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医者に「シンスプリントですね」と言われたら その1。

例によって今回も遠征でHuntsville, TXへ来ています。
今日の試合は2点差で落としてしまいましたが、
試合後、ウェブサイトを見てみたら久しぶりにアクションフォトがありました(苦笑)。
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明日はBeaumont, TXへ移動です。つーかーれーたー。

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走ったり跳んだりすると脛が痛い。
お医者さんに行ったら色々検査されて、「シンスプリントですね」と言われた…
なんて方、居ませんか?
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シンスプリント(shin splints)の医学名称はMedial Tibial Stress Syndrome (MTSS)と言いますが、これがなかなかどうしてアスリートには多い怪我です。特に長距離ランナーがそうですが、私も現在働いている女子バスケットボールのチームで年に1-2名は必ず出ている気がします。

面白いことに、と言うか何と言うか、ここ40年ほどの研究でMTSSの様々な治療法を数多くの研究者が調べているのに、未だに「prolonged rest (長期間の休息)」以上の有効な治療法は分かっていません。「prolonged (長期間の)」というのが中でも厄介で、最近のRTCでは十分に回復するまで平均で102.1-117.6日という、本当に長い期間がかかることが明らかになっています。1 アスリートには、なかなか非現実的な数字です。
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もしこの怪我がそこまで治療するのが難しいものなんだとしたら、
一番良いのはどうやら『予防』ということになってきます。
予防した怪我は、治療する必要もないですもんね!

では、MTSSの危険因子にはどういったものが挙げられるのか?
2013年に発表されたsystematic review/meta-analysisによれば(10つの研究を併せて、合計1924人もの被験者を対象にしたもの),2 以下の項目が"Significant contributing factors for MTSS"として確認されています:
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1) Navidular Drop: 体重負荷時に(免荷時と比べて)、舟状骨の降下が大きければ、
 MTSSのリスクも高まる。しかし、MTSS groupとnon-MTSS groupの降下度平均の差は
 ほんの0.85mmであり、誤差が1.1-3.0mmあることを考えればほとんど計測不可能
 と言っても良いほどの微々たる値。別の角度からの分析だと、Navicular drop testが
 陽性(> 10mm)の場合、MTSSのリスクは1.99倍に上がる、という統計が出たので、
 こちらのcutoff pointを覚えておいたほうが実用性があるかも.
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2) Body Mass Index (BMI): 一歩一歩の衝撃が大きくなるからでしょうか?
 それともBMIが高い→deconditioning?理由は不明です。
3) Poor Running Experience:競技経験の欠如。
 どのくらいの経験が『十分』といえるのか、というA clear cutoff valueはまだ
 存在しないのですが(研究から分かっていることは、4週間のトレーニングでは
 不十分だということのみ)、3神経血管性・骨の順応性がそれなりに高くないと
 疾患につながりやすい、というのは明白です.
4) Previous history of MTSS: これは、説明いりませんよね。
5) Female gender: 単純に女性だからというだけで、
 危険性は1.71倍に跳ね上がります。ヒールストライク時のincreased knee valgue,
 decreased knee flexion, increased peak hip IRが関係しているのか、何なのか…
6) Increased hip external rotation ROM (Male ONLY): ipsilateralなのか
 contralateralなのかは言及されてなくて残念だったのですが、男性に限り、
 股関節の外旋があればあるほどMTSSに結びつきやすいそうです。へぇー!

興味深いことに、Dorsiflexion ROM (increased or decreased)はMTSSのリスクに直結しないという結果でした。MTSSになるのはふくらはぎが硬いからだ、治療にはとにかくストレッチをしなければ、という昔からの考えを覆す結果になります。

最も研究されている危険因子のひとつに土踏まずの構造上の異常があります。
Barnes氏ら4が行った、足の型とMTSSとの関係性を調べたsystematic reviewによれば、とにかく極端な足のタイプ(pronation=偏平足とsupination=高アーチの両方)であれば、普通の土踏まずのある足に比べてMTSSになり易い、という結論が弾き出されました。その中でも特に偏平足に関するエビデンスはとにかく数が多い。総合してみても回内のある人はそうでない人に比べてMTSSの危険性が約二倍上がる5-13という結果が出ています。足の回内によってdeep planar flexors & invertorsにeccentric loadがかかり、(それらの筋肉が起始・停止する)Medial aspect of tibiaにストレスがかかるのが原因では、という仮説が今の所一番有名です。14

歩行時の回内の度合い(amount)に関する文献は多くある中、目を引いたのが歩行時に回内がどのくらいの速さ(rate)で起こるのかもひょっとしたら重要なんではないか、という提言でした。15
Griebert氏らの行ったclinical trial15によれば、MTSSの病歴がある人は、健康な人に比べて歩行時にeccentric loadのかかるrateが高い→速いのだとか。つまるところ、これらの人の土踏まずは、歩行時の体重不可の際にあっという間にcollapseする、ということになります。

この回内のrateを遅くするために効果的なのでは、とされているのがキネシオテープ。面白いことに、40人の被験者を対象にした実験15によればこのシンプルなキネシオテープ(↓)が体重のlateralization及びrate of loadingを、健康な被験者と全く同じレベルまで改善するというのだから驚き。この効果はテープを張った直後に始まり、時間とともに少しずつ無くなっていく模様。現時点では、これらの効果がproprioceptive effectsによるものなのか、the tape’s mechanical propertiesによるものなのかははっきりしていません。
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靴の中底は?と思う方は多いかも知れません。
この分野は意外と意見が別れるところなのです。
Newman氏ら2が行ったmeta-analysisによれば、なんとOrthoticsを使っている人は今まで使ったことない人に比べてMTSSのリスクが上がるとしているのに対し、Thacker氏ら16の行ったsystematic review、及びCollins氏ら17のもうひとつのsystematic review/meta-analysisでは衝撃吸収方&回内矯正の中底は(カスタムメイドでも既製のものでも)予防には非常に効果的である、という結論を出しています。Richter氏ら18 「害のリスクは低く、利益は大きいかもしれないことを考えれば、アスレティックトレーナーはインソールの使用を前向きに考えるべきなのではないか」と提言しています。もちろん、間違ったタイプの中底を選んでしまったり、矯正しすぎて逆に問題になってしまうようなことは避けなければ、ですけどね。今の所、ガイドラインというものはまだ存在しません。

…さて、長くなってしまいました。
次回に続きます!

1.Moen MH, Holtslag L, Bakker E, et al. The treatment of medial tibial stress syndrome in athletes: a randomized clinical trial. Sports Med Arthrosc Rehabil Ther Technol. 2012;4:12.
2.Newman P, Witchalls J, Waddington G, et al. Risk factors associated with medial tibial stress syndrome in runners: a systematic review and meta-analysis. Open Access J Sports Med. 2013;4:229-241.
3.Bredeweg SW, Zijlstra S, Bessem B, et al. The effectiveness of a preconditioning programme on preventing running-related injuries in novice runners: a randomised controlled trial. Br J Sports Med. 2012;46(12):865-870.
4.Barnes A, Wheat J, Milner C. Association between foot type and tibial stress injuries: a systematic review. Br J Sports Med. 2008;42:93-98.
5.Moen MH, Tol JL, Weir A, et al. Medial tibia stress syndrome: a critical review. Sports Med. 2009;39(7):523-546.
6.Yates B, White S. The incidence and risk factors in the development of medial tibial stress syndrome among naval recruits. Am J Sports Med. 2004;32(3):772-780.
7.Busseuil C, Freychat P, Guedj EB, et al. Rearfoot-forefoot orientation and traumatic risk of runners. Foot Ankle Int. 1998;19:32-37.
8.Tweed JL, Campbell JA, Avil SJ. Biomechanical risk factors in the development of medial tibial stress syndrome in distance runners. J Am Podiatr Med Assoc. 2008;98(6):436-444.
9.Willems TM, Witvrouw E, DeCock A, et al. Gait-related risk factors for exercise-related lower-leg pain during shod running. Med Sci Sports Exerc. 2007;39(2):330-339.
10.Sommer HM, Valentyne SW. Effect of foot pressure on the incidence of medial tibial stress syndrome. Med Sci Sports Exerc. 1995;27(6):800-804.
11.Hubbard TJ, Carpenter EM, Cordova ML. Contributing factors to medial tibial stress syndrome: a prospective investigation. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(3):490-496.
12.Reinking MF. Exercise-related leg pain in female collegiate athletes: the influence of intrinsic and extrinsic factors. Am J Sports Med. 2006;34(9):1500-1507.
13.Bennett JE, Reinking MF, Pleumer B, et al. Factors contributing to the development of medial tibial stress syndrome in high school runners. J Orthop Sports Ther. 2001;31(9):504-510.
14.Beck BR. Tibial stress injuries. An aetiological review for the purposes of guiding management. Sports Med. 1998;26(4):265-279.
15.Griebert MC, Needle AR, McConnell J et al. Lower-leg kinesio tape reduces rate of loading in participants with medial tibial stress syndrome. Phys Ther Sports. 2014 (In Press – doi:10.1016/j.ptsp2014.01.001.)
16.Thacker SB, Gilchrist J, Stroup DF, et al. The prevention of shin splints in sports: a systematic review of literature. Med Sci Sports Exerc. 2002;34(1):32-40
17.Collins N, Bisset L, McPoil T, et al. Foot orthoses in lower limb overuse conditions: a systematic review and meta-analysis. Foot Ankle Int. 2007;28(3):396-412.
18.Richter RR, Austin TM, Reinking MF. Foot orthoses in lower limb overuse conditions: a systematic review and meta-analysis – critical appraisal and commentary. J Athl Train. 2011;46(1)103-106.

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  by supersy | 2014-01-30 23:00 | Athletic Training | Comments(0)

考えていますか?Differential Diagnosis。

前にも書いたように、今学期は私の大好きな授業、下肢評価(lower eval)を教えています。
学期が始まって一週間。教えている内容は基本的な評価の流れ、それこそHOPSとは、とか、SOAP noteとは、とか、そういうところからです。評価の予備知識や経験がほとんどない学生ばかりなので、本当に基礎の基礎から叩き込んでおります。

基礎の基礎として学生に何度も強調することは幾つかあるのですが、
1. 問診、問診、問診!
『最終診断に必要な情報の85%はHistory takingで得るものだ』 - Sy
 (数字は実はテキトウ。でも85%ってあながち外れてもいないと思う)
評価を習い始めたばかりの学生がよくするミスで、「足首が痛いです」と患者が来ると、「足首!」って飛びついてすぐ触りたがっちゃうっていうのがある。でもさ、HOPSの順番からすると、触診(palpation)は三番目だよね。順番を飛ばしちゃいけない。始めたばかりの頃は、自分でこんなルールを作るといい。手を後ろに組んで、まずは5分間、考えうるだけの質問をとにかく聞いてごらん。痛みの程度は?痛みの種類は?どういうときに痛みが楽になったり、痛みが増したりする?この部位は以前に怪我したことある?あるとしたら、どんな怪我?どんな靴を履いているの?この靴を履き始めたのはいつ?何か薬は飲んでる?喘息や貧血や、持病みたいなものはある?このスポーツを始めてどれくらい?どのポジションをプレーしているの?趣味でしているactivityは?
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できるかぎりyes/noで答えられない、open-endedな質問をすること。患者さんに目いっぱいおしゃべりしてもらおう(もちろん好きなミュージシャンなんかは聞かなくてもいいかもしれない、でも、飼っているペットくらいは聞いてみる価値はある)。十分な数の質問をここでしっかり聞ければ、触診を始める前にもうほとんど怪我が何か分かってくる場合も多い。

2. 触診のスキルを持とう。
『残りの15%のうち10%は触診だ。これが終われば、もう診断はほぼ終わったも同然』 - Sy
あなたに透視の能力があって、ヒトの身体の中が見えたら評価なんてとっても簡単だろうけれど、もちろんそういうわけにはいかない。Deep tissueは目で見えない分、第二の目である手の感覚を駆使するしかない。それが、触診。
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撫でるように表面のみをさらさら触っていたって分からないし、むぎゅー!と強すぎてもダメ。患者さんに合わせて丁度良い力をかけながら、それぞれの組織のテクスチャーを確認していく。ただ何となく患者が痛いという部位を触るのではなく、指に意志を持つこと。目的を持って患者を触る。指を明確に動かす。
上手くなれば、本当に指は第二の目として活躍してくれる。そのためには、練習。練習。

3. Special Testは、おまけのようなもの。
『Special Testは最後の5%くらいになるわけだけど、これは診断をconfirmするため、
 もしくは他の可能性をrule outするために補足情報として使う、くらいの感覚で』
- Sy
もちろんSpecial Testを馬鹿にしてはいけないし、エビデンスに基づいたcluster/clinical prediction ruleもとっても大事。このブログでも何度もまとめているし。ただ、診断でこれらに頼りっきり、すがっているようではいかんと思う。診断=Special Testを覚えなきゃいけないと考えがちな学生には、単純なスキル(=問診や触診)ほど大事なんだと教えるようにしています。

…さて。
前置きが長くなりました。

評価(HOPS)を終え、最終診断(SOAPのA, Assessment)を下す際に、
私が毎年学生に見せるトリックがあります。

まずは、これ(↓ 音のみ、映像無し)を聞かせて、
「これ、何だと思う?」と尋ねます。


学生は、声をそろえて、「うまーー!!!!」

「馬か。馬かな?馬だと思う?」
こくこく頷く学生たち。
「こんな簡単なの、バカにすんなよ、って感じ?」
こくこく頷く学生たち。
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「でもさぁ、じゃ、こういう可能性は?」
…と言ってこの写真(↓)を見せると、学生たちはあっと言葉を失います。
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「そう。シマウマじゃない可能性は無い…よね?」

「これはね、良くあることだからまず皆に言っておく。b0112009_124283.png
選手があなたの目の前で足首を捻ったとしよう(→)。
典型的な内反のメカニズム。Lateral aspectの腫れもある、ATFの圧痛もある。
捻挫だ!と、誰もが思うよね。もう、めっちゃ簡単じゃーん!って。

…そういうのに限ってさ、後で実は『骨折でした』なんてことがある。
あなたが『捻挫だ!間違いない!』と思い込んで、
他の症状や微々たるサインを見ようとせず、
安易な最終診断に飛びついてしまっただけでさ」
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「全てのfindingがひとつの怪我を指しているように見えるときほど、
踏み込む前に、一歩下がってもう一度患者を見つめなおしてみよう。
人は、時に見たいものしか見ない。本当にその怪我の全体像を掴めているかい?」
(このビデオもたまに使います。『白い服を来ているチームは、何回パスをするか?』
これは元々車の運転中、自転車に乗っている人に気をつけよう!というコマーシャルなんだけど、
『見ようとしないものは見逃しやすい』というメッセージは見事にここに当てはまっていると思う)


「柔らかい頭を持ちなさい。自分の思い込みで視野を狭めてはいけない。
自分で作ってしまった壁は思い切って壊して、自らに問うてみよう。
他にはどんな可能性が有り得るかな?と謙虚に考えるようでありなさい。
あなたが間違っていることはある。十分に有り得る。だからこそ、
『もしこれ(最終診断)じゃないとしたら、他にどんな事が有り得るのかな?』
と考えるクセをつけなさい。馬の足音を聞いて、シマウマを思い浮かべる力を持ちなさい。
それが、Differential Diagnosisの重要さだ」

診断を始めたばかりの学生は、
「自分の最終診断が当たっていたかどうか」を非常に気にしてしまう傾向があると思います。
当たったか、当たってないか。100%か、0%か。ピーカンの晴れか、土砂降りの雨か。
私自身も駆け出しの頃、そうでした。
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しかし、それなりに経験を積んで、そして更に教える立場になって、
診断に対するイメージががらっと変わったんですよね。
上手く言えないけど、診断の最中に色んな可能性が大きくなったり小さくなったりしながら形を変えて、最終的にそれぞれの大きさを比べた上で、contextに合った決断(i.e. refer? treat?)を下す。当たることもなければ、外れることもない。逆に言うと、最終的に正しい診断に辿り着いても、途中で可能性Aや可能性Bに出会っていなければそれは間違った診断だと思うし。なんだろ、伝わるかなー。
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つまるところ、最終的に正しい名前を挙げられたか、ではなくて、やっぱりそこに辿り着くまでにどういう情報を集め、どういう可能性を探り、その上でこれを選んだのか、というプロセス、そしてそれを説明できる力が大事だと思うし、これらのことを学生に一学期間みっちり尋ね続けていこうと思います。

What is your differential diagnosis?
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  by supersy | 2014-01-28 17:30 | Athletic Training | Comments(0)

High Ankle Sprainの診断を考察する。

春学期が始まりました!
これがこの大学での最後の学期になるので特別な思いです。
教える授業も下肢の怪我評価の授業、私の大好きなやつ!
新たなエビデンスを取り入れようと文献をあれこれ読んでいる毎日です。

中でも足首捻挫の評価はこの学期前半の大きなトピックになります。
NATAのPosition Statementも出たから尚更しっかり学んでもらわないと!
足首の捻挫に関してはこのブログでも何度も書いていますが、
(足首のテーピングvsサポーター足首の捻挫vs骨折足首捻挫の治療、etc)
今回はHigh Ankle Sprainの診断について少しまとめたいと思います。
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足首の捻挫には幾つか種類があり、中でもSyndesmotic Ankle Sprainは最も重度な捻挫と考えられています。痛みがひどい、歩けない、回復が他と比べても遅い…。NATAのPosition Statementでも"Syndesmotic Ankle Sprainは特にconservativeにアプローチするように"と書いてあるくらいですからね。

怪我の頻度として最も多いのがInversion Ankle Sprain(>90%-内反捻挫)、
次にEversion Ankle Sprain(~5%-外反捻挫)、そして最も起こりにくいのがHigh Ankle Sprain1 (1-3%)と一般的には言われていますが、研究によっては全体の24%という数字も出ていたりして、2
「本当の受傷率は私たちが思うよりもかなり高いのではないか」と唱える研究者もいます。3

もしこれが本当だとしたら、私たちに"High Ankle Sprainをしっかりと診断する能力"がまだまだしっかりと備わっていない可能性は大いに在ります。High Ankle SprainとEversion Ankle Sprainのメカニズムは時に非常に似通っており、High Ankle SprainをEversionと誤診しているケースも実は多いのかも知れません。前述の通り、High Ankle Sprainは回復になかなか時間のかかる怪我。早期に正しい診断を下し、早いうちから適切な処置を始めること(i.e. 内反・外反の程度の捻挫の場合は早期に体重かけてリハビリを始める vs High Ankle Sprainの場合は早期に固定・免荷)が少しでも迅速で効果的な競技復帰を促進することに繋がるはずです。
それでは、私たちは第一線のクリニシャンとして、何を知っておくべきなのか?
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Sman氏らのSystematic Review4(↑)によれば、
どのスペシャルテストも診断における価値は驚くほど低い、ということ。
SensitivityもSpecificityも総じて50%ほど。これじゃーrule inもoutも出来そうにありません。
「これだけを単独で使えば万能、と言うテストは存在しない」というのがこの研究の結論でした。
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そしてもうひとつ。見ての通り、この表はたったふたつの研究に基づいたもの。
元々Systematic Review開始時のinitial searchでは5000近い研究がヒットしたものの、
それぞれを深く見ていって質の低いものを省いていくと、最終的に残ったのはこの二つのみ。
この二つだって、Beumer et al5はarthroscopyを診断基準にしているのに大して、
もう一方のNussbaum et al6はX-rayと、かなりブレがあります。
うーむ、研究数が圧倒的に足りない、統一性にも欠けている、というのが現状ですね。


単独で診断に有効なパワフルなテストが存在しないなら、どうするか?
Clinical Prediction RuleやCluster of Testsを用いるしかない!
…というのがここ10年ほどの医療診断界の大きなトレンドです。
そんなわけで、この(少しばかりdisappointingな)Systematic Reviewの結果を受けて、Sman氏らはすぐに次の研究に乗り出すことになります。何かClinical Prediction Ruleの手がかりになるようなスペシャルテストの組み合わせや特定の症状は無いのか?87人の患者を対象に研究し、つい数ヶ月前に発表されたのがこちら(↓)。11
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Systematic Reviewで浮き彫りになった課題を克服すべく、この研究ではMRIがReference Standardとして使われています(Arthroscopy同様のsensitivity/specificityがあることが証明済み7-10)。

結論を先に言ってしまうと、結果はこんな感じ(↓)。
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1. Cox regression modelを用いた分析によれば Dorsiflexion with External Rotation (DF + ER) Test が陽性、もしくはsyndesmosis ligamentの触診による圧通がそれぞれ単独で見られる場合、High Ankle Sprainである可能性が4倍に上がるということが判明。
(+) DF + ER test and syndesmosis ligament tenderness were significant individual predictor (4X more likely).
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このとき強調しておきたいのが足首の角度
先のBeumer氏らの研究によれば、External Rotation Testの評価価値は非常に低いものでした。…が、それがどうしてこの研究では高い数値が出たのか?この疑問を解く鍵は、足首の角度にあります。
上の写真を見比べてみて下さい。所謂External Rotation Testと呼ばれるものは、「患者がテーブルに座り、膝を直角に曲げた状態で、足首をリラックスさせた状態からexternal rotationのストレスをかける」というものであるのに対して、Dorsiflexion with External Rotation Testは「足首を最大にDFさせた上でのExternal Rotation」という決定的な違いがあります(あとは、単純にBeumer氏の研究と今回のSman氏の研究では被験者の数が違うのももちろんあるんですけども)。Sman氏は、DFをするとDistal tibfib jointが広がるというArthrokinematics、更に怪我のメカニズムそのものでもあるという多くの研究者の説を上げ、「External Rotation Testをする際にはDorsiflexionの重要性は強調されるべき」としています。

2. 上のチャートを総合的に見ると、
Sensitive:
 ● 片足でのホップができない
 ● 歩行ができない
 ● 怪我のメカニズムがDorsiflexion + External Rotation (写真→)
 ● Syndesmosis ligamentの圧通がある
 ● DF + ER Testが陽性
もしこれらの症状が確認できなければ、rule outすることができる。

つまり、ホップができたり、歩けたり、圧痛がなければHigh Ankle Sprainではないかなー、
と考えられるわけです。

Specific:
 ● とにかく痛い、めちゃくちゃ痛い(Pain out of proportion)
 ● 受傷時に痛みが(足首だけでなく)脛や膝まで走った
 ● Squeeze Testが陽性
もしこれらの症状が確認できればrule inすることができる。
最終診断を下すために、MRIの画像診断が適切かと思われます。

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(ちなみに、Squeeze Testはmid-calfを両手で圧迫し、
足首周りの痛みが出るかを見るというテスト。骨折の判別にも使われますが、high ankle sprainの診断に用いられる場合はmid-calfということだけ強調しておきます)

授業でここまで掘り下げて話せるかは分かりませんが、
External Rotation TestはMaximal DFをするだけでかなり診断価値が上がるかも知れない、ということはしっかり強調したいと思います。こういう小さなコツを知っておくか知らないかでは大違い!学生にはDetail-orientedなクリニシャンになってもらわにゃ。

…しかし、つらつらと考えていたんですけど、
整形外科における診断医学界は、「これ!というスペシャルテストひとつよりも幾つかの鍵となるテストや症状を集めて効果的なcluster and/or clinical prediction rulesを」という風にかなりのスピードで動いているなぁと感じます。だからですね、将来的にはコンピューターによる巨大な怪我診断自動システムができると思うんですよね。このテストが陽性、これは陰性、こういうユニークな症状がある、と項目を埋めていくと、「この怪我の可能性がXX%、次に高いのはこの怪我でXX%」…と、自動的に集められた統計を使って自動予測が出る、みたいな。そうなったら私たちの知識はさほど重要でなくなってしまうのかも知れませんね…あと何十年かかるかわかりませんが。
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――――――――――――――――――――――――――――――――
ちなみに、完全なるおまけ。
木曜日の試合の写真。この腕のテーピング、かっこいいでしょ。…それだけ!
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1. Hopkinson WJ, St Pierre P, Ryan JB, et al. Syndesmosis sprains of the ankle. Foot Ankle Int. 1990;10:325-330.
2. Hunt KJ, George E, Harris AH, et al. Epidemiology of syndesmosis injuries in intercollegiate football: incidence and risk factors from National Collegiate Athletic Association injury surveillance system data from 2004-2005 to 2008-2009. Clin J Sports Med. 2013;23:278-282.
3. Gerber JP, Williams GN, Scoville CR, et al. Persistent disability associated with ankle sprains: a prospective examination of an athletic population. Foot Ankle Int. 1998;19:653-660.
4. Sman AD, Hiller CE, Refshauge KM. Diagnostic accuracy of clinical tests for diagnosis of ankle syndesmosis injury: a systematic review. Br J Sports Med. 2013;47:620-628.
5. Beumer A, Swierstra BA, Mulder PGH. Clinical diagnosis of syndesmostic ankle instability: evaluation of stress test behind the curtains. Acta Orthop Scand. 2002;73:667-669.
6. Nussbaum ED, Hosea TM, Sieler SD, et al. Prospective evaluation of syndesmotic ankle sprains without diastasis. Am J Sports Med. 2001;29:31-35.
7. Takao M, Ochi M, Oae K, et al. Arthroscopic diagnosis of tibiofibular syndesmosis disruption. Arthroscopy. 2001;17:836-843.
8. Vogl TJ, Hochmuth K, Diebold T, et al. Magnetic resomance imaging in the diagnosis of acute injured distal tibiofibular syndesmosis. Invest Radiol. 1997;32:401-409.
9. Oae K, Takao M, Naito K, et al. Injury of the tibiofibular syndesmosis: value of MR imaging for diagnosis. Radiology. 2003;227:155-161.
10. Han SH, Lee JW, Kim S, et al. Chronic tibiofibular syndesmosis injury: the diagnostic efficiency of magnetic resonance imaging and comparative analysis of operative treatment. Foot Ankle Int. 2007;28:336-342.
11. Sman AD, Hiller CE, Rae K, et al. Diagnostic accuracy of clinical tests for ankle syndesmosis injury. Br J Sports Med. 2013;0:1-7.

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  by supersy | 2014-01-27 16:00 | Athletic Training | Comments(4)

勝つために。

長い遠征も終わりです。
今日は移動日で、TulsaからCorpus Christiに6時間ほどかけて飛行機で帰ります。

さて、昨日は遠征の二試合目が控えていました。
「遠征先では、一勝一敗出来れば文句なし」
…というのがうちのコーチ達の口癖。
逆に言うと、遠征先で勝つのはなかなか難しい。
移動移動で疲労も貯まるし、審判の笛もホームよりになることも多い。
ホームコートアドバンテージなんて言葉があるけど、
やっぱりホームのほうが勝ちやすいのは統計的に見てもそうなんですよね。

カンファレンスゲームの開幕戦、Central Arkansas相手に接戦の末一敗した私達は、
どうしてもこのOral Robertsとの試合に勝っておきたかった。
相手も稀に見る粘り強く、時に迷わず肘を振るい荒くるしいプレーを連発する、うちの数倍背の高いチームでしたが、なんとか今回は接戦をモノにすることができました。58-53で勝利!
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試合後、コーチが「このagendaの無い試合を勝てたのはコーチのチカラじゃない。お前たち自身のチカラだ。よくやった!」と手放しで褒めていたのですが、その時にロッカールームの一人ひとりを指しながら、「俺のお陰じゃない、Roxanneのお陰でもない(他のコーチを順々に指しながら)、Brunsonのお陰でもない、Geoffのお陰でもない。…Syのお陰っていうのは、大いにある。しかしそれ以外は、お前たちの手柄なんだよ」と。

●勝ちに、貢献する。
コーチがこう言ったのは、恐らく、私が毎日の選手の細々とした面倒を見ているというのもありますが、今回の遠征では特に、選手をひとりを怪我から復帰させ、無事にスターターとして各試合それぞれ30分以上のプレータイムで活躍することができたからかも知れません。

このスターター、12月30日の試合で怪我。
今回の遠征出発直前(元旦)に「今の所、遠征で一つ目の試合に出られる可能性は55%くらい、二試合目は75~80%程です。でも、遠征先でも毎日治療を続け、なるべくその可能性を高いものにできるよう最大限の努力はします」と伝えてあったのですが、選手の性格も考慮して、正直かなり厳しいなぁと思っていました。
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シーズン中、必ず怪我は起きます。大小あれど、怪我のないシーズンなどありません。
控えの子が怪我をすることもあります。
スターターのキープレイヤーが怪我をすることもあります。
怪我そのもののnatureはもちろん、シーズンのどのくらいの時期なのか、選手がどのくらいプレーすると期待されているのか、私は全て考慮に入れた上で、その怪我をどれだけアグレッシブに治療するか決めます。「選手がほとんどプレーしない下級生でも、スター選手でも、シーズンの序盤でもPlayoff中でも怪我は怪我。治療のアプローチは同じはずだ」という人もいますが、はっきり言います。そういう人は大学、プロレベルでのスポーツがどういったものが分かっていないのだと思います。アスレティックトレーナーはスポーツチームで働く以上、urgencyを肌で感じ、その場その場で最善の選択を出来るようでなければなりません。踏み込む勇気も、引き下がる勇気も持てなければいけません。正しい決断は、contextによって変わると思います。状況全てが決断に必要な大事な要素です。

もちろん、私が一人で決断するわけではありません。選手ともとことん話します。
自分の経験をシェアし、選手自身がどれだけwillingnessがあるか、リスクを理解しているか、どこまでが無理で、どこからが無茶かしっかり理解しているか、時間を使って同じビジョンを持てるようになるまでしっかりと対話し、お互い納得した上で最終的決断を下します。(でも、責任は私に全てあります)
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押すのか、引くのか?プロになったばかりの頃は線引きに困ることが多かったのですが、
今年は不思議と迷わずやるべきことが見えてきます。
ATCになってなんだかんだで7年経つ経験からでしょうか。
今回の怪我も、ホテルでスキあらば治療を重ね、当日は恐らく怪我をしたことを
知らない人にはバレないくらいまでの状態に戻すことができました。
活躍もしてくれたし、私もほっと一息。選手は本当によくやってくれた。

私は、アスレティックトレーナーはチームが本気で勝つことを目指すから必要になる存在なんだと思います。
怪我をすると、本来のレベルでのパフォーマンスが出来なくなる。
怪我から一刻も早く正しく復帰するために、もしくは怪我を予防するために、ATが要る。
勝つために私達が要る。私自身が高校生の時、アスレティックトレーナーになろうと決心した時から、その信念は今でも変わりません。
(今では、もちろん、「選手の命を守る」という明確な使命感もありますが)
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アスレティックトレーナーが最高の仕事をしても勝てないこともあるでしょう。
でも、勝てるチームには良いアスレティックトレーナーがいるという事実は変わらないんじゃないかと思います。少なくとも私はそう信じて、勝っても負けても同じだけの最高の仕事を毎日するようにしています。勝ち負けで仕事の質が左右されるATにだけは、絶対になるまい。毎日、「良い仕事」を少しずつ積み上げて行くのです。



…でもひとつだけ言わせて!
勝つって、やっぱり素晴らしい!!!
ここ3年負けシーズンばかりだったから、ようやく今年になって勝てるようになって、
やっぱり勝つと小さなゴタゴタやモヤモヤもすっきり報われるなぁと実感してます。
しかも、こうして「Syがいるから勝てるんだ」とチーム、メディアの前で豪語してくれるコーチもいるなんて。自分の仕事が勝ちにつながるひとつの要素になっているんだっていうこと、実感できるなんて恵まれているなぁ。
アスレティックトレーナーとしてこうして現場で仕事をするのも、今年が最後かも知れない。
私情を交えて申し訳ないけど、私自身悔いのないよう、これからも更に毎日「良い仕事」、積み重ねていきたいなと思っています。報われるかも知れない、報われないかも知れない。でも努力がなければ、報われることもありません。今日も、明日も、勝つために。あと二ヶ月半、頑張ります!
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  by supersy | 2014-01-05 09:00 | Athletic Training | Comments(0)

Thoracic Outlet Syndrome(胸郭出口症候群)の診断について考察する。完結編。

まだTulsaにいます。今夜はSnow stormが来るかもということらしいけど、どうなるでしょう。
さて、昨日の続きです。今日で本当に終わります。本当です。

●ひとつがダメなら…
色々見た上で、これを単独で使えば!という万能なprovocative testは
今の所存在しないというのがひとつの結論でした。それぞれに細かい改善点があり、
それらを修正した上でrandomized clinical trialをもっと行わないと
その実用性は証明されません。

でも、ひとつがダメならいくつか合わせてみれば?という考え方もあります。
例えば、Ribbe氏とその同僚たちは1315人のcervicobrachial symptoms患者を対象にした研究を行った結果、TOSをdetectする上で最もrealiableな症状群は:
 1) History of aggravation of symptoms with the arm elevated
 2) History of paresthesias in C8-T1
 3) Supraclavicular tenderness
 4) (+) Roos
94%のTOS患者がこの4項目のうち、最低3つ当てはまったそうなので、
この4項目のセットのことを、Ribbe氏らは"Thoracic Outlet Syndrome Index"と名付け、
これを診断基準にすべきではないかと提案しています。

Gillard氏ら2
 1) Original Adson test
 2) Original Wright's test
 3) Hyperabduction test (with a deep inhalation, for reproduction of symptoms)
 4) Roos test (3 min)
 5) Tinel's sign (both infra/supraclavicular fossa, for reproduction of symptoms)
という5つのSpecial Testを合わせた結果、統計を以下のように発表しています。
まずは、様々な組み合わせでふたつのテストをcombineしてみた場合。
b0112009_2522469.png
総合的に一番数字が好かったのはAdson + Hyperabductionという組み合わせ。
Rule inするにはAdson + Wright (+ for pulse)がかなり優秀な数字が出ています。
(どれもrule outにはイマイチですね)
b0112009_1414397.png
また、2つ以上のテストを組み合わせた場合の統計はこちら。
テストを合わせれば合わせるほどrule inの価値が上がり、LR-も良くなっています。
5つのテストの全てが陽性ならTOS、という診断基準にすると(5 of 5)、
統計的にはGood to rule in AND out、ということになりますね。



色々今回は長いシリーズになってしまいましたが、
最後にまとめです。私としては、個人的にこういう風に考えていこうかなぁ、と…。

▶TOSを症状に基づき分類する: ATOS vs VTOS vs NTOS?
 ATOS - Symptoms in distal parts (fingers)? Diminished distal pulse?
 VTOS - Swelling?
 NTOS - Weakness? Headache? Raynaud's? Neck/shoulder pain?
これらの症状が特にそれぞれの『特徴的』なもの、と言えるかと。
細かい問診とobservationで分類は比較的簡単に絞込が可能なハズ。

**Keep in mind - >95%がNTOSであるということ!

▶NTOSだとして、どのProvocative Testsを使うか。
 残念ながら、現時点で完璧なテストは存在しません。
 複数使いながらの絞り込みが最も有効です。
 …よって、NTOSの場合、私が使うであろうテストは…
 - ULTT:
 - Supraclavicular Pressure Test (もしくはTinel's, Supraclavicular tenderness)
 - Roos Test: 3分ではなく90秒
ここらへんが妥当なところかなと思いますね。
これらが陽性だった場合、よりdistalなNeuropathyも見越して、
例えばTine's sign @ulnar groove, @carpal tunnel等、
他のdistal nerve pathologyの有無をassessするテストも行い、それらをr/oする、
ということももちろん忘れずに。

▶万が一、ATOSということがあれば…
 可能性が無いとは言えません!もしこの可能性をテストする必要があれば、
 occlusionがどこに起きているかを様々なテストを使いながら判別する必要があります。
 (NTOS同様、ひとつではなく出来る限りのテストを用いてclusterにしたほうが賢いでしょう)
 この場合、陽性のサインはpulseの変化ではなく、単純にshoulder/arm/hand painにしたほうが
 より正確な結果が出るのではと思われます。

 Scalene、Pec minorでの圧迫を疑う場合、
 Gillard氏が推奨する5つのテストをclusterとして使うことは悪くないかも知れません。
 Costoclavicular spaceの場合は、Military Brace, Halstead, Roos…かな。

今回、キリがないのでFirst rib hypomobilityに関するテストや研究は除外させて頂きました。
こちらも是非機会があれば調べてみたい…。TOS治療は姿勢や肩甲骨のstability/mobility等も関わってくるので、診断を付けた後でも頭を痛める分野かも知れません。皆さんもぜひご自分でエビデンスを色々調べて、stay up-to-dateしてくださいね!

1. Ribbe E, Lindgren SHS, Norgren L. Clinical diagnosis of thoracic outlet syndrome—evaluation of patients with cervicobrachial symptoms. Manual Med. 1986;2:82-85.
2. Gillard J. Perez-Cousin M, Hachulla E, et al. Diagnosing thoracic outlet syndrome: contribution of provocative tests, ultrasonography, electrophysiology, and helical computed tomography in 48 patients. Joint Bone Spine. 2001;68:416-424.

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  by supersy | 2014-01-04 12:00 | Athletic Training | Comments(2)

Thoracic Outlet Syndrome(胸郭出口症候群)の診断について考察する。その3。

新年早々、5日間遠征で今回はConway, Arkansas→Tulsa, Oklahomaへ来ています。
大晦日まで普通に練習に治療、元旦から遠征に出発という
まぁアメリカのバスケットボールのATらしい年末年始を送っています。
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昨日の試合は接戦を落としてしまって、新年を勝利で飾ることは出来なかったけれど、
個人的には無理かと思った怪我人を試合にスタメンで戻せて、
しかも彼女が普通に活躍できていたので、良い仕事をしている自負はあります。
残るシーズンもあと二ヶ月半ほど。頑張るぞっ。


●Diagnostic Values
さて。前回紹介したSpecial TestのDiagnostic valueについて、
様々な文献から統計結果を引っ張りだして出来る範囲内でまとめてみました。
こんな感じになります。
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どのテストにもかなり数字にバラつきがあり、
「これさえ使えば!」という絶対的なテストは存在しない、ということと、
どの研究にもそれなりにバイアスがあり、この分野ではもっとcontrol groupを使った良いデザインの研究が将来的に必要である、ということが言えるかと思います。

…しかし、そんな結論ではどうしようもないので、
何故これらの数字がイマイチ良くならないのか?改善すべきところはどういうところか?
もっと他に考慮すべき要素はどういうことなのか?についてさらに議論してみたいと思います。

Tests for ATOS:
- Vascular changesを陽性のサインとしているスペシャルテストは総じてfalse positiveが多い(= 健康な、TOSじゃない患者にやっても陽性になることが多いのでspecificityが低い)。1-5 Reproduction of the symptoms (i.e. Pain in shoulder, arm, hand etc)を陽性のサインにしたほうがいいのではないか。5 (*上のチャートで黄色くハイライトしたところとかですね)
- Age & Gender: 面白いことに、より年齢が若いほうが、2 そして、女性のほうが男性よりも1vascular responseが起こりやすい→more false positiveという研究も。
→陽性の基準を「脈拍の変化」から、「肩、腕、手の痛み」に変えることで評価価値が上がる可能性が。それから、性別・年齢を限定した研究がこれから必要。

Tests for NTOS:
- (+) RoosはTOSとは限らない。他のNeurologic conditions、例えばCarpal Tunnel Syndrome等の可能性もある。
→(+) Roosの患者にはよりdistalなnerve compressionの可能性を考え、r/oする必要がある。逆に言うと、(-) Roosの場合はCTSをr/o可能…?6
- Original Roosは手を開いたり閉じたりを3分、ということになっているけれど、これだけ長くやっていれば健康な人でも"耐えられないほどの痛み"を訴えることが多い(= many false positives)。7
→TOS患者と非TOS患者を区別するには、時間を90秒程にしたほうがsensitivity, specificity共に上がる。5,7
- Occupation: 仕事柄、ブルブルという振動を日常的に多く受けている人はこのテストがfalse positiveになりやすい(i.e. 工事の土木作業員さんとか)。12
→職業や日頃のactivityを元にした、exclusion criteriaとかが必要かも??

●他にもテスト、あるでしょ。
NTOSにも使えるProvocative testでいうと、他にも実はそこそこメジャーなものがあるんです。
例えば、Tinel's sign。Infra、もしくはSupraclavicular fossa (所謂Erb's pointと呼ばれるあたり)
をtapした時に痛みや痺れが出るか、というのはBrachial plexus系の傷害の判別によく使われます。
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(ここにも派生系がいくつか。Supraclavicular tendernessというのはここをpalpateした場合のpoint tendernessのことを指しますし、稀にMorley's signという別名で呼ばれることも。親指とforefingersを使って(写真参照↑)anterior scaleneを圧迫するように摘んだ状態を30秒維持して症状が出るかを見るのがSupraclavicular Pressure Test)
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このテストの統計はというと、派生系も含めてびっくりするほどイマイチ。
Supraclavicular Pressure Testはもしかしたら参考になるのかしら?くらい。

そしてもう一つが、知る人ぞ知る、Upper Limb Tension Test (ULTT)。
代表的な分類が、Brachial Nerveのどこにテンションをかけるかによって
4種類に分けるというもの。

ULTT 1 Median Nerve Bias


ULTT 2a Median Nerve Bias


ULTT 2b Radial Nerve Bias


ULTT 3 Ulnar Nerve Bias
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Sander氏13は独自のmodificationで、
また少し違うものをULTTと呼んでいます。分かりにくいから名前を変えてくれ、
と思うけど、目的は神経系にテンションをかけることだから仕方ないのかな…。
Shoulder abd to 90°、wrist extension, tilt the head to the side、と非常にシンプル。
これはどの神経をspecificに、と言うよりは、Brachial plexus全体を伸ばすイメージのよう。
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多少のバリエーションはあれど、文献を読むと比較的、
「NTOSの診断にULTTは有効である」という考えが一般的です。13, 14
特にMedian nerveのやつがspecificityとsensitivityは高い、という研究も。18
完全にこのテストが使える!と言い切るにはrandomized clinical trialsがもっと必要ですが、15
集めたところ、数字はこんな感じ。
b0112009_11511659.png
しかし、この「ULTTはNTOSの診断に使えるんじゃないか」という広まりつつある考えは、NTOSがcompression on brachial plexus(腕神経叢の圧迫)によって起こるのではなく、tension on brachial plexus(腕神経叢の伸展)によって起こっているとする研究者19 の主張と一致するんですよね。理には適っているよなぁと思います。これからこのテストが、TOSに診断に使われるのは、もっとスタンダードになっていくんじゃないでしょうか。ただ!これらのテストをNTOSの診断に使うひとつの落とし穴は、陽性でも必ずしもNTOSとは限らない、ということ。上の表でも少し触れたように、例えばBrachial plexus traction/compression injury (i.e. "Stinger" or "Burner")とか、Cervical radiculopathy、CTS、その他Ulnar/Median/Radial nerveに影響のある外傷(Increased Carrying angle, ulnar nerve complication after Tommy John's, etc)の場合でも陽性なるかもしれない。痛みや痺れの原因がTOSよりもdistalに存在する可能性があるので、今度はそちらをr/oしなければいけない…ということにもなるのです。

…さて。あとほんの少しだけまとめきりたいことがあるのですが、
非常に今回も長くなってしまったので、ここまで!次回で完結します。ほんとーに!

1. Liebenson CS. Thoracic outlet syndrome: diagnosis and conservative management. J Manipulative Physiol Ther. 1988;11(6):493-499.
2. Rayan GM, Jensen C. Thoracic outlet syndrome: provocative examination maneuvers in a typical population. J Shoulder Elbow Surg. 1995;4(2):113-117.
3. Gergoudis R, Barnes RW. Thoracic outlet arterial compression: prevalence in normal persons. Angiology. 1980;31(8):538-541.
4. Warrens AN, Heaton JM. Thoracic outlet compression syndrome: the lack of reliability of its clinical assessment. Ann R Coll Surg Engl. 1987;69(5):203-204.
5. Plewa MC, Delinger M. The false-positive rate of thoracic outlet syndrome shoulder maneuvers in healthy subjects. Acad Emerg Med. 1998;5(4):337-342.
6. Costigan DA, Wilbourn AJ. The elevated arm stress test: specificity in the diagnosis of thoracic outlet syndrome. Neurology. 1985;13(21):1335.
7. Barsotti J, Chiaroni DP, Charoni P. Syndrome de traversee thoraco-brachiale. Diagnostic par le test de Roos. Presee Med. 1984;13(21):1335.
8. Marx RG, Bombardier C, Wright JG. What do we know about the reliability and validity of physical examination tests used to examine the upper extremity? J Hand Surg. 1999;24(1):185-193.
9. Gillard J. Perez-Cousin M, Hachulla E, et al. Diagnosing thoracic outlet syndrome: contribution of provocative tests, ultrasonography, electrophysiology, and helical computed tomography in 48 patients. Joint Bone Spine. 2001;68:416-424.
10. Howard M, Lee C, Dellon AL. Documentation of brachial plexus compression (in the thoracic inlet) utilizing provocative neurosensory and muscular testing. J Reconstr Microsurg. 2003;19:303-312.
11. Nord KM, Kapoor P, Fisher J, et al. False positive rate of thoracic outlet syndrome diagnostic maneuvers. Electromyogr Clin Neurophysiol. 2008;48:67-74.
12. Toomingas A, Nilsson T, Hagberg M, et al. Predictive aspects of the abduction external rotation test among male industrial and office workers. Am J Ind Med. 1999;35(1):32-42.
13. Sanders RJ, Hammond SL, Rao NM. Diagnosis of thoracic outlet syndrome. J Vasc Surg. 2007;46(3):601-604.
14. Foley JM, Finlayson H, Travlos A. A review of thoracic outlet syndrome and the possible role of botulinum toxin in the treatment of this syndrome. Toxins. 2012;4:1223-1235.
15. Walsh MT. Upper limb neural tension testing and mobilization: fact, fiction, and a practical approach. J Hand Ther. 2005;18:241-258.
16. Sandmark H, Nisell R. Validity of five common manual neck pain provoking tests. Scand J Rehabil Med. 1995;27(3):131-136.
17. Wainner RS, Fritz JM, Irrgang JJ, et al. Reliability and diagnostic accuracy of the clinical examination and patient self-report measures for cervical radiculopathy.
Spine. 2003;28(1):52-62.
18. Kleinrensink GJ, Stoeckart R, Mulder PGH, et al. Upper limb tension tests as tools in the diagnosis of nerve and plexus lesions: anatomical and biomechanical aspects. Clin Biomech. 2000;12:9-14.
19. Ide J, Kataoka Y, Yamaga M, et al. Compression and stretching of the brachial plexus in thoracic outlet syndrome: correlation between neuroradiographic findings and symptoms and signs produced by provocation maneuvers. J Hand Surg. 2003;28B(3):218-223.

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  by supersy | 2014-01-03 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

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