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Kansas Cityにて。今日日本出発です!

Kansas Cityに来ております。

Kansas Cityという街ってば面白くって、実は2つの州にまたがって広がる街なのです。カンザス州とミズーリ州がちょうど隣接するところに位置していて、この写真だと緑の部分全てが"Kansas City"なのですが、青い線をまたいで左側がKansas City, KS (カンザス州カンザスシティー)、右側がKansas City, MO(ミズーリ州カンザスシティー)。ややこしいですよね!ごっちゃに書かれちゃったりして、郵便配達の人大変そう!
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…で、今回こっちへ来たのは、7月のPRI講習日本開催に向けて、
同じくPRI講師である石井健太郎氏(ケニー)と最終調整というか、翻訳したマニュアルの細かい言葉遣いや、2日がかりの講習の内容の流れなどツメの作業をするためでした。私は本業を終えて(今はアメリカの大学は夏休みです)ちょっと余裕ができたので、ケニーのいるKansas Cityに来ていたと。ケニーはシーズン真っ只中で忙しい中、滞在3日間の空き時間を全てこれに充ててくれて感謝…ご家族の皆さんもありがとう!

そんなわけで、仕事の方はかなり順調に進んでproductiveな3日間だったのですが、合間に試合を見せてもらったり(MLSは初観戦!)、試合後は施設見学もわいわいさせてもらったり、楽しいこともいっぱいでした。充実!
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さて、それでは今朝はこれからホテルを出て、いよいよ日本に帰ります!
飛行機で寝るぞー。
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  by supersy | 2015-05-31 07:30 | PRI | Comments(0)

17日のEBP講習席追加 & 半月板縫合と切除まとめ。

ひとつ前のエントリーで告知させて頂いたEBP講習ですが、
ありがたいことに予想以上に受講希望者が多かったので、
17日(18:30-21:30pm)の講習に限り別会場に移し、席数を10から30まで
増やすことが出来ました。調整してくださった高橋さんに感謝です。アリガタヤー。
そんなわけでキャンセル待ちを申請してくださっていた方全員ご案内できる運びになったのと、あと5月23日夜現在で約10の席が空いていると聞いております。
 *お陰様で24日朝現在満席になりました。募集は締め切らせて頂きますが、
 現在キャンセル待ちは受け付けています。

受講ご希望の方はお早めに、主催・高橋(tdtakahashi@gatt.jp)までご連絡ください。
講習内容詳細を確認したいという方はこちら(ATACK NET)から。
お申し込み詳細は一つ前のブログエントリーを参照ください。

21日(9am-12pm)の講習は予定通り、こじんまりとやりますのでよろしくお願い致します。こちらは既に申し込みが定員に達しており、受講希望の方はキャンセル待ちになりますので、その旨高橋まで。
17日の講習も、定員に達し次第キャンセル待ちを開始致します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
さて、今学期(Summer 2015)は3つの授業を受講していますが、
そのうちのひとつが"Connective Tissues and Injury Repair: An Evidence-Based Approach"というタイトルで、鬼のような文献を毎日読んでおります。でもこの授業の楽しいのは、教授が我々に選択の自由を多く与えてくれること。組織別(i.e. tendon, articular cartilage, bone, ligament etc)に自分で興味のあるトピックを選び、掘り下げて、文献を読んでエビデンスをcriticallyにreviewし、まとめて発表…ということやっており、私はつい先日meniscus/labrumのセクションで「半月板損傷時の縫合(repair)手術」について発表したりしました。なかなか面白かったのでここに書き残しておきます。

●Meniscus and 3 Vascular Zones
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さて、半月板はその外側に血流が集中していて、中に行くほど血流が無くなると言われており、それらは
 Red-Red Zone (R/R): 血流が充分にあり、治癒能力が高い
 Red-White Zone (R/W): 限られた血流がある
 White-White Zone (W/W): 血流がなく、治癒能力が無い
という3種類に分けられる、という考え方が一般的です。1,2
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●Meniscus Repair vs Meniscectomy
さて、実際に半月板に損傷が起こり、手術が必要となった場合、
その手術は縫合術(Repair)か切除術(Resect)のどちらかになります。
歴史的に言うと、半月板損傷はそのタイプや程度に関係なく問答無用で全切除(total meniscectomy)していた時代もありました。しかし、半月板を完全に取り除いてしまうとArticular cartilageの変質が著しく起こることが1940年代頃に判明し、現在は「損傷の程度を見極め、残せるだけ残すよう処置する」のが膝の機能を出来る限り保つのにベストだと言われています。1,2
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具体的には、R/R zoneで起こった損傷はなるべく縫合して自然治癒(↑イメージ右)、W/W zoneに起こった怪我は残念ながら治癒が見込めないので、最低限の箇所を切除(↑左)、ということになります。あまりに小さい損傷は「何もしない」こともありますが、unstableなtearは放っておくとふとした動きで力がかかり、損傷が悪化することがあるので、それを防ぐ意味で切除するわけです。(内視鏡で見ると、ふたつのprocedureはこんな感じ↓。ぬいぬいとがりがり)
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●R/Wは、どうするか?
で、問題なのは「ちょっとばかし治癒能力が残っている」R/W zoneにおける損傷の場合です。これは、縫合すれば治るものなのか?諦めて切除すべきなのか?そういうテーマで今回色々調べておりました。あんまり長々と書いてもアレなので、軸になった文献(↑)3を紹介します。

1996~2013年までに発表された23の研究をまとめたこのSystematic Review。
全てを併せた767件のR/W tear repairを検証してみたところ、そのうちの637件(83.1%)が『臨床的に回復した=手術成功』とされ、それ以上の手術を必要としなかった、という統計が出ています。研究にもよりますが、これらの『臨床的に回復した』という定義は広く1) 痛みや頻繁な腫れ、Clickingや関節のLockingなどの諸症状が見られない、and/or、2) MRIで手術箇所に>50%以上の半月板組織再生が認められたことを指します(注:MRIで確認できた治癒が『不十分 (<50%)』だったにも関わらず患者に自覚症状が一切無く、結局再手術をしなかった4人の患者も『手術失敗』のカテゴリーに入れられています)。成功・失敗の基準がそんなに緩くて大丈夫なのか?と思った方は鋭い!全てではありませんが、second-look arthroscopyと呼ばれる内視鏡手術をして半月板の回復を確認した研究もかなりあります(でも金銭的・ethicalな理由でこの方法が全対象患者に採用できなかった研究ももちろん多いのです)。

研究別に見てみると、こんな感じ(↓)。
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(Table 2: Barber-Westin & Noyes, 2013)
いやー、このテーブル、美しくまとめられていますね!素晴らしい。
殆どの研究が80%以上の『成功率』を出していることが確認できます。
(上のテーブルの一番右端の数字が成功率を示します)
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(Table 3: Barber-Westin & Noyes, 2013)
こちらは損傷のタイプ別、そして手術の細かいテクニック別にまとめられたもの。

個人的な解釈を上げていくと、例えば半月板損傷の中でも最も扱いやすいとされる、Longitudinal (Vertical) Tearが中でも成功率が高いのは納得できます。例えばChoi et al4のデータはキレーにhomogeneousな"longitudinal posterior horn tear in the medial meniscus"患者を縫合手術して2年以降後にfollow-upして集めたもの。全患者(48/48 = 100%)が『成功』と認められたのですが、詳細を見てみると、R/R("Partially (>50%)" Healed vs "Completely" Healed; 8 vs 10)よりもR/W (3 vs 11)の方が完治度は高かったりします。

では、もうちょっと複雑な損傷になってくるとどうなのか?Bucket-Handle Tear (↓左)は数あるタイプの中でもかなり『厄介』とされる損傷ですが、O'Shea & Shelbourne5は『Bucket-Handle Tear (in R/W)がズレてしまって膝関節の伸展を激しく制限されてしまっている』患者11人中10人がRepairで治った、と報告しています。内訳を見てみると、Second-look arthroscopyで"Completely" Healedとされたのは72.7% (8人)、"Partially" Healedが18.2% (2人)。唯一"Failed"とされた患者1人(9%)にも自覚症状は一切なく、機能としては100%の回復が見られていたというから、果たしてそれを患者自身が『失敗』と捉えているかは疑問が残ります。興味深いのはComplete Radial Tear (↓右)の縫合を検証したHaklar et al6の研究。被験者の数は5人と少ないですが、31±15.5ヶ月後のfollow-upでは全員(100%)がほぼ完全に機能回復、受傷前のActivity levelに復帰することに成功しました。これら2種類の損傷は、一般的には今まで『縫合不可能、Meniscectomyするべし』とされてきたことが多く、損傷自体も大きいので切除となると半月板の大部分を取り除いてしまうか、ひどい場合は全摘出ということも珍しくありません。しかし、もしR/W zoneの半月板縫合がこれだけの確率(> 80%)で成功するならば、我々はもっとアグレッシブに縫合を行うべきなのではないか、それで救える半月板は、我々が思っていたより多いのでは?という結論を私はこの課題の答えに導き出しましたとさ。
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もちろん、アスリートにおいて縫合はMeniscectomyに比べて競技復帰に時間がかかる、という大きな障害もあります。Frizziero et al7らによれば、半月板縫合手術の後に選手が競技復帰する平均時間は、以前は5-6ヶ月と言われていたのが最近では3-4ヶ月に縮みつつあります…が、やはり切除手術の3-6週間(練習再開可能)や5-8週間(完全試合復帰)に比べると長いと言わざるをえません(切除1週間後に復帰した選手とか、聞かない話ではありませんし)。もちろん、長期的に見て選手にベストな選択をするのが一番良いに決まっていますが、シーズン中の怪我のtime-sensitiveさもATの皆さんなら分かるはず。「プレーオフに間に合うか…」「決勝までに…」となると『時間がかかる』というのはそれなりに大きなデメリットではあります。
(そんな話も前にまとめたりしました: "プレー続行か否か。最善の選択をする、ということ")

これからの課題はもっと長期的なfollow-upを重ね、患者が10年後、15年後にも健康でいられているかもっと検証する必要があります。特に、縫合の新しいテクニックであるall-insideに関してはそういった研究がまだまだ足りません。一昔前に非常に多く使われていたinside-outという手法では平均16.8年後には成功率は29件中18件(62.1%)にまで落ちてしまったという報告がありますが、8『inside-outよりも良い』と言われているこのall-insideテクニックがbreak throughになってくれるかもしれません。


1. Xu C, Zhao J. A meta-analysis comparing meniscal repair with meniscectomy in the treatment of meniscal tears: the more meniscus, the better outcome? Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2015;23(1):164-170. doi: 10.1007/s00167-013-2528-6.
2. Mordecai SC, Al-Hadithy N, Ware HE, Gupte CM. Treatment of meniscal tears: An evidence based approach. World J Orthop. 2014;5(3):233-241. doi: 10.5312/wjo.v5.i3.233.
3. Barber-Westin SD, Noyes FR. Clinical healing rates of meniscus repairs of tears in the central-third (red-white) zone. Arthroscopy. 2014;30(1):134-146. doi: 10.1016/j.arthro.2013.10.003.
4. Choi NH, Kim TH, Victoroff BN. Comparison of arthroscopic medial meniscal suture repair techniques: inside-out versus all-inside repair. Am J Sports Med. 2009;37(11):2144-2150. doi: 10.1177/0363546509339010.
5. O'Shea JJ, Shelbourne KD. Repair of locked bucket-handle meniscal tears in knees with chronic anterior cruciate ligament deficiency. Am J Sports Med. 2003;31(2):216-220.
6. Haklar U, Kocaoglu B, Nalbantoglu U, Tuzuner T, Guven O. Arthroscopic repair of radial lateral meniscus tear by double horizontal sutures with inside-outside technique. Knee. 2008;15(5):355-359. doi: 10.1016/j.knee.2008.05.012.
7. Frizziero A, Ferrari R, Giannotti E, Ferroni C, Poli P, Masiero S. The meniscus tear. State of the art of rehabilitation protocols related to surgical procedures. Muscles Ligaments Tendons J. 2013;2(4):295-301.
8. Noyes FR, Chen RC, Barber-Westin SD, Potter HG. Greater than 10-year results of red-white longitudinal meniscal repairs in patients 20 years of age or younger. Am J Sports Med. 2011;39(5):1008-1017. doi: 10.1177/0363546510392014.

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  by supersy | 2015-05-23 19:30 | Athletic Training | Comments(4)

6月・7月の講習会 in TOKYOのお知らせ。

今回は宣伝ばっかりになりますけれどもすみません。
さて、春学期も無事に終わり、あと2週間ほどで日本へ帰ります!
日本に帰っても学生としての学期は続くのですが(今学期はヨミモノの宿題が多いよー!)、二足の草鞋生活が当たり前になっている私には、日本に帰って何もしないっていうのもつまらないかなーと思って(ダンナも忙しいし…)、せっかくなので楽しいことができないかと色々な方とこっそりお話させて頂いておりました。

で!今回6月・7月に講習会にてお喋りさせて頂く機会にいくつか恵まれましたので、
その告知をしたいと思います!それぞれかなり異なる内容ですので、ご興味に合うものがあれば是非参加して頂けたり、興味の有りそうな方に情報共有して頂ければ幸いです。

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●日本初!EBP認定講習
6月17日(水) 18:30pm-21:30pm & 6月21日(日) 9:00am-12:00pm
主催: Guardians, LLC
講師: 阿部さゆり
対象: ATC, 日体協AT, PT, MD
内容: "Evidence-Based Orthopedic Evaluation: Introduction and Clinical Application"
   (エビデンスに基づいたスポーツ傷害診断: 基本から応用まで)
BOC CEU: 3.0 EBP CEUs
参加料金: 8000円
詳細はこちらから: フェイスブックイベントページ(17日21日)
申し込みは: Guardians Athletic Training & Therapy 代表・高橋忠良まで。
   1. 氏名(ATCの方はローマ字表記と取得学位、保有資格も併記してください)
    例: 田中花子 Hanako Tanaka, MS, ATC
   2. 所属
   3. 住所
   4. 電話番号
   5. メールアドレス
   6. 参加希望日(6月17日か21日のどちらか)
   以上を明記の上、メールで(tdtakahashi@gatt.jp)お申し込みください。

 これが日本初!BOC・EBP認定コースになるかと思います。
 (つい最近PRIのMyokinematic RestorationもEBP認定が付きましたが、
 時期的にこっちのほうが先にオファーされることになるので)
 Evidence-Based Practiceって耳にはするけどイマイチどういう物なのか分からない、
 何やら乗り遅れてしまったかも知れない…という方にピッタリの初級者向けです。
 しかし!初級者向けとは言えせっかく3時間一緒に過ごすのですから、修了時には、
 『なるほど、診断にどうエビデンスを応用すべきか分かった!明日から使う!』
 というレベルに持っていける構成を目指しています。つまり、修了する頃には
 EBP中級者になっている!と(少なくとも診断という分野においては)。
 
 最初の一時間半は基礎を学びます。具体的には、診断にどう統計を活かすのか。
 Sensitivity, Specificity, Positive/Negative Likelihood Ratioとは何なのか、
 世の中にある様々な研究の質をどう評価すべきか(i.e. QUADAS, QUADAS-2)、
 それらをいかに考慮して統計を解釈すべきか…。
 さらに、「スペシャルテストをひとつ使ってみた→その陽性・陰性が診断にどういう
 影響を及ぼすのか(pre- and post-test probabilityの変化)」等の話をします。

 後半の一時間半は、実際に資料や論文を読み、解釈しながら応用の練習です。
 「この知識を実際の臨床に活かすには?」という内容をディスカッション形式で、
 お互いにわいわいとアイデアを出しあいながら、理解を深められればと思っています。
 例えば、前十字靭帯の診断に前方引き出しテストを使って陰性だった、
 さて、どう解釈すればいい?その根拠は?次に何をすれば?
 みたいな臨床ケースを掘り下げて話し合います。半月板損傷や、足首の捻挫、
 仙腸関節痛、肩のインピンジメント症候群など、皆さんが臨床でよく見るであろう
 怪我について色々検討し、皆さんなりのオトシドコロを見つけて帰って頂ければと
 思っています。
 
 こうして文字にするとややこしそうですけど、
 うちの2年生が上肢・下肢評価の授業で習う内容ですので
 (そして彼らも簡単に使いこなせるレベルの知識ですので)、
 本当に「EBPって何やらさっぱり分からん…」という方にも安心してご参加頂けます。
 逆に、私がブログで診断についてぐだぐだ書いている際、その文章が100%追えている
 という「既にEBPバリバリ使ってる中級者以上」さんには物足りない内容に
 なってしまうかも知れませんのでご理解下さい。

 お席はそれぞれ、17日・21日ともそれぞれ10席ほどを予定してます。
 こじんまりと、と思っていますが、参加希望者が多いようでしたらもうちょっと大きい
 会場を用意することもあるかもしれません。
 お申し込みは上記の通り、高橋までメールでお願い致します。
 お陰様で、両日満席となりました!受講をご希望の方はキャンセル待ちになります。
 その旨、高橋までご連絡くださいませ。


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●REACH Weekend Workshop
7月4日(土) 10:45am-18:15pm (昼食各自12:45pm-2pm)
  5日(日) 10:15am-17:45pm (昼食各自12:15pm-13:30pm)
  *2日間構成の講習ですが、一日のみの参加も可能です
主催: 株式会社REACH
講師: 重森 宝, 吉部 紳介, 伊佐 和敏, 阿部さゆり
BOC CEU: 1日参加で6 CEUs, 2日参加で12 CEUs *EBPではなく通常CEUになります
参加料金: 1日参加は12,960円、両日参加は19,440円
詳細・申し込みはこちらから: 株式会社REACH

私は、それぞれの日に異なる内容の講義を担当させて頂きます。
4日 10:45am-12:45pm
 内容: テンセグリティと瘢痕組織のモビライゼーション
 英語で「アクティブ・スカー」と呼ばれるものをご存知ですか?
 ACL再建手術後の患者さんの回復が思わしくない…そんな時は、瘢痕組織そのものに
 がっつりアプローチしてみるのも手かも知れません。悪い瘢痕組織と良い瘢痕組織を
 どう見極めるか、そしてどう治療するのかを実技も交えて習得します。

5日 15:45pm-17:45pm
 内容: 「アシクビノネンザ」時の下脛腓関節の評価と治療アプローチ
 我々が「アシクビノネンザ」と思う怪我って、本当に靭帯の損傷なんでしょうか?
 もうちょっと視野を広げ様々な関節を評価してみると新たな発見があるかも、です。
 マリガン(Mulligan)・コンセプトに基づいた下脛腓関節のモビライゼーションと
 テーピングテクニックを練習・実践してみましょう。
 *この講義には、ハンドタオルとハサミをご持参下さい。

どちらの内容もシンプルで即日実践可能、且つ私も現場でかなり役立てた知識やスキルなので、皆様と共有できたら嬉しいなーと。お気軽にご参加下さいませ。こちらのワークショップへのお申し込みは上記ウェブサイトを通じてお願い致します。

内容に関しての質問はここでお受けできますが、
運営に関する質問はお答えしかねますので主催者側へお願い致しますです。
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  by supersy | 2015-05-15 06:30 | Athletic Training | Comments(0)

スポーツ中の熱中症対策、できてますか?Exertional Heat Strokeについて考える。

昨年10月に思う所あって夏の甲子園と暑さ対策についてまとめたり(その12)しましたが、今回はちょっと違う角度から…。
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日本救急医学会がつい先日発表したという熱中症診療ガイドラインを読んでみました。
過小評価を防ぐためにスペクトラム形式(↑)を採用したそうで熱中症を症状別に3段階の重症度にカテゴリー別けしており、英語で言えば
  I: Heat Syncope, Heat Cramps
  II: Heat Exhaustion
  III: Heat Stroke
…という分類になっているみたいです。

数多くの専門家が膨大な時間と知識をかけて練り上げたこのガイドラインを否定するつもりは毛頭ありませんし、高齢者の屋内での非労作性熱中症(passive heat stroke)の症例が多いという独自の文化のある日本に於いてはこのガイドラインはしっかりまとめられたものであると感じていますが、スポーツの現場で働く医療従事者にはこのガイドラインをそのまま解釈してしまうと怖いところもあるかなと思います。補足…というのもおこがましいですが、スポーツというユニークなsettingだからこそ、そこで働くプロが知っておくべきと私が思うこと、簡単にまとめたいと思います。
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●必ずしも順番通りには起こらない
今回ガイドラインにまとめられているHeat Illnessの分類ですが、
必ずしも全ての患者がIの状態から始まり、IIに進行していって最終的にIIIに至る、という順番で悪化していくわけではないことは強調しておきたいです。過小評価をしないようにスペクトラム形式にしたのは分かりますが、特にスポーツ中の熱中症は短時間でガツンといきなり前兆無くHeat stroke(III)になったりもするので、「スペクトラム」という言葉の持つ「流動的進行」と言うコンセプトには捕らわれすぎず、患者の症状を冷静且つ客観的に診ることを心がけるべきかと思います。

●労作性(exertional) vs 非労作性(passive)
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前述したように、Exertional Heat Stroke(EHS)はPassive Heat Strokeと異なる点が幾つかあります。今回日本救急医学会がまとめたのはどちらかと言うとPassive寄りなのかなと。スポーツで起こる熱中症は、基本的に「Exertional」であることを前提として、我々が認識すべきと思うのは…。

●運動中の深部体温を正しく計測するには
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皆さんご存知のように熱中症重度II(Heat Exhaustion: 37-40℃)やIII(Heat Stroke: >40℃)の正確な診断には深部体温(Core Temperature)の計測が必要不可欠。
では、運動中のニンゲンの深部体温はどう効果的に計れるものなのか?このふたつの研究(↑)1,2は、15人の男性・10人の女性被験者のランニング前、ランニング中、ランニング後の体温の変化をそれぞれ屋外・内で計測・記録したもので、深部体温のGold Standardと言われている直腸温(Rectal)と、口腔(Oral)、腋窩(Axillary)、腸(Intestinal)、耳(Aural)、側頭(Temporal)、そして額(Forehead)の体温を、比較しまとめた結果が下のグラフになります。
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*6つのグラフは、それぞれと直腸温を比較したもの。
   Oral           Axillary
   Gatrointestinal      Aural
   Temporal         Forehead

このふたつの研究の結論としては、
- 安静時と異なり、運動中は外気温や湿度はもちろん、筋収縮による体内からの発熱の
 影響を多く受ける。更に、運動に伴い身体の血管も部分的に収縮・膨張をしているので
 ひとつのカラダでもその部位ごとに体温が大きく異なる。『深部体温』を測るのに、
 直腸温と等しく正確と言えるのはGI (Ingestible) tempのみ。
 *Ingestibleに関してはものすっごく前にちょっとだけまとめたことがあったみたいです。今でも、
 「コストが高い」や「運動6-8時間前にpillを飲まなければいけない」、そして、「飲み込んだpillがどれだけの
 早さで体内を通過するかは個人差があり、タイミングがずれれば計測自体が不可能になる」
 というデメリットがつきまといます。

- 屋内屋外の運動に関わらず、口腔、腋窩、腸、耳、側頭、そして額で計る温度は
 深部体温との関連性が確認できなかった。つまり、「口腔体温に+2℃すれば
 大体深部体温と同じくらいになるでしょ」というような甘い考えは通用しない、
 ということ。片方が上昇している時にもう片方が下降している場合もあり、
 No correlation exists。RectalとGI temp以外の方法で深部体温を『予測』する
 ような方法は存在しないのです。

●Rectal Temp or No Temp at All
Ingestible Tempを使えるようなsettingは非常に限定的で、殆どの人にはまだ実用性に欠ける手段であるとして話を続けると、スポーツの現場で、ATがhyperthermiaをsuspectした時に体温を計るならば、直腸温という選択肢しか無いのです。他のもの(i.e. Oral, Axillary etc)を使って体温を「計った気になる」よりは、全く計らないほうがいいくらいです。

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●Every Minute Matters
The key determinant for an exertional heat stroke outcome is the time above a critical temperature, not the maximum temperature obtained.” ―a quote from May 29, 2003, ACSM Annual Meeting in San Francisco, CA
患者がHeat Strokeを起こした場合、生存率に直結するのは「患者の最高体温がどれだけ上昇したか」ではなく、「患者の体温がどれだけの時間、Critical Temp (40-41℃)以上であったか」なのです(↑上グラフ参照3)。つまり、患者の命を救うには、一刻も早く患者の体温を40℃未満に下げなければならない。理想としては、1) 患者が倒れてから5分位内にaggressive coolingを開始2) そして15分位内にCritical値である40-41℃以下に下げ3) 39℃になり次第、患者を病院に搬送開始、と言われています。4

●Cool First, Transport Second
だからこそ、EHSの救急対応のモットーに「病院は二の次、現場で一刻も早く体温を下げよ」と謳われるのです。悠長に患者を病院へ運んでいる時間はありません。まずは現場で一刻も早く体温を下げることです。それだけではありません。患者の体温を下げる方法は多くありますが、中でも現場の我々ATは、「最も効果的に体温を下げられる」cooling modalityを選ぶ必要があるわけです。

●Effective Whole-Body Cooling?
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さて、このSystematic review5もまたATならば一度目を通して置くべき論文。
これによれば、過去に記録された『体温を下げる物理療法』として効果的だったのは…
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上のグラフは、様々なModalitiesをcooling rateの高い順に右から並べたもの。中でも理想的(Ideal)と分類されたmodalitiesは、Heat Stroke患者の体温を10分位内に39℃まで下げられる、aggressiveなcoolingが出来るものたち。Acceptableは所要時間約17分、そしてUnacceptableは我々が使うべきでない、cooling modalitiesとしては機能しないものたち。通常体温に下がるまでに一時間以上かかるものも多く、生存率はその場合限りなくゼロに近くなると考えて良い。
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ダメなものは「Ice packを動脈の上に当てる」や、「ミストファンを使う」(↑)。
有効なのはただひとつ、Cold/Ice-Water Immersion
冷たい水/氷水に患者の全身を浸からせる、という方法です(↓)。
この時、患者のカラダを冷やし過ぎないように、Rectal tempを計測しながら、39℃まで体温が下がったら患者をタブから出して病院への搬送を開始するのが理想です。39℃って、まだ体温としては高いのでは…と思う方もいるかもしれませんが、タブから出ても体温の低下はまだ続くので、39℃という数字が実は丁度良い搬送の目安なのです。39℃以下まで冷やし続けてしまうと、逆に低体温症の状態を作ってしまう危険性もありますので、ご注意を!
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●Falmouth Modelに見習う
…じゃーお前さんはあれかい、
夏にチームが練習するってときは、直腸温度計とcold tubを常に用意しておいて、いざという時にはこれを全部やれっていうのかい?とお思いのATの方もいるでしょう。答えは、『もちろん!』です。少なくとも、アメリカではATCという資格を保持している以上、ここまでの知識を持ち、実行するのが最低限のexpectationってもんです。
b0112009_8521975.pngそんなEquipment買うお金がない!手間かかりすぎ!
直腸温を肛門で計るのは、リスキーすぎる!
…というのは悲しいかな、怠慢でしかありません。

直腸温度計は$200-300位なもんです(→)。
人を一人救うのに、これが高い値段でしょうか。
(ちなみに、EHS用に理想的なのはDataTherm®のような、probeが曲がるタイプです。患者を水に入れたまま、リアルタイムの体温変化がモニターできるので)

未だによく聞くのが、「肛門に入れるなんて…too invasiveだよ!それが原因で訴えられたりしたらヤダよ!」という声。これね、AEDが出来たばっかりの時もこういう声があったんですよ。「胸をさらけ出すなんて…女性患者に後で訴えられたらヤダよ!」ってね。でも、AEDがいかに救命に重要な道具で、その為にはパッドを肌に直接取り付けなきゃいけないか、すっかり世の中に浸透したでしょ?今ではAEDの使用を「破廉恥な!」なんて言う常識人はまずいないはずです。Rectal tempにも同じことが言えます。もちろん、患者のプライバシーは守って、患部はタオルやブランケットで出来る限り隠す等の気配りは可能な限りする。それ以上のところは、我々は誰かを辱めようとしているわけじゃない、救命活動をしてるのだから、毅然としていればいい。そして、恐らく一番重要なのは、患者に前もって「熱中症になった場合、こういう治療をします。それは、こういう理由だからです」と説明し、同意書にサインをもらっておく。先回りすれば、手の打ちようなどいくらでもあるのです。

こんな大掛かりなことをやるのは、非現実的だよ!…と思う方もいますか?
そういう方には、Falmouth Road Raceのお話をしたいと思います。
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Falmouth Road Raceというのは、毎年8月半ばにマサチューセッツ州で行われる7マイルのロードレースです。7マイルというとそこまで長い耐久レースには思えないかも知れませんが、かなりアップダウンが激しいこと、時期的に気温が高いこと、あと、逆に距離が短いがゆえに走者が速いスピードを保ったまままレースを走る傾向にあることから、かなり過酷なレースと一般的に認識されています。実際、EHSの症例数も、他のマラソンイベントに比べてなんと10倍なのです。

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死人が出てもおかしくないこのレース、実は毎年Korey Stinger Institute (KSI)のメンバーが中心となり、完全EHS対策を行っています。外から見えないような造りテントの中に、かなりの数のcold tabと氷の山。もちろん、その数だけ直腸温度計も用意されています。意識混濁で運ばれてくる患者には即座に直腸温を計測。EHSが認められればすぐにwhole body coolingを開始します。
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このFalmouth Modelと呼ばれる徹底された診断・治療システム、恐るべし、です。本当にすごいです。過去18年間、レース中に総計274件のEHSが確認されましたが(一年平均15.2±13.0件という怖い数字です)、そのうち死者は一人も出なかった、という、100% survival rateを誇っています。6,7

生存率100%。予防医学を勉強されている方ならいかにこの数字が驚異的か分かるでしょう。『予防』の世界で100%という数字は理想であり決して届かぬものでもあります。それを実現させたKSIの努力を我々は無駄にしてはいけない。このFalmouth ModelはEHS対策のGold Standardと呼んでも過言ではないのです。こんなに素晴らしいシステムを「気が進まない…」「面倒くさい…」という理由で採用しないなんて怠慢以外の何者でもないと私は思います。我々ATは命の最前線で仕事する立場なのですから。
ATC保有者の皆様には是非下のどちらかの論文に是非一度目を通して頂きたいなーと勝手に願っています。
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もう一度言います。
直腸温とCold Water ImmersionはEHSの診断・治療スタンダードであるべきです。
これだけの決定的なエビデンスを私は他の分野で未だかつて見たことがありません。

実際、2015年の段階で、Rectal tempを使ってATが訴えられた判例は一件も報告されていません。逆に、熱中症患者にこれらのプロトコルを使わず、訴訟沙汰になってライセンスを失ったATは既に複数居るとのことです。プロの医療従事者として「気が進まないから」という理由で、患者をみすみす死なせるなんてことがあってはいけない。直腸温の検査なんて、看護師は普段から普通にしていることです。うちの学生も、一年生でこの教育を受け(Falmouth Road Raceの話も授業でしました)、文句も冗談も言わずに真面目に直腸温検査を練習しています。このプロ意識が将来のATのスタンダードになるよう、私は私のできることをやっていくしかありません。

1. Ganio MS, Brown CM, Casa DJ, Becker SM, Yeargin SW, McDermott BP, Boots LM, Boyd PW, Armstrong LE, Maresh CM. Validity and reliability of devices that assess body temperature during indoor exercise in the heat. J Athl Train. 2009;44(2):124-135. doi: 10.4085/1062-6050-44.2.124.
2. Casa DJ, Becker SM, Ganio MS, Brown CM, Yeargin SW, Roti MW, Siegler J, Blowers JA, Glaviano NR, Huggins RA, Armstrong LE, Maresh CM. Validity of devices that assess body temperature during outdoor exercise in the heat. J Athl Train. 2007;42(3):333-342.
3. Casa DJ, Kenny GP, Taylor NA. Immersion treatment for exertional hyperthermia: cold or temperate water? Med Sci Sports Exerc. 2010;42(7):1246-1252. doi: 10.1249/MSS.0b013e3181e26cbb.
4. Lopez RM, Casa DJ, McDermott BP, Steams RL, Armstrong LE, Maresh C. Athl Train Sports Health Care. 2011;3(4):189-200. doi: 10.3928/19425864-20101230-06.
5. McDermott BP, Casa DJ, Ganio MS, Lopez RM, Yeargin SW, Armstrong LE, Maresh CM. Acute whole-body cooling for exercise-induced hyperthermia: a systematic review. J Athl Train. 2009;44(1):84-93. doi: 10.4085/1062-6050-44.1.84.
6. DeMartini JK, Casa DJ, Belval LN, Crago A, Davis RJ, Jardine JJ, Stearns RL. Environmental conditions and the occurrence of exertional heat illnesses and exertional heat stroke at the Falmouth Road Race. J Athl Train. 2014;49(4):478-485. doi: 10.4085/1062-6050-49.3.26.
7. Demartini JK, Casa DJ, Stearns R, Belval L, Crago A, Davis R, Jardine J. Effectiveness of cold water immersion in the treatment of exertional heat stroke at the falmouth road race. Med Sci Sports Exerc. 2015;47(2):240-245. doi: 10.1249/MSS.0000000000000409.

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  by supersy | 2015-05-03 20:30 | Athletic Training | Comments(5)

ハムストリング損傷の診断を考える。

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さて。丁度一ヶ月前はSeattleのMyokinのコースにお邪魔していましたが、
先週末はNorth CarolinaのMyokinへ行ってきました。
(NC Stateのフットボールスタジアムを見下ろす素晴らしいviewでの講習でした…)

こうして色々なMyokinに行くのも、色々な講師の教え方を学んだほうが良い、ということで、これもFaculty Trainingの一環なのです。今回は、Jennifer Poulin氏(通称: Jen)の下でお勉強させてもらいました。彼女は授業をきっちりと組み立て、マニュアルに沿った授業をする、私に近いタイプなのでとても学ぶことが多かったです。いやー、PRIも需要が上がるにつれ、講義の種類も、開催回数も、そして必然的に講師の数もぐんぐん増えていますが、同じ授業でもこれでもか!ってくらい講師によってdeliveryの仕方が変わるから面白いですね。私とケニーはどんな色になるやら。

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さて、それでは本題なんですが。
学生から学ばされることって本当に多いなーと思う今日この頃です。

この間(といっても数週間前になりますが)、学生に書かせた課題の論文で、「下肢に起こるorthopedic injuryで実習現場で見たものをひとつ選び、その患者がどういう症状を訴え、どういう評価を経て診断にたどり着いたのか、また、エビデンスを調べ、どういった診断方法が最も効果的で的確かまとめよ」というものがありました。こういう課題の時は学生には何べんも『題材選び』が大事だよ!良い文献があればそれだけで論文の質の7割が決まると思え!と言ってます。例えば、『前十字靱帯断裂』とか『半月版損傷』とか『High Ankle Sprain』とかだったらもうウハウハじゃないですか。最新のエビデンス引っ張ってきて、苦もなく20ページくらい書けちゃう。題材にもアタリとハズレがあるんです。『自分の選んだトピックが良いか悪いか不安なら相談においで』と言っているのですが(そして実際来てくれる子も多いのですが)、どうしても相談ナシでちょっとズレたトピックを選んじゃう子がいるんですよねぇ。

そんなわけで、題材に「ハムストリング肉離れ」を選んじゃった子がいました。

『選んじゃった』という表現をするのは、この怪我は基本『他の怪我をrule out』した上で、MMTと触診を中心に「ハムストリングだね」と結論付けるものだからです。そういう意味で、よく見る怪我ではありますが、課題の趣旨に合ったトピックではありません。案の定論文の出来はイマイチで、「もうー、慎重に選べって言ってるのにぃー、だいたいこんなトピックじゃそもそも診断系の文献がないでしょ…」と思ってPubMedでカタカタ検索をかけてみると…。意外にも面白そうな論文がヒットしました。ええ、なに、ハムストリングの肉離れ診断に使えるSpecial Testってのがあるの?知らなかった!
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…で、今回ご紹介したいのはこの研究。
2013年にReiman氏ら1が過去に発表されたHamstring StrainのSpecial Testについての研究を3件reviewし、まとめたもの。早速結論に飛んじゃうと、こんな感じです。
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*例によってPositive & definitiveなものを赤で色つけてます。

Schneider-Kolsky氏らの研究は最もQUADASが高く、バイアスの可能性が低いのですが、彼らのexamineしたComposite Clinical Assessment (Passive SLR, Active Knee Extension, MMTのうちひとつでも痛みが出るかどうか)はSensitivityは優秀なものの、LRの値がダメダメで、結局post-test probabilityに変化が見られないという決定的な欠陥が。
対してCaccio氏らの研究はQUADASがちぃと低め、そして、どちらかというとChronic Hamstring Injuryの患者を対象にした研究なので、Symptom Durationが15.0±7.2 moとかなり長めです。Acute Hamstring Injuryの患者にも同じ結果がでる保証はありません。統計的にはBend-Knee Stretch TestModified Bend-Knee Stretch Testがどちらもrule in & outに有効。LRの値も優秀です。

Bend-Knee Stretch Test:
  -Patient is supine, the hip and knee of the symptomatic limb are maximally
   flexed. Clinician gradually extends the knee while keeping the hip flexed.
   Note exacerbation of the symptoms.
Modified Bend-Knee Stretch Test:
  -Patient is supine with the entire LE extended. Clinician maximally flexes
   the hip and knee, then rapidly straightens the knee
   *下写真: スタート(左)とフィニッシュ(右)のポジショニング
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フムフム…ハムストリングがストレッチされる感覚と、肉離れの痛みの感覚の違いは恐らく左右差(健側と患側)で区別しろってことでしょうね。
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個人的に一番面白いと思うのは残念ながらQUADASが一番低いZeren & Oztekin氏の研究からのTaking-off-the-Shoes Testです。日本語名は「お靴ぬぎぬぎテスト」ということにします。

このテストでは、「患側の靴を健側の靴を使って脱がす」という動作をさせ、それによってハムストリングに痛みが出るかどうか、という実にシンプルなもの。患側の股関節を90°程ERし、患側の靴のかかと部分を健側の土踏まず部に押し付けるように引っ掛け、膝を屈曲させる…という、(説明すると長ったらしいけれど)本当に我々が自然にする「靴を脱ぐ」動作をさせるだけ。


このテストは140人のプロサッカー選手にやらせてほぼ100%でハムストリングの怪我の有無を言い当てられるというスグレモノ。95%CIも文句なし。この研究そのもののQUADASが低いことは否めないけれど、これだけのSN, SP, +LR, -LRが出るテストってのも珍しいですよね。
このLRの値だと、陽性・陰性の場合共にpost-test probabilityが決定的にシフトするので、もうこのテスト一発でconclusiveな結果が出るってことに…。

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同年(2013年)に発表されたKerkhoffs氏らのLiterature Review(↑)7にもある通り、もちろん『基本』どおりの触診・MMT・PROMの情報も大事だし、これからも変わらず参考にさせてもらうけど、今度ハムストリングの肉離れをsuspectする機会があったら、是非今回学んだ3つのテストも是非交えてみたい、なんて思っております。簡単だし、Routineにも入れやすい。例えばPROMをチェックしてる時にさらっとBend-Knee Stretch/Modified Bend-Knee Stretch Testを混ぜちゃうとか、靴脱いで治療テーブルに上がってもらう時に手を使わず、Taking-off-the-Shoes Testをやってもらっちゃう、とか。かなりClinical Usefulnessはあるんじゃないかと思いますね。

もちろん、他の怪我の可能性も考えて!
ハムストリング損傷以外のposterior thigh painの原因となるDifferential Diagnosisとして、L-spine radiculopathyをrule outするのにSlump test (SN 83%)2SLR test (SN 97%)3が、SI Joint DysfunctionとPiriformis Syndromeをrule outするにはそれぞれcluster testing: Thigh Thrust, Sacral Thrust, SI Compression, SI Distraction Testのうち陽性が1つ以下(SN 88%)4もしくはThigh Thrust, Sacral Thrust, SI Compression, SI Distraction, Gaenslen’s のうち陽性が2つ以下(SN 91%)5、そしてFAIR test (SN 88-97%)6が有効ですのでご参考までに。

いやー、学生の気まぐれがきっかけで読み始めた文献だったけど、
色々勉強させてもらっちゃいました。自分だけだったらまさかハムストリング損傷の評価についての論文を検索しようなんて思わなかっただろうから…。学生のランダムさにも、感謝することが多いです。今学期もあと一週間で終わりますが、期末試験も実技試験も採点も頑張って綺麗に締めくくろうと思います。アメリカは年度末。かきいれどきじゃー!

1. Reiman MP, Loudon JK, Goode AP. Diagnostic accuracy of clinical tests for assessment of hamstring injury: a systematic review. J Orthop Sports Phys Ther. 2013;43(4):223-231. doi: 10.2519/jospt.2013.4343.
2. Stankovic R, Johnell O, Maly P, Willner S. Use of lumbar extension, slump test, physical and neurological examnination in the evaluation of patients with suspected herniated nucleus pulposus. A prospective clinical study. Man Ther. 1999;4:25-32.
3. Vroomen PC, de Krom MC, Wilmink JT, Kester AD, Knottnerus JA. Diagnostic value of history and physical examination in patients suspected of lumbosacral nerve root compression. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2002;72:630-634.
4. Laslatt M, Aprill C, McDonald B, Young S. Diagnosis of sacroiliac joint pain: validity of individual provocation tests and composites of tests. Man Ther. 2005;10:207-218.
5. Laslatt M, Youg SB, Aprill CN, McDonald B. Diagnosing painful sacroiliac joints: a validity study of a McKenzie evaluation and sacroiliac provocation tests. Aust J Physiother. 2003;49:89-97.
6. Fishman LM, Dombi GW, Michaelsen C, et al. Piriformis syndrome: diagnosis, treatment, and outcome – a 10-year study. Arch Phys Med Rehabil. 2002;83:295-301.
7. Kerkhoffs GM, van Es N, Wieldraaijer T, Sierevelt IN, Ekstrand J, van Dijk CN. Diagnosis and prognosis of acute hamstring injuries in athletes. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2013;21(2):500-509. doi: 10.1007/s00167-012-2055-x.

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  by supersy | 2015-05-01 23:30 | Athletic Training | Comments(7)

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