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6月17・18日にEBP講習を東京で開催します!

この夏の帰国日程がやっと最終決定しそうです。今回の帰国中もあれこれ色々と忙しくなりそうですが、もちろん個人EBP講習も今まで通りやりますよー!ということで、東京EBP講習の告知です。
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エビデンスに基づく医療とか実践(Evidence-Based Practice, EBP)ってよく聞くけど結局どういうことなの?今まで分かった顔して頷いてきたけど、なんだかよくわからない、ちょっと人には聞きづらい、でも自分ひとりで勉強するのもなかなかハードルが高い…。「エビデンスという言葉が苦手」と感じている人にこそ参加してほしいと考えて作った講習がこのEBP講習です。エビデンスの基礎を学ぶのはもちろん、このEBP講習の焦点は文献からいかに必要なエビデンスを抜き出し、理解するか、そしてその上でどう現場に活かしていくか(個人的にはこれができなきゃ意味がないと思います)の練習をするところにあります。診断(評価)編はシステマティックレビューやメタ分析論文を中心に『いかに英語を読まずに情報を抜き取るか』を、治療介入編はRCTを『読みながらいかに効率よく、単語を選んで情報を抜き出していくか』、そして予防編はその両方を混ぜながらスポーツ現場で活かせるトピックを読み解きます。

今までに参加してくださった方の中から、エビデンスって思ったより簡単なんだ、楽しいものなんだ!という感想を今のところ多くいただいています(ふふふ…そうです、私は論文を読んでムフフとなれる仲間を増やそうとしているんです)。EBP初心者として来た方に、EBP中級者として帰っていただくのが目標です。

今回も主催は高橋さんにお願いしています。お申し込みはGuardians Athletic Training & Therapyのウェブサイト上のこちらから。

<講習日時>
2017年6月17日(土)
18:15pm-21:30pm エビデンスに基づく予防医学: 基本から応用まで

2017年6月18日(日)
9:15am-12:30pm エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで
12:30pm-13:15pm 昼食(各自)
13:15pm-16:30pm エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで

…の、3部構成でお送りします。参加はお好きなコースひとつだけでも、2つでも3つ全てでも可能です(複数講習参加する場合は、お手数ですがリンク先から各イベントひとつずつお申し込みください)。複数参加される方は前回から導入した『セット割引』が適応、そして『学生割引』システムも健在です。今まで同様、参加資格の指定は何もありません。学んだるでェ―という気持ちだけ持ってきてくだされば。学生さんも大歓迎です!ATCのクレデンシャルをお持ちの方には、各コースEBP CEUが3つきます。3つ全て受講すれば3 x 3 = 9 EBP CEUsです。

<会場>
たましんRISURUホール(立川市市民会館)
〒190-0022 東京都立川市錦町3-3-20
   JR中央線立川駅南口より、徒歩13分
   JR南武線西国立駅より、徒歩7分
   多摩モノレール立川南駅より、立川南通りを直進、徒歩12分

<定員> 90名

<受講料> 
  一般 1コース 9,000円
     2コース 16,200円 (10% off - 1,800円引き)
     3コース 22,950円 (15% off - 4,050円引き)
  学生 1コース 8,100円 (10% off - 900円引き)
     2コース 14,400円 (20% off - 3,600円引き)
     3コース 20,250円 (25% off - 6,750円引き)
     *現役大学・専門学校生(国内外不問)さん対象。申込後に学生証の提示が必要です、
      詳しくはリンク先の説明をお読みください

より多くの皆様にお会いできるのを楽しみにしております!セミナーの内容に関して質問があればここのコメントか私に直接ご連絡ください。会場、参加費など運営に関しての質問は高橋まで(tdtakahashi@guardiansatt.com)お願いいたします。

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  by supersy | 2017-03-30 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

PRI Vision in St Paul, MN。

PRI理念に対して「人間をパターンに当てはめること、人間にラベルを張る行為は人を無力化する行為である」という批判を目にしたことがあります。Labelingは人の弱みを可視化、不必要に強大化するという論理は心理学をかじったものとしてよくわかりますが、患者が何者なのかをidentifyせずに治療を開始することはできませんし(そんな闇鍋を差し出すような医療はプロとして提供すべきではありません)、症状に名前を付ける=診断という行為そのものにLabelingという要素が入ることはどうしても避けられません。加えて、(PRIを代表してこの文章を書くつもりはないのであくまで私の個人的な考えとさせていただくとして)私が信じていることに「我々の動的、感覚的input/outputは神経シグナルの伝達によってcarry outされており、これらの神経系の発火はパターン化されていればいるほど効率が良くなる」というものがあります。
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皆さん「けものみち」という言葉を聞いたことがありますよね?元々は道もない、鬱蒼と茂った森が、獣が一度、二度と通るにつれて徐々に道になっていく。そのうち植物がなぎ倒され、地面が踏み固められ、見通しもよくなって、獣はその道しか通らなくなることでしょう。人間の神経回路にも同じことが言えます。例えば、椅子から立ち上がる、シャツを着る、靴を履く、歯を磨く、車に乗り込みエンジンをかける…こういった日常的に繰り返される行為は自分の身体の中に深く習慣として徐々に根付き、いちいち毎回個々の関節を何度内旋、外転、屈曲して…おっといきすぎた…などと細かくfeedbackメカニズムを使って慎重に実行しなくても、feedforwardメカニズムを介してほぼ自動的に勝手に身体のほうが動いてくれるようになります。神経回路の発火がプログラミング化される、同じ発火を繰り返すうちに神経のけものみちが作られる…これがPRIのいう「パターン化」された状態だと私は理解しています。
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物理学で皆さんが習ったように、世の中のものは最も抵抗が少なく、最小の労力と最短の時間で進める道を自動的に選択する常があります。電気や光がいい例で、人間の神経回路も例外ではありません。そういう意味では、パターン化そのもの(=最小に見える労力で目的を達成するための好みの神経発火回路が存在するということ、つまり「習慣」「癖」があるということ)自体は全く問題ではありませんよね。問題なのは、一本しかないけものみちが深く深く掘り下げられてしまい、そこからハマって出られなくなってしまった状態、そして他のものを選ぶ選択肢が全く閉ざされてしまった状態です。これは、以前にAvailabilityとVariabilityについて書いた記事 でも言及しましたが、状況に合わせて複数の選択肢の中から(=availabilityがある)適切なけものみちを選び、好きに行き来できるような状態を作る(=variability)のが(別にPRIに限ったわけではなく、どんなdisciplineでも)治療の最終目標であるべきだと私は考えています。

患者さんと相対し、この人は一体いくつのどんなけものみちを持っているのか?その中からどれを選びがちという好み・癖があるのか?それらの選択肢は健康的か?そうでない場合、異なるcontextで必要に迫られれば他のけものみちを選ぶ能力はあるのか?そんなことを診断していくのがPRIの診断アルゴリズムです。患者を無力化しようとしているわけではなく、どのけものみちをいったん通行止めにして、新しいこっちのけものみちにも導いてみようかしら?と色々プランニングするための欠かせぬ一歩だと私は理解していますし、それを患者に分かる言葉で説明する義務も私にあるとも感じています。もしそういったステップを全て無視して「L AIC, R BCパターンですね」とだけ言って患者を脅かし、混乱させ、どや顔をしているようなセラピストがいるとしたら、そんなクリニシャンはPRIの基礎理念どころか医療というものを全く理解していないことになると思います。医療は相手をいたぶるドッヂボールではない、キャッチボールのはずですから。我々と共にPRI講習を受講してくださった勤勉な方々がそういう勘違いをしているとは思えませんけれども。



なぜこんなことを今更書いているかというと、今週末はミネソタはSt Paulに来ており、Postural-Vision Integrationの講習に参加しているからです。この講習では、いかに視覚が全ての感覚の中で支配的なものであるか(脳が処理する感覚情報の70%は視覚というのだから驚き!)、歩行の一つひとつのphaseに、どう視覚情報が関わってくるか、視覚が他のシステムを上書きして感覚全般をdominateしてしまっている患者にどういった介入ができるのか…ということを学びます。つまり、一定の視覚情報に頼り、それによって作られたけものみちしか通らない人への治療法ってことですねー。
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PRI創立者のRonと眼科医のHeidiのダブル講師というとても豪華な講師陣で、受講者にはPRIのベテランも他の眼科医やVestibular Therapistも入り乱れてわいわいやりながら、ものすごーく有意義な時間が過ごせました。ひゃー、めちゃめちゃ楽しかった。私は眼科専門ではないので、眼に特化したこの講習は知識的に準備不足な気がする、まだ時期尚早なのでは…という不安感と、スケジュール的になかなか取れない(年に4回くらいしか開催されない)のとでもうここずっと3年くらい受講実現に踏み切れずにいたのです。いやー、でも待った甲斐はあったかも。私自身のPRI基盤がしっかりしたお陰で今回の内容を取りこぼしせず全て吸収できた気がするし、Visionの講習そのものも洗練されてきてここは教える、ここは教えないというバランスが丁度よかった。
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Focal vision(中心視野)ではなくperipheral vision (周辺視野)に注目し、右と左、どっちの周辺視野をどう広げるかというディスカッション、そしてそれをgaitに絡めて解いていくプロセスは非常に面白かったです。歩きながら、周辺視野を使ってobjectを(視覚的に)掴んでぐっと一歩一歩前に進んでいく(peripheral contactからのperipheral optic flow)という感覚は説明されてみてなるほど!と膝を打ってしまいました。歩行に伴い周辺視界が前から後ろへ、右から左へ、左から右へ流れること…現代ではそんな当たり前のことがトレッドミルやスマートフォンなどの普及でどんどん減ってきているのかな。Sitting is smoking, という記事を昔どこかで目にしたけど、Gazing (at iPhone, tablet) is smoking、ということも言えるかもしれませんね。
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「眼球運動は頭部と頸部の運動とは独立して起こるべきものである」「Extraocular muscles(EOM↑)はその小さく柔らかい眼球を動かすのに必要な300倍の力を有している。つまり、EOMはCraniumに対して眼球を動かす(globe on orbit, GO)だけではなく、眼球に対してCraniumも動かす(orbit on globe, OG)ものであると考えるほうが理にかなっている」ってとこがめちゃめちゃ面白かったです。Visionをクリアにシャープにしていこう、というのが眼科医の一般的なアプローチだと思うんですけど、患者に慣れ親しんだけものみちを「深く掘り下げすぎない」「いったん忘れてもらう」ために、visual disturbance(視覚的障害)を作り出して通いなれた道を少しの間封鎖し、その間に新しいけものみちを見つけ、探検・散策してもらう、というアプローチは実にPRI的眼科医、つまりHeidiっぽいかと思います(笑)。RonにHeidi、楽しい講義をありがとー!
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ちなみに少し観光をする時間もあったので、ホテル近くのComo Park Zoo & Conservatoryに足を運んできました。
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足元に雪も残っていて、湖も凍っていてそりゃー寒かったけど、少し日常を忘れてゆっくりできてよかった。さて、これからテキサスへ帰ります。学期後半がはじまるー。

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  by supersy | 2017-03-19 17:45 | PRI | Comments(0)

Tuning Fork (音叉)で骨折鑑別できる?最新システマティックレビューまとめ。

音叉と聴診器で骨折判別?(2014年4月30日)
続・音叉と聴診器で骨折判別?(2014年6月16日)

3年ほど前に音叉を使った骨折鑑別を記事にしました(↑)が、最近こんなシステマティックレビュー論文(↓)1を見つけたのでまとめてみます。3年前(2014年)にジャーナル掲載されたもので、ものすごく新しいってわけじゃないんですが、これ以降まだ他のシステマティックレビューやMeta-analysisが発表されていないので現時点では「最新」です。ちなみにこれはOpen Accessなのでどなたでも無料で読めますよー、下にリンク張っておきます。
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さて、以前も書いたように、スポーツの現場では「これって骨折れてるかな?それとも軟部組織のケガかな?」と判断に迷うことはよくあります。骨折という診断を下すためのX-rayはそんなに高価な画像診断ではありませんし、比較的簡単にアメリカでも行えますけど、それでもやはりradiation exposureを最低限に抑えたり、不要な画像診断は省くという判断を積極的におこなって医療費削減に努めるのは医療従事者の義務だと思うわけです。そのためにスポーツの現場で我々ATができることがあれば、そんな知識・スキル獲得に尽力すべきだという事実にゃ変わりありません。その手段としての骨折鑑別のためのTuning Fork Test(音叉テスト)はもう60年も前から使われているそうですよ。60年ってすごいな。
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最もシンプルに使われるTuning Fork Test(上写真左)の例としては、1) 骨折の疑いがある箇所に直接("directly over")、もしくは僅かに近位の箇所("closely proximal to the suspected fracture site")にVibrating tuning forkを置き、痛みの有無を診る。もしくは、2) 骨折の疑いのある骨の遠位骨隆起("a bony prominence distal to the fracture site")にVibrating tuning forkを置き、痛みの有無を診る…というもの(私は正直なところ(2)しかほぼ使いませんね。受傷直後に(1)やるとfalse positiveが出ることが多いような気がするんだよな)。それから、以前に紹介した、3) 聴診器を組み合わせて音のabsence/diminish度を診る、Barford Test(上写真右)というのがありますね。

今回のシステマティックレビューでは、患者の年齢やclinical setting (病院のER vs 大学のスポーツクリニック)を問わず、とにかく2012年の11月までに発表された論文で、Tuning forkを骨折鑑別に使ったものをreview。Case seriesやcase-control studies, narrative reviewは除外対象で、cross-referenceチェックもおこなわれています。2人のindependent reviewerが1) タイトルとアブストラクト、 2) Full Textとを二段階でスクリーンし、最終的にレビューに含まれたのは6つの論文(総患者数は329人、決して多くはない数字です)。

まずは、Barford Testを検証した2つの論文の詳細がこちら。
Bache & Cross (1984)
 Setting: 病院のER
 対象被験者: 100人の大腿骨折疑いの患者(平均79歳)
 比較テスト: X-ray

Moore (2009)
 Setting: 大学のAthletics/Orthopedic Clinic
 対象被験者: 37人の7日以内に受傷した骨折疑いの患者(骨問わず, 年齢幅 7-60歳)
 比較テスト: X-ray

このふたつの研究だけでもかなりheterogeneityがあるのが分かりますね…大腿骨骨折は高齢者に多い長期的なdisabilityに繋がる大怪我だし、「見逃してはいけない」危機感がその他の骨折とはレベルが違うと個人的には思います。Mooreの研究2も何度も読んだんで覚えてるんですけど、こっちもこっちで年齢・骨バラバラ(上肢下肢)でごっちゃまぜの研究ですからねー。この二つを混ぜて解釈してしまっていいものか甚だ疑問です。

それから「骨の振動で痛みがあるか診ましょう」といういわゆるTuning Fork Testを検証した研究4つがこちら。
Lesho (1997)
 Setting: 軍隊のメディカルセンター
 対象被験者: 52人の脛骨疲労骨折疑いの訓練生・隊員(平均25歳)
 比較テスト: Bone scan

Kazemi & Roscoe (2000)
 Setting: 病院のER
 対象被験者: 46人の10日以内に受傷した骨折疑いの患者(骨問わず、平均30歳)
 比較テスト: Bone scan

Dissmann & Han (2006)
 Setting: 病院のER
 対象被験者: 足首内反メカニズムで受傷、OARが陽性だった患者49人(年齢幅 12-84歳)
 比較テスト: X-ray

Wilder et al (2009)
 Setting: Runners Clinic
 対象被験者: 足部を含む下肢に疲労骨折疑いのある患者45人(平均31歳)
 比較テスト: X-ray and Bone scan

これも…被験者層、年齢幅は高校・大学・プロのアスリートを相手に仕事している方からしたら(平均79歳なんかのさっきの研究よりは)現場のそれと近い、加えて、骨は下肢に集中している(=現場でも下肢の骨折疑いのほうが多いので)ところはよりapplicableかなとは思うのですが、最低でも疲労骨折か急性の骨折かは区別したほうが良かったんじゃないですかね。サブカテゴリー作ってわけて分析したほうが良かったんじゃ…研究が少なすぎるから、そういうことをすると意味あるconclusionを引っ張ってきにくいという気持ちはわかりますけど。あとDissmann & Hanの記事3は前にもまとめました(The Ottawa Ankle Rulesより優れたものは出てきたか?骨折鑑別・最新エビデンスのReview)が、この論文・結果の臨床的価値は「Ottawa Ankle Rulesのちょい足しspecial test」としてのものであり、独立したTuning Fork Testのそれとは解釈しないほうがいいのではと思います(足首内反メカニズムでOARが陽性、という縛りはgeneralizeするには厳しすぎるのでは)。

比較テストは急性骨折はX-ray、疲労骨折はBone scanというのは十分適切だと思います(むしろ急性骨折患者46人全員にBone scan使ったKazemi & Roscoe4恐るべし)。QUADAS-2を使ってそれぞれの研究の質を推し量った、という記述はあるんですが、それをまとめた表などは記載されていませんね、妙ですね。
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さて、このシステマティックレビューの結果(Table 3)をもとにこんな表を作り直してみました。緑色の部分は私が個人的に「これはあったほうがいいんじゃないの」と思って元の研究論文を見直したりなどして、足した情報です。オレンジ色の部分は「95%CIから見ても優秀といっていい数字」と私が判断したものを表します。それぞれの研究の被験者は決して多くなかったので、95%CI幅は一概に広い印象です。Point valueでは優秀なものがいくつも見られます。
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それでは、個人的な考察です。95%CI幅は広いものもありますが、総じてSensitivity(感度)は75-92%と安定してなかり高い数字が並んでいます。-LRの値はまだ少し理想的というには高めですが、それでも総合的にTuning Forkを使った骨折判別は、rule out (除外)する力はsそこそこ強いということができそうです。記事から抜粋した上のFigure 2(↑)を見てみると、Sensitivityが中でも低め(70%代)な研究はどちらも疲労骨折を検証したもの5,6であることもわかります。急性の骨折には、コンスタントに80%以上出せています。

反してSpecificity(特異度)はというと、18-94%とかなりばらつきがあります。95%CI幅から見て優秀なもの(Moore2やDissiman & Han3)もないことはないんですが、逆に95%CI幅を考慮すると決定的にダメなもの(Bache & Cross,7 Wilder et al6)もあります。+LRも同様といったところでしょうか。つまるところ、Tuning Forkを使ったテストが仮に陽性でも、必ずしも毎回骨折があるとは限らない=rule in (確定)する力は弱い、ということになりますね。確定する力が弱いのだから、Diagnostic OR (=陽性だった場合に実際に骨折がある可能性が何倍に跳ね上がるか)もまちまちなのは当然のことです。

このシステマティックレビューの結果では「異なる周波数でも診断力に大差はなし」と書かれています。うーん、これを「結論」にしてしまうにはまだまだ研究絶対数が足りないように思いますね。考察で書かれていて確かに!と頷いたのが、「いつこのテストを使うかというタイミングも問題なのでは」というところ。骨折受傷から日にちが経ちすぎていると仮骨形成(callus formation)が始まってしまい、Barford TestもTuning Forkテストも偽陰性が生まれやすいと推測されます(実証はされていません)。これを考慮すると「Tuning Forkを使ったテストをするのであれば、何日以内に行わなければならない」的なガイドラインも将来生まれるべきなのかもしれませんね。あとは骨折のタイプにも影響される、というのはMoore2もその論文で論じていたところです。Transverse Fractureの場合はキレイに陽性が出やすいけど、Avulsion Fractureでは偽陰性になりやすい、なんて書かれていましたっけ。Hairline Fractureはどうなんだろ?骨折のタイプに関しては、このシステマティックレビューからは「Tuning Forkを使ったテストは疲労骨折よりは急性骨折のほうが有効である」ということは言えるかと思います。

最後に、ちょっと意外だったんですけどTuning Fork TestのInter-rater Reliabilityって意外と低いんですって。どれくらい低いのかは具体的には示されておらず、その論文のfull-textが3月17日現在私も手元に所有できていないので詳しくはよくわからないんですが、このシンプルに見えるテストもスタンダード化、もしくはトレーニングが必要だってことなのかもしれませんね。例えば音叉をどこに置くのかという場所決め、振動の強さ、何をもって「陽性」と判断するかの基準(激しい痛みなのか、軽い痛みや違和感でもいいのか)、受傷からのタイミング、それから掘り返すようですけど周波数の違いとか、そういったvariableもいじりながら研究を重ね、最適な評価テストプロトコルを決めていく余地がまだまだありそうです。古い研究が多かったしなー、これからもっと新しいの出ないかしら。

まーつまり超短くまとめると、除外できるが、確定はできない。疲労骨折よりは、急性骨折に有効。完璧ではないし単独で使うべきではないが、やはりcost-effectiveな、現場では有効な手段といってもいい…ってことかな。ほかの手段と合わせて使うことで正確性が上がるのはDissmann & Han3 の研究からも明らかなので、私はこれからも現場で使い続けていきたいと思います。陽性結果は慎重に判断する感じで。
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最後の最後に。これはおまけなんですが、Journal of Athletic TrainingではこのシステマティックレビューをNarrativeで解説したコメンタリー的な文章(↑)が2016年に掲載されました。7 内容としては私が趣味でやっているブログに非常に近いです、「この論文ではこんなことが書かれています、こういう風に解釈できますね」…という感じでまろやかに論文の読み解きをしているわけです。もちろん口調は私の文章よりもっとずっと論文調で、きっちりきれいに書かれていますけど。

あの、個人的な感覚なのであれなんですけど、こういう「論文を読めない貴方の代わりに私たちが皆さんにわかりやすいよう解説しますね」っていう記事をPeer-reviewed Journalに載っけてしまうのが恥ずかしいです。個人のブログならわかります、でもプロのジャーナルに載せてしまうって「一般的なアメリカのATはこういう面白いシステマティックレビューには自力でたどり着かないだろうし、たどり着いたところで読んでもわからないだろうから、噛み砕いて説明しておくね」と自ら言っているようで…。しかも、「読者のレベルに合わせての配慮」なのか、このコメンタリーでは95%CIに関する解説は何もしていない。Point valueのみのディスカッションです。

もしかしたら、JATのエディターさんたちが「書いてあることがさっぱりわからない」などと読者であるATから批判を受け、臨床と研究のギャップを消すべく、こういった論文を積極的に掲載しようとしているのかもしれません。この論文の筆者さんたちも「こんなに面白い論文、もっと多くの人に見てもらいたい」という気持ちでこれを書いたのでしょう。そういった方々の努力を批判するわけではないんですが、それにしたって他の、例えば医師やPTなどのジャーナルで「読みやすいように書き直した」噛み砕き論文が掲載されるなんて私は見たことがない(もしあるとしたら私の不勉強です、すみません)ので、ATのエビデンス理解力の低さが露呈しているようで情けない、恥ずかしいと感じてしまいます。正しいエビデンスに基づく医療を実践できるようなATがもっともっと増え、自主的に様々な論文に食らいついて理解しようとする…そんな姿こそが未来のスタンダードになればいいなぁと思ってます。ATの皆さん、もっと論文読みましょー、これってああいうこと?こういうこと?と頭をひねりながら読み解こうとするその過程こそがEBPなんです。慣れてきたら楽しいですよー。

1. Mugunthan K, Doust J, Kurz B, Glasziou P. Is there sufficient evidence for tuning fork tests in diagnosing fractures? A systematic review. BMJ Open. 2014;4(8):e005238. doi: 10.1136/bmjopen-2014-005238.
2. Moore MB. The use of a tuning fork and stethoscope to identify fractures. J Athl Train. 2009;44:272–274.
3. Dissmann PD, Han KH. The tuning fork test: a useful tool for improving specificity in “Ottawa positive”’ patients after ankle inversion injury. Emerg Med J. 2006;23:788–790.
4. Kazemi M, Roscoe MW. Is the tuning fork test a reliable tool in detecting acute simple fractures? Int Sports J. 2000;4:1–8.
5. Lesho EP. Can tuning forks replace bone scans for identification of tibial stress fractures? Mil Med. 1997;162:802–803.
6. Wilder RP, Vincent HK, Stewart J, et al. Clinical use of tuning forks to identify running-related stress fractures. Athl Train Sports Health Care. 2009;1:12–18.
7. Bache JB, Cross AB. The Barford test. A useful diagnostic sign in fractures of the femoral neck. Practitioner. 1984;228:305–308.
8. Toney CM, Games KE, Winkelmann ZK, Eberman LE. Using tuning-fork tests in diagnosing fractures. J Athl Train. 2016;51(6):498-499. doi: 10.4085/1062-6050-51.7.06.

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  by supersy | 2017-03-17 12:30 | Athletic Training | Comments(0)

チーム医療の実践のために知っておくべきこと、その3。

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#7 Ambrose-Miller & Ashcroft, 2016
Social workerさんがIPPをしていく上で直面する問題点を挙げた論文。冒頭でIPPを成功させるカギとしてこんなことが挙げられています。
- Organizational Structure
組織の中にcollaborative leadershipがあること、そして組織の文化そのものにコラボをしましょうね、という文化や雰囲気があるのは大事で、そのためのコミュニケーション方法が確立されていることも大事である…としたあとで、「colocationも大事」と述べられています。Colocationという単語を初めて耳にしたので、なんじゃら、と思って調べてみたら、別々の団体、様々な職種の人たちが同じ施設に勤めている環境を意味するようです。なるほど、physicallyに一緒のところにいるって確かに強いですよねー。
- Professional Identity and Scope of Practice
プロとしてのアイデンティティー…これは他の文献でも言われていることですが、面白い表現だなぁと思ったのが"social workerはinterdisciplinary teamの中で効果的に機能しようと思ったらその役割をnegotiateしなきゃいけない"というところですかね。役割を「定義」するのではなく「交渉」するというところが面白い。「私こういうことが得意なんだけどこれやってもいい?」「これはあなたがやるの?それとも私やろうか?」という感じでしょうか。これは、social workerに限らず、全てのプロがすべきなんだろうなと解釈しました。
- Power Differentials
医療界にはovert (あからさま…i.e. 金銭的優位)とcovert (一見目につきにくい…i.e. 何かを決める際の発言力の違い)なpower differentials (権力格差)があり、これによってIPPが促進されることも抑制されることもある…とのこと。やはりその中心にいる(=最も権力が高い)ことが多いのはdoctor (医師)で、この階級制度を平らにしようと思ったら一番影響を受ける(=権利を手放さなければならない)のは医師だ、と書かれています。逆に言うと、その変化を医師が恐れていては本当の意味でのIPPは実現できないでしょうね。

さてさて、研究はNational Conferenceの間の2日間に行われたようで、自主的に参加の意思を示した11人のSocial workerに携わっている学会参加者(educators, practitioners, researchers, studentsのごちゃまぜ)に対してsemi-structured focus group (90分のインタビュー)をおこない、その結果をqualitative studyとしてまとめています。IPPのbarrierとは?Facilitatorとは?と問うたわけです。ここまでの突っ込みどころとしては1) 11人という少ない人数に対して、あまりに様々な背景(教育、臨床、研究、学生…)を集めすぎたのではないか?data saturationに達せるとは到底思えないのだけど…; 2) 90分というインタビューの長さにはまったく幅が無いけれど、11人全てきっちり90分インタビューしたとは考えにくい; 3) インタビュー内容は録音されておらず、研究者はノートを取りながらまとめたのみ。90分正確なノートを取り続けるのは不可能に近いと思うのが…; 4) member checkingやその他のtrustworthinessを高めるテクニックは一切使われず。信憑性は低い…というところでしょうか。

でてきた6つのテーマは…他の研究ともかぶっているものがかなり多くて、特に目新しいと感じたものはないんですが、1) Collaborative Culture…平等主義と「コラボするぞ」って雰囲気が組織内にあることが大事。そして、こういうのは気を抜くとすぐになくなってしまうものでもあるので、大事に育む(nurturance)という精神が大事; 2) Self-identify…患者を個人として、そして社会の中の一部として見つめる…それこそがSocial Workerの仕事である、と自覚すること。そしてSocial workerという仕事はそもそも曖昧な役割を担うものである、と自覚すること。仕事の中にFlexibilityがあるところが難しいところでもあり、面白いところでもある、という理解すること; 3) Role Clarification…他人の仕事を理解し、他人に仕事を理解してもらう。お互いから学び合うには、受けてきた教育(IPE)とColocationがやはり大事; 4) Decision Making…医者が決めてしまうのではなく、チームとして物事を決める; 5) Communication…これは、もういいですよね?こまめに、形態化して行う。意外なことにElectric medical recordsには問題が多いと感じているsocial workerが多いようです; 6) Power Dynamics…医師が権力を持ちすぎていて、social workerの発言が打ち消されることがある。

やはり、「お互いの役割と領域をしっかり理解した上で、その壁を崩してfluidityを持って仕事をする」というのがカギのようです。チームとして物事を決めていく、ということも最後にもう一度強調されているのですが、これが実現するには医師がチームの他のメンバーを信頼し、権限を共有する勇気を持たないと始まらないように思います。
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#8 Theberge, 2007
今までもう長いことオーソドックスな医療のみが主流だったのが、近年になってComplementary and Alternative Medicine (CAM、代替医療)が受け入れられるようになり、医療に幅が出てきました。特にスポーツ医療の分野はその傾向が強く、鍼灸師やマッサージセラピストなど、様々なプロが入り混じるようになってきています。この論文では、その代替医療の筆頭であるChiropracticがスポーツ医療の現場でどのように機能しているかまとめたものです。

トップレベルのスポーツ現場(オリンピックなどを含む)で勤務経験のある35人の医療従事者(11人のphysicians, 10人のphysiotherapists, 6人のathletic therapists, 8人のchiropractors)に対して個別にinterviewを行い、それを録音、文字起こししてcodingしましたとさ。

スポーツ医療の目的は、リスクを見極め、最小化して、その上で選手の持つ最高のポテンシャルをパフォーマンスとして引き出すこと。この中心にいるべきは間違いなくathleteであり、athlete-centeredのケアを提供するということは選手が欲しいというものを提供することでもあります。医療スタッフ陣も、オリンピック協会からも「選手が欲しがるものを提供しろ」と直接プレッシャーをかけられたりすることがあるんだそうです。ひえー。逆に言えばこうして求められてpopularになってきたのがカイロプラクターということなんですよね。しかし、同時に医療チームの他のメンバーが、「(カイロよりも)もっといい治療があるのに…」と感じていたりなんかすると、カイロを快く思わない他の医療従事者との間に溝が出来ていたりもするそうです。

スポーツ医療チーム内のコラボはもちろん超重要。オリンピックレベルともなると、その世界の専門家が集結するわけですから、お互いからの学び合いを「貴重なもの」と感じているプロが多いようです。こういったコラボが順調に進むためにカギとなるのは、やはりプロとしての境界線とcomplementarity(相補性)のバランス、そして「最終決定権は医師にある」という暗黙の了解なんだそうな。オリンピックとかだと、やっぱり責任の出どころなどははっきりしていないといけませんしね。

カイロプラクターにとっての障壁とは?というセクションでは「どの職業でもチームとしての枠で上手く働けない性格の人というのはいるけど、カイロはその中でも特にチームの一員として働くのが不得手」と多くの被験者が回答しています。もちろん「人による」のでしょうけれど、普段のpracticeが基本ソロで、全部自分で決められるから、チーム内でも同じようにやってしまう人が多いという背景があるようです。カイロからしてみると、「我々はprimary health care provider、診断も治療もreferもする。Manipulationしかしない人、という認識は侮辱的だ」という意見だし、医師や他のセラピストは「チーム医療でカイロに求められているのはあくまでManipulation」と考えている…ここらへんに大きな認識のズレがあるようです。
それから、「あくまでカイロがここにいるのは選手が望んだことだから」という認識も医療チーム内ではあるようです。「他のセラピストとやることは被っていたりもするし、どうしてもチーム医療のメンバーでなくてはならない、と我々が感じているというよりは、やはり選手に求められているからいる」ものだと考えている人もいると。「本当にもう上手くいっている、医師とPT、AT、Massage Therapistのチームが既にあったとして、そこにカイロを足すことがマイナスになることもある。上手くやれていたバランスが崩れる」という厳しい医師の意見も紹介されています。

カイロプラクターを取り巻く論争、という章ではカイロの(誰が何と言おうと)一番の武器であるmanipulationが、「quick, not long-lasting fix」というところに引っかかる医療従事者も多い、と論じられています。「いや確かに直後のパフォーマンスは良くなるかもしれない、選手も精神的に満足かも知れないけど、やっぱり僕はもっと根本的な治療も組み込まなきゃダメだと思うんだ。試合の場ではそういうことが難しいのは分かるけど…」というPTや、「ぽきっとやってもらうことは『普通』になった選手は、自分独りではそのズレた『普通』を見つけられなくなり、カイロプラクターにぼきぼき「やり続けて」もらわなければ『普通』になれなくなる。これはdependent(依存)と呼ぶべきだろう」という医師のコメントも。これに対して興味深いのが、とあるカイロプラクターの「大事な試合の前には派手にぼきっとはやらないよ、すごく軽いものだけ」というコメント。それに対して「そんなに『軽い』ものだったら生理的な効果はあるんですか?」とインタビュアーにつっこまれ、「試合前はフィジカルもだけどメンタルも大事。(生理的な効果はなくても)それによって気持ちが整えられれば損じゃないでしょう?」「手を置いて、信頼関係を築くことが大切」と答えた、という描写があります。うーん?こうなってくるとその前の医師の「依存性が生まれてくる」というコメントがさらに映えてきますね。自らのスキルや専門性を、ただの気持ちを整えるルーティーンの一部にすることに満足してしまうのってもったいなくないですか?せっかくそんな大事な場にいて、選手の身体を触れる立場にあるのに。他にも「最近のカイロプラクターはもっとholisticなことをしているよ。エクササイズを使うのが主流になってきてるし」というカイロによるコメントもありましたが、だったらエクササイズの専門家、PTさんに任せておけばよくない…?という疑問も湧きますね。カイロプラクターがカイロプラクターたるそのニッチを、カイロプラクター自身が言葉にして説明できないのは最大の弱点かもしれません。この章は、他にもカイロ対他医療従事者のかなりヒートアップした意見が事細かに綴られています。詳細はどなたかの気分を害すと嫌なので書かないでおきますが、気になる方はfull textを読んでみてくださいな。

プロとしての妥当性、という最後のまとめでは、「それでもスポーツ医療チームに招かれるカイロは、manual therapistとしての役割が望まれていること、つまりreduced scope of practiceで働くことが求められているということを理解した上で参加すべき。そして、他の医療従事者は、カイロプラクティックのadjustmentが信頼と自信によって確立されており、placeboに深く関わる効果がある、ということを認め、カイロをチームへ受け入れるべきだ」と述べられています。私も過去8年程、大学勤務中に数名のカイロさんと仕事しましたけど、その経験からでいうと、陽気でエネルギーに溢れていて仕事は一緒にしやすい方が多かったです。でもなんというか、個人的に、カイロさんと一緒に仕事をしていく上で一番苦労したのは、カイロさんの下へ送った選手の15%くらいが悪化して帰ってくるってところでしたね…。私の個人的な経験に基づく数字で言うと、25%くらいは「劇的に良くなる」、30%くらいは「多少良くなる」、30%ほどは「特に変わらない」で、15%は悪化、という感じでしたかね。総じて良くなる患者さんのほうが圧倒的に多いんですけど、私の中で「悪化」だけは絶対にダメだと思うんです。この選手、カイロさんに見せたいんだけど悪化したらどうしよう、明日試合だし…みたいな葛藤があると、やっぱり「自分で治療しよう」と思ってしまいます。あとは、うーん、時折教育的背景を疑問に思うことがあったというか…sprainとstrainみたいな基本的な用語をごっちゃにしてしまっていたり、Thomas TestとThompson Testを覚え間違えているとか、解剖学の知識が曖昧とか、そういうところを垣間見てしまうと同じ医療従事者として尊敬しにくくなるというのはありました。たまたま知識のupdateをしそびれていた分野、とか、そのカイロさんだけの問題だったのかもしれないけど。

チーム医療のメンバーになる、ということは、「他のメンバーにそれを貴方よりも上手くやる人がいたら、その役割は譲る」ということなんだろうと思います。例えば診断は医師もPTもATもカイロもみんなできますが、チーム医療を実践する場合、それの役割は医師が担うのが全うだ、と判断し、PT、AT、カイロが一歩引くのが「チーム医療」なんじゃないでしょうか。やっぱり一番最初の線引き、領域の定義がしっかりしており、それを全員が受け入れてからでないと、理想的なIPPの実践は難しいですね。
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#9 Pellatt, 2005
脊髄損傷は実に一人の人間の人生に多大な影響を及ぼす怪我。そのリハビリに、IPPのアプローチはうってつけなんじゃないの?現実はどんな感じなの?というのがこの研究。イギリスのとあるLarge spinal cord injury unitに勤務するInterprofessional Teamのメンバー(14人の看護師、5人の医師、3人のOT、5人のPhysiotherapist)にsemi-structuredなインタビュー。長さは30分から1時間程度で、テープ録音 & transcribeされ、そのあとcodingされました。Rigorの確立のためにreflexive approachは使われましたが、member checkingは行われず。うーむ。最低でも2つは何かした方がいいと思うんですけどね、rigorのために。

この研究の結果は面白かったです。一言に要約するなら「Knowing Paradox (知ってるつもりパラドックス)」とでも言いましょうかね。

●Overlapする役割
NurseとOT、PTとOT…他業種間の仕事内容のOverlapが多いというのはここまでの文献でも言われていることですが、今回の研究の参加者の中にはこれは「弱み」ではなく「強み」と感じている人が多かったそうです。お互いを補い合え、また同時に、同じことでも少し違う視点から見合えることでよりcomprehensiveなviewをつかめるというわけですね。

●わかってもらえない
しかし、overlapしない役割も多くあります。インタビューされた医療従事者はそれぞれ『もう、他の皆ってば私の職業が何なのか、どんなことができるのか十分にわかってくれていない!』と感じているというんですね。興味深いことに、NurseとOTは「私たちはもっとできることがあるのに、下に見られている。有効活用してもらえていない」、PTは「リハビリにおける自分の役割は他のプロよりも重要でhigh profileなのに、そこんところを周りが理解しきれていない。そんなことでイライラされてもなぁ…」。医師は「俺らってはそんなに何でも屋じゃないのに、どんなことにも完璧な知識を持ってると思われてる。そんなわけじゃないよー」…という、別々の理由で「わかってもらえていない」と不満を感じている、というのも実に興味深いです。

●でも私はわかっている
そんな反面、多くの医療従事者が『でも私は他の皆の仕事をよくわかってるもんね』と感じている、というのです。「自らを棚に上げ現象」ですよねぇ。

この論文の考察がまた面白いっす。なんか教科書みたいというか、個人の意見がかなり入っている気がするんですけど、self-fulfilling prophecyとでもいうんですかね、このKnowing Paradoxは「自信がなくてdecision-makingに入っていけない人がmisunderstood/underratedと感じがちなんじゃないか(=自信がなくて行動に踏み切れないことが、「大したことができない」と思われる原因を作ってしまっている)」、そして「自分はみんなのことを分かっている、という自信がある人はその自信ゆえにそれ以上他人を知ろうとしないからこそ、溝が広がってしまう」ということが原因なんじゃないか、と論じているんです。これは面白い考え方です。加えて、英語には"othering (他人化する、ヒトを自分とは異質のものであると認識する)"という言葉があるんですけど、NurseやOTは"self-othering (自らを他人とは違う、「どうせ私はPT/Doctorじゃないもんね」と区別)"する傾向にあるんじゃないんか、とも述べています。Doctor/PTがdominantな存在で、NurseやOTは自分らを「それに従う」存在と認識しているってことです。

Otheringをやめること、そして、「自分は他人を理解している」という認識を忘れ、真摯に他人を学ぶ姿勢がIPPの成功には大事なんじゃないかなっつーことですかね。
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#10 Semlyen et al., 1998
最後の論文です。Traumatic Brain Injuryのリハビリにmultidisciplinary rehabを取り入れて、そのアウトカムがどうだったかを2年間に渡って追ったUKの研究。古い論文なのだけど、とても気を使ってデザインしたんだろうなぁという心配りが感じられ、まだ研究のデザインなどに不慣れな人も読みやすいように丁寧に良く書かれている印象です。

Hunters Moor Regional Rehabilitation Centreでmultidisciplinary rehabを受けた患者(Hunters Moor Group、略してHM組; 33人、うち男性28人、女性5人、平均年齢36 ± 13歳)と他の施設で一般的な(single discipline approachの)リハビリを受けた患者(Other Rehabilitation Group、略してOR組; 18人、うち男性15人、女性3人、平均年齢30 ± 12歳)を対象に行った研究。Inclusion Criteriaはsevere traumatic head injuryを受傷してRegional Neurosciences Centre at Newcastle General Hospitalを受診した患者で、1) initial Glasgow Coma Scaleが最低でも6時間、≦8; 2) 16-65歳; 3) 家族・保護者がconsentを出せる状況; 4) 病院近辺に住んでいる; 5) surgically stableで受傷後4週間以内に退院できた人 (根拠は分からないけど、そこそこ細かくいいinclusion criteriaに見える。exclusion criteriaは明記されていないが、drug/alcohol misuseがあったり、神経系疾患が元々あった人は除外されている)。

上記の条件を満たした上で、病院から「(退院して)transferしてよし」と判断された状態でinterventionがスタート。で、患者さんが住んでいる地域と、Hunters Moorのベッドの空き状態に基づいてHunters Moorか別のlocal hospitalかに振り分けていったんだそうな(ランダム化はされていない、OR組はグループ内のheterogeneityを減らすためにせめてひとつの病院に送るべきだったのでは、グループの患者数が33人 vs 18人と約2倍の大きな差がある)。HM組の患者は毎日nusring care, physiotherapy, speech & language therapy, occupational therapy, clinical psychology, rehab medicine, counseling, social work inputという幅広い医療を提供されていた一方、OR組はinpatient, outpatient, home-basedなどで患者のgoalに最も合ったsingle disciplineのセラピーを受けていた(i.e. ひとりのphysiotherapistと週に一回一時間のみ、とか) (やはりリハビリ内容のバラツキが気になる。しかも、HM組は毎日リハビリで、OR組は週に一回一時間、とかなんだったら、仮に差があったとしてもリハビリ頻度の問題かもしれない。単純に比較するにはコントロールしきれていない要素が多い)。
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リハビリ開始前の脳損傷の程度などはグループ間の差はなかった、というけど、このテーブル2を見る限りだと統計的に有意でないながらもHM組の脳損傷の程度のほうが悪い傾向にあるのが分かります。加えて、HM組のほうがリハビリを始める前に著しく時間が経過していた (49.37 ± 29.62日 vs 17.94 ±13.60日, p < 0.001)ことが分かりますね。つまりoutcomeにはHM組のほうが不利だったんじゃないかなーと感じてしまいます。しかし、リハビリそのものの長さも、統計的に有意ではなかったとしながらも、平均201 ± 144.12日 vs 111.80 ± 175.17日というのはかなり差があるように見えます。HM組のほうがそもそも高い頻度でリハビリを受けていたんですよね…その上、期間までも長期にわたって受けていたのだとしたら、仮にHM組のoutcomeがOR組より著しく向上したとしても、単に(リハビリの内容以前に)長期間、高頻度でリハビリを受けていたからってだけかもしれません。うーん、ここはSDも大きいように感じますし、ちょっとグループ内個人差も大きいような。Control GroupにあたるOR組のリハビリがコントロールしきれなかったのはやっぱり痛い。

Functional Assessment (Barthel Index, Functional Independence Measure, Newcastle Independence Assessment Form-Research…いずれも患者の機能的・身体的independence性を計るmeasureである。それぞれのツールのvalidationやreliabilityなども言及されている。私の専門外なのでどれほど優れたものなのかはわからないけど、3つのpatient-based outcome measuresを1998年に使ったというのはすごい) は受傷後4週間、8週間、12週間、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月後に行われ、caregiverさんの精神状態もGeneral Health Questionnaire (GHQ-28)を使って12週間、6ヶ月と12ヶ月後にも計測されたそうです (脳損傷は家族や身近な人にも影響が出ます。これらの人たちの精神的ストレスを計ろうとしたところはすごい。怪我の社会的影響も見ようとしているわけだから。改めて、1998年の研究なんだけど、先見の明がありすぎるなぁと感嘆)。
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さて、上のテーブルは患者のindependenceの変化を「8週間時点から12週間時点」など特定期間の変化(つまり患者がどれだけ機能回復していったか)をまとめたもの。HM組のほうがスタートが悪かったということもあるんですが、OR組の機能回復が頭打ちになっているのに対し、HM組が計測毎に時間が一年二年と経過してもぐいぐい回復しているのがよくわかります。欲を言えばグループ間の比較のp valueも乗っけておいてほしかったんですけどー。
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caregiverさん(家族や一緒に住んでいる身近な介護している人)のpsychological well-beingはというと、上の4つのグラフを見ると結構明確かなと思います。点線がOR組、線がHM組。左から、「somatic symptom」、「anxiety/insomnia」、「social dysfunction」、「severe depression」のスコアになっていて、一年経過時にはそのどれでもHM組のcaregiverさんが精神的に良い状態にあるのが分かります。中でも「somatic symptom(p = 0.001)」と「social dysfunction(p = 0.057)」ではより顕著な差が見られました。

まとまると、2年間という比較的長いスパンで患者を追ってみると、multidisciplinary rehabilitationを受けた患者は(開始時点では機能状態はむしろ悪かったにも関わらず)、single-discipline rehabを受けた患者に比べ、リハビリ期間が終わっても著しい機能回復を続ける傾向にある。caregiverの精神的ストレスに関しては、受傷から一年するとmultidisciplinary approachを受けた患者のcaregiverはストレスが減るが、single-disciplinary approachの場合は増える傾向にある…ということがわかりました。いやー、OR組のリハビリがバラバラであること、頻度と期間も問題はかなり致命的ではあるとは思うんですが、くどいですけど1998年にこれだけの研究が成されていたというのが驚きです、感動です。かなり読み応えがありました。致命的なdesign flawを補って余りある先見の明のある、有意義な研究です。

さて、これでチーム医療シリーズは一区切りです。あと10論文、読まなければいけないのがあるのですが…他に勉強しなければいけないこともあるし、文献レビュ―はちょっと2週間ほど休憩しようかな。時間ができたらまたもどってきまーす。

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  by supersy | 2017-03-15 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル4月号発売 & チーム医療の実践のために知っておくべきこと、その2。

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月刊トレーニング・ジャーナル4月号が発売になっています!連載11回目の今回は、「新しい臨床スタンダードは、新しい教育から」というキーワードと共にアメリカAT教育で取り入れられている様々な教育方法について書いています。理想の教育って、どんなものなんでしょう?私自身、今でも試行錯誤の毎日です。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。

ちなみに私の連載は次回5月号分で終了です!一年間、長いようであっという間でした。



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#4 Kraft et al., 2013
近年の医療はservice-orientedから、patient-centered, collaborative & interprofessional approachへと移り変わっています。この際、それだけ効果的な「コラボ」ができるかどうかでquality & safety of health careが提供できるか決まるわけですが、この論文ではスウェーデンのShort-term care (STC) unit (患者が退院してから自立した生活を送れるようになるためのリハビリ・ケアを行うintermediate stageのことを指すらしい)に勤務する4人のOT、3人のPT、3人のRN(女性)を対象に、個別に45-90分のsemi-structured interviewを行い(ちょっと幅が広すぎるのが気になる…)、IPPに関する現状について調査し、まとめたのが今回の論文です。

出てきたテーマは4つ。
1. Crossing Professional and Organisational Boundaries
興味深いと思ったのは「give & take」というメンバーの関係性と、互いが互いの代わりとなれるよう、メンバー同士が教え合い、育て合って「入れ替わり可能」な環境をつくるのがよい、とされているところです。ただ、それを実現するにはどうしてもextra timeがかかってしまうので、それを負担に感じるメンバーも出ることでしょう。お互いのことを、仕事の面だけでなくpersonalなレベルで知ること、そして医療界のhierarchial system (階級制度)を考慮し、尊敬した上で仕事を行うことも大事だと書かれています。これは、前回の論文の「階級制があっては成功しづらい、全員が平等な立場であることが大事」という意見と少し異なりますね。

2. Awareness of Own Professional Identity
それなりに経験を積み、能力と責任が取れるプロたちが自分の専門性を役割を理解して仕事に臨む、ということも大事です。これは先のstatementと矛盾する感じもしますが、私は「境界線はぼかして交わることがあっても、自分の役割の核となる部分は自分だけが担う仕事であるからして、そこは責任を持って全うする」ということなんだと理解しています。あまりに駆け出しだと自分に自信が無くて迷いが出てしまう(=核が揺れる)ことから、こういったコラボ業務はまだ向かないのでは、とも書いてあります。

3. Information and Knowledge Transfer
情報をいかに共有するかは他の論文でも散々論じられていることですね。ここでも強調されているのはやはり「頻繁」に行われるミーティング、そしてそれに対してメンバーがきちんと集い、意見交換おこなうこと。daily reportでも、electrical reportでも、約束事を決め、それをこまめに実践することです。これらの効果的な実践にはsupervisionとfeedbackがあったほうがいい、という一文も興味深かった。この論文では実際の業務中、Assistant Nurse (AN)が忙しくてミーティングに参加する時間があまり取れなかったこと、そして彼らはmedical recordを読むスキルに欠けていたため、時にこれらのコミュニケーションから取り残されていたことが「問題」として述べられています。どんな医療業務でも、SOAPノートやMedical abbreviationを読む能力は必要ということですね。

4. Balancing Between Patient, System and Process
患者さんの健康状態、法律、リハビリのバランスを上手く取ることというのは実に面白いテーマです。ここでは、「どれがひとつがdominantになってしまうとダメ、特に法律によってケア期間が定義されてしまうなど、dominantしやすい傾向にある」と書かれています。そういった「縛り」のせいで、提供できたケアが最善のものだったのか疑問に感じていた医療従事者もいたと。法律に起因する時間や経済的制限が大きなinhibitorになってしまうのは、どこの国も一緒ですね。

まとめのところで印象に残ったのは、コミュニケーションの欠如はとにかく様々な問題を引き起こす大きな大きな要因である、ということ。例えば自分のメンツや周りとの関係を気にして質問をすることを躊躇してしまう、という環境は問題が起きるのをクチを開けて待っているようなもんで。supervision (監視)が必要である、と最後に複数回強調されているのだけど、どういう監視が理想的なんだろう?チームの中のリーダーが監視するの?それとも総合的に「チーム医療監視役」という人を設けるべきなのかな?以前の論文から受けた「spontaneousなのがいい」というのとはだいぶ逸れた、「管理」「監視」推しの厳しめの意見がこの論文では論じられているけれど、そちらが本当に理想なんだろうか?それから「駆け出しの医療従事者には向かない」とも何度も言及されていたけれど、「この子ならもうコラボ開始しても大丈夫!」という判断はどこでしたらいいんだろう?「準備」と早めるのに有効な教育やトレーニング法には、どんなのがあるんだろう?新たな疑問も多く出てくる研究でした。

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#5 Arvinen-Barrow & Clement, 2015
この論文の著者であるArvinen-Barrow & Clement氏らは「スポーツリハビリに臨むmultidisciplinary approachは『2層』であるべきだ」という信念を持っており、Primary rehab teamとSecondary rehab teamに患者を取り囲む周りの人間を分類、それぞれがそれぞれに合った役割を埋めていくものである、と主張しています。Primary rehab teamは怪我をした選手と直接、長時間を共に過ごすプロ集団、つまりPT, AT, physicians, surgeonsによって構成されており (direct interactions)、Secondary rehab teamにはその他の医療従事者や専門家 (S&C Coach, biomechanists, sport psychology consultants, sport nutritionists)と一般の人 (coaches, family members, friends, teammates)が関わっているそうです(direct and indirect interactions)。

さて、この研究ではATがこのArvinen-Barrow & Clementの提案するmultidisciplinary approachを採用することに対してどう感じているか、実際に現場でどういったmultidisciplinary approachを体験しているかについてオンラインアンケート調査を行いました。対象となったのはランダムに選ばれたNATA会員2000人(教育者と臨床者を区別もしなかった模様…在住国もランダムなのでは?)。ちなみに調査に使われたアンケートは「ATと最低でも10年のトレーニング・臨床経験のあるsport psychology consultantsに事前に見てもらってface & content validityを確認したもんね」と書かれていますが、他のvalidity、例えばcriterion or construct validityは未確認のまま。論文では「初期の研究はこんなもんである」みたいなことが書いてありますが、うーん、どうなのかなー。いろいろ緩い感じがするけどなー。途中の「リハビリ時にはどのくらいの頻度でmultidisciplinary teamを構成して取り組んでいますか?」という質問に「全く使わない」と答えた人は「アンケートにご協力ありがとうございました」で強制終了する用に作られており、仮に「1%(100回に1回)」とでも答えていれば最後まで回答可能だそうです。

さて、アンケートをメールで受け取った2000人のうちその19.65%にあたる、393人から回答(低く聞こえるかもしれませんが、この手のアンケートで20%のresponse rateは一般的と言っていいでしょう。しかし、よりIPP意識の高いATが回答する確率が高いと考えれば、sample biasがないとはいえません)。男女比は45.8%:54.2%, 男性平均年齢は39.48 ± 10.87歳、女性平均年齢は33.65 ± 9.76歳、ATとしての平均勤務13.3 ± 19.99年。

ケガをした選手が、リハビリをしていく中でmultidisciplinary teamへのアクセスがあることは…という質問に対し、27.5%が『重要だと思う』、44.9%が『非常に重要だと思う』と回答(合計72.4%)。Multidisciplinary teamを構成すべきメンバーは?という質問のTop 10回答は
1. Athletic Trainer (99.4%); 2. Injured Athlete (97.2%); 3. Physician (94.6%); 4. Athletic Coach (84.7%); 5. S&C Coach (78.8%); 6. Parents/Family (74.9%); 7. Surgeon (65.8%); 8. (Sport) Nutritionist (62.4%); 9. Sport/Exercise Psychology Consultant (58.8%); 10. Teammate (52.5%)
…という風になっています。

Primary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. Athletic Trainer (98.80%); 2. Injured Athlete (91.70%); 3. Physician (81.50%); 4. Athletic Coach (60.70%); 5. Surgeon (50.00%)
Secondary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. S&C Coach (49.50%); 2. Athletic Coaches (46.70%); 3. (Sport) Nutritionist (46.00%); 4. Sport/Exercise Psychology Consultant (43.20%); 5. Teammates (42.90%)…となっています。リハビリにおいて最も重要な、最も患者と密にコミュニケーションを取っているべきPrimary point personは?という質問では77.8%がAthletic Trainer、15.4%がPhysicianと答えたそう。

実際の経験はというと、64.9%のATがmultidisciplinary team approachを採用したことがあると回答、割合でいうと、毎回、毎患者ではなく、時間にすると全体の業務の66.7%ほど。総じて多くのATはmultidisciplinary team approachをポジティブなもの、価値があるものだととらえており、コミュニケーションを密にして全員が"on the same page"でいることが大事であると感じているようです。コミュニケーションのツールとしてはemail (n = 187)、電話(n = 157)、顔を合わせてのミーティング(n = 149)、携帯のメール(n = 121)などが一般的。回答したATの約半数(55.3%)が今のリハビリアプローチが最適であり、満足していると答えた一方で、 44.7%が「改善の余地あり」と感じており、具体的には他のプロらと仕事できるアクセス(Sport psychologistやSport Nutritionistなどが特に『不足』気味)や、決まったreferralの形態、共通したelectronic record、そして他のプロとのコミュニケーションの頻度・質を高めることなどが課題として挙げられたそうです。

さて、このアンケートの結果のほとんどは著者の予想というか、propose通りでしたけれども、指摘すべきは「Athletic Coachesが(著者らの提案したSecondary rehab teamではなく)Primary teamのメンバーとして挙げられていた」というところでしょうか。コーチは選手の大きな支えになることもあれば妨げになることもあるので、これは解釈が難しいところです。著者は「コーチはあまりその介入が直接的だとやはり問題を増やす可能性は否定できない」とし、アンケート結果を無視する形で「コーチはsecondary rehab teamのメンバーに留めるべきだ」と述べています。ふーむ…。私はコーチによってはPrimaryであるべきだと思うけど、これは人柄なども大きな要因だし、一概には言えないんじゃないかなーと思ったり。

あと、ここでは書かれていないんですけど、"Physiotherapist"の需要がPrimary teamでは12位(25.00%)、Secondary teamでは21位(14.30%)とかなり低かったこと。リハビリの専門家なのに?と少し疑問です。もしかしたらこれが要因かな、と思い当たるのは、このアンケートはアメリカで行われたものなのに(アンケートの回答者99.2%がアメリカ在住)、Physiotherapistという欧州でよく使われる呼称が使われていたこと。これは他のいくつかの名前、例えばSports therapist、Sport/Exercise Psychology Consultantという名前にも同じことが言えます。存在しない呼称、混乱させるような呼称は回答者が選ばなかった理由になりえると思います。そもそもこのPrimary vs Secondary Rehab Teamというコンセプトはこの著者らが打ち立てたものであり、アンケートでもその定義がきちんと共有されているようにも感じられなかった。このアンケートそのもののvalidity、そして回答ATのランダムさが少しこの研究の問題点かな。興味深くはあるんだけど、あんまりわくわくは読めませんでした。

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#6 Arvinen-Barrow & Clement, 2017
同じ研究者らにより、同じアンケートを同じ形式でSport Psychology Consultant(SPC)対象で行ったのがこの研究。ちょっと疑問なのがSPCだけでなく、Sport psychology studentにもアンケートを配布したというとことかな…そういえば前回のアンケートもあくまで対象は「NATA会員」だったから学生も含まれていたということ?学生メンバーってかなりの割合を占めていたはず…となると、それってどうなのよー。前の論文で「経験が浅い子はIPPに向かない」という報告もあったし、若い子の意見を入れてしまうと反IPPに結果が偏ることもあるのでは?

アンケートを受け取った1245人のうち、5.0%にあたる62人から回答(ひくっ!途中までしか回答しなかったresponseは分析に含まなかったそう)。男女比は56.5%と43.5%で、平均年齢は38.2 ± 11.1歳、臨床経験は10.4 ± 9.98年。71.0%はアメリカ在住、25.8%はヨーロッパ在住(これも多いなぁ、回答者のバラツキは前回の研究と変わらないか、質は落ちている印象)。

ケガをした選手が、リハビリをしていく中でmultidisciplinary teamへのアクセスがあることは…という質問に対し、平均回答は『非常に重要だと思う』。Multidisciplinary teamを構成すべきメンバーは?という質問のTop 10回答は
1. Sport/Exercise Psychology Consultant (91.8%); 2. Athletic Coaches (88.5%); 3. S&C Coach (80.3%); 4. The Injured Athlete & Athletic Trainer (同率・78.7%); 6. Physician (72.1%); 7. (Sport) Nutritionist (67.2%); 8. Parents/Family (62.3%); 9. Physical Therapist (59.0%); 10. Teammate (54.1%)
…という風になっています。それぞれ自分の職業が一位になっているのはごく自然として、こちらではコーチ、S&Cコーチの順位が高いのが面白いなーと…ここをon the same pageにしておくことが選手の精神状態に多大な影響を与えるからかなーと勝手に考察。逆にAT、Physician、PTなどの順位は低めです。ちなみにここではPhysiotherapistからPhysical Therapistに呼称を直してますね。Sport Therapistというよくわからない職種はそのままだけど。

Primary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. The Injured Athlete (91.50%); 2. Sport/Exercise Psychology Consultant (86.45%); 3. Athletic Trainer (72.9%); 4. Athletic Coach (64.4%); 5. S&C Coach (49.2%) …これはATのそれとほぼ一緒ですね。一番違うのはSPCが2位にランク入りしていること。
Secondary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. (Sport) Nutritionist & Teammates (同率・49.1%); 3. S&C Coach (47.40%); 4. Massage Therapist (42.10%); 5. Parents/Family (40.40%)…となっています。これもほとんど一緒…Massage Therapistが入っているのはびっくり&意外。患者はマッサージがあると満足しやすい、精神的に落ち着いたりリラックスしたりがあるから?やはり精神的要素がちょっと強めなような。リハビリにおいて最も重要な、最も患者と密にコミュニケーションを取っているべきPrimary point personは?という質問では29.0%が「AT」、次いで12.9%が「患者自身」、8.1%が「SPC」、6.5%が「PT」「Physician」と答えたそう。ここは全然違いますね!ATとして他業種者さんにそれでもATという職業を一番高い割合で回答してもらっているのは嬉しく思うけど、全体としてはかなりばらつきあり。患者自身がPrimary point personというのは私からしたら怖い回答だけどな…Patient-centered careと患者自身に舵を取らせる医療とは違うと思うんだけど…。

実際の経験はというと、64.5%のSPCがmultidisciplinary team approachを採用したことがあると回答。これはATの64.9%とほぼ一緒ですね。実践したことのあるSPCのうち、50.0%が「改善の余地あり」と感じており、具体的に改善すべき点は 1) もっと患者を真ん中に置くこと; 2) procedureやmeetingをもう少し形式立てて行うこと; 3) お互いの仕事について、チーム内での教育の機会があること; 4) physicalとpsychosocialという患者のケア要素をもっと混ぜ合わせること…などが挙げられたそうです。これは全然違って面白い!

さて、これとひとつ前の研究で明らかになったのは、ATはSPCをSecondary rehab teamの一員であるべき、と思っている一方で、SPCはSPCをPrimary rehab teamのメンバーであるべき、選手や他業種のプロともっと密にコミュニケーションを取るべきである、と考えているということ。このギャップは興味深いですね。文章では「ATは生理的な回復に重きを置くのでphysicianやsurgeonなど、他医療従事者をPrimaryに置く傾向があり、SPCはあくまで『たまに来る人』、indirectなメンバーという認識なのでは」なんてありましたけれど、個人的な考察だと、「ATたちからしたら、SPCは本来Primaryであるべきだと感じてはいるものの、何しろavailabilityに限りがあり、現実的にそういった人材を身近に置いておけない環境があるため、それらを考慮した上でのSecondaryなのではないか」というところもあるんじゃないかと思いますよ。SPCさんたちは理想としては、そりゃーチームの身近にずっといてほしい。Primaryになってくれればこんな素晴らしいことはない。でもうちみたいな小さ目のNCAA Division-Iでは今のところそんな可能性はしばらくないからなぁ。

さて、同じアンケートを別職種で使い結果を比べる、ということのできる面白い論文群でした。次回に続きます。

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  by supersy | 2017-03-12 12:00 | Athletic Training | Comments(0)

意識消失した患者の舌をひっぱる必要はあるのか。

救急医療のスタンダード化の重要性を強く信じている医療従事者のひとりとして、どうしても書き記しておきたかったので、この記事を残しておきます


3月2日、スペインのサッカープロリーグの試合中にフェルナンド・トーレス選手が後方から接触を受け意識を失って倒れ込み、同チームの2選手が即時に舌を引っ張って対応する、という出来事がありました(↑上動画)。2選手の反応の速さにも驚きましたが、私が一番ショックを受けたのはこの記事で(↓下リンク)担当医師がこれを「完璧だった」と称賛したという点です。

トーレスの命救った2選手…医師が称賛「意識を取り戻すのにしたことは完璧だった」

味方の急変に対して救急性を感じ、即座に行動した2選手のhumanityは高く評価されるべきであると思うのですが、医療的観点という角度から、私はこの対応を必ずしも「完璧」ではない、むしろ、下手をするとトーレス選手の命を危険にさらす可能性もある行為だったと考えます。選手がチームメイトの危機にいてもたってもいられなくなり、行動を起こしたその勇気と、その行動の内容の正当性はきちんと分けて、別次元で話されるべき事柄なのではないでしょうか?この記事では、医学的観点から、本当は何がなされるべきだったのか、もしそんな場面に選手や指導者が出くわすことがあればどうするべきかをまとめておきたいと思います。

●頸椎損傷の可能性
受傷時の動画から見ても、トレース選手が後方からの接触で頸椎を損傷していた可能性はこの時点で否定できません。少し大げさな表現になりますが、万が一頸椎の骨折や脱臼などが見られた場合、患者の頭部や首をほんの少しでも動かすことは「死」をも意味します。骨折や脱臼で不安定になっている骨(↓下MRI画像)が、動いた拍子に脊髄を傷つけてしまう可能性があるからです。だからこそ、我々医療従事者は「意識消失している患者は全て頸椎損傷があると見做し、即座に頭部・頸椎固定。最新の注意を払って迅速丁寧にスパインボーディングをすべし」という徹底した教育を受けています。常に最悪の状況を想定し、それを考慮して対処する習慣を叩き込まれているのです(実際に頸椎骨折を受傷したスポーツ選手が、現場にいたアスレティックトレーナーの適切な頸椎固定で九死に一生を得た、などというエピソードも毎年のように耳にします。彼らは決まって病院で医師に「動いていたら死んでいたよ」と言われるようです)。
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ですので、この受傷シーンの本当に正しい対応は下写真左(↓)にあるようにひとりの医療従事者が即座に頸椎を固定することです。そうして選手に声をかけ、意識が確認できない/頸椎損傷の可能性が除外できなければそのままスパインボードに患者を移動(↓下写真右)、頸・胸椎及び脊髄を固定した状態で病院へ搬送するべきでした。スパインボーディングのテクニックについてはこのブログでは割愛します。興味のある方は以前の記事をご覧ください。
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●頸椎損傷の疑いが除外でき、意識消失が見られる場合
(この状況では臨床的に不可能に近いと思いますが)仮にトーレス選手の頸椎損傷疑いが100%除外できたとして、その上で意識消失の対応を迫られているとしましょう。次にすべきはHead tilt/chin lift (頭部後屈頭部挙上法)という頭を後ろに反らし、顎を上げるようなポジション(↓下写真右)を患者に取らせながらの呼吸と脈の有無の確認です。…というのも顎を引いた通常の状態(↓下写真左)で意識を失うと舌根が沈下して気道を塞いでしまい、呼吸が停止する恐れがあるんですね。それを防ぐために、頭を剃らせ、顎を前に突き出すことで舌を浮かせて、気道を確保するのです。
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トレース選手に対応をした2選手は、恐らく「気を失うと舌が沈下し、気道を塞ぐことがある」という知識はしっかりあったのでしょう。だからこそ「指で舌をつかんでひっぱりあげる」という行為をおこなったのでしょうけれど、実はその必要はないのです。おでこと顎に手を添えて、頭部を反らせるだけで十分なのです。患者の口に不用意に手を入れるという行為は、感染症の危険性、誤飲、患者のgag reflex(咽頭反射)からの嘔吐、意識を取り戻した際に指をかまれるリスクなど、状況を悪化させてしまうかもしれない不必要な危険を伴うので、すべきではありません。

●頸椎損傷の疑いがあり、意識消失が見られる場合
頸椎損傷の疑いが否定できず、なおかつ意識消失が見られる場合(恐らくこれが今回の事故のシナリオだったかと思うのですが)、頸椎を動かさずに気道を確保する必要があります。この場合は、頸椎を固定した状態で顎だけを前に浮かせる、Jaw Thrust(下顎挙上法)という特殊な気道確保法を用いなければいけません。このテクニックは訓練を積んでいない方がおこなうことは推奨できませんので、敢えて写真は載せないでおきます。

気道確保の方法は他にも色々あり、現在、米国のスポーツ救急医療では、意識のない患者に対してはむしろ徒手でなく道具を用いた気道確保のほうが一般的になってきています。OPA(↓写真右)は挿入に3秒とかからない、シンプルで手軽な道具ですし、NPA(↓写真左)という鼻から挿入するゴム製のチューブは、顔面骨折を伴わない場合であれば患者が意識があっても使える、非常に便利で効果的な道具です(こちらについては以前トレーニングジャーナルの連載記事で詳しく書かせていただいたのでこれも割愛します)。
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道具を口や鼻に挿入することすらあれど、我々が指を患者の口に突っ込むことはまずありません。敢えて言うなら、患者が意識消失状態で嘔吐をし、吐しゃ物が口の中にあってそれを排除しければいけない場合にやむなく小指を使って掻き出すくらいでしょうか。それにしたって、suction deviseというポンプ状の道具があれば、そちらを使って吐しゃ物を吸い上げるほうが効率が良いです。つまるところ、「医療のプロでもよっぽどの必要性が無ければ患者の口に何かを突っ込むようなことはしない」ということを知っていていただきたいのです。

●てんかん発作の対応
「口に突っ込む」ついでに、てんかん発作の対応についても。昔は「てんかんの患者が発作中に舌を噛んではいけない」という考えから、発作中の患者の舌をつかんで引っ張ったり、口にタオルを入れることが推奨されていたこともあったようですが、今はその全てがガイドラインから外されています。発作中の患者の舌をつかむと自分が怪我をする恐れがあったり、口にタオルを入れると窒息の原因になる、という理由からです(日本てんかん協会のウェブサイトによる推奨事項はこちら)。下の写真のように、てんかんの発作中には患者を押さえつけたりせず、周囲のものにぶつかって怪我をしないようモノをどかし、静かに発作が収まるのを見守ることが重要です(プロの医療従事者ならば、時計を見て発作の長さを記録していくことも重要です。5分間たっても発作が収まらない場合は救急車を呼ばなければいけませんから)。発作中に失禁を起こしてしまうことも珍しくありません。周りに人がいるならば、プライバシー保護のために退室を促すなどの気配りも重要です。
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●本当にてんかんなのか?てんかん発作「のような」痙攣の落とし穴
もうひとつ、混乱させるようなことは書きたくないのですが、こちらも非常に重要だと思うので言及しておきます。こうしててんかんの発作について正しい知識を持った人に起きてしまうかもしれない悲劇のひとつに、「心不全患者の対応を見誤る」というものがあります。…というのも、心不全で心拍が停止した患者がてんかんの発作のような痙攣運動をする("seizure-like activity")ことは決して珍しくないからです。下の動画は1990年にバスケットボールの試合中に心不全で倒れ、そのまま命を失ったHank Gathersという選手の発作の動画です。
これを見て、果たして何人の非医療従事者が「てんかん」ではなく「心不全」だと思いつけるでしょうか?この患者に対して「ああ、てんかんかなぁ」と思い込んで、痙攣の停止を悠長に待っていては手遅れになります。知識のあるアスレティックトレーナーならば、てんかんの発作既往歴があり、この発作が120%てんかんが原因であると断言できる場合以外は(=つまりそんな状況は恐らく絶対にあり得ないでしょう)、周りの人間にAEDを持ってくるよう指示をだし、まずは脈の確認をするはずです。くどいですが、医療従事者は常に冷静かつ沈着に最悪のケースを考え、優先づけて対応できるように訓練を積んでいるのです。

●餅は餅屋、スポーツの救急医療対応は救急医療対応のプロへ
これだけの内容を、非医療従事者の方に全て覚えて対応してもらおうなんて、私は全く思っていません。今回一番書きたかったこと、それは、「救急時の対応はプロにぜひお任せください」ということです。

スポーツの現場にいる選手や指導者の皆さんに、無礼を承知でお願いです。怪我をし、倒れている選手には駆け寄って無理に動かしたりせず、「数歩距離を置いて見守る」という行動を通じて、我々の手助けをしてくださいませんか?受傷時の選手の倒れ方や受傷後の選手の身体の動きから障害が絞れることもあるのです。現場の医療スタッフの視界をなるべく遮らず、駆け寄りたい気持ちをぐっとこらえて、プロの知識と力を信じてくださいませんか?我々は現場のプレッシャーに影響されることなく鑑別診断をおこない(=可能性のある障害を頭でリストアップし)、効果的に確定と除外を行い、最短の時間で最善の判断をするように訓練を受けています。全ての命を守ることは不可能かもしれません。それでも我々はスポーツの現場をできる限り安全にしようと、日々ライセンスとプロとしての使命と誇りをかけて仕事をしています。そして自惚れと言われるかもしれませんが、スポーツの現場の「瞬発力」と「救急判断力」に関してはアスレティックトレーナーの右に出る者はいないとすら私は思っています。
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もし、今の皆さんのスポーツの現場に我々のような対応ができる医療従事者がいないとしたら、それこそ皆さんが声を上げ、行動を起こすべきです。中学校、高校、大学、アマ、プロを問わず、安全にスポーツをするためにはアスレティックトレーナーのような専門教育を受けた人間の存在が必要不可欠です。そんな人材を雇うのは無理だって?そんなことはありません。例えば、早稲田実業学校(初等部、中等部、高等部)には小出敦也ATCという私の先輩にあたるアスレティックトレーナーさんが勤務してらっしゃいます。前例など、いくらでもあります。皆さん、車の運転をするにあたって保険に必ず入りますよね。スポーツだってそれと同じだと思いませんか。安全への先行投資って、万が一のことが起こったときに、ああよかったやっておいて、と非常に有意義に感じるものではありませんか。野球で打者がヘルメットを被るように、アメフトで選手がショルダーパッドを着るように、サッカーで脛あてをするように、ラクロスでアイガードをするように、全てのアスリートにはアスレティックトレーナーがいて然るべきと私は思っています。非常時でなければでしゃばりません、後ろから皆さんの様子を静かに見ています、その代わり、何かがあったときは一番に皆さんの下へ駆け付けますから。買える安心を、実現できる安全を、手に入れないのはどうしてですか。
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  by supersy | 2017-03-06 17:10 | Athletic Training | Comments(5)

チーム医療の実践のために知っておくべきこと、その1。

さて、今回からはInterprofessional Practice/Educationというテーマで10文献まとめます。これも今、AT教育では『主流』『王道』となってきているキーワードですね。
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#1 Molyneux, 2001
こちらはUKの文献、16年も前のQualitative研究です。古いですけど、丁寧にまとめられています。 「ここまで(80年代、90年代)に出版されてきたInterprofessional Practice関係の文献は『実現は大変だ』『こんな風にゴタゴタした』『こうすれば上手くいくんじゃないか?』という内容ばかりだったが、筆者はとても素晴らしい経験ができたので、それを共有したいと思います」という流れで、とある脳卒中患者に対してInterprofessional Teamでリハビリをしたらこんなにうまくいきました、その秘訣はどうやらこういうところだったんじゃないでしょうか、ってことをまとめています。

今回の「サンプル」はリハビリチームに参加したOT2名、PT2名、Speech Language TherapistsにSocial Workerがそれぞれ1名の合計6名。彼らに対してまずは45分~1時間ほどの個別のsemi-structured interviewを、そしてmember-checkingを行ったうえで、focus groupをして出てきたアイデアについてさらに語ってもらう…という形式を取ったようです。Focus group→in depth interviewのほうが「フツー」の流れなんじゃないかなと思ったけど、まぁそこは目をつぶっちゃっていいんでしょうか。…で、出てきた3つのthemesというのが…

1. Personal qualities and commitment of staff
メンバー全員が望んでこのチームに入ったというmotivation & commitmentがあったこと、そしてお互いが「臨機応変でなければいけない、柔軟でいよう」という意志があったこと。それから非常に興味深いことにこのチームに医師がおらず、dominateしようとする存在がなかったことから、安全感が生まれた、というのもありました。妬みの感情が無く(メンバーは全員女性だったそうなんですが…「意外」と言ってしまうとイケナイかな)、上下関係が生まれずにお互いがお互いの能力に自信を持てたこと、そしてだからこそお互いの仕事の境界線を動かしてもいいという冒険心も生まれたそうです。医師がいなかったからうまくいったというのは…意外なようで全く意外じゃない、どちらかというとすごくわかりますね(笑)。医師がいると、何となくみんな医師の機嫌を損ねてはいけないと顔色を窺っちゃうんですよね。

2. Communication within the team
少数精鋭のチームで、同じオフィスに全員が勤務しており、頻繁にコミュニケーションの場を設けたこと…詳しく言うと、一週間に一回のcase conferenceをおこない、それに対してメンバー全員が出席するよう最大限の努力をしたことも大事だったようです。全員が発言する機会があり、無駄な脱線は極力避けた、というのも頷けます(私は実りの無いダベリだけのmeetingが大嫌いなので)。患者のcentral noteも設け、そこにそれぞれがやったことを記録していったのも良かった、と。

3. Development of creative working methods
「どうしたらうまくいくのかわからなかった」ことこそが成功のカギだった、というのは面白いstatementですね。ガイドラインがなかったからこそ、全員が常にどうしたらいいか考えながら自由にやることができたそうです。最初こそお互いのtraditional roleを守ろうと動いていたそうなのですが、あれ、もうちょっとこんな感じでもいいのかもね、あら、じゃあ私もこれやりましょうか?とオープンに考え、とにかく患者を真ん中に置いて動いてみたことがよかったのでは、というコメントが多く出ました。

まぁまとめると、あれですね、スタッフになる人物は1) motivated, 2) committed, 3) experienced and 4) willing to be flexibleな人がいい…というのは言われれば当たり前な気もしますね。それぞれが、自分の専門性は何かわかった上で、それを壊す勇気がある、というのかな。わかってないと壊せないし、自我が確立されていなければ壊すことは怖いし。こういう仕事のスタイルはギョーカイの新人には向かなくて、きちんと経験摘んできている同士だからできることなのかな、と思います。ひとつの共通するベースで働く、チームでミーティングを頻繁に開く、どうコミュニケーションを取るかについて共通理解を設けておく…ここらへんも特に驚くようなことではないのですが、「医師がいなかったことで『平等感』が生まれた」というのはいやはやなんとも。これが成功の大きな要因のひとつだったというなら、医師アリでも成功するためにはどんなことを心がければいいのか興味が沸きますね。
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#2 Sumsion & Lencucha 2009
この論文はタイトル通り、Inpatient unitsにてInterprofessional teamの一員として働く12人のOTへのインタビューを通じて、Patient-Centered Practiceをする上でのbarriers (障壁)とfacilitatorsとは何か?それを実践している身として、どんなことを感じているのか?などについてまとめた研究です。こちらもQualitative, カナダの研究チームによる報告ですね。Rich description, member checking, audit trailをtrustworthinessの証明として使用。で、出てきたThemeをConcept Mapにしたものがこれ。
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●Facilitators
- Team cohesion, autonomy and consultation
責任とアイデアを共有すること、そしてこの研究ではinterprofessional teamのリーダーに医師がいたらしいのですが、その医師がその他のメンバーの専門性と知識を信頼し、彼らのclinical judgementを受け入れるとチームの活動が円滑に進みやすかった述べられています。大事なのは意味のある目標(meaningful goals)に向かって進むことなので、そのためにチーム内でのconsultingを頻繁に行い、お互いの抱える問題を声にして話し合い、collective planningを行うことは欠かせません。

- System enablers
この病院には地域と組織の両方のレベルでpatient-centered careをプッシュする風潮があり、community resourceがあったというのも特筆すべきことかなと。"client planning committee"という委員があり、患者こそがdecision makersであるべきだ、という理念を徹底させていたりとか (つまり成功図が見え、比較的ステップが明確な状態で仕事に臨めるんじゃないかなと)、あとは例えば患者さんをもっとよく知るために、一週間に一度一緒にお茶でもしに喫茶店にいったりすることも「仕事」と好意的にとらえてくれるような環境があると、確かにこういったコンセプトは実現しやすいですよね。

- Family collaboration and support
患者の家族にも目標を理解し、セラピストが何をやっているのか理解してもらうことは非常に大事。家族がいると患者の態度も変わったりもしますしね。となれば、家族も巻き込んだ透明性のあるコミュニケーションは当然欠かせません。

●Challenges
- Differing perspectives and paradigms
患者がdecision makerである以上、患者がしたい、やりたいと思うこととセラピストが「本当はこれができるはずなのに」と感じることにギャップがある場合はなかなか難しいそう。あとは、セラピスト間にも良くも悪くも職業別の「傾向」があり、例えば本文によればnurseとpsychiatristは(古い医療モデルである)medical modelに頼り、比較的自分たちが主導権を握ったままの医療を実践してしまうことが多い(今回のcontextとは反する)ので、それらの医療従事者が「現場仕切り役」だとpatient-centered careが実践しにくく感じる、という感想もあったそう。Assessmentの完了を「目標」においてしまっている医療従事者との仕事も(もちろんそれは患者の目標ではないので)非常にしづらかったのだそう。

- Competitive framework and boundaries
チームのメンバーが自分の領域を守るのにやっきになったり、物理的距離があって直接会う機会を設けるのが難しいというのも成功への障壁のひとつ。

- System barriers
「患者とコーヒーを飲みに行く余裕」はあっても、やはりそれなりの期間内に目標を達成しなければいけないというプレッシャー、そして、他のチームメンバーも忙しいのでvisitをどうスケジュールするかなどの時間的苦労はやはり多いようです。患者さんに経済的制限があり、思うように治療に通えない、そしてそれが理由でニーズを満たせない、というのも選択肢が限られてきてしまいますし、それから、このサービスを受けたい患者のwaitlistが長い(患者が希望してからこういった治療が実現するまで一年かかるそうです)ことも大きな障壁になったそう。どうやら慢性スタッフ不足もあるようですね。

- Family goals
家族の向いている方向、見ているものがチームや患者のそれと異なることも十分あり得ますし、文化的な違い(過保護だったり、家族がそうであるように、チームにも24時間体制のサポートを求めたり)が原因で理想的な治療が提供できないこともあったそう。

チームもシステムも家族も、facilitatorにもなる可能性もchallengeになる可能性もあるというのは面白いですよね。「新しいアプローチがしたいです、これ、古いシステムにでもぎゅぎゅっと詰めれば入るでしょ、ではなくて、新しいアプローチを試みる際には構造そのものを変える必要がある」というのにはうんうんと頷いてしまいました。medical modelからpatient-centered careへ、ってのがそもそもかなりのparadigm shiftだもんなぁ。職員の仕事の評価の仕方もがらりと変えなければいけないから、組織の人間全員がon boardじゃないと実現はかなり難しいのではないかと思いました。まぁ、今時medical modelで仕事してたらすぐクビになりそうなもんですけど…。それでもこの論文2009年発表ですもんね、そんなに前の話じゃないんだよなー。
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#3 Breitbach et al., 2015
次はNATA Executive Committee for Educationも中心になって書かれた、非常にAT教育の未来を語るうえで大事な論文です。アメリカAT界では2012年に正式に"Interprofessional Education (IPE)はProfessional/Post-ProfessionalレベルのAT教育で教えられるべき必修項目に入れましょう"と決まったわけですが、IPEの定義とはなんなのか、どう教え・実践されるべきものなんおか、これからの医療はどう変わっていくのか、などに共通理解を広め、深める目的でこのnarrative reviewがまとめられています。
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Uniprofessional practice/educationはともかく、Interprofessional practice (IPP)/education (IPE)とMultiprofessional practice/educationは異なるものなんですね。定義を並べて書いておきます。
Multiprofessional Education: members or students of 2 or more professions associated with health or social care, learning alongside with one another; parallel learning, rather than interactive learning
Interprofessional Education: an educational process whereby professions learn about, from, and with each other to improve collaboration and the quality of care
Multiprofessional Practice: Appropriate experts from different professions handle different aspects of a patient's care independently/ The patient's problems are subdivited and treated seperately, with each provider responsible fo rhis or her own area
Interprofessional Practice: health care provided in a coordinated manner by health professionals who share mutual goals, resources, and responsibility for patient care
"multiprofessional"は数さえあれば成り立つ、passiveなものでもあり得るのに対して、"interprofessional"は互いが互いから学びあい、協力し合う積極的な姿勢が無ければ成り立たないのが印象的です。IPPは医療ミス予防、patient advocacy(患者支援)の改善、医療費負担の軽減を実現させながら患者のアウトカムを最大限に引き出すには無くてはならないアプローチになってきているほか、医療従事者間の仕事に対する満足度、job retentionも向上するとも言われています。加えて、高齢化と慢性疾患の蔓延がますます増加していく社会で重要になる「予防医学」を実現するために、我々がもっと上達しなければいけない分野であるとも言えます。そして、IPPを実現していくためにはIPEを早い段階で取り入れ、学生のうちから他の医療従事者をcollaborative workをしていくのが当たり前であるという文化を植え付けることが大事になるわけです。逆に言うと、これからの若い学生は、こういった教育やトレーニングをしっかり受けている方が"employable"という風に見られることも意識して損はないかもしれませんね。

IPEに参加した学生は1) 他の医療従事者のscope of practice、2) 他の医療従事者の価値、3) patient-centered careのノウハウ、そして4) interprofessional teamで働くチームワークスキルがつくと言われています。お互いの仕事に対するネガティブなstereotypeを減らし、他の医療従事者とのコミュニケーションの自信が培われる、卒業後も自主的に学び続けるwillingnessが向上する、などの利点も。IPEを始めるタイミングに関しては文献によっても意見が分かれており、「学生にプロとしての自我がまずは芽生えるまで控えるべき」「いやいや早いうちからそれでもやるべきだって」の両方の主張があるそうな。共通して言えるのは、IPEを始めた段階では学びの環境はnon-threateningでどの専門の学生が何人ずつ…など、細かいバランス、細部にまで気を使った教育を提供することが大事ということ。他の医療従事者との「絡み」を楽しんでもらうことが第一歩。Didacticとclinicalの2つのphaseに分けてIPEをおこなうことが多いようです。IPEは彼らの日常業務に近ければ近いほどいい…ということなので、例えばケーススタディーに基づいてそれぞれの専門職が何をするか話し合う場合にも、学生が普段実習に出ている現場を意識し、いかにも「ありえそうな」症例をシナリオに使うことなんかが大事なんでしょうね。学生が医療の道を正式に歩み始める前に、他の医療受持者をshadowする機会を設けるというのも大事なのでは…なんて文章もありました。

IPE実践のためには教員自身も同様に他の学部の教員とお互いの領域を理解し合い、コラボしあう必要があります。ただ、多くの教員、そしてPreceptorもこういう訓練を受けていないという事実はどうしても障壁にもなり得る要素なわけで。単純に様々な業界の学生をていやっと同じ教室に入れればいいというわけではなく模擬症例などを使って何を学んでほしいのか、明確なSLOとそれを推し測るmeasureを持ってして意味ある学習体験をデザインしなければいけないわけですよね。これに関してこれ以上の明確なやり方は記述されていませんでしたが、こういったことを実現するにはadminの理解と協力も必要です。

効果的なIPPを行うには、まずはATが自分自身が何者なのかを他の医療従事者に明確に伝え示すことができる能力("ability to communicate the scope of our knowledge, skills, and abilities and value as part of the health care team with others")が必要不可欠。それから上でも言及したことですが、それぞれの役割の理解がしっかりしていない、誰かが場を支配しようとする、などがあるとconflictの原因になるとも書かれていました。相互理解、相互respectがあり、まめにコミュニケーションを取ることが成功の鍵であり、階級制度を持ち込んでしまうと失敗する、というのは肝に銘じておきたいですね。

個人的には「いつ」IPEを始めるべきなのかについてもう少し情報が欲しいです。もちろん、やりようによっては一年目からでもガンガン学べるのだろうとは思うのですけど、文章にもあったように「プロとしての自我」があることがやはり重要に思えるし、自我が無ければ「安全な学びの場」造りが難しいのではと思ってしまうからです。あとつくづく思うのは、以前どこかにも書いたかもですけど、AT学部がやっぱり適切なcollegeにいることが本当に大事だなと…。うちのように、College of Educationにいるようでは他の医療従事者、医療教育プログラムとのコラボレーションは難しいです。College of Health Scienceに一刻も早く移れるものなら移りたい…でもたぶんあと数年は無理だろうなぁ…。リソースの共有、哲学の共有、common languageの共有、理想的な教育にはやはり欠かせません。

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  by supersy | 2017-03-04 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

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