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NATA Clinical Symposia in Baltimore おまけ。

NATAに参加すると各分野の最新の研究に触れる機会があり、massive knowledge updateができる利点もありますが、それ以外にも懐かしい・新しいATさんとの出会い、そしてExhibit Hallでの面白い商品やコンセプトとの遭遇なんて楽しさもあります。
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…で、今回も例にもれずExhibit Hallをふらふらしていたのですが…、まずとにかく今年の展示場はでっかい!!!今までもこんなに大きかったっけ?いくつか顔を出さなきゃいけないブースがあったのですが、本気で迷ってしまって何回かに分けてようやく一通り回ることができました。とりあえずPRIスタッフに挨拶をして、RMUoHPのブースで予期せぬリクルーティングを手伝って、それから…あれ、Positional Release Therapy(PRT)のブースで創設者のDr. Speicher発見!わーいお久しぶりですー、とお喋りしていたら、どういう流れか、Dr. Speicher直々にPRTを施術してもらうことに。最近はPRTは「圧痛をつくる」「90秒短縮位を維持」という理念からはだいぶ離れつつあり、「痛みを作らず治療する」「fasciculationが最も起こるポジションを探す」「呼吸も併用する」「fasciculationが無くなれば施術終了(90秒もかからないことがほとんど)」というセオリーを元に筋肉の過活動に抑制をかける、といった印象です。いやー、さすがDr. Speicher、テクニックがやばかったっす。各運動面ごとに角度を作り、joint manipも使いながらピンポイントでのポジション決め。施術後には数年取れたことのなかったupper trap spasmが融けるように無くなって、首がスルスルすかすか緩まりすぎて怖いくらいでした。もちろん(他のテクニックを併用して)それが維持できてナンボだと思うのですが、この即効性は確実に武器になるよなぁという印象。PRTは今まで「時間があれば勉強したい」と思っていたdisciplineのひとつでしたが、勉強したい度がこれで第3位くらいにまで跳ね上がりました。特に脳震盪治療にも使えるのではないかというCranialのPRTテクニック、興味ある…。
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そして今回もJATOのレセプションにお邪魔させていただいたのですが、先輩・同志らに進路相談(?)をしたり、現役の学生の子たちや卒業したての若い子らからエネルギーを分けてもらったりで充実していました。長年会えなかったAT仲間に今回初めて会えたのも大きな収穫でしたー。AT界で皆それぞれの分野で輝いていて眩しいったらありゃしない!あ、あと知人にBaltimoreに来たらCrab Cakeを食べなきゃアカン(名物らしい)、と言われていたのでそれも頂きました。うーん、まぁまぁ?
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Baltimoreはかなり治安が悪いらしいのですが、Inner Harborのあたりは景色もいいし、ショッピングモールやレストラン、水族館に博物館などエンターテインメント施設も多く、とても過ごしやすかったです。観光はほとんどできませんでしたが、またいつか!
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  by supersy | 2016-06-28 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

NATA Clinical Symposia in Baltimore その3。

NATA Symposium最終日です!ねむい!

#1: Interprofessional Education in Athletic Training
"Interprofessional Education (IPE)"は医療教育界の新たなトレンドですが(日本語でいうコメディカルという言葉に近いのかな?アメリカのそれはヒエラルキー型でなく、もうちょっと横並びなのですけど)、どこのcollege(学部)にプログラムが所属しているかでIPEがどれだけ実践しているかが決まるというのはちょっと耳に痛い情報でした。うちのプログラムはなぜか教育学部に属しているんですけど、「健康(Health)」という名前の付いた学部に所属しているほうがIPEが1.9倍起こりやすいそうで…。そりゃーだって、学部内コラボが簡単ですもんね。うちも早く健康科学学部に移りたいよー。
研究として、「PAとATの学生が合同でマラソンイベントの医療サポートを行ってIPEを実践しました」というケース報告もあり、そのときは各ステーションで「ATはMusculoskeletal Injuriesの担当、PAはnon-musculoskeletalを担当」とだけシンプルなルールを教授側が決めたらしいのですが、自然と「ねえ、さっきの怪我、どういう風に診断したの?」というPA⇔AT間の質問や情報のやり取りが自然に始まり(研究者もこれは予期していなかったそうな)、予想以上に上手くいった手ごたえがあったそう。学生は教師以上にIPEの準備ができているのかもしれない、という結論は実に面白いところです。

#2: Facilitating Effective Debriefing
こういう講習は教育者の人しか興味ないと思うんですけど、Preceptorの人たちにぜひ聞いてほしいなぁー。大きな学びがあったあとに、どう効果的に"Debriefing"をするか、という話でした。Debriefという単語は日本語だと(兵士などが任務を終えた後に上官に)報告する、という意味があるらしいのだけど、そういう訳だとちょっとこの文脈での意味とは違ってきちゃうかなと。Facilitated and planned conversation to analyze actions, thought process, emotions and reflect educational goals (終わったことに対して、振り返って自分がとった行動や思考プロセス、感情を分析し、目的に沿った行動がどれだけ取れたかを見つめなおすための促進的に計画されたやりとり)というのが私が感じ取ったこの単語の意味で、たとえるなら、学生が患者を評価し終えたときに、それを振り返り、「何がよくできたかな?」「何ができなかったかな?」「どうしたらもっと良くなるかな?」と反省して教授と話し合うことを指します。
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で、この話し合い中、教師はあくまでfacilitatorとして、会話を刺激するために質問を飛ばして論議を建設的に導く役目があるわけですが、面白いのが「特に教師は学生のパフォーマンスを向上させるためにいるわけではない」という前提。あくまで会話を進めるのは学生で、彼ら自身が自主的に何が良くて、悪くて、どう改善していけるかを導き出していかねばならないのです。そういう意味で、debriefingはfeedbackとは大きく異なります。feedbackは教師(もしくはPreceptorとか)が学生に「あれがよかった」「これはよくなかった」一方通行で送るもので、debriefingは教師が投げかけた質問に学生が答える、というtwo-way streetなのです。誰かと自分のパフォーマンスを比較したり、前回と比べて今回は…と考えるのではなく、今回のパフォーマンスに対して切実に向き合い、感じたことを吐き出す、というプロセスです。これは、「学び」が終わった24時間以内にやるのが理想だそうな。自分の当時の感情や思考プロセスを客観的に振り返ることで(イメージとしては幽体離脱でもしたときのように、状況を冷静に見下ろす第2の自分を作り出して、第1の自分を分析するような感じ)metacognitionの能力を高め、reflective practitionerを生むのが目的。これを学生が学生のうちに繰り返してクセにしておけば、プロになったあとも自然に「あれはああすればよかったかな?」「ここはうまくいったかな?」と自分で自分を導けるようになるわけです(これって、『できるヒト』は教わらなくてもできるんでしょうけれど、『できないヒト』はきちんと教わらないといけないことだと思うんです。一生の財産になります)。うーむ!これは次のPreceptor TrainingでぜひうちのPreceptorともシェアしてみよう。

#3: Moving Beyond the Checkboxes - Utilizing Functional PPEs
Pre-Participation Exam (PPE)にどういう病歴がある・ないのチェックリストのみでなく、もっと患者を動かすmovement screen的要素を取り入れるべきではないかという講義でした。このscreenを使って何かを診断するわけではなくとも、high risk individualを的確に見つけ、赤旗を立て、次のレベルの評価対象に含められればいいではないか、というdata-drivenな内容で。プレゼンターは実際WB Dorsiflexion; SL Anterior Reach; SL Hop for Distance; Impression Landing Error Scoring System (点数をつけるチェックタイプのものではなく、「良い」か「悪い」かのシンプルな二択)という4つのDynamic Functional TaskをPPEに取り入れてみたらしいのですが、高校生アスリート3000人超を対象に実験して分かったのはSL Hop for Distanceに関してのみ左右差が20%以上あった場合下肢のmusculoskeletal injuryのリスクが2.65倍(1.54-4.57)まで上がるということ。
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つまりこの要素が怪我のリスク要因として認められたので、これからのPPEに使ってみる価値があるのでは、ということですね。いわゆるSL Hop Testの全てのテストをやらなくてもいいので(i.e. for distance, for time, zig-zag)、お医者さんのオフィス等でも手軽にできる、というのが利点のようです。ふーん。
この講義で数回強調されていて興味深かったのが、「左右差は決して悪いものではない、スポーツをしていればどうしても生まれてくるものだから、そうやっきにならなくても」「今回の診断基準になった左右差は20%をボーダーにしており、かなり大きい。逆に言うと、これを10%や15%にしてしまうとかなりの被験者が当てはまってしまったので高い設定になっています」というとこですかね。

#4: Assessing Student Learning
Standardized Patient(SP)に関しては以前にまとめたからいいとして、この講義で得た新しい情報は「今でも医療教育のメインはsimulationとmock scenario。もっとreal-time patient interactionとSPを増やす必要がある」という課題と「学生の学びは何時間実習の場所にいたかではなく、何人の患者と触れ合う機会があったかというPatient frequency/load、そして何回そのスキルを実践する機会があったかに比例する」というところ(だからこそ認定プログラムは学生が何時間実習を積んだかではなく、何人の患者とinteractしたか、何回技術を実践できたかをtrackすべきなのでは、という提案もありました。それはちょっと極端な気もしますが、時間だけ稼いでいればいいというものではないというところは大いに賛成です)。SPの話では、教授がSPを医療教育の場で実践するにあたってそれをどう感じており、どういう障壁があるか、という話にもなりました。もちろん利益も大きいのですが、SPの知識不足やFacultyにかかる労力・時間的負担がかなり大きい、という問題もさることながら、現実的にやはり金銭的な問題も大きいよね、というのがさしあたって一番の障壁ですかね。シナリオ別にSP役の方の報酬を調節しているところもあるらしいですが(invasiveなもののほうがお値段もup、みたいにしているらしい)、うちの大学で今それを捻出しようとしてもやはり無理なので…。予算がなぁ。

そんなわけで、最終日もみっちり学んで楽しかった!そのあとはLittle Italyへ出かけて、友人らと極上のイタリアンをいただいてきました。友人のひとりは前日にこのレストラン(↓)に来たらしいのですが、「美味しいのでもう一回行きたい」と二日連続になるにも関わらず私たちを連れてきてくれて。「なぜ二日連続?」と疑問に思ったけど、料理を食べて納得。こんなに美味しいBrussell Sprouts初めて食べた…。
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そんなわけで明日日本に帰ります!会ってお喋りして情報交換してinspireしてくれた皆さん、ありがとうございます。やっぱりNATAは刺激的…寝不足だけど元気が出ました。できれば毎年来続けたいなぁ。
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  by supersy | 2016-06-25 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

NATA Clinical Symposia in Baltimore その2。

NATA Symposium 二日目です!

#1: The Mind Matters: Psychosocial Factors of Injury
これはちょっと想像していたのと違ったけど、唯一面白いなぁと思ったのは『Physical Predictors of Perceived Susceptibility of Sport Injury Among Collegiate Athletes: An Exploratory investigation』の、アスリート本人が自分を「怪我しやすい」と認識しているかどうかはFMSのスコアやY-Balance Test、Landing Error Scoring Systemの点数とも関係なく、『過去の受傷歴』のみ(7.3% of perceived susceptibility can be explained by previous injury)という結果かなぁ。アスリートが『自分は怪我をしやすいほうだ』という認識は、過去に怪我をしたときに「アスリート」から「怪我したアスリート」にカテゴリーが変わるあの感じを体験してしまうことがきっかけになることが多いのでは…、という考察でした。リハビリを通じて自信を育て、競技復帰時に彼らの自己カテゴリーも「怪我したアスリート」から「健康なアスリート」にしっかり切り替えられるような、何かうまい意識改革の方法が必要かもしれませんね。

#2: Neuroplasticity After Musculoskeletal Injury
40分x3の講義、これは面白かった!目玉が飛び出るような新情報はなかったけど、逆に私が以前にまとめたことがあるような記事の引用も多く(例えばこれの#1とかこれの#4とか)、あー、私が読んできていた論文は正解(?)だったんだ、と妙に安心できました。
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『Neural Origins of Dysfunction Following Joint Injury』ではAMIの話もたくさん出てきましたが、中でもTMS(Transcranial Magnetic Stimulation↑)という実験方法は知らなかったので面白かった!磁場を生み出す特殊な器具を用い、脳の中でもピンポイントで特定の部位を活性化させることができるんだって。それで例えば、無理矢理患者の右大腿四頭筋を活性化させて(膝がびよんと伸展する)、で、大腿四頭筋にもEMGを取り付けておけば、どの程度の脳の刺激がどういうmotor responseを生んだかわかるんだそうですよ。へぇー!なんかサイエンス漫画みたい!最後、『Targeting the Brain during Rehabilitation』では「一時間のBalance Trainingで(脳機能だけでなく)脳のニューロン構造そのものが変わることが分かっている」としたうえで、「僕は研究を始めた当初はACL損傷をした患者の脳機能が、健康な人の脳機能と全く同じになればいいものなんだと思っていたけれど、そういうわけじゃないと気が付いた。実際、怪我をしても身体機能がフルに回復している患者ほど、脳の変化の量は大きいんだ」と言っていてなるほどー!と思いました。そうですよね、脳は常に体の状況に合わせて変化している。体が変わってしまったら(=怪我をしてしまったら)それに合わせて脳が変化していくことは至極当然なわけで、それをひっくり返して元に戻そう、なんて考えなくてもいいんです。変わらないで!元のままでいて!というのはそういう観点から見ると意味が通らない。脳が変化していく中で、一番局所に負担がかからない、バランスの取れた変化へと導いてやれればいいってことですね。「我々がリハビリ中に患者に与えるフィードバックも、言葉遣いや内容に変化をつけることで患者の脳の異なる部分を活性化させられる。我々は本当に患者の脳にがっつり影響を与えられる存在なんです」と彼も言っていたように、どういうフィードバックを与えるかはもっと我々臨床家も慎重になって考えるべきところですね。例えばInternal feedbackばかりでなくExternal feedbackも作ってあげる、VisualばかりでなくてAuditory feedbackもしっかり増やす…など、競技環境に近い状態でのFeedbackも意識して(例えば、前も書きましたが、Visualに頼りすぎた患者が片足で立つたびに足元を見なきゃいけないという衝動に駆られるのは、スポーツをする上ではマイナスにしかなりませんよね?本来はボールや相手の動きを見ていなければいけないところ、下を向いてばかりいると、それが将来の怪我につながる危険性もあります)患者とコミュニケーションを取る必要があるかと思います。

#3: An Evidence-Based Approach for the Treatment of SLAP Lesions
Thrower's Ten/Advanced Thrower's Tenプログラムを作ったことで有名なWilk氏が第一スピーカーでした。豪華!さすがにご自分の分野で今までに発表された研究は全部把握しているんだなー、というような文献の宝庫で、Tampa Bay Rays選手の90%/Toronto Blue Jays選手の79%/バレーボール・水泳選手の80%超が、痛みが無い状態でもMRIを取ればLabrumに異常が確認できる、その多くはNormal varianceだ、やはり近年SLAPは過剰診断されすぎだ、という数字には改めてびっくりしました。それを踏まえたうえで、SLAP手術を受けた野球選手でピッチャーだけを見ると競技復帰できたのはうち40%、そして、(痛みやdysfunction無く)元のパフォーマンスレベルまで戻れた選手はたった7%という統計をシェアしてもらったので、うわー、手術の成功率は非常に低いものなんだなーと実感。野手ならともかく、やはり投手は完璧な競技復帰は相当難しい模様。あとば、脈絡はありませんが、「Labrumの上半分はmeniscus-like (poor blood supply)、下半分はcapsule-like (highly vascular)」という説明は初めて聞いた!知らなかった。肩の怪我とhip strengthの関わりや、lumbopelvic controlの関わりの文献もいくつか挙げられていたので、そっちも調べてみようっと。Pulse trainingという種類のリハビリも初めて耳にしました。これも調べる!

#4: Seasonal Effects on Concussion Assessment Performance
最後はこれ!友人の発表があったのでわくわく向かいました。面白かったのは彼の研究だけ(『Cumulative Change in Ocular Near Point of Convergence in Response to Football Sub-concussive Head Impact』)だったのでそれをまとめます。昨日も書いたようにNear Point of Convergence (NPC)というのは、被験者の鼻先に物体をどんどん近づけていって、被験者が焦点を合わせられなくなる(物体がふたつに見える)ようになった時点での鼻先から物体の距離のことを指します。
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現在は例えば脳震盪の診断のほとんどは患者のself-reported symptomsやBalance testなどに基づいて行われていますが、本当に患者が素直に感じている症状を我々に隠さず教えてくれるのか、そして、バランステストは足首や膝の怪我など、脳震盪以外の影響も大きいのでは、ということから、このNPCテストがこれから有益な診断テストになりえるのでは、という話なのです。ちなみにこの発表ではふたつの研究を紹介していたのですが、一つ目は1) Laboratory Setting: 被験者に10回軽くサッカーボールのヘディングをしてもらい(平均14.5g)、その前後のConvergence Test結果を比較をする。二つ目は2) Field Setting: NCAA D-1のフットボール選手の受けるHead impactをマウスガードを使って計測し、その平均別に被験者をlow-impactとhigh-impactグループに分ける。そして、シーズン中の練習前と後のNPCを計測し、変化を記録、というもの。1)では、ヘディングという軽い頭部への衝撃で、もちろん被験者の誰も脳震盪を起こさなかったにも関わらずヘディングの直後も24時間後もNPCに統計的に有意な差が認められた(=NPCの距離が長くなった)。つまり、脳震盪を起こすほどではない軽い衝撃でも、oculomotor機能に与える悪影響がはっきりと見て取れる、という結果があったのに加え、2)ではhigh-impactの選手たちは練習を重ねるにつれ、徐々にNPCにはっきりとした差が出始め(high-impactの選手たちのNPCが上昇、low-impactは変わらず)、上昇してしまったNPCはpost-seasonにならないとbaseline値まで戻らなった。つまり、1)と同様に、脳震盪を起こすほどではない軽い衝撃でもoculomotorへのダメージは蓄積されるようで、もしかしたら他の脳震盪テストには表れないような微々たる変化でもNPCはそれを感知することができる、且つ、完全に復活するまで時間を要す、ということですかね。後で個人的に質問してみたら、実際に脳震盪と診断された選手はこの研究内で3人いたそうで、『sub-concussiveによる上昇値と、脳震盪と診断された選手に確認されたNPCの上昇幅はかなり差がありました』とのこと。今後の研究で『この程度の上昇はsub-concussive(願わくばreversibleで、いつくらいの期間休息すれば良し、等も治療アプローチもわかると尚よいですね)』とか、『この上昇は脳震盪と言ってよい(=診断ツールとして使用可能)』みたいな明確な数値化がされると尚使い勝手が良いですね!診断ツールとしてのNPC…簡単だし、お金もかからないし、全然アリだなー。最近の脳震盪診断界隈ではNPCとdual-taskがトレンドのようです。もうちょっと学んでみよう!
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  by supersy | 2016-06-24 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

NATA Clinical Symposia in Baltimore その1。

久しぶり(3年ぶり?)にNATA Clinical Symposia & AT Expoに来ています!Maryland州に来るのは初めてです。昨日は友人らとInner Harborのあたりを散歩してきました!きれーい。
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さて、今日は学会1日目でした。学んだ内容を覚書しておきます。

#1: Developing Emotional Intelligence
Emotional Intelligence (EI or EQ)とはIntelligence (IQ)とは異なる、1)どれだけ自分や他人の感情を正確に見極め、表現できるか、そして、2) 自分や他人の感情をいかに効果的に制御できるか、という能力を指すらしいのですが、生まれ持つIQと違ってEQは誰でも獲得できる技術、なんだそうな。実は仕事での成果の58%はIQでなくEQに起因し、EQと所得額は直接相関があるんだそうですよ。感情的知能指数があれば、お金もより稼げる(ような仕事につける)ってわけです。習得はself awareness→self management→social awareness→relationship managementの4つのステップに要約されるそう。中でも面白かったのが、「自分がイラッとさせられやすい"Hot Button"が誰か、何か、見極めろ!」というコメントでした。そしてその上で、ネガティブな感情を見せない訓練をしろと。「『あんたは悪くない!』と言ってくれる友人は大事。でもそれと同じくらい、『それはあんたが悪いわよ、直しなさいよ』と正直に言ってくれる友人も大事にしなさい」とか、「私は妹と毎日愚痴を言い合ってたけど、一日一分ずつっていうルールを決めてたの。愚痴を思いっきり言っていいのはきっちり一分だけ。一分を超えてしまったら、次の日は愚痴を言うのは禁止、っていうルールよ。これはとても生産的で良かったわ!」とスピーカーさんも話してました。へー。

#2: Understanding Skeletal Muscle Regeneration - Implications for Management of Muscle Injuries
筋肉の怪我にも色々な種類がある。それらはcontinuumで現すことができて、DOMSから金銭位の完全断裂まで様々。DOMSは筋繊維の再生(regeneration)で完全に回復が可能だけど、断裂はそうはいかない。はて、どうすれば再生を促せるか…という面白そうなプレゼン内容だったんですけど、NF-kBプロテインがどーのとかいう話になってきて、生理学が苦手な私にはこう、イマイチ現場で使えるところまでの光が見えてきづらい話でした…。知識不足でごめんなせえ。ところで、このプレゼンでStrainという言葉が使われていたんですけど、これは例の新・筋障害の名称が定着しなかった、ってことでいいんすかね?

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#3: Pioneering Concussion Research
15分間のプレゼンx5の楽しいセッションでした!最初は『The Ability of an Aftermarket Helmet Add-on Device to Attenuate Impacts During Drop Tests』というやつで、つまるところ、Guardian Capと呼ばれているアメフトのヘルメットに装着できる外付けのクッション(↑)を使うことで実際に頭部にかかるインパクトが減るのかどうか、という研究結果の報告でした。研究にはDrop Testと言われる実験方法(↓)を用い、様々な向きからヘルメットをどかんと落として硬い物体とぶつけ、その衝撃をGSIで測る、というものです。メーカーは「33%も衝撃を減少!」と謳っているそうですが、実際はGuardian Cap無しと比較して統計的に有意な差は見られなかった、つまり、頭部にかかるインパクトには特に意味なし、という結果だったそうで。「ちなみにNOCSAE認定のヘルメットにこういったAftermarket add-on deviceの取り付けをしてしまうとNOCSAE認定そのものも無効になってしまう、ということも是非ご考慮ください」だそうです。
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『Power 5 Conference Concussion Management Plans Adherence to NCAA Guidelines』というプレゼンは、ものすごく簡潔にまとめると、米国大学のATはそのほぼ全てが(94.3%)かなりきちんと脳震盪に関するポリシーを作っているけれど、RTL (Return to Learn…学校復帰)に関しては不慣れで、まだ作り切れていない印象。現場のATはもっとそこらへんの提携、教育をしっかりする必要があるし、教育者の皆さんは若い子らにこのへんの教育を是非力を入れる必要ありです、という内容でした。
『Adolescents with Convergence Insufficiency Demonstrate Dual-Task Gait Stability Deficits Following Concussion』では、普通に歩かせては特に異常が見られない脳震盪患者でも、引き算をさせながら歩かせると(Dual-task gait)途端に足が左右に振れ始め、Gaitが乱れるという報告は面白かったですね。あとは、やっぱり視覚に影響が出る患者も30-65%程いるので、どれほど近い物体にも焦点を合わせられるか、という「より目テスト」Convergence Testをして、鼻先からの距離が5cmの物体を見られるかどうか確かめるようなoculomotor assessmentもいいのでは、という提案も面白かった。convergence deficitの視覚障害がある脳震盪患者は、altered gaitも一緒に持ってることが多いそうですよ。
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『A Helmetless Tackling Training (HuTT) Intervention to Decrease Head Impacts in American Football』はなかなか良かったなぁ!ヘルメットがあるからこそヘルメットを「使」って攻撃しようという意図が生まれてしまう…これは1950-60年代にヘルメットを作る技術が上がり、硬い素材の丈夫なものが出てきた影響で逆にヘルメットを使ってぶつかっていくspearingというタックルが生まれてしまい、死亡事故が急増したことにも裏付けられています。皮肉なもんですよね。だったら、練習にヘルメット無しのタックル練習を取り入れれば、タックルに頭部を使うという意識が薄れ、同じ量の練習・試合をこなしても結果的に頭部にかかるインパクトが減ったりするのでは?というRCTの紹介でした。50人のNCAA D-1アメフト選手をランダムにHuTTグループとコントロールに分け、HuTT組は通常の練習に加え、ヘルメット無しのタックル練習をシーズン前、中に実践(コントロールはその間、ヘルメットをかぶってポジション別の通常練習)。結果、タックルのやり方に違いが出たのか、HuTT組のほうがシーズンを通してのHead Impactがはっきりと少なかったようですよ。「ヘルメットを敢えて使わない時間を作る」ことで、タックルに対する意識を変える。脳震盪を減らしていく上で、これからのinterventionのカギにもなりそうですね。
最後は『Factors Associated with Symptom Resolution Following Concussion in Cadets at the United States Military Academy』。これは、脳震盪を受傷した患者がどれくらいで回復(=fully asymptomatic)するかの日数を予測できる要素はないか?という研究で、結果がなかなか面白かった。意外にも、一番予測に使えるのは「受傷後24時間以内に調べたSCAT3 Symptom Checklist(↓)の結果」なんだそうです。Symptom Scaleが2点上がる毎に、完全回復まで1日伸びる、そして、Symptom Severity Scoreは5点毎に1日余計に伸びる…という分析結果が出たそうな。これがね、面白いことに、受傷から比較的すぐ(24時間以内)のchecklist結果であることが大事なんですって。数日経っちゃうと予測効果ないみたいですよ。へーへー。

#4: Malignant Hyperthermia in Physically Active Populations
これが今日一番の収穫だったかも!もうちょっと勉強して、後で別途にまとめます。

#5: Lead Them to Water but Don't Force them to Drink! Recommendations to Prevent Hyponatremia
これは正直ちょっと混乱したというか…。言いたいことはわかるけどその表現でいいのか、とおもうことはちらほら。要約すると、水分補給と熱中症のリスク、そして筋痙攣(cramp)のリスクは関連性が見られないから、それらの予防のために「水を飲め!」と騒ぎ立てるのは間違い。「のどが渇いていたら既に体重の2-3%の水分を失っている。そしてそれはパフォーマンスに悪影響を与える」というstatementもエビデンスを掘り返してみると統計的有意さはあっても臨床的有意さは無い、と(そこのエビデンスの紹介はなかったけど)。そういったイメージが人々の頭に残りすぎて水分を過剰摂取することで逆にHyponatremiaの状態を作ってしまう。水分補給は、のどが乾いたら飲む、乾いていなかったら飲まないで十分、というものでした。Hyponatremiaについては以前もまとめましたね。
「drink to thirst」「clean urine is not normal」「athlete should lose weight during exercise」など、確かになるほど、と思える文章もあり、水は神様!みたいになりがちな我々の思考を改めさせてくれるものとしては大いに価値があったけれど、「今は筋痙攣の原因は脱水である、という説の代わりにAltered Neuromuscular Control Theoryができつつある。でもまだ未完成で、現時点では穴も多い」らしく、しっかりと代わりとなるセオリーがせめて完成してくれないと私の中で完全に情報の書き換えはまだ行えないなーという印象。全然文脈には関係ないですが、同じsodium量を含む液体なら、口から飲むよりもIVで体内に入れたほうが身体に留めて(retain)おきやすいんだそうです。飲んじゃうとすぐ排出されちゃうんだって。へー。

そんなわけで学びの多い一日でした!明日も楽しんできまーす。
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  by supersy | 2016-06-23 20:00 | Athletic Training | Comments(0)

Standardized Patientになってみました。

どうも、年に一度くらいは恒例になっている「ダラスで足止め」を喰らっています。せっかくだから何かプロダクティブなことを、ということで今のうちにブログ更新!
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●教育界のトレンド
Standardized Patient (SP)って知っていますか?直訳するとスタンダード化された患者さん、ってことになるんですけど、スタンダード(基準)が設けられた患者ってどういうことなんですかね?
実はこれ、最近の医療教育界のEmerging Trendなのです。アスレティック・トレーナー(AT)が診る患者さんは「朝起きたら腰が痛くて」「リバウンド取りに行ったら空中で接触されて肩でぱきってなんか音がした」など、様々な主訴(chief complaint)を訴えてきますよね。文字通り頭からつま先まで、男性も女性も、急性も慢性もなんでもアリです。どんな症例が来ようとも、患者とコミュニケーションの限りを尽くし、評価を行ってどう症例を改善していけるか探るのが我々プロのATの仕事ってもんです。

更に言うと、教職を担っている人間にとって、いかに今のAT学生たちにどんな症例にもどんな患者さんにも対応できる臨床力をつけてもらうか、というところは常に大きな課題なわけです。もちろん学生は授業で頭からつま先まで、様々な障害・疾患について学びますが、それら全てに実際対応できる現場力がつくかどうかはまたちょっと別の次元の話なのです。
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●試されるシミュレーション(再現)力
この現場力・臨床力を培うのには繰り返し練習・練習してリアルな経験を積み重ねていく以外の近道はないわけですが、だからといって様々な症例を実際に抱えた患者さんを連れてきて学生相手に診断の練習をさせよう、というのはちょっと現実味に欠けます。…であれば、細部まで再現された模擬症例を実際の現場に限りなく似せた環境下で学生に与え、評価やコミュニケーションの仕方を練習してもらうことで、現実的且つ限りなくリアルに近い体験を学生に積んでもらう、というのはどうでしょう?

まさにこの発想がStandardized Patientなのです。SPになった人物は新しい名前と設定、そして主訴からそこに至るまでの既往歴を与えられます。例えば「鈴木啓一」さんはメタボが気になって3週間前からジム通いを始めたものの、徐々に肩に違和感を覚え、それが痛みに代わり、ついには今朝になって右腕が挙げられなくなってしまって…という感じです。「肩の痛み」を訴えて来院した「鈴木啓一」さんを、学生は「こんにちは、私は○○と申します」と迎え、「今日はどうなさいましたか?」とイチから評価するわけです。え、そんなの結局ウソモノなんでしょって?いえいえ、模擬症例が医療のプロによってきちんと設計され、SPを演じる人が適切なトレーニングさえつめば1-4 98%の学生が「まるで本物だった」というほどの5 リアリティーを出すことが可能なんです。学生からの「自信がついた」「これからの現場での診断にこの経験は絶対に活きてくる」という声にあるように、その見返りも他の方法では得られないものばかり。6

●AT教育に於けるStandardized Patient
ちょっと前置きが長くなりましたが、今回の博士課程の授業ではAT教育に於けるSPの先駆者の一人であるDr. Armstrongからそのノウハウを叩き込んでいただきました。実際に我々もSP側になる体験ができたものよかった。トレーニング、思った以上に細かかった!怪我に関わる諸症状はともかく、家族構成、性格、職業や趣味、(今回の怪我に関係のない)既往歴など、全てがスタンダード化されてるわけですからね。細部にわたってその人物になりきる必要があるのです。全体の流れはこんな感じでした。

1. 事前に先生が用意しておいてくれたトレーニングビデオを見て、小一時間かけて内容を頭に叩き込む(かなりの詳細が含まれていたので、私は約一週間前に一度、前日に一度の合計2回見ました)

2. 当日に先生に「貴方の名前は?」「圧痛の箇所は?」「手のしびれの有無は?」など矢継ぎ早に質問され、シナリオが頭に入っていることを確認

3. 実際にクラスメートと組み、患者役とAT役の両方をこなす

…実はこれでも超・短縮版トレーニングだったらしく、本来なら医療の知識が全くない一般の学生をトレーニングするため、数週間にわけて少なくとも4-5時間かけるそう(我々は知識があるので割愛しましたが、例えば触診時にどこを触られたら圧痛があるとか、こういう風に動かされたら痛みを訴えてね、とか指導が必要なので)。演劇科の学生にお願いするといいそうですよ。向こうは向こうで、こういった経験を履歴書にも書けるし、win-winな関係が築けます。
Dr. Armstrong曰く、実際に学生がSPと接しているときは、なるべく1対1の状況を作ってあげたほうがいい、そうで、教官が部屋の隅っこにいてせこせことメモをとっているよりは、部屋にいるのは患者と学生二人きりにして、映像を録画しておいて後で(もしくはこんな立派な施設があればリアルタイムで↓)教官が見て採点する、という流れが理想的なんだそうな。で、学生にはきちんと自分のパフォーマンスを確認するためにも、終了後には動画を見せ反省させるのだと。なるほどなるほど。
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●SP体験を終えて
実際に体験してみて、なるほど、これはいいわ!と素直に感じました。ただ、実際に教育に落とし込んでいこうとすると、いくつかの障害がありそうです。一番はやはり、リソース不足。7 Dr. Armstrongのように研究をバンバン出していて研究費がある大学はSP患者を演じてくれる人に報酬を払えることで十分な人材の確保ができますが、そういった予算が無いところが大半でしょう。報酬無しにこれだけのトレーニングをこなすモチベーションがある一般の人をどうこの教育プログラムのメンバーとして取り込めるかは大きな課題です。加えて、せっかくトレーニングを積むのであれば、そこから2-3年と繰り返し使えるような環境が理想的。例えば、先の「鈴木啓一」のシナリオを、「鈴木啓一・啓子」として男女それぞれ2人ずつ、合計4人の学生をトレーニングしたとします。しかし翌年、そのうちの2人が学業や経済的な事情で大学を離れざるを得なくなったら…下肢や感染症など、他のシナリオ用のSPをトレーニングする傍ら、新たに二人の「鈴木啓一・啓子」さんを探し出し、トレーニングしなければなりません。トレーニングに割く時間がシナリオが増え、SP患者が去るたびに雪だるまのように増えてしまうのはなかなかしんどい。
あとは、実は今、実際にSP用のシナリオを課題で作っているんですが、これもかなり時間のかかる作業です。「全てをスタンダード化しなければならない」というところがね。せっかくだから学びの多いシナリオを…ひとクセつけて、でも明確に…学生のパフォーマンスの採点基準は…とやっていると、これは軽く数日以上かかる作業です。さらにこのあとトレーニング方法を考えたりしなきゃいけないわけですから…。数名の教授やATスタッフとコラボレーションできればともかく、一人でこれをやっていく時間は今の私にはないかも。

ともあれ、これが将来的に医療教育の標準装備になっていくことは確かです。興味が出た方は、下の文献など読んでみることをお勧めします。全米でも様々なトレーニングがあるようですし、Dr. ArmstrongもNATAで幾つか講演をするそうですよ。私ももっともっと勉強を重ねていきたい分野です。

1. Walker SE, Armstrong KJ. Standardized patients, part 1: teaching interpersonal and clinical skills. Int J Athl Ther Train. 2011;16(2):38–41.
2. Armstrong K, Walker S. Standardized patients, part 2: developing a case. Int J Athl Ther Train. 2011;16(3):24–29.
3. Armstrong K, Walker S, Jarriel A. Standardized patients, part 3: assessing student performance. Int J Athl Ther Train. 2011;16(4):40–44.
4. Walker SE, Armstrong KJ, Jarriel A. Standardized patients, part 4: training. Int J Athl Ther Train. 2011;16(5):29–33.
5. Walker SE, Weidner TG. Standardized patients provide realistic and worthwhile experiences for athletic training students. Athl Train Educ J. 2010;5(2):77-86.
6. Armstrong KJ, Jarriel AJ. Standardized patient encounters improved athletic training students’ confidence in clinical evaluations. Athl Train Educ J. 2015;10(2):113–121.
7. Walker SE, Weidner TG. The use of standardized patients in athletic training education. Athl Train Educ J. 2010;5(2):87-89.

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  by supersy | 2016-06-14 13:00 | Athletic Training | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル7月号発売。

つい最近まで日本にいたと思ったらアメリカはユタ州へと帰ってきて濃密な5日間を過ごしています。博士課程の学期もこれで7学期目(二年と一学期)、こっちにくるのもこの学期を終えれば残すところあと一回になりましたが、相変わらず楽しい毎日です。いつもは大学近くのモーテルに泊まっていたのですが、今回は仲のいい5人で「家でも借りちゃおうか!」ということでレンタルハウスしてます。バケーションハウス?とでもいうのかな?これがなかなかどうして、モーテル宿泊よりかなりお安くすむのです。連日みんなででっかいテーブル囲んでビール飲みながらあーでもないこーでもないとパソコンとにらみ合いっこ。課題とかプレゼンの準備とか。
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パティオからの眺めが素晴らしい…。



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さて、月刊トレーニング・ジャーナル7月号が発売になっています!
連載二回目の今回はEvidence-Based Practice (EBP= エビデンスに基づく実践)をテーマに、そもそもそれが何なのか、何故このコンセプトがここまで叫ばれるようになったのか、実践していくうえでどういう障害の存在が考えられ、それらに対してどういう解決法が考えられるか…などなど書いております。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



この流れで言うのもなんですが、5月25日(水)と6月1日(水)に東京は立川で「エビデンスに基づいたスポーツ傷害診断: 基本から応用まで」と「エビデンスに基づいた治療介入: 基本から応用まで」の講習をしてきました。今回の連載で書いたことをもっと濃密に色を塗りこみ、且つ臨床的に噛み砕き、実際に我々が評価を行う上で・治療介入のプラン建てをしていく上で、これらのエビデンスをどう判断材料の一つとして使っていけるかという実践の練習まで持って行ってます。エビデンスの解釈とそれを臨床へ繋げる考え方の練習を繰り返し、「意外と難しいもんでもないのね」「エビデンスって分かってきたら面白いわね」「これならこれからも現場で使っていけるかも」と思っていただけることを目標としています。
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右下の写真はポイントを絞って英文学術論文を読む練習をしているところです。何を探すべきかわかっていれば英語論文もそんなに怖いもんではありません。トウケイテキなユウイサとリンショウテキなユウイサの違いとは、はて?

この夏のEBP一般講習はこの2講習で終わりましたが、年末か年明けにでもまた日本でEBP講習が開催できればと思っています。診断編、治療介入編に加えて予防医学編まで提供できればとりあえずEBP基礎3講習としてバランスが取れるかなと思うのですが、そこまでいけるかしら、どうかしら…。要望があれば出張という形で(closed course、内部募集のみで、とか) 病院や学校でもこういった内容の講習を行うこともあります。希望などありましたら直接ご連絡ください。

私の勉強部屋であるこのブログであれこれ告知をするのはそんなに好きでないのですが、ああいう記事(『EBPとは』)を書かせていただいた以上、EBPを(楽しく)勉強できる場を少しでも多くの皆さんに提供する責任もひしひしと感じています。断っておくと、私がこれらの講習で教えている内容は全く特別でもなければ超クールなわけでもありません。むしろ超・基本です。この内容をしっかりと教えられる人材は日本にも私以外に山のようにいることでしょう。私の講習に来なければ絶対に学べないというつもりは毛頭ありません。独りでも(ちょっと大変でしょうけれども)勉強できないことはないと思います。

願わくばこれらの内容がアタリマエに大学・専門学校で教えられるようになり、新たに世に出てくるAT・PT・OT・MDさん達ら全員にこういう基礎力が満遍なくつくようになればいいですよね。そして、こういう教育改革で取り残されがちな「既に資格を有している現場の人間」にも等しく学ぶ場があれば理想的だと思うのです。そこらへんの穴埋めのために「独りでは心許ない、丁度よい機会はないものか…」と思っている方が私の講習を好きなように使ってくだされば幸いですし、ほかの組織や人が同様の講習を提供しているならばぜひそういうのも多くの方に参加してみてほしいと物陰からこっそり願っています。

そんなわけで今回の講習に参加してくださった約70名の皆さん(若い学生さんも来てくれました、うれしい!)、本当にありがとうございました。特に治療介入編は内容をかなりいじる機会もあり、私としても非常に充実していました。皆さんの需要や学びのスタイルに合うよう少しずつパワーアップさせていくのが目標です。予防医療編もがんばってつくろう。おー。
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  by supersy | 2016-06-11 12:30 | Athletic Training | Comments(2)

足首と横隔膜のつながり: CAI患者の左横隔膜は呼吸筋としての機能が低下している?

ちょっとこれは書かずにはいられねえ!ってんで、こんなブログをアップします。
私の古い友人であり、このブログにもたびたびコメントを書いてくれたりもしていた寺田君がつい最近 (一週間前くらいです、ほんとに)論文を発表しました。彼は慢性足関節不安定症 (Chronic Ankle Instability, 以下CAI)の専門家で、彼自身もう数々の研究を世に送り出しているわけなんですが、なんと今回の内容はCAIの患者にどういった横隔膜の変化が見られるか、という視点からぶった切ってます。PRIとは何の関わりもないところからこんな研究が出てくると思わなかったので (今までの彼の研究とはちょっと路線が違う印象…)、きゃーきゃー言いながらこの論文を読んでました。内容をまとめます!

一応断っておくと、今回は知人の論文であるばかりか、まさかその内容ががっつりどっぷりPRIに深く関わるものでもあり、私自身冷静に判断しきれていない可能性が十分にあります。このまとめは話半分に読んでみて、気になる方はぜひご自分でfull textを読んでみてください。



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この論文1のイントロで寺田氏らは足関節捻挫がCNSに与える影響を指摘。捻挫から二次的に起こる筋制御および姿勢制御の変化など、CAIという怪我が足首だけでなく全身に広がることを踏まえ、「横隔膜は呼吸だけでなく姿勢制御にも関わる重要な筋肉。もしかしたらCAI患者は横隔膜の機能が低下しているのでは(=姿勢制御力の低下もこれで説明可能?)」と仮説をたて、それを検証しています。

被験者となったのは「日頃から運動している」というCAI患者27人 (男性4名、女性23名、平均22.58±3.33才、但し最も最近の足関節の捻挫から最低でも3ヶ月経過済み)と足首に障害を抱えない健康な28人 (男性9名、女性19名、平均21.04±1.88才)。ちなみに誰がCAIという診断カテゴリーに当てはまるかは既に国際足関節協会(International Ankle Consortium)が推奨しているガイドラインがあり、2 この研究でもそのガイドラインを用いて客観的・主観的の両観点から総合的に定義しています。ふむふむ。ここまでで気になるのは女性被験者の全体的な多さ(76.4%)とグループ間の男女差くらいですかね(CAIグループ女性率: 23/27 = 85.2% vs コントロールグループ: 19/28 = 67.9%)。

実験の手順は至ってシンプル。被験者に仰向けでテーブルに寝てもらい、静かに呼吸を繰り返してもらう(quiet breathing)。その間、息を吐き切ったとき、吸い切ったときのそれぞれの横隔膜の筋の厚みを超音波画像を使って測定するというものです。見え方で言うとこんな感じになるみたい(↓)。…で、横隔膜は呼気でリラックス→薄くなり、吸気で収縮→厚みが増すわけですから、筋肉の厚みの増減を見れば一呼吸によってどれだけ収縮したか、というcontractility(収縮性)が測れますよね、というわけです。
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結果は…
 左横隔膜
   CAI:    0.14±0.04から0.16±0.05cmへ 収縮率21.62±11.76%
   コントロール: 0.14±0.04から0.19±0.05cmへ 収縮率29.07±12.32%
   グループ間の収縮率の差: p = 0.03, Cohen's d = -0.62 (95%CI -1.14 to -0.07)

 右横隔膜
   CAI:    0.15±0.04から0.18±0.05cmへ 収縮率22.93±14.66%
   コントロール: 0.14±0.04から0.18±0.05cmへ 収縮率27.43±17.78%
   グループ間の収縮率の差: p = 0.31, Cohen's d = -0.28 (95%CI -0.80 to 0.26)

…というわけで、CAI患者にコントロールと比較して著しい(p = 0.03)収縮率の低下が左横隔膜でのみ確認できました。Effect sizeはmoderate (0.40≦d<0.80)のカテゴリーに入り、しかも95%CIがゼロを挟んでいないため、統計的だけでなく臨床的にも有意な発見、ということになります。

考察で寺田氏らは1) CAIによるsensory inputの変化がneuromusularレベルでのmaladaptationを引き起こし(=本来『通常』でないaltered sensationを『通常』と認識するようになる)、それが慢性的に患者の身体で続いた結果、左横隔膜の収縮率の低下として我々の目に見えるようになるのか、それとも 2) 受傷によって起こされる精神的なストレスが交感神経を優位にし、その結果、呼吸が変わって左横隔膜に病理が出るのか…というふたつの説を挙げています。

ここらは論文から直接の引用になりますが、
"Incorporating diaphragmatic breathing exercises might have beneficial effects in patients with CAI."
慢性足関節不安定症のある患者は、横隔膜を使った呼吸エクササイズで症状の改善が見られるかもしれない

"[Therefore,] altered diaphragm contractility could be a potential source for clinical deficiencies within patients with CAI."
慢性足関節不安定症の患者に生じている臨床的欠陥は、変わってしまった横隔膜の収縮性によるものなのでは

"Because of neural and mechanical differences between right and left hemi-diaphragms, an alteration only in the left hemi-diaphragm may strengthen asymmetrical patterns by relying more on the right side, possibly leading to the loss of the ability to work the right and left hemi-diaphragms together."
左右の横隔膜は神経的、物理的にそもそも異なる。故に、(今回の研究で実証されたような)左だけの横隔膜に見られる変化は「(呼吸を)右横隔膜に頼りがち」という横隔膜の左右非対称性を更に強めるものとなり、結果として右・左横隔膜の協調性は加速をつけて失われてゆく

…まさかこういう言葉や表現がPRIの教育を全く受けていない人間から出るとは…!という感じで、私自身感動に近い感情を覚えています。もちろん、この研究は完璧完全ではありません。例えば、この研究では患者を仰向けに寝かせた状態で横隔膜の活動を見ていますが、これは実際に我々がupright(抗重力)の姿勢を保っているときの呼吸と等しいと言えるのか (これは著者自身も研究で「limitation」として挙げています)?「ゆっくり」「普通に」呼吸をして、と言われて、各被験者が全く同じレベルでの呼吸を実現できたのか (これも著者ら自身、spirometerなどで実際の呼吸量を計測する方法もあったと本文内で述べています)?CAIは右・左足関節のどちらに多く確認されて、それは横隔膜の左右差と関連性は見られたのか?これらの患者に実際diaphragmatic breathingの治療介入をして、左横隔膜の収縮率がどれだけ上がるのか?…まだまだこれからの研究で確認されなければいけないことは多々ありますが、とりあえず「足首に問題のある患者さんの横隔膜、左があまり呼吸筋として活発に動いてないっすわ!」という結果が出たというだけでも私には十分面白いものです。

ちなみに寺田君は今年の4月から日本に完全帰国して立命館大学で教授として活躍中です。日本にはマジでこういう宝がごろごろいるんですから、一人でも多くの方にそのbenefitが行くようにしてほしいです!「ブログに書いてもいい?」と聞いてすぐに「いいよ!」と言ってくれるその瞬発性、ありがとう!これからも私のような非・研究者に色々教えてください。

1. Terada M, Kosik KB, McCann RS, Gribble PA. Diaphragm contractility in individuals with chronic ankle instability [published online May 26 2016]. Med Sci Sports Exerc.. 2016. doi: 10.1249/MSS.0000000000000994.

2. Gribble PA, Delahunt E, Bleakley CM, et al. Selection criteria for patients with chronic ankle instability in controlled research: a position statement of the International Ankle Consortium. J Athl Train. 2014;49(1):121-127. doi: 10.4085/1062-6050-49.1.14.

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  by supersy | 2016-06-02 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

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