「脳震盪受傷後に休息しても意味はない」論を考える。

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月刊トレーニング・ジャーナル10月号が発売になっています!
連載5回目の今回は「医療最前線だからこそ求められる救急力」という前回からのテーマを引き継ぎ、『急性頚椎損傷疑い』を米国ではATがどう判断しどう処置を施すのかという具体的な手順と手法に焦点を置いています。最新のPosition Statementに書いてあることはもちろん、未来のそれに含まれるであろう変更点についてもまとめました。いつもは難産ですが、これは筆の走りが良かった回です(笑)。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



さて。
キレイなもの、美しいもの、好ましいものを見せられて「素晴らしい!」というのは簡単ですが、見たくないものを目の前に出された時にヒトの本性が出るんじゃないかななんて思うんですよね。貴方はそれを直視し、冷静に見定められますか?こっそりと見なかったことにしますか?それとも感情的になって「こんなものはデタラメだ、嘘っぱちだ、認めない」と叫びますか?
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研究や論文の世界…つまりエビデンスの世界でもひとつのことに対してふたつの食い違う見解が出てくることはよくあります。例えば前回は「脳震盪受傷直後に、いかに速やかに運動を中止し、休息することが大事か」という論文を紹介しましたが、そしてそれを読んだ多くの人がその結論を「好ましい」と感じ、900を超えるFacebookの "Share"や "Like"をしてくださった訳ですが、今回は前回同様最新の、しかしこんなタイトルの論文を紹介したいと思います。1「脳震盪後、急性期の精神的・肉体的休息は回復を早めないかもしれない」―つまり、前回の論文と真逆の響きです。

この研究は脳震盪受傷後翌日丸一日(24時間)に、「徹底的な肉体的・精神的休息」を強制させた患者("Rest"組)25人と、そうでない患者("No Rest"組)25人の回復を調べたもの。症状が完全消失までにかかった日数、神経認知テスト (CNT)、バランステスト (BESS)、SACがBaseline値に戻るまでの日数、と競技復帰に向けた運動開始までにかかった日数を比較すると、CNT、BESS、SAC値回復と運動開始までの日数はグループ間に差は無かったものの(p > 0.183)、症状消失までにかかった日数はなんとRest組のほうが悪いという結果に(5.2 ± 2.9 vs 3.9 ± 1.9日, p = 0.047)。

この研究では「Rest組の患者は(受傷当日と翌日の合計で)平均約40時間ほど休息をしていたわけであるが、この比較から、急性期の肉体的・精神的休息は脳震盪の回復を早めないどころか、症状の消失を1.3日ほど遅らせる可能性があると言える」…という結論が出されています。休息が悪影響を及ぼす?一つ前のブログ記事とは完全に矛盾する内容のように思えます。では、我々はこの結果をどう受け止めればいいのでしょう。
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この結果を鵜呑みにすることも、拒絶することもできます…が、私が思うに、真のクリニシャンがすべきはそのどちらでもありません。真のEvidence-Based Practitionerが持つべきは「Be open-minded and skeptical (受け入れろ、しかし疑え)」というマインドセット。「真実」に近づくためには、より多角的にモノを見つめる必要があります(上図: 「これは丸だ」「いや四角だ」と、一見食い違うように見える意見も、本当はどちらもその角度から見たものとしては正しくて、複数の意見を合わせた「円柱」こそが真実なのかもしれません。どちらかの意見に捕らわれすぎていては永遠に真実は見えてきません)。受け入れろ、しかし疑え―今回もするべきは同じだと私は考えます。「ふむふむ、キミの見方、考え方は面白いねぇ」とその切り口に敬意を払い、感謝をしつつ、「でもじゃあまぁ、キミの疑わしいところをまず洗ってみようか」と冷静にざっくりと見定める必要があるということです。ではこの研究の「疑わしいところ」とはなんでしょう?

●Odd Study Design and Potential Selection Bias
この研究のデザインは実に妙です。分類するならRetrospective (後ろ向き)とProspective (前向き) study(研究)の合いの子といったところでしょうか。というのも、これは論文冒頭にも書かれている通り、事前に計画されたわけではなく、偶発的に生まれた研究だからなのです。元々何らかの脳震盪研究をしていた真っ最中に、たまたま脳震盪からの競技復帰(RTP)に対するポリシーの変更が決定し、「じゃあ、前後で回復の早さを比べちゃえ」ともうひとつエクストラの研究(今回の論文)をひねり出したわけ。なので、ポリシー変更前の脳震盪患者25人が「No Rest組」でどちらかというとRetrospective(=取っておいたデータを急きょこの論文を書くのに使うことにした)のに対して、変更後の25人が「Rest組」でProspective(=この研究をすると分かった状態で新たにデータを取った)なんですよ。グループ分けがランダムではなく時間軸で分けられており、加えてよく読むと「consecutive(連続した)」という表記もないので、「RTPポリシー変更直前に脳震盪受傷した連続した25人と直後に受傷した連続25人(下図、例1)」ではなく、「RTPポリシーを変更する前に脳震盪受傷した25人と変更後に受傷した25人(下図、例2)」を使った可能性が高いです。ニュアンスの違いがわかりますか?後者は格段に研究者が使用するデータを作為的に選んだ可能性が高まります。使用するデータを研究者が作為的に選んだのだとしたら、この研究結果には研究者のバイアスが色濃く残っているかもしれません。
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●"History" Effect
加えて、RTPポリシー変更が採用された2012年7月という時期も引っかかります。アメリカでは各メディアの報道や各州での脳震盪法令の制定に伴って、脳震盪に関する世間の知識と意識はここ数年で劇的に変化しつつあります(今では「CTE」という言葉を理解するアメリカの一般の方も多いんじゃないでしょうか)。この「意識改革」の真っ只中にいたであろう被験者たちが、たまたま2012年7月より前には脳震盪の影響を軽視して復帰したいがために「もう症状はない」とウソをついていた可能性 、そして2012年7月以降は脳震盪の深刻さを実感する被験者が増え、「実はまだ頭が痛む」などとより正直に報告するようになった可能性というのは十分にあります。研究者の意図しないところで、時代そのものの変化の影響を受けた可能性があるわけです。これはちなみにHistory Effectと呼ばれ、研究の妥当性を下げる要素としてよく知られています。
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●グループ間のDemographicの差
これは論文内のTable 1で性別、年齢、身長・体重や過去の脳震盪受傷数などに関して「グループ間の差は無かった、p > 0.05でした」という報告がありますが、私個人としてはきちんとp valueをそれぞれの項目に対して見せてほしいです。例えば、p = 0.055だったら統計学的に有意な差まではいかなくても十分に影響を与えうるトレンドがあった可能性もあります。少なくとも、男女差はかなりあるように見えるので(Rest組は男18/女7、No Rest組は男13/女12)、実際に数値を表記してくれないなんて、何か後ろめたいことでもあるの?と意地の悪い私なんかは疑りたくなってしまうわけです。

●実際のRest組とNo-Rest組のアクティビティー
もうちょっと詳しく解説したいのが両グループのアクティビティー制限です。
1) Rest組: 受傷当日はもちろん、翌日丸々、コーチと連絡を取り、一切のチーム・個人練習や筋トレ、他の怪我の治療も禁止。Student Disability Service Officeの協力も得て授業には参加させないのはもちろん、チームミーティング、スタディーホール、課題やテスト勉強も禁止するという徹底っぷり。テレビやパソコン、携帯電話の使用も「やりすぎないよう」患者に直接指導したそう。しかし、この24時間研究者が実際に監視を行っていたわけではなく、患者がこの「指導」に従ったかどうかは直接患者に「実際のところはどうだったの」とself-reportする形でのみ確認を取っています。患者がウソをついた可能性が十分に考えられるのと、それよりももっと大きな問題なのはこれをデータ化して結果として報告してないことですかね。もし患者が「いやー、休めとは言われたけど一日中ゲームしてましたわ」とか「結局宿題ちょっとやっちゃいました」とか正直に報告していたとしても我々読者はそれを知る余地もないのですから。
2) No Rest組: 2012年7月以前の25人は学業に関する制限はなく、むしろ授業はなるべく休まないように指導していた("absence is strongly discouraged")という記述が確認できます。肉体面は、チームとの運動は症状がなくなるまで再会してはいけないという制限は当時もあった一方で、私生活での運動やADLには特に制限を設けなかったそう。なるほど。これもRest組との「指導」の違いは理解できますが、こちらのほうがより不明瞭なアドバイスで、「学校にはなるべく行くように」と「指導」されていた患者が実際に学校をサボって一日休んでいた可能性も確認できませんよね。self-reportで確認もしなかったわけですから、選手が実際受傷翌日に何をしていたかのデータは一切存在しません。「体調と相談して」と言われたら休みたくなり、「絶対に学校に行ってはダメ」と言われたら行きたくなるのが、人間の性じゃありませんか?私だけ?
そんなわけで、グループ・アサインメントが実際のアクティビティー・レベルを示唆していない可能性がまだまだ強く残っている以上、この研究の結果は慎重に読み取るべきだと私は考えます。第三者の監視役にActivity Logをつけてもらうとか、最近ではAccelerometer(加速度計)やPedometers(歩数計)、Activity-Tracking Phone Appsなど様々なテクノロジーがあるわけですから、こういったものも併用しながらより客観的に患者のCompliance Rateを表記するべきだと思います。

●Statistical Analysis
あとは私が個人的に数字のデータが好きなので、95%CIの報告がない、Effect Sizeの報告がないことは評価を下げざるを得ませんね。被験者の数が各グループに25人というこのグループサイズもPower Analysisで定められた最低数に基づくものではないようですし、この研究で出たPoint valueはPoint valueでともかくとして、統計的に十分なパワーがあったのかなかったのか分からない状態ではどんな結論も出せません。

さて、それでは私がこの研究を受け入れ、疑った結果は「上記したような問題点が改善された研究を見てみないと最終的な結論は出せない。が、他に急性期の休息が効果がなかったとする論文(こちらは受傷後5日間のStrict Rest)2が出ていることも考慮すれば、やはり『休めばいいというものではない』という最近のトレンドを支持する研究は増えてきている6-8」という結論です。現時点で私は「受傷翌日の休息は有害である」というのはOverstatementだと思わざるを得ませんし、各団体のPosition Statement/Consensus Statement3-5がまだ受傷後24-48時間ほどの急性期の休息を推奨している以上、この研究結果だけを受けて急性期対応を変えるわけにもいきません。…が、しかし、脳震盪のリハビリとして運動が効果があるのではないかと言う声が徐々に大きくなってきているように、「やりすぎず、やらなすぎない」絶妙にコントロールされた肉体的・精神的ストレスはむしろ回復を早めるのではというエビデンスも次から次へと出てきています。私の勝手な見立てでは、この「程よいストレス」という理念が現在の「休息」一辺倒のガイドラインをいずれ取って代わるでしょう。これからも目を離せない分野です。

卑怯な言い方かもしれませんが、この記事が前回と比べていくつくらいのFacebookの "Share"や"Like"がつくのか個人的に興味があります…。恐らくタイトルがそれでも好ましくないという理由で、前回の1/9もいかない(つまり100以下)だろうというのが私の勝手な予想です。

1. Buckley TA, Munkasy BA, Clouse BP. Acute cognitive and physical rest may not improve concussion recovery time. J Head Trauma Rehabil. 2016;31(4):233-241. doi: 10.1097/HTR.0000000000000165.
2. Thomas DG, Apps JN, Hoffmann RG, McCrea M, Hammeke T. Benefits of strict rest after acute concussion: a randomized controlled trial. Pediatrics. 2015;135(2):213-223. doi: 10.1542/peds.2014-0966.
3. Giza CC, Kutcher JS, Ashwal S, et al. Summary of evidence-based guideline update: evaluation and management of concussion in sports. Report of the guideline development subcommittee of the american academy of neurology. Neurology. 2013;80(24):2250-2257. doi: 10.1212/WNL.0b013e31828d57dd.NATA.
4. Broglio SP, Cantu RC, Gioia GA, et al. National athletic trainers’ association position statement: management of sport concussion. J Athl Train. 2014;49(2):245-265. doi:10.4085/1062-6050-49.1.07.
5. McCrory P, Meeuwisse W, Aubry M, et al. Consensus statement on concussion in sport-the 4th international conference on concussion in sport held in Zurich, November 2012. Clin J Sport Med. 2013;23(2):89-117. doi:10.1097/JSM.0b013e31828b67cf.
6. Gibson S, Nigrovic LE, O'Brien M, Meehan WP. The effect of recommending cognitive rest on recovery from sport-related concussion. Brain Inj. 2013;27(7-8):839-842. doi: 10.3109/02699052.2013.775494.
7. Majerske CW, Mihalik JP, Ren D, et al. Concussion in sports: postconcussive activity levels, symptoms, and neurocognitive performance. J Athl Train. 2008;43(3):265-74. doi:10.4085/1062-6050-43.3.265.6.
8. Silverberg ND, Iverson GL. Is rest after concussion "the best medicine?": recommendations for activity resumption following concussion in athletes, civilians, and military service members. J Head Trauma Rehabil. 2013;28:250-259.

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  # by supersy | 2016-09-11 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

脳震盪受傷にすぐ競技中止をしなければいけない理由。

SNSで見かけて、面白そうだったので読んでみました。ほんの3日前に発表になった論文です。忙しくてあまり時間がないので、簡潔にまとめます。
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脳震盪受傷疑いがある場合は直ちにスポーツをやめ、専門のトレーニングを積んだ医療従事者の指示を仰ぐこと…とは様々なガイドラインや米国の州法律で謳われていることですが、1-3 選手自身がその深刻さに気が付いていても4 やはりその3割程はまだ報告義務を怠り、5 なんとかプレーを続けようとする傾向も根強く見られます。
「もうちょっとだけならいいんじゃないか…」「この試合終わってから報告するから…」という甘い考えを改めさせられるのがこの記事。6 脳震盪を受傷したならSecond Impact Syndrome/Diffused Cerebral Swellingの危険性を回避するために即刻プレー中止すべきである、というのももちろんですが、この論文6 によれば脳震盪を受傷後にプレーを続けた患者は即座にプレーを中止した患者に比べて脳震盪からの回復が倍以上もかかったというのだから驚きです。69人の脳震盪患者(年齢12-19歳)に「受傷後プレーをすぐ辞めたか、続けたか」を聞き、その回復を追った、というこの研究では、「受傷後もプレーを続けた」と回答したPlayed組(n = 34, 49.3%)が、「すぐに中止した」と答えたRemoved組(n = 35, 50.7%)と比較して、来院時の言語記憶、視覚記憶、情報処理能力、反応速度の全てにおいて著しく劣っており(p ≦ 0.002)、完全競技復帰までにかかった時間も44.4 ± 36.0日 vs 22.0 ± 18.7日 (d = 0.80, p = 0.003)と格段に長くなっている様子が報告されています。脳震盪界では21日以上かかっても回復しない患者を時折「Protracted recovery (長引いている)」とカテゴリー分けしたりしますが、この研究の統計によれば受傷後プレーを続けた場合、回復が「長引く(≧21日)」可能性が8.8倍高くなるそうです。

この実験の被験者が総じて若いことは特筆されるべきかと思いますが(子供の脳震盪からの回復は成人より遅いことが知られています。故に、この結果がそのまま成人に当てはまるかは少し疑問が残ります。同様の研究を是非プロや大学選手でもやってほしい)、「このプレーだけやらせて!そしたら引っ込むから!」などとbargainしようとする選手に「『あとワンプレー』で回復にかかる時間が倍になるんだよ。2-3週間をフイにするほどの価値が本当にある?」と返せる、切り札になる非常に重要な研究だなと思います。あとはこの研究と「回復が『長引いている』脳震盪患者には運動」というコンセプトを組み合わせれば、「脳震盪受傷後にプレーを続けた選手は来院時点で『high risk』患者と認定し、直ちにExercise Protocolを始める」みたいな新しいガイドラインも生まれそうな気もしてます。続報を待ちます…。わくわく…。

1. Broglio SP, Cantu RC, Gioia GA, et al. National athletic trainers’ association position statement: management of sport concussion. J Athl Train. 2014;49(2):245-265. doi:10.4085/1062-6050-49.1.07.
2. McCrory P, Meeuwisse W, Aubry M, et al. Consensus statement on concussion in sport-the 4th international conference on concussion in sport held in Zurich, November 2012. Clin J Sport Med. 2013;23(2)89-117. doi:10.1097/JSM.0b013e31828b67cf.
3. Giza CC, Kutcher JS, Ashwal S, et al. Summary of evidence-based guideline update: evaluation and management of concussion in sports. Report of the guideline development subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology. 2013;80(24):2250-2257. doi: 10.1212/WNL.0b013e31828d57dd.
4. Chrisman SP, Quitiquit C, Rivara FP. Qualitative study of barriers to concussive symptom reporting in high school athletics. J Adolesc Health. 2013;52(3):330-335.e3. doi: 10.1016/j.jadohealth.2012.10.271.
5. LaRoche AA, Nelson LD, Connelly PK, Walter KD, McCrea MA. Sport-related concussion reporting and state legislative effects. Clin J Sport Med. 2016;26(1):33-39. doi: 10.1097/JSM.0000000000000192.
6. Elbin RJ, Sufrinko A, Schatz P, et al. Removal from play after concussion and recovery time [published online August 29, 2016]. Pediatrics. 2016. pii: e20160910.

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  # by supersy | 2016-09-01 07:00 | Athletic Training | Comments(0)

不要な筋抑制を取り除け!最新エビデンスの示す最も有効なAMI治療、Disinhibitory Interventionとは?

AMIの知識をアップデートしようと思って下のSystematic Review1を読んでました。面白かったのでめもめも。ちなみにこの記事は無料公開されているので誰でも全文読めます。下の参考文献にリンクをぺたりと貼っておきますので興味のある方はどうぞ。
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1965年から2012年までに発表された大腿四頭筋の活性化に関する論文をまとめたこのReview、条件を満たした10件の論文を最終的にincludeしていますが、実験対象は健康な被験者からKnee OA、膝の人工関節手術後にPFPS、Meniscusまで様々です。比較対象(control)としてAMI患者との対比目的で健康な被験者を使っているならともかく、AMIのない健康な被験者のみを使った研究も含まれているのは個人的には少し納得が行きません。あくまで大腿四頭筋に抑制がかかっていることを前提とした研究のみをreviewすべきと思うのですが(じゃないとdisinhibitoryという言葉そのものが成り立たなくなりやしませんか?)…私がこのReviewを行ったわけではないので、まあここは仕方ないですね。

さて、読み進めてみると知らないことがいっぱいだったので驚きました!私の知識は2002年発表のHopkins氏らの論文2あたりで止まっていたようで、今日の今日まで1) AMIに最適な物理療法はCryotherapy。20分のアイシングでdisinhibitory効果が40分は持続する。2) 30分のTENSも同様のdisinhibitory効果が見られるが、電流を流し終えたとたんにその効果も消えてしまう。TENSをしたまま運動をさせることは現実的に考えて簡単ではなく、故にDisinhibitory InterventionとしてのTENSは実用性に欠ける…と理解していました。前回ブログにまとめた内容そのままですね。しかしよくこのReviewと、それからReviewに含まれる個々の論文も読んでみると、どうやらこの論文(↓Pietrosimone et al, 20093)あたりで「TENSのほうがCryotherapyよりも効果が高いのではないか」という研究結果が出始めて、結論がひっくり返った様子ですね。知らんかった!
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Pietrosimone氏らのこの研究2では33人の膝OA患者をランダムに 1) 20分間座っているだけ(Control); 2) 20分間の膝周りのアイシング (Cryotherapy); 3) 45分間のTENS治療 (TENS)の3組に分け、それぞれの治療を施した後に大腿四頭筋の活性度を検証。結果だけざっと紹介してしまうと、こんな感じ(↓)。
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この研究で大腿四頭筋の活性度を示すのに使われたのがCentral Activation Ratio (CAR)というコンセプトですが、このCARのベースラインからの変化をパーセンテージで表したものが上のグラフです(+の変化が改善、-が悪化を意味します)。見ての通り、より+の、高い数値をたたき出したのはTENS。著者らの「CryotherapyのほうがTENSよりも効果が高いだろう」という仮説に反して、「Disinhibitory効果はTENSのほうがより長く強く続いた」という結果が出たのです。Controlと比較して、TENSは20、30、45分後全てのタイムポイントで、Cryotherapyは20分後のみに統計的に有意な差が認められました。Effect sizeはTENSは3つ全てのタイムポイントで"strong"だったのに対し、Cryotherapyは20分後と45分後が"strong," で30分後は"moderate"。つまるところ、膝OA患者により程度の高い大腿四頭筋の活性化を促したいならば何もしないよりも、アイシングを20分するよりも、TENSを45分使った方が効果が高い、という結論が出たわけです。

これを踏まえて一番最初のSystematic Review1に戻りますが、こちらでも最終的な結論は:

●20分間のCryotherapyをしたのちのdisinhibitory効果は最低でも45分間は持続するようである。Effect sizeは時間と共に増加する傾向にあり、30分後でCohen d=0.46 (moderate)ほどなのが45分後にはCohen d=0.76 (large), 95%CI -0.13 ~ 1.59まで上がる。しかし、見ての通り95%CI幅は広くゼロを挟んでいる

●45分間のTENSは、治療後20分後は小さな(small)効果しか認められないが(Cohen d=0.38, 95%CI -0.52 ~ 1.25)、30分後には"moderate"(0.63, 95%CI -0.30 ~ 1.50)、45分後には"large" (1.03, 95%CI 0.06 ~ 1.92)になり、最終的に95%はゼロを挟まない生の数のみになる。つまり、統計的に良い効果が保証される。

●Lumbopelvic manipulationやPROM、Active Releaseなどの徒手療法は総じてイマイチ。治療直後は効果が少し見られるものの(Cohen d=0.38, 95%CI -0.35 ~ 1.09)、時間と共に効果は薄れ、60分後には消えている(0.18, 95%CI -0.54 ~ 0.89)。95%CI幅はやはり広くゼロを挟んでいる

●4-5人を対象にしたCase Seriesによれば、4 NMESは長期的に使えばそこそこ効果があるようである。 3週間継続して使えばCohen d=1.66 (95%CI 0.10-2.90)、6週間で1.65 (95%CI 0.09-2.89)、3ヶ月で1.71 (95%CI 0.13-2.96)に6ヶ月で1.87 (95%CI 0.24-3.13)とどのタイムポイントでも非常に大きく、決定的な効果が得られるという報告がされている4一方で、効果が無いどころか悪影響(5週間NMES使用で -0.25, 95%CI -0.94 ~ 0.45; 16週間使用で -0.50, 95%CI -1.19 ~ 0.22)があったというRCT研究もあり、矛盾が見られる。長期に渡って使用した場合のみの数字であることを踏まえ、さらにエビデンスのレベルとして信用すべきはRCTのほうと判断すれば、現場で使う臨床的価値には今のところ欠けるか。


…といった感じで、Systematic Review1 の結論としては "The current literature finds TENS to be the most effective intervention in increasing voluntary quadriceps activation because it produced positive homogeneous findings and CIs that did not cross zero (p.418)" ということになるようです。ふぅむー、まだまだ研究が足りないのは考慮するにしても、現時点でのこの結論は納得です。Cryotherapyより今はTENS、なんですね!

しかしこの結果は真摯に受け止めた上で、私はそれでも個人的にCryotherapyをこれからもAMI治療目的で使う可能性は大いに残しておきたいと思います。なぜか?CI幅が広いのはまだ研究が少ないのでこれから狭めていくとして、Cryotherapyのdisinhibitory効果を否定するエビデンスは現時点で存在しないこと、そして今まで出ている研究結果は総じて「効果アリ」であるから、ということと、あとはやっぱり効果の早さですかね。20分のアイシングで得られる効果 vs 45分のTENSで得られる効果、となると、Cryotherapy < TENSだったとしても、その20分という足の速さが魅力的に思える現場の症例も多くあるんじゃないかと思うからです。例えば、患者がリハビリできる時間が45分しかない場合、その45分全てをTENSに使うだけで終わらせてしまうのか、20分Cryotherapy使って、残り25分思いっきり運動させるのかではだいぶ、こう、なんというか、実用性が異なると思いませんか?逆に時間が無限にある場合、Cryotherapyを45分使ったとして、もしかしたらTENS45分を凌ぐほどのDisinhibitory効果が出る可能性もあるのでは?そっちの研究も是非見てみたい…という欲求もムクムク沸いてきますね。TENSが必ず45分でなければいけないのか(もっと短くても同様の効果は認められないのか?)という疑問も生まれます。現時点ではどうやらTENSがベスト、ということを学べたのはとても良かったですが、理想のprotocolを是非これからも皆様に突き詰めて研究し続けていってほしいです。私は数年したらまたこのトピックに戻ってくることにしましょうー。

1. Harkey MS, Gribble PA, Pietrosimone BG. Disinhibitory interventions and voluntary quadriceps activation: a systematic review. J Athl Train. 2014;49(3):411-421. doi: 10.4085/1062-6050-49.1.04.
2. Hopkins J, Ingersoll CD, Edwards J, Klootwyk TE. Cryotherapy and transcutaneous electric neuromuscular stimulation decrease arthrogenic muscle inhibition of the vastus medialis after knee joint effusion. J Athl Train. 2002;37(1):25-31.
3. Pietrosimone BG, Hart JM, Saliba SA, Hertel J, Ingersoll CD. Immediate effects of transcutaneous electrical nerve stimulation and focal knee joint cooling on quadriceps activation. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(6):1175-1181. doi: 10.1249/MSS.0b013e3181982557.
4. Stevens JE, Mizner RL, Snyder-Mackler L. Neuromuscular electrical stimulation for quadriceps muscle strengthening after bilateral total knee arthroplasty: a case series. J Orthop Sports Phys Ther. 2004;34(1):21-29.
5. Palmieri-Smith RM, Thomas AC, Karvonen-Gutierrez C, Sowers M. A clinical trial of neuromuscular electrical stimulation in improving quadriceps muscle strength and activation among women with mild and moderate osteoarthritis. Phys Ther. 2010;90(10):1441-1452. doi: 10.2522/ptj.20090330.

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  # by supersy | 2016-08-30 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

遺伝する感情。

これは全然ATに直接関係ない内容なんですが、しばらくつらつらと考えていたことで、どこかに書き残しておきたかったので。備忘録のような内容ですみません。

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恐怖は遺伝する、という実に興味深い現象が動物実験によって2014年に実証されているんですね。1 それまでは赤子は親の感情を見ながら良き悪きを学ぶ(=「お母さんが怖がっているのだから、悪いものに違いない。僕も怖がろう」)、というsocial learningのコンセプトが主流でしたが、この研究では『母親が恐怖だと思った対象に生まれた子が初めて接触したとき、子も同じように恐怖を覚えるのか?』という感情の遺伝性について調査しています。
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Debiec & Sullivan1 が行った実験は至ってシンプル。メスのネズミに「ペパーミントの香りがすると電気ショックを受ける」というペアとなる刺激を繰り返し、恐怖を刷り込ませておいて、そのあと妊娠・出産した赤ちゃんネズミがペパーミントの香りを恐れるかを検証するというものでした。実験結果をみてみるとあら不思議。学習された「恐怖」は母親ネズミ妊娠前に刷り込まれたものであったにも関わらず、赤子もちゃんと初めて嗅ぐ「ペパーミントの香り」を恐れたというんですね。ネズミの赤ちゃんは生まれたばかりでは目も開かず、耳も聞こえないため、母親と同じ巣にいる状態で示したこの反応が「母親の行動を見て、それを真似たもの」であることは考えにくいのですが、念の為、と研究者は1) 親ネズミが巣にいない場合と2) (刷り込みをされていない)代理母ネズミが赤ちゃんネズミと一緒にいる場合なども検証。母親ネズミがいる、いないに関わらず、赤ちゃんネズミはペパーミントの匂いを嗅ぐと恐怖を示すという結果が確認されました。

母親が「後天的に」学んだ恐怖が、世代を超えて子供に「先天的に」植えつけられるようになる、というのは実に興味深い発見です。この「恐怖の遺伝」が一世代という短い期間で起こり、少なくとも2世代先まで伝えられることが別の研究2でも実証されています。母親のみでなく、父親が学んだ恐怖でも同様の遺伝が起こるようです。2 文字通り、感情が遺伝子に刻まれるわけですね、考えてみると面白いです。
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元々感情って生存確率を上げるために大いに意味があったものだと思うんですよね。我々が脂肪分や糖分のたっぷりのケーキやピザを食べて「おいしい!」と思ってしまうのも、それらが非常に効率のいいエネルギー源で、それを食べてきた種や個体が多く生き残ってきたからこそ。逆にカラフルな色彩を持つヘビやカエルやクモを見て「なんかやばい、怖い」という感情を持つのも、こういった生き物が毒を持っていることが多く、「恐れる」をいう感情を覚えた種や個体がその毒にやられることなく生き延びたからでしょう。

上に紹介した実験で検証されていたのは「恐怖」に限定したphenomenonでしたが、生存と言う観点から考えると「喜び」の感情も遺伝されてしかるべきという気もします。これらも是非似たような研究で見てみたいものです。例えばペパーミントの香りを嗅いで、同時に餌を与え続けると、子供もペパーミントの香りを嗅いで興奮するようになるのかとか…。面白いのが「ペパーミントの香りを嗅ぐと興奮する母親」と「ペパーミントの香りを嗅ぐと恐怖を感じる父親」と交配させたときですね。遺伝として、喜びと恐怖と、どちらの感情が勝つのか?もしくは母親と父親、どちらの遺伝子力がより強いのか?様々な研究ができそうです。わくわく…。あとは、どれだけ早く遺伝をひっくり返すことができるのか?先天的に「ペパーミントの香りは怖い」という遺伝子をもって生まれてきた子供に「ペパーミントの香りは実はいいものだ」と真逆のことを覚えこませ、それを遺伝子に上書きするのに一世代で十分なのか、数世代かかるのか?今のところ、「遺伝子の感情によるアップデートは我々が思うより早い」ように私には見えるので、ここらへんもすごく興味があります。

科学的な観点から、この結果を自分たち自身に反映させると、これもまた面白いディスカッションが引き出せそうです。何を遺伝子に残すか、その究極のコントロールをしているのは我々の全てのDriving Forceの源である脳のはず。ヒトに渡される遺伝子すら感情によって書き換えられるのだとしたら、我々の所有物である脳が受ける影響はそれよりも大きいのではと私は考えます。湧き上がる感情に引っ張られ、脳は刻一刻と変化する…『脳の可塑性(neuroplasticity)』というコンセプトが改めて浮かび上がってくるんですよね。我々のなかで日々うねっている「感情」は我々の脳に確実に刻まれ、そして恐らくその脳が「これは後世に伝えるべき重要な感情だ」と認識したら遺伝子にも書き残されるということになるんではないかな、と思うのです。
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あなたが「好き」で見ると興奮するような事柄を、あなたの子供も同じように「好き」になるのでしょうか?となれば、あなたが「大嫌い」なものも同様にあなたの子供は「嫌う」のでしょうか?あなたが「これは子供に遺伝して欲しくないなぁ…」なんて思う感情はありますか?そうであれば、手遅れになる前にあなたの感情そのものも修正すべきでしょうか?ううむ?

例えば私は少し潔癖症なところがあって、回し食いなどできないタイプの人間なのですが、自分の子供はそんなに神経質にならないといいなぁ、なんて無責任に思います。ふふふ、我ながら、自分を棚に上げてなんて勝手な欲求でしょう。自分に起こる「いやだな、汚いな」という感情をもう少しコントロールできるようになれば、後世にも良い影響が残せるかも知れません(笑)…少し努力してみようかな。なんだか頭の中を、小さな誰かに覗かれている気分です。自分の頭の中の感情で影響を受ける人が未来にいるのかもしれないと考えると、少しばかり背筋が伸びますね。

1. Debiec J, Sullivan RM. Intergenerational transmission of emotional trauma through amygdala-dependent mother-to-infant transfer of specific fear. Proc Natl Acad Sci. 2014;111(33):12222-12227. doi: 10.1073/pnas.1316740111.
2. Dias BG, Ressler KJ. Parental olfactory experience influences behavior and neural structure in subsequent generations. Nat Neurosci. 2014;17(1):89-96. doi: 10.1038/nn.3594.

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  # by supersy | 2016-08-26 17:00 | Just Thoughts | Comments(0)

電気治療 (TENS): 「鎮痛効果」のみを狙った対処療法に意味はあるのか? と、ネブラスカ出張。

Electrical Stimulation (通称E-stimもしくはStim、電気治療)と言えば、多くの治療家に「意味がない物理療法」の代名詞として使われることが多いように感じます。英語でも「あの人はIce & Stimしかしないからね」という表現は「症状を一時的にマスクする対処療法をするくらいしか能のない、Old Schoolなセラピスト」という意味でよく使われますしね。

私はIce & E-stimのコンビネーションにこそ意味がないとは思いますが、痛みそのものを治療対象にすることに関しては全く否定的ではありません。個人的な話ですが先学期いわゆる重度の「寝違え」を起こしてしまい、ふとした拍子に左を向こうとすると、そのたびに気が遠のくほどの電流のような激痛が左腕を駆け抜ける、という、ひどく不快で、しんどい思いをした日が2日ほどありました。その痛みたるや仕事にならないほどで、同僚に「この痛みを何とかしてくれるならなんでもする」と泣きついたくらいです。痛みは人から機能を奪い、感情をロックアップさせます。ですから(もちろんcontextによりますが)、痛みそのものを取り除こうという施術者側の努力は、決して周りから嘲笑されるようなものではないと思うのです。以前も書きましたが、there's time and place for everything -鎮痛治療が求められる場面で、適切で最も効果的なそれを選択・deliverできる力はATとして必須だと私は思います。
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さて、話を戻すと数ある電気治療の中でもとくにPain controlに使われることが多いのがいわゆるTENS (transcutaneous electrical nerve stimulation)というモードですが、これに関して読んだ研究を忘れないうちにまとめておきたいと思います。まず一番のお勧めはこの論文―TENSを使って鎮痛効果を狙う場合、どういうパラメーターが最も効果的なのか?というところをエビデンスを通じて振り返り、要約しているのが2008年発表のClaydon & Chesterton1 のSystematic Review(↓)です。
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Claydon & Chesterton1 がこの論文で強調しているのは「High intensity TENS」がどうやら最も効果がありそうだということ。Low-intensity(微弱電流)ではなく、がっつりビリビリくるようなそれなりに強いものがいい、ということなんです。もっと細かく言うと、「high frequency, high intensity, local application ‘intense’ TENS」か「low frequency, high intensity, remote ‘acupuncture-like’ TENS」がよさそうである、と。 他の論文も見てみましょう。Chen氏らのSystematic Review2 によれば、Pulse Durationの長短とそれに反比例するPulse Frequencyはどうやら鎮痛効果の程度に影響がないのでは、という指摘もあるのです。特に様々なPulse Frequencyを使った研究結果を比べてみても鎮痛の程度に大差がなかったことから、1) どのPulse Frequenciesでも等しく効果的である; 2) どのPulse Frequenciesも等しく効果的でない; もしくは 3) 研究のデザインが甘く、Pulse Frequency間の違いを認められるような造りではなかった…という3つの可能性が今のところ考えられますが、鎮痛効果を高める上で、今のところPulse Frequencyを気にしすぎる必要はないようです。

私がTENSをPain Control目的で使う場合、個人的なルーティーンはいつもこうでした。1) Motor level intensity, 2) Low frequency (≤10 Hz), 3) Longer pulse duration. セオリーでいうと、このパラメーターが上脊髄性疼痛抑制 (by releasing endogenous opioid peptides and serotonin)を促し、また脊髄内で上がってくる痛みのシグナルをブロックすることで鎮痛効果が高いと、つまり下行性 (descending) & 上行性(ascending)疼痛抑制の併用が可能だと認識していたもので…、High frequency (≥50 Hz) TENSだと後者のみですからね。3 一般的に疼痛抑制は上脊髄性 (supra-spinal)のメカニズムのほうが効果が長く続くとも言われていますし。でもこうしてエビデンスを読み返してみると、どうやら「Frequencyは治療アウトカムに影響を与えない2、むしろ「大事なのはIntensity1,4なようですね。 “Strong but not painful (ビリビリと強く感じるけど痛くはない程度)” で “sensory” レベルのTENSは"sub-sensory"かプラシーボより格段に鎮痛効果が高い、というのはわりかしはっきりとしたエビデンスのようです。4 なので、これらのエビデンスを加味した上で、これから私が患者にTENSを使うというのであれば、私が新たなルーティーンにすべきば… 1) 患者にhigh- と low-frequency TENSの両方をそれぞれ異なる治療セッション中に試し、どちらが好みか選んでもらい、そちらの周波数を使う。どうせ違いがないというならば、患者が好きだという方を選んでもらった方が不快さは減るかもしれない。2) Intensityは最低でもSensory Levelで。もし患者がもっと強いのが好みなら(Motor Levelが好きな選手も今まで結構出会ったので…ちなみに私もMotor Levelは結構好き)、私はここも好みに応じて上げてしまってもいいと考えます。論文では総じて「最低でもSensory」という表現が使われていたので、「Motorになるとダメ」というわけでもなさそうなので。私が考えていたよりもTENSのパラメーターはもうちょっとフレキシブルなものなのかなー、というのが率直な印象です。これからは患者にももっと多くの選択肢を与えられ、色々試してもらったうえで、その人好みの治療をtailorしていくことが可能かも!

例えば術後の痛み(postoperative pain)とか、どうしても数日間患者の感じる痛みのレベルが上がらさるを得ない場合にも、TENSを使うことで痛み止め薬の服用量が抑えられ、痛み止め薬の副作用というリスクを負わなくてもよくなる、5-9 というのはTENSの二次的な隠れたbenefitであると私は考えています。また、TENSはCryotherapyに並ぶdisinhibitory modalitiesとしても有効な物理療法であり、AMIの治療には欠かせないツールでもあると思うのです。10,11 最近のSystematic Review11 にはTENSのほうがCryotherapyよりも "より強い、一貫性のある効果をもたらす" と報告されており、"現存する最善のdisinhibotory interventionである” ともまとめられています。これは私の個人的な見解ですが、例えば膝の術後の『鎮痛効果』の一部には、もしかしたらdisinhibitoryメカニズムによる鎮痛もいくらか入っているのかもしれませんよね。例えば、効果的にdishinibitionできたから、大腿四頭筋の機能回復が迅速に起こり、それによって膝が安定性を再獲得したことによって歩行時の痛みが減少した、とか…。



さて、話は全く変わりますが、今週末はネブラスカ、リンカーンにあるPRI本部へ行ってきました!8ヶ月ぶりくらいです。詳しいことは諸事情があって書けないのが残念ですが、今年4月にオープンした新しいPRI本部の建物(↓)をたっぷり満喫させてもらい、それからRonやMikeにたくさん質問をぶつける機会があり、本当に充実した2日間を過ごすことができました。なんとカンザスからケニーも片道3.5時間の道のりを運転してきてくれて、夜には12月の日本講習に向けての打ち合わせもがっつりすることができました。遠いところをありがとう、友よ…!
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こんな書き方も自分でどうかと思いますが、今更改めてPRIにドはまりしています。最近楽しくて楽しくて…。やっと少しわかってきた、ような気がする…(数か月後には「やっぱり全然わからない」とか泣いてるかもしれないけど)。Ronの言葉を聞いていると、徐々に「宇宙に飛ばされる」回数よりも「核の部分が見えてきた」感覚のほうが多くなってきてそれが楽しいです。前回の彼の「上腕三頭筋は周波数だ」のコメントじゃないけど、徐々に私が彼の「周波数」に合わせられるようになってきたのかも!昨年12月のRonの「右に脊柱側弯症があるならば、左にも曲げればいいじゃない」というマリー・アントワネットばりの言い回しにわかったつもりになって笑っていましたが、今になってその言葉の本当の意味がわかるようになってきました。彼の言葉をいかにそのまま(でもわかりやすく)日本で伝えるか、まだまだ試行錯誤の日々です!

1. Claydon LS, Chesterton LS. Does transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) produce ‘dose-responses’? A review of systematic reviews on chronic pain. Phys Ther Reviews. 2008;13(6):450-463.
2. Chen CC, Tabasam G, Johnson MI. Does the pulse frequency of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) influence hypoalgesia? A systematic review of studies using experimental pain and healthy human participants. Physiother. 2008;94:11-20.
3. Resende MA, Sabino GG, Cândido CR, Pereira LS, Francischi JN. Local transcutaneous electrical stimulation (TENS) effects in experimental inflammatory edema and pain. Eur J Pharmacol. 2004;504:217–222.
4. Moran F, Leonard T, Hawthorne S, Hughes CM, McCrum-Gardner E, Johnson MI, Rakel BA, Sluka KA, Walsh DM. Hypoalgesia in response to transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) depends on stimulation intensity. J Pain. 2011;12(8):929-935. doi: 10.1016/j.jpain.2011.02.352.
5. Bjordal JM, Johnson MI, Ljunggreen AE. Transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) can reduce postoperative analgesic consumption. A meta-analysis with assessment of optimal treatment parameters for postoperative pain. Eur J Pain. 2003;7(2):181-188.
6. Unterrainer A, Friedrich C, Krenn MH, Piotrowski WP, Golaszewski SM, Hitzl W. Postoperative and preincisional electrical nerve stimulation TENS reduce postoperative opioid requirement after major spinal surgery. J Neurosurg Anesthesiol. 2010;22(1):1-5. doi: 10.1097/ANA.0b013e3181b7fef5.
7. Kara B, Baskurt F, Acar S, et al. The effect of TENS on pain, function, depression, and analgesic consumption in the early postoperative period with spinal surgery patients. Turk Neurosurg. 2011;21(4):618-624. doi: 10.5137/1019-5149.JTN .4985-11.0.
8. Unterrainer AF, Uebleis FX, Gross FA, Werner GG, Krombholz MA, Hitzl W. TENS compared to opioids in postoperative analgesic therapy after major spinal surgery with regard to cognitive function. Middle East J Anaesthesiol. 2012;21(6):815-821.
9. Eidy M, Fazel MR, Janzamini M, Haji Rezaei M, Moravveji AR. Preemptive analgesic effects of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) on postoperative pain: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Iran Red Crescent Med J. 2016;18(4):e35050. doi: 10.5812/ircmj.35050.
10. Gabler CM, Lepley AS, Uhl TL, Mattacola CG. Comparison of transcutaneous electrical nerve stimulation and cryotherapy for increasing quadriceps activation in patients with knee pathologies [published online Jan 5 2015]. J Sport Rehabil. 2015.
11. Harkey MS, Gribble PA, Pietrosimone BG. Disinhibitory interventions and voluntary quadriceps activation: a systematic review. J Athl Train. 2014;49(3):411-421. doi: 10.4085/1062-6050-49.1.04.

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  # by supersy | 2016-08-21 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

運動前のアイシングは、パフォーマンスを向上する?

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運動前にあなたが身体の痛むところがあったとして(膝や肩など)、あなたはその患部を温めますか?冷やしますか?

Pain Control (鎮痛効果)
とりあえず、現時点でCryotherapy (冷却療法 - i.e. postop wrist,1 knee,1,2 acute ankle sprains,3 neck and back strains,4 LBP5)もThermotherapy (温熱療法 - i.e. neck and back strains,4LBP,5 chronic pain,6bluebottle stings7)も鎮静効果アリ、というのはエビデンスとしてはっきり出ていると思うんですよね。で、じゃあ比べたときにどちらのほうがより効果が大きいのかな?と疑問に思い、直接比較をしている研究を探してみたらふたつのRCTが見つかりました。一つ目は60人の頸・胸・腰椎の痛みを抱える患者(平均37.8±14.7歳、被験者の51.5%が女性)を使ったRCTで4 は鎮静効果は冷却と温熱で「等しい」という結論。もうひとつのほう(患者87人、平均34.48歳、被験者の51.72%が女性)では5急性腰痛には温熱のほうが冷却よりも効果が高かったという報告が(McGill Pain Questionnaireを使って計測した痛みの減少度 - 温熱治療 12.70±3.7から0.75±0.37へ vs 冷却治療 12.06±2.6から2.20±2.12, p≤0.05)されています。うーん、もうちょっと見てみないとわからないですね。現時点で決定的にこっちが優秀!と断言できるわけでもないみたい。
大前提として、施術者は冷却と温熱ではとりあえず身体に働きかけるメカニズムと、その生理学的効果が真逆である、ということは考慮すべきですよね。鎮痛効果に加えて、冷却療法は組織の温度を下げ、代謝を下げ、血流を遅らせ、炎症とtissue extensibilityを低下させるなどの変化を引き起こすに対して、温熱療法ではその逆が起こる。8,9 なので、今のところ私個人の解釈としては、Pain controlに冷却か温熱を使おうと思ったら、今のところどちらも有効であるから、患部にアクティブな炎症が見られるかどうかでやはり判断しようかな、という感じです。患部が熱を持って赤みを帯びていれば冷却を、そうでなければどちらでも害がないと判断し、患者の好みを考慮した上でケースバイケースで決めようかな、という。

Prior to Activity (運動前)というタイミング
で、次に考えたいのが「運動前」というタイミングで痛みを抑えたい場合、どちらがより相応しいのか?という切り口。運動前にアイシングなんかしたら筋肉が縮こまっちゃってダメなのでは?という一般的な見解とは裏腹に、「暑い場所で運動をする前ならば(例えば夏場、Footballの2-a-daysとか)、冷却療法の使用は非常に良い」という結論を出したのは2013年発表のMeta-Analysis。10 運動前はもちろん、運動中のアイシングもアリだ、と論じています。このMeta-Analysis10で報告された唯一の「悪影響」は「スプリント競技のパフォーマンスは低下する」というところでしたが、でも「中・長時間 (intermittent & prolonged)の運動ならばパフォーマンス、キャパシティー共に著しく向上する」というのです。10 もうひとつのシステマティックレビューでも11 運動前の外・内部からのクーリング (i.e. air, water, ice)を推奨する結果が報告されています。運動前に冷やすことで、体温調節能力 (thermoregulatory - core, skin and or body temperature)、心肺機能 (cardiovascular - heart rate, sweat rate)、そして精神的 (psychological - thermal sensation of comfort, rating of perceived exertion)機能値が上がり、長期的(prolonged)パフォーマンスが向上するとのこと。11 しかし例によって、先ほどのMeta-Analysis10と同様、爆発的で短期間のスプリントのような運動、そしてこのReviewでは中期(intermittent)の運動も少し悪影響を受ける ("minimally affected")と書かれてもいるんですけども。11 良い効果は、運動後にも続くようです。Mila-Kierzenkowska氏ら12 はsubmaximal exercise前の全身冷却 (whole-body cryotherapy)は酸化ストレス度を減少させ、リカバリーを早める効果があると報告しています。これは選手にはありがたいですね。
「運動前のアイシング反対派」の意見としては、Bleakley氏ら13が自身のシステマティックレビューで「運動前にCryotherapyを20分以上使用すると筋力、スピード、パワー、アジリティー、手先の動きの正確さなどが低下する」と論じていますが、Pritchard & Saliba14氏らはこのシステマティックレビューの臨床的実用性に疑問を呈しています。彼ら曰く、運動前のアイシングはほとんどの場合が20分以下であるし、それにしっかりとしたウォームアップを組み合わせればその冷却効果が害になることは少ないはずだ、と。これにね、もう2つくらい研究を加えると面白い全体像が見えてくるかなと思うんです。 1) あるControlled laboratory study15 によれば10分間の足首をアイシングするとDynamic postural-stability ability (Star Excursion Balance Test Score)が低下する、という報告がある一方で、 2) 最近発表されたRCT16 には10分間の足首のアイシングをしても筋肉の反応時間 (Reaction time)は影響を受けなかった、とある。 つまるところ、運動前に行う冷却療法の『悪影響』というのは 1) duration-specific (どれくらいの間、冷却を続けたかに影響を受ける、≤10分がより安全?) であり、 2) task-specific (その後に行う運動がどういったタイプなのかに左右される、i.e. short-, intermittent- vs prolonged activity)であるのではないか、というのが私の導いた結論です。
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Clinical Bottom Line
臨床的にこのエビデンスをどう使うべきか?と考えたときに、私の個人的な見解としては、運動前、痛みを軽減するためには運動が暑い中行われる、もしくは長期的な運動 (且つ、スピード系、パワー系ではない運動)である場合には率先して冷却療法を使おうと思います。その際、使う長さは短め(10分かそれ以下)に押さえたほうが賢明でしょうね。また、部位が指や手で、そのスポーツが指先の細かいmotor controlを必要とするようなスポーツの場合は (i.e. 野球や弓道、射的など)、悪影響が優る恐れがあるので冷却療法は避けたほうが良さそうです。温熱療法のほうがface validityがありますし (=選手も運動前にはあたたかくする、がアタリマエで、より理に適ってると考える子が多いでしょう)、あとは個人的にはやはり練習前には患部を温めることを好む選手のほうが多いかなとも感じるので…温熱が患者の抵抗も少なく、色々な意味で安全なチョイスかと。温熱療法が好きだ、と特に強く感じている選手には私もそれに反論することはないかと思います。唯一私が「いや、温めないほうがいい」というのは、くどいですが、アクティブな炎症が見られる場合のみかな。

まだまだ世の中アンチCryotherapyの人が多いみたいですけど、私は使いどころさえ正しければ(アイシングに関わらずですけど、どんな療法でも)絶対に良い効果を発揮すると思ってます。しかし今回、「運動前にアイシングはcontraindicated(禁忌)」くらいに教わったことのある私には、運動前のアイシングがパフォーマンスが向上するようなことがあるとは、なかなか衝撃的でした。いやいや、まだまだ勉強が足らんみたいっす。

1. Bleakley C, McDonough S, MacAuley D. The use of ice in the treatment of acute soft-tissue injury: a systematic review of randomized controlled trials. Am J Sports Med. 2004;32(1):251-261.
2. Raynor MC, Pietrobon R, Guller U, Higgins LD. Cryotherapy after ACL reconstruction: a meta-analysis. J Knee Surg. 2005;18(2):123-129.
3. Bleakley CM, McDonough SM, MacAuley DC, Bjordal J. Cryotherapy for acute ankle sprains: a randomised controlled study of two different icing protocols. Br J Sports Med. 2006;40(8):700-705.
4. Garra G, Singer AJ, Leno R, Taira BR, Gupta N, Mathaikutty B, Thode HJ. Heat or cold packs for neck and back strain: a randomized controlled trial of efficacy. Acad Emerg Med. 2010;17(5):484-489. doi: 10.1111/j.1553-2712.2010.00735.x.
5. Dehghan M, Farahbod F. The efficacy of thermotherapy and cryotherapy on pain relief in patients with acute low back pain, a clinical trial study. J Clin Diagn Res. 2014;8(9):LC01-LC04. doi: 10.7860/JCDR/2014/7404.4818.
6. Masuda A, Koga Y, Hattanmaru M, Minagoe S, Tei C. The effects of repeated thermal therapy for patients with chronic pain. Psychother Psychosom. 2005;74(5):288-294.
7. Loten C, Stokes B, Worsley D, Seymour JE, Jiang S, Isbister GK. A randomised controlled trial of hot water (45 degrees C) immersion versus ice packs for pain relief in bluebottle stings. Med J Aust. 2006;184(7):329-333.
8. Malanga GA, Yan N, Stark J. Mechanisms and efficacy of heat and cold therapies for musculoskeletal injury. Postgrad Med. 2015;127(1):57-65.
9. Nadler SF, Weingand K, Kruse RJ. The physiologic basis and clinical applications of cryotherapy and thermotherapy for the pain practitioner. Pain Physician. 2004;7(3):395-399.
10. Tyler CJ, Sunderland C, Cheung SS. The effect of cooling prior to and during exercise on exercise performance and capacity in the heat: a meta-analysis. Br J Sports Med. 2015;49(1):7-13. doi: 10.1136/bjsports-2012-091739.
11. Ross M, Abbiss C, Laursen P, Martin D, Burke L. Precooling methods and their effects on athletic performance : a systematic review and practical applications. Sports Med. 2013;43(3):207-225. doi: 10.1007/s40279-012-0014-9.
12. Mila-Kierzenkowska C, Jurecka A, Woźniak A, Szpinda M, Augustyńska B, Woźniak B. The effect of submaximal exercise preceded by single whole-body cryotherapy on the markers of oxidative stress and inflammation in blood of volleyball players. Oxid Med Cell Longev. 2013;2013:409567. doi: 10.1155/2013/409567.
13. Bleakley CM, Costello JT, Glasgow PD. Should athletes return to sport after applying ice? A systematic review of the effect of local cooling on functional performance. Sports Med. 2012;42(1):69-87. doi: 10.2165/11595970-000000000-00000.
14. Pritchard KA, Saliba SA. Should athletes return to activity after cryotherapy? J Athl Train. 2014;49(1):95-6. doi: 10.4085/1062-6050-48.3.13.
15. Fullam K, Caulfield B, Coughlan GF, McGroarty M, Delahunt E. Dynamic postural-stability deficits after cryotherapy to the ankle joint. J Athl Train. 2015;50(9):893-904. doi: 10.4085/1062-6050-50.7.07.
16. Thain PK, Bleakley CM, Mitchell AC. Muscle reaction time during a simulated lateral ankle sprain after wet-ice application or cold-water immersion. J Athl Train. 2015;50(7):697-703. doi: 10.4085/1062-6050-50.4.05.


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  # by supersy | 2016-08-17 21:20 | Athletic Training | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル9月号発売 & New York出張!

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月刊トレーニング・ジャーナル9月号が発売になっています!
連載4回目の今回は「まさかに備える」という特集のテーマにも沿って、アスレティックトレーナーのお家芸(?)でもある、救急対応のあれこれについて書いています。糖尿病、喘息、呼吸停止時の気道確保、熱中症などについて、アメリカではどう判断しどう処置を施すのが「現在のATのスタンダード」なのかが焦点です。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



もうちょっと濃い内容のブログを書きたいとも思うのですが(最近読んでる論文のまとめとか…)、なかなかどうして集中してパソコンの前に座る時間が取れず、バタバタしてしまっています。せっかくなので今回は、先週末行ってきたNew Yorkのお話を少し書きたいと思います。

先週末はNew Yorkはマンハッタンで、PRI創始者のRon Hruska氏によるPostural Respiration講習会があり、最後のFaculty Trainingにと私もお邪魔させてもらっていました。だって、Ronが基礎コースであるPosturalを教えるのって、めったにないことで。Ron自身も、「最後に教えたのはいつだったかな…思い出せないや」というくらいですから。マンハッタンにあるThe Maritime Hotelという海をイメージしたホテル(↓)に泊まりましたが、かわいらしくて快適なホテルでした!夜中も外のクラクション音がパーパーうるさかったのを除けば(これはもう立地的に仕方ない…NYの皆さん、運転荒すぎ、気が短すぎ)、もう完璧に最高でしたよ。また来たい…。
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土曜日の朝8時から講習開始だったので、朝5時過ぎに起床してセントラルパークに散歩に行ってきました!朝から自転車レースやっていてにぎやか。ランニングしてる人もいっぱい。朝日を浴びながら小一時間散歩して、すっきり。この「ビルに囲まれた深い自然」感、浜離宮恩賜庭園を思い出します。
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肝心の講習はというと、最近のPRI講習にはめずらしく6-7割が初受講者という顔ぶれ。Ronが「さゆりたちが日本の講習でかなり実技の時間を増やしてて、それが好評だっていうから…」と言ってくれて(逆輸入?光栄です)、Posturalにしてはかなり確かに実技が長めな構成でした。それでも合計一時間くらいかと思うけど…。日本の講習では実技3-4時間くらい設けたりしてますからね。私個人的な感想としては「このタイミングでRonから改めて学べて良かった!」Ronの発言でときどき宇宙に飛ばされるのは相変わらずですが、この講習に関しては自分の理解も深まっているので特に混乱することもなく、本当に「掘り下げる」ことに自分でも時間を有効に使えたなぁと思っています。いい意味で他の講師が教えているPosturalをぶち壊すような構成で、「そうか、これもアリなのか」と目から鱗でした。でも、「Ronがいずれ日本に来てくれたら、この言葉を日本語に訳さなきゃいけない」となんとなく考えながら講義を聞いていたので、3つに1文くらいに翻訳不可能な言葉が飛んでくるたびに苦笑してしまいました。"Triceps is resonance, triceps is frequencies!"とか、どう訳せばいいの(苦笑)?
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今回、学びの収穫として私が一番改めて聞けてよかった、と感じたのはこういうこと。
1) PRIには数少ないマニュアル(徒手)テクニックがあるが、それでも何かをひっぱったり伸ばしたりしているわけではない。あくまで施術者の手を神経的デバイスとして、患者に必要なNeurological cueを入れるために使うのであって、患者を治療するのはマニュアルだろうとノンマニュアルだろうとあくまで患者自身。
2) 身体をうまく正しく使おう使おう、もっとくれもっとくれ、と要求を重ねると手に入るものは少なくなる。理想的な身体の反応を引きおこすには患者の精神状態も重要な要素。これが如実に出たのがRonがとある参加者を使ってデモを行ったとき。Ron曰く、『気が張っててやったるでぇー!と意気込みすぎていた』参加者さんの顔を見て、「このままエクササイズをさせてもこの人はRepositionできないだろうな」と判断した彼は、あえてこの参加者さんを実験台に選び、優しい口調でゆっくりと、丁寧に運動指導をしました。たちまちRepositionが完了する参加者さん。おおさすが、ぱちぱちぱち。このあとRonはくるりと受講者に向きなおり、「今から全く同じことをもう一回やるから見ていてね」と、この参加者さんに全く同じ指導を『命令口調で』繰り返したのです。言っている内容は同じなのに、「次はこれをしろ!」「これは絶対しちゃだめだ!」と威圧的なトーンで言われることで、参加者さんの筋緊張は目に見えて変わり、同じ運動をしたにも関わらず、エクササイズ後にはPositionが完全に崩れた状態に。明らかに交感神経優位です。このデモを終えて、Ronはにっこり「PRI理論なんて別に重要でもなんでもないんだよ、キミが穏やかなトーンで患者に声をかけさえすれば、それだって時に患者をRepositionさせるのに十分なんだ」と。う、うす…!患者の精神状態の話を講習に取り込む講師はぽつぽついますが、「我々の患者に対する態度も大きな差を生む要因になる」とハッキリ強調してくれたのはRonが初めてだったので、これは次回の講習でも参加者さんにシェアしたいと思います。
3) 「この講習の目的が『強くなること』だと思っている人がいたらそれは大きな間違いです」と、Ron。「この講習は『弱くなるため』のものです」と。これもRonらしい言い回しですが、つまり彼が言わんとしていることは「既に存在するパターンの色を濃くして濃くして、レイヤーを重ねて重ねて『強く』することはPRIの目的の真逆」、そして、「パターンの『色』を『弱く』して、PRIの言うNeutralityを確立する講習である(=そうしないとそもそも鍛えられないよ、強くなれないよ)」ということなんですね。だからもちろん正しくやれば最終的には『強く』なるんですけど、そのためには一度現在のパターンから出ることを覚えなきゃいけないよ、と。ここらへんはMyokinを取ってくださった方はご理解いただけると思うのですが。強くなるのではなく、弱くなるための講習…これに興味がある方は、ぜひまた冬のPRI講習にも遊びに来てください。
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…で。土曜の講習が終わってから、タイムズスクエアに繰り出してきました(↑)!これはタイムズスクエアの全く同じ場所の、夕方 vs 夜中。騒がしくて新宿のようで、私はこういう場所が好きです。ついでに、やっぱりブロードウェイも見なきゃでしょ、ということでリバイブされたばかりのCATSも見てきました(↓)。素晴らしかった…!Orchestraのめちゃめちゃいい席で、舞台から3列目という距離でパワフルな歌とダンス楽しんできました。芸術って素晴らしい、心が洗われるぅ。
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10年ぶりのNew York楽しかったな。いっぱい学んで芸術に触れて、知的に満たされた。博物館や美術館ももっとどっぷり行ってみたいので、次回NYCに来るときはがっつり観光で、5日は使う計算で来ようと思います(笑)。

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  # by supersy | 2016-08-16 22:30 | PRI | Comments(0)

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