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後十字靱帯(PCL)断裂の診断について考察する。

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後十字靱帯(PCL)の損傷や断裂って、前十字(ACL)ほど聞きませんよね。
スポーツではね、珍しい怪我なんですよ。

何故かというと、PCLを損傷するためには、特定の条件が揃っていなければいけないんです。
それは、
『膝が約直角(90°)に曲がっている状態で、脛骨(tibia)に前方からの衝撃がかかる
…というもの。
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交通事故なんかではこのシチュエーション、実は結構多くて、
アメリカではよくDashboard Injuryと呼ばれたりします。
例えば車が何かにぶつかって衝撃で止まったところで、身体が前に進み続けて
膝を派手にダッシュボードに打ってしまう、という感じですね。
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では、スポーツだとどういう感じで起きるんでしょう?
前方から力がかかると過伸展してしまうことが多いので、FBのタックルなんかでは意外とイラストのようにはいかないもんなんですよね(↓左)。一番多いのは膝を曲げた状態での着地(↓右)。
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この怪我について習った学生の頃は、
「こんな特殊な力がかからないと起こらない怪我、診断は簡単だわ」と思ってました。
しかしねー、そんなに甘いもんではないのだと、数年前に大失敗して学びましたとも。
(詳しくは以前の記事、「Isolated PCL Tearをどう扱う?前編後編」参照)
後十字靱帯損傷診断の、何が難しいって、「ほとんど症状が無いことが多い」のです。
痛みが無い。腫れもない。機能も十分にある。あるのといえば、違和感ぐらい。
見逃してしまうことって、多いのです…。
統計上、PCLの損傷は膝の怪我全体の1-44%と非常に幅があり、1-3
この理由には「とにかく気づきにくい」というこの怪我のnatureが考えられます。
実際に、毎年NFL combineに参加する大学生Football選手の2-3%が
asymptomatic/underdiagnosed PCL ruptureを抱えているというのだから、4
正確なprevalenceは一体どれくらいになるのやら。

●PCL損傷の落とし穴
受傷直後の症状は非常に目立ち・気づきにくい。
でも、それがじわじわと慢性の膝関節痛や不安定感につながったり、腫れが出たり引いたりする患者さんもいます。Instabilityが原因で半月板損傷や関節面軟骨のdegenerationに繋がるケースも。機能障害にも同じことが言えます。生活に支障が出たり、アスリートにおいては以前のactivity levelに戻れなかったりと、深刻な弊害は色々とあるのです。

●的確な診断を!
過去の失敗から、アスレティックトレーナーとして私が心がけるようになったのは、
どんなに大したことない怪我に見えても、「膝から落ちた」MOIの選手にはPCLをまず疑うこと。
そして、疑った場合には、早く、的確にrule outを行うこと。
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はて。
疑うのは文字通り「心がけ」、意識の問題ですが、
実際にrule outするとなると知識とテクニックが必要です。
それでは、PCL断裂診断における、私たちが知っておかなければいけない事とは何か?
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最新のSystematic Review(↑)5を元に、色々とまとめてみたいと思います。

各種スペシャルテストの統計まとめは、こんな感じ(↓)。
●Posterior Drawer Test

注:この動画、音声に間違いが。"proximal hamstring muscles"ってとこ、"distal"だと思うんだけど…。
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Posterior Drawer Testは最も頻繁に研究されているテストでありながら、
sensitivityにバラつきがあるのと、specificityがたったひとつの研究でのみしか
reportされていないのが気になります。Rule inとoutの両方に使えそうには
見えるのですが、何とも『判断し難い』というのがKopkow氏らの結論でした。

●Posterior Sag Sign
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こちらも研究数には限りがありますが、
reviewの中では「最もsensitiveなテスト」と結論付けられています。
私はGodfrey90-90°よりもHipを45°にしてやる方(↓)が好きだけどなぁ。
足が完全にリラックスするので。ちなみにこいつはものすごい陽性ですね。
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●Quadriceps Active Test
陽性動画はこちら(↓)。
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こちらは、「最もspecificなテスト」なんだそうで。

●その他
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ここまで見てもらっても分かるとおり、とにかくKopkow氏ら曰く、「high-qualityの研究の絶対数が欠けている」という印象。そもそも著者らは、元々今回Meta-analysisがやりたかったのに研究の数・規模共に不十分で出来なかったという背景もあります。最終的にReviewされた11の研究のうち、Blinding等の研究の構成が甘く、バイアスの可能性が高いものがほとんどでしたし。上の表に含まれるSpecial Testはやり方が複雑なものも少なくないし、Diagnostic valueの観点から言っても、特筆すべき最初の三つに優るものはないかな、というのが私の個人的な意見です。

●Reference Standard?
Gold Standardは前十字靱帯断裂等同様、もちろんarthroscopyなのですが、PCL断裂に限って言えば、MRIの画像診断のみでもscopeと比べてexcellent correlationがreportされており、MRIも"valid reference"と考えてよい、という意見が現在は一般的かと思います。6-8
(ちなみに下の画像は通常の後十字靱帯(左)と、断裂した後十字靱帯(右)の比較)
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そんなわけで、このSystematic Reviewから私たちが学べることを
私の個人的で主観的な意見を含めてまとめると、
1. Posterior Sag Sign is the most sensitive test.
2. Quadriceps Active Test is the most specific test.
3. Posterior Drawer Test is not fully validated, but it's easy and simple - DO IT ANYWAYS.
4. MRI is considered as a valid reference standard.
5. 上記3つのテスト以上にシンプルで価値がありそうなテストは今のところ無し。
 とりあえずこの3つをやっておけば十分そう。

ちなみに現場で活躍されてる方はご存知かと思いますが、Anterior/Posterior drawer testを
患者にperformする際には必ずPosterior drawer testを先にやらなきゃダメですよ!
そうでないと、仮にPCL断裂していた場合…
 - 45-90°のポジションでは患者の脛骨がsagし、落ちた状態に。
 - これに気づかずにAnterior drawerを先にしてしまうと、
  引き下がった状態から前方に引き出す格好になり、false positiveの感覚を産んでしまう
  (→『excessive translation??』)。
 - なので、必ず一度先にPosterior drawerを行って、end-feelを確認した上で、
  posterior sagをrule outしてからAnterior drawerを行いましょう。
これ、毎年授業でうるさく言っているのにすぐ忘れちゃう生徒が必ずいるんです。
大事なので、皆さんは頭の片隅に入れておいて下さいね!

1. Miyasaka KC, Daniel DM. The incidence of knee ligament injuries in the general population. Am J Knee Surg 1991;4: 3–8.
2. Fanelli GC. Posterior cruciate ligament injuries in trauma patients. Arthroscopy. 1993;9:291-294.
3. Harner CD, Hoher J. Evaluation and treatment of posterior cruciate ligament injuries. Am J Sports Med. 1998;26:471-482.
4. Parolie JM, Bergfeld JA. Long-term result of nonoperative treatment of isolated posterior cruciate ligament injuries in athletes. Am J Sports Med. 1986;14:35-38.
5. Kopkow C, et al. Physical examination tests for the diagnosis of posterior cruciate ligament rupture: a systematic review. J Orthop Sports Phys Ther. 2013;43(11):804-813.
6. Khanda GE, et al. Assessment of menisci and ligamentous injuries of the knee on magnetic resonance imaging: correlation with arthroscopy. J Pak Med Assoc. 2008;58:537-540.
7. Lokannavar HS, et al. Arthroscopic and low-field MRI (0.25T) evaluation of meniscus and ligament of painful knee. J Clin Imaging Sci. 2012;2:24.
8. Vaz CE, et al. Accuracy of magnetic resonance in identifying traumatic intraarticular knee lesions. Clinics (São Paulo). 2005;60:445-450.

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  by supersy | 2014-02-28 19:00 | Athletic Training | Comments(0)

シンスプリントおまけ。2つの新しいスペシャルテスト?

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昨日の試合、Roadで久しぶりに勝ちました!
今日は、San Antonioから移動してきてAbiliene, TXに来ています。
アメリカを寒波が襲っていて、ここ、テキサス北部でも昨晩は雪が振り、
外にはあちこちにまだ雪が残っています。移動、結構長かった。6時間…。

さて、シンスプリントのおまけです。
こないだはACLの画期的でシンプルな、新しいスペシャルテストについて書きましたが、
実はシンスプリントにも似たようなのがあるんです。しかも、ふたつも。
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これらは、Shin Palpation TestとShin Edema Testという名前がついています。
(原文ではオーストラリアの研究者によるものなのでoedemaの名前が使われていますが、
ここではアメリカ英語でedemaと表記させていただきます)

前述した通り、MTSSは一度発症してしまうと繰り返し起こりやすい、そして非常に治療が難しいというのは一般的に研究者も現場のクリニシャン達もコンセンサスするところでした。
それを受けて、「それではpre-symptomatic stage(まだ痛みなどの出る前の、極早期)のMTSSをどうにか発見できるような、スクリーニングに使えるテストがあればいいんじゃないか?」と考えたのがNewman氏ら(↑)。1

まずは、彼らの考えたスクリーニングテストの紹介から。
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Shin Palpation Test (スネ触診テスト↑)
脛骨の後方内側縁、そしてその周辺の筋肉を含めた、脚(lower leg)の遠方1/3後方内側面を触診。イメージとしては、「濡れたスポンジを絞るようなチカラで」ぎゅっと圧迫するように。
(写真では指が食い込むくらいしっかり触診してますね。モデルさんの脚もデカイっすけど)
圧痛があれば、陽性。

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Shin Edema Test (スネ浮腫テスト↑)
脛骨の内側、遠方2/3を5秒間軽く圧迫し、Pitting edemaが見られれば陽性。
Pitting edemaはこのよう(↓)に圧迫するとそのまま沈んで跡が残るような浮腫のこと。
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これらを用いて、実際にNewman氏らが行った実験のデザインは以下のとおり。

384人のオーストラリアの新米ソルジャー達(96 female, 288 males)を対象に
このふたつのスクリーニングテストを行い、その後、16ヶ月のトレーニング期間に起こった怪我をテストの結果に関わらず平等に監視・追跡。結果、その16ヶ月間に合計58人 (26 female, 32 males)、64件のMTSS診断が下されました(MTSSを期間内に2回発症したのが4人、3回発症したのが1人いたため)。これらを統計に取り、分析してみると…

Finding: Both Shin Palpation Test and Shin Edema Test are the significant predictors of future onset of MTSS symptoms.

Shin Edema Testが陽性なのにasymptomaticなの?と思うかも知れませんが(少なくとも私は思った)、平均のスクリーニングテストを実地してから、実際の発症までの平均日数は147.3 days (range 0-490, median 181)あるというのでなるほど、"predict"という表現は妥当なのかも知れません。

Shin Palpation Testが陽性の場合、MTSSをその後発症する確率はそうでない人と比べて4.63倍に増える。同様に、Shin Edema Testが陽性の場合、確率は76.1倍に跳ね上がる。
両方が陽性だった場合の確率は計算できず。…というのも、両方陽性でMTSSを発症しなかった対象者がいなかったため。逆に言うと、この研究に限って言えば、Shin Palpation & Edema Testの両方が要請の場合、MTSSがその後100%の確率で起こった、と言える。
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Newman氏らの研究結果(Table 1↑)を元に、このShin Palpation & Edema Testのdiagnostic valuesを計算して出してみた(↑)のですが、これがどうして、研究本文の結果(Table 2↓)と数字(LR+, LR-)が食い違うんですよね。この研究では、同じ患者に何回か起こったMTSSも別件として数えているのかな?原文には、"A negative shin [o]edema test virtually rules out the chance that a patient will develop MTSS symptoms with activity (Negative Likelihood Ratio All 0.095)"(p.864)と言う表現があるけど、これは同意しかねる…。Rule inはほぼ完璧だけど、rule outはかなり数字的に不自然がありませんか?どういう計算してるんだろ?私の計算のほうがおかしい?
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Newman氏らの数字にイマイチ信憑性を感じられないので、
このまま私が出した数字を元に話を続けると、
どちらのテストもr/oには弱いが、rule inには―特に、Shin Edema Testはほぼ完璧に―有効であるということが言えるかと思います。現実的に考えると、これらのテストが陽性が出た患者は、例えMTSSの症状が無くても、Foot Biomechanics Evaluationをしたり、Orthosisを作ったり、K-Tapeをしたり、という早期のinterventionから利益を得られるかも知れません。実際に有効な予防プログラムを作るにはまだまだデータが足りませんが、なんとなくそういうイメージは見えてきますよね。

さて、そんなわけで、これはこれでなかなか面白い研究ですね、という話でした。
Newman氏らの計算方法が分かった方、是非ご連絡下さい。

1. Newman P, Adams R, Waddington G. Two simple clinical tests for predicting onset of medial tibial stress syndrome: shin palpation test and shin oedema test. Br J Sports Med. 2012;46:861-864.
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  by supersy | 2014-02-07 17:00 | Athletic Training | Comments(7)

Lelli's Test―ACL断裂のための新しいスペシャルテスト!?

今遠征から帰ってきて、深夜一時を回ったトコロです。
遠征の移動のバスで書いていたブログをアップしますー。
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急性の前十字靭帯断裂って、思うより診断が難しいんですよね。
患者が痛みでとにかく膝を触られるのを嫌がったり、guardingやspasmがあったり、
併発する怪我(半月板損傷とか)があったりで、意外と複雑なのです。
実は、前十字靭帯断裂の全体の76%が一番最初に診たphysicianによって誤診される、
という統計1もあります。76%ってば、なかなかな数字ですよね。私も、ここ4年で一回、
完全に前十字じゃないだろうと思っていたものが前十字断裂で、MRI結果を聞いて腰を抜かしそうになったことがありました(私は完全にrule outしたつもりだった)。
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ACL断裂の診断に関しては、何と言ってもBenjaminse氏らの書いたmeta-analysis(↑)2が秀逸。この論文、少し古くなってしまっているけど(2006年)本当に詳細に20ページにわたって
まとめられていて、素晴らしいの一言!
全てのAthletic Trainerに読んでもらいたい論文であります。

このmeta-analysisの内容を話す前に、まず、前提として、
ACLの診断に使われる代表的なテスト3つをさらっとおさらいしたいと思います。
Anterior Drawer Test
患者の膝を90°に屈曲し、患者の足の上に座った状態で、
脛骨を両手でつかみ、前方に引き出す。

Lachman Test
患者の膝を20~30°に屈曲した状態で片手で大腿骨を固定し、
もう片方の手で脛骨を掴み、前方に引き出す。



Pivot Shift Test
患者の膝を伸展させた状態から脛骨を内旋させる。
(= 脛骨がanterolateral方向に亜脱臼する)
この状態で膝にvalgus forceをかけながら、膝をゆっくりと屈曲させていく。
30-40°の屈曲をしたあたりで、膝がカクンという感覚とともに本来あるべき位置に
戻れ(= 亜脱臼が整復)ば陽性。

…これを踏まえて。
Benjaminse氏らの細かな分析を、
最もシンプルにひとつのチャートにまとめるとこんな感じ。
それぞれのテストを、患者が(普通に)起きている状態と全身麻酔をかけた状態で
applyした場合のdiagnostic valueは以下の通りです。
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ひとつひとつ見ていくと、
1) Anterior Drawer: Good to rule in chronic tear ONLY (理由は後述します)
2) Lachman: Good to rule in AND out acute AND chronic tear
3) Pivot Shift: Good to rule in acute AND chronic tear
Pivot shiftに関しては、麻酔をかけた状態だとrule outの価値もそこそこありそうですね。

しかし、この3つのテストのどれも、問題点というかデメリットというか、そういうのがあるんです。クリニシャンとして、これらを把握しておくことは、後々の診断にかなりの影響を及ぼすことになります。

Anterior Drawer: ChronicのACL deficiencyならいいが、AcuteのACL tearとなると一気に価値がガタ落ちに(sensitivity 49%, specificity 58%)。その要因として考えられるのは1) 急性の場合、腫れや痛みでそもそも膝を90°に屈曲できないことも多い。2) ハムストリングのspasmを併発している場合があり、これが丁度前方引き出しのcounter-forceになってしまう。3) 内側半月板のposterior hornに損傷がある場合、損傷部位がMedial femoral condyleに引っかかってfalse endを産んでしまう。これらのうちどれかが当てはまると、false negativeになってしまうわけです。…なので、これ、私現場ではもうほとんど使わなくなりました。

Lachman: 少しテクニックが要るテスト。練習を積まないと効果的に出来ない。特に、クリニシャンの手のサイズに比べて患者の足が大きい場合、難易度が格段に上がり、reliabilityが下がってしまう。更に、膝の屈曲角度を間違えて10°程にしてしまうと、関節がcloseになり始め、false end pointを産んでしまうかも。

Pivot Shift: とにかく、膝関節を亜脱臼させるわけだから、患者さんはたまったもんじゃない。Consciousの場合、痛みや違和感でguardしてまずfalse negativeになると思った方が良い。麻酔をかけないと使えないテストというのは、現場では実用性はかなり低いですよね。

そんなわけで、どれも長所短所あるんです。色々まとめた結果Lachmanが今の所ベストなのに代わりはないけれど、例えば私が370 lbsのアメフトのラインマンにやるとなったら正確にできる自信はちと無いし、contextにもよりますが、なかなかお手軽で完璧なテストってありません。

そこで待った!をかけたのがスペインの整形外科医、Dr. Alessandro Lelli氏。3
このビデオを見てもらえば分かるのですが、 彼の提案する新しいACL断裂のテスト、Lelli's Testは、まるで今までの葛藤が嘘だったかのような、驚くほどシンプルなテストになっています。
彼がこのビデオで紹介しているやり方をここでも解説すると、
1) 患者の脛の後方(tibial tuberosityから指三本分下)に拳を置く。
  *これがdistalすぎるとfalse negativeになるようなので注意!(参考動画)
2) Distal femurの辺りにDownward pressureを軽く数回かける。
3) もしFootがテーブルの上でぴょんぴょんと跳ねれば(=踵が浮けば)陰性。
 もし足がテーブルについたまま動かなければ陽性。
 Impaired functionality of the ACLを示唆する…ということなんだそうです。
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もちろん、これだけは大声で言わせて下さい。
このテストはDr. Lelliのclinical experienceのみに基づくもので、これを正当化するエビデンスはまだありません。Reliabilityも、SensitivityもSpecificityもなーんにも分かっていません。全くの嘘っぱちな可能性は十分にあります。

しかし!もしこのテストが本当に価値があるものだと今後認められるようなことがあれば、クリニシャンの技術レベル、患者の体型に関わらず万能に使えるテストになりそうです。拳をおいて、ぴよんぴよん。それこそ、学生にだって簡単に出来そうでしょ?

…そんなわけで、とにかくチェックしてみる可能性はあるテストだと思います。そして、もし機会があれば皆さん、使ってみた感想などを教えてもらえると幸いです。うちのAT ProgramのPreceptorさんたちにも、こんなものがーと紹介してみたら、「面白い!早速月曜に使うから報告待ってて!」と皆喜び勇んで返事くれました。これがどんなテストなのか、もっともっと深く学んでみたい!楽しい。いずれ文献でも見かけることがあるかもしれませんね!

**追記**
エビデンス出たのでこのトピックについては書き足してます!下のリンクからどうぞ。
 Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその1。
 Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその2。

1. Kay S. The knee joint - an introduction to assessment and diagnosis. SportEx Medicine. 2010;(45):7-12.
2. Benjaminse A, Gokeler A, van der Schans CP. Clinical diagnosis of an anterior cruciate ligament rupture: a meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2006;36(5):267-288.
3. Lelli A. Lelli’s test for ACL lesion [Video]. YouTube. http://www.youtube.com/watch?v=eEhpwTU3KXg&feature=youtu.be. Published September 20, 2013. Accessed January 31, 2014.

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  by supersy | 2014-02-02 01:00 | Athletic Training | Comments(5)

医者に「シンスプリントですね」と言われたら その2。

前回は危険因子と治療について少し書きましたが、
ここからが本題です。診断に焦点を当てていきたいと思います。

…つーかそもそも、シンスプリントが何なのか、について私まだ説明してませんよね。

●Shin splints are symptoms, not a diagnosis
そもそもシンスプリントとは、「脛の痛み」という意味しかありません。
つまりこれらの用語は、あくまで「脛が痛い」という症状を描写したものであって、
実際にどの組織に影響が出ているのか、という病理を説明するものではありません。
…そう、つまり、『診断』ですらないのです。
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走ったり跳んだりすると脛が痛い。
お医者さんに行ったら検査の末「シンスプリントですね(=脛が痛いんですね)」と言われた…
これってばつまり、、脛が痛くて来た人に、なるほど、脛が痛いことが分かりました、と言っているだけです。…そんな時は、「それは知っています。だから来たんです。…で、実際の痛みの原因は何なのでしょうか?」と、ビシっと言ってやりましょう。
少なくとも、私の学生には「こんな診断でもない診断を投げつけないで、
もっと細いところまで見て、きちんと回復につながるような診断を責任持って出しなさい」
と指導しています。

●では、どんな組織が関わっている場合があるのか
Lower Legの痛みは、大きく分けて以下のように分類されることが多いです。
Stress Fracture (疲労骨折)
 脛骨の疲労骨折。

Chronic Exertional Compartment Syndrome (ECS)
 慢性的な負荷により、コンパートメント内の腫れやmetabolic wasteが蓄積、
 コンパートメント内の組織を圧迫し始める。
 
Nerve Entrapment
 common peroneal, superficial peroneal, saphenous nerveが
 トラウマ、repetitive exercise, 外的圧迫(i.e. キャストとかサポーター等)によって
 圧迫され、痛みや痺れを起こす。
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Popliteal Artery Entrapment Syndrome (PAES)
 これは先天的のanatomical variation(↑ クリックで拡大)によるもので、
 動脈の走り方が原因で頻繁に圧迫されてしまうことから起こる。 

Medial Tibial Stress Syndrome (MTSS)
 それ以外の脛の痛み。原因は、更に以下のように分類が可能。
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 - Periostitis
 名前の通り、骨膜炎(↑)。
 脛骨に様々な筋肉が付着していることから、これらの筋肉を走ったり跳んだりで
 酷使することによって膜に緊張がかかり、結果炎症を起こすのでは、というこの説は
 以前は有名だったですが…。細胞学の観点からすると、inflammatory markerが確認
 できた、という研究は、総じて30年ほど前のほんのごく一部のもののみ。1-4
 Literaure reviewでは合計75件のバイオプシーの結果、4件からしか骨膜の
 炎症が確認できなかったそうな。5 証明がイマイチきちんとされていないため、
 最近は「無いとは言わないけど、思ったほどcommonじゃないのかもね」
 という考えが一般的です。

 - Myofascia
 ならば筋膜は?という説もあります…が、
 これも解剖学的にはイマイチ一貫性のないものになっています。
 とある大規模(50の脚)な解剖実験6では、所謂脛の内側、MTSSの典型的痛みが見られる
 箇所には筋膜が存在しないことが証明されています。

 - Muscular Overuse and chronic fatigue 
 筋肉・腱から痛みが来ているのでは、という説はそれなりに説得力があります。
 関わっているとされる筋肉は、Tibialis Postetior,1 Soleus,2,7
 Flexor Hallucis/Digitorum Longs。8 

 - Bone Stress Reaction
 最近では痛みが膜ではなく骨そのものから来ているのではないか、という説が有力です。
 CTスキャンやMRI、Bone Scanの精度が上がってきている近年、骨のmarrowが腫れを
 起こし、内側から骨膜を押し上げているという報告が増えています。9-14

●これらを効果的に振り分けるには
これらの一見似通った診断たちを見極めるには、アルゴリズムを用いることが有効なのではないか、と唱える研究者が増えてきています。つまるところ、フローチャートのようなものです。基本形は同じで幾つか派生系があるこのアルゴリズム、独断と偏見でEdwards氏ら15が紹介しているものを元に紹介させていただきます。
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これ、結構シンプルで分かりやすいと思いませんか?
まず、休息時の痛みがあるかどうか、そして、圧痛箇所があるかで大まかに3種類に分類でき、
そこから、圧痛の箇所や痺れの有無、末端の脈拍が正常かどうかで
一応全てのchronic leg painを分類することが可能です。

もちろん、例えば実際にはMTSSとStress fractureを併発している場合もあるので
診断はこんなに簡単に行かないことも多いと思います。
しかし、カギになる症状を把握しておくと、情報の整理がし易いのも事実。
授業でもこのアルゴリズムは紹介したいと思います。イメージはつきやすいかなと思うのよね。

さて、それではそろそろ試合に出発です。行ってきます!

1. Mubarak SJ, Gould RN, Lee YF, et al. The medial tibial stress syndrome a cause of shin splints. Am J Sports Med. 1982;10(4):201-205.
2. Michael RH, Holder LE. The soleus syndrome. A cause of medial tibial stress (shin splints). Am J Sports Med. 1985;13(2):87-94.
3. Bhatt R, Lauder I, Finlay DB, et al. Correlation of bone scintigraphy and histological findings in medial tibial syndrome. Br J Sports Med. 2000;34(1):49-53.
4. Johnell O, Rausing A, Wendeberg B, et al. Morphological changes in shin splints. Clin Prthop Relat Res. 1982;167:180-184.
5. Kortebein PM, Kaufman KR, Basford JR, et al. Medial tibial stress syndrome. Med Sci Sports Exerc. 2000;32:S27-S33.
6. Beck BR, Osternig LR. Medial tibial stress syndrome. The location of muscles in the leg in relation to symptoms. J Bone Joint Surg Am. 1994;76(7):1057-1061.
7. Detmer DE. Chronic shin splints: classification and management of medial tibial stress syndrome. Sports Med. 1986;3:436-446.
8. Garth WP, Milller ST. Evaluation of claw toe deformity, weakness of the foot intrinsics and posteromedial shin pain. Am J Sports Med. 1989;17:821-827.
9. Beck BR. Tibial stress injuries: an aetiological review for the purposes of guiding management. Sports Med. 1998;26(4):265-279.
10. Magnusson HI, Ahlborg HG, Karlsson C, et al. Low regional tibial bone density in athletes with medial tibial stress syndrome normalizes after recovery from symptoms. Am J Sports Med. 2003;31(4):596-600.
11. Magnusson HI, Westin NE, Nyqvist F, et al. Abnormally decreased regional bone density in athletes with medial tibial stress syndrome. Am J Sports Med. 2001;29(6):712-715.
12. Batt ME, Ugalde V, Anderson MW, et al. A prospective controlled study of diagnostic imagign for acute shin splints. Med Sci Sports Exerc. 1998;30(11):1564-1571.
13. Frederickson M, Bergman AG, Hoffman KL, et al. Tibial stress reaction in runners correlation of clinical symptoms and scintigraphy with a new magnetic resonance imaging grading system. Am J Sports Med. 1995;23(4):472-481.
14. Gaeta M, Minutoli F, Scribano E, et al. CT and MR imaging findings in athletes with early tibial stress injuries: comparison with bone scintigraphy findings and emphasis on cortical abnormalities. Radiology. 2005;235(2):553-561.
15. Edwards PH, Wright ML, Hartmen JF, et al. A practical approach for the differential diagnosis of chronic leg pain in the athlete. Am J Sports Med. 2005;33(8):1241-1249.

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  by supersy | 2014-02-01 14:30 | Athletic Training | Comments(0)

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