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Learning to Let Go - あきらめ上手のススメ

学生やスタッフATさんの話や、場合によっては愚痴を聞くのも臨床教育コーディネーターとしての大事な仕事です。ヒトとヒトが関わる以上、性格の不一致や揉め事はどうしてもあるので。私は「オイラに任せろ、ちょっと話をつけてきてやる」とぐいぐい行くタイプでは元々ないので(というかそれで問題が解決するとは思えないので)、ふむふむと話を聞いて、「それじゃあどうしたらこの環境を改善できると思う?ちょっと一緒に考えてみよう」とあれこれ話し合い、「よし!じゃあそれを明日からやってみな」と現場に送りかえすことがほとんどです。直接的介入はまずしません。いやー、こういう仕事をしていると、ヒトの話を聞く能力と、ヒトの思考を生産的な方向に導く能力が非常に鍛えられます。
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先日も学生がむきーとなってやってきました。彼としては目の前の問題にすぐにでも飛びつき、「(問題の相手と)話し合いたい!」「今話さないと気持ち悪い!」と思っていたようですが、相手はハッキリと「今は話したくない」「後にしたい」と答えたようで。

「今解決したいという気持ちは痛いほど分かるけどさ、有益な話し合いと言うのはお互いに心の準備ができてこそできるものでもあるわけよ。相手がカーッとなってたり、もういや!がっしゃーんと心の扉を閉ざしちゃったときは、今はその時じゃないってことなんだよね。そんなときに無理矢理話そうとしても悪化するだけ。無理強いは効かないのよ。恋人との喧嘩とかと同じでさー。まずは心が向き合ってることが大前提よ」

「その状況にpause (一時停止)ボタンを押して、『分かった、話し合う心積もりができたら教えて』と、相手に対して準備期間をあげるのも優しさよ。相手の感情ばかりはコントロールできないからね。向こうも人生色々あるんだろうなぁと寛大に考えてみたりしてさ。もちろんそのまま一週間、二週間と経っちゃうのは良くないけれど、数日間くらいは大人しく待ってみる。待つ能力って大事よー。長い人生で生きてくるスキルよ」

「ただ、待ってる間、こちらも悶々としないことね。待ってる間にこちらの真っ黒い感情が育っちゃうようじゃいかんいかん。『今はこれについては考えない』という引き出しに入れておいて、きちんといったん停止しておくこと。自分の人生、他にも大事なこといっぱいあるんだから、できる事を精一杯やる。美味しいご飯を食べて、勉強頑張って、友人と喋って、がっつり寝る。しっかり生きる。だって、想像してごらん、今日ずっとイライラしながら過ごして一日を終えるのと、今スパッと切り替えて、テキパキさばさば楽しく生産的に一日の残りを過ごしたのとさ。今夜、どっちの気分で一日を終えたい?これは自分自身がコントロールできるはずのことよ」

「吐き出したくなったらここへまたおいで。でも今日は直接相手を追わずに、『話し合う準備が出来たら教えて』と時間とスペースをプレゼントしてあげなさいな。まーそう焦んなさんな。お互い見ているもの、欲しいと思っているものは同じなんだから道はすぐに交わるよ」
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以前ミレニアル世代は『すぐに「自分」を主役に置きたがり、それが後回しにされたり、彼らの思う適切な優先順位が与えられないことは耐えられない。問題がすぐに解決されることを望む』と習いましたが…うーむ、認めたくありませんがそういう傾向は確かにあるかも。でも、だからこそ今の子らが『水の流れや風の流れのように、ヒトの感情も移ろうものだと受け入れる』ことと『相手の心が自分に向くまで、こちらは心を軽くして待つ』ということが苦手なら、誰かがそれをちゃんと教える義務があるってことだろうよ、とも思います。それは、『ま、これは今は自分にはどうしようもないわな』と諦めるべきことを諦める、というライフスキルを教えることでもあるわけです。諦めたり、忘れたりというのは、必ずしもネガティブなことではなくて、適切な時に使えればとても有効な生きる術だと私は思います。

私自身もしょうもないことに腹を立てそうになることがあるので、よく自分に言い聞かせてます。それは本当に腹を立てるだけの価値があることか(怒るって、かなりエネルギーを使うでしょ)?ないなら、let goしてしまっていいんじゃないの?という風に。風に乗る綿毛のように、ふわりと飛ばしてしまっていいことって実は結構あるので。こだわらなくていいことに、こだわらない。ひきずらなくていいことを、ひきずらない。ふうっと深呼吸して手を離してみる。気が付いたら飛ばしたはずのその種が意外に傍に根を生やしていて、きれいな花を咲かせてくれてびっくりすることってのもあるんで。
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  by supersy | 2016-02-23 09:00 | Way of Thinking | Comments(0)

なぜ風船を使ってエクササイズをするのか?

先週は一学期に一回の博士課程のオンサイト授業でユタ州はプロボまで行っておりました。寒かった…雪がちらついてた…ひー。
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さて、最近PRI(Postural Restoration Institute)という名前がメディアで出回っていたりもするようなので、きちんとした理解を持ちたいと思って下さっている方々のために文献紹介の簡単な記事を書いておきます。

●コアとは
コアとか体幹とかいう言葉がトレーニング界隈で騒がれるようになって久しいですが、それがどういう意味を持つか皆さんご存知ですか?コアの定義はその医療従事者・トレーニング専門家の信じるprincipleによって様々なものがあるかと思いますが、多種多様な定義に必ず含まれているのがThe Lumbo-Pelvic-Hip complex。腰椎、骨盤、股関節にかけて形成されている、その名の通り複雑で緻密な複合体です。胸椎を入れる入れないとか、頚椎を入れる入れないとか、頭蓋骨はどうだとか、そこらへんは諸説あっても、とりあえず腰椎・骨盤・股関節を「コアの一部と考えない」流派はまずいないのではと思います。
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●Intra-Abdominal Pressure (腹圧)
加えて、腹腔内で作られる圧力のコントロールと維持も体幹の安定性に欠かせない要素です。この圧力(Intra-Abdominal Pressure = IAP)は、上部は横隔膜 (diaphragm)、背部は多裂筋 (multifidus)、下部は骨盤底筋群 (pelvic floor)、そして横周りをコルセット状の腹横筋 (transverse abdominis)から四方八方からむぎゅっと囲まれることで初めて安定します。これら4つの筋肉が協調的に活動、拮抗しあいながら適切なIAPを確立・維持するという能力は、スムーズで無駄と負担のない人体の動きを実現するのに必要不可欠なわけです。
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実際この4つの筋肉は英語ではanticipatory musclesと表現されることもあり、文字通り四肢の動きを予期 (anticipate)し、腕や足の筋肉よりもコンマ数秒早く活性化されることは様々な研究でも実証されています。1-7 腕を動かそう、と考えた時点でこれらの筋肉の活動はもう始まっているなんて、せっかちというか頼もしいと言うか。Feedfowardメカニズムともよく言われますね。腹圧管理係4人集なわけです。

b0112009_7195724.pngb0112009_7341988.gif左の写真(腹水症の患者)は、病理によって受動的に腹圧が上がっていますが、この4つの筋肉の拮抗しあう力がかかっていないため、体幹の安定性は確立されてない状態になります。ただ圧がかかっているだけではダメなのです。圧が前方に逃げてしまわないよう包み込むように4つの筋肉それぞれが拮抗して収縮し、そのバランスが取れていないと(写真右)。

●代償
骨盤痛8 や仙腸関節痛9 や腰痛10 の患者は、健康な人に比べて、これらのfeedforward musclesを活性化する能力が低下し、代償的に起こる大腿二頭筋や外腹斜筋、脊柱起立筋などのいわゆるグローバルマッスルの過活動に頼って何とか体幹の安定性を出そうという傾向があると報告されています。言いかえれば、これらの患者を治療していく上で、仙腸関節そのものや、腰椎ばかりを診るのではなく、例の4人集の機能をいかに回復するかが真の症状改善の重要な鍵になるわけです。

中でも横隔膜は実に面白い筋肉です。姿勢筋としての機能はもちろん、呼吸筋としてもっと大事な機能も担っています。「人がこの世に生を受けて一番最初に使う筋肉であり、最期に使う筋肉でもある」なんて聞いたこともあります。理想としては横隔膜が呼吸筋 兼 姿勢筋として、その能力をノビノビと発揮できれば言うことがないわけですが、横隔膜の活動が低下すると胸鎖乳突筋、斜角筋、僧帽筋上部などがその呼吸機能を補おうと過活動を起こし、胸郭を引っ張り上げる形で吸気を行おうとする、いわゆる"Dysfunctional Breathing Pattern"が始まってしまいます。23, 24 呼吸の代償行為です。

●代償の結果
こうして呼吸や姿勢を保つのに本来使うべき筋肉を使えない状態が続くと、前述したようなグローバルマッスル(= prime movers)の過活動がおき、姿勢・呼吸が理想的に保てない・行えないばかりか、スポーツ等のパフォーマンスにも影響が出てくることになってしまいます。最適なスポーツパフォーマンスとは、使うべき筋肉の活性化と、休むべき筋肉の抑制のバランスが取れてこそ実現するからです。例えば、今まさにジャンプをしようと大腿四頭筋を収縮させる時には、対となる大腿二頭筋が抑制されてこそ大腿四頭筋の真価が発揮されるわけですよね?大腿四頭筋と大腿二頭筋の収縮が同時に起こってしまうようなことがあれば、co-contractionと呼ばれるような足の動きの硬さが生まれてしまい、しなやかで流れるようなジャンプの実現は難しいでしょう。これを示唆するかのように、「自覚症状が全くない人でも横隔膜を適切に使えていないとFMSのスコアも低くなる傾向にある」という研究も発表されていたりします。28 いやはや面白い。
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●代償パターンから抜け出す
横隔膜を使った呼吸はヨガ11 やピラティス12、太極拳13 などのトレーニングでも随分昔から使われており、近年ではそういった呼吸法をスポーツ医学やアスレティックパフォーマンス、ストレングス&コンディショニングの分野でも取り入れられることが増えてきました。実際に、呼吸に特化したトレーニングを積むことで、持久力や筋力の向上が見られたと2つのメタ分析論文によって報告されています。14,15 自然な呼吸パターンを取り戻すことで 1) 頭部、頚椎、額関節、肩甲骨に胸椎の姿勢改善が見られること、16 2) 腰椎の痛み低下につながること、17 3) 4人集の機能が回復され、体幹の安定性が取り戻せること18, 19 などが分かっているのです。

本筋からは脱線しますが、横隔膜を使った深い呼吸で副交感神経優位になることから、血圧が下がったり、20 練習後にこうした呼吸トレーニングを足すことで運動誘発性酸化ストレスの程度を下げ、効果的なリカバリーが促進される21とも発表されています。エリート水泳選手を対象にした「週に最低一回の呼吸トレーニングで風邪を引く頻度が減った→免疫力の向上に効果アリか?」という論文22も面白かったなぁー(これに関しては私はまだ懐疑的です)。

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その横隔膜の機能獲得に、風船を使ってエクササイズをしてみたら面白いんじゃない?というのが上の論文です。25 読みやすいので興味がある方には是非読んでいただきたいです。ちなみにこの論文はfree full textですよ、リンクはこちら

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こちらは実験タイプの論文です。26 腰痛・骨盤痛のある患者をOber's Test (= Adduction Drop Test)を用いて評価して、その結果によって2つの異なるエクササイズを処方(両方陽性の場合は左、片方のみ陰性の場合は右)。それぞれの運動をワンセッションのみ試したところ、エクササイズ前と比べて股関節の可動域と痛みが大幅に改善(それぞれp <0.01、p <0.01)されたという報告がなされています。こちらもfree full textですよ。
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こちらの記事はClinical Suggestion。27 横隔膜をターゲットにした呼吸に加えて、IC Adductorと呼ばれる内転筋を活用したエクササイズの臨床に於ける臨床的価値を議論しています。これもfree full text。

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こちらは症例報告。29 21歳の「日常生活に支障が出るほど」の腰痛が主訴の大学生野球選手が取り上げられており、当初3週間かけてMuscle Energyやカイロプラクティック・マニピュレーション、腰椎の安定性を上げるような運動をしてみるも効果が見られず。アプローチを変え、特殊なメガネ(視覚情報のinputに対する治療介入)と、横隔膜を使ったエクササイズとの併用で症状が完全に消失し、競技完全復帰まで持っていけた、という内容です。こちらもfree full text。

そんなわけで、少ないですがPostural Restoration Institute (PRI)に直接関わる文献をここで紹介させていただきました。興味がある方は是非読んでみて下さい。でもね、タイトルこそ「風船を使って…」って書きましたが、PRIエクササイズは風船を使わないものの方が多いんですよ。風船は、まだまだ腹壁が上手く使えない段階で「拮抗」の感覚を出すのに有効なので使っているだけで、腹壁が活性化できるようになれば風船無しでも呼気を意識しながら様々なエクササイズが行えます。

最後に、本家PRIのウェブサイト(英語)と、PRI Japanのウェブサイト(日本語)へのリンクもどうぞ。2016年5月に公式の講習会が名古屋、東京、福岡の3会場で予定されており、申し込み受付は3月14日(月)日本時間午前8時に開始いたします。座席には限りがあり、かなり早いペースで埋まる可能性がありますのでご理解ください。5月に色々な方にお会いできるのを楽しみにしております。

(ちなみに、このブログで初めてPRIを紹介する目的で書いたエントリーがこちらです。個人的なPRIに対しての思いをかなり正直に書いてます。ぶっちゃけすぎた?こちらも宜しければどうぞ)

1. Hodges P. Is there a role for transversus abdominis in lumbo-pelvic stability? Man Ther. 1999;4(2):74-86.
2. Hodges P, Gandevia S, Richardson C. Contractions of specific abdominal muscles in postural tasks are affected by respiratory maneuvers. J Appl Physiol. 1997;83(3).
3. Hodges PW, Butler JE, McKenzie DK, et al. Contraction of the human diaphragm during rapid postural adjustments. J Phys. 1997;505(2):539-48.
4. Sapsford RR, Hodges PW, Richardson CA. Activation of the abdominal muscles is a normal response to contraction of the pelvic floor muscles. In: International Continence Society Conference. Japan, 1998.
5. Hodges PW, Richardson CA. Contraction of the abdominal muscles associated with movement of the lower limb. Phys Ther. 1997;77(2):132-43.
6. Hodges PW, Heijnen I, Gandevia SC. Postural activity of the diaphragm is reduced in humans when respiratory demand increases. J Physiol. 2001;537(3):999-1008.
7. Kolar P, Sulc J, Kyncl M, Sanda J, Neuwirth J, Bokarius AV, Kriz J, Kobesova A. Stabilizing function of the diaphragm: dynamic MRI and synchronized spirometric assessment. J Appl Physiol. 2010;109(4):1064-71. doi: 10.1152/japplphysiol.01216.2009.
8. Bussey MD, Milosavljevic S. Asymmetric pelvic bracing and altered kinematics in patients with posterior pelvic pain who present with postural muscle delay. Clin Biomech. 2015;30(1):71-77. doi: 10.1016/j.clinbiomech.2014.11.002.
9. Shadmehr A1, Jafarian Z, Talebian S. Changes in recruitment of pelvic stabilizer muscles in people with and without sacroiliac joint pain during the active straight-leg-raise test. J Back Musculoskelet Rehabil. 2012;25(1):27-32. doi: 10.3233/BMR-2012-0307.
10. Kolar P, Sulc J, Kyncl M, Sanda J, Cakrt O, Andel R, Kumagai K, Kobesova A. Postural function of the diaphragm in persons with and without chronic low back pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2012;42(4):352-362. doi: 10.2519/jospt.2012.3830.
11. Telles S, Sharma SK, Yadav A, Singh N, Balkrishna A. Immediate changes in muscle strength and motor speed following yoga breathing. Indian J Physiol Pharmacol. 2014;58(1):22-29.
12. Barbosa AW, Guedes CA, Bonifácio DN, de Fátima Silva A, Martins FL, Almeida Barbosa MC. The Pilates breathing technique increases the electromyographic amplitude level of the deep abdominal muscles in untrained people. J Bodyw Mov Ther. 2015;19(1):57-61. doi: 10.1016/j.jbmt.2014.05.011.
13. Lan C, Chen SY, Lai JS, Wong AM. Tai chi chuan in medicine and health promotion. Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:502131. doi: 10.1155/2013/502131.
14. Illi SK, Held U, Frank I, Spengler CM. Effect of respiratory muscle training on exercise performance in healthy individuals: a systematic review and meta-analysis. Sports Med. 2012 Aug 1;42(8):707-24. doi: 10.2165/11631670-000000000-00000.
15. HajGhanbari B, Yamabayashi C, Buna TR, Coelho JD, Freedman KD, Morton TA, Palmer SA, Toy MA, Walsh C, Sheel AW, Reid WD. Effects of respiratory muscle training on performance in athletes: a systematic review with meta-analyses. J Strength Cond Res. 2013 Jun;27(6):1643-63. doi: 10.1519/JSC.0b013e318269f73f.
16.Neiva PD, Kirkwood RN, Godinho R. Orientation and position of head posture, scapula and thoracic spine in mouth-breathing children. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2009;73(2):227-236. doi: 10.1016/j.ijporl.2008.10.006.
17. Lamberg EM, Hagins M. The effects of low back pain on natural breath control during a lowering task. Eur J Appl Physiol. 2012;112(10):3519-3124. doi: 10.1007/s00421-012-2328-6.
18. Vieira DS, Mendes LP, Elmiro NS, Velloso M, Britto RR, Parreira VF. Breathing exercises: influence on breathing patterns and thoracoabdominal motion in healthy subjects.
Braz J Phys Ther. 2014;18(6):544-552. doi: 10.1590/bjpt-rbf.2014.0048.
19. Kim E, Lee H. The effects of deep abdominal muscle strengthening exercises on respiratory function and lumbar stability. J Phys Ther Sci. 2013;25(6):663-665. doi: 10.1589/jpts.25.663.
20. Lee JS, Lee MS, Lee JY, Cornélissen G, Otsuka K, Halberg F. Effects of diaphragmatic breathing on ambulatory blood pressure and heart rate. Biomed Pharmacother. 2003;57 Suppl 1:87s-91s.
21. Martarelli D, Cocchioni M, Scuri S, Pompei P. Diaphragmatic breathing reduces exercise-induced oxidative stress. Evid Based Complement Alternat Med. 2011;2011:932430. doi: 10.1093/ecam/nep169.
22. Wright PA, Innes KE, Alton J, Bovbjerg VE, Owens JE. A pilot study of qigong practice and upper respiratory illness in elite swimmers. Am J Chin Med. 2011;39(3):461-475.
23. Hruska R. Influences of dysfunctional respiratory mechanics on orofacial pain. Dent Clin North Am. 1997;41(2):211-227.
24. De Troyer A. Effect of hyperinflation on the diaphragm. Eur Respir J. 1997;10(3):708-13.
25. Boyle KL, Olinick J, Lewis C. The value of blowing up a balloon. N Am J Sports Phys Ther. 2010;5(3):179-188.
26. Tenney HR, Boyle KL, Debord A. Influence of hamstring and abdominal muscle activation on a positive ober's test in people with lumbopelvic pain. Physiother Can. 2013;65(1):4-11. doi: 10.3138/ptc.2011-33.
27. Boyle KL. Clinical application of the right sidelying respiratory left adductor pull back exercise. Int J Sports Phys Ther. 2013;8(3):349-358.
28. Bradley H, Esformes J. Breathing pattern disorders and functional movement. Int J Sports Phys Ther. 2014;9(1):28-39.
29. Robey JH, Boyle K. The role of prism glass and postural restoration in managing a collegiate baseball player with bilateral sacroiliac joint dysfunction: a case report. Int J Sports Phys Ther. 2013;8(5):716-728.

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  by supersy | 2016-02-18 18:30 | PRI | Comments(0)

痛みがあると動きが変わる。

まずはPRI Japanからのお知らせです!

5月14-15日 東海医療科学専門学校(名古屋市) 石井 健太郎 席数 40
5月21-22日 帝京大学八王子キャンパス(東京都八王子市) 阿部&石井 席数 50
5月28-29日 福岡リゾート&スポーツ専門学校(福岡市博多区) 阿部 さゆり 席数 40

今年5月に名古屋・東京・福岡で開催する予定のマイオキネマティック・リストレーション講習について、詳しい日程(上記)と申し込み開始日時(3月14日・月曜 日本時間午前8時)が正式決定いたしました。興味のある方はPRI Japan公式のウェブサイトから詳細をご覧になってください。

私は東京と福岡を担当させていただきます。九州上陸は初めて…どきどきわくわく!
(お酒が美味しいと聞いています!)



さて。前回は怪我があると脳にどういう影響が出るか、と言う話を書きましたが、今は痛みと動きの係わり合いについて学んでいたりします。
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『痛み』は我々の身に迫る脅威を知覚するための重要なシグナルであり、痛みが感じられなかったらそれはそれは大変なことになるのですが(実際に無痛症という先天的に痛みを感じる受容体が無い病気もこの世に存在します)、痛みや痛みの影響が身体に留まり続けてしまうと言うのもこれまた厄介です。
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ヒトは、痛みがあるときと無いときとでは、動き方が変わってきます。頭痛がするとき、おなかが痛いとき、足首を怪我しているとき…。そんなに大げさにしていないつもりでも、普段の貴方の動きに痛みの影響が出始めるのです。これは動かぬ事実ですし、皆さん自身もきっと経験があることでしょう。例えば、上の写真を見てください。アキレス腱の痛みを抱えながらそれでもなんとかレースを走りきろうとするこの選手ですが、この写真からだけでも直接関係のある下肢のみでなく、僧帽筋周りにチカラが入っている感じ、そして歯も食いしばって眉を上げて表情筋にまで緊張が掛かっているのが見て取れます。身体のたった一箇所の痛みが、全身の筋の使い方に影響を及ぼすのが分かる、興味深い写真です。
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痛みがどう運動制御に影響を及ぼすかは諸説ありますが、初期のものだと、
1. Vicious Cycle:1 痛みが周辺の筋緊張(spasm)を生み、
  それによってできたischemic stateが更に痛みを呼び、
  悪循環を生む(= pain-spasm-pain cycle)
2. Pain Adaptation Theory:2 痛みがあると筋緊張は逆に下がる
  (antagonistの活動は上がり、agonistの活動は抑制される)
…あたりが代表的かと思うのですが、どちらも型にはまりすぎており、この説にはそぐわない研究結果も幾つも発表されています。これに台頭する形で提唱されたのがHodges & Tucker氏が新たに2011年に発表したNew Pain Theory。3 上の記事はあまりに有名ですよね。ここで彼らは、「痛みによって筋肉がどのように反応するかは、その筋肉によっても違うし、何をしているかによっても変わる」という、muscle- and task-specificな様々なレベルでの神経回路のパターンの変化を強調しています。痛みに対する身体の反応は、いつでも活性ばかりとか、抑制ばかりってことはない、きっともっとなかなかに複雑ですよ、と説いたわけです。

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これと併せて読むと面白いのがKiesel氏らのこの論文。4 17人の大学生くらいの年齢で、腰痛を一度も経験したことがない被験者に対して生理食塩水を腰椎に注入。人工的に腰痛を作り出した状態で、1) 体重の前方移動と、2) 肩関節の0°から90°までの屈曲、3) 90°から0°までの伸展とのそれぞれのタスクの間にmultifidus muscle (多裂筋)がどう活動を起こしているか測定した、という研究です。腰痛を起こす前、起こした時、無くなってからの3測定を比較した結果は、
 - 1) 体重移行の間は、腰痛アリのほうがナシよりもmultifidusの活動が低く
 - 2) 腕を挙げる時は活動が上がり
 - 3) 腕を下げる動作に変化は見られなかった
…という、同じ筋肉でも動作によって異なる、まさにtask-dependentなものになりました。何がこの変化の直接的な原因なのかは断定しづらいところだとは思いますが(i.e. learning effectは?体内に埋め込んだelectrodeのせいで、そもそも全ての計測が影響されていた可能性は?食塩水による痛みでなく注射そのものが原因で変化が出た可能性は?Sham injection groupを作るべきだったのでは?)、動作の直前に腰椎を安定させる重要なanticipatory muscleであるべきmultifidusに、痛みが無いかどうか、そして何をしているかでここまで活性値に変化が出るという結果は、「ここから発展しうる悪影響は、はて…?」と考えをめぐらせるのにはなかなか面白いです。

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Cholewicki氏らのこの研究5も着眼点が良いです。腰痛歴が過去に一度だけあったが、もう6ヶ月以上自覚症状はない状態の大学生アスリート17人と、腰痛歴が過去に無い以外は年齢・体格・性別が似通った(=matched) 17人の被験者グループとを比較したこの研究では、「胴体に突然かかる力に対してどのように筋肉を使うか」を計測、分析しました。被験者を膝立ちにさせたような状態で機械に固定し、胴体をケーブルを使って一方向に引っ張ります。被験者は自分の胴体をまっすぐに保つために、身体を逆に引っ張る筋肉を使わざるを得ないわけです(例えば下左の写真では、ケーブルによって胴体が伸展位に引っ張られるので、屈曲筋群を使って姿勢を保たなければいけないわけです( = low grade isometric trunk flexion)。
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で、このケーブルが突然リリースされるのですが、その時に胴体の身体をいかに使って「おっと!」とバランスを調整するか調べたというわけです。結果は右上のグラフを見ると分かりやすいかなと思います。EMGの上(A)が「腰痛ナシ」の被験者のもの、下(B)が「腰痛暦アリ」のもの。このPostural perturbationの調整には、いかにagonist (例では胴体屈曲筋)にいち早く抑制をかけ、同時にantagonist(胴体伸展筋)を活性化させるかが大事なわけですが、腰痛暦ナシの被験者はこのon/offのスイッチの切り替えが一瞬でできる(= 効率良く姿勢の調整が可能) のに対して、腰痛歴があった被験者は1) agonistの抑制までかかった時間が長く、2) 抑制された筋肉も数が少なかった。つまり、必要ない筋肉のスイッチを切る能力が鈍っているのが分かります。この影響で、身体には一瞬agonistとantagonist両方のスイッチが入ってしまう瞬間が生まれました。これらはco-activation(= 二つの対になる筋肉が両方緊張している状態) と呼ばれ、身体の安定性を生むメカニズムとしては非常に原始的で好ましくないものとされています。

●Short-term benefits vs Long-term problems
これら3つの研究を併せて、面白いというか怖いなぁと思うのは、こういった代償の神経系メカニズムは一時的な痛みのある部位の固定とか、運動への需要を下げるためには有効でも、長期的に見ると問題の方が多いところですかね。例えば最後の研究なんかで言えば、腰痛暦アリの被験者はあくまで「一回だけの腰痛歴」があっただけで、既に自覚症状は見られず、恐らくセラピストも患者自身も「完治した」とみなす状態だったと思うのです。それでも、研究によって明らかになった「代償的筋肉の活性・抑制のパターン異常」は根強く身体に残ってしまっていた。本当の意味の機能回復は、しきれていなかったわけです。

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よく聞く、「足関節の捻挫のあとは股関節外転筋(Gluteus Mediusが代表的)が弱くなる」というのもひょっとしたら痛みが原因かも知れません。Friel氏らの研究6 では捻挫を2度以上受傷したことがあり、既に「機能は回復した」と自覚している23人の被験者にもやはり同側の股関節外転筋群に筋力出力低下が見られたと報告。1) 自覚症状がなくなっても根強く残る隠れた神経出力の問題と、2) これらを考慮に入れたリハビリのデザインの重要性を訴えていますが、しかし、だからといって単純に中臀筋を鍛えればいいってもんなんでしょうか…。痛みを長期的に感じることで、脳の形態・構造が変わってくる、という報告7や、それが特に幼いうちに起こると痛みそのもののプロセスの仕方が変わってくる、8という研究もあるので、やはり個人的にはリハビリの中には真の回復を目標とした神経的なアプローチが必須かと思います。
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1. Roland M. A critical review of the evidence for a pain–spasm–pain cycle in spinal disorders. Clin Biomech. 1986;1:102–109.
2. Lund JP, Donga R, Widmer CG, Stohler CS. The pain-adaptation model: a
discussion of the relationship between chronic musculoskeletal pain and
motor activity. Can J Physiol Pharmacol. 1991;69:683–694.
3. Hodges PW, Tucker K. Moving differently in pain: a new theory to explain the adaptation to pain. Pain. 2011;152(3 Suppl):S90-98. doi: 10.1016/j.pain.2010.10.020.
4. Kiesel KB, Butler RJ, Duckworth A, Halaby T, Lannan K, Phifer C, DeLeal C, Underwood FB. Experimentally induced pain alters the EMG activity of the lumbar multifidus in asymptomatic subjects. Man Ther. 2012;17(3):236-240. doi: 10.1016/j.math.2012.01.008.
5. Cholewicki J, Greene HS, Polzhofer GK, Galloway MT, Shah RA, Radebold A. Neuromuscular function in athletes following recovery from a recent acute low back injury. J Orthop Sports Phys Ther. 2002;32(11):568-575.
6. Friel K, McLean N, Myers C, Caceres M. Ipsilateral hip abductor weakness after inversion ankle sprain. J Athl Train. 2006;41(1):74-78.
7. Baliki MN, Schnitzer TJ, Bauer WR, Apkarian AV. Brain morphological signatures for chronic pain. PLoS One. 2011;6(10):e26010. doi: 10.1371/journal.pone.0026010.
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  by supersy | 2016-02-05 16:30 | Athletic Training | Comments(3)

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