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脳震盪から復帰した選手は、下肢の怪我を起こしやすい?最新エビデンスまとめ。

帰国の日程がこっそり迫っています!にほんにほん!早く帰りたくてそわそわ!もちろん今学期をしっかり締めくくってからですけどもー。気持ちがうわついてー。

さて、最近は怪我の影響が全身の筋肉のfiring pattern脳そのものに影響を及ぼすことをつらつらと考えていて、実に何をもって患者が怪我から「完全回復した」と見なすべきなのかは難しいものだなぁなんて考えています。…というか、何と表現すべきなんでしょうね、人の身体はイキモノなので、きっと刻一刻と変わり続けているのです。だからこそ、pre-injuryの状態に身体が「戻る」ことなどきっとないのでしょう。環境に一番辻褄が合うように変化・適応しつづけるものだから。我々はセラピストとして、正しいinputを身体に送り、我々の狙うoutputを紡ぎ出すことが私の考える『治療』の形にひょっとしたら近いのでは…という気もしています。って、よくわかんないですかね。

脳の影響を考えるなら、忘れてはならないのは「脳震盪からの回復、競技復帰」というトピックです。脳震盪そのものについてはこのブログでも何度も書いてきましたが、実はちゃんとまとめていなかった題材に、「脳震盪から競技完全復帰後の脳震盪以外の怪我のリスクの上昇」というものがあります。今回まとめる論文は2015年12月と2016年3月に発表されたものなのでどちらも最新といっていいかと思います。
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まずはこちら1から。脳震盪を受傷するとバランス能力が落ちることはよく知られていて、加えて脳の機能低下によって集中力やリアクションタイムも落ちることから、セオリーとしては「脳震盪からの早まった復帰は怪我のリスクを高める」と言われてきました。そんなだから我々も脳震盪の疑いがある・受傷した患者に対して様々なバランス能力や記憶、判断力等の検査をするわけですが。

だからこそ脳震盪を受傷した患者には、厳しいRTPプロトコルが設けられているのだろうって?その通りです。各協会からの声明に、各州で制定された法律…今やアメリカでは脳震盪の恐ろしさは一般の人も広く知るところとなっており、完全に症状が消失しないうちの競技復帰はもはや「世間が許さない」と言っても過言ではないでしょう(例外もまだもちろんありますが)。「早まった復帰」そのものが減少傾向にあると言っていいと思うんですよね。

しかし、先の話に戻りますが、症状の消失=脳震盪から完全に回復と言ってしまっていいものなのか?9割近い脳震盪患者が7~10日で症状が消える、という統計がありますが、その時点で彼らの身体は、脳は本当に競技復帰の準備ができているのか?例えば、一度脳震盪を起こした選手は、二度目の脳震盪を起こす確率が3倍に跳ね上がる、なんて統計もありますが、2我々が思う「満を持して」の復帰が実は「時期尚早」であり、目に見えにくいだけで「怪我リスクの上昇」の餌食になってしまっている患者はもしかしたら今でもいるのでは?ここらへんに一石を投じているのが上の論文なのです。

ざっくりと解説します。この研究は約3年間に渡る比較的長い時間スパンで行われており、脳震盪を受傷したNCAA Division-Iの大学生アスリート83人のうち44人をランダムに選択。これらの選手は1) 大学在学中に脳震盪歴は無し、2) 画像診断が行われた場合、異常は見られなかった、3) 大学のスポーツ医療スタッフにより「脳震盪」と診断された、という条件を満たしており、性別・スポーツ・試合におけるプレー時間・年齢・身長体重がマッチしたアスリートをコントロールとしてidentify、比較対象として分析しています。「脳震盪患者ひとりあたり2人のmatched controlを用意したくて頑張ったけど、条件が厳しくて2人見つからないケースもあって、最終的にはコントロールグループには58人集めたよ」だそうで、グループサイズとしては44人 vs 58人ですね。面白いデザイン…なかなかよく考えてあります (唯一疑問が残るのは、なぜinclusion criteriaを満たした83人全員を分析しなかったのかということ。「そこからランダムに44人」選んだjustificationは、はて?)。

で、1) 脳震盪の前後90日、2) 脳震盪の前後180日、3) 脳震盪の前後365日、という3つの異なる期間で下肢に起こったmusculoskeletal injuryを記録してそのリスクを分析。ちなみに筋骨格損傷(musculoskeletal injury)とは、この研究では選手の自己申請ではなく、certified AT、もしくはチームドクターによって正式に診断されたもののみを指します。
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…で、これ(↑)が結果なんですが…見応えがありますね。左の「Group with Concussion」の1000アスリートあたりの脳震盪のincidence、RRを見てみると、脳震盪前後90日ではmarginally statistical difference (RR 2.10, 95%CI 0.91-4.81, p=0.07)、180日と365日ではそれぞれ統計的に有意なリスクの上昇が確認されています(180d RR 2.02, 95%CI 1.08-3.78, p=0.02; 365d RR 1.97, 95%CI 1.19-3.28, p=0.01)。前後一年間を比べてもこれだけハッキリとリスクの差が出るとは!うぅむ!ちなみに右の「Control Group」は、同じ時期に練習していた比較対象の選手は特に怪我のリスクの上昇は確認できなかった、という内容です。だから、たまたま急に練習のintensityが変わったとか、雨降りが多かったとか気温が上がったとか…そういう脳震盪以外の要素の影響は除外できるわけですね。脳震盪組とコントロール組の直接比較は下の表(↓)です。
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脳震盪前は下肢の筋骨格損傷のリスクに両グループの差は無く、脳震盪受傷後はRRが1.47~1.64へと上昇。統計的に有意な差が確認されたのは365dでの比較(RR 1.64, 95%CI 1.07-2.51, p=0.02)でした。ちなみに、脳震盪受傷前に両グループの違いが見られないことから、『脳震盪を起こす奴は単に怪我全般を起こしやすい(injury-prone)んだろ』という説を論破しています。これも頭のスミに置いておくと面白い。

これをまとめると、「脳震盪受傷後、現存のプロトコルを用いて『異常なし』と協議復帰を認められた選手でも、そこから少なくとも一年間、下肢のmusculoskeletal injuryを起こす可能性は、脳震盪を起こす前に比べて約2倍に上がる(95%CI 1.19-3.28, p=0.01)」ということが言えます。考えるとゾッとするのが、「では、これらの選手を競技復帰させたのは果たして正解だったのか?」というところ。「患者の自覚と、我々の診断力では見つけがたい『異常』が患者の身体のどこかに残ってしまっている」と考えざるを得ません。更に、「もっと何か、下肢の怪我のリスクが下がるようなリハビリや治療も脳震盪からの競技復帰のプロトコルに入れなければならないのか?」 「だとしたらどんなものを?歩行トレーニング?バランストレーニング?それとも脳のneuroplasticityをターゲットにした治療法?」…などなど、疑問と将来の研究の可能性が無限に広がってきます。

もうひとつ、非常に似た研究ですが、こちらも。3
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研究としてはこちらのほうがシンプルですかね。脳震盪から競技復帰後、90日間の下肢のmusculoskeletal injury受傷率を、matched controlと比較。対象は前の研究と同様NCAA Dividion-Iの大学生アスリートで、脳震盪組には87人の患者をincludeしており、研究の規模は前回のものよりも大きいと言えます。
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で、Resultはこちら。90日以内に脳震盪組の17.2%(87人中15人)の選手が下肢の怪我を受傷したのに比べて、コントロール組は9.3%(182人中17人)。ORにして2.48 (95%CI 1.04-5.91, p=0.04)と、Lynall氏らの研究1と似た結果が出ています。

もしかしたら、「これは脳震盪の後遺症というよりは、脳震盪によって運動ができなくて、選手がdeconditionしちゃっただけなんじゃないの?」と分析する方もいるかもしれません。しかしBrooks氏らの研究3によれば、「脳震盪組もコントロール組も、下肢の怪我を受傷したのが90日間の観測を始めてからそれぞれ平均32日目、33日目と酷似しており、deconditioningの要素は極めて低い」と報告されております。むむむ…これも面白い。確かに、脳震盪組が復帰直後ばかりに怪我してるなら、筋力低下とか心肺力の低下とか、他の要因もありそうですけどね、30日以上も動いた後となると…。
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なので、こちらも研究でも結論は「脳震盪から回復したように見えても、motor dysfunctionは続いている」。これらを感知できるような新たなテスト、評価法がこれからactiveに研究されるのではないかと期待しています。これは完全に私の個人的な願望…のようなものですが、脳震盪の新たな治療アプローチとして注目されつつあるSubsymptom Threshold Exerciseもひょっとしたら脳機能の回復に一役買うのでは…と考えたりもしてます。

1. Lynall RC, Mauntel TC, Padua DA, Mihalik JP. Acute lower extremity injury rates increase after concussion in college athletes. Med Sci Sports Exerc. 2015;47(12):2487-2492. doi: 10.1249/MSS.0000000000000716.
2. Cantu RC. Recurrent athletic head injury: risks and when to retire. Clin Sports Med. 2003;22:593-603.
3. Brooks MA, Peterson K, Biese K, Sanfilippo J, Heiderscheit BC, Bell DR. Concussion increases odds of sustaining a lower extremity musculoskeletal injury after return to play among collegiate athletes. Am J Sports Med. 2016;44(3):742-747. doi: 10.1177/0363546515622387.

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  by supersy | 2016-04-26 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

アキレス腱障害(Achilles Tendinopathy)のリハビリまとめ。

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以前、Patellar Tendinopathy (膝蓋腱障害)のリハビリについてまとめたこと(12)がありますが、Achilles Tendinopathy (アキレス腱障害)についてもさらりとまとめたいと思います。
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古い論文(↑1998年発表)ではありますが、Alfredson Model1 はやっぱり先駆けでしたよね。この研究では、1) 走るとアキレス腱に痛みが出、既に従来の治療法(休息、抗炎症剤、リハビリ)を試したけど効かなかったという15人の患者(平均44.3±7.01才、男12人、女3人、症状が出始めてから平均18.3ヵ月)を12週間のEccentric Trainingプログラムに、2) 15人の全く同じ症状・状況の患者(平均39.6±7.9才、男11人、女4人、症状が出始めてから平均33.5ヵ月)を手術に、とそれぞれ違うアプローチを施し、Eccentric Training Groupは12ヵ月後に、手術組は24ヵ月後に、痛み(VAS)と筋力(concentric & eccentric Pflex)を計測。ちなみにEccentric Training組は下の写真のような階段のような段差を利用して、怪我をした片足で立ち、最大底屈した状態から3秒かけてゆっくりと最大背屈…というのを一日に2回(朝と夕)、12週間毎日繰り返すというプログラム内容。エクササイズは2種類、膝をまっすぐ(写真A&B: gastroc)と、曲げた状態(写真C: soleus)で、それぞれ15回3セット。最初の1-2週間は痛みが多少増えても「それは想定の範囲内」と被験者には伝えていたそう。
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で、やり方でちょっと注目してほしいのが、「あくまで主役はeccentric contraction」ということですね。踵を上げた状態から、患側の足を3秒かけてゆっくり下ろす。一番下まで降りたら、健側の足に体重を移行し、そちらの足を使ってまたスタートポジションまで上がるというのが面白い点です。徹底して、患側ではconcentric contractionを行わない。で、「とても続けられない、というほどの痛みではなく、痛いけど運動は可能、くらいの痛みを感じているのが理想的なintensity」であり、逆に患者が全く痛みを感じない場合、その運動は「簡単すぎる」と判断され、重りを入れたリュックサックを背負って負荷を増やす(←)必要があります。


結果を言ってしまうと、Eccentric Training組が12ヵ月のトレーニングで痛み・筋力共に怪我をする以前の状態までに回復したのに比べ、手術組は24ヵ月かかって同様の状態まで回復。全員が最終的に痛み無くランニングを再開できるまでに。つまり、「Eccentric Trainingによって手術しかないと思われていた患者が手術したのと同様のレベルまで、より短期間で回復=手術を回避できる」というのがこの論文の結論でした。adverse effectは何も報告されず、dropoutが一人も出ていないというのは評価すべきところですね。比較的エクササイズもシンプルで、特別な道具がなくても家でできるというのもありがたいです。

突っ込みどころとしては、1) intervention前の両グループを比べた時に、年齢・男女比はともかく、「症状が出始めてからの期間」平均が18.3ヵ月vs33.5ヵ月ってのは差がありすぎでは?(p valueが報告されていないけど、まずp<0.05ではなかろうか) 2) 両グループそれぞれ15人ってのはpower analysisの結果でもないし、少ないのでは? 3) bilateral symptomsの患者は除外されているので、そういう患者はEccentric Trainingが使えないということ?(concentric returnができないから、この運動そのものが全くできなくなってしまう?) 4) 患者は各自家でこのトレーニングをやるように口頭指導されていたわけだけど、本当にやっているかどうかの確認は一体どうやってされていたの?そこんとこの記述無し。 というところがありますかねー。blindingなども報告されていないし。まあ古い研究だから作りが少し甘いですよね。

…で、読み比べると面白いのがこちらの比較的最近の研究。2
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Patellar Tendinopathy同様、「Eccentric Trainingじゃなくて、Heavy Slow Resistance (HSR) Trainingはどうよ?」とこちらでも声が上がって、それを直接比較したRCTですね。2015年発表です。

この研究では58人の慢性アキレス腱障害(>3ヵ月)患者をランダムに1) Eccentric Training組と 2) HSR Training組に分け、それぞれ12週間のリハビリを実施。ちなみにEccentric組は上記のプロトコル通りなんですが(前述したAlfredson Modelを採用)、HSR Trainingっていったい何をするのかというと、週3回、両足をついた状態でのエクササイズ3つを徐々に段階を上げながら行うという感じ。下の写真にあるように、A: 座位で膝を屈曲した状態でのヒールレイズ、B: 膝を伸展した状態でバーベルを肩に担ぎ、つま先でプレートの上に立って、そこからヒールレイズ、C: レッグプレスマシーンを使い、膝を伸展位でヒールレイズ…というヒールレイズのオンパレードになっています。それぞれのエクササイズはEccentric phaseもConcentric phaseも等しく重視されるため、踵を上げるときも下げるときもそれぞれに3秒ずつ、つまり、一度上がって下がるのに合計6秒というゆっくりさで、全可動域を使いながら行います。セット数は3-4回、セット間の休憩は2-3分、エクササイズとエクササイズの間の休憩は5分という指定はずっと変わらないのですが、rep数は週を重ねるごとに徐々に減り、逆に負荷はどんどん上がります。指定のプロトコルは以下の通り。
  Week 1: 15RMを3回    Week 2-3: 12RMを3回
  Week 4-5: 10RMを4回   Week 6-8: 8RMを4回
  Week 9-12: 6RMを4回
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で、両プロトコルの更に面白い比較が、「一週間当たり、それぞれのプロトコルを実施するのにどれだけの時間がかかったか」ということ。Eccentricが一週間当たり308分かかったのに比べ(時間にすると5時間ですね)、HSRはその約1/3の107分(2時間未満)。しかもこの数字は一番rep数の多い一週間目の時間であり、Week 2, 3, 4…と進んでいくとその時間はより短くなるわけなので…。ふーむふむ。

…で、結果としては、ランニング中の痛み(VAS)、ヒールレイズ中の痛み(VAS)、機能(VISA-A)、A-P tendon thickness(US)、neovascularizationの程度(Color Doppler)とActivity Levelは両方のグループで等しく、著しく改善。トレーニング前(Week 0)、トレーニング完了直後(Week 12)、トレーニング修了から10ヵ月後(Week 52)の三つの時間軸で、どれもしっかりとした回復傾向が確認されました。EccentricとHSRの効果の大きさは大差なーし。

さて、ここだけなら「どっちやってもよさそうでした」で終わるところですが、ひとつ考えるべきはトレーニングにかかる時間と労力です。同じ効果が得られるなら、貴方は一日に2回、朝夕にやらなければいけない痛みを伴うトレーニングと、週に3回で済むトレーニングと、どちらが好ましいと感じますか?貴方だって仕事もあるし生活もあるし、時間が無限にあるわけじゃない。患者の立場になると、答えは比較的明確になってきますね。これが数値として出たのが患者のCompliance rate (78% vs 92%, p<0.005)と満足度(80%の患者が満足と回答 vs 100%, p=0.052)。予想通りというかなんというか、HSR組の鮮やかな勝利。「同じ結果を出すなら、より手間がかからず、痛くないほうが良い」というのは、患者側の至極真っ当な感想ですよねぇ。

で、結論としては「どちらも長期的に確かな効果があるが、HSRのほうが手軽で満足度・コンプライアンス度共に高い」「そんなに意固地にconcentricを避けなくてもいいのでは?」に要約できるかなと思います。この研究の優れている点としては、pre-interventionのPatient Characteristicsに大差ないことを事前に確認してからの実感開始であるということ、アキレス腱障害の診断はPhysical examのみでなく、超音波画像を使って確認もしているというところ、Power analysisをし、各グループ18人集めればいい、と分析したうえで、それを上回る25人に人数目標を設定し、十分な人数を確保した点。それから11人いたdropoutも(結構多いですね)何故研究からwithdrawしたのか理由が提示してあり、intention-to-treatアプローチが使われたところも評価できます。エクササイズをしっかりやったかどうかは相変わらず患者のself-report頼りではありますが、Training Diaryを提出させたりと、Alfredsonの研究に比べてそれでもなんとか書面で確認しようという努力は見られます。でも、やっぱりセラピストがきちんと毎回目で確認したわけではないからなー。

EccentricがHSRに勝っている部分がひとつあるとしたら、「家で十分誰もができる」手軽さですかね。HSRはジムのような施設にアクセスがある人でないと、出来ませんよね。ここ、何故か論文では触れられていませんが、結構一般の方には大きな問題かと思うんですが。

ちなみにどちら1,2 も患者のアキレス腱の痛みは「真ん中へん(midportion)」にあるケースのみで、踵に近い「insertional tendinopathy」はまた勝手が違うみたい。3 Midportion Achilles Tendinopathyでも、「本当にAlfredson modelみたいなすごい数のrepetitionをする必要あるの?もっと少なくても同じ結果出るけど?」という研究結果も出ており、4 総合すると、「Alfredson Modelがどうやら効果をもたらすのは事実のようではあるけれども、一日に2回、毎日、痛みを伴うエクササイズをしろ、というのが患者の目にどう映るかというのは甚だ疑問であり、このプロトコルが最善と決まったわけでもない」 という感じで、私は個人的には、ジム施設が身近にあるのならHSRのほうがアリなのでは、と勝手に今のところ思っています。まだまだ研究が出てきそうな分野なので、楽しみに待つことにしますー。

1. Alfredson H, Pietilä T, Jonsson P, Lorentzon R. Heavy-load eccentric calf muscle training for the treatment of chronic Achilles tendinosis. Am J Sports Med. 1998;26(3):360-366.
2. Beyer R, Kongsgaard M, Hougs Kjær B, Øhlenschlæger T, Kjær M, Magnusson SP. Heavy slow resistance versus eccentric training as treatment for Achilles tendinopathy: a randomized controlled trial. Am J Sports Med. 2015;43(7):1704-1711. doi: 10.1177/0363546515584760.
3. Kedia M, Williams M, Jain L, Barron M, Bird N, Blackwell B, Richardson DR, Ishikawa S, Murphy GA. The effects of conventional physical therapy and eccentric strengthening for insertional achilles tendinopathy. Int J Sports Phys Ther. 2014;9(4):488-497.
4. Stevens M, Tan CW. Effectiveness of the Alfredson protocol compared with a lower repetition-volume protocol for midportion Achilles tendinopathy: a randomized controlled trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2014;44(2):59-67. doi: 10.2519/jospt.2014.4720.

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  by supersy | 2016-04-25 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

Clinical Prediction Rules Aren't Prefect: 落とし穴を理解する。

ハヤリものを叩いて楽しむ、という風習は好きではありませんし、そういうつもりもないのですが、面白い論文を見かけたのでまとめておきます。注意喚起と言う意味でも医療界の誰もが心に留めておいて損はない内容かなと思いますし。こういうハナシもいつかEBPのAdvanced courseをできるようになったら掘り下げて話してみたいなぁー。
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さて、Clinical Prediction Rule (CPR)が最近エビデンス界で大ハヤリですよね!有名なものでは恐らく誰もが知っているOttawa Ankle Rules1 なんかがあります。このルールは「足部の怪我をしたときにいつレントゲンを撮るべきか」という的確な診断のプロセスの一部として使うのに有効ですし、他に有名な例として挙げられるWells’ Score2 は「こういう条件がより多く当てはまればよりDeep Vein Thrombosisの可能性が濃くなるぜ!」と言う風に、こちらも診断の手助けに使えます。あとはですね、例えば貴方が腰痛を持っていたとして、
  1)現在の痛みレベルが10段階評価で7以下
  2)この腰痛が始まったのは5日以内である
  3)腰痛の病歴は今までに一回以下である
この3つの条件全てが貴方に当てはまれば、特に治療をせずともこの腰痛が1週間以内に自然に改善する可能性は60%、12週間以内に改善する可能性は95%…という風にprognostic information (予後診断)として使えたりするのもあります。3 まぁこのCPRがどれだけ実用性があるかはともかくとして(個人的には12週間何もせずにただただ改善を待つくらいなら、何かして早く治したい)、様々な用途のCPRがドンドン医療系ジャーナルで発表されていて、CPRはEvidence-Based Practice (EBP)の流行のど真ん中、最先端と言えますね。
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さて、今回ご紹介したいのはこの論文(↑)。4 この記事の著者らは、特に治療に特化したCPRに対して、「イヤイヤ待った!もうちょっと解釈には気をつけないといけないんじゃないの?」と問題提起しています。

この論文のタイトルに書いてあるprescriptive CPRというのはCPR for interventionと同義で、「こういう患者にはこういう治療法が効くぜ!」という治療方針を決めるのに役立つもののことです。例えば、「こういう肩の傷みのある患者には鎖骨・肋骨・胸郭のマニピュレーションが効くぜ!」5 とか、「こういう膝の痛みのある患者には足底板が実は効果を発揮するぜ!」6 とか、なかなか面白い切り口のCPRがあったりするのです。長く現場にいる方は分かるかと思いますが、患者の体は一人ひとり違うもの。同じ怪我をした患者2人でも、こっちの患者に効いた治療があちらの患者には全く効果が出ないとか、色々なことがありますよね(だからこそ私はATは道具箱に色々一通りの治療アプローチは入れておくのが理想的、と思っていますし教えているのですが、まぁこれはまた別の機会に…)。よって、最善の治療を見つけるプロセスは必然的にtrial & errorの繰り返しになるわけですが、場合によっては「これもダメか…」「あれも効かないか…」と、理想の治療にたどり着くまでにかなりの時間やお金がかかることもあるわけです。だからこそ、「この患者にこれは効くであろう」「これはダメだろう」と実際に治療を試さずとも事前に予期できるようなルールがあればこんなに有り難いことはありません。

しかし、この論文でHaskins & Cook氏ら4 が述べているのは、治療系CPRの信憑性や実用性は以下の要素に大きく左右される、ということです。中でも大きな論点3つは、
1)比較対象になった治療は何なのか―あくまでそれと比較しての効果しか論じていないということを理解すべし
2)何を持って治療成功と定義していたのか―本当にその『成功』で貴方の患者さんは満足する?
3)サンプルサイズが不十分で、統計的にunderpoweredであり、95% CIの幅が広いことが多い。―Point valueに騙されるな!
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この3つの角度から、例の「膝の痛みと足底板」のCPR(↑)6 をちょっとreviewしてみましょうか。この論文では…
1)あくまで足底板治療のみを試した人達を被験者対象にしており、効果があった人たちと無かった人たちをグループ分け・比較をしている。つまり、他の治療アプローチ(例えばリハビリとかテーピングとか)と比べて足底板がより優れた効果がある、という結論は出せるものではない。
2)[著しく改善した、少し改善した、変化なし、少し悪化した、著しく悪化した]の5段階評価で患者に自らの状態を評価してもらい、「著しく改善した」を選んだ患者を「成功」とする。これは、患者のself-reportのみとはいえ、まぁまぁハッキリとして良い基準なのではと思いますね。
3)統計、見てみましょうか。下の表は記事から抜粋した、1)患者の年齢が25歳より上; 2) 身長が165cm未満; 3) 一番痛いときで痛みレベルが100mm VASで53.25mm未満; 4) 中足幅がFWB vs NWBで10.96mm以上差が出る、という4条件の3つを患者が満たしていた場合、患者が足底板を12週間使って「著しく回復する」可能性を示しています。結果は…
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95%CIも含めて唯一優秀なのはSpecificityの96% (95% CI 78-99%)ですね。Sensitivityは問題外で低すぎ、+LRは8.8 (95%CI 1.2-66.9)なので、下限値が5.0を割ってしまっている以上、これは決定的な数値とは言えません。例え8.8がそこそこ優秀な値でも、下限値が1.2という低さだと、Haskins & Cook氏らの言うとおり、これは”Underpowered study”と言わざるを得ないかと。

あと、Haskins & Cook氏はこの論文4では触れていませんが、患者のinclusion / exclusion criteriaも注意深く読むべきですよねぇ。膝の痛みと足底板の研究に更に言及するならば、「過去に膝の手術をしたことがある、膝蓋大腿周辺組織の弛緩がある、膝に腫れがある、オスグッド・シュラッター病やシンディングラルセン病の病歴あり、股関節や腰椎の痛みがある、過去一年にリハビリをした、以前に足底板を使ったことがある、抗炎症剤を使っている…」のいずれかに当てはまる患者は被験者対象から外れていたので、貴方の目の前の膝の痛みを訴えている患者さんがこの条件にひとつでも当てはまった場合、このCPRはそもそも全くアテにならない、使うべきではない、ということにもなります。

(もっと現実的なところでひとつ突っ込むと、12週間も足底板のみを使って改善するかしないかという治療アプローチは、多くのスポーツの現場では現実的ではないでしょう。時間軸が長すぎるのと、やはり他の治療法、例えばリハビリなんかも併用してもいいものなのか?効果が相殺しあったりはしてしまわないか?というところまで調べていただけないと…。あとは、年齢が25歳より上で、身長が165cm未満のアスリートって、アメリカにはほとんどいない、という単純なトコロも…)

そんなわけで、私もHaskins & Cook氏4が最後に述べているように、CPRには大きな可能性があり、我々の臨床を大いに助けるものに成り得ると信じてはいるものの、それらの研究の解釈には最善の注意を払うべきだとも思っています。つまるところ、やっぱり面倒くさくてもちゃんと論文をフルテキストで手に入れて、一字一句きちんと読んで内容を深く理解する必要がある、ということです。

(先の膝の痛みと足底板の研究も、結論だけ読んで鵜呑みにしてしまうと、「そうか、年齢が25歳より上で、身長が165cm未満、痛いって言っても「そこそこ痛む」ぐらいのレベルの患者で、立った時に舟状骨がスコンと落ちるタイプの人には足底板使えばいいのね!と思ってしまうかもしれない。そこまでgeneralizedできる研究結果ではないのにも関わらず、です)

それでもどうしても論文が手に入らない、もしくは全文を読んでいる暇がどうしてもない、という方にはこの本(↓)7 がおススメです。この本は医療界で世に出ているCPRを診断・予後・治療のカテゴリーに分けて、ひとつひとつの研究をなかなかに詳しく紹介しています。スマホのアプリ版もあるみたいですよ、こちらは使ったことがないので使い心地は保証できませんが。論文まるごとを読むに優ることは決してありませんが、next best thing, かもしれません。
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1. Stiell IG, McKnight RD, Greenberg GH, McDowell I, Nair RC, Wells GA, Johns C, Worthington JR. Implementation of the Ottawa ankle rules. JAMA. 1994;271(11):827-832.
2. Miron MJ, Perrier A, Bounameaux H. Clinical assessment of suspected deep vein thrombosis: comparison between a score and empirical assessment. J Intern Med. 2000;247(2):249-254.
3. Hancock MJ, Maher CG, Latimer J, Herbert RD, McAuley JH. Can rate of recovery be predicted in patients with acute low back pain? Development of a clinical prediction rule. Eur J Pain. 2009;13(1):51-55. doi: 10.1016/j.ejpain.2008.03.007.
4. Haskins R, Cook C. Enthusiasm for prescriptive clinical prediction rules (eg, back pain and more): a quick word of caution. Br J Sports Med. 2016. pii: bjsports-2015-095688. doi: 10.1136/bjsports-2015-095688.
5. Mintken PE, Cleland JA, Carpenter KJ, Bieniek ML, Keirns M, Whitman JM. Some factors predict successful short-term outcomes in individuals with shoulder pain receiving cervicothoracic manipulation: a single-arm trial. Phys Ther. 2010;90(1):26-42. doi: 10.2522/ptj.20090095.
6. Vicenzino B, Collins N, Cleland J, McPoil T. A clinical prediction rule for identifying patients with patellofemoral pain who are likely to benefit from foot orthoses: a preliminary determination. Br J Sports Med. 2010;44(12):862-866. doi: 10.1136/bjsm.2008.052613.
7. Glynn PE, Weisbach PC. Clinical prediction rules: a physical therapy reference manual. Sudbury, MA: Jones & Barlett Learning;2011.

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  by supersy | 2016-04-05 19:00 | Athletic Training | Comments(0)

Frisco, TXにて。

今週末はダラス、というかダラスの少し北のフリスコというところでPRI Pelvis Restorationの講習に参加してきました。Pelvisを取るのは二年半ぶりくらいだったので良いリフレッシュになりました。今回の講師はネブラスカのHruska ClinicでRonと共に働くLori氏。彼女もPRIセラピストとして長く活躍されてるベテランさんで、きちりきちりと教える方なので私好きです。Inlet...Outlet...イメージしやすい…楽しい…ふふふ…。
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施設も素晴らしかったです。今回EXOS (旧:Athletes' Performance)さんがホストしてくださったので、施設見学もフラフラとさせてもらったのですが(EXOSに来たのは実は初めて)、Fieldhouse USAという巨大スポーツ施設と隣接しており、大きなバレーボール、バスケットボールの大会が巨大体育館で行われていたり、室内の芝グラウンドでインドアサッカーの練習も行われていたりと、週末でもとてもアクティブに人が出入りしていました。
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こんな裏話を書いて楽しく読んでくれる人がいるのがわかりませんが、このPelvisのコースはLori氏自身が時間をかけて作り上げたもので、Ronが作ったMyokinやPosturalとは構成がだいぶ違います(もちろん、Ron氏が監修はしていますが)。はっきり言って、分かりやすい、追いやすいです。今回の講習に参加して、改めてMyokinの次に日本で提供するのをPelvisにしていたらもっと楽だっただろうなぁ…と身勝手に思ったりもしてますが、PRI講習ができたばかりのころ一番最初にRonが作ったのはPostural Respirationだったほど、呼吸と胸郭はPRIの心臓になるところなので、やっぱり次はPosturalです。肋骨をappreciateせずにPRIの神髄に近づくことはできません。ただ、あの講習はめちゃめちゃ内容が複雑なので、準備にはもう少し時間がかかりそうです。マニュアルの翻訳はケニー氏が頑張ってくれていますが、私個人の講師としてのトレーニングという意味でももう少し時間を使わないと、私が納得いくものが提供できないぜ!という気がしています。うーむ。一日が30時間あったらなぁ。
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あっ!この写真、キレイにL AF IRできてる。私はPelvis patientではないと思う。とりあえず、今はDFW空港です。これから夜の便でCorpusに帰ります。楽しい週末だったー。
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  by supersy | 2016-04-04 08:00 | PRI | Comments(0)

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