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Phonophoresis(音波泳動)について、最新エビデンスのまとめ。

突然ですが今日は諸事情あってニュース番組にお呼ばれしてきました。
建物に入ったらあまりにすぐセットなもんだからびっくり。
す、すぐ横でキャスターさん達収録してるっ!意外と隔離されてないんだ…あんまり防音とかも
してないのね。人、周りに常にせわしなく歩きまわってるし…。あ、天気予報のおねいさん、
緑の背景を指さしながら喋るんだ…実際の天気図は合成なのね。す、すごい、職人芸!
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*写真はイメージです
テレビに出させてもらったことはあるけれど、生出演は初めてだったので
スタジオのセットとかついつい興味深く見てしまいました。
放送は録画とスタジオ(生放送)がコロコロ切り替わるので、キャスターさんも「あと40秒で(スタジオに切り替わりま)す」と言われているのに「朝早くに来てもらっちゃってごめんねー!」「実はうちの息子もコーチが無茶なトレーニングさせるもんで腰痛持ちになっちゃって…、あ、フットボールやってるんだけどね」と私と談笑していたりで、慣れないこっちがハラハラした(苦笑)。キャスターさん、気さくで良い方でした。

実は前回ACL断裂についてまとめたのもそういう経緯で、学部長とうちのHead ATに
「なんかACL予防についてメディアに喋れる専門家居ないかと言われたけどSyどうなのやるのやりなさい」と要請されたので駆りだされてきたわけです。別にエキスパートってわけでもないのにっ。そんなわけで、前回のエントリーは私なりの下調べでした(笑)。
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当日は風邪引いてこっそり発熱中だったんですが(オイ)、面白い体験でした。
こういうのもうちの大学、そしてこの職業をプロモーションする良い機会かなぁと思って。

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さて。これまた唐突ですが、忘れる前にまとめておきたかったものをひとつ。
就職活動で現地面接をふたつこなしたと書きましたが、今は教職のみに絞って仕事を探しているので、その面接の一部に”こういうトピックで小一時間ほど講義をしてみてください"という実技が入ります。トピックは『何でもお好きなもので』と言われることもあるし、細かく指定されることもあります。今回は、そのうちのひとつで『Phonophoresisについてお願いします』と先方が言ってきたところがありました。
私の正直な心のなかのリアクションは「なぜに?!」Phonophoresisなんて結構マニアックなところを…。Iontoならエビデンスのスタックがあるのに…。これはなかなか厄介なトピックです。もしや先方にこの分野のエキスパートでのいるのかと一瞬勘ぐりたくなりましたが(苦笑)。でも、不慣れなものこそ、勉強できる良い機会!と考え自分なりに資料を集め、プレゼンを完成させました。

せっかくなので、今回はそれの後半部分、
Phonophoresisを、どんな整形外科の怪我の治療に用いるのが適切なのか?
というところに絞って最新のエビデンスの部分を簡単にまとめますね。
(Phonophoresisの基本メカニズムや他の投与の仕方に比べたメリット・デメリット等の
イントロの部分は便宜上ここでは省きます)

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●Lateral Epicondylalgia
Phonophoresisを用いたLateral Epicondylalgiaの治療に関しては、
3つほどSystematic reviewを読んでみたのですが、いずれも
 - エビデンスに一貫性が欠ける1-3
 - 通常のUSに比べて優れているとは現時点で言えない1,2
…という印象です。他にも、
 - Deep friction massageに比べて効果に大差が見られない4,5
ということから、医者に薬を処方してもらい、それを使ってというreferralの手間を考えると、
この怪我に対してPhonophoresisを用いるメリットは今の所無いかも?他のもので重要同様・もしくはそれより良い効果が得られる、と結論付けるのが無難かも。

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●Carpal Tunnel Syndrome
これに関しては面白いエビデンスが沢山見つかりました。
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まず、2010年にpublishされたCTSのnon-surgical treatmentのオプションをまとめたSystematic review7によれば「ステロイド注射と同様の効果―特に優れているというわけではない」ということだったのですが、
これよりも最近発表された論文に絞ってより深く掘り下げてみると、
実はそうでもないことが見えてきます。例えば、2012年に発表されたGurcay氏ら6のRCTによれば、
 Group 1: 3 weeks of Phonophoresis + Wrist Splint
 Group 2: 3 weeks of Iontophoresis + Wrist Splint
 Group 3: Wrist Splint only
この3グループを比べた時に、最も症状に改善が見られたのはGroup 1だったそう。
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Yilidiz氏ら8は、
 Group 1: Sham US + Wrist Splint
 Group 2: US + Wrist Splint
 Group 3: Phonophoresis + Wrist Splint
これらのグループを比較した場合、どの被験者も症状に改善が見られたが、Sham USとUSのグループにそれほど差がなかったことに比べ、Phonophoresisの治療を受けたグループの痛みの改善度は統計的に有意であった、という結果が出ました。
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…で、この研究が面白いんですよ!Soyupek氏ら9のこれまた2012年のもの。
 Group 1: 3 weeks of Phonophoresis (NSAID)
 Group 2: 3 weeks of Phonophoresis (corticosteroid)
 Group 3: Local Corticosteroid Injection
 Group 4: Wrist Splint for 15 days
グループ1&2は同じPhonophoresisなのですが、使用している薬の種類が異なる。逆に、グループ2&3は、使用している薬は同じなのですが、片方は3週間かけてPhonophoresisでじわじわ投与するのに比べてもう片方は一回ポッキリで注射で直接注入。グループ4は、15日間スプリントで固定して、その後は「必要に応じて」患者判断で固定すればよし、というもの。

結果がね、とっても興味深いんです。まず、Splint onlyのグループは痛みのみ改善が見られたものの、その他の数値は全く回復せず。ステロイド注射のグループは、痛みと機能は大いに回復が見られたものの、感覚能力と手先の器用さはハッキリと悪化した、というのがなかなか衝撃的。Phonophoresisのグループは共に全体的に満遍無くしっかりと改善が見られましたが、特に抗炎症剤を用いたPhonophoresisのグループはとにかく痛みが最も改善した、ということが確認されました。

つまり、これらの3つの研究をまとめると、CTSを治療するにあたり、
 - Phonophoresis + splintは、Ionto + splintやUS + splintよりも全体的に優れている。
 - ステロイド剤を患者に使う場合、
  注射よりもPhonophoresisを介した投与のほうがリスクが少ない。
 - 痛みを取り除きたい場合(ATにありそうなコンテクストでいうと、例えばテニス選手が
  試合間にとにかく痛みをなるべく抑えて試合に臨みたい、というマッチ直前の場合とか)
  抗炎症剤をPhonophoresisで、というコンビネーションが最もチカラがあるかも。
…ということが言えるかと思います。

●Other Ortho Conditions
数は少なかったのですが、他の怪我に関する文献を上げてみると、
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Chronic Low Back Pain (慢性的腰痛)10
 - US + ExerciseとPhonophoresis + Exerciseは、
  Exerciseのみに比べて同様により効果的。

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ITB Friction Syndrome (腸脛靭帯摩擦症候群)11
 - アイスマッサージと抗炎症剤に加えて、Phonophoresis (corticosteroid)か
  Knee Immobilizationをするかを比べた場合、Phonophoresisを用いたほうが回復が早く、
  研究の最後に行われたランニングテストでもより訴える痛みが少なかった。

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Upper Trap Trigger Points (上部僧帽筋発痛点)12
 - PhonophoresisとPressure Releaseは、USもしくはコントロールのそれに比べて
  より同様に効果あり。

つまり、これら3つの怪我に対してもそこそこ有効な治療であるのではないか、
ということが言えます。もちろん、エビデンスは限られていますが。

●Phonophoresisの未来
整形外科の怪我とは少し離れますが、今回文献を読んでいて、Low Frequency Phonophoresis13-15という言葉に何度か出くわしました。よくよく読んでみると、私達が一般的に認識しているPhonophoresisとは厳密にはHigh Frequency Phonophoresisと呼ぶらしくて、Topical steroidsやNSAIDsに用いられるのはコレ。しかし、Low Frequency Phonophoresisを用いることで(i.e. <1MHz)、local cavitationの効果が最大限に引き出され、結果、より大きな分子も通れるような道ができる、というのです。これによって、例えばtopical medicationだけでない、ホルモンやプロテイン、ワクチンと言った、一回りも二回りも大きな分子たちも活発に動けるようになり、例えば、ホルモン治療の新しい投与としてのPhonophoresisとか、もしくはワクチン注射の代わりにワクチンPhonophoresisが流行るとか(より大きい血管を目掛けてこれをすれば、general circulationに乗って注射と同等の効果が出るのだそう)、これからのPhonophoresisの用途はどんどん増えていきそう。注射嫌いの人たちには朗報かも知れませんね!
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そんなわけで、勉強させて頂きました。
Iontoを用いた偏頭痛治療とか、面白い研究も手元に沢山あるのだけれど、
これはまた別の機会に。いやー、物理療法って、なかなか奥深くて面白い!
ではでは、体調をフル回復させにゃいかんので、今日はもう寝ます。またー。

1. Bisset L, Paungmali A, Vicenzino B, et al. A systematic review and meta-analysis of clinical trials on physical interventions for lateral epicondylalgia. Br J Sports Med. 2005;39:411-422.
2. Hoppenrath T, Ciccone CD. Is there evidence that phonophoresis is more effective then ultrasound in treating pain associated with lateral epicondylitis? Phys Ther. 2006;86:136-140.
3. Trudel D, Duley L, Zastrow I, et al. Rehabilitation for patients with lateral epicondylitis: a systematic review. J Hand Ther. 2004;17:243-266.
4. Nagrale AV, Herd CR. Ganvir S, et al. Cyriax physiotherapy versus phonophoresis with supervised exercise in subjects with lateral epicondylalgia: a randomized clinical trial. J Man Manip Ther. 2009;17(3):171-178.
5. Stratford P, Levy D, Gauldie S, et al. The evaluation of phonophoresis and friction massage as treatment for extensor carpi radialis tendinitis: a randomized controlled trial. Physiother Can. 1989;41:93-99.
6. Gurcay E, Unlu E, Gurcay AG, et al. Assessment of phonophoresis and iontophoresis in the treatment of carpal tunnel syndrome: a randomized controlled trial. Rheumatoil Int. 2012;32:717-722
7. Huisstede BM, Hoogvliet P, Randsdorp MS, et al. Carpal tunnel syndrome. Part I: effectiveness of nonsurgical treatments-a systematic review. Arch Phys Med Rehabil. 2010;91:981-1004.
8. Yildiz N, Atalay NS, Gungen GO, et al. Comparison of ultrasound and ketoprofen phonophoresis in the treatment of carpal tunnel syndrome. J Back Musculoskelet Rehabil. 2011;24:39-47
9. Soyupek F, Kutluhan S, Uslusoy G, et al. The efficacy of phonophoresis on electrophysiological studies of the patients with carpal tunnel syndrome. Rheumatol Int. 2012;32:3235-3242.
10. Durmus D, Alayli G, Goktepe AS, et al. Is phonophoresis effetive in the treatment of chronic low back oain A single-blind randomized controlled trial. Rheumatol Int. 2012;33:1737-1744.
11. Bischoff C, Prusaczyk W, Sopchick T, et al. Comparison of phonophoresis and knee immobilization in treating iliotibial band syndrome. Sports Med Train Rehabil. 1995;6:1-6.
12. Sarrafzadeh J, Ahmadi A, Yassin M. The effects of pressure release, phonophoresis of hydrocortisone, and ultrasound on upper trapezius latent myofascial trigger point. Arch Phys Med Rehabil. 2012;93:72-7.
13. Polat BE, Hart D, Langer R et al. Ultrasound-mediated transder mal drug delivery: mechanisms, scope, and emerging trends. J Control Release. 2011;152:330-348.
14. Rao R, Nanda S. Sonophoresis: recent advancements and future trends. J Pharm Pharmcol. 2009;61:689-705.
15. Mitragotri S, Kost J. Low-frequency sonophoresis: a review. Adv Drug Deliv Rev. 2004;56:589-601

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  by supersy | 2014-05-26 22:30 | Athletic Training | Comments(0)

女性アスリートに於けるACL(前十字靭帯)断裂の予防プログラムについて考察する。

いやー、怒涛の3週間でした…。
期末試験から、試験を終えて全ての採点。そして就職活動の現地面接がふたつに
先週末にはVirginia州へ長年履修したかった講習を受けに(↓写真)と飛行機で飛び回り、
ここ2週間ほとんど家を空けていました。実りは多かったけど、疲れた。。。
今日は帰りのフライトが機体トラブルで2.5時間ほど遅れて(初めて、一度搭乗した後に
「ちょっと修理します、数分で終わります」と言われ、20分後くらいに「直らないので一旦降りて下さい」になり、ついに「別の飛行機を用意します」というすったもんだの展開でした)、
さっきやっと家に帰ってくることが出来ました。ここから向こう2週間は家にいられるので、
とりあえず一息です。ホッ。
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ちなみにこの講習(↑)は大先輩のまささんや高橋先生も一緒で、
わいわいお喋りもできて楽しかったです!

――――――――――――――――――――――――――――――――
さて、これらとは全く関係ないのですが、
諸事情あって実はACL(膝前十字靭帯)断裂予防関係の論文を幾つか読んでいました。
特に最新のこのmeta-analysis(↓)11が面白かったので、簡単にまとめてみますね。
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●男女差
ACLの断裂が起きるのは、統計的に女性アスリートが男性アスリートに比べて4-6倍も多い1というのは、スポーツ医学会ではもはや常識かと思います。
一度ACLを断裂すると、その後手術で再建し、リハビリを行おうが、手術せずにリハビリで筋の強化を図ろうが、どちらにしてもosteoarthritis(OA)になる可能性が健康な人の10倍も高まる2、また、ACLの怪我から機能回復をしても20年位内にはその患者は確実に(100%)OAになり、慢性的な膝の痛みを抱えることになるかも。その後の人生に多少なりとも影響が出るかも知れない、という嫌な統計もあります。3
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●何故か?
この理由を説明するのには幾つかの説があり、
- ホルモンの影響:女性ホルモンの影響で女性は男性に比べて身体が柔軟なため、
 関節の可動域が大きく、安定性に欠けるが故に怪我に繋がり易いのでは?
 (特に、月経の周期に伴ってACLの怪我のリスクの上下に関係があることは
 幾つかの研究4,5で言及されています。preovulatory もしくはovulatory phaseの間が
 postovulatory phaseに比べて怪我が多いのです)
- 解剖学的:典型的なもので言うと、女性は男性に比べて骨盤が大きく、
 Q-angleが大きい。故に、動きの中で生まれる膝にかかるtorque(捻れのチカラ)も大きい?
- Neuromuscular(NM) ability: 男性のほうが自分の身体を思い通りに動かす
 能力に長けていて、女性はというと、分かりやすく言うと少しどんくさいのかも?
 特に、若い女性アスリートによく見られる、着地時の内股(dynamic knee valgus
 during landing
↓)はACLの断裂と密接な関係があると言われています。
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これらの危険因子のどれが一番実際の怪我に繋がりやすいのか、という結論を現時点で出すのは難しく、恐らく全ての要因が複雑に重なり合って起こるのだと考えるのが一番理に適っているのではないかと思います。
では、これらに対して我々はどのようにアプローチすべきなのか?

●どうすればリスクを減らせるか?
もちろん、女性ホルモンが原因だからといって男性ホルモンを注射しちゃえー、とか、
骨盤が広いのがいけないなら手術して削っちゃえ―、というのはとんでもありません!
でも、一番最後のNMに関して言えば、アスリートを特別な『予防エクササイズプログラム』において正しい身体の使い方を学んでもらうことで、予防できる怪我もあるかも知れません。こういったエクササイズのプログラムを、この文献ではNeuromuscular training (NMT) interventionと呼んでいます。

●いつリスクに変化が見られ始めるのか?
興味深いことに、前述したACL断裂の怪我発生頻度における男女差は、思春期前には存在しないようなのです。どうやら思春期を境に、男女の身体がそれぞれ変化していくにつれ、女性の怪我のリスクが男性のそれと比較して上昇していくことが分かってきています。 男性ホルモンと女性ホルモンがそれぞれ活発に分泌され、体つきも変化していく中で、男性が身体能力が伸びていく(具体的にはpower/strength、それからcoordinationの値が平均してぐんぐん上昇する)のに比べ、女性は身体の変化についていくのに苦労し、慣れ切らないままオトナになる人が多い、という表現が正しいかも知れません。6
丁度その時期に女性アスリートのバイオメカニクスに変化が見られ、7,8 ACL断裂の頻度がピークになる8のも、偶然ではないように思えてきます。

さて、前置きはこのくらいにして、それでは女性アスリートに対して、どのような内容のNMTを、どのようなタイミングで課すのか。そしてどのくらい続けさせればより効果的なのかについてこのmeta-analysis11を読み解いていきたいと思います。

このmeta-analysisで細かく分析されたのは条件に当てはまった14の研究(Table 1)ですが、
その結果がなかなか面白いのでごく簡潔に紹介したいと思います。
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●年齢別のNMTの効果とACL断裂リスクの減少値
被験者の結果を年齢別に分けて分析すると、ハッキリとした違いが見えてくるのです。
女性アスリートをmid teen (14-18歳)、late teen (18-20歳), early adult (>20歳)に分けて分析すると、mid teensのリスクが72%減少したのに比べ、late teens52%, early adultsNo Reduction(0%)と年齢によってプログラムの効果に大きな影響が出ることが明らかになりました(Figure 4)。つまり、NMTの細かい内容よりも、選手が幾つの時にやらせるか(potential windowがある=思春期の、なるべく早い時期が良い)、が成功の一番のカギになってくるというのです。シンプルに結果を18歳以下と18歳より上で比べた場合のリスク減少度は、それぞれ72%と16%と、これもびっくりするほどの差(Figure 3)が出ています。
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20歳以上には効果が見られなかったというのが個人的に驚き。
これは論文中で「もしかしたら、20歳以上のアスリートはそれだけ運動能力も高いから既にNM能力が高いという可能性もあるけれど」とは言及されていましたが、個人的な経験からすると、このくらいの年齢だと「This is just the way I am」という態度のアスリートも増えて、「これが私だから変えるつもりはない」「別に今までもこれでなんとかなってるし」と考えていたりNMTそのものを「面倒くさい」「何でやらなきゃいけないの」なんて感じているケースも多かったりするんじゃないかな、なんて。若い子ってやれと言われれば比較的なんでも楽しみながらやってくれたりするけど、年齢を重ねてくるとそうでもなかったりする。もちろん、幾つになっても謙虚で何でも挑戦してみたい!という選手にも多く会ってきましたが。

●早ければ早いほどいいのか?
こうなると、『18歳では手遅れかも知れないことが分かった』→『では、早ければ早いほどいいのか?いつから始めるのが適切なのか?』という新たな疑問も浮かんできます。これはmeta-analysisから少し反れますが、7歳の女の子(小学2年生)対象に体育時の授業の一環としてNMTを取り入れた実験9 では、このプロファイルのアスリート(…と、この年齢では呼ぶべきではないかな?)が特にNMTに対して順応する能力が高い。非常に高い効果が見込めるのでは、という結論が導かれています。もちろん、指導の仕方は年齢に応じて分かりやすい言葉を使う等変化させる必要がありますが。

●どれくらいのDurationでやるべきなのか?
Padua氏らの研究10によれば、NMT(この場合は『正しいジャンプと着地』に重きをおいたプログラム)を3ヶ月続けた場合と9ヶ月続けた場合では、プログラムを修了後3ヶ月後に再測定した時に3ヶ月のみやったグループは着地のメカニズムがプログラム履修前に戻ってしまったのに比べ(=学習効果が失われてしまった)、9ヶ月の方はしっかりと修正されたままの着地フォームだった(=効果が維持された)そう。NMTもそれなりに長くないと(少なくとも3ヶ月では不十分、9ヶ月程やらないと)成果が長持ちしないということですね。

●どのような内容のNMTが好ましいか?
論文内では"plyometrics, dynamic stabilization, strength, and feedback-driven technique training (p.212)"の要素を兼ね備えたプログラムが最も相乗効果が高いのでは、と指摘しています。適切なfeedback無しにはプライオもバランストレーニングも効果が確認できなかった、としているところも実に面白い。つまり、ただ単にジャンプや着地の動きを数こなせばいい、というわけではなくて、適切で迅速な「今のはつま先で着地してしまっていたからもう少し足全体を使ってごらん」「今のはいいね、気持ちお尻をきゅっと締めて、ちょっと大殿筋を意識してみようか」などという、正しい理解に基づいた質の伴う建設的なアドバイスが必要というわけです。もちろん、こういった的確feedbackが誰にでも出来るわけではない。それぞれのスポーツコーチやS&Cコーチもしっかりとしたトレーニングを積めば十二分にこの役目を果たせるでしょうが、怪我のメカニズムと選手の動きの癖を見抜くプロである、医療従事者の我々アスレティックトレーナーが最も適任かと思いますね。
Compliance(選手が、指導者の言うことをどれだけしっかりと聞き、従うか)も重要である』、というstatementも面白い。ComplianceとACL断裂の危険性には反比例の特徴があるそうですよ。しっかり指導を聞き、取り入れようとする選手ほど怪我が少なくなるわけですね。

また、トレーニングを取り入れてから効果が見られるまで少し時間がかかるため、「シーズン開始とともに始めるのではなく、プレシーズンから始め、シーズンを通して長期プロジェクトとして行うことで、予防効果が満遍無くシーズンを通して期待できる」ともまとめられています。

ふーむ、age-specific windowが存在するというのは面白い発見ですよね。
こうなってくると中学・高校で働くATさんがこういった活動をいかにするのかが大事になってきますし、
大学で働く我々にとっては、「以下に一年生の早い段階でこれらをトレーニングに混ぜ込めるか」というところが重要になってきそうです。まだまだ分からないことも多いですが、これから研究が更に広がって行きそうな分野ではあります。皆さんも何か最新情報があれば是非シェアして下さい!

1. Arendt E, Dick R. Knee injury patterns among men and women in collegiate basketball and soccer. NCAA data and review of literature. Am J Sports Med. 1995;23:694-701.
2. Fleming BC. Biomechanics of the anterior cruciate ligament. J Orthop Sports Phys Ther. 2003;33:A13-15.
3. Myklebust G, Bahr R. Return to play guidelines after anterior cruciate ligament surgery. Br J Sports Med. 2005;38:127-131.
4. Wojtys EM, Huston LJ, Lindenfeld TN, et al. Association between the menstrual cycle and anterior cruciate ligament injuries in female athletes. Am J Sports Med. 1998;26(5):614-619.
5. Beynnon BD, Johnson RJ, Braun S, et al. The relationship between menstrual cycle phase and anterior cruciate ligament injury: a case-control study of recreational alpine skiers. Am J Sports Med. 2006;34(5):757-764.
6. Beunen G, Malina RM. Growth and physical performance relative to the timing of the adolescent spurt. Exerc Sport Sci Rev. 1988;16:503-540.
7. Hewett TE, Myer GD, Ford KR, et al. Biomechanical measures of neuromusculae control and valgus loading of the knee predict anterior cruciate ligament injury risk in female athletes: a prospective study. Am J Sports Med. 2005;33:492-501.
8. Myer GD, Ford KR, Divine JG, et al. Longituidinal assessment of noncontact anterior cruciate ligament injury risk factors during maturation in a female athlete: a case report. J Athl Train. 2009;44:101-109.
9. Faigenbaum AD, Myer GD, Farrel A, et al. Sex specific effects of integrative neuromuscular training on fitness performance in children during physical education. J Athl Train. In press.
10. Padua DA, DiSrefano LJ, Marshall SW, et al. Retention of movement pattern changes after a lower extremity injury prevention program is affected by program duration. Am J Sports Med. 2012;40:300-306.
11. Myer GD, Sugimoto D, Thomas S, et al. The influence of age on the effectiveness of neuromuscular training to reuce anterior cruciate ligament injury in female athletes. Am J Sports Med. 2014;41(1):203-215.

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  by supersy | 2014-05-22 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

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