月刊トレーニングジャーナル4月号発売 & チーム医療の実践のために知っておくべきこと、その2。

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月刊トレーニング・ジャーナル4月号が発売になっています!連載11回目の今回は、「新しい臨床スタンダードは、新しい教育から」というキーワードと共にアメリカAT教育で取り入れられている様々な教育方法について書いています。理想の教育って、どんなものなんでしょう?私自身、今でも試行錯誤の毎日です。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。

ちなみに私の連載は次回5月号分で終了です!一年間、長いようであっという間でした。



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#4 Kraft et al., 2013
近年の医療はservice-orientedから、patient-centered, collaborative & interprofessional approachへと移り変わっています。この際、それだけ効果的な「コラボ」ができるかどうかでquality & safety of health careが提供できるか決まるわけですが、この論文ではスウェーデンのShort-term care (STC) unit (患者が退院してから自立した生活を送れるようになるためのリハビリ・ケアを行うintermediate stageのことを指すらしい)に勤務する4人のOT、3人のPT、3人のRN(女性)を対象に、個別に45-90分のsemi-structured interviewを行い(ちょっと幅が広すぎるのが気になる…)、IPPに関する現状について調査し、まとめたのが今回の論文です。

出てきたテーマは4つ。
1. Crossing Professional and Organisational Boundaries
興味深いと思ったのは「give & take」というメンバーの関係性と、互いが互いの代わりとなれるよう、メンバー同士が教え合い、育て合って「入れ替わり可能」な環境をつくるのがよい、とされているところです。ただ、それを実現するにはどうしてもextra timeがかかってしまうので、それを負担に感じるメンバーも出ることでしょう。お互いのことを、仕事の面だけでなくpersonalなレベルで知ること、そして医療界のhierarchial system (階級制度)を考慮し、尊敬した上で仕事を行うことも大事だと書かれています。これは、前回の論文の「階級制があっては成功しづらい、全員が平等な立場であることが大事」という意見と少し異なりますね。

2. Awareness of Own Professional Identity
それなりに経験を積み、能力と責任が取れるプロたちが自分の専門性を役割を理解して仕事に臨む、ということも大事です。これは先のstatementと矛盾する感じもしますが、私は「境界線はぼかして交わることがあっても、自分の役割の核となる部分は自分だけが担う仕事であるからして、そこは責任を持って全うする」ということなんだと理解しています。あまりに駆け出しだと自分に自信が無くて迷いが出てしまう(=核が揺れる)ことから、こういったコラボ業務はまだ向かないのでは、とも書いてあります。

3. Information and Knowledge Transfer
情報をいかに共有するかは他の論文でも散々論じられていることですね。ここでも強調されているのはやはり「頻繁」に行われるミーティング、そしてそれに対してメンバーがきちんと集い、意見交換おこなうこと。daily reportでも、electrical reportでも、約束事を決め、それをこまめに実践することです。これらの効果的な実践にはsupervisionとfeedbackがあったほうがいい、という一文も興味深かった。この論文では実際の業務中、Assistant Nurse (AN)が忙しくてミーティングに参加する時間があまり取れなかったこと、そして彼らはmedical recordを読むスキルに欠けていたため、時にこれらのコミュニケーションから取り残されていたことが「問題」として述べられています。どんな医療業務でも、SOAPノートやMedical abbreviationを読む能力は必要ということですね。

4. Balancing Between Patient, System and Process
患者さんの健康状態、法律、リハビリのバランスを上手く取ることというのは実に面白いテーマです。ここでは、「どれがひとつがdominantになってしまうとダメ、特に法律によってケア期間が定義されてしまうなど、dominantしやすい傾向にある」と書かれています。そういった「縛り」のせいで、提供できたケアが最善のものだったのか疑問に感じていた医療従事者もいたと。法律に起因する時間や経済的制限が大きなinhibitorになってしまうのは、どこの国も一緒ですね。

まとめのところで印象に残ったのは、コミュニケーションの欠如はとにかく様々な問題を引き起こす大きな大きな要因である、ということ。例えば自分のメンツや周りとの関係を気にして質問をすることを躊躇してしまう、という環境は問題が起きるのをクチを開けて待っているようなもんで。supervision (監視)が必要である、と最後に複数回強調されているのだけど、どういう監視が理想的なんだろう?チームの中のリーダーが監視するの?それとも総合的に「チーム医療監視役」という人を設けるべきなのかな?以前の論文から受けた「spontaneousなのがいい」というのとはだいぶ逸れた、「管理」「監視」推しの厳しめの意見がこの論文では論じられているけれど、そちらが本当に理想なんだろうか?それから「駆け出しの医療従事者には向かない」とも何度も言及されていたけれど、「この子ならもうコラボ開始しても大丈夫!」という判断はどこでしたらいいんだろう?「準備」と早めるのに有効な教育やトレーニング法には、どんなのがあるんだろう?新たな疑問も多く出てくる研究でした。

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#5 Arvinen-Barrow & Clement, 2015
この論文の著者であるArvinen-Barrow & Clement氏らは「スポーツリハビリに臨むmultidisciplinary approachは『2層』であるべきだ」という信念を持っており、Primary rehab teamとSecondary rehab teamに患者を取り囲む周りの人間を分類、それぞれがそれぞれに合った役割を埋めていくものである、と主張しています。Primary rehab teamは怪我をした選手と直接、長時間を共に過ごすプロ集団、つまりPT, AT, physicians, surgeonsによって構成されており (direct interactions)、Secondary rehab teamにはその他の医療従事者や専門家 (S&C Coach, biomechanists, sport psychology consultants, sport nutritionists)と一般の人 (coaches, family members, friends, teammates)が関わっているそうです(direct and indirect interactions)。

さて、この研究ではATがこのArvinen-Barrow & Clementの提案するmultidisciplinary approachを採用することに対してどう感じているか、実際に現場でどういったmultidisciplinary approachを体験しているかについてオンラインアンケート調査を行いました。対象となったのはランダムに選ばれたNATA会員2000人(教育者と臨床者を区別もしなかった模様…在住国もランダムなのでは?)。ちなみに調査に使われたアンケートは「ATと最低でも10年のトレーニング・臨床経験のあるsport psychology consultantsに事前に見てもらってface & content validityを確認したもんね」と書かれていますが、他のvalidity、例えばcriterion or construct validityは未確認のまま。論文では「初期の研究はこんなもんである」みたいなことが書いてありますが、うーん、どうなのかなー。いろいろ緩い感じがするけどなー。途中の「リハビリ時にはどのくらいの頻度でmultidisciplinary teamを構成して取り組んでいますか?」という質問に「全く使わない」と答えた人は「アンケートにご協力ありがとうございました」で強制終了する用に作られており、仮に「1%(100回に1回)」とでも答えていれば最後まで回答可能だそうです。

さて、アンケートをメールで受け取った2000人のうちその19.65%にあたる、393人から回答(低く聞こえるかもしれませんが、この手のアンケートで20%のresponse rateは一般的と言っていいでしょう。しかし、よりIPP意識の高いATが回答する確率が高いと考えれば、sample biasがないとはいえません)。男女比は45.8%:54.2%, 男性平均年齢は39.48 ± 10.87歳、女性平均年齢は33.65 ± 9.76歳、ATとしての平均勤務13.3 ± 19.99年。

ケガをした選手が、リハビリをしていく中でmultidisciplinary teamへのアクセスがあることは…という質問に対し、27.5%が『重要だと思う』、44.9%が『非常に重要だと思う』と回答(合計72.4%)。Multidisciplinary teamを構成すべきメンバーは?という質問のTop 10回答は
1. Athletic Trainer (99.4%); 2. Injured Athlete (97.2%); 3. Physician (94.6%); 4. Athletic Coach (84.7%); 5. S&C Coach (78.8%); 6. Parents/Family (74.9%); 7. Surgeon (65.8%); 8. (Sport) Nutritionist (62.4%); 9. Sport/Exercise Psychology Consultant (58.8%); 10. Teammate (52.5%)
…という風になっています。

Primary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. Athletic Trainer (98.80%); 2. Injured Athlete (91.70%); 3. Physician (81.50%); 4. Athletic Coach (60.70%); 5. Surgeon (50.00%)
Secondary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. S&C Coach (49.50%); 2. Athletic Coaches (46.70%); 3. (Sport) Nutritionist (46.00%); 4. Sport/Exercise Psychology Consultant (43.20%); 5. Teammates (42.90%)…となっています。リハビリにおいて最も重要な、最も患者と密にコミュニケーションを取っているべきPrimary point personは?という質問では77.8%がAthletic Trainer、15.4%がPhysicianと答えたそう。

実際の経験はというと、64.9%のATがmultidisciplinary team approachを採用したことがあると回答、割合でいうと、毎回、毎患者ではなく、時間にすると全体の業務の66.7%ほど。総じて多くのATはmultidisciplinary team approachをポジティブなもの、価値があるものだととらえており、コミュニケーションを密にして全員が"on the same page"でいることが大事であると感じているようです。コミュニケーションのツールとしてはemail (n = 187)、電話(n = 157)、顔を合わせてのミーティング(n = 149)、携帯のメール(n = 121)などが一般的。回答したATの約半数(55.3%)が今のリハビリアプローチが最適であり、満足していると答えた一方で、 44.7%が「改善の余地あり」と感じており、具体的には他のプロらと仕事できるアクセス(Sport psychologistやSport Nutritionistなどが特に『不足』気味)や、決まったreferralの形態、共通したelectronic record、そして他のプロとのコミュニケーションの頻度・質を高めることなどが課題として挙げられたそうです。

さて、このアンケートの結果のほとんどは著者の予想というか、propose通りでしたけれども、指摘すべきは「Athletic Coachesが(著者らの提案したSecondary rehab teamではなく)Primary teamのメンバーとして挙げられていた」というところでしょうか。コーチは選手の大きな支えになることもあれば妨げになることもあるので、これは解釈が難しいところです。著者は「コーチはあまりその介入が直接的だとやはり問題を増やす可能性は否定できない」とし、アンケート結果を無視する形で「コーチはsecondary rehab teamのメンバーに留めるべきだ」と述べています。ふーむ…。私はコーチによってはPrimaryであるべきだと思うけど、これは人柄なども大きな要因だし、一概には言えないんじゃないかなーと思ったり。

あと、ここでは書かれていないんですけど、"Physiotherapist"の需要がPrimary teamでは12位(25.00%)、Secondary teamでは21位(14.30%)とかなり低かったこと。リハビリの専門家なのに?と少し疑問です。もしかしたらこれが要因かな、と思い当たるのは、このアンケートはアメリカで行われたものなのに(アンケートの回答者99.2%がアメリカ在住)、Physiotherapistという欧州でよく使われる呼称が使われていたこと。これは他のいくつかの名前、例えばSports therapist、Sport/Exercise Psychology Consultantという名前にも同じことが言えます。存在しない呼称、混乱させるような呼称は回答者が選ばなかった理由になりえると思います。そもそもこのPrimary vs Secondary Rehab Teamというコンセプトはこの著者らが打ち立てたものであり、アンケートでもその定義がきちんと共有されているようにも感じられなかった。このアンケートそのもののvalidity、そして回答ATのランダムさが少しこの研究の問題点かな。興味深くはあるんだけど、あんまりわくわくは読めませんでした。

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#6 Arvinen-Barrow & Clement, 2017
同じ研究者らにより、同じアンケートを同じ形式でSport Psychology Consultant(SPC)対象で行ったのがこの研究。ちょっと疑問なのがSPCだけでなく、Sport psychology studentにもアンケートを配布したというとことかな…そういえば前回のアンケートもあくまで対象は「NATA会員」だったから学生も含まれていたということ?学生メンバーってかなりの割合を占めていたはず…となると、それってどうなのよー。前の論文で「経験が浅い子はIPPに向かない」という報告もあったし、若い子の意見を入れてしまうと反IPPに結果が偏ることもあるのでは?

アンケートを受け取った1245人のうち、5.0%にあたる62人から回答(ひくっ!途中までしか回答しなかったresponseは分析に含まなかったそう)。男女比は56.5%と43.5%で、平均年齢は38.2 ± 11.1歳、臨床経験は10.4 ± 9.98年。71.0%はアメリカ在住、25.8%はヨーロッパ在住(これも多いなぁ、回答者のバラツキは前回の研究と変わらないか、質は落ちている印象)。

ケガをした選手が、リハビリをしていく中でmultidisciplinary teamへのアクセスがあることは…という質問に対し、平均回答は『非常に重要だと思う』。Multidisciplinary teamを構成すべきメンバーは?という質問のTop 10回答は
1. Sport/Exercise Psychology Consultant (91.8%); 2. Athletic Coaches (88.5%); 3. S&C Coach (80.3%); 4. The Injured Athlete & Athletic Trainer (同率・78.7%); 6. Physician (72.1%); 7. (Sport) Nutritionist (67.2%); 8. Parents/Family (62.3%); 9. Physical Therapist (59.0%); 10. Teammate (54.1%)
…という風になっています。それぞれ自分の職業が一位になっているのはごく自然として、こちらではコーチ、S&Cコーチの順位が高いのが面白いなーと…ここをon the same pageにしておくことが選手の精神状態に多大な影響を与えるからかなーと勝手に考察。逆にAT、Physician、PTなどの順位は低めです。ちなみにここではPhysiotherapistからPhysical Therapistに呼称を直してますね。Sport Therapistというよくわからない職種はそのままだけど。

Primary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. The Injured Athlete (91.50%); 2. Sport/Exercise Psychology Consultant (86.45%); 3. Athletic Trainer (72.9%); 4. Athletic Coach (64.4%); 5. S&C Coach (49.2%) …これはATのそれとほぼ一緒ですね。一番違うのはSPCが2位にランク入りしていること。
Secondary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. (Sport) Nutritionist & Teammates (同率・49.1%); 3. S&C Coach (47.40%); 4. Massage Therapist (42.10%); 5. Parents/Family (40.40%)…となっています。これもほとんど一緒…Massage Therapistが入っているのはびっくり&意外。患者はマッサージがあると満足しやすい、精神的に落ち着いたりリラックスしたりがあるから?やはり精神的要素がちょっと強めなような。リハビリにおいて最も重要な、最も患者と密にコミュニケーションを取っているべきPrimary point personは?という質問では29.0%が「AT」、次いで12.9%が「患者自身」、8.1%が「SPC」、6.5%が「PT」「Physician」と答えたそう。ここは全然違いますね!ATとして他業種者さんにそれでもATという職業を一番高い割合で回答してもらっているのは嬉しく思うけど、全体としてはかなりばらつきあり。患者自身がPrimary point personというのは私からしたら怖い回答だけどな…Patient-centered careと患者自身に舵を取らせる医療とは違うと思うんだけど…。

実際の経験はというと、64.5%のSPCがmultidisciplinary team approachを採用したことがあると回答。これはATの64.9%とほぼ一緒ですね。実践したことのあるSPCのうち、50.0%が「改善の余地あり」と感じており、具体的に改善すべき点は 1) もっと患者を真ん中に置くこと; 2) procedureやmeetingをもう少し形式立てて行うこと; 3) お互いの仕事について、チーム内での教育の機会があること; 4) physicalとpsychosocialという患者のケア要素をもっと混ぜ合わせること…などが挙げられたそうです。これは全然違って面白い!

さて、これとひとつ前の研究で明らかになったのは、ATはSPCをSecondary rehab teamの一員であるべき、と思っている一方で、SPCはSPCをPrimary rehab teamのメンバーであるべき、選手や他業種のプロともっと密にコミュニケーションを取るべきである、と考えているということ。このギャップは興味深いですね。文章では「ATは生理的な回復に重きを置くのでphysicianやsurgeonなど、他医療従事者をPrimaryに置く傾向があり、SPCはあくまで『たまに来る人』、indirectなメンバーという認識なのでは」なんてありましたけれど、個人的な考察だと、「ATたちからしたら、SPCは本来Primaryであるべきだと感じてはいるものの、何しろavailabilityに限りがあり、現実的にそういった人材を身近に置いておけない環境があるため、それらを考慮した上でのSecondaryなのではないか」というところもあるんじゃないかと思いますよ。SPCさんたちは理想としては、そりゃーチームの身近にずっといてほしい。Primaryになってくれればこんな素晴らしいことはない。でもうちみたいな小さ目のNCAA Division-Iでは今のところそんな可能性はしばらくないからなぁ。

さて、同じアンケートを別職種で使い結果を比べる、ということのできる面白い論文群でした。次回に続きます。

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  # by supersy | 2017-03-12 12:00 | Athletic Training | Comments(0)

意識消失した患者の舌をひっぱる必要はあるのか。

救急医療のスタンダード化の重要性を強く信じている医療従事者のひとりとして、どうしても書き記しておきたかったので、この記事を残しておきます


3月2日、スペインのサッカープロリーグの試合中にフェルナンド・トーレス選手が後方から接触を受け意識を失って倒れ込み、同チームの2選手が即時に舌を引っ張って対応する、という出来事がありました(↑上動画)。2選手の反応の速さにも驚きましたが、私が一番ショックを受けたのはこの記事で(↓下リンク)担当医師がこれを「完璧だった」と称賛したという点です。

トーレスの命救った2選手…医師が称賛「意識を取り戻すのにしたことは完璧だった」

味方の急変に対して救急性を感じ、即座に行動した2選手のhumanityは高く評価されるべきであると思うのですが、医療的観点という角度から、私はこの対応を必ずしも「完璧」ではない、むしろ、下手をするとトーレス選手の命を危険にさらす可能性もある行為だったと考えます。選手がチームメイトの危機にいてもたってもいられなくなり、行動を起こしたその勇気と、その行動の内容の正当性はきちんと分けて、別次元で話されるべき事柄なのではないでしょうか?この記事では、医学的観点から、本当は何がなされるべきだったのか、もしそんな場面に選手や指導者が出くわすことがあればどうするべきかをまとめておきたいと思います。

●頸椎損傷の可能性
受傷時の動画から見ても、トレース選手が後方からの接触で頸椎を損傷していた可能性はこの時点で否定できません。少し大げさな表現になりますが、万が一頸椎の骨折や脱臼などが見られた場合、患者の頭部や首をほんの少しでも動かすことは「死」をも意味します。骨折や脱臼で不安定になっている骨(↓下MRI画像)が、動いた拍子に脊髄を傷つけてしまう可能性があるからです。だからこそ、我々医療従事者は「意識消失している患者は全て頸椎損傷があると見做し、即座に頭部・頸椎固定。最新の注意を払って迅速丁寧にスパインボーディングをすべし」という徹底した教育を受けています。常に最悪の状況を想定し、それを考慮して対処する習慣を叩き込まれているのです(実際に頸椎骨折を受傷したスポーツ選手が、現場にいたアスレティックトレーナーの適切な頸椎固定で九死に一生を得た、などというエピソードも毎年のように耳にします。彼らは決まって病院で医師に「動いていたら死んでいたよ」と言われるようです)。
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ですので、この受傷シーンの本当に正しい対応は下写真左(↓)にあるようにひとりの医療従事者が即座に頸椎を固定することです。そうして選手に声をかけ、意識が確認できない/頸椎損傷の可能性が除外できなければそのままスパインボードに患者を移動(↓下写真右)、頸・胸椎及び脊髄を固定した状態で病院へ搬送するべきでした。スパインボーディングのテクニックについてはこのブログでは割愛します。興味のある方は以前の記事をご覧ください。
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●頸椎損傷の疑いが除外でき、意識消失が見られる場合
(この状況では臨床的に不可能に近いと思いますが)仮にトーレス選手の頸椎損傷疑いが100%除外できたとして、その上で意識消失の対応を迫られているとしましょう。次にすべきはHead tilt/chin lift (頭部後屈頭部挙上法)という頭を後ろに反らし、顎を上げるようなポジション(↓下写真右)を患者に取らせながらの呼吸と脈の有無の確認です。…というのも顎を引いた通常の状態(↓下写真左)で意識を失うと舌根が沈下して気道を塞いでしまい、呼吸が停止する恐れがあるんですね。それを防ぐために、頭を剃らせ、顎を前に突き出すことで舌を浮かせて、気道を確保するのです。
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トレース選手に対応をした2選手は、恐らく「気を失うと舌が沈下し、気道を塞ぐことがある」という知識はしっかりあったのでしょう。だからこそ「指で舌をつかんでひっぱりあげる」という行為をおこなったのでしょうけれど、実はその必要はないのです。おでこと顎に手を添えて、頭部を反らせるだけで十分なのです。患者の口に不用意に手を入れるという行為は、感染症の危険性、誤飲、患者のgag reflex(咽頭反射)からの嘔吐、意識を取り戻した際に指をかまれるリスクなど、状況を悪化させてしまうかもしれない不必要な危険を伴うので、すべきではありません。

●頸椎損傷の疑いがあり、意識消失が見られる場合
頸椎損傷の疑いが否定できず、なおかつ意識消失が見られる場合(恐らくこれが今回の事故のシナリオだったかと思うのですが)、頸椎を動かさずに気道を確保する必要があります。この場合は、頸椎を固定した状態で顎だけを前に浮かせる、Jaw Thrust(下顎挙上法)という特殊な気道確保法を用いなければいけません。このテクニックは訓練を積んでいない方がおこなうことは推奨できませんので、敢えて写真は載せないでおきます。

気道確保の方法は他にも色々あり、現在、米国のスポーツ救急医療では、意識のない患者に対してはむしろ徒手でなく道具を用いた気道確保のほうが一般的になってきています。OPA(↓写真右)は挿入に3秒とかからない、シンプルで手軽な道具ですし、NPA(↓写真左)という鼻から挿入するゴム製のチューブは、顔面骨折を伴わない場合であれば患者が意識があっても使える、非常に便利で効果的な道具です(こちらについては以前トレーニングジャーナルの連載記事で詳しく書かせていただいたのでこれも割愛します)。
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道具を口や鼻に挿入することすらあれど、我々が指を患者の口に突っ込むことはまずありません。敢えて言うなら、患者が意識消失状態で嘔吐をし、吐しゃ物が口の中にあってそれを排除しければいけない場合にやむなく小指を使って掻き出すくらいでしょうか。それにしたって、suction deviseというポンプ状の道具があれば、そちらを使って吐しゃ物を吸い上げるほうが効率が良いです。つまるところ、「医療のプロでもよっぽどの必要性が無ければ患者の口に何かを突っ込むようなことはしない」ということを知っていていただきたいのです。

●てんかん発作の対応
「口に突っ込む」ついでに、てんかん発作の対応についても。昔は「てんかんの患者が発作中に舌を噛んではいけない」という考えから、発作中の患者の舌をつかんで引っ張ったり、口にタオルを入れることが推奨されていたこともあったようですが、今はその全てがガイドラインから外されています。発作中の患者の舌をつかむと自分が怪我をする恐れがあったり、口にタオルを入れると窒息の原因になる、という理由からです(日本てんかん協会のウェブサイトによる推奨事項はこちら)。下の写真のように、てんかんの発作中には患者を押さえつけたりせず、周囲のものにぶつかって怪我をしないようモノをどかし、静かに発作が収まるのを見守ることが重要です(プロの医療従事者ならば、時計を見て発作の長さを記録していくことも重要です。5分間たっても発作が収まらない場合は救急車を呼ばなければいけませんから)。発作中に失禁を起こしてしまうことも珍しくありません。周りに人がいるならば、プライバシー保護のために退室を促すなどの気配りも重要です。
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●本当にてんかんなのか?てんかん発作「のような」痙攣の落とし穴
もうひとつ、混乱させるようなことは書きたくないのですが、こちらも非常に重要だと思うので言及しておきます。こうしててんかんの発作について正しい知識を持った人に起きてしまうかもしれない悲劇のひとつに、「心不全患者の対応を見誤る」というものがあります。…というのも、心不全で心拍が停止した患者がてんかんの発作のような痙攣運動をする("seizure-like activity")ことは決して珍しくないからです。下の動画は1990年にバスケットボールの試合中に心不全で倒れ、そのまま命を失ったHank Gathersという選手の発作の動画です。
これを見て、果たして何人の非医療従事者が「てんかん」ではなく「心不全」だと思いつけるでしょうか?この患者に対して「ああ、てんかんかなぁ」と思い込んで、痙攣の停止を悠長に待っていては手遅れになります。知識のあるアスレティックトレーナーならば、てんかんの発作既往歴があり、この発作が120%てんかんが原因であると断言できる場合以外は(=つまりそんな状況は恐らく絶対にあり得ないでしょう)、周りの人間にAEDを持ってくるよう指示をだし、まずは脈の確認をするはずです。くどいですが、医療従事者は常に冷静かつ沈着に最悪のケースを考え、優先づけて対応できるように訓練を積んでいるのです。

●餅は餅屋、スポーツの救急医療対応は救急医療対応のプロへ
これだけの内容を、非医療従事者の方に全て覚えて対応してもらおうなんて、私は全く思っていません。今回一番書きたかったこと、それは、「救急時の対応はプロにぜひお任せください」ということです。

スポーツの現場にいる選手や指導者の皆さんに、無礼を承知でお願いです。怪我をし、倒れている選手には駆け寄って無理に動かしたりせず、「数歩距離を置いて見守る」という行動を通じて、我々の手助けをしてくださいませんか?受傷時の選手の倒れ方や受傷後の選手の身体の動きから障害が絞れることもあるのです。現場の医療スタッフの視界をなるべく遮らず、駆け寄りたい気持ちをぐっとこらえて、プロの知識と力を信じてくださいませんか?我々は現場のプレッシャーに影響されることなく鑑別診断をおこない(=可能性のある障害を頭でリストアップし)、効果的に確定と除外を行い、最短の時間で最善の判断をするように訓練を受けています。全ての命を守ることは不可能かもしれません。それでも我々はスポーツの現場をできる限り安全にしようと、日々ライセンスとプロとしての使命と誇りをかけて仕事をしています。そして自惚れと言われるかもしれませんが、スポーツの現場の「瞬発力」と「救急判断力」に関してはアスレティックトレーナーの右に出る者はいないとすら私は思っています。
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もし、今の皆さんのスポーツの現場に我々のような対応ができる医療従事者がいないとしたら、それこそ皆さんが声を上げ、行動を起こすべきです。中学校、高校、大学、アマ、プロを問わず、安全にスポーツをするためにはアスレティックトレーナーのような専門教育を受けた人間の存在が必要不可欠です。そんな人材を雇うのは無理だって?そんなことはありません。例えば、早稲田実業学校(初等部、中等部、高等部)には小出敦也ATCという私の先輩にあたるアスレティックトレーナーさんが勤務してらっしゃいます。前例など、いくらでもあります。皆さん、車の運転をするにあたって保険に必ず入りますよね。スポーツだってそれと同じだと思いませんか。安全への先行投資って、万が一のことが起こったときに、ああよかったやっておいて、と非常に有意義に感じるものではありませんか。野球で打者がヘルメットを被るように、アメフトで選手がショルダーパッドを着るように、サッカーで脛あてをするように、ラクロスでアイガードをするように、全てのアスリートにはアスレティックトレーナーがいて然るべきと私は思っています。非常時でなければでしゃばりません、後ろから皆さんの様子を静かに見ています、その代わり、何かがあったときは一番に皆さんの下へ駆け付けますから。買える安心を、実現できる安全を、手に入れないのはどうしてですか。
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  # by supersy | 2017-03-06 17:10 | Athletic Training | Comments(5)

チーム医療の実践のために知っておくべきこと、その1。

さて、今回からはInterprofessional Practice/Educationというテーマで10文献まとめます。これも今、AT教育では『主流』『王道』となってきているキーワードですね。
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#1 Molyneux, 2001
こちらはUKの文献、16年も前のQualitative研究です。古いですけど、丁寧にまとめられています。 「ここまで(80年代、90年代)に出版されてきたInterprofessional Practice関係の文献は『実現は大変だ』『こんな風にゴタゴタした』『こうすれば上手くいくんじゃないか?』という内容ばかりだったが、筆者はとても素晴らしい経験ができたので、それを共有したいと思います」という流れで、とある脳卒中患者に対してInterprofessional Teamでリハビリをしたらこんなにうまくいきました、その秘訣はどうやらこういうところだったんじゃないでしょうか、ってことをまとめています。

今回の「サンプル」はリハビリチームに参加したOT2名、PT2名、Speech Language TherapistsにSocial Workerがそれぞれ1名の合計6名。彼らに対してまずは45分~1時間ほどの個別のsemi-structured interviewを、そしてmember-checkingを行ったうえで、focus groupをして出てきたアイデアについてさらに語ってもらう…という形式を取ったようです。Focus group→in depth interviewのほうが「フツー」の流れなんじゃないかなと思ったけど、まぁそこは目をつぶっちゃっていいんでしょうか。…で、出てきた3つのthemesというのが…

1. Personal qualities and commitment of staff
メンバー全員が望んでこのチームに入ったというmotivation & commitmentがあったこと、そしてお互いが「臨機応変でなければいけない、柔軟でいよう」という意志があったこと。それから非常に興味深いことにこのチームに医師がおらず、dominateしようとする存在がなかったことから、安全感が生まれた、というのもありました。妬みの感情が無く(メンバーは全員女性だったそうなんですが…「意外」と言ってしまうとイケナイかな)、上下関係が生まれずにお互いがお互いの能力に自信を持てたこと、そしてだからこそお互いの仕事の境界線を動かしてもいいという冒険心も生まれたそうです。医師がいなかったからうまくいったというのは…意外なようで全く意外じゃない、どちらかというとすごくわかりますね(笑)。医師がいると、何となくみんな医師の機嫌を損ねてはいけないと顔色を窺っちゃうんですよね。

2. Communication within the team
少数精鋭のチームで、同じオフィスに全員が勤務しており、頻繁にコミュニケーションの場を設けたこと…詳しく言うと、一週間に一回のcase conferenceをおこない、それに対してメンバー全員が出席するよう最大限の努力をしたことも大事だったようです。全員が発言する機会があり、無駄な脱線は極力避けた、というのも頷けます(私は実りの無いダベリだけのmeetingが大嫌いなので)。患者のcentral noteも設け、そこにそれぞれがやったことを記録していったのも良かった、と。

3. Development of creative working methods
「どうしたらうまくいくのかわからなかった」ことこそが成功のカギだった、というのは面白いstatementですね。ガイドラインがなかったからこそ、全員が常にどうしたらいいか考えながら自由にやることができたそうです。最初こそお互いのtraditional roleを守ろうと動いていたそうなのですが、あれ、もうちょっとこんな感じでもいいのかもね、あら、じゃあ私もこれやりましょうか?とオープンに考え、とにかく患者を真ん中に置いて動いてみたことがよかったのでは、というコメントが多く出ました。

まぁまとめると、あれですね、スタッフになる人物は1) motivated, 2) committed, 3) experienced and 4) willing to be flexibleな人がいい…というのは言われれば当たり前な気もしますね。それぞれが、自分の専門性は何かわかった上で、それを壊す勇気がある、というのかな。わかってないと壊せないし、自我が確立されていなければ壊すことは怖いし。こういう仕事のスタイルはギョーカイの新人には向かなくて、きちんと経験摘んできている同士だからできることなのかな、と思います。ひとつの共通するベースで働く、チームでミーティングを頻繁に開く、どうコミュニケーションを取るかについて共通理解を設けておく…ここらへんも特に驚くようなことではないのですが、「医師がいなかったことで『平等感』が生まれた」というのはいやはやなんとも。これが成功の大きな要因のひとつだったというなら、医師アリでも成功するためにはどんなことを心がければいいのか興味が沸きますね。
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#2 Sumsion & Lencucha 2009
この論文はタイトル通り、Inpatient unitsにてInterprofessional teamの一員として働く12人のOTへのインタビューを通じて、Patient-Centered Practiceをする上でのbarriers (障壁)とfacilitatorsとは何か?それを実践している身として、どんなことを感じているのか?などについてまとめた研究です。こちらもQualitative, カナダの研究チームによる報告ですね。Rich description, member checking, audit trailをtrustworthinessの証明として使用。で、出てきたThemeをConcept Mapにしたものがこれ。
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●Facilitators
- Team cohesion, autonomy and consultation
責任とアイデアを共有すること、そしてこの研究ではinterprofessional teamのリーダーに医師がいたらしいのですが、その医師がその他のメンバーの専門性と知識を信頼し、彼らのclinical judgementを受け入れるとチームの活動が円滑に進みやすかった述べられています。大事なのは意味のある目標(meaningful goals)に向かって進むことなので、そのためにチーム内でのconsultingを頻繁に行い、お互いの抱える問題を声にして話し合い、collective planningを行うことは欠かせません。

- System enablers
この病院には地域と組織の両方のレベルでpatient-centered careをプッシュする風潮があり、community resourceがあったというのも特筆すべきことかなと。"client planning committee"という委員があり、患者こそがdecision makersであるべきだ、という理念を徹底させていたりとか (つまり成功図が見え、比較的ステップが明確な状態で仕事に臨めるんじゃないかなと)、あとは例えば患者さんをもっとよく知るために、一週間に一度一緒にお茶でもしに喫茶店にいったりすることも「仕事」と好意的にとらえてくれるような環境があると、確かにこういったコンセプトは実現しやすいですよね。

- Family collaboration and support
患者の家族にも目標を理解し、セラピストが何をやっているのか理解してもらうことは非常に大事。家族がいると患者の態度も変わったりもしますしね。となれば、家族も巻き込んだ透明性のあるコミュニケーションは当然欠かせません。

●Challenges
- Differing perspectives and paradigms
患者がdecision makerである以上、患者がしたい、やりたいと思うこととセラピストが「本当はこれができるはずなのに」と感じることにギャップがある場合はなかなか難しいそう。あとは、セラピスト間にも良くも悪くも職業別の「傾向」があり、例えば本文によればnurseとpsychiatristは(古い医療モデルである)medical modelに頼り、比較的自分たちが主導権を握ったままの医療を実践してしまうことが多い(今回のcontextとは反する)ので、それらの医療従事者が「現場仕切り役」だとpatient-centered careが実践しにくく感じる、という感想もあったそう。Assessmentの完了を「目標」においてしまっている医療従事者との仕事も(もちろんそれは患者の目標ではないので)非常にしづらかったのだそう。

- Competitive framework and boundaries
チームのメンバーが自分の領域を守るのにやっきになったり、物理的距離があって直接会う機会を設けるのが難しいというのも成功への障壁のひとつ。

- System barriers
「患者とコーヒーを飲みに行く余裕」はあっても、やはりそれなりの期間内に目標を達成しなければいけないというプレッシャー、そして、他のチームメンバーも忙しいのでvisitをどうスケジュールするかなどの時間的苦労はやはり多いようです。患者さんに経済的制限があり、思うように治療に通えない、そしてそれが理由でニーズを満たせない、というのも選択肢が限られてきてしまいますし、それから、このサービスを受けたい患者のwaitlistが長い(患者が希望してからこういった治療が実現するまで一年かかるそうです)ことも大きな障壁になったそう。どうやら慢性スタッフ不足もあるようですね。

- Family goals
家族の向いている方向、見ているものがチームや患者のそれと異なることも十分あり得ますし、文化的な違い(過保護だったり、家族がそうであるように、チームにも24時間体制のサポートを求めたり)が原因で理想的な治療が提供できないこともあったそう。

チームもシステムも家族も、facilitatorにもなる可能性もchallengeになる可能性もあるというのは面白いですよね。「新しいアプローチがしたいです、これ、古いシステムにでもぎゅぎゅっと詰めれば入るでしょ、ではなくて、新しいアプローチを試みる際には構造そのものを変える必要がある」というのにはうんうんと頷いてしまいました。medical modelからpatient-centered careへ、ってのがそもそもかなりのparadigm shiftだもんなぁ。職員の仕事の評価の仕方もがらりと変えなければいけないから、組織の人間全員がon boardじゃないと実現はかなり難しいのではないかと思いました。まぁ、今時medical modelで仕事してたらすぐクビになりそうなもんですけど…。それでもこの論文2009年発表ですもんね、そんなに前の話じゃないんだよなー。
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#3 Breitbach et al., 2015
次はNATA Executive Committee for Educationも中心になって書かれた、非常にAT教育の未来を語るうえで大事な論文です。アメリカAT界では2012年に正式に"Interprofessional Education (IPE)はProfessional/Post-ProfessionalレベルのAT教育で教えられるべき必修項目に入れましょう"と決まったわけですが、IPEの定義とはなんなのか、どう教え・実践されるべきものなんおか、これからの医療はどう変わっていくのか、などに共通理解を広め、深める目的でこのnarrative reviewがまとめられています。
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Uniprofessional practice/educationはともかく、Interprofessional practice (IPP)/education (IPE)とMultiprofessional practice/educationは異なるものなんですね。定義を並べて書いておきます。
Multiprofessional Education: members or students of 2 or more professions associated with health or social care, learning alongside with one another; parallel learning, rather than interactive learning
Interprofessional Education: an educational process whereby professions learn about, from, and with each other to improve collaboration and the quality of care
Multiprofessional Practice: Appropriate experts from different professions handle different aspects of a patient's care independently/ The patient's problems are subdivited and treated seperately, with each provider responsible fo rhis or her own area
Interprofessional Practice: health care provided in a coordinated manner by health professionals who share mutual goals, resources, and responsibility for patient care
"multiprofessional"は数さえあれば成り立つ、passiveなものでもあり得るのに対して、"interprofessional"は互いが互いから学びあい、協力し合う積極的な姿勢が無ければ成り立たないのが印象的です。IPPは医療ミス予防、patient advocacy(患者支援)の改善、医療費負担の軽減を実現させながら患者のアウトカムを最大限に引き出すには無くてはならないアプローチになってきているほか、医療従事者間の仕事に対する満足度、job retentionも向上するとも言われています。加えて、高齢化と慢性疾患の蔓延がますます増加していく社会で重要になる「予防医学」を実現するために、我々がもっと上達しなければいけない分野であるとも言えます。そして、IPPを実現していくためにはIPEを早い段階で取り入れ、学生のうちから他の医療従事者をcollaborative workをしていくのが当たり前であるという文化を植え付けることが大事になるわけです。逆に言うと、これからの若い学生は、こういった教育やトレーニングをしっかり受けている方が"employable"という風に見られることも意識して損はないかもしれませんね。

IPEに参加した学生は1) 他の医療従事者のscope of practice、2) 他の医療従事者の価値、3) patient-centered careのノウハウ、そして4) interprofessional teamで働くチームワークスキルがつくと言われています。お互いの仕事に対するネガティブなstereotypeを減らし、他の医療従事者とのコミュニケーションの自信が培われる、卒業後も自主的に学び続けるwillingnessが向上する、などの利点も。IPEを始めるタイミングに関しては文献によっても意見が分かれており、「学生にプロとしての自我がまずは芽生えるまで控えるべき」「いやいや早いうちからそれでもやるべきだって」の両方の主張があるそうな。共通して言えるのは、IPEを始めた段階では学びの環境はnon-threateningでどの専門の学生が何人ずつ…など、細かいバランス、細部にまで気を使った教育を提供することが大事ということ。他の医療従事者との「絡み」を楽しんでもらうことが第一歩。Didacticとclinicalの2つのphaseに分けてIPEをおこなうことが多いようです。IPEは彼らの日常業務に近ければ近いほどいい…ということなので、例えばケーススタディーに基づいてそれぞれの専門職が何をするか話し合う場合にも、学生が普段実習に出ている現場を意識し、いかにも「ありえそうな」症例をシナリオに使うことなんかが大事なんでしょうね。学生が医療の道を正式に歩み始める前に、他の医療受持者をshadowする機会を設けるというのも大事なのでは…なんて文章もありました。

IPE実践のためには教員自身も同様に他の学部の教員とお互いの領域を理解し合い、コラボしあう必要があります。ただ、多くの教員、そしてPreceptorもこういう訓練を受けていないという事実はどうしても障壁にもなり得る要素なわけで。単純に様々な業界の学生をていやっと同じ教室に入れればいいというわけではなく模擬症例などを使って何を学んでほしいのか、明確なSLOとそれを推し測るmeasureを持ってして意味ある学習体験をデザインしなければいけないわけですよね。これに関してこれ以上の明確なやり方は記述されていませんでしたが、こういったことを実現するにはadminの理解と協力も必要です。

効果的なIPPを行うには、まずはATが自分自身が何者なのかを他の医療従事者に明確に伝え示すことができる能力("ability to communicate the scope of our knowledge, skills, and abilities and value as part of the health care team with others")が必要不可欠。それから上でも言及したことですが、それぞれの役割の理解がしっかりしていない、誰かが場を支配しようとする、などがあるとconflictの原因になるとも書かれていました。相互理解、相互respectがあり、まめにコミュニケーションを取ることが成功の鍵であり、階級制度を持ち込んでしまうと失敗する、というのは肝に銘じておきたいですね。

個人的には「いつ」IPEを始めるべきなのかについてもう少し情報が欲しいです。もちろん、やりようによっては一年目からでもガンガン学べるのだろうとは思うのですけど、文章にもあったように「プロとしての自我」があることがやはり重要に思えるし、自我が無ければ「安全な学びの場」造りが難しいのではと思ってしまうからです。あとつくづく思うのは、以前どこかにも書いたかもですけど、AT学部がやっぱり適切なcollegeにいることが本当に大事だなと…。うちのように、College of Educationにいるようでは他の医療従事者、医療教育プログラムとのコラボレーションは難しいです。College of Health Scienceに一刻も早く移れるものなら移りたい…でもたぶんあと数年は無理だろうなぁ…。リソースの共有、哲学の共有、common languageの共有、理想的な教育にはやはり欠かせません。

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  # by supersy | 2017-03-04 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

The Ottawa Ankle Rules最新Systematic Reviewを読み解く。

さて、以前「1テーマ10文献のレビューを続けます」と書いたんですが、あまりに「読まされる」文献ばかりだとストレスがたまるので、今回はちょこっとだけ、本当に手短に自分が「読みたい」文献についてまとめておきたいと思います。以前に二回(2012年1月13日2016年1月25日)記事を書いたことのあるThe Ottawa Ankle Rule(ORA)ですが、昨年11月(正式誌面発表は来月)に最新のMeta-analysisが発表になっていたようです。どんなこと書いてあるんでしょう?
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この論文のイントロに書いてあることで、大きく頷けたのが「今までに発表されたSystematic Reviewでは、ERに勤務する医師がOARを使った場合、どれだけ正確にレントゲンの必要性を見極められるか…というところに焦点が当てられていたが、近年医療の形態は大きく変わりつつあり、今では整形外科の怪我の診断は医師(= secondary care provider)ではないprimary care providerの医療従事者(文献ではオーストラリアで書かれたものなので『NurseやPhysiotherapists』と書かれていますが、アメリカではもちろんこの筆頭がATかと)が担うことが一般的になってきている」というところ。なので、今回のSystematic Review & Meta-analysisでは「誰が評価をしたのか」にも区別しながら分析をおこなっています、なんだそうだ。ふむふむ。確かに私もそこに興味があるので(i.e. 医師がERで使った場合とATがスポーツの現場で使った場合で違いは出るのか?)、今回は特にここの結果に注目しながらまとめたいと思います。

Systematic Reviewにincludeされたのが68論文に含まれていた66の研究(何故論文数>研究数?この数の差についてはきちんと説明されていないのですが…しかもうち60がfull textで8がabstractってどういうこと?Full text手に入れなよ!ちなみに総患者数は22,273人とこれは文句のないサイズ、平均28.3±10.4歳)。Meta-analysisからは「骨折が一件も含まれていなかったひとつの研究は除外した(n = 65が含まれた)」そうなんですが、それでも2x2テーブルがあればMeta-analysis組に入れても良かったのでは?それは除外するのに足りる理由なのか、個人的には疑問が残るところです。
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さて、一気に結果に飛びます!医師 vs その他のPrimacy care providerの比較ができたのはOAR 足首編(写真一番上の赤い四角)とOAR 足首・中足編(写真一番下の赤い四角)。その他のPrimary care providerを「その他」という表記にして数字を抜き出したのが下の表です。
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研究の絶対数が少ないので「その他」の95%CI幅が場合によっては少し広いのはまだまだ仕方ないと考慮するとして。総じて「その他のPrimary care provider」のほうがほんの少し低い数字になってはいますが、95%CI幅を見るとお互いの数字を含んでいますし、総合的には「OARは医師がおこなっても、その他のPrimary care providerがおこなっても効果は同じ」と現段階では断言して良いと思います。もっとちゃんと言うと、「医師とその他の医療従事者のどちらがおこなっても、OARはレントゲンの必要性を除外する力は強く(陰性だった場合、骨折がある可能性は0.2-2.3%にまで激減する)、確定する力は少ない(OARが陽性でも、骨折がある可能性はせいぜい20.4-22.1%程度にしか上昇しない)」ということです。

Prevalenceから考えて、Post-test probabilityを陽性、陰性の場合でそれぞれ計算してくれてあるのはイメージがしやすくていいですね。骨折そのもののPrevalenceが2万以上の患者数を併せて全体の16.3±6.6%だった、というのも結構貴重な数字かな。覚えておこう。陽性でもせいぜい20%止まりっつーのは、あれだな、OAR陽性ちょっと意識的に「軽視」したほうがいいってことなのかもな(臨床現場では、「オタワ陽性患者」には前回紹介したTuning Fork Testを追加でおこなってそれで最終判断を下すっつーのがやっぱり一番現実的かなー)。

正直言ってTable 1の表はMeta-analysis論文としてはかなり雑な印象なんですけど(カテゴリー別の総患者数も入れておいてくれよ、とか、比較するならp値も入れてよ、とか色々注文をつけたくなってしまう)、雑なだけについつい見ながら「ここに注目すればこういうことも言えるのかな…」「こういう見方をすればああいう風にも解釈できるのかしらん…」とあれこれ考えさせられてしまう、妙な中毒性のあるデータ群です(苦笑)。統計好きな人は、ぜひ実物を見てみることをおススメします!

1. Beckenkamp PR, Lin CC, Macaskill P, Michaleff ZA, Maher CG, Moseley AM. Diagnostic accuracy of the ottawa ankle and midfoot rules: a systematic review with meta-analysis. Br J Sports Med. 2017;51(6):504-510. doi: 10.1136/bjsports-2016-096858.

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  # by supersy | 2017-02-27 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

医療と環境問題: Sustainabilityという言葉を考えてみて一区切り。

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環境問題の話も今回で一区切りにします。今回は最後の3つの文献をレビュー。
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#8 Overcash 2012
素晴らしいLast nameですね。これはアメリカの文献。

さて、手術時にガウンや患部以外の部位を隠すdrape(perioperative gowns and drape)などが使われたりしますが、これは手術で使う織物類の総重量30%くらいを占めるんだそうです。これらを一度使ってぽいっと捨ててしまうか、再利用するかで出るゴミの量もだいぶ変わってきそうですね。様々な観点から、reusable(再使用可能ガウン)とdisposable (一度使い切り、使い捨てガウン)を比較してみよう!というのがこの論文です。

さぁ、複数回使える vs 使い切りのガウンやdrapeを「どちらがより良いのか」という視点から比較しようとしたときに、1) 患者と職員に適切な保護を提供できるか、2) 着心地、使い心地が良いか、3) 経済的か、4) 環境への配慮、5) 関連する業界・職の可能性や未来性…などが判定基準のカギになってきます。「繊維素材もどんどん変わり、ガウンの安全基準の試験法も変化しているから、廃止された素材・試験法を検証した古い研究はちょっといったん忘れようぜ!経済的な時代背景も今とは違うしな!現在使われている新しい素材・基準のみに絞ってちょっと文献調べてみたぜ!あ、あんまり数がなかったんで、qual中心にまとめてみたわ!」というのが、まーこのnarrative reviewのざっくりとした主旨です。

1. Protection of Health Care Workers and Patients
もともとあくまでgowns & drapeはく複数ある感染予防要素のひとつでしかなく、且つ文献も限られているので論じにくい分野ではあるかと思うのですが…。最新のスタンダードでは、liquid & viral protection penetration testに合格したものがLevel 4 (最高の安全性)で、そこから液体が染み込みやすくなっていく順にLevel 3, 2, 1…と下がっていくようなランキングになっているそうで、この同じ基準を一貫して使ってreusable vs disposableを比較していないと比べようがないですよね、というのは至極真っ当な意見。つまるところ、そういう研究はまだないみたいです。ざっくりとしたデータで「reusableもdisposableでも、gown/drape共に感染予防に目立った差はありません」というCDCその他の報告があるくらいだそうで。
ただ、現存するデータでは「使い切りのほうが安全」という考えはエビデンスに基づいてはいない、ということにもなります。ここらへんの誤解は、徐々に解かれていく必要がありそうです。それと同時に、何回ガウンを使ったのかきちんと記録を付けるようなシステム、定期的なガウンの防護力のテストなど、新たに取り組まなければいけない事柄も出てきそうですね。ここらへんは、続報を期待です。

2. Comfort
ここもデータとしてあまりないそうなんですが、敢えて計測できそうな要素を挙げるならbreathability (通気性)でしょうか。他にももちろん「フィット感」「ゴワゴワ感」「音」なども着心地という言葉に含まれるとは思うのですが、そういうのはもう、ほんとに、研究されていないところなので(むずかしいことじゃないから、だれか研究しちゃえばいいのに、と思うけど)。Thermal manikinを使って行われたreusable vs disposableガウンの「着心地」比較実験では、どちらの種類も同様に3時間以上の手術でも体温をcomfortレベルに保てたという報告があり、他にも水分の蒸発率も大差なしという研究、そして最後に実際に執刀医らに着せ、軽めの手術から重ため、長めの手術まで119件の手術を行ってもらい、実際に「どーでした?」と尋ねてみた、という研究では、「reusableのほうが着心地がよかった」と答えた人が多かったそうです。

3. Economics
今までに発表された論文は1) トルコ: reusable gownsのコストはdisposableの25%だった ($8 per surgical package vs $33); 2) アルゼンチン: reusableのほうが78%ほど割高だった ($16 vs $9 per surgical package); 3) カナダ: reusableのほうが4%ほど割安だった…が、これは誤差の範囲内かもしれない、という値段に関しては一貫性のない結果が出ているそう。Reusable gownsを使う病院の99%は、その殺菌消毒を外注しているらしいので、そこらへんも考慮するとなると、実際のコストはほとんど同じくらいで、出てきている「違い」は外注業者との交渉次第ってことになるんでしょうか。

4. Environmental Life Cycle Analysis
これは製品の制作、使用、廃棄に至るまでの全ての段階でのCO2発生、人間への毒性や水質汚染などを総合的に推し測り、(reusableがその一生を終えるくらいの)複数回使った場合の影響をlife cycle inventoryとして査定するという分野なんだそう。1998年に立てられたCDCの仮説では、(再利用するために必要な洗濯や消毒を考慮すれば)reusableもdisposableも環境にかかる負担は結果的には同じだろう、だったそうなんですが、それ以降発表された6件のlife cycle studiesでは一貫してreusable gownsのほうが環境への悪影響は圧倒的に少ないと結論づけられています。Reusablesの代わりにDisposablesを使うとエネルギー消費、温室効果ガスが200-300%増え、水消費量は250-330%増加(reusableは洗濯いっぱいしなきゃいけないのに?と疑問だったんですが、disposableを作る際に必要な水の量はreusableの洗濯で使う水消費量よりもはるかに多いようです)、廃棄物は1000ガウン当たり38-320kg出て、これはreusableの750%増にもなるのだと。うわ、すごい数字。これはreusableの圧勝で、議論の余地なし。

5. Related Job Market
Reusableの使用が増えれば、洗濯、消毒、そしてtransportation関係の職種は活気づきそうですね。Localなレベルで。しかし、比較labor studyなどがあるわけではないので、この分野はまだまだ研究が必要です。

さて、5つの基準に基づいて改めてこのふたつを比較してみると、reusableとdisposableはどちらも必要なProtection Standardを満たし、着心地は同じか少しreusableがいいくらいで、コストはほぼ同じ、しかし環境に圧倒的に優しいのはreusable…となれば、どちらがsustainabilityにとってより必要かはもう明確ではないかと思います。筆者は「どちらかを完全に排除すべき、というわけではなくて、恐らく正解はmix、適切な時にreusableを、適切な時にdisposableを使えるという充実した選択肢だ」とも述べています。なるほど、適材適所で上手く選べるようになるってことね。これはなかなか、繰り返しも多いけど読み応えのある、興味深い論文でした。
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#9 Sattler & Hall, 2008
家、学校、職場などでどんな製品をどう使うかが環境に大きな影響を与えることはよく知られていますが、医療施設ももちろん例外ではありません。「健康」を促進する我々は、「環境に配慮した、健康で安全な場所を作る」模範的立場にいなければいけないのに、まだまだ程遠いというのが現実。医療施設は医療サービスの提供の場であるだけでなく、大きな買い物も行われている場所でもあるわけですよね…例えば、食べ物、医療器具、紙、オフィス用品、電池、リネン、建築製品などなど…。そういった製品がどう作られ、使われ、廃棄されるかという一生(life cycle)を理解した上で、何を買って何を買わないか決める、つまり、環境に配慮した製品選びをすること=「Environmentally preferable purchasing (EPP)」について、この論文の前半で説明がなされています。

例えば、ほんの10年前まで(この論文が出たのが9年前なので、今でいうと19年前ですけども)、水銀の入った体温計や水銀灯の使用は非常に一般的でした。しかし、今ではデジタル式体温計や蛍光灯の使用が当たり前で、さらにそれらを再使用、リサイクルしたりもしていますね。代用品が出始めた当時は「水銀体温計交換運動」なども地域でかなり積極的に行われたようです(これは知らなかった)。その甲斐あって、今では医療器具が原因で起こる水銀汚染は劇的に減ったと言ってよいでしょう。印刷紙も大量に買いますよね、その際には塩素漂白された(→そのプロセスでも、焼却廃棄する際にも両方でダイオキシンが発生する)新しい紙を使うのではなく、漂泊のされていない再生紙を買うほうが環境への配慮が大きいと言えます。これらがEPPの実践例です。

Environmentally Conscious Waste Management(環境に配慮した廃棄マネジメント)も、Purchasing Decision同様に重要です。
  ● Reduce
  ● Reuse
  ● Recycle
この3つのRに関してはもう散々書いているので今更説明はいいですよね。医療廃棄物に関して歴史を少し振り返ってみると、そもそもなんでこんなに慎重になるようになったかというと、1980年代のHIV/AIDSの流行がきっかけだったんですって。その時は何を介して感染するのか分かっておらず、病院で生まれる医療廃棄物は「容疑者」だったわけで、とにかくなんでも赤いバイオハザード袋に隔離して、デカデカとした危険印貼って…と仰々しく廃棄していたわけです(恐怖というのは時に非常に大きなモチベーションになりますね、良くも悪くも)。病気感染経路についてより知識が広まった現代では「なんでも」ではなくて、体液の付いたものに限ってこういった「隔離」廃棄が行われているわけです。
リサイクルに関して、紙やプラスチックはまだ一般的かもしれませんが、忘れられがちなのが電池のリサイクルです。アメリカでは電池も分別せずに捨て、そのまま焼却されて環境汚染の原因になることは珍しくありませんが、これを病院規模でリサイクルしよう!と活動を始め、それが大きな歴史的ムーブメントになった…なんて看護師さんも過去にいるそうです。電池のリサイクルは病院に限らず、うちの大学でも是非積極的にやってほしいなぁー…。リサイクルという選択肢が住んでいる場所に無いというのは正直非常に困る…。
その他、焼却処理してはいけないものの典型として、水銀(airborneとなり、そのうち水に溶け込んで、魚などを汚染、最終的に人体へ入ってくる)やプラスチック(焼却時にダイオキシン発生→植物や水を介して肉や魚を汚染→人間へ。脂溶性のため、母乳などに溶け、幼児の身体にも入る)があります。育児では母乳はなるべく推奨されるべきもの、という前提を守るためには、病院では特にダイオキシンの発生の多いPVCというタイプのプラスチック製品の使用を減らすようなPolicyを打ち立てる必要があると筆者は述べています。

空気汚染も考慮しなければいけません。特に分解されにくく、長期的に渡って私たちの健康を脅かす存在なのがPersistent Organic Pollutants (POPs)という化学物質類で、これらは殺虫剤や産業廃棄煙によく含まれています。この論文では、病院での殺虫剤の使用を減らすため、Integrated Pest Managementという方法も提案されています。この手法では、まずは1) 虫の食べ物、2) 飲み水、3) 巣へのアクセスを発ち、そして4) 入口(建物のヒビなど)と防ぐ、という物理的な方法を試したうえで、非毒性の虫よけを使う(もしくは、使うならば非拡散系のゴキブリホイホイ系のものに限る)んだそうです。あと、POPsに限らず、病院で頻繁に使われるものの中にはAsthmagensやAsthma triggerになるものって結構多いんですって。消毒剤とかラテックスとか。DEHPというプラスチックを柔らかくするために使われる化学物質は男性生殖器官の機能低下(不妊や新生児の先天性欠損症)ともその関係性が報告され、今では医療器具にDEHPの使用しないよう、FDAから通達が出ているんだそうな。

それから、病院で提供する食事(患者はもちろん、職員やその他見舞いなどの来院者用も)はなるべくローカルな農家や業者が卸しているもの、オーガニック野菜や、合成ホルモン・抗生物質を使っていない牛乳や肉を使うなどが大事である、と筆者は述べていて、他にもsustainable food practiceとして、自販機でより健康的な食べ物を売る(ものすごくざっくりとした書かれ方ですが、アメリカの自販機で売っているものって基本的に恐ろしいものばかりなので私は個人的に頷けます)、食べ残しはcomposerへ、Farmers Marketsなどをホストする…などの面白い提案を挙げています。

病院で実践できる細かい提案を多く含んだ、これも面白い論文でした。実際にこういう取り組みをおこなっている病院に、時間があれば是非見学に行ってみたいなぁー。AT施設でこれからsustainable practiceを実践するためのいいお手本、いい学びになると思うんだけど。私もこういうところ、これからもっと積極的に学びにいかないと教えられないよ。
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#10 Verderber et al., 2008
最後の論文です。こちらは、Health Administration(i.e. 病院管理職)の観点からSustainabilityを考えています。論文冒頭では医療産業の爆発的な拡大、そしてそれに環境管理が追い付いていないことを指摘。環境保護が盛んに訴えられるようになっても、医療団体の多くは「コストがかかりすぎる」とGreen化に否定的だとも注意喚起しています。

1990年代に建設物のエネルギーパフォーマンスを総合的に評価するランク付けシステム、Leadership in Energy Efficient Environmental Design (LEED) rating systemが完成。一定の基準を用いポイント形式で評価、優秀な建物には銀、金、プラチナ認定が贈られるといった仕組みを採用し、環境保護を視野に入れた建物を表彰する取り組みを始めました。 2006年までに30,000を超える団地がLEED認定を受けており、LEEDは史上最も成功したプログラムのひとつとして一般に広く認知されています。多くの都市や政府レベルの建物は最低でも「銀」レベルのLEED認定を受けることが義務化されているそう。そんな建物の中に病院などの医療施設はさぞかしたくさんあるんだろうかと思えば、全くそんなことはないというのだからびっくり。最初に認定が下りた病院はBoulder Community Hospital Foothills Campus in Coloradoで、これは2005年とかなり最近の話みたいです。
2003年にLEEDと並行する形でThe Green Guide for Health Careというプログラムも開始。Green GuideではLEEDとは少し異なるポイントシステムを採用し、より「まだまだ始まったばかり」の医療界の環境への取り組みに寛大な姿勢を示した、医療に特化した環境保護建設プロトコルとして、こちらも広がっているそうです。こういったシステムについて、Health Adminの教育プログラムでしっかりと教育がおこなわれるようになるのが理想的である、文化を植え付けることができる、と筆者は述べています。

Sustainability関連で起こり得そうなジレンマ、そしてその解決策について教育プログラムで話し合う機会を設けることで、将来のHealth AdministratorsがLEED/Green Guideというシステムにより詳しくなったり、interdisciplinary curriculumを通じて「様々な職種のプロ(i.e. architect, interior designer, landscape architect, urban planner, etc) と手を貸し合って問題解決をする」ことの習慣づけなどをしてはどうか、とこれも教育に関してクリエイティブな提案をしています。私はHealth Adminのカリキュラムについて全く詳しくないので、ふーん、というのが正直な感想ですが、この論文で紹介されている「10のジレンマ例」のシナリオはなかなか面白かったです。様々なプロと協力しあいながら、色々な視点で物事を分析できる能力は、確かにHealth Adminさんたちには必要な能力だと思うので、願わくば、彼らのmultidisciplinary educationの一環に我々ATが含まれているといいなぁーなんて思いながら読んでいました。

さて、Sustainabilityは、不慣れながらも興味深いトピックでした。しかし、私の専門分野ではないので、これらの文献を読むのは思いのほか骨が折れました…。次は、また別のトピックで文献10レビューします。ひー、全然終わらないよ。

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  # by supersy | 2017-02-26 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

医療と環境問題: Sustainabilityという言葉を引き続き考える。

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前回に引き続いてsustainabilityの文献を読んでいます。こうして読んでみると、前回紹介した3つのAT関連のsustainabilityの論文は、かなり流行りの最先端だったんじゃないかという気がします。他の医療職と、後れを取っていない!あれを書いた人たち、すごいなー!
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#4 Anaker & Elf, 2014
スウェーデンの文献、舞台はATから看護師界へ。環境破壊が進み、異常気象、土地が枯渇し、海水が上昇し、食べ物がなくなって健康にも影響が出始めているにも拘わらず、看護界に現存するsustainabilityに関する文献はごくごく限られていることを指摘。これからこのコンセプトが看護教育の中で"sustainability curriculum"として根付いていくことの必要性、そして環境保護を意識した看護臨床での実践が行われていく重要性を強調しています。

看護界隈の文献で、sustainabilityに関してどんな定義付けがおこなわれ、どのような実践が提案されているのか?というのをまとめたのがこのnarrative review。14の文献をレビューし、要約しています(看護界って新しいトレンドに敏感で、色々なことを活発に話しているイメージがあったのでこの少ない数字は個人的には意外。探し方に問題があったのかもしれないけど)。ではまずは言葉の定義から。

sustainability/sustainableという言葉の語源はラテン語の"sustinere (= to hold)"からきており、そこから派生した意味として現在では1) able to continue for a long time (長く続けられる)、2) causing little to no damage to the environment and therefore able to continue for a long time (環境を破壊することなく、長く続けられること)という意味で使われるようです。ここで紹介されていたひとつのsustainabilityの定義、"a development that meets the needs of the present without compromising the ability of future generations to meet their own need (まだ見ぬ世代の未来の人々の生きる選択肢を妨げることなく、今日の我々のニーズを満たすこと)"は中でも秀逸だなぁと。

Sustainabilityを理解、実践する上で重要な単語は1) Ecology (生態系のバランスを保つ); 2) Environment; 3) Future (この二つはsustainabilityの中心となる単語と言っても過言ではない、と筆者); 4) Globalism (地球規模で考える); 5) Holism (我々はHolistic practitionerである以上、holistic perspectiveでsustainabilityを考えていかなければいけない、とのこと);6)Maintenance (…これはholdともほぼ同じ意味ですね)。
例えば、看護師の勤務するsurgical unitでモーションセンサー式スイッチの導入でスタンドバイ電力消費を減らしたり、麻酔ガスのリサイクル(…なんていうのができるんですね!ここらへんは全く不慣れなので分からないです)などを通じてmedical waste (医療廃棄物)の削減をしたり、牧場運営関係の温室効果ガス発生を減らすため、病院での食事は週に二回は肉無しにしたり(これは、一概に素晴らしいともいえないのでは、という気もしますが…職員、患者さんの声は聞いているのかな)…という取り組みを提案しています。

ユニークだったのが「Antecedents and Consequences」というセクションですかね。Sustainabilityが生まれるまでに起こらなければいけない「前提」があるのだとしたら、1) climate change (気候の変化、特に温室効果ガスの影響が大きい); 2) environmental awareness (それに気づくものがいること); 3) confidence in future (未来への希望が無ければ、we have nothing to build upon…とは耳に痛い一言); 4) responsibility (個人もそうだが、社会と政府レベルでも); 5) willingness to change (これら全ての前提が意味を成すかはコレにかかっていると言っても過言ではない)…の5つなんだそうで。

Sustainabilityに関する人々の知識、態度、実践をobservation, interviews, surveyを通じてこれからも積極的に推し測っていく必要があるでしょうし、実際に環境に起こせる変化はCO2排出量などの具体的な数値を使っても示していくことができますね。

…うーん、concept analysisという、「今産声を上げたばかりのコンセプトを検証してみました」という、こういうタイプの論文を読んだことがなかったからかもしれませんが、よくこの(どちらかというと薄い)内容でこの(多くの)ページ数書いたなぁという、なんというか、読みにくい文章でした…。あんまりピンとこない…、そんな意味のある情報があるように感じられなかった…。もう一回後で読んでみよう…。
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#5 Grose & Richardson, 2016
こちらも看護学、2016年発表の比較的新しい文献。イギリス。
「医療は温室効果ガスの『大いなる出元』であり、リソースを著しく消耗している」― という入口から、sustainability literacyをcore competencyとしてprofessional levelの学生に学ばせる必要があるのでは、という近年の提言も紹介。Sustainabilityを教育に組み込んでいくために、こんなことをしてみたんですけど、皆さんも参考にしてみてはいかが?と教育案を提示しています。
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さて、この論文で紹介されているのは2年生の看護学生を対象に行った、シナリオ・ベースのsustainabilityへのアプローチ。まずは「将来的にプラスチックが手に入りにくくなり、価格が上昇する」という想定(シナリオ)を聞かされたあとで、学生たちはグループに分かれ、プラスチックという資源はどのように作られるのか、それによって我々の提供する医療がどう影響を受けるかディスカッションを行います。そのあとで、プラスチックで作られている「日常品」がどれくらいあるか、他に同様に影響を受けそうなマテリアル(綿や紙など)についても協議。インターネットを使ってそれぞれの物質がどれほど普及しているのか、どんな代用品が可能なのかを調べながら、無くなった場合の影響が大きい順番に並べていきます。順位を付けたところで、それぞれの物質に対し、医療の現場でそれぞれがどのように使われているかを明確にしながら、clinical waste, general waste, recycle/reuseのうち、どの処理法が適切かさらに議論。その「処理法」のコストも考慮に入れながら、「これはこういう用途だと血がつくので臨床廃棄しかないね」「これはもう一回使えるんじゃない」とわいわい話し合うわけです。

この経験を通じて学生が何を学び、何を考えたかアンケートを取り、レビュー。学習に参加した293人のうち、290人から回答(任意だったため)。98.97%の参加者が「役に立った」、97.57%が「現実味があった」と答え、具体的には「特に影響順に並べたのがよかった」「毎日やっている臨床との関連性がはっきりしていた」「結果を考えずにモノを使っていたんだなぁと実感した」とポジティブなコメントが並ぶ一方で、廃棄処理に関しては「病院のwaste management policyやinfection control policyと反するところもあり、今回話した内容をそのまま現場で実践するのは難しい」という懸念も多くあがったそう。

「実際にこのトレーニングを受けてみて、これからどんな行動をとりますか?」という項目では、「他のスタッフとも話し合ってみようと思う」「ゴミの分別などもう少し注意してみてみようと思う」「ポリシーに疑問をぶつけてみようと思う」という回答が。「何か他にコメントはありますか?」という最後の質問では、「3年時にsustainabilityについてのリサーチプロジェクトを設けては」「一方的な講義ではなく、参加型の話し合いスタイルだったのがいい」という好意的、積極的な意見が見られた一方で、「司法からの介入の必要性を感じる。一人で行動し、ライセンスを失うのはリスクが大きすぎる」という心配をシェアしたものも。

まとめると、懸念として挙げられたのは1) 上記の通り、現場で定められている廃棄法と環境保護を理想とした場合の廃棄法とのギャップ; 2) non-sterile gloveの過使用 ― 必要でないときにも手袋をする傾向(overuse, misuse)が多く示唆されたが、「手袋をしていないとpoor practiceだと思われる」というプレッシャーもどうやらあるのでは…。しかし、手袋のmisuseはかえってcross-contaminationを招くこともあり、ここは更なる研究が求められる分野かも、とのこと。ふーむ、これは看護師ならでばの面白い視点!あんまり考えたことなかった(ATの多くはまだまだunder-useが問題なので)。この論文は面白かったなー!やっぱりqual中心でもデータがあるほうが楽しい。
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#6 Bretti et ai., 2014
こちらはOncology (腫瘍学)界からの論文、イタリア発信。
1980年代にbiomedical modelが主流となり、医療は化学、物理と分子生物学の影響のみを受け、一人の医師が一人の患者を担当するのが当たり前の時代がしばらく続きました。この時代、患者のアイデンティティーはなく、「あなたはこの病気だからこういう治療をする」という一直線のレシピ本のようなアプローチが多く見られたといいます。
1977年あたりに台頭してきたbiopsychosocial modelという考え方が徐々に広まり、患者の人生を考慮に入れ、患者自身が病気をどう見ているか、どういう人生を送りたいと思っているかに医療判断が大きく影響されることがよしとされ、一直線ではなく、holisticなもっと複雑なアプローチが許されるようになったのです。一人の医師が全てを担うのではなく、multi-professional teamによって、複数のプロが患者の快方に関わっていくのも、そう考えると至極当然です。
さて、筆者らは「現代の医療はとにかく治療効果が重視され、cost-effectivenessとsustainabilityは後回しだが、それでいいのか」と問題提起しています。「効果のある」治療を受けるためには法外ともいえるような退学の治療費を払わないといけない…なんてケース、TVなどでも目にしますよね。Oncologyはそういった問題の一番の被害者といっても過言ではないかもしれません。今出現すべきは環境にも配慮を払ったecological model」なのかもしれません。アウトカムを落とさず、患者一人一人の個性をappreciateした上で、コスト的に最も効率のよく、更に環境への悪影響が最も少ない選択肢も同時に選んでいきましょうよ、というわけです。

イタリアの"Italian College of Hospital Medical Oncology Directors"という団体は"Position Paper of Green Oncology"という公衆声明を発表したそうですよ。その中には大きく以下の11の項目が含まれています。

1. プラスチックの使用は最小限に。
2. 経済的負担を軽減するために、risk sharingと結果に基づく医療費請求が行われるべきである。Drug Day Therapyは可能であればどんどん採用されるべきだし、t使われなかった薬は回収されるべきだ。
3. 効果と安全さえ確立されたならば、biosimilar drugsの使用は大いに歓迎されるべきである。
4. 細胞増殖抑制剤のprepでは、teratogenic, mutational, そしてcarcinogenic riskは最小限に抑えられるべきである。
5. Oral chemotherapeutic treatmentは適切なケースでは一刻も早く開始されるべきである。
6. emailやインタネットを介してのコミュニケーションは患者と医師の関係を補完するためにも積極的に行われるべきである。
7. エビデンスとclinical guidelineに基づき、不要なfollow-up visitsは軽減
8. biomedical modelではなく、biopsychosocial modelが使われるべきである。
9. 可能であれば、トレーニングや教育はオンラインで行うべきである。
10. Overtreatmentはunacceptableなものであるとみなされるべきである。これは患者、医療従事者の両者にとって脅威にしかならない。
11. 癌の予防医療、そして生態系への配慮はいかなるときも行われるべきである。

こういうのが2013年に発表されているんだとしたら、イタリア腫瘍学界、最先端まっしぐら恐るべしですね!やはりヨーロッパのほうがこういう取り組みはアメリカの10年は先を行ってるんでしょうか。
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#7 Aditya & Rattan, 2014
さて、今回のまとめ最後の論文は薬学の世界から、インドの文献。
飲み残しや期限切れの薬は「医療リソースの無駄遣いであり、ひいてはlost opportunities to achieve therapeutic outcomesの反映、環境への負担である」という強いstatementから始まるこの論文。イギリスでは€300、アメリカでは$4180億という額のお金が年間で「薬剤廃棄」によってドブに捨てられているんですって。「薬学」に関わる医療廃棄物というと、まぁ前述したように、処方されたものの使われなかった薬や期限以内に使用されなかった薬、汚染されてしまった薬のことを指すわけですけども、こういうのを文字通り「水に流してしまう」ことで川や池、そしてそこに住む魚たちの生態系が変わってしまってきているという報告もあるんですって。私知らなかったんですけど、薬って28年とか経ってもactive ingredientのほとんどは90%以上の濃度を保ったままactiveだというのだからびっくり(じゃなんでそんなにさっさと「期限切れ」になっちゃうんだろう?)!NSAIDsとかホルモン剤、抗生物質は特に危ないそうです。抗生物質なんか、あれですね、薬の効かないおっそろしい化け物ができそう…。抗うつ剤やカルシウムチャンネル抑制剤なんかも水への影響が強いとか。

さて、薬剤師は適切な薬の廃棄法について知っているのか?この重要な知識の有無と、患者への説明の仕方についてsurvey形式で調査したのがこの研究です。北インドに住む薬剤師を無作為に選び、そのうち56%にあたる、84人から回答がありました。多くの薬剤師が未使用の余った薬はdistributor(支給会社)に送り返していたそうですが、固形の薬、しかも少数の場合は一般ゴミとして廃棄してしまっていると回答する者も多かった(29%)そう(もちろんこれは不適切)。90%の薬剤師が「定期的に期限切れの薬を撤去するシステムがある」と回答していたのは喜ばれるべきことですが、ほぼ同数の89%が「適切な廃棄法については学校で習ったことがない」とも答えていたというのにはびっくり。教育の根本的な改善が求められますね。「distributorがどう薬を廃棄しているか知らない」という人も21-37%いたそうで、「焼却が最も適切な薬の廃棄法である(=正解)」と答えたのは69%、つまり31%が不正解。98%が「患者に薬の廃棄法について聞かれるたことはない(=教育をしたことがない)」と答え、58%が「薬の不適切な廃棄は環境汚染につながるであろう」と回答しています。うーーーむ。これは色々と課題の見えてくる結果です。

薬学はproduct-orientedからpatient-oriented serviceへと変わるべきだ、とは筆者。FDAの規定に従えば、薬の多くはトイレに流したりではなく(流していいものも26種類あるようですが)、例えば固形の薬である場合、猫のフン入れとか、ヒトが触らなさそうな容器に入れて捨てるか、コミュニティー内の薬回収プログラム(Take-backサービス)を通じて返却したりするといいそうです。液体のものは塩や小麦粉と混ぜ、ヒトが寄らなそうな匂いをつけてから捨てるなど、やっぱり一工夫するのがいいみたいですね。もちろん、中毒性が高いようなcontrolled substanceに関してはstate-licensed facilityに書類を提出して処分する、といったようなもっと細かい決めごとがあるようですが。ちょっと先に書いたように、汚染を起こさない方法としてはincineration (焼却)が最も良いそうです。で、燃えカスを漏れない容器に入れ、薬剤廃棄物として特別廃棄する、と。
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Take-backサービスという地域単位の取り組み、私は初めて耳にしました。使わなかった薬を郵送で送り返したり、ボックスに返却したりするようなシステムなんだそう(↑)。こういうのには今回調査対象になった薬剤師さんの中にも「こういったサービスはもっと行われるべきである」という積極的な態度の人は多い(73%)ようで。こういうの、薬剤師学生も巻き込んで各地域が積極的に取り組めば、コミュニティーにも個人にも根付いていいかもですね!あとは処方する際のタイムスパンを短くする(i.e. 何ヶ月分と出す代わりに数週間区切りにする)とか、新しい薬が効くかどうか試す際は一週間だけのトライアル処方にするとか…。

この調査はインドでおこなわれたものですが、この薬社会アメリカではどうなのかものすごく気になります。しかし、薬剤師という職業、薬を調合し生み出すチカラだけではもうだめな時代ですね。きちんと廃棄できて処理できて、環境への配慮ができて確かに「一人前」なのかもしれません。こちらも非常に興味深い内容でした。

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  # by supersy | 2017-02-25 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

アスレティックトレーニングと環境問題: Sustainabilityという言葉を考える。

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"Go green!"という言葉は英語で「地球に優しく!」という意味でよく使われます。環境問題への取り組みはまだまだ後進国であるのがアメリカの現状ですが(州にもよると思いますが、テキサスではゴミの分別すらしません。リサイクルも大学では一定規模おこなっていますが、地域規模の取り組みはゼロ)、それでも「もっと変わっていかなければいけない」と危機感を持って様々な形でメッセージを発信している人たちもいます。今回からは、数回に渡ってスポーツと医療の現場での環境問題への取り組みについての10の論文をまとめていきたいと思います。

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#1 Dietrich, 2009
Sustainabilityとは文字通りだと"the capacity to maintain processes, function, diversity, and productivity over time"という意味ですが、この論文では"a philosophy that promote habitual behaviors that help create a vibrant economy and an optimal quality of life, while respecting the need to sustain natural resources and to protect the environment"という風に定義づけられています。長いですね。つまるところ、『自然資源と環境を守りつつ、経済的活気と人生の質を保てるように生きていくための生活習慣を根付けていこうという哲学』ということなんだそうです。生活の質を犠牲にして環境を守るのではなく、両方を成立させる方法を模索する、とでもいうんですかね。
もちろん、我々の職務は医療であり、最優先事項は「sanitation=衛生」ですので、例えば一度使った手袋や注射針をそのまままた使うとか、そういう形のリサイクルは絶対に許されるものではありません。しかし、例えばアイスバッグを再利用可能なマテリアルのものにするといったような工夫は十分可能ですよね。「適切な環境下で、持てる全てのresourceを最有効活用する」ことこそがsustainabilityの実践なのです。
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され、アメリカのスポーツというのは「エコ」というところからある意味一番遠いところにいるような気もします。アメリカに現存する至高のエンターテインメントのひとつであり、「無駄」も「贅沢」として楽しまれているからです。大きな試合のtailgateなんかに参加したことのある方ならわかりますよね、そこらへん泥酔のお祭り騒ぎ、食べ残しに飲み残しが散らかって、ゴミがあちこちに溢れていますから。

この論文では、ATが主体となってAthletic Departmentに"Sustainability Committee"を設立することを推奨しています。そして、組織的に「Go Green=環境にやさしく」なるために、やるべきことは3つあると述べられています。

1) Research What Other Schools Are Doing/他の大学がどんな取り組みをしているか調査する。
例えば、University of Colorado at Boulderでは1970年から学生が中心となってEnvironment Centerという組織を形成し、環境問題情報の共有と大規模なリサイクル活動に取り組んでいるそうです。大学のフットボールの試合でも"Zero Waste (無駄ゼロ)"活動を行い、試合で出たゴミの80%(なんと40トン!)をリサイクル、再利用、もしくは堆肥化することに成功。さらに、自転車での来場を推奨する"Free Bike Valet(おまかせ駐輪無料)"サービスも展開し、車での来場者も劇的に減っているそうな。
University of Wisconsinでは、ひとりの学部生が教授らの協力を経て、スポーツの試合、ひと試合で生まれる二酸化炭素などの温室効果ガスの量を測定(carbon footprint、チームや観客などの移動、試合中のエネルギー消費などに基づいて計算)。そして、その(1,170トン)二酸化炭素を相殺するに足るだけの木々を地元や州の農協などと協力して植林し、「保護森林地区」として制定、"carbon-neutral condition"を作り上げました。
Athletic Departmentが主体となって行っている環境キャンペーンには、University of Wisconsinの"Wear Red Think Green"キャンペーンというのが有名です。ゲームデーメディアで積極的に環境問題に関する提言をおこなったり、試合の日に積極的にリサイクルしたり。「3-5年以内にはティッシュは全て100%リサイクル古紙のみを使うようにする」や、「試合の送迎シャトルを増やす」などなど、長期的なプランも含めて腰を据えてじっくりと進んでいるプロジェクトです。加えて、Athletic Departmentのスタンダードモデルを作るべく、現在NCAAとYale大学が提携して"best practice in sustainability for athletes"を形態化しようとしているところなんだとか。ふむ、この論文は数年前のものだけど、形になっているのかな?むくむく興味が出てきます。

2) Initiate a Sustainable Project/環境保護プロジェクトを始める
知った後は、何かを自分でも始めることです。誰もが始めやすいものとして良い例が、Nikeの"靴リサイクルプロジェクト"。もう使わなくなった靴をNikeに送り返すとその靴をリサイクルしてくれるそうで、既に2250万もの靴が集められたとか。コカ・コーラ社とEPA(Environmental Protection Agency、アメリカ環境保護庁)が提携しておこなっているRecycle Mania Competitionという取り組みも。 10週間という時間的括りの中で、どんな環境保護キャンペーンをおこなっているのか、全米各地の大学(参加校は全米400を超えるとか)の取り組みを競争形式でランク付けするんだそうです。

3) Be an Advocate Who Leads by Example/まずは自分が模範役に
大学規模の取り組みは大事ですが、もちろん個人個人のレベルでどんなに小さなことでも始める、続けるということも等しく大事です。私の母校、University of Floridaでは卒業生が自主的に「緑の誓い(Green Graduation Pledge)」を述べる機会が設けられているのだとか。意思表示をしたい卒業生は、卒業式に胸に緑のリボンをつけ、「これからの人生の選択をする際に、環境問題を念頭に置きます。この大学で学んだことを、これから私が学び、働き、生きていくコミュニティーのsustainabilityを増やすために使います」と誓うんですって。私が卒業した年(2009年)にはなかったから、最近の試みなのかしら?面白いですね。
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#2 Dietrich, 2009
Part 2のこの論文では、冒頭で「アメリカ人は人生で平均して成人の体重x600倍のゴミを生み出す」という恐ろしい統計をシェアしています。そこから改めて、医療従事者として、そして多くの若者の確かな情報源としてATはsustainabilityを謳う最適なリーダーであると言及。我々がすること、しないことは多くの人に見えているし、ATが「持っているものを最大限に使う」ことに長けているという点は、個人的にもかなり納得です。

●Reduce, Reuse, Recycle, and Buy Recycle!
できる限りのものを電子化して、paperlessへ。ミーティングの資料もメールやパソコン、プロジェクターで共有し、紙の消費を減らす(reduce)。試合の際、紙コップを使わずにボトルやカウを使用する(reduce)。テーピングの代わりにサポーターを使うのも資源には優しいですね(reduce)。使用した紙コップや空のペットボトル、段ボールなどはリサイクルへ、一定保存期間が過ぎた医療記録もシュレッドしてリサイクル(recycle)。デスクカレンダーは使用した後、小さく切ってメモパッドに、ぷちぷち緩衝材は足のリハビリ器具に(reuse)。あと、結構忘れられがちなのが「リサイクル商品を選んで買う」という努力なんですって。なるほどー。

●Be Smart About Transportation
ゴルフカートなどを乱用せず、必要ない時は歩くとか、あとはガソリンで動くものではなく、太陽電池や電気充電タイプの乗り物を使用するのもいいですね。教育で言うと、オフキャンパスの移動の際になるべくcarpoolをしていくとか、最近ではZipCarという「燃費のいい車の時間毎のレンタルサービス」っていうのもあるんですって。知らなんだ。

●Conserve, Don't Consume
電灯を普通のものからCFL電灯に変えるだけでエネルギー消費が75%削減できるとか、「部屋を出る最後の人が電気を消しましょう」と注意書きをしておく/Motion Detector式の電灯にするとか、パソコンは5分触らなければ画面が消える設定にしておくとか…定期的に不要なメール履歴を削除することでデータ容量が増えたりも(個人的には消しすぎないよう気を付けたほうがいいと思いますが)。手や食器を洗う際に水をこまめに止めたり、手を乾かす際にペーパータオルではなく空気乾燥機にするなどもできますね。

●Teach Sustainability
未来のATにこういったことを教え込むことも重要。Administrationの授業などで教えられるのが最適かも。
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#3 Potteiger et al., 2014
最後はこの論文。環境破壊の影響で増えてきているスポーツ障害の例として、heal illnesses, asthma, respiratory disorders, nutritional deficienciesを挙げ、「2012年の調査によれはATの多くはenvironmental sustainabilityに対しての知識もあるし、積極的な姿勢を見せているものの、プラスチックや水、紙の使用などでまだまだ我々が改善できる点が多くある」と指摘。

●Effects of Heat
地球温暖化が進むにつれ、低外気温が理由での死亡率は減り、郊外気温が原因で起こる死亡率は上がることが予想されます(まぁ当たり前なんですけど)。外気温が上がることで最も影響を受けやすいと言われているのが高齢者と女性。精神疾患患者、子供、暑さの影響を受けやすい職業の人と持病持ちの人も同様にリスクが上がると考えていいでしょう。

●Effects of Air Pollution
空気汚染で悪化が懸念されるのが喘息とアレルギー。中でもメジャーな空気汚染物質の6つのうちの2つ、オゾンと二酸化酸素の増加と喘息とその他呼吸器系の疾患の発生率は密接な関りがあると追われています。特に空気の状態が悪い日や時間帯に、例えば喘息持ちの選手は外での練習を避け、締め切った室内で代わりにトレーニングを行うなどの介入をする必要がこれからは増えてくるかもしれませんね。

ひとつ前の論文同様、こちらでもATが率先して環境問題に取り組む基盤を作っていくことの重要さを強調。既に環境問題担当のCommitteeがあればそちらと提携して、もしないならば組織の上の人間にそういったCommitteeの設立を提言することが大事だと書いてあります。一度基盤ができたら、現在ATスタッフで取り組んでいる環境への取り組みと、これからもっと改善できることを列挙し、何をとにかくすぐに取り組むべきか、どれをもう少し長い目で見ていくべきか…優先順位を付けるとよいそうです。現在のエネルギー消費やコスト、廃棄の量などを把握するために、Facility Managerに連絡を取ったり、企業などにEnergy Audit(施設全体でどのようなエネルギーがどのように消費されているのか分析する)を依頼したりする必要もあるかもしれません。現状のデータがあってこそ、そこから先の取り組みの成果が見えてくるものなので。

a) 施設のACの設定温度を変える、b) パソコンや、モニター、物理療法器具などの電源をこまめに切る、c) 一日の終わりに道具のコンセントを抜く、電気を消す、d) 物理療法器具の定期評価、必要があれば買い替えをする、…などを通じてエネルギー消費削減への取り組みを深めたり、あとはやっぱりMotion Detector式の電灯はいいみたいですね、10-40%のエネルギー削減になるんだとか。必要なもの以外はプリントアウトしない、などもやはりここでも言及されています。こうすることで紙はもちろん、電源やプリンターのカートリッジも長持ちしますしね。パソコンやコピー機も、場合によっては購入せずレンタルしたほうが安かったり、無駄も無かったりするみたいです。

さて、この論文後半ではATデパートメントで環境保護に特化したポリシーの成立をすべきである、そして、他の論文でも述べられているように、reduce, reuse recycleに取り組むべし、と推奨されています。紙コップからボトルに、というのは特に目新しいものではないですけど、他に進言していることとしては、飲み残しの水やスポーツドリンクを氷を足して低い温度に保ち、翌日の練習に使う、や、whirlpoolやcold tubsに使った水は、棄ててしまう代わりに、植物にやる水に再利用する、などもすべきであると書かれています。なるほど、確かに家でもお風呂の残り湯で洗濯したりしますもんね。紙もそうですが、ATクリニックではプラスチックの利用もかなり多いので(plastic bags, plastic wraps)、そちらのリサイクルも取り組むべきであると述べられています

ATで取り組む環境問題…。恥ずかしながら、あんまり考えたことはありませんでした。それに、「アメリカは無駄を何とも思わない国だ」というところを受け入れすぎていたのかも。例えば建物は基本、夜間ずっーーーーーと電機は付けっぱなしとか(防犯のためらしいです、お店なんかもずーっと電気ついたままなので渡米当初はびっくりしました)、クーラーもバカみたいにガンガンとか(アメリカ人のほうが基礎体温が高い、何ていいますけど、本当なんですかね?でも私が凍えていても、けろっとしているのがアメリカ人です)、そういうのがこの国の文化なんだから、部外者の私がやいやい言うことでもないんだろう、と思っていたので…。こうした活動、これからも広まるといいですね。今度はATに限らず、医療従事職の他分野のお仕事についても読んで学んでみようと思いまーす。

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  # by supersy | 2017-02-20 23:00 | Athletic Training | Comments(0)

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