. Ophthalmic Physiol Opt. 2017;37(6):644-654. doi: 10.1111/opo.12406.
2. Burkhart K, Phelps JR. Amber lenses to block blue light and improve sleep: a randomized trial. Chronobiol Int. 2009;26:1602–1612.
3. Leung TW, Li RW, Kee CS. Blue-light filtering spectacle lenses: optical and clinical performances. PLoS ONE. 2017;12:e0169114.
4. Lin JB, Gerratt BW, Bassi CJ, Apte RS. Short-wavelength light-blocking eyeglasses attenuate symptoms of eye fatigue. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2017;58:442–447.
5. Sheppard AL, Wolffsohn JS. Digital eye strain: prevalence, measurement and amelioration. BMJ Open Ophthalmol. 2018;3(1):e000146. doi: 10.1136/bmjophth-2018-000146.
6. Jaiswal S, Asper L, Long J, Lee A, Harrison K, Golebiowski B. Ocular and visual discomfort associated with smartphones, tablets and computers: what we do and do not know [published online January 21, 2019]. Clin Exp Optom. 2019. doi: 10.1111/cxo.12851.
7. Coles-Brennan C, Sulley A, Young G. Management of digital eye strain. Clin Exp Optom. 2019;102(1):18-29. doi: 10.1111/cxo.12798.
8. The Vision Council. Eyes Overexposed: The Digital Device Dilemma. Digital Eye Strain Report 2016.

  # by supersy | 2019-01-30 21:30 | Athletic Training

内反捻挫(Inversion Ankle Sprain)評価を舐めてはいけない: 2016年システマティックレビューとそのメタ解析風発展。

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諸事情あって足関節捻挫関連の論文を読み漁っています。High Ankle Sprainに関しては以前まとめたことがありますが、内反(Inversion)・外反(Eversion)捻挫に関しては意外とエビデンスが存在しないのよねー、あってもCadaver Studyレベルだしねー、なんて思っていたら2016年に発表されたこの論文(↑)1 を発見しました!読んでみます。

このシステマティックレビュー、元々は内反も外反もHigh Ankle Sprainも含んだ3種類の足関節捻挫全ての診断について文献をレビューしようとしていたようなんですが、

Inclusion Criteria
 1. 足関節に関する臨床テストを検証している
 2. 最低でもひとつの比較対象となるスタンダード・テストを用いている
 3. 診断価値を推し量れるデータを含んでいる

Exclusion Criteria
 1. 足関節骨折を取り扱ったもの
 2. Cadaverを使ったもの
 3. 道具を用いた評価法をテストしたもの

…という基準に基づき、PRISMA Guidelineに則って論文を絞っていったら結局Anterior Drawer Test(ADT)とTalar Tilt Test (Inversion - 以下TTT)を検証した5つの論文しか最終分析に残らなかったんですって。つまるところ、結局このレビューで検証できたのはADTとTTTのInversion Ankle Sprain (= lateral ankle sprain)に対しての診断力のみってことですね。うーん…High Ankle Sprainの記事で引用したような論文がひとつも引っ掛からなかったのは少し奇妙な気がするけれど(基準を満たしているものはあるんじゃないかと思うけど)…なんでかな。Figure 1(↓)のフローチャート見ていて別に格段おかしいところがあるとも思わないんですが、敢えて言うならキーワード群の二つ目「"diagnostic accuracy" OR validity OR specificity OR sensitivity」っていうのはどうなのかなぁと思ったり(validityの研究は別に今探してないでしょ)、三つ目は具体的なテスト名出しすぎでは?とは思いますかねぇ、狙い打ちすぎ。あとは論文タイトルのスクリーン(n = 289)からフルアブストラクト(n = 58)に減った理由が抜けてるなぁとか、それぞれの過程でeliminateした論文の内訳が明記されてないなぁとかかなぁ。PRISMA Guidelineに則ってるって書いておいてちょっと雑だよなぁという印象。
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あとは、これは私の不勉強なのかもしれないけど、さらに気になる点がふたつあります。
一つ目は、QUADASについて。QUADAS-2ではなくオリジナルのQUADASを使っているところは個人的に全く問題ないと思うのですが、この論文では"weighted QUADAS"というシステムを採用していて、従来の14点満点ではなくItem 1, 5, 10, 11, 12はそれぞれ3点満点、3と6は2点満点で採点、合計26点満点でそれぞれの論文の質を評価しています。全てのItemが等しく重要でないというのはたしかに理解できる一方で、26点法のほうが14点よりも質を推し量る手法として優れているという確たるコンセンサスがあるわけではないと思うのですが、そこらへんのJustificationはどうなってるんでしょうか。私、このweightedを採用してる論文今までで2件くらいしか見たことないかも。あんまりこの論文ではそこらへんの背景が十分論じられていなかったので…。
それから、各論文からデータを集めて感度・特異度を計算するために2x2テーブルを作成する際、「0の値は0.5に変換してそれぞれのセルに書き入れた」と明記されています。確かに0の値があると陰性尤度比等が出ない(分母がゼロになってしまって)場合があるんですが、この手法はそういったケース(数値計算不可)を避けるために採用したんだそうで。「これはよく使われるやり方だし、こういう小さい値に置き換えても総合結果にはほとんど影響は出ない("has minimal effect on the overall result (p.2)"」というけど…よく使われてる?私、初めて見ました…。ただ、後述しますが私が個別にこれら5つの論文全ての統計を洗い直した際、どの値も0になることは無かったので、この記述は一応こういうルールを設けたと書いてあるだけで、実際に施行する機会はなかったのではとも思いますけどね。それにしたって勝手に結果を変えるって、許されるのかな?果たしてどれだけの他の研究で使われている "common practice"なんでしょう。
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この論文はあわよくばメタ解析したかったけどデータがheterogeneityだったから無理、ということでシステマティックレビューに留まっていますが、結果が上のテーブル(↑)です。数字の形式が揃っておらず(小数点何桁まで表示、や、一に満たない数字を0.xxと記載するのか、.xxとするのかなど)、スペーシングエラーもあり、更にはvan Dijk et al2の論文に関しては…私が読んだ理解とは、比較試験もデータも違うんじゃ、って思うんですけどね…そもそもこの研究にはADTの結果が"uncertain"だった人が7人いたという記述があるので、総患者数が160人にならないはずなんですよ。

別にこの論文が全てダメだというつもりはないですけど、こういうところでボロが出始めるとついついジャーナルそのものの質を疑いたくなってしまいます。今回の論文が掲載されたジャーナル…European Journal of Physiotherapyというんですけど、これは以前のAdvances in Physiotherapy (1999-2012)から名前を変えて、2013年にできたばかりのジャーナルらしくてですね。Impact Factorを調べてみたんですけどどうやらまだ存在しないそうなんです。前身のジャーナルのそれは0.44くらいだったというから…まぁ、そういうことなのかなぁ。
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これは各論文を自分で読み直してまとめたテーブルです。QUADASはunweightedとweightedの両方表記し、あとはまぁないよりはいいだろうとメタ解析もしてみました。印象としては比較的質の高い研究が集まっているなぁと感じるのと、被験者もそれなりに多いものが多いと言ってもいいのではと思います。比較対象となったテストはArthrography(足関節捻挫診断には「かなり有効」というのが共通見解のよう)が最も多く、Croy et al6のUltrasoundというのが精度がどうなのかな?というあたりが気になりますね、実際にこの研究だけ特異度が異様に低いし、weighted版のQUADASスコアも一番低い。

無理矢理ではありますが全てを合計させた値(pooled)をそれぞれ見てみると、ADTの感度が47.25 (43.25-51.27)、特異度が80.92 (76.80-84.59)、陽性尤度比が2.48 (2.00-3.07)、陰性尤度比が0.65 (0.60-0.71)になりますね。Croy et al6の研究を除外して計算し直すと感度45.79 (41.73-49.89)、特異度85.48 (81.49-88.90)、陽性尤度比3.15 (2.43-4.10)、陰性尤度比0.63 (0.58-0.69)。どちらにしても「ADTの特異度は高いので陽性の場合は足関節の捻挫、引いては前距腓靭帯の損傷を示唆しているけど、陰性の場合は靭帯損傷を除外できるわけではない」ということが言えるかなと。

TTTの合計値も同様ですね。たったふたつの研究の合計ではありますけど、感度22.49 (18.09-27.39)、特異度92.67 (89.37-95.20)、陽性尤度比3.07 (2.00-4.70)、陰性尤度比0.84 (0.78-0.89)という結果に。こちらも「感度は低い一方で、特異度は高い。陽性結果は踵腓靭帯損傷の発見に有効かもしれないが、尤度比はADTほど優秀とは言い難い」という感じでしょうか。本システマティックレビューの結論も当然というかなんというか、同じようにまとめられています。

まとめてしまうと「内反捻挫診断によく使われるAnterior Drawer TestもTalar Tilt Testも、確定にはなかなか有効だけれど、除外には使えない」というわけですね。元々これらのテストは健側と比較して不安定であれば陽性と判断されることが多いから、Grade I程度の捻挫では明らかな不安定性(= 陽性)が出ないことも考慮すれば、「陽性のほうが確定的」なのは確かにその通りなのかもしれません。実際にこの論文でも「問題点」として挙げられている項目に、テストのやり方の多様性、陽性判定の定義の多様性が挙げられていましたし(ADTは"dimple sign"があれば陽性とする研究や、健側より動けば陽性などあったそうで…個人的にはlaxity, abnormal endfeel, 痛みの併用をするのですが…これはあまり一般的ではないのか?)、これらのテストはそもそもvalidなのか?具体的にどの組織を正確にisolateしているのか?という疑問符も述べられていて、ちょっと衝撃でした、エッ、そこから確立されていないの?一般的にADTは前距腓靭帯、TTTは踵腓靭帯を評価していると仮説だてられて("clinically accepted")はいますが、構造的に底屈位で前距腓靭帯が一番伸長位に来るからADTは底屈位で行われるべきたとか、逆にTTTは踵腓靭帯のみをターゲットとしたいなら前距腓は緩んでいるほうが好ましいから少し背屈位でやるべきだろうとか、そういうのはあくまでも解剖学的推測でしかないそうです。画像診断がこれだけ発達したんだから、超音波を使った研究などでvalidation studyできないのかなぁ。

そんなわけで内反捻挫診断はADT/LLTが陽性であれば確定が、陰性であればその他の診断要素…問診はもちろん、腫れがsinus tarsiにあるか、変色は見られるか、ATF/CFに圧痛はあるか、pop音は聞こえたか、荷重はできるのかなどもしっかり考慮した上で慎重に捻挫を除外できるか決断したほうが賢明かなと思います。くどいんですが、この手のLigamentous Stress Testは基本Grade I = no laxity, normal (firm) endfeel, but painfulだと思っていて、Grade II = some laxity, abnormal (softer) endfeel, and painful、Grade III = significant laxity, abnormal empty endfeel, may or maynot painfulという風に変化すると私は頭で整理してます。Laxityだけでは足関節捻挫の7割超と言われる7 Grade Iの捻挫を見逃してしまうわけですから、やっぱり実践的な線引きじゃないと思うんですよね。ま、こういうのも含めてもうちょっと統一していかないといけないってことなんでしょう。とりあえず、とても勉強になりました!

1. Schneiders A, Karas S. The accuracy of clinical tests in diagnosing ankle ligament injury. Eur J Physiother. 2016;18(4):245-253. doi:10.1080/21679169.2016.1213880.
2. van Dijk CN, Lim LS, Bossuyt PM, Marti RK. Physical examination is sufficient for the diagnosis of sprained ankles. J Bone Joint Surg Br. 1996;78(6):958-962
3. Raatikainen T, Putkonen M, Puranen J. Arthrography, clinical examination, and stress radiograph in the diagnosis of acute injury to the lateral ligaments of the ankle. Am J Sports Med. 1992;20(1):2-6.
4. Prins JG. Diagnosis and treatment of injury to the lateral ligament of the ankle. A comparative clinical study. Acta Chir Scand Suppl. 1978;486:3-149.
5. Funder V, Jørgensen JP, Andersen A, Andersen SB, Lindholmer E, Niedermann B, Vuust M. Ruptures of the lateral ligaments of the ankle. Clinical diagnosis. Acta Orthop Scand. 1982;53(6):997-1000.
6. Croy T, Koppenhaver S, Saliba S, Hertel J. Anterior talocrural joint laxity: diagnostic accuracy of the anterior drawer test of the ankle. J Orthop Sports Phys Ther. 2013;43(12):911-919. doi: 10.2519/jospt.2013.4679.
7. Fallat L, Grimm DJ, Saracco JA. Sprained ankle syndrome: prevalence and analysis of 639 acute injuries. J Foot Ankle Surg. 1998;37(4):280-285.

  # by supersy | 2019-01-24 01:33 | Athletic Training

『Lever Sign Test』最新システマティックレビュー・メタ解析と、独自のメタ解析風まとめUpdate。

Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその5。(2018-01-22)
Lelli Test、改め『Lever Sign Test』診断力のシステマティックレビュー・メタ分析風まとめ。(2018-01-23)

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Lever Signの最新システマティックレビュー・メタ解析1出てました!去年の10月発表になっていたようです、見逃してたぜー、わーわー。
これ、約一年前に私が勝手にメタ解析してみてまとめたトピックで(2018年1月23日、Lelli Test、改め『Lever Sign Test』診断力のシステマティックレビュー・メタ分析風まとめ。)、一年前の時点ではLever Signに関わる全ての論文、全7件を読んでいたんじゃないかという自負があったのですが、こういうメタ解析論文が出ると「答え合わせ」ができるので助かります。このシステマティックレビュー・メタ解析論文では8つの論文が分析されていたので、ひとつ読み逃しがあったことが判明しました。それがこちら2
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オランダの研究チームが2018年3月に発表したんですね。これも前回のまとめ段階(2018年1月)で未発表だったのか、そりゃ読んでないはずだわ。せっかくだからこっちからまとめてみようと思います。
この研究では1) 医師とPTでテストを行った場合のinter-rater reliabilityの検証と、2) Arthroscopy(関節内視鏡、診断ゴールドスタンダート)と比較した場合のLever Signの診断力と、3) 通常ACL断裂診断の際に使われるテストにLever Signを加えた場合の付加価値はどれほどあるのか、の3点を検証しています。ちなみにArthroscopyが「陽性(= ACL断裂あり)」と判断される基準としてはその線維の50%以上が損傷しているかどうかだったそうです。

被験者となったのは膝に怪我を受傷して整形外科・外傷外科を受診した16歳以上の患者94人(男57人、女37人、平均34±15歳)。膝のロッキング症状やACL損傷(部分・完全断裂のどちらでも)の既往歴がある患者は除外されたようなので、解釈の際には注意する必要があるかも。受傷から3週間未満の急性期の患者が26人、亜急性期(3-11週目)が31人、慢性期が37人。最終的にACL断裂ありと診断されたのは48/94(51.1%、言い換えると有病率は51.5%とも表現できます)で、部分断裂はそのうちの22.9%(11/48)、完全断裂は77.1%(37/48)。

それぞれの患者は医師によってLever Sign→Anterior Drawer Test→Lachman Test→Pivot-Shift Testの順にテストされ、可能な患者のみ一週間以内にPTによって再評価された、と(当然医師の診断を知らない、blindedの状態で)。可能な場合は、というのが緩いですし(全員やるべきでしたよね)、一週間以内に、という時差も気になります。特に急性期であれば一週間立てば腫れが引き、痛みもマシになってリラックスしやすくなってテストの正確性が変わる可能性も十分に考えられるし、あまりに「アソビ期間」としては長かったのでは。ここらへん、もう少しコントロールされていれば臨床的有意性が上がったかもしれませんね。
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結果です。まずはInter-rater Reliabilityから(↑)。これ、かなりびっくりです。まさかの(一般的に一番難しいと言われる)Pivot-Shift Testが最も信頼性が高く、Kappa valueが0.84(ほぼ完璧)。次いでLever Signが0.82(ほぼ完璧)、Anterior Drawerが0.80(非常に優秀)、Lachmanが0.77(非常に優秀)。全てのテストに高い信頼性が出たことは確かにそうなんですが、意外なテストが一位になったもんだなぁと…。今回のテーマであるLever Signも相当優秀ですけど円、十分すぎる信頼性があると言えるかと思います(くどいですが、全員がテストされたわけではないこと…たった94名中35-36人と、医師の評価からPTの評価まで日にちが空きすぎている恐れがあることから、単純に解釈はできないですけど)。

次が各テストの診断力です。明記されてはいませんが、医師が行ったバージョンのみを記録していると推測されます。少し問題なのが、それぞれのテストが94人全ての患者に施されたわけではないということ。本文の描写によると、患者のmuscle guardingがあり、実施できなかったケースもそれぞれのテストで1~13人いたそうなんです。具体的には、Anterior Drawer Testは91/94人(96.8%)、Lachman Testは93/94人(98.9%)、Pivot-Shift Testは81/94人(86.2%)でLever Signは87/94人(92.6%)にしか実施しなかった/できなかったと。これも考慮に入れて結果を解釈したいですよね(どんなに診断力があっても多くの患者に使えないテストじゃ仕方がありませんから)。
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論文のTable 4を元に4x4診断テーブルを作り直し、そこから全てのテストの感度、特異度、陽性・陰性尤度比とその95%CIを導き出しなおしてみました(本文には感度・特異度しか含まれていないばかりか、95%CIがなかったので)。今までの報告と少し食い違う、Lever Signは最も優秀な確定力を叩きだした一方で、除外力は最も低いという結果になっています(↑)。うーん、本文を何度も読み返してみたのですが、どうしてここまで低い感度が出たのか、その原因になりそうな要素にどうしても思い当たるようなことがないのです。可能性としてはこのテストを実施した医師がこのテストをどれほど練習したのかが怪しいというあたりでしょうか…。今回患者の診断を担当した医師、PT共に臨床経験やこのテストをどのように学んだのかに関して全く言及がなかったので…。

では、他のテストにLever Signを追加するその付加価値はどれほどあるのか?
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Table 5(↑)はClusterに書かれているテストを全て行い、「一つでも陽性なら陽性」と判断した場合の診断力を、Table 6はClusterに挙げられているテストを全て行い、「全て陽性でなければ陰性」と判断した場合の診断力を示しています。Table 5ではCluster 1→2でLever Signが追加されており、Table 6ではCluster 2→3でLever Signが加えられています。Table 5ではLever Signを追加することで特異度を損なうことなく感度が向上している様子が伺えるので、「やって損はないじゃん」という結論に(感度が2%上がることが臨床的にどれほど意味があるのかは各クリニシャンの判断に任せますが)、Table 6では感度を大いに(18%)犠牲にしながら特異度を2%上げるという、意味があるんだかないんだか分からない効果が観察できます。まぁどうせここまで3つのテストを行って全て陽性だったのだから、Lever Signもついでにやって完璧に確定してしまいたいという気持ちは…現場ではあるでしょうし否定はしませんが、そもそも私は現場でPivot-Shift Testを使うことはまずないのでこの情報(Table 5 & 6共に)がそもそも臨床的意味を持たないです…。せっかく出してもらってありがたかったんですが…。どうせならこの4つのテストを行って、「一つでも陽性なら陽性と判断した場合」、「2つ以上で」、「3つ以上で」、「4つ全てで」と全ての場合をそれぞれ分けて分析したり、LachmanとLever Signを併用した場合、とか、もっと実用的なコンビネーションを検証してほしかったなーと思ってしまいます。

この論文の結論としては、
- Lever Signは他のテストと同様、信頼性が高い
- 特異度は非常に高いが、感度はとても低い(Lachmanが最も正確で、確定力、除外力共に優秀)
- このテストを他のテストに追加する付加価値はほとんどなく、特に陰性結果はそれだけではACL損傷を除外できるものではないことを考慮して解釈すべし
…ということだったようです。ふーむ。

んで。やっと冒頭のシステマティックレビュー・メタ解析論文1 に話が戻ってきます。
2017年までに発表された7件の論文3-9に加えて今回の2018年のもの2を加えた8件の論文をレビューしています。PRISMAのガイドラインには則っているんですが、Inclusion/Exclusion Criteriaがそれぞれ:

Inclusion:
1) ACL損傷疑いの患者が被験者である
2) その診断法としてLever Signの有効性を検証している
3) "Acceptable"な比較試験を用いている
4) 2x2テーブルを作成するに足る情報を提供している
5) 英語かフランス語で書かれている

Exclusion:
1) 膝以外の障害を検証している
2) Lever Signを検証していない
3) 詳細の報告が欠けている
4) 献体を用いている
5) 特殊な機械、問診表やパフォーマンステストを用いている
6) 被験者が乳幼児を含む

…と書かれています。個人的にはこのリスト、少し違和感ありです。Inclusion #2とExclusion #2や、Inclusion #4とExclusion #3は結局「全く同じことを逆の視点から書いているだけ」なので、なにこれ、リストを長く見せかけようとしているだけ?と勘繰りたくなるし(普通はどちらか片方言及すれば十分)、"Acceptable"な比較試験はあまりに定義が曖昧だし、「特殊な機械や問診票、パフォーマンステスト」を使っていたらLever Signの検証に影響が及ぼされるわけでもないし、被験者が「乳幼児(= "infants/toddlers")」っていう表現はあんまりでは?16歳以上とか、具体的に年齢制限を設ければよかったのでは?と思ったりします。
個人的には、診断の検証論文で重要なのはProspectiveであること、つまり、膝が痛い、でも具体的に何の怪我なのかまだ分からない、という条件の被験者にまず検証したいテストを使い、それからあまり間を空けずに比較対象となるテスト(この場合はGold StandardであるArthroscopyと限定したほうがいいでしょ)を行っているという順序とblindingは重要なのであって、先にMRIなどの画像診断が撮られていたりして、既にACL損傷があることが分かった状態でテストをしていない(=そういう研究は除外してます)、ということを条件に設けるべきだと思うんです。ここの言及がないのはやっぱり、気になるなー。まぁあんまり絞り過ぎるとまだまだ論文はできってない分野だから、該当論文が少なくなり過ぎちゃう、っていう懸念はわかるんだけど。

あと、QUADAS-2ではなくQUADAS(オリジナルのほう)を使って各論文の質を推し量ってるんですが、だったら14点満点中何点だったのかを数字で示せばいいのに、「10以上はhigh quality/low risk of bias」「10未満はlow quality/high risk of bias」という二択にまとめられており、その理由は「前にもそういう風にまとめられてた論文幾つかあったし他に方法があるわけでもないから」というやけに消極的なものになっています。QUADASがどんなものかを知っている読み手であれば、10点あればそこそこの質であるってことは常識として理解しているでしょうし、逆に質が低いとひとくくりにしてもQUADASが9点なのか3点なのかでは大違いだし、どうして素直に点数そのものを表記しなかったのか私は大いに疑問が残ります。治療系の論文だってPEDroスコアだってRaw Scoreを表記するでしょ?

そんなわけで色々気になるところはありますが、結果です。下がTable 1、それぞれの研究被験者のDemographics。良質な研究はDececi et al3とMassey et al6のふたつだけってことになってますね、やっぱりQUADASスコアそのものを見たかったけどー。
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こちらがTable 2。比較試験はなんだったのか、試験者はどんな人で、どんな状況下で評価されたのかが示されています。ある場合は信頼性も。
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…で、このTable 3がメタ解析部分ですね。比較試験別にArthroscopy vs MRIと、MRIの中でも「良質の研究のみを比べたもの」と、「全ての研究をまとめたもの」の複数に分けられています。数字はかなりばらつきがある印象。特に感度と尤度比はバラバラですね。特異度だけが一貫して良いイメージ。
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これは面白いビジュアルプレゼンテーション!左がArthroscopy、中央がMRI(良質な研究2つのみ)、右がMRI(3つ全て)の合計値から出した尤度比を使ったpre- and post-test probabilityのシフトです。当然、それぞれの研究を合わせたprevalence(有病率)がpre-test probabilityとして使われています。まぁでもやっぱり高いなー、有病率。5割から7割って!サンプルバイアスは相当あり、と言わざるをえませんね。スポーツの現場で膝が痛い、という設定に絞って同様の研究を行ったらここまで有病率高いことはないと思うので、あくまでも参考までに、なんですけど…まぁでもこのテストが陽性だったら確定はかなり自信を持ってできる、ということは言えるでしょうか。

結論としては「そこそこチカラあるかもだけど研究の質がマチマチだし、数も十分にないのでまだよくわかりません」という感じでした。ふむー。私はこのメタ解析にあまり納得がいかなかったので(いや、面白い点もあるんですけど私だったらこうするなー、という点もいくつか思い浮かんでしまったので)、以前まとめたシステマティックレビュー・メタ解析「風」のデータに今回のLichtenberg et al2のものを足したもの(一番下)を作ってみました。下はシステマティックレビュー「風」まとめ。
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こちらがメタ解析です。私の解析基準は「Arthroscopyを使っている」兼「診断結果がわからない状態でテストを行っている」且つ「麻酔下でない」データに限ったもの。こう改めてみるとMulligan et al9とLichtenberg et al2の研究の感度がやっぱり異様に低いんだよなー。原因はなんだろう?と思うけれど、総合計では感度も決して悪くないので、やはり総合的には私はLever Signは(何らかの状況でLachmanが使えなかったら)充分有効なalternativeになりうる、クリニシャンならツールとして持っておいて損はないテストだと思っています。どちらかというと、除外力より確定力に優れているという感じかな。
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そんなわけで、最新メタ解析もいいんですが、私は自分でまとめたこのメタ解析「風」データのほうが眺めていて有意義かなと思ってます(総被験者も約500人とだいぶ増えてきましたし)。ただ、論文にもあったようにまだまだ臨床研究の被験者やセッティングにバラツキがあり、これからもっとclinically applicableな状況でテストの診断力が検証されていく(具体的には受傷から3日以内の超・急性の16-30歳くらいの被験者で、半月板や他の靭帯損傷患者も含む、比較試験はarthroscopy、非・麻酔科の環境で…)といいなぁと思っています。続報を待つことにします!

1. Reiman MP, Reiman CK1, Décary S.Accuracy of the lever sign to diagnose anterior cruciate ligament tear: a systematic review with meta-analysis. Int J Sports Phys Ther. 2018;13(5):774-788.
2. Lichtenberg MC, Koster CH, Teunissen LPJ, et al. Does the lever sign test have added value for diagnosing anterior cruciate ligament ruptures? Orthop J Sports Med. 2018;6(3):2325967118759631. doi: 10.1177/2325967118759631.
3. Deveci A, Cankaya D, Yilmaz S, Özdemir G, Arslantaş E, Bozkurt M. The arthroscopical and radiological corelation of lever sign test for the diagnosis of anterior cruciate ligament rupture. Springerplus. 2015;4:830. doi: 10.1186/s40064-015-1628-9.
4. Thapa SS, Lamichhane AP, Mahara DP. Accuracy of Lelli test for anterior cruciate ligament tear. J Inst Med. 2015;37(2):91-94.
5. Lelli A, Di Turi RP, Spenciner DB, Dòmini M. The "lever sign": a new clinical test for the diagnosis of anterior cruciate ligament rupture. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2016;24(9):2794-2797. doi: 10.1007/s00167-014-3490-7.
6. Massey P, Harris J, Winston LA, Philip N, Delgado DA, McCulloch PC. Critical analysis of the lever test for diagnosis of anterior cruciate ligament insufficiency. Arthroscopy. 2017;33(8):1560-1566. doi:10.1016/j.arthro.2017.03.007.
7. Chong AC1,, Whitetree C, Priddy MC, Zimmerman PR, Haeder PR, Prohaska DJ. Evaluating different clinical diagnosis of anterior cruciate ligament ruptures in providers with different training backgrounds. Iowa Orthop J. 2017;37:71-79.
8. Jarbo KA, Hartigan DE, Scott KL, Patel KA, Chhabra A. Accuracy of the lever sign test in the diagnosis of anterior cruciate ligament injuries. Orthop J Sports Med. 2017;5(10):2325967117729809. doi: 10.1177/2325967117729809.
9. Mulligan EP, Anderson A, Watson S, Dimeff RJ. The diagnostic accuracy of the lever sign for detecting anterior cruciate ligament injury. Int J Sports Phys Ther. 2017;12(7):1057-1067.

  # by supersy | 2019-01-10 22:00 | Athletic Training

NATA最新Position Statement、「関節脱臼時の適切な初期対応」を読み解く。

わわっ、最新NATA Position Statement1 が出ました!「関節脱臼の初期対応」…これは初めて書かれるトピックです。読まないわけにはいかないでしょ!ということで、早速超個人的まとめです。興味がある方は全文キチンとご自分で読まれることをお勧めします。
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まず、冒頭に大前提として「各ATは各々が住む州の法律に則り、また、監督役である医師や、雇用主である組織の打ち出したプロトコルを理解し、特定の脱臼を整復する自らの教育的背景や経験をわきまえた行動を取ること」と強調して述べつつ、「脱臼した関節を修復するかどうか決める際、考慮する点はいくつかある」と説明し、それらには、
- 脱臼をしてからどれほどの時間が経っているか(時間が経てば経つほど整復は難しくなる)
- 整復そのものの難易度(i.e. 肩 vs 股関節)
- 患者の年齢と総合的健康状態
- 付随する骨折の有無
…などが挙げられています。中でも重要なのは神経血管合併症があるか、そしてこれが反復性脱臼(recurrent dislocations)であるかどうかという二つの点であり、当然ながら整復しようとして新たな外傷を生じさせてしまうのは好ましくない、全ての状況でonsite(現場)の整復が行われるべきではない、と明言されている点は肝に銘じておきたいですね。まずは状況を冷静に判断せよと。やらない勇気もあるぞと。
*ちなみに今回のタイトルにappendicularとあるように、このPosition Statementで言及されている「脱臼」は非脊柱のものに限ります。

このPosition Statementには全部で27項目の推奨事項が含まれています。今回も各項目の推奨度がStrength of Recommendation(SOR) A, B, Cに分類されているので、いつも通り、A = what we must do、B = what we should do、C = what we can doと勝手に解釈して独断と偏見で私が重要だと思う個所のみ要約しながらまとめていきたいと思います。

●Legal Considerations (法律的側面)
- 州の法律、職場の規則をATと監督役の医師が一緒になってまずはしっかり復習すべし。もし州の法令や職場の規則がATの脱臼整復する能力を制限するようなものでなかった場合、医師が責任者となり、ATがどんな状況であれば脱臼整復を試みるべきか、どんなテクニックが用いられるべきか、細かくプロトコルを書き出すべきである(推奨度・C)。

●Technique and Skill Considerations (テクニックと技術的側面)
- 整復を試みる前に、患者と必要があれば保護者(i.e. 患者が未成年)の同意を得ること。医師は前もって適切な整復法についてATを教育し、指導、練習させるべきである(推奨度・C)。

●General Patient Management Considerations (患者のマネジメントに関する側面)
- 整復を行う前に患者の既往歴(i.e. 過去の脱臼・亜脱臼歴、手術歴)、現在の症状(i.e. 痺れ、頸部痛、意識レベル)などまずはきちんと評価を下し、神経系、血管系の合併症の有無も確認すること。骨折の疑いがある場合と、患者の骨端軟骨板(成長線、epiphyseal plates)がまだ閉鎖してない場合は整復は行うべきではない("should not be undertaken..")。一度整復を試みてそれが上手くいかなかった場合は、複数回トライするよりも固定してreferすべし(推奨度・C)。
- 整復が成功し完了した場合、神経血管の再評価を行い、その評価結果をきちんと記録すること。整復後は患部を固定し、痛みとスパズムに対する治療と更なる評価・治療のためにreferするべきである(推奨度・C)。

●Joint-Specific Recommendations (関節別推奨事項)
- 肩甲上腕関節: 前方脱臼の診断が明らかな場合は初回・反復性に関わらず整復を試みて良い(当然医師との事前の意志疎通があってのこと)。しかし、骨折疑いや後方脱臼の場合は整復は行われるべきではないし、前方でも整復が失敗した場合も然り(推奨度・C)。
- 股関節: これも「整復可能」で、できれば医師と2名で行うのが理想的だが、必ずしも2人でやらなけれなばいけないというわけでもない。骨折と神経血管合併症のリスクが高いので慎重に評価すること(推奨度・C)。
- 膝(脛骨大腿)関節: こちらも「整復可能」だが、神経血管合併症に注意。複数の靭帯を同時に損傷している患者を診る場合、「膝が脱臼して自然整復した怪我」として同様に扱うこと。Immediate referralが好ましい(推奨度・C)。
- 膝蓋大腿関節: 「整復可能」(推奨度・C)。
- 腕尺関節と近位橈尺関節: 肘の脱臼整復はするべきではない。これは典型的肘脱臼であれば骨折、神経血管合併症を伴うからである。もし救急隊員の到着が何らかの理由で大幅に遅れる場合、医師の指導のもとATによる整復が行われてもいい場合もあるが、当然骨折・神経血管合併症を示唆する症状が無い場合に限る(推奨度・C)。
- MCP関節: 「整復可能」だが、骨折及び軟部組織の干渉(interpose)リスクは高いため慎重に行うべし(推奨度・C)。
- IP関節(手): 「整復可能」。骨折や軟部組織の干渉がある場合にはまずはレントゲンなど画像診断をする必要あり(推奨度・C)。
- MTP関節: 「整復可能」だが、骨折及び軟部組織の干渉リスクは高いため慎重に行うべし(推奨度・C)。
- IP関節(足): 「整復可能」(推奨度・C)。
*少し話がズレますが、以前に膝の脱臼についてはまとめたこともあります

●Special Population Consideration (特異的考慮点)
- シニア・アスリートは骨折のリスクが高まっているため、整復は行われるべきではない。患者が子供の場合、膝蓋大腿関節脱臼のみは整復を行ってもいいが、それ以外の部位は骨端軟骨板の影響も考えると整復はすべきではないし、これは糖尿病患者と癲癇発作によって脱臼が起こった場合も同様である(推奨度・C)。

その他考慮すべき点
お気づきでしょうか、今回のPosition Statementはその全てが推奨度・Cという特殊なものでしたね。それでも私はこのPosition Statementは歴史を変えうる、非常に画期的で革新的なドキュメントだと感じています。なんて言ったって、条件が整った環境下であるとはいえ、"AT can reduce a dislocation.."って明記されたんですからね!"ATs are qualified to effectively manage many musculoskeletal injuries, including joint dislocations (p.4)"とも明言されています。わくわくします。これを待っていたかのように米国AT教育でも脱臼整復がもっともっと積極的に教えらえるようになるんですから、ああ、職域がどんどん広がっていくのを最前線で見せてもらっている気分です。今回のPosition Statementを書くことに尽力してくださった大先輩方に改めて尊敬の意を示したいと思います。

これだけのリスクやアグレッシブさを伴っても脱臼の現地整復を推奨したかった背景にはimmediate reductionに伴う多くのメリットがあります。筋スパズム、腫脹が本格的に形成される前に整復が行われたほうが単純に簡単だし、軟部組織の損傷も最小限に抑えられるかもしれないし、痛みも軽減されるし、血流も復元され、軟骨部や皮膚の二次的細胞死亡も防げるかもしれません。当然リスクもあるわけですが、スポーツ現場に最も近いところにいるATという医療従事者が脱臼の整復ができないままそれに甘んじるなんて、妥当性もへったくれもないじゃないですか。

個人的に気になるのは、「interior GH dislocationは?(言及すらなかった)」ということと、「癲癇の発作によって起こる筋肉の収縮で、脱臼が起こることがあるなんて!」という驚きです(知らなかった!)。それから、このドキュメントに米国AT業界がどう反応するのかということ。医師界もね。願わくばこのPosition Statementを通じて一人でも多くのATと医師が連携を深め、それを患者への還元に繋げられますように…。

1. Rozzi SL, Anderson JM, Doberstein ST, Godek JJ, Hartsock LA, McFarland EG. National athletic trainers' association position statement: immediate management of appendicular joint dislocations[published online on January 4, 2019]. J Athl Train. 2019;53(12). doi: 10.4085/1062-6050-97-12.

  # by supersy | 2019-01-07 23:15 | Athletic Training

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