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適切な心肺蘇生は肋・胸骨の骨折を伴う。

何年かに一回、SNSなどで「AEDを女性に使おうとして訴訟されそうになった」「肋骨や胸骨を折ると訴えられるから心臓マッサージはしたくない」という投稿を見かけ、そのたびにもやっとした気持ちになります。色々思うところはあるのですけれど、今回は、サラッと胸骨・肋骨骨折についてだけまとめますね。

さて、成人が意識を失って倒れている場合、まずは1) 真っ先に救急車を呼んで、2) 救急隊を待つ間、患者の脈拍・呼吸が見られなければ一刻も早く胸骨圧迫を開始/AEDを使用する、というのが近年の救急対応スタンダードです。私自身、つい最近、アメリカ赤十字のCPR(心肺蘇生)/AED資格更新講習を受けたんですが、最新のガイドラインでは、成人の胸骨圧迫は最低でも2インチ(=約5cm)、子供は約2インチ(約5cm)、幼児が1.5インチ(約3.8cm)の深さに達しないと十分な効果無しと指導しています。私が初めて救命講習を受けた15年前は成人の胸骨圧迫度合はもっとずっと浅くてよいと教えていたと記憶していますから、「効果的な救命には我々が以前思っていたよりもより深い圧迫が必要」というのが近年の共通理解なんです (*調べてみたら当初は3-4cmと教えられていたのが1960年代に4-5cmに変わり、2010年からは「最低でも5cm」に変更になったようです。スピードも2010年前には「一分間に100回」だったのが、2010年以降は「最低でも一分間に100回」と、時代と共により深く速い圧迫が求められるようになっているのが見て取れます1)。硬い胸郭に守られている心臓をマッサージしようというのだから、それなりの力が必要なのはまぁある意味アタリマエです。
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そんなに深く速く圧迫したら、胸骨や肋骨が折れてしまうんじゃないか?と心配する方もいるかもしれません。そのとおりです。最新のガイドラインに沿えば、以前よりもこういったCPRに起因する胸部の骨折が増えてしまうのも、至極当然なのです。一般の方にはショッキングかもしれませんが、簡単に統計を紹介します。1

●心臓マッサージを受けた全患者の87%(男性: 86%、女性: 90%)が何らかの骨折(胸骨 and/or 肋骨)をする。
●肋骨の骨折は全体の80%の患者に(男性: 77%、女性: 85%)、胸骨の骨折は全体の65.3% (男性: 59.3%、女性: 78.6%)に見られ、胸骨の骨折はかなりの確率で肋骨骨折を伴う。
●胸骨こそ女性のほうが2.3倍ほど骨折しやすいという統計が報告されているが(OR 2.28, 95% CI 1.83-5.18)、骨折全般のリスクそのものは男女差はない。
●骨折の可能性は年齢と共に上昇する傾向にあり、30歳未満の骨折率は41%程であるのに対して、50代では85%、60歳以上だと骨折率は92%にもなる(下のグラフ参照)。
●2010年のガイドライン変更前と後では、骨折率も85%から89%と増加しており、「胸骨圧迫の深さ・速さ」に関する改訂により、骨折のリスクはより高まったと言える。
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心臓マッサージによる年齢別骨折率。 Kraji et al., 20151 Figure 1を元に作成

つまり、まとめると「心臓マッサージに骨折はつきもの」!むしろ骨が折れて当たり前くらいの気持ちでやっていないと、現行のガイドラインの基準を満たすような深く速い胸骨圧迫はできない、ということになります。「折れて当たり前」は救急隊の間ではよく知れた常識であり、救命士資格の講習会でも「骨折は治る、しかし命を失ったらそれまで」と頻繁に謳われます。警察庁、消防庁、教育省、厚生労働省、日本医師会、日本救急医学会、日本赤十字社などが共同で発表している「救急蘇生法の指針」というガイドライン2にも、こんな風に明記されています。

わが国においては民法第698条の「緊急事務管理」の規定により、悪意または重大な過失がない限り善意の救助者が傷病者などから損害賠償責任を問われることはないと考えられています。また、刑法第37条の「緊急避難」の規定では、害が生じても、避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り罰しないとされています。善意に基づいて、注意義務を尽くし救急蘇生を実施した場合には、民事上、刑事上の責任を問われることはないと考えられています。(p.44)

個人的には「責任を問われることはないと考えられています」よりはもう少し語調の強い、「問われることはありません」という断言ができれば安心この上ないと思うのですが(例えばアメリカにはGood Samaritan Law、善きサマリア人法という『救急の場面で、人を救おうという善意で行った行為に対して、失敗するなどして実害が生まれてしまった場合にもその人は責任を問われない』という法律による確固たる保護があります。日本でもこれが制定されるべきかは協議中ということなのですが…)、それでも今までに日本で救命行為を行った人が法律的処罰を受けたケースはないそうです。AED使用時の脱衣行為で訴えられるなど、もってのほか。周囲の一般人が騒ぐことすらあれ、仮に警察などに通報されても、それが救命行為だったと分かれば警察も失笑、一蹴してくれるはずです(なんてったって、警察庁も構成委員を務める指針に「民事上、刑事上の責任を問われるべきではない」とはっきりと書いてあるんですからね)。

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さて、ここからは少しばかり突っ込んだ話をしますので、読みたい方だけ読んでください。私が今回参考にしたこの文献(↑)1は、スロベニアの研究チームによって2015年に発表されたもので、検証対象は「2004年から2013年の間にCPRを受けたにも関わらず助からなかった(= 死亡した)18歳以上の患者2148人」です。これを踏まえて、指摘しておきたい点が2つあります。1) サンプル数としては十分な数が揃っていると言える…が、2) あくまで死亡した患者ということで、解釈には注意が必要。例えば、私はこんな風に考えます。胸骨圧迫の深さが不十分だったから蘇生ができなかった可能性も否定できない→となれば、この研究で報告されている骨折率はむしろ胸骨圧迫を施されて助かった患者のそれよりも低い可能性は十分にあるのでは?私はこの論文に書かれている数字を「最低骨折率」として解釈してもいいのではと思っています。皆さんはどう思いますか?

その逆で、「胸骨圧迫そのものが死を招いた可能性も否定できないだろう」という人もいるかもしれません。しかし、同論文の中に、骨折をした1875人のうち、検死解剖で『胸骨圧迫により、死亡に関わった可能性があるほどの内出血』が認められた患者は30人にしか確認されませんでした(内訳は肝臓破裂 n = 13, 肋骨脱臼・胸骨骨折 n = 11, 脾臓破裂 n = 2, など)。これは全体の1.39%(30/2148)にしかなりません。もっと極端な例で言うと、その場で既に即死していても(= 既に蘇生の可能性がゼロでも)、なんとか蘇生しないかと奇跡を願って30分45分と胸骨圧迫を長時間続け、その結果骨がバキバキに折れてこれだけの内臓損傷を引き起こしてしまっていた可能性も十分にあると思うのです。死亡が先なのか、胸骨圧迫による損傷が先なのか、chicken or egg...どちらにしても、これらの30件全てが「胸骨圧迫によって死亡した」と断定できたわけではないのです。
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さぁ、多く見積もっても胸骨圧迫で患者が死亡する可能性は1.39%。1心肺蘇生を行わずにただただぼうっと救急隊の到着を待っていれば、一分ごとに患者の生存率は10%降下していきます。3 日本の救急隊が現場に到着する全国平均時間は8.6分とのことですから、4 これを悠長に待っていればどちらにせよほぼ確実に患者は命を落とすことになるわけです。一刻も早い「現場での行動」が生存率を少しでも上げるのは間違いのない事実です。

現場でCPRを開始できるのはプロの救急隊ではない、たまたま居合わせた一般の人であることが圧倒的に多いのです。3 頭に浮かぶかもしれない躊躇や不安を振り払ってでも、とにかく胸骨圧迫だけでも開始してもらえれば…と医療従事者のはしくれとして願っています。

ちなみに、もうかなり古くなってしまいましたが、AEDに関する記事を昔書いたことがありますので、こちらも併せてぜひ。


ところで全然関係ないんですけど、このデータもかなり面白かったです(↓)。1 肋骨、胸骨骨折を部位別に骨折確率をまとめたもので、肋骨は第3-5肋骨骨折が最も多いこと、そして胸骨は胸骨体の中心か胸骨角部分の骨折が多いことがわかります。いやー、これだけでも焼酎2杯はいけますね!おもしろい…。
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1. Kralj E, Podbregar M, Kejžar N, Balažic J. Frequency and number of resuscitation related rib and sternum fractures are higher than generally considered. Resuscitation. 2015;93:136-141. doi: 10.1016/j.resuscitation.2015.02.034.
2. 日本救急医療財団心肺蘇生法委員会. 救急蘇生法の指針、市民用、2015. https://www.fdma.go.jp/neuter/topics/kyukyu_sosei/sisin2015.pdf. Published 2015. Accessed on April 28, 2017.
3. Rivera NT, Kumar SL, Bhandari RK, Kumar SD. Disparities in survival with bystander CPR following cardiopulmonary arrest based on neighborhood characteristics. Emerg Med Int. 2016;2016:6983750. doi: 10.1155/2016/6983750.
4. 消防庁. 報道資料:平成27年版 救急・救助の現況. 総務省消防庁website. http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h27/12/271222_houdou_2.pdf. December 22, 2010. Accessed July 10, 2016.

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  by supersy | 2017-04-28 22:30 | Athletic Training | Comments(0)

Shoulder Impingement Syndrome (SIS)診断について、その3。

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#8 Kelly & Brittle, 2009
この研究ではUSを比較試験として用い、7つのテストの診断的価値を検証しています。US画像診断は最近の技術の進歩でより正確になってきていて…と他の論文(#7)でも書いてあったような文句が導入部に書かれていますが、その際に引用されている文献は#7でも使われていた2004年のものと2000年の論文のみで、もっと新しいはずの#6 (2006年)の論文と決定的に食い違うので、やっぱり個人的に「USをreference testとして使う」ことの正当性は低いのではと思いますが…。

被験者: 該当整形外科病院に肩のUSを撮りに来た34人の患者さん(男性20人、女性14人、中間年齢57歳、中間症状期間2年…なぜにmeanでなくてmedian?)。Inclusion criteriaは年齢が20-70歳で、指示に従う能力があり、no history of traumatic injury to the shoulderというところ(肝心な肩の症状に関する指定は一切なし)で、Exclusion criteriaは1) neurological-type pain or weakness originating from cervical spine もしくは 2) inflammatory joint diseaseがあること、だそうです。我々ATからしたら、US画像にreferされる患者の平均的criteriaが分からないのでこれは設定の甘いIn/exclusion criteriaですね。Sample sizeに関してもPower Analysisは行われておらず、かなり被験者の数は少ないなぁという印象です。

検証方法: US (肩の超音波の専門家であるひとりのradiologistが一貫しておこなう)の直後一人のphysiotherapistが7つのテスト(Neer, Hawkins-Kennedy, Painful Arc, Empty Can, Full Can, Resisted Abduction, Resisted ER)を実施。タイムラグがないのがいいですね。しかも、このPTはUSの結果を知らない(blinded)状態だったそうなので、ここも評価できます。

気になるのは「US画像がfull-thicknessがどうか不明瞭だったり、テスト結果が曖昧(陽性とも陰性ともつけがたい)だった場合は分析から省きました」という記述ですかね。実際の診療では「あれー?このテスト陰性かな、陽性かな?」と迷うような場面があるからといって「分からないから診断しない!」と投げるわけにはいきません。曖昧なケースも含めて診断できるようなツールを開発することこそに意味があるのではと思うので、「不明瞭なものは除外」というのはあまり褒められた研究デザインではありません
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結果: さて、結果は上の表の通りです。例によって-LRや+/-PVがなかったので全部まとめて出してみました。ハッキリ言って有効なものはほとんど確認できません。外転時の痛みが確定に有効なくらいでしょうか。それにしたって、95%CI値が報告されていないので、どれほど安定した数値なのかは残念ながら不明です。被験者の数が少ないので、95%CI幅が報告されていたとしても広いことは間違いないのではと思います。

著者の結論にも「SIS診断にこれらのテストの使用はさほど有効ではない」と書かれています。唯一面白いと思ったのが、それに続く考察で「肩周りは神経支配がリッチであるため、例えばまだまだSIS初期で、USでは変化が見受けられないけど、これらのテストでは痛みが出るという可能性も十分にあるのではないか」つまり、USという比較テストの信憑性そのものにも疑問を掲げているところでしょうか。まぁ、これを言ってしまうとGold StandardであるはずのArthroscopyもその絶対性が怪しくなってきてしまいますけども…。これ(初期の比較的asymptomaticなSISの診断)を考慮しようと思ったら、今度はSISの初期、中期、末期…みたいに患者を状態でわけて、それぞれでテストの診断価値を実証しなければいけなくなりますねぇ。興味深い考え方なんですけど、検証は難しいかな。
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#9 Hegedus, 2012
2006年に俺らreview article出したんだけど、あれから結構経ってoriginal researchもさらに出たし、systematic review/meta-analysisのmethodologyもかなりスタンダード化が進んだし、QUADASが進んでQUADAS-2になったりもしてるんで、もう一回新しくsystematic review/meta-analysisやりなおしますわー、という論文。

Inclusion Criteria: diagnostic accuracy studies; report SN and SP; written in English; examining adults with shoulder pain fur to musculoskeletal pathology
Exclusion Criteria: the use of equipment/devices; subjects tested under anesthesia; cadavers
Databases Used: Medline, CINAHL, EMBASE, Cochrane Library
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2人の研究者が別々にタイトルとabstractを読み、include or excludeを判断。意見が合わないところは話し合いで、それでも解決しなければ第3研究者によって決定。そののち、手元に残った論文の全文を読んでsystematic reviewとしての最終分析に入れるか決定。最終分析に含まれた32の論文のうち、2x2テーブルが抽出可能だった論文はmeta-analysisにも含まれたそうです。同様に、QUADAS-2に関しても2人の研究者がそれぞれindependentlyでこのツールを用いて研究の質を推し測る分析を行ったそうなんですが、QUADAS-2のagreementはk = 0.31 (95%CI 0.10-0.52)とかなりpoor (低い)値に。いやー、講習会などでも私はオリジナルQUADASのほうがまだ良かったのではないかって言ってしまったりするんですけど、そうなんですよね、QUADAS-2のほうが主観的なので、評価者によって意見の食い違いがある、つまり、inter-rater reliabilityが低いと思うんですよ…。まぁ別に今回のこのレビューそのものの悪口を言っているわけではなくて、これはツールそのもののlimitationですよね。ここまでのmethodologyはスタンダードな、いわゆる非常に丁寧に作られた良レビューという印象です。

QUADAS-2の分析から見えてきた「(今回のレビューに含まれた)多くの論文に共通するバイアス」に関する問題点は大きくふたつ。1) Patient Flow - index testとreference testの間が空きすぎ…これは以前に私も指摘した点ですね。それから、2) そもそもgold standardですらないUSをreference testに使う研究が近年増えている(n = 12)、という点も。これも私が書いていたところだ、やっぱりそうだよね!なんでUSがありきになったのか…。

Systematic reviewの部分はそんなに面白くなかったんで(オイ)、もっとワクワクするMeta-analysisの部分に飛んじゃいましょう!これはご飯三杯はいける、楽しい統計群です!下のテーブルは文中のTable 3を私が個人的に一番見やすいように修正したものなんですけど、ひとつだけ疑問があるとすれば「なんでImpingementとSLAPの上半分だけ、SNとSPを小数点以下まで求めていないの…?」という一貫性の無さですかね。数字いじるんだったらそういうところはしっかり合わせてほしかったです。んで。せっかくのmeta-analysisなので、95%CI幅を考慮しても絶対的な統計力がある「優れたテスト」はあるのか?ということで、「決定的統計力」があるものはがっつり赤に太字で、「まぁ使えないことはない」というテストはうっすら赤で、それぞれハイライトしてみました。意外というかやっぱりというか、少ないですね、良いテスト…。
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Impingement: NeerとHawkins-Kennedyは除外にはまぁまぁ、確定にはPainful Arcがまぁまぁ有効。
SLAP: Anteiror SlideとYergasonの確定は決定的。CrankとCompression Rotationは確定にまぁまぁ。除外に有効なものは残念ながらないが、一番マシなのはActive Compression (O'Brien's - 67%, 95%CI 51-80%)といったところか。
Anterior Instability: これはやっぱりAnterior ApprehensionからのRelocation, Surpriseのコンボをやれってことでしょうね。それぞれ確定力は決定的もしくはまぁまぁ。そして、Surpriseは除外力もまぁまぁあり。
Tendinopathy: Hawkins-Kennedyの除外力がまぁまぁ。
Labral Tear: Crankの確定力はまぁまぁ。
障害別にまとめるとこんな感じですかね。LR値は残念ながら総じて良くないです。例えばSpecificityが良くてもSensitivityが乏しいと、いわゆる「トレードオフ」状態になってしまっていて「総合的にLR値が1に近づく」という、まぁ、こういう現象が起こりえます。
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コンビネーションテストも紹介されてはいるんですが、95%CIがないのでここで敢えて言及する価値はないかと思います。結論としては、「使いどころによってはチカラを発揮できるテストはあるが、これさえ使えば完璧!というテストは存在しないし、コンビネーションテストもギリギリ使えるかどうか…という感じ。もっとcomprehensiveな診断方法を開発、検証する必要がある」とまとめられています。これは私も賛成です。

#10 Dinnes et al., 2003
肩の傷害の診断に、1) clinical examination, 2) US, 3) MRI, 4) MRAはどれだけ有効なのか、という大掛かりなレビュー文献。これは…誰かのdissertationでしょ?chapter形式で185ページあるし…。こういうの課題にするかね普通?ぶつぶつ…。
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この論文、長すぎてとてもまとめきれないので、面白いと思ったところだけ書くと…
  • Includeされた研究の多くがprimary care setting (i.e. スポーツの試合中に怪我が起こり、その場でATが診断)ではなく、誰かの手を渡って最終的に整形外科やリューマチ課などにreferされた患者であるからして(self-referもあるかもしれないけど)、これらの研究の結果が(比較的患者がunselectedである)現場でそのまま当てはまるとは限らない。
  • 上記の理由で、障害のprevalenceは高いものが多かった(i.e. RC disorderが平均で61%)。…現場での数字はきっとこれほど高くはないでしょうし、prevalenceは直接SN、SPなどの結果にも関わってくるので、これによって結論が影響を受けた可能性は十分にあり得ます。
  • 個々のSelective Tissue Testで除外に有効なのが1) Arc of Pain (SN 97%; 95-99%)/Impingement Sign (SN 97%; 95-99%); 2) IR Lag Sign (SN 97%; 83-99%, -LR 0.0; 0.0-0.2); 3) Rent Test (SN 96%; 85-99%, -LR 0.0; 0.0-0.2); 4) Neer (SN 89%; 80-94%); 5) Night Pain (SN 88%; 84-91%)。
  • 確定に有効なのは1) ER Lag Sign (SP 100%; 86-100%)/Drop Test (SP 100%; 86-100%)/Lift-Off (SP 100%; 86-100%); 2) Rent Test (SP 97%; 89-99%, +LR 30.1; 7.7-118.0)/Speed (SP 97%; 87-100%); 3) IRRST (SP 96%; 90-99%, +LR 24.8; 8.1-75.9)/IR Lag Sign (SP 96%; 80-00%)。
  • 総合的に優秀なのはRent Test (除外確定、SN、SP、+/-LR全て有効)、次にIR Lag Sign (除外確定、SN、SP、-LRは確定的)、そしてIRRST (確定、SP、+LRが確定的)というところでしょうか。しかし、これはそれぞれ異なる障害を診断するためのものなのでなんというか、わかりにくくなってしまっているまとめです。傷害別にorganizeすればよかったのでは?
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  • テストの組み合わせは臨床的に意味がありそうなものはなし。例えば、このまとめ(↓)によれば、7つのテストをおこなって全てが陽性だったら確定可能…って、あたりまえじゃん!って感じなので。他にも「10 tests + X-ray」なんて、ATにしては現実味がゼロ。
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  • 肩の傷害の診断にUSを使うことに関しては、今までに38の研究が発表されていたらしいのですが「最近使われている周波数は>10MHzが主流なのに、過去の研究では5MHz(6 studies)や7MHz(19 studies)、もしくは5MHzと7MHzのコンボ(6 studies)が使われていること多く、10MHzの研究(3 studies)のほうが圧倒的に少ないほど。バラツキが大きすぎる」とのことで。ふーむ、ここんとこは知らなかった。となると、研究間の比較の正確性がアヤしくなってきますね。
  • 加えて、超音波画像の研究は被験者のdemographicの描写が甘い、不適切なreference testを使っている、診断基準がきちんと定義されていない、USとreference testの間が空きすぎている、なども挙げられており、総合的にこれらの研究の質はかなり悪いと考えてよさそう。特に私が気になるのがretrospective (or unknown, n = 18) studiesの統計のほうがprospective (n = 11) studiesよりもSensitivity (85%; 81-85% vs 70%; 64-75%)とSpecificity (86%; 83-88% vs 81%; 76-85%)の数値がいいってことでしょうか。もうこうなってくるといよいよ過半数の研究にバイアスがあるってことじゃないかと。
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  • USそのもののOverall pooled SN = 80% (95%CI 78-83%)とSP = 85% (95%CI 82-87%)。RCのtear深刻度別にa: any tear; b: full-thickness; c: partial-thickness tearで見てみると(↑、個人的に重要だと思う結果に★を付けてみました)、断裂の度合いを問わず、確定にはいいけと除外はなー、という感じですね。画像診断まで取って損傷を見逃したくないというのが患者・クリニシャン双方の考えかなと思うので、このSensitivityの幅は私としては使い勝手がいいとは言えないのは、という印象です。これはLR値見ていても同じ(↓)ですね。full-thicknessのtearで陽性出たらDORが13にも跳ね上がるのだとか。しかし、陽性は有意義でも陰性はそれほど意味を持たない。
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  • MRIのRC pathologyに対する診断価値を検証した研究は全部で29。Overall pooled SN = 83% (95%CI 79-86%); SP = 86% (95% CI 83-88%)ということで、USよりはほんのわずかばかり優秀。MRIに関して面白いと思ったのが、「患者の年齢が上がるとともに正確性が下がる」というところですかね。加齢に伴う組織の変化をpick upしすぎてしまうのでしょうか?
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  • RCのtear深刻度別にa: any tear; b: full-thickness; c: partial-thickness tearで見てみると(↑、これも確定的だと思うものに★アリ)、MRIはfull-thicknessの診断には確定・除外共にかなり有効(SN 89%; 86-92%, SP 95%; 91-95%)な反面、partial thicknessの除外力は非常に低い(Sn 44%; 36-51%, SP 90%; 87-92%)のがわかります。LR値(↓)もまぁ、この結果を反映していますよね。Full-thicknessの-LR値は完璧とは言いませんが、「陰性の場合はRC断裂の可能性は(pre-test probability 32%から)7%未満まで落ちる」のには十分な数値でもあります。臨床的意味はそこそこあるのではと私は感じています。これに基づき、最終結論では「MRIはfull-thicknessの除外に有効」とのみ書かれているので、「確定は?」と思って、nomogram使って陽性の場合のpost-test probabilityも示してみました(赤線がfull-thickness、緑がany tear、そして青がpartial thicknessです)。うーん、なるほど、確かにpre-test probabilityの32%を考慮しちゃうと、陽性の場合でもfull-thickness tearのpost-test probabilityは82%ほどと、それほど確定的ではなくなってしまうのか。なるほど。
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  • さて、最後はMRA。MRAの診断価値を検証した研究はたった6、ということでこれは比較的コンパクトにデータがまとめられています(↓)。下の総合的な数値を見る限りでは、full-thicknessのtearにはMRAは確定も除外も決定的に有効partial tearに関しては確定が決定的に有効、ですね。MRIよりもそれぞれ数値が少しばかり高い印象です。Prevalence 平均36%を元に考えると、MRAが陽性だった場合full-thickness tearがある可能性は85%に、陰性だった場合その可能性は6%までに低下するという計算。
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  • まとめると、「画像診断ではfull-thicknessのほうがpartial thicknessよりも診断しやすい」というところは間違いなさそうですね。本文には「MRIに比べてUSとMRAのほうが優秀」とあったんですが…うーん?そうかなー?確かにUSとMRAが部分断裂を確定できるのに対して、MRIはその能力が少し劣るところは大きいのか?研究の質としてはUSのそれは低いものが多いかなと思ったんですけどね…。今ネットで調べてみたら、もちろん保険や場所によって差はあると思うのですが、コストはUSが一回平均$225ほど、MRIは$475くらいでMRAが$550くらいとありました。ちなみにarthroscopyは$2500-6000くらい?値段も加味すると、一番コスパが良いのはUSってことになるんでしょうか。お金に糸目はつけないんだったらさっさとMRA撮っちゃいましょ、って感じかな。
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そんなわけで、これでSIS診断の10文献レビュー終わりです!あーこれが終わればやっと読みたかった脳震盪の文献群に取り掛かれそう。楽しみです、ひゃっほうー。

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  by supersy | 2017-04-15 18:00 | Athletic Training | Comments(0)

Shoulder Impingement Syndrome (SIS)診断について、その2。

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#5 Silva et al., 2008
実際に臨床でよく使われるreference standardであるMRIとPhysical Examの結果を比べましょう!というこの研究。いやー、うーん、それでもやっぱりGold StandardであるArthroscopyと比べるべきだと思うんだけど、「臨床的によく使うから」という理由でMRIと比較するのはどうなんだろう。そのJustificationには少し疑問が残ります。

被験者: 18歳以上の新たに肩の痛みが出始めた患者をリクルートし、30人(男性14人、女性16人、平均年齢54.87 ± 13.8歳、平均症状期間97.5日)が参加。かなり人数は少ない印象。Sample sizeは計算していない、と明言してます(なぜ?)。Exclusion Criteriaは1) history of shoulder trauma or surgery, 2) inflammatory rheumatic diseases, 3) painful cervical motion, 4) other musculoskeletal problems of an UE (#4は曖昧すぎる気が)。

検証方法: Demographicを取った後、AROM、PROMと7つのスペシャルテストをひとりRheumatologistが実地。RAを除外した後なのに、なぜ専門外とも思えるRheumatologistが…?Ortho MDじゃなくて…?検証されたテストはNeer, Hawkins, Yocum, Jobe (Empty Can), Patte Manoeuvre (先のIRRSTのERをテストせず、IRのみやるバージョンという感じ), Lift-off, Resisted Abduction。Physical Examをおこなった3日以内に、Physical Examの結果を知らない(blinded)RadiologistがMRI画像を撮って診断し、その結論が比較されました。MRIは閉所恐怖症の被験者がひとりだけいたため、それ以外の全員(これはExclusion Criteriaに含めておくべきだったのでは…この患者はどういう風に分析されたのか?)を対象として行われたそうな。

結果: 結果は以下のテーブルの通り。MRIでは患者をSISかどうか診断しただけでなく、SSB = Subacromial-Subdeltoid Bursitisがあったかどうかも検証、分析に加えたそうなんですが…この怪我のみ分けて検証した理由はなんだったのか?説明が不十分に感じます。
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LR値はなぜかPositiveしか求められていなかったので-LRを追加しました。残念ながらSISの診断に有効なテストはないですね。SSBは…Neer, Hawkins, Yocum, Lift-offにPassive Abductionが陰性で除外が可能そうです。最も有効なのはLift-off Testでしょうか。しかし、被験者の数が少ないこと、そして95%CI値が求められていないことを考慮すればこの数字にどれほど一貫性があるのかは甚だ疑問です。
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ひとつでダメなら合わせればどうだ、ということで、2つのテストを組み合わせた場合の結果も表にまとめられているのですが、SensitivityとPPV、+LRだけ載せられても…という感じです。きちんとcomplete dataをプレゼントするべきだと思います。私がこの表を見た感想は「やはりSISに有効なテストは組み合わせてみても無し。SSBは『PatteとLift-off』の組み合わせを著者らは推しているが(+LR 10.27)、95%CI幅は広いし信頼に足る数字ではない」というところです。

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#6 Michener et al., 2009
やっときちんと統計やってくれてる研究が…(涙)!
この研究では1) SIS診断によく使われるテストのreliabilityは?2) 個々のテストの診断的価値は?3) 効果的な組み合わせはあるのか?という3つの観点から5つのテスト(Neer, Hawkins-Kennedy, Painful Arc, Empty Can, ER Resistance)を検証しています。

被験者: 整形外科に来院した、一週間以上続く肩の痛みのある患者55人(男性47人、女性8人、平均年齢40.6 ± 15.1歳、平均症状期間33.8 ± 48.9ヶ月)。男性が多い(85.5%)ですね。Power Analysisに基づき、合計57人の被験者が要るという分析まではしたようなんですが、実際の被験者の数はこれをわずかに満たしていません。あと2人、見つからなかったのかな…。

検証方法: Physical Examはそれぞれの患者に対して2人の臨床家(1人のOrthopedic surgeon, 17年の臨床経験、1人のPT、8年の臨床経験)が別々におこない (blinded to each other's findings)、その結果を比較しました。その後、平均2.6 ± 2.7ヶ月の期間を経て(報告されているのはありがたいけど、ちょっと長いな…)、これまたPhysical Examの結果を知らないOrthopedic SurgeonArthroscopyを実施。最終診断を下し、Physical Examの結果と比較されたというわけです。Blindingがふたつあるのがいいですね。

結果: まずはreliabilityから。17年の臨床経験のある医師と、8年の臨床経験のあるPTが5つのテストをおこない、どれだけその結果が一致したかという分析です。
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これは…意外と低いですね。Kappa CoefficientはPoor < 0.20; Fair 0.21-0.40; Moderate 0.41-0.60; Good 0.61-0.80; Strong >0.81なので、Hawkins-Kennedyが『Poor』なの以外は『FairからModerateに収まる』と言ってしまってもいいんですけど、これらのテストは比較的スキルの要らない簡単なもののはずで、それらの信頼性がここまで低いというのは、正直なところびっくりです。もう少し各テストのスタンダード化が進むべきってことなんでしょうか。

では、個々のテストの診断的価値は?確定に使えるのはEmpty Can, ER Resistance Testのふたつで、除外に最も有効なのはNeer Testといったところでしょうか。これら3つのテストのSensitivity, Specificityは95%CI幅もそこそこ狭く、それぞれの能力にそれなりに長けていることが確認できます。LR値は…どれもイマイチですね。95%CI幅も広いです。あまり参考になりません。組み合わせてはどうか?ということで、確定能力トップ3の『Painful Arc, Empty Can, ER Resistance Test』のコンビネーション除外力トップ3の『Painful Arc, Hawkins-Kennedy, Neer』のコンビネーションの統計的価値もそれぞれ計算してみたそうなんですが、残念ながら「どの組み合わせも適切とは言えない」という結果になっています。
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5つ全てのテストをおこなった場合、「〇以上陽性だと」というようなcutoff pointはあるのか?と分析した結果、最も確定と除外のバランスが取れていたのは『3つ以上陽性である場合、集合的に陽性と考える』という場合でした(Table 4)。こちらは除外も確定もボチボチ、といったところです。

個人的にはTable 5のような表を眺めているのは大好きなのですが、finding時代は残念ながらそんなにわくわくするものではありませんね。LR値はどれもイマイチ。どのテストも決定的なprobabilityの変化にはつながらないようです。

結論としては、SISの確定には 1) Empty Canをソロで使う、2) ER Resistance Testをソロで使う、3) 5つのテストのうち、陽性が3以上ある、という3つの条件のいずれかを用いることが、そして除外には 1) Neerをソロで使う、もしくは2) 5つのテストのうち、陽性が3未満である、という2つの条件のいずれかを用いるのが有効なようです。有効なコンビネーションは残念ながら無し、probabilityを決定的にシフトさせるテストもこれまた残念ながら無し。95%CIも含め、丁寧な統計分析が行われている研究で、非常に好感が持てます。読んでいて楽しい論文でした。
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#7 Salaffi et al., 2010
さて、最後の論文はUSをReference Standardとして用い、5つの「肩障害用」のテストの診断力を検証したものです。USをReferenceに用いた理由として、2004年に発表された研究によればUSの正確性は87%で…とその有効さを説明をしてはいるものの、これはその1でまとめた2006年発表のArdic氏らの報告とは食い違う見解なわけで、そこらへんの背景の説明は不十分であるんではないかなーと疑い深くなりたくなってしまう導入です。

被験者: 肩の痛みを訴えてリウマチ科に来院した203人(男性64人、女性139人、平均年齢58歳、平均症状期間2ヶ月)の患者が対象。Exclusion Criteriaは 1) historyof trauma, surgery or radiation therapy, 2) tumor in the shoulder girdle, 3) septic arthritis 4) inflammatory rheumatic diseaseで、うーん、あまり普段は見かけないようなものもありますね。どうしてTumorなんかを入れようと思ったんでしょう?別にあって悪いものじゃないですけど、理由が気になります。

検証方法: 患者のdemographicsのあと、一人のRheumatologistがphysical examinationをおこない(私の認識が間違っているのか…RAの専門家はOrthopedicの専門家とは違うのではと思うのだけど、違うのかな?どうしてOrtho MDじゃないのか疑問に思ってしまうのだけど…)、Hawkins, Jobe, Pette, Lift-off, Speed's Testの5つを実施。これらのテストの結果を得点化して集計するcomposite index、SNAP SHOT (Simple Numeric Assessment of Pain by SHOulder Tests、↓写真参照)として記録しました。このSNAP SHOTに関しては誰がどうやって作ったのかの説明は一切なく、あまりに唐突なので「なぜこの5つのテスト?」「なぜこの得点形式(各テスト痛みのレベルに合わせ0-2点、総合で0-10点)?」という疑問しか沸きませんが…。で。そのあとでUS診断。また別のRheumatologistの医師が、Physical Examの結果を知らない状態で(blinded)おこないました。Physical ExamからUS診断までの期間は明記されておらず、同日だったのか数か月後だったのかは不明です。
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結果: 各テストの統計は次の通り。ここで一度明らかにしておきたいのが、それぞれのテストは違う障害の診断目的で使われているという点です。HawkinsはSISを、Empty Can (Jobe)はsupraspinatus tendon、Patteはinfraspinatus tendonを、Lift-off (Gerber)はsubscap tendonを、Speed'sはbiceps tendonのpathologyをそれぞれ診断するのに使われています。なので、下のテーブル (Table 1)は、5つのテストの診断力を比べ合いすることはできないのだという前提で眺めてみてください(この説明は本文中でもしっかり説明されておらず、何分かりにくくしているのさー、という印象です)。

眺めている限りでは、アレですかね、95%CIも含めて解釈するならば「PatteはInfraspinatus tendinopathyの確定に」「Lift-offはSubscap tendinopathyの確定に」「Speed'sはBiceps tendinopathyの確定に」それぞれ有効、ということが言えるでしょうか。除外はあまりいいものがないですね。一番マシなのはHawkinsのSISの除外力ですけれど、それだってイマイチ決定力に欠けます。
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さて、私がこの研究で一番疑問を感じているのはこのSNAP SHOTという名前のcomposite index (↑Table 2)です。私、もともとcomposite系のテストは嫌いじゃないんですけど、これははっきり言って目的が不明だと思います。そもそもこのSNAP SHOTは何を診断しようとしているのか?ここの部分の説明が一切記載されていないからです。5つの異なる肩障害を診断するテストを合わせて、一体その点数が高かったからといって、どんな診断名が付くというのでしょう。もしこれが論文に繰り返し書かれている「painful shoulder」の診断のためなんだとしたら、その診断は患者が「肩が痛い」という主訴を訴えて来院した時点でestablishされているはずです。私は臨床家として、患者に「painful shoulder」という診断を課すことを目標に診断に臨むことは永遠にないと思うので、そういう意味ではこのcomposite scoreは私にとって何の意味も生みません。

そういったセオリーの部分は無視して統計だけを見ると、10点満点のSNAP SHOTのうち、「3点より高いかどうか」をcutoffと設定すれば除外と確定に最も理想的であるということは言えます。但し、くどいですが、臨床的意味は皆無だと私は思います。

うーん、つまらないものを切ってしまった次元の気分です。どうせ課題として課せられるなら、もう少し面白い論文を読みたいです。せんせー…。

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  by supersy | 2017-04-09 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル5月号発売 & Shoulder Impingement Syndrome (SIS)診断について、その1。

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月刊トレーニング・ジャーナル5月号が発売になっています!連載最終回の今回は、「ATは医療の一部に特化した専門家であるべきなのか、オールマイティなジェネラリストであるべきなのか?」という観点から、現在アメリカで活発に交わされている、「我々はどこからきて、どこへいて、どこへ向かうべきなのか」について書いています。最終回には相応しいトピックかなぁと個人的に思っています。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。

全12ヶ月分の連載もこれで終了です!お世話になった皆様、ありがとうございました。資料提供など友人らに協力してもらったりして、とてもとても助かりましたー。



さて、諸事情あって少し間を空けましたが、最後の10文献をまとめておきたいと思います。トピックはSISの診断です。
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#1 MacDonald et al., 2000
NeerとHawkins Impingement Tests(↓)はSubacromial Bursitis/Rotator Cuff Pathosisの診断に有効なのか?という研究。少し古いので、研究デザイン自体にも色々flawあり。それから、SIS診断なんだとしたらどうしてBiceps tendinopathyについて触れていないのかも疑問が残りますね。
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被験者: Shoulder Arthroscopy(内視鏡手術)を受ける予定の患者85人(平均年齢40才、男性62人、女性23人)が対象。85 "consecutive" patientsという書き方をしてあるので、quota samplingだったのか?と思うけれど、どう被験者を集めたのか、どうして85人なのか(= statistical power analysis)など詳しい記述はなし。Inclusion/Exclusion Criteriaに関する記述も一切無し。Scopeを不可避と判断される程状態の悪い患者のみが対象なんだとしたら、この研究にはsample biasがかなりあると言える。Internal validityとExternal validityがあるかは甚だ疑問

検証方法: ひとりのsurgeonが全ての患者をexamine - 1) Physical Examと、2) Arthroscopyとをそれぞれおこなった。

結果: 結果は以下のテーブルに示した通り。Likelihood ratiosが求められていなかったのでついでに足しておきました。内容としては、「Bursitisの診断はNeerとHawkingが両方陰性だった場合は除外が可能」「Rotator Cuff Pathosisの診断はNeer、Hawkinsの陰性が共に除外に有効」という結論でしたが、95% CIが求められていないのは非常に痛い。Point valueだけ見ててもなー
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#2 Calis et al., 2000
これはトルコの研究ですね。先ほどの研究に比べてもう少し手広く、「SIS診断するのにはどのテストがいいのか」ということで、Neer, Hawkins, Horizontal adduction, Speed, Yergason, Painful arc, Drop arm testの7つそれぞれの診断価値と、clusterとしての使用価値を検証しています。

被験者: 慢性的な肩の痛みを訴えてrheumatologyもしくはorthopaedic surgery unitから該当医院に委託された、もしくは直接該当医院に来院した患者120人(両側のケースもあったので肩は合計125、男性48人、女性72人、平均年齢51.6 ± 13.9歳)が対象。Inclusion Criteriaは年齢幅が18-70歳であること、そしてExclusion criteriaは 1) inflammatory or systemic diseases; 2) acute traumatic conditions, 3) postoperative conditions and 4) neck and elbow disorders…どうこれらの「該当条件」を探したのかは明記されていませんが。もっと細かい表記があるとより好ましいですが、先の研究よりは条件の絞り方がしっかりしています。

検証方法: 患者のdemographics、physical exam (2名の医師によって行われた―それぞれ4年と8年の臨床経験ありinterobserver reliabilityは98%…どう測ったか説明はないが、真実だとすれば優秀な数字)とX-ray、MRI (一人のradiologistが読む経験不明、blindされていたかの記述なし)を通じて患者の状態を検証したのち、SIT (subacromial injection test)を使って最終比較。SITが陽性で、且つX-rayが陰性だった場合にSISという最終診断が下されたようです。SITがSIS診断のgold standardであるという話は、理屈は通っていますがエビデンスを見たことがありません。これが最も適切な診断法なのかという判断が読み手としてしにくいのと、もしこれの診断法そのものに欠陥があった場合、この研究結果の全ての意味が著しく薄れるという懸念はあります。

結果: SITに基づいてSIS有りと判断されたのは86/120人 (prevalence/pre-test probability = 71.7%)、MRIによるグレード分けでは、19人がステージ1、50人がステージ2、18人がステージ3だったそうな。SIS患者(86人)と非SIS患者(34人)の間の平均年齢差は大差なし。個人的にはsymptom durationの比較も見たかったですが。では、個々の診断テストの結果とクラスター・テストの結果を下の表にまとめます。例によってLikelihood Ratioが求められていなかったので足しました。
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確定のトップ3はHawkins, Neer, Horizontal Adduction testで、除外のトップ3はDrop Arm, Yergason, Painful Arcの順番ですね。どちらかのみに特化したテストが多いため、LR値は陰性・陽性どちらも優秀とは言えません。クラスターのほうは…月並みですが、この7つのテストを実施し、陽性が多ければ多いほどSISの確定力が上がり、陰性が多ければ多いほど除外力が下がるということでしょうか。確定・除外のどちらにも使える基準というのは残念ながら存在しなさそうです。Accuracyの値は、pre-test probabilityが高いんであんまりアテにならないかと…Sensitivity値に引っ張られる形になってしまっているので。

うーん、興味深い結果ではありますが、これも先ほどの研究同様、95%CIが報告されていませんのでこの結果を鵜呑みにすることは危険です。きちんと統計報告せーよーほんとにもー、もったいないなー。


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#3 Zaslav, 2001
SISとヒトクチにいっても直接subarcomial archの構造上の問題を含むPrimary Impingementと(=surgical decompressionなどが有効の可能性高)、Instabilityなどに起因するintraarticular structureのImpingement、つまりはSecondary Impingement (リハビリによる介入や手術による関節包のtighteningが有効?)など、様々なunderlying pathologyが考えられます。ということで、この論文では新しい「Internal Rotation Resistance Strength Test (IRRST)」というテストがその鑑別に有効なのかどうかを検証しています。ちなみに、IRRSTというのは肩を90°外転、80°外旋した状態から、ER、IRの順でそれぞれのIsometric Strengthを試験者がテストし、ERに比べてIRが弱ければ陽性…というテストです。以下の動画参照。うーん、まずはこのテストのinter-rater reliabilityを明記してほしいですね。強さを比較して陽性かどうか決めるって、少しsubjectiveな気がするので。

被験者: 平均16週間(range: 2-25ヶ月)のconservative treatment(cortisone injectionからのリハビリ)を試しても症状の改善が見られず、肩の内視鏡手術を受ける予定の患者110人(男性65人、女性45人、平均年齢44歳)が対象。これも#1の研究同様、「リハビリが失敗し、内視鏡を受けざるを得ないような深刻なケース」の患者のみが被験者になっているため、「現場で肩を痛めた患者(=軽いものも深刻なものもバラバラに含まれる)」にこのまま結果を当てはめてもいいものとは限らない…sample biasの可能性高しですInclusion CriteriaはNeer Testが陽性であることで、Exclusion Criteriaは明記されていないものの、X-rayとMRIでAVNが確認された患者は除外された、と説明されています (ここまでの研究から、NeerはSensitivityが優秀なのは報告済みだけど、Specificityは決して高くない。それを考えれば、Neer陽性にどれほどの価値があるのか?)。

検証方法: まずはPhysical Examを、そのあとArthroscopyという順番で検証。Physical Examをおこなったのは「アシスタント」さんで、経歴などの詳細は不明。この人がIR Resistance Strength Testをおこなったのであろうと予想しますが、前述したように少しsubjectiveに見えるこのテストを陽性か陰性か判断するこの試験者の定義や背景はもう少し説明されるべきだったのではないでしょうか。一方、scopeをおこなったのはひとりの医師これもそれ以外の経歴は不明です。Blindingに関する記述はないので、おこなわれなかったと判断するのが妥当でしょう。

結果: 2x2テーブル(↓)を見る限り、このIRRSTはIntraarticular pathology、つまり分類でいうとSecondary SISの場合に陽性になり、Extraarticular pathology、つまりPrimary Impingementの場合に陰性になる可能性が高いということが言えそうです。この観点からSensitivity、Specificity、+/-PVと+/-LRを計算すると、下のようになります。またしてもLR値が計算されていなかったので足しておきました。昔の研究ではいかにPVがLRに比べて重宝されていたかわかるなー。今ではその関係性はほぼ真逆になっているけれど。
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この結果を見る限りでは、IRRSTはIntra vs extraarticualr tissue involvementを区別するのに非常に有効なテストであるということが言えますね。除外、確定共にかなりの診断力があります。やはり、95%CI値が求められていないのは致命的な統計欠陥と言えるでしょう。それから、少し疑問なのが、このテストがPrimary vs Secondary Impingementを区別するのに有効だというのはともかく、そもそもImpingement Syndromeではない患者に使った場合はどうなるのか?という点です。この研究のProtocolのままでいうと「Neer Impingement Testが陽性であることがImpingementであるという確定条件」なのかもしれませんが、これは前述したようにここまでの研究結果から論破可能な前提条件です。一体どういった患者にそもそもIRRSTの使用を考えるべきなのか、そこの背景設定が甘ければ我々臨床者にとってはあまり意味をなさないテストになってしまいます。例えば、subscapの肉離れ患者さんがいたとして、その障害はnon-SIS、extraarticular pathologyと解釈するのが自然だと思うんですけど、このテストはまー陽性になりそうですよね。でもだからといってSecondary ImpingementともIntraarticularとも言えないですよね。使いどころが定義されていないぶん、このテストには表面的な数字ほどの臨床的効果は実際はないだろうな、と個人的には思ってしまいます。

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#4 Ardic et al., 2006
この論文は画像診断に焦点を置いたもの。超音波画像(ultrasonography、US)とMRIが肩の臨床的評価、機能的評価とどうcorrelateするかを検証しています。

被験者: 58人(男性13人、女性45人、平均年齢55.5 ± 12.4歳、平均症状期間11.8 ± 7ヶ月)の"clinically suspected SIS"患者が対象。Inclusion Criteriaは1) no history of trauma、2) 肩の痛みが3ヶ月以上続いている、3) 3週間鎮痛剤を試したが無効、4)且つclinically suspected SISの診断を受けたことで(最後の条件はあまりにpoorly defined)、Exclusion Criteriaは1) history of trauma or cervical trauma、2) cervical discopathy、3) neurologic origin of muscle weakness、4) additional musculoskeletal problems of UE (#3と#4はpoorly defined)、5) systemic, metabolic, or inflammatory diseases、6) MRIやultrasonographyが何らかの理由で禁忌、と記述されています。

検証方法: ひとりの医師が一貫して全ての患者のPhysical ExamとX-ray (AP, Axillary views)をおこない、それからUSとMRIを撮る…という流れ。USとMRIはそれぞれ異なる、しかし一貫した"experienced" ragiologistによって撮られたそうで、その人物らはPhysical ExamとX-rayの結果にはblindedであったという表記がしっかりとあるところは好印象です。USとMRIに関してはどの角度からそれぞれの組織をどう見たかという詳しい説明があり、ここは素人目ながら再現性は高そうだと感じます。逆に疑問に感じるのはPhysical ExamとX-ray、USとMRIがそれぞれ「同じ月に撮った」という表記はあるもの、Physical Exam/X-rayとUS/MRIの間がどれほど空いていたのかは不明だというところです。もしかしたら一ヶ月以上空いており、例えば病状がこの間に進行してしまった可能性も考えられます。もっと短いスパン、同じ週…なんなら同じ日のうちにやるのが理想的なのではと思います。それから、これらはあくまでお互いのcorrelationを計算されただけで、何かほかのGold Standard、例えばarthroscopyの結果と比較したわけではありません。MRIとUSが共に何かを見逃せば、不正確であっても正解っぽく見えてしまう危険性もあるわけです。

結果: X-rayの結果は全員がWNL(特に異常なし)。興味深いのはUSとMRIの比較診断です。かなりの数の肩障害について、USはMRIに比べて見逃しやすい (p < 0.05)という結果が出てます。USとMRIが統計的有意な差なく同様にdetectできるのはBiceps rupture, Biceps effusion/hypertrophy, Supraspinatus tearのみで、他の傷害はMRIのほうが圧倒的に感度が高いのが印象的です。うーん、でもp値はきちんと具体的にリポートしてほしいな、0.05未満だったかどうかだけではなく。どうしてこういうところ手を抜くんだろう。95%CIも相変わらず報告されていないし。
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MRI画像とclinical findingの報告は正直言ってかなりまとまりが悪く、あまり意味のある結論が導けないので少しばかり省きます。特筆すべきは「Regression analysisの結果、glenoid labral tearとbursal effusion/hypertrophyがMRIで確認された場合、その肩の機能は著しく低い」というところくらいなんですが、うーん、でもこれにしたってこの発見のどこに臨床的価値があるのか…。
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USとPhysical Examの関係性もテーブルに示されています…が、前述したようにこれらの診断がそもそも真のGold Standardによって示されたものではないので、この表のappreciateの仕方が私にはさっぱりよくわかりません。Neer、Hawkins-KennedyやSpeed'sに頼るより、USのほうがずっと正確だよってことが言いたいのかもしれませんが、私としては「そりゃーそうでしょう、USのほうが劣っていたら困るわい」という感じです。

途中まで丁寧に作られていただけに、結果のプレゼンの仕方と分析に仕方が非常に雑に感じる、もったいない研究です。コストや手軽さから考えて、USのほうがMRIよりも現実的な場合が臨床的には圧倒的に多いかと思うのですが、この研究結果を見る限りでは「Biceps tendon pathologiesとRCの完全断裂を見るのでなければ、USよりもMRIのほうが圧倒的に正確である」…つまり、USはMRIの代わりには現段階で成りえない、というのが私の出す結論です。現在のテクノロジーを持ってしても同じことが言えるかどうかは疑問ですけれど…。

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  by supersy | 2017-04-09 16:20 | Athletic Training | Comments(0)

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