Sports Medicine Licensure Clarity Act of 2017の可決はどんな意味を持つのか?アメリカのATを取り巻く法律のお話。

アメリカ上院(Senate)で昨日、S.808 Sports Medicine Licensure Clarity Act of 2017という議案(billl)が可決されました。
この議案の背景にはアメリカ特有の問題が隠れています。

アメリカでアスレティックトレーナー(AT)という呼称を背負って活動するためには、テキサス州とカリフォルニア州を除く48州では以下のステップを踏む必要があります。1) CAATE認定プログラムを修了し、BOC試験を受けて合格して"Certified Athletic Trainer"になる(=ATC資格を取得する。これは厳密には国家資格とは違うのですが、所謂 "全米"レベルのAT認定になります); 2) その上で、各州の規則に基づき、ライセンス(License)、認定(Certification)、もしくは登録(Registration)を取得し、「州レベルで合法的に活動するAT」としての条件を満たす。このStep 1と2は独立しており、「全米レベルの試験に合格すれば自動的に州レベルのライセンスももらえる」なんて甘いことはありません(そうだったらどんなに楽か!)。ATとして活動を希望する個人が責任をもって個別に手続きを踏み、全米レベル(Step 1)と、州レベル(Step 2)でのそれぞれの活動条件を満たす必要があるわけです。

*ちなみに、アメリカ50州のうち、ライセンス制度を採用している州がほとんど(44/50州)で、4州(オレゴン、コロラド、ウェストバージニア、ハワイ)が登録制、1州(サウスカロライナ)が認定制度を取っています(↓)。カリフォルニア州には現在ATを規制する法律が存在せず、どんな教育を受けた人でもどんな資格を持った人でも(逆に言うとどんな教育を受けていなくても資格を持っていなくても)自らを「アスレティックトレーナー」と合法的に名乗って良い無法地帯になっています。
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Athletic Training State Regulatory Boardsウェブページを元に作成(2018年9月現在)

ちなみにちなみに。ほとんどの州では全米認定(前述のStep 1)さえあれば州レベルでの活動条件を満たす(Step 2)のは難しいことではありません。私はフロリダ州とテキサス州で活動経験がありますが、基本的にこれらの州のライセンス取得のプロセスは似通っており、1) 全米認定ATである証拠記録提出(大学の卒業証書なども含む場合あり); 2) CPR/AED認定の証拠記録提出; 3) 州独自の法律などを理解している確認のため、数時間分のオンライン講習を受講・修了する(別途受講料有り)…などをして、登録手数料(これも州によりますが大体$200くらいではないかと)を支払えば終了、晴れてLicensed Athletic Trainerになれます(=LAT取得)。先に述べたように決して難しいことではないのですが、役所の書類手続きには2週間から一か月以上かかることもあり、州をまたいで転職・引っ越しするとこの手間(と費用)がなかなかバカにならないのが現状です。

ちなみにちなみにちなみに。先ほど『テキサス州とカリフォルニア州を除く48州では』と書きましたが、カリフォルニア州にはAT規制の法律が全く存在しない…では、テキサス州では?と疑問に思う方もいるかもしれません。テキサスは、言ってしまえばカリフォルニアと真逆で「意識高すぎて全米レベルでいち早くATという仕事の必要性を感じ、職業として確立した」州。全米認定制度ができる前にテキサス州ライセンス試験というものがあったため、2018年現在でも「州レベルのライセンス試験に合格し、LATさえ取得していれば、ATC未取得でもATとして活動することを認める」という決まりがあるのです。州レベルのライセンスが全米レベルの認定よりも事実上チカラがある、とでも言いましょうか。

これには非常に大きな問題が付随しています。2018年現在アメリカで全米AT認定試験の受験資格を得ようと思ったら、CAATE認定教育プログラムの修了が絶対条件。高い教育水準を満たしたプログラムに選ばれて入り(もちろん競争率は低くありません)、それを卒業するということは並々ならぬ努力を要します。一方で、テキサス州ライセンス教育プログラムはそれを管理・管轄する教育団体が存在しないので、教育水準は驚くほど低く、「この程度の学習しかしていなくてATライセンス取れちゃうの?」と驚くくらいCAATE認定のそれと大きくギャップがあります。CAATEの教育水準は改定の度に高くなってきていますから、当然ギャップもそれに比例して広がる一方です。テキサスで活動するATC/LAT取得者と、LATのみ取得者のプロ意識、知識、技術の違いは…ここで表現するのは難しいです。実際に臨床の現場で実感する場面が多々、ありました、とだけ書いておきます。


さて、話がものすごく逸れました。本題に戻ります。


今回の議案Sports Medicine Licensure Clarity Act of 2017は、ざっくり言うと「自分の住む州でライセンス取得をきちんと済ませているATは、州をまたいだ遠征などで他州で活動する際にも法的に守られていることにしましょうよ」という内容です。

そうなんです、例えば私がテキサス在住・勤務でLAT, ATCの資格を有し、合法的に活動を行って、その活動の全てがLiability Insurance(損害賠償保険)によって守られているとして、お隣のルイジアナ州の大学との試合のために遠征して活動する場合、そのLiability Insuranceはルイジアナでの活動は適応外…つまり万が一ルイジアナ州で私が下した診断や施した治療が元で訴えらえるようなことがあれば、保険が効かないよ、というのが実態でした。「州外の活動は訴えられたら終わり」…事実上、アメリカで働くNCAA Division Iの全アスレティックトレーナーと、プロチームで働くアスレティックトレーナーは個人としてプロとして大きなリスクを抱えながら仕事をこなしていたわけです。とはいえ、遠征前にそれら全ての州のライセンス取得を義務付けるのも現実味に欠けます。だからこその、この議案なんです。

この議案では、「自州(primary state)と他州(secondary state)のライセンス規制が似通っているならば、州外の活動は全て法律上は自州で起こったものとみなす」としており、これが認められれば、アスレティックトレーナーが州外でもライセンス剥奪や多額の訴訟負債を恐れることなく、選手のケアに集中して仕事にのびのびと臨めるような環境作りへの大きな一歩になります。革新的、革命的といっても過言ではないと思います。

一つ気になるのが「ライセンス」「ライセンス」と議案内で繰り返されているところですかね…。例えばライセンス制度を採用している44州に関しては「法的交換性」というのが生まれるのかなと推測するんですが(テキサスは前述した理由でここで引っ掛かる可能性がゼロではありません。でも、43州間ではまず問題ないでしょう)、登録制の4州、認定制の1州で現在活動しているATはライセンス制度の州に遠征帯同する場合、法的に守られるんでしょうか…?その逆は…?カリフォルニア州「に」遠征帯同する場合は実質どんな人でも合法的に活動できてしまうわけですが、これが可決されればカリフォルニア州「の」ATはどの州でも合法的に活動することがより難しくなるのでは?どなたかご存知の方います?

これらが抑止力となって該当する6州のライセンス化が進むのがベストシナリオなのかなという気もするんですが…。某州など時代を逆行して規制を取っ払おうとしてるとも聞きますし、どうなるやら。とにかく大注目です!この議案は上院可決され、現在衆議院にちょっとした用語の修正のために戻されていて、それが済めばいよいよ大統領のサインを待つだけになります。続報を待ちたいと思います。

アメリカから日本に帰ってきてアメリカへのアクティブな興味が急激に薄れている自覚があるというか、ATの周りに複雑に絡む世論やプロ間の意見の動きにものすごい勢いで鈍くなっているので、こういうのもちゃんと知っておかなきゃなぁという戒めも込めての今回のブログ記事でした。政治情勢なんかも常に把握しておかにゃいかんなぁ。ちゃんとしよ。

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  # by supersy | 2018-09-08 11:30 | Athletic Training | Comments(0)

来週末の大阪EBP講習と、12月16日の東京(新!)EBP講習について。

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再告知になりますが、10日後の9月16日を皮切りに、大阪でEBP定期講習を開催します!約3ヵ月に1講習のペースで大阪市立青少年センター(KOKOPLAZA、新大阪駅から徒歩5分)にて毎回異なるテーマでの定期開催(全4回、7講習)をする予定です。

第一回: 9月16日(日)
13:00ー16:30 ①EBP基礎編: スポーツ傷害評価編
16:45ー17:45 阿部と語ろう *質疑応答形式のワイワイお喋りタイム
受講費:10000円(学生9000円)
フェイスブックのイベントリンクはこちらから
お申し込みはこちらから

<継続受講割システム>
継続して受講される方には、受講2回目以降で継続受講割が適応になります。受講すればするほどお得!

第二回: 2019年1~2月開催予定
②EBP臨床応用編: 評価 - ACL損傷評価法
③EBP臨床応用編: 評価 - 手首の痛み評価法

第三回: 2019年4〜5月開催予定
④EBP基礎編: 治療介入編
⑤EBP臨床応用編: 治療介入 - 腱障害とリハビリ

第四回: 2019年8〜9月開催予定
⑥EBP基礎編: 予防医学編
⑦EBP臨床応用編: 治療介入 - AMIと抑制解除療法

楽しくエビデンスを使いこなせるようになろう!がテーマのこの講習。本来クローズドの講習であるところ、主催者さんのご厚意でオープンにして頂きました。資格関係なく誰でも参加可能です。初級者もエビデンス苦手な人も、もちろん学生さんも大歓迎!定員は50名で、満席になり次第締め切られます。

よく東京以外の他の地域でもEBP講習はしないのかと聞かれますが(機会と要望があれば私もしたいのですが)、今のところこの大阪講習以外に予定はありません。いつも東京開催ばかりで行きにくいという方はこの機会を是非ご活用ください。この大阪講習はいつも主催をしてくださる高橋さんを介していない都合でBOC-EBP CEU (継続教育単位)は一切つきませんATC有資格者の方、ご注意下さい。



さて、そして続きまして12月16日(日)に行う東京EBP講習のお知らせです。こちらの講習はいつも通り高橋さんの主催で行いますので、BOC-EBP CEUsが付きます!(ややこしくてすみません、BOCの決まりがあるのです)。申込みウェブサイトは近日中にご用意できますのでまずは日程だけ、興味のある方はメモメモしてみてください。

今回は基礎レベルの「スポーツ傷害評価編」と(3時間、3.0 EBP CEUs)、臨床応用レベルの「評価・ACL損傷編」「評価・手首の傷み編」(各2時間、それぞれ2.0 EBP CEUs)をまとめて一日で開催します。全3講習に出席すればBOC EBP CEUを一気に7.0も獲得可能です。新講習(両臨床応用レベル講習)が盛りだくさんですし、本年のEBP講習開催はこれが最後になりますのでこの機会をぜひお見逃しなく。日程と構成は以下の通りです。

<講習日時>
2018年12月16日(日)
9:30am-12:45pm  エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで
           *途中休憩15分含む3時間講習
12:45pm-14:00pm 昼食(各自)
14:00pm-16:00pm エビデンスに基づくスポーツ傷害評価 ACL損傷の評価法 *NEW!!
16:15pm-18:15pm エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 手首の傷み評価法 *NEW!! *EBP申請中

ちなみに、基礎レベルの講習は「エビデンス(科学的根拠)に基づく…」とかよく耳にするけれど、どういうことか実はよくわからない、今更ヒトにも聞きにくい、という完全初心者さんウェルカムな講習で、むしろエビデンスに対して不信感とか苦手意識のある方にこそ来ていただきたいと思っています。エビデンスに基づく実践って思ったほど難しくないや、結構楽しいかも!と思って帰っていただければそんな幸せなことはありません。

午後に行う講習ふたつはどちらも新作の「臨床応用レベル」の講習で、今まで教えてきた「基礎レベル」の講習から一歩踏み込み、感度や特異度というコンセプトを踏まえた上で実際に臨床の現場で皆さんがぶつかっていそうな症例にとびかかり食らいついていきます。「エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで」講習の事前履修を強くお勧めしますが、必須ではありません。感度や特異度、陽性/陰性尤度比の何たるかがわかっている方であれば問題なく楽しめる内容になっております。

ACL損傷編では「ACL損傷に使えるSelective Tissue Testにはどんなものがある?」「それぞれの有効性は?」「そういや結局Lelli Testとやらって使えるの?」など紐解いた後で、「では、実際に現場でこんな状況では、あんな状況どうすれば?」というところまで実技を交えて議論、手首の傷み編では臨床で見落とされがちな1) 舟状骨骨折; 2) 有鈎骨鈎骨折; 3) TFCC障害の3つに焦点を絞り、それぞれを「どう評価するのが最善か?」をエビデンスを探し、読み解きながらこちらも実践を交えて検証します。

全講習、参加者の資格は問いません。元々ATC資格保持者さんのためにと思って企画した講習でしたが、今までPT、OT、柔道整復・あんま・鍼灸師さん、医師の方や大学教員・研究者さんなど幅広くご参加頂いています(ありがたやー)。学生さんも大歓迎です!リピーターさんも、リフレッシュにまたという方も結構いらっしゃいます。

<会場>
〒190-0022 東京都立川市錦町3-3-20
   JR中央線立川駅南口より、徒歩13分
   JR南武線西国立駅より、徒歩7分
   多摩モノレール立川南駅より、立川南通りを直進、徒歩12分

<定員> 各講習50名

参加は一番興味のあるコースひとつだけでも、お好きな組み合わせで1つや2つでも、3つ全てでももちろん可能です。複数参加される方には一昨年から導入した『セット割引』システムが適応、そして『学生割引』も健在です。

<受講料> 
一般 3時間講習(基礎編) 9,000円; 2時間講習(臨床応用編) 各6,000円
   2講習同時申込で10% off
    (例: 基礎+臨床応用で1,500円引き、臨床応用講習2つで1,200円引き)
   3講習以上同時申込で15% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで3,150円引き)
学生 3時間講習(基礎編) 8,100円 (10% off - 900円引き);
   2時間講習(臨床応用編) 各5,400円 (10% off - 600円引き)
   2講習同時申込で20% off
    (例: 基礎+臨床応用で3,000円引き、臨床応用講習2つで2,400円引き)
   3講習以上同時申込で25% off
    (例: 基礎1つ+臨床応用2つで5,250円引き)
     *現役大学・専門学校生(国内外不問)さん対象。申込後に学生証の提示が必要です、

今回、新作の講習2つは私が個人的にもうだいぶ長いこと、ずーっとやりたいなーと思っていた内容ですので自分でいうのも何ですがなかなかワクワク楽しいものになるんじゃないかと思っています。より多くの皆様にお会いできるのを楽しみにしております!セミナーの内容に関して質問があればここのコメントか私に直接ご連絡ください。申し込みウェブサイトが完成したらまたSNS等でお知らせしますー。

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  # by supersy | 2018-09-06 23:00 | Athletic Training | Comments(0)

小脳に関する論文まとめ・おまけ: 小脳と感情。

生きていると感情って合理的じゃないなぁ、という場面にも多々出くわしますが、そもそも感情とは我々の生存率を高めるものなんでしょうか、それとも低めるものなんでしょうか?例えば生きていく上で何が怪しい、嫌な予感がする、近づかないでおこう、という感情に耳を傾けて生存率が高まることもあれば、単純な欲求に駆られてリスクの高い行動を取り、結果死ぬこともあるんじゃないかと思うんです。もし前者が「真実」ならば生き残ってきた我々は合理主義の感情に流されず、論理だてて物事を考えるヒトたち、ということになるし、後者が当てはまれば感情的なニンゲンばかりが生き残った社会になる。まぁ、どちらもそれはそれでしんどそうな世の中ですが…。

さて、小脳がいかに正常な運動機能に重要な役割を果たしているかはもう200年以上も前から論じられてきましたが、今回お話したいもうひとつの小脳が持つと言われている機能に「感情」があります。様々な論文をまとめながら要点をさらっていきたいと思います。
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解剖学的に小脳は片葉小節葉(flocculonodular lobe)、虫部(vermis)と外側小脳半球(lateral cerebellar hemispheres)に分けることができ、片葉小節葉はバランスと平衡感覚に、外側小脳半球はモータープランニングとその実行にチカラを発揮すると言われているが、中でも小脳虫部はcoordinationと感情のつながりが研究によって示唆されており、Limbic Cerebellumという異名も持つ。1 小脳の特定部位に損傷が見られる場合、感情的引きこもり(emotional withdrawal)や感情コントロールの不具合、またそれに伴う行動異常が見られることが報告されているのである。1

●恐怖
恐怖(fear)とは生物にとって強烈な意味と力を持つ感情である。恐怖とそれに結びついた刺激を記憶することで生存率を高めてきたからだ。1 生物は恐怖という感情が沸き上がったとき、自律神経システム(i.e. 血圧や心拍の変化、瞳孔の拡張)と内分泌システム(i.e. 発汗)、そして行動(i.e. 震え、驚愕反射など)を用い、その全身を使って反応を示す。小脳はどうやらそのfear-conditioning(恐怖条件付け、これが怖いと以前は恐怖対象に感じなかったものを恐怖を覚えるべき対象であると再認識すること)に関わっているようなのである。特定の刺激(i.e. 音を聞かせる)を与えた後に電気刺激で痛みを与える、というfear-conditioningを繰り返した際、健常者は音を聞いただけで心拍の変化が見られたり、驚愕反射を見せたりしたが、小脳を損傷した患者はこれら変化が見られなかった。2,3

●情動処理(emotional processing)
より感情的な記憶を思い起こそうとすると小脳虫部の活性が起こることも報告されており、4 脳が感情をどう処理するかも小脳無くしては語れないようである。fMRIを使った研究等では被験者自身が痛みを感じると小脳虫前部が、痛みを思い出させるような刺激を見たり、他人が痛みを受けてる場面を目にすると(=痛みに共感を覚える)と小脳虫後部が一定のパターンで活性することが分かってきた。5-7 様々な感情を引き起こす刺激を与え、それに伴う脳活性を検証した実験では、「嫌悪感」を感じたときには小脳虫部と半球が、「幸福感」を感じたときには半球後部が活性したという結果も出ており、8,9 小脳の感情の特異性(the concept of regional localization of emotional processing within the cerebellum; emotion specificity; 特定部位が特定の感情に対して反応する)が存在する可能性も示唆している。

●他人の表情から感情を読み取る
ヒトは他人の表情からその意図を汲み取るものであり、これは小脳に損傷がある患者が思うようにできなくなることでもある。実際、ヒトが他人の表情を読んでいる時は小脳、皮質下領域、大脳辺縁領域、側頭頭頂野、前前頭野に視覚領域と様々な脳の部位の活性を必要とする。ちなみにこれには感情の特異性はなく、「他人の感情を読む」ことに関しては喜んでいる、怒っているなどに特異した脳の部位は存在しないようだ、という説もあれば、いやこの部位が感知する感情は喜びだ、恐怖だ、怒りだ云々と専門家の中でも意見が分かれるところである。1

●感情に関わる疾患患者など
精神分裂症の患者は小脳半球のサイズは健常者と変わらないが小脳虫部は委縮している、という報告や(これは確立されたものではないが)、これを逆手にとって精神病患者の小脳虫部を電極で刺激することで治療が行えないかを検証した研究なども存在する。10-12 同様に、鬱を患う患者にも小脳の委縮が見られたり、小脳の退化を伴う脊髄小脳失調症や多系統萎縮症の患者は精神経疾患を発症する可能性が2倍になるなど13 小脳と精神疾患の繋がりを説く研究は少なくない。
*小脳以上と自閉症についての記載も多くの論文に含まれていたが、これは以前触れたので割愛。

●意識的、無意識的な感情処理
小脳の情動処理を意識的(conscious processing; explicit)と無意識的(unconscious processing; implicit)に分ける見方もあり、意識的な処理にはfear-conditioningや相手の感情から表情を意図的に読む行為、自分が感じている感情の認知があり、無意識的な処理には自律神経反応の調整、自動的な感情学習や無意識に起こる表情の読み取りなどがある(Table 1参照)。無意識の処理は小脳虫部が、意識的な、higher-orderの処理は小脳半球で行われているのでは、という報告もあるそうだ。14
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Clausi et al., 201714より、Table 1

感情処理はBottom-upでもTop-downでも両方起こる、という文章が印象的。Clausi et al14は“sequence detection model”という説を推奨しており、小脳は運動、認知、感情に関わらず、繰り返し起こるイベントに対して法則性を見出し、解釈を内から作り出し、それに基づいて「次に何が起こるか」を予測する(*…もっと言うと、その「予測」が正解だったかどうかを見極め、次回の「予測」を修整するところまで関わっているんじゃないかと個人的には思いますが)ことが仕事なのではないか、と述べており、常に変化しつつある環境に行動・認知・感情の観点からチューニングを行ってくれているのではと締めくくっている。

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Cerebellumというジャーナルに掲載された合意声明(↑)15 では、まだこれからも様々な実験が行われなければいけないとしながらも、

- 小脳は様々な感情の処理に関わるが、特にネガティブな感情処理に関わりがあること(これは相手が怒っている場合、それを察知して守りに入る準備をしなければいけないなど、生存に直接影響を与えたと推測される)
- 最近の研究では小脳に損傷があっても恐怖から正しい結果を推測し、恐怖を避ける選択ができることが判明している一方で、自身の中にあるネガティブな感情を推し量る能力が低下していることが分かってきた。つまり、情動処理能力(emotional processing)は言われていたよりできるのかもしれないが、感情知覚能力(emotional perception)は大きな影響を受けているのでは、という説がある
- 言語で真意を伝える際、Emotional prosody(感情的韻律、発話のリズム、強弱、抑揚やピッチの変化)は非常に重要な役割を持つが、小脳に損傷を負った患者の発生はゆっくりになり、モノトーン、途切れ途切れや、ぼそぼそと聞き取りづらかったりなど、韻律に問題が出ることが多いと言う。話し相手の発するProsodyの読み取りには右小脳の後部の活性が必要とされるので、小脳障害はProsody production(韻律作成)のみでなく、Prosody recognition(韻律認知)にも問題が出るようである
- 小脳虫部は感情記憶(emotional memories)の全てのフェーズ…記憶獲得(acquisition)、整理(consolidation)、保管と取り出し(storage/retrieval)、消去(extinction)…に一役買っている
- 社会的環境の中で他人をどう理解し、どう関わっていくか、という能力「social cognition(社会認知)」…詳しくはMentalizing(他者の心理を行動から想像や理解する能力)やMirroring(相手の言動や仕草などを鏡のように真似、親近感や好感を抱かせる)にも小脳が関わっており、道徳心(morality)やそれに関わる決断を下す際にも活性するなど、小脳の機能は実に多岐にわたる

…など、これまた興味深いことが色々と書いてありました。小脳と感情の世界は、奥が深いっす…。

1. Snow WM, Stoesz BM, Anderson JE. The cerebellum in emotional processing: evidence from human and non-human animals. AIMS Neuroscience. 2014;1(1):96-119. doi: 10.3934/Neuroscience.2014.1.96.
2. Maschke M, Schugens M, Kindsvater K, et al. Fear conditioned changes of heart rate in patients with medial cerebellar lesions. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2002;72(1):116-118.
3. Maschke M, Drepper J, Kindsvater K, Kolb FP, Diener HC, Timmann D. Fear conditioned potentiation of the acoustic blink reflex in patients with cerebellar lesions. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2000;68(3):358-364.
4. Damasio AR, Grabowski TJ, Bechara A, et al. Subcortical and cortical brain activity during the feeling of self-generated emotions. Nat Neurosci. 2000;3(10):1049-1056.
5. Ploghaus A, Tracey I, Clare S, Gati JS, Rawlins JN, Matthews PM. Learning about pain: The neural substrate of the prediction error for aversive events. Proc Natl Acad Sci USA. 2000;97(16):9281-9286.
6. Ploghaus A, Tracey I, Gati JS, et al. Dissociating pain from its anticipation in the human brain. Science. 1999;284(5422):1979-1981.
7. Singer T, Seymour B, O'Doherty J, Kaube H, Dolan RJ, Frith CD. Empathy for pain involves the affective but not sensory components of pain. Science. 2004;303(5661):1157-1162.
8. Baumann O, Mattingley JB. Functional topography of primary emotion processing in the human cerebellum. Neuroimage. 2012;61(4):805-811.
9. Schienle A, Scharmuller W. (2013) Cerebellar activity and connectivity during the experience of disgust and happiness. Neuroscience. 2013;246:375-381.
10. Aylward EH, Reiss A, Barta PE, et al. Magnetic resonance imaging measurement of posterior fossa structures in schizophrenia. Am J Psychiatry. 1994;151(10):1448-1452.
11. Heath RG. Modulation of emotion with a brain pacemaker. Treatment for intractable psychiatric illness. J Nerv Ment Dis. 1977;165(5):300-317.
12. Demirtas-Tatlidede A, Freitas C, Cromer JR, et al. Safety and proof of principle study of cerebellar vermal theta burst stimulation in refractory schizophrenia. Schizophr Res. 2010;124(1-3):91-100.
13. Leroi I, O'Hearn E, Marsh L, Lyketsos CG, et al. Psychopathology in patients with degenerative cerebellar diseases: A comparison to huntington's disease. Am J Psychiatry. 2002;159(8):1306-1314.
14. Clausi S, Iacobacci C, Lupo M, Olivito G, Molinari M, Leggio M. The role of the cerebellum in unconscious and conscious processing of emotions: a review. Applied Sci. 2017;7(5):1-16.
15. Adamaszek M, D'Agata F, Ferrucci R, et al. Consensus paper: cerebellum and emotion. Cerebellum. 2017;16(2):552-576. doi: 10.1007/s12311-016-0815-8.

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  # by supersy | 2018-08-27 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

小脳に関する論文まとめ3: 小脳回路とその機能不全によって起こる運動障害の種類。

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4. Choi, 20161
この論文では小脳回路(cerebellar circuit or circuitry↓)とその機能が阻害されたときに起こる運動障害について主に話されています。つまり小脳には電気信号が行きっぱなしではなく、行って帰ってきてそのループを閉じるような、ongoing communicationシステム(お互いがお互いの状況をチェックし合うようなシステム)があるということですね。フィードとフィードバックと、そのフィードバックを受けてのリアクション・反応が作れる神経構成をしているというわけです。
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脳血管疾患や脳卒中が起こると副次的に運動障害が起こることがある。この脳部位がやられると運動障害が起こる、という局所的な定義が明確にあるわけではないが、大脳基底核(basal ganglion、大脳皮質と視床、脳幹を結びつけている神経核の集まり、↓写真)とその回路周りが損傷を起こすと特にその発生頻度は高くなる。しかし、小脳回路も忘れてはいけない運動機能を支配・調整している重要な脳の部位であり、ここで起こる脳卒中も同様に運動機能障害を引き起こす。実際に小脳損傷で起こる運動機能障害には、
- 運動失調症(ataxia)や共同運動失調症(asynergia)などのcoordinationの損失
- 物事との距離を見誤る測定障害(dysmetria)
- 意図振戦(intention tremor)、作動振顫(action tremor)、ホームズ振戦(Holme's tremor)、口蓋振戦(palatal tremor)、羽ばたき振戦(asterixis)、ジストニア(dystonia)
…などがある。ごく稀に常同症(stereotypy, 反復的・儀式的な行動、姿勢、発声など)も見られる。
*脳卒中に起因する運動障害は決して頻繁に見られるものではない(脳卒中全体の1~3.7%)が、中でも小脳内での脳卒中によって起こるそれは特に症例が少ない(0.1~0.3%)。
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●運動回路
先ほど脳の運動機能の代表的な平行経路(parallel pathways)に大脳基底核回路小脳回路があると言及したが、大脳基底核回路は主に学習され自動化された行動と、意図的な動作を可能にするためにバックグラウンドで機能しているべき姿勢制御や支持を担当している一方、小脳回路は協調性のある動作(coordination)、運動中のエラー修正を担当している。故に、小脳回路の損傷はcoordinationの損失、筋収縮のタイミングエラーに繋がるわけである。

小脳の神経ネットワークは複雑だが、重要な回路はふたつ存在する。cortico-cerebellar-cortical circuit (皮質-小脳-皮質回路: ↓図のが求心性のcortico-ponto-cerebellar tract; 図のが遠心性のdentato-rubro-thalamo-corcical tract)とmodulatory dentato-rubro-olivary circuit(歯状赤核オリーブ回路Guillain-Mollaret triangle又はGMT/ギラン・モラレの三角とも呼ばれる: ↓図のが求心性、が遠心性)である。このギラン・モラレの三角は小脳と脳幹をフィードバックループで繋ぐ、脊髄の運動機能をコントロールしている。
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運動障害の多くはこの回路のどこか一点に損傷が生じた、というより回路の伝達性・機能的接続性に問題がある場合に起こる。運動障害の症状が出てくるのは脳卒中後早くて当日、遅いものは数年かかることがあるが、これは障害のタイプによる。一般的に…
 急性(acute): 小脳性振戦(cerebellar tremor), 羽ばたき振戦(asterixis)
 遅延性(delayed): ホームズ振戦(Holme's tremor; 数週間から数か月), 口蓋振戦(palatal tremor; 2-49ヵ月)、ジストニア(dystonia; 1-5日)
…などの分類ができるが、それぞれの障害にも広い発症幅があり、個人差も大きい。脳の損傷が起こってから症状が出始めるまでは、損傷が起きた年齢が早ければ早いほど遅いという傾向があり、これは脳代謝と脳の可塑性によるものかもしれない。特に遅延性のあるものに関しては、画像研究などで下オリーブ核がじわじわと肥大・退化などが可塑的変化と共に起こることなどが分かっているが、真の病理生理学的原理はまだ解明され切れていない。

●障害の臨床的特徴
頻繁に起こる運動異常
- 小脳流出振戦/Cerebellar outflow tremor
小脳振戦で多いものが動作時振戦(action tremor)で、安静時振戦(rest tremor)は稀。中でも多いのが意図振戦(intention tremor)で、症状が出る部位は腕か足、周波数は<5Hzのものがほとんどである。振戦の多くが片側性(unilateral)で、体節的もしくは多焦点(segmental or multifocal)で局所的でも全身性でもなく(rather than focal or generalized)、GMTに問題があることが多い。

- ホームズ振戦/Holme's tremor
脳卒中や脳幹の障害で発症すると言われる稀な振戦。GMT機能の阻害によって起こる。動作時と安静時の複合症振戦で、片側上肢に現れる。反対側には測定障害(dysmetria)や拮抗運動反復不全(dysdiadochokinesia)が出るのが一般的で、姿勢振戦も付随することが多い。周波数は通常4.5Hzかそれ以下だが、イレギュラーなこともある。

- 口蓋振戦/Palatal tremor
軟口蓋そのものや咽頭・喉頭・顔面や胴体の筋肉がゆっくり(1-3Hz)とリズミカルに動くことによって起こる。Essential(原因不明; 1/4の患者はこれ)とSymptomatic(脳幹や小脳、引いてはGMTへの損傷によって起こる)の2種類に大別することができ、前述のように受傷後1週間から49ヵ月以内に発症するという幅を持つ。

- 羽ばたき振戦/Asterixis
自分の意志とは無関係な運動を起こす不随意運動の一種で、筋収縮を保てないが故に伸ばした腕を羽ばたくように返す(flap)動作を生むのが特徴(↓動画有り)。通常両側で起こり、GMTの機能不全に起因するようである。


- ジストニア/Dystonia
反復性の身体を捩じるようなパターン化された筋収縮により、通常の動作が阻害される運動障害。小脳の脳卒中で起こる場合、症状が出るまで通常1ヵ月から15年かかる。

その他の運動異常
- 常同症/Stereotypy
反復性の目的のない動作が一定の時間内で繰り返される動作異常。精神分裂症や知的障害、自閉症の患者によく見られるが、脳卒中が原因で起こることもある。

- 下肢静止不能症候群・むずむず脚症候群/Restless legs syndrome
下肢に不快感を覚えたりむずむず痒い感覚を覚えるなどする症候群で、小脳の脳卒中では起こらないが、その他の様々な脳部位(大脳基底核、放射冠、脳橋、視床、内包、大脳皮質)での脳卒中に於いて起こる。

こうした運動障害の生理学的背景やよく見られる症状などを把握しておくことは的確な診断と処置のために欠かすことはできない。

1. Choi SM. Movement disorders following cerebrovascular lesions in cerebellar circuits. J Mov Disord. 2016;9(2):80-88. doi: 10.14802/jmd.16004.

この論文とは直接関係がないんですけど、ここらへんの動画は以前リハビリの授業で脳の可塑性を教えるために使っていました。Focal Dystonia患者さんの話です。興味がある方はどうぞ。脳は変えられる。例え機能不全があっても。




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  # by supersy | 2018-08-24 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

小脳に関する論文まとめ2: 小脳の二重隔離性と動作記憶能力。

今回は短めの論文をふたつ。
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2. Allen et al., 19971
こちらは有名なサイエンス誌に掲載された古い小脳に関する記事。冒頭に小脳は脳内で最も神経学的に忙しい交差点である("one of the busiest intersections in the human brain")と表現しており、なるほどええ表現やー、と唸りたくなります。
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小脳は動作をcoordinateすることが主だたる機能である、ということはよく知られているが、それ以外の非動作的機能、例えば1) 感覚識別(sensory discrimination), 2) 注意(attention), 3) 作業記憶・作動記憶(短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のこと、working memory), 4) 意味的連想(semantic association), 5) 言語学習と記憶(verbal learning and memory), 6) 複雑な問題解決能力(complex problem solving)にもその力を発揮しているのではないか、という説が議論を呼んでいる。…とはいえ、これらのタスクが動作レスポンスのプランニングを要することも事実なので、結局小脳が関わっているのはそのタスク完遂における「動作」要素なのか、「非動作」要素なのかで専門家でも意見が分かれるところだ。

なので、今の段階で行われるべき研究は1) 動作を全く必要としない認知タスクを課し、それでも小脳の活性が見られるか?; 2) もし小脳が認知能力に関わっているとしたら、その機能は動作制御と全く同じ箇所に位置するのか、それとも小脳内の別部位にあるのか?という2つの疑問を解決するようなものでなくてはならない。

これを検証するため、私たちはfMRIと6人の健康な被験者(全員右利き)を用いて1) 動作要素のない認知タスク(visual attention task、色と形の異なる物体を見て、ターゲットとなる視覚刺激…例えば赤の四角などが何回出てきたか数える)、2) 認知要素のない動作タスク(自分のペースで右手を一定のパターンで動かす)、3) 認知+動作タスク(特定の視覚刺激を見たら右手を動かす)を行わせ、被験者の脳活性を画像化するという実験を試みた。すると、面白いことに同じ小脳内でも認知タスクを行う際に活性される場所(↓Attention region of interest, ROI)と動作タスクを行う際に活性される箇所(↓Motor ROI)は異なることが見えてきたのである。この小脳の「認知」部位は、「動作」部位の活性とは独立して活動するようである。
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もう少し詳しく分析してみると、動作タスク時にはほんの一瞬「認知」部位の活性が起こっていることから(↓赤矢印)、仮にシンプルな動作タスクでもその開始(initiation)時には少しばかり「attention = 注意」を払う必要があることを示している(が、タスクを続けるにはこの「注意」は必要ない)。逆に認知タスクの際はというと、「運動」部位の活性は全く見られなかった。
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これらの結果によって見えてくるものに、小脳活性の機能的独立性がある。「運動」による活性は「認知」を必要とするが、「認知」のみの活性は「運動」がなくても行える。これはこの二つの部位の二重乖離性(double dissociation)を反映しており、小脳が一つの仕事をするだけの部位ではないことも示している。感覚、認知、注意…我々が思っていたより、小脳とはもっと複雑な造りをしており、新たな物事を学習したり、スムーズな動作を達成するときにカギとなる役目を果たすようである。

*2018年現在、脳の「可塑性」についてもよく知られるようになった今、「二重乖離」はどれだけ独立したものなのか新たな興味はでてきますが、それでも言わんとしていることは分かります。
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3. Wickelgren, 19982
こちらもサイエンス誌掲載の、興味深い記事。…とはいえ、先ほどと違いあんまりpeer-reviewedっぽくありませんが。(現在有効な形式の)文献引用もなく、「イチ専門家の意見」色が強いです。まとめます。

1990年以前は小脳が単関節にもたらす単独の動作(i.e. 肘の屈曲など)の研究ばかりが盛んであったが、技術の進歩もあり、多関節で起こるcoordinationという機能が近年推し量れるようになってきた。小脳は、複雑な動きの中で肢にかかる複数のチカラを予測し、目的を成し遂げるために出力をアジャストするという大事な役割を果たしていることが分かってきたのである。

小脳のカギとなる機能は、筋発火のタイミング出力微調整。具体的な研究例としては、初期に人間やサルを対象にした実験で、小脳に損傷があると単関節動作反応が0.025秒遅れること、出力の調整が下手になることなどの結果が報告されていた。0.025秒なんで僅かな出力エラーだと思えるかもしれないが、この微妙な発火タイミング・出力のズレが歩行のような多関節に及ぶ複雑な動作(i.e. 歩行や投球など)をする上でより大きな影響を及ぼすことは想像にたやすい。他にも興味深い実験に、健康な被験者 vs 小脳に損傷がある被験者に、目の前に吊るされたボールに手を伸ばしてもらい、その際にかかった各関節へのチカラを分析する、というものがあったのだが、1) 健康な被験者の手は真っ直ぐボールに伸びたのに対して、小脳に損傷のある被験者の手はボールを通り越し(overshoot)、回るようにボールに戻ってきた。2) 小脳に損傷がある被験者は「interaction torque」と呼ばれるそれぞれの関節がお互いに対して回旋し合って生まれる捻じれ(回旋)ストレスが身体を支配しており、複数の関節が効率よく連動していないことが浮き彫りになった。

よく動作記憶(motor memories)という表現が使われるが、これが貯蔵されているのも小脳なのかもしれない。小脳を損傷すると、今までに学習した条件反射(conditioned reflexes)や適応行動(adaptive behaviors)が失われるという報告もある。しかしこれらの記憶は比較的シンプルな動作が対象のようで、例えば絵を描くなどの複雑な動作にはこの「記憶貯蔵」機能は当てはまらない。

小脳はシンプルな動作は記憶し、その記憶を貯蔵する。しかし、複雑な動作スキルに対してはあくまでチューニングを合わせる役目を果たすのであって、それを記憶として留めておくわけではない…というタスクの複雑性に合わせた機能の違いはなかなかに興味深い。

*最後の神経細胞の活動メカニズムの説考察は前に書いたものも含むので割愛。

1. Allen G, Buxton RB, Wong EC, Courchesne E. Attentional activation of the cerebellum independent of motor involvement. Science. 1997;275(5308):1940-1943.
2. Wickelgren I. The cerebellum: the brain's engine of agility. Science. 1998;281(5383):1588-1590.

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  # by supersy | 2018-08-22 22:30 | Athletic Training | Comments(0)

小脳に関する論文まとめ1: 小脳と前頭前皮質の関り。

白状します。発達学というのがあまり得意ではありません。
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中でも認知発達はともかく、運動発達は本当に苦手で、あまり文献を読んだこともありませんでした。ちょっといい機会なので、複数回にわけて小脳(↑)とそれが運動発達の過程でもたらす影響や果たす役割についての論文を一度にひとつずつ読みまとめてみようと思います。

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1. Diamond, 20001
今まで「運動発達(motor development)」と「認知発達(cognitive development)」は同じ個体内で同時期に起こるにも関わらず独立した現象であると考え、研究されてきた。しかし、これらの現象は我々が思っているよりもinterrelated(互いに関わり合っている)、どころかintertwined(絡み合っている)と表現されるべきなのである。
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認知能力を司ると言われる前頭前皮質(↑写真左、pre-frontal cortex、厳密には"dorsolateral prefrontal cortex"と呼ばれる部位)と運動技術に大きな影響を及ぼす小脳(↑写真右、cerebellum、厳密には"neocerebellum"と呼ばれる部位)は、どちらも霊長類の進化と共に拡張してきており、中でも小脳は運動のみならず認知に対しての機能も併せ持つ、なんなら前頭前皮質に匹敵すると言っても過言ではないくらい認知機能には欠かせない重要部位である。

●前頭前皮質と小脳の関係性
このふたつの脳部位の認知タスク処理における活性度は連動しており、例えば「名詞を見て、それに呼応する動詞を言う(i.e. 「映画」→「見る」)という"verb generation task"の研究2 や「一分間で思いつく限りの単語を言う」"verbal fluency task"の研究、3受け取ったカードを色や形、名前別に分類していく"Wisconsin Card Sorting Test"を研究したもの4,5 などでもこの現象が画像から確認されている。どうやら認知タスクが複雑で新しく、予期できない、変化を伴う、(もたもたではなく)素早い反応を必要とする場合にこれらの部位は特に活性されるようなのである。

損傷による不活性の場合にもこの相関性が確認できる。前頭前皮質に何らかの損傷を負った場合、逆側の小脳にも代謝低下(hypometabolism)が確認できるし、この逆も然り、なのである。小脳に損書を負った患者が前述したような"verb generation task," "verbal fluency task,"や"Wisconsin card sorting"に加え、その他のプランニングや記憶に関わるタスクが達成できなくなることも多々報告されている。
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●小脳
ニンゲンの小脳に含まれる神経細胞(neuron)の数は非常に多く、(小脳以外の)残りの神経系全てのそれを合わせても足りないほどである。小脳皮質(cerebellar cortex)は顆粒細胞(granule cell)とプルキンエ細胞(Purkinje cell)、登上線維(climbing fiber)と平行線維(parallel fiber)から成り、これ以上ないほど絶妙な格子状の、正確で規律がある構造をしている(↑)。

動作学習(motor learning)において、小脳は早期ステージやタスクに変更があって「書き換え」が必要な際にその機能を発揮し、たんだんタスクに慣れて「自動モード」に切り替わってくると共にその活動は低下してくる。この活動パターンは認知学習でも同様で、つまるところ本人がより「集中しなきゃ」と思う環境で小脳の活性が起こるのである。逆に言えば、小脳無しでのタスクは(運動でも認知でも)より努力を要し、ゆっくりなものとなり、不正確で安定しない(variable)。自閉症やADHD、失読症(dyslexia)、特定の言語障害などは個人差はあるものの運動障害を持っていることが多いとも報告されている。ちなみに損傷や発達障害などで小脳の大きさが通常よりも小さい子供は、その前頭前皮質も小さかったりとサイズ的相関性があるようである。

脳の機能・構造から考察するに、これは小脳に「エラーを感知する能力」及び「エラーから学ぶ能力」があるからだという仮説がある。小脳を損傷した患者はタスクを行う際に明らかなエラーを犯し、練習を重ねてもそのタスクが上手になっていかないことが確認されているからだ。他にも「小脳はタスクを行う際のレスポンス要素を組み合わせ、より大きな単位のグルーピングを行うことで、文脈に沿ったレスポンスがスムーズに出るようにしている」という説を唱える学者もいれば、「小脳は脳の他の部位の機能を引き出す中間管理職的な役目を果たすのでは」という研究者もいる。ここのところの実証はもっと多くの研究を要り様とすることだろう。

●前頭前皮質
前頭前皮質も我々が「Distractionに気を取られず、やるべきタスクに集中を保てるか」「ついやりたくなってしまうことよりやるべきことを優先できるか」「すぐ飛びつきたいところをこらえていかに絶妙なタイミングでタスクを実行できるか」…という高等な運動スキルを発揮するために欠かせない認知タスクも処理してくれていると考えれば、運動に大いに貢献している功労者と呼ばれても不思議はない。適切な動きを計画、準備、導いてくれる重要な立役者だ。
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●尾状核
最後に、尾状核(caudate nucleus)についても少しばかり言及しておきたい。尾状核はCの字の形をした側脳室(lateral ventricle)と並行して位置する脳の部位(↑)で、「正しい動きを遂行するのにどの筋肉をどのくらいのチカラで活性すればいいか」など動きを司る大脳基底核(basal ganglia)の一部である。パーキンソン病や失動症(akinesia)、緊張亢進症(hypertonia)の患者は総じて大脳基底核のドーパミンが足りないと言われているし、尾状核の細胞体が失われると運動過剰症(hyperkinesia)や筋緊張低下症(hypotonia)を引き起こすなるようである。

尾状核は運動のみならず前頭前皮質と共に脳神経回路を構成しており、認知タスクのアウトプット役も担っている。パーキンソン病患者に起こる尾状核の損傷は(全てではないが)よく前頭前皮質損傷時に見られるような認知障害を引き起こす発端となることからも、その関りの強さが伺える。ADHDの子供たちは尾状核にも委縮や機能低下が見られるという報告もある。

そういった意味では、尾状核も小脳と前頭前皮質同様、「運動機能と認知機能を繋げる重要な神経システムの一部」なのかも知れない。

1. Diamond A. Close interrelation of motor development and cognitive development and of the cerebellum and prefrontal cortex. Child Dev. 2000;71(1):44-56.
2. Raichle ME, Fiez JA, Videen TO, et al. Practice-related changes in human brain functional anatomy during nonmotor learning. Cereb Cortex. 1994;4(1):8-26.
3. Schlösser R, Hutchinson M, Joseffer S, et al. Functional magnetic resonance imaging of human brain activity in a verbal fluency task. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1998;64(4):492-498.
4. Berman KF, Ostrem JL, Randolph C, et al. Physiological activation of a cortical network during performance of the Wisconsin Card Sorting Test: a positron emission tomography study. Neuropsychologia. 1995;33(8):1027-1046.
5. Nagahama Y, Fukuyama H, Yamauchi H, et al. Cerebral activation during performance of a card sorting test. Brain. 1996;119(5):1667-1675.

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  # by supersy | 2018-08-21 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

PRIに関する最新研究論文のまとめ。その2。

なぜ風船を使ってエクササイズをするのか?(2016-02-18)
PRIに関する最新研究論文のまとめ。(2018-03-02)

以前PRI関連の文献を4つ(全部インド研究者によるマイナー・ジャーナルのもの)をまとめましたが(2018年3月2日付↑)、今回新たにまた別のジャーナルでPRI関連の研究が発表された1と耳にしたのでレビューしておきます。何故かこれもインドの研究者によるもので、PRI本部も「なぜインドがアツいんだ??」と困惑しているようです(以前にも書きましたが、これらの研究者さんがPRI講習を受講したという記録が一切見つからないのです。どこでどう知ったのか…)。
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なんか…前回からの偏見かもしれませんがまず見た目が怪しいですね、第3著者の名前に「Prof.」って入ってますけど、普通そんなの入れませんもん。Global Journal for Research Analysisというジャーナル、見たことも聞いたことが無かったのでこれもついでに調べてみました。Impact Factor(IF)が5.156って該当ウェブサイトには書いてあるんですけど…(これが真実であればトップ6.5%に入る超優良ジャーナルということになりますが。記事左上にはIF 4.547と異なる数字が書いてあり、どれが最新なのか…)、うーん、とてもホントウとは思えません。インターネットでその評判を調べてみたら、最近増えてきているPredatory Journal(お金さえ払えば論文掲載させてくれる、学術的価値はほぼ無いとされる「エセ学術誌」)の類だと言われているようで、なんというか…納得です。正直、前回紹介したジャーナル4つ全てもPredatoryだと思います。

…で、肝心の記事なんですが、2ページしかありません。マトモな研究が2ページにまとめられるはずもないのでこれまた嫌な予感しかありません。

イントロ部分からして突っ込みどころがいっぱいです。「腰痛(LBP)はこういう風に定義されています」や「腰痛は発症率が異様に高い、世界的に深刻な問題なんです、そしてインドも例外ではありません…」という導入を書こうとしている狙いは分かりますし、その内容は間違っていないと思うのですが、例えば「WHOによって成人の84%は生涯のうち一度は腰痛を経験していると報告されている」という誰もが目にしたことのあるあの文句を引用なしで書いていたりとか、「インドでも腰痛発症率は23.09%と報告されている」という個所は(ここは唯一引用があり、それは評価しなければなりませんが)その数字が世界的なものと比べて圧倒的に低かったりとか(84% vs 23%? その程度ならインドはうまいこと腰痛をmanageできてるってことになりませんか?)…もし私の学生がこういうイントロを書いてきたら、「not a bad intention, need to cite more sources(意図は悪くないけど、文献引用が足りないから説得力に欠ける)」と批評されること間違いなしです。

腰痛におけるハムストリングと腹壁の活性の重要性についての論理的背景はこれ(↓)しか書かれていません。
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一文一文が無駄に長く、一般的に「論文を書く際に使うべき好まれる英語」ではありません。繰り返しも多く、分かりづらい構成です。最初の文に限っては文章が終わっておらず(ピリオドがない…)、ふわふわと浮いた状態になっています。私が書き換えるなら、

The Postural Restoration Institute has proposed the holistic approach to patients with LBP: Their principles emphasize the importance of 1) the restoration of the proper diaphragmatic mechanics and 2) hamstring and abdominal muscles activation as a mean of regulating polyarticular chains of muscles and thus altering Ober's test results. Recent case reports1-3 and a RCT4 support this point of view and have reported that exercises with such emphasis can decrease immediately pain and increase passive hip abduction ROM.

1. Robey JH, Boyle K. The role of prism glass and postural restoration in managing a collegiate baseball player with bilateral sacroiliac joint dysfunction: a case report. Int J Sports Phys Ther. 2013;8(5):716-728.
2. Tenney HR, Boyle KL, Debord A. Influence of hamstring and abdominal muscle activation on a positive ober's test in people with lumbopelvic pain. Physiother Can. 2013;65(1):4-11. doi: 10.3138/ptc.2011-33.
3. Fernandes J, Chougule A. Effects of hemibridge with ball and balloon exercise on forced expiatory volume and pain in patients with chronic low back pain: an experimental study. Int J Med Res Health. 2017;6(8):47-52.
4. Kage V, Naidu SK. Effect of iliotibial band stretching versus hamstrings and abdominal muscle activation on a positive ober’s test in subjects with lumbopelvic pain: a randomized clinical trial. IJTRR. 2015;4(4):111-116. doi:10.5455/ijtrr.00000075.

…という感じでしょうか。それにしたって一文目にまだ引用が必要だと思うけど。
まぁ文章の構成とか引用とか理論の立て方とか指摘しているとキリがないので、この研究のキモの話に移ります。

腰痛持ちでOber's Test陽性の30人の被験者(性別、年齢不明)をランダムにグループAかBに分類し、グループAはヒートパックとITバンドのストレッチ(側臥位で、1分間ホールドx3回)を、グループBはヒートパックとPRIエクササイズ(90-90 Hip Lift with Balloonと90-90 Hemibridge with Balloon)を、合計6セッション行って前後のテスト結果を比較したそうです。一週間に何セッションやったかは明記されていませんので、例えば一週間あたり3セッションで2週間かけてこれらのInterventionを行ったのか、はたまた一日に6セッション詰め込んで一気にデータコレクションを終わらせたのか(まぁこれはないとは思いますが、記述がない以上否定はできないので)は不明です。計測されたアウトカムはVAS、Oswestry Disability Index (ODI)、スマホを使ったInclinometer (Ober's Test時の股関節内転角度)とPelvic Inclinometer(骨盤の前傾度、しかしどのようなポジションで何をlandmarkに計測されたのか記述無し)だったそうで。
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結果はこちら(↑)です。ベースラインで腰痛が60mm程度ならば、VASのMCIDは19mmで、2 ODIのMCIDは12.8-12.9のはず3,4 ですから、「両グループとも等しく、統計学的にも臨床的にも有意な痛み(VAS 30-34mm)と機能(ODI 18-19)の向上が認められた」「両グループとも等しく股関節の内転度(約4°)は向上したが、骨盤の前傾度はグループBのみ改善(0.087°)が見られた…とはいえ、臨床的意味があるような角度とは考えにくい」と私ならば結論づけたくなるのですが…著者は「ストレッチも効果的だったが、PRIエクササイズのほうがより統計学的に大きな効果が見られた」「臨床的に、ストレッチの効果は短期で消失したのに比べ、PRIエクササイズは痛み・股関節可動域・骨盤傾度・機能においてよりその効果がより長持ちした」「つまり、総合的にOber's Test陽性の腰痛患者にはITバンドのストレッチよりPRIエクササイズのほうが有効」と結論づけています。個人的には、以下の理由で同意しかねます
- 「統計学的に」というならどういった統計的分析に基づいて「PRIエクササイズのほうが優れている」と断定できたのか?各グループ内のpre-とpost-interventionの比較こそあれ、グループ間の改善幅を直接比較したような統計的分析は一切見られないが?
- 文中にはセッション1を始める前とセッション6の終わりに(合計2回)アウトカムを計測、とあるが、それ以外のタイミングでもアウトカムを計測したならそのタイムラインはどのようなものだったのか?それらのデータを開示せずに「長持ちしました」というのはあまりに乱暴では?

むしろ、私はこの結果を見て、「意外とITバンドのストレッチも効果的じゃん」「いや、つーかヒートパックがストレッチ・PRIエクササイズの効果を凌駕するほどめちゃめちゃ有能なのでは?」という感想を抱くのですけれど…。

他にも、突っ込みどころとして、
- Inclusion/Exclusion Criteriaに基づき被験者を選んだ…と書いてありますが、その基準に関しての記述が一切ない
- スペーシングエラーが異様に多い
- 大文字・小文字の表記に一貫性がない
- 論文の最後に全部で5つの文献が列挙されているが、実際に文中で使われているのは1~3のみ。1と2は[1] 、[2]という風にカッコ表記なのに対して3はそのまま3と書かれているなど、こちらも一貫性がない
- スマートフォンをInclinometerとして使う妥当性の正当化が十分にされていない
- PRIエクササイズは90-90 Hip Liftと90-90 Hemibridgeをしたとあるが、これはどの被験者も両方を行ったのか?多分先行研究に則ってOber's 片側陽性患者がHemibridge、両側陽性患者がHip Liftをやったのだろうが、そうであればきちんと明記するべき
…などの「欠陥」が挙げられます。

うーん、改めて、これが私の学生(学部生)の提出する論文ならば、「よく頑張ったね、方向性と努力は悪くないから『AA』、でも論理的構成と統計的分析はまだまだだから『C+』だよ」と優しく成績をつけるんですけれど。仮にもジャーナルに掲載されている論文なのですから、その質は厳しく『F』レベルだと私は判断します。特に臨床家さんが読む価値も、考慮する価値もないでしょう。最近蔓延しつつあるPredatory Journalには気を付けなければいけない、Abstract(抄録)だけ読んでその論文を分かった気になってはいけないなと、改めて考えさせられます…。

1. Basu S, Kakade PP, Palekar TJ, Chitgopkar V. Influence of abdominal and hamstring muscle activation exercises over iliotibial band stretching on a positive ober's test in subjects with low back pain. Glob J Res Anal. 2017;6(15):704-705.
2. Katz NP, Paillard FC, Ekman E. Determining the clinical importance of treatment benefits for interventions for painful orthopedic conditions. J Orthop Surg Res. 2015;10:24. doi: 10.1186/s13018-014-0144-x.
3. Copay AG, Glassman SD, Subach BR, Berven S, Schuler TC, Carreon LY. Minimum clinically important difference in lumbar spine surgery patients: a choice of methods using the oswestry disability index, medical outcomes study questionnaire short form 36, and pain scales. Spine J. 2008;8(6):968-974. doi: 10.1016/j.spinee.2007.11.006.
4. Johnsen LG, Hellum C, Nygaard OP, et al. Comparison of the SF6D, the EQ5D, and the oswestry disability index in patients with chronic low back pain and degenerative disc disease. BMC Musculoskelet Disord. 2013;14:148. doi: 10.1186/1471-2474-14-148.

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  # by supersy | 2018-08-15 19:30 | PRI | Comments(0)

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