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"Passing" the FMS - Is the cutoff score of 14 really realistic?

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前回FMSの講習を受けてから、FMSについての研究をあれこれと読んでいます。
FMSは7つのエクササイズをして、それぞれ0~3点数で採点される、
つまり、最高21得点が可能、というスコアシステムを使ったスクリーニングツールですが、
FMSからは一応14得点という数字を目安にするように言われたんですよね。
21点中14点超えていれば合格ラインですね、と。

この合格ラインに関しては私自身少し疑問が残り、
「Objectiveな得点方式に痛みというsubjective componentを入れている以上、
 それが得点に影響するのであれば14点という数字はどれだけreliableと言えるのか」
と考え始めたら少し悶々として、ですね。。。まぁ、答えという答えもないと思うのですが、
自分なりに14得点が合格ラインという根拠を見てみないことには、と思いまして。
引用している研究は有名なものばかりですか、少し参考になればと。。。

"The Firefighter Study" - Peate et at. 20071
これは最も初期の研究なので、この後に行われた他の研究とは少し違う基準を用いており、
FMSのスコアが17以上であれば合格、ということになっています。参加者の統計は以下のとおり。
  Number of Subjects: 433 (408 males - 94.2%, 25 females - 5.8%)
  Mean Age: 41.8 y/o (male), 37.4 y/o (female)
で、FMSテストの結果に基づき、テストから2ヶ月ほどのコア・トレーニングを実践。
その後、怪我の予防にどれだけ効果があったかを一年間の怪我発生の統計を取って比較、
というデザイン。

FMSを合格した被験者(Pass)と不合格だった被験者(Fail)とを分けて、
結果をArticleから抜粋してまとめてみました。下の表を参考にしてください。
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結論をシンプルに述べていくと、まずはFMSそのものの結果ですが、
  1. There was a significant correlation between age, rank, and tenure and FMS score.
  FMSのスコアそのものは、年齢とともに下降する傾向にある。

  2. There is a correlation between past musculoskeletal injury and FMS score based on
  linear regression (An injury lowered the fire fighter FMS score by 3.44.).
  過去に整形外科の怪我を経験したことのある被験者のスコアは、怪我をしたことのない者に比べて
  平均で3.44ポイント下降する。
  
そして、最も重要なのが、この研究で、
  3. FMSに基づいた外傷予防のプログラムには効果があった。
…という点。FMSテストを行なってScreenをし、結果に基づいたコア・トレーニングをすることで、その後一年間の怪我の総数は44%減少、怪我によるLost time (勤務不能になってしまった期間の長さ)は62%も減少したそうです。

"The Marine Officer Study" - O'Conner et al, 20112
一方で、海軍の役人になるためのトレーニングを受けに来た候補者を対象にトレーニング開始前に全員をFMSを用いてscreen、トレーニング中の怪我の発生とスコアを比べる、ということを行ったのがこちらの研究。

ふたつの異なるトレーニング期間があったので、短い方のトレーニング(Short-cycle, 6 weeks, 38 days)に参加した被験者をSCグループ、長いトレーニング(Long-cycle, 10 weeks, 68 days)に参加したほうをLCと名付けて結果をまとめると、こんな感じ。
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FMS総合得点の分布を表にしたものがこちら(↓)。
綺麗なベル・カーブになっており、全体の平均得点は16.6点ほど。
これはSCグループもLCグループも大きな差は無し。
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7つのエクササイズのうち、それぞれどのくらいの頻度で何点得点するのか、というもう少し細かいところを表にまとめているのがこちら(↑)。ほとんどの項目で平均して2得点、というのが普通ですが、特筆すべきは1) Shoulder mobilityが最も1を記録する可能性の高い項目であった、2) Push-upが最も被験者が3を記録しやすい項目だった、3) Rotary Stabilityは2を記録する可能性が非常に高い項目だった、ということと、この実験の被験者全てが男性だった、という事実でしょうか。

さて、この研究の大きな結論はというと、
  1. SCグループにおいて、FMSのスコアが14以下だった被験者がトレーニング中に
  受傷する確率は、15以上のそれに比べて1.91倍高かった。LCグループでは
  その数字は1.65倍。全体では1.5倍怪我をする確率が高かった。

  2. FMS14点以下の45.8%の被験者がトレーニング中に怪我をしたのに比べ、
  15以上の被験者では怪我の確率は30.6%に留まった。しかし、これらは全て
  acute injuryに関してで、overuse injuryに関しては大きな差が見られなかった。
  ふぅむ。Overuseも影響ありそうなのに、このへんは面白いですね。

しかし、私が個人的に一番興味深かったのはむしろこちら。
  3. 驚くべきことに、FMSのスコアが18以上の被験者は、逆に怪我の可能性が高い
  という結果になった。得点が15~17の被験者に比べて、怪我の可能性は1.34倍に上昇。

はて。これは面白いですね。スコアは高ければ高いほど良いというものでもない?
もしこれは真実だとすれば、スコアが15~17の選手はそれ以上スコア改善のトレーニング・リハビリを積まないほうが良いということにもなるのでしょうか?スコア改善→怪我率悪化、にも繋がりかねませんよね?

"男女差Study" - Schneiders et al, 20113
そもそもFMSの合計点って男女で差が出るんじゃない?
という実に当たり前そうで皆が見逃していた点を研究したのがSchneiders氏。
18~40歳の間のphysically active individualsを、女性108人、男性101人集めて、
各項目の得点分布をまとめると、このようになりました。
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結果によれば、男女差の出やすい項目は、
●Active SLR & Shoulder Mobility- 女性のほうがFlexible、よりに高い得点が出やすい。
●Trunk Stability Push-Up - ほとんどの男性が3を取るのに対し、女性はほどんと1という極端な差が。
●Rotary Stability - 男性のほうが総じてスコアが良し。

しかし、全ての項目の合計はというと、意外にも
  1. 合計得点の男女差は無し。性別関係のない合計平均得点は15.7 ± 1.9なのに対し、
  女性は15.6 ± 2.0、男性は15.8 ± 1.8だった。
…というわけで、合計で言うと辻褄は合ってしまうみたいです。これもこれで面白いですね。

さて。個々の研究を見ていてもキリがないので、ここまでを踏まえつつ、
新しい研究たちも混ぜてひとつひとつの疑問に答えていきたいと思います。

▶Is there male vs female score difference?
Schneiders et al3 - No.
まぁ、これはいいですよね。個々の項目での男女差はあっても、合計得点は差が無い。

▶Can a history of past injuries affect the FMS score negatively?
Schneider et al,3 O'Conner et al2 - No
Peate et al1 - Yes. It can decrease the FMS total score by the mean of 3.44.
Kiesel et al4 - Yes. It can decrease the FMS total score by the mean of 3.1.
怪我を以前にしたことがある vs 全く無いで、FMSのスコアはどう変わるのか?
ここは意見が割れるところ。怪我の種類にもよるのでしょうか。

▶So, is the cutoff score of 14 appropriate?
Kiesel et al5 - No. The average FMS score for the lineman was 11.8±1.8 and for the non-lineman group was 13.3±1.9 (62 NFL players, all male).
Cowen et al6 - No. The average FMS score was 13.25 (108 firefighters, both male and female).

Kiesel et al4 - Yes. The average FMS score was 16.9±3.0 (46 NFL players, all male).
Teyhen et al7 - Yes. The average FMS score was 15.7±0.2 (53 males, 11 females Army)
Schneiders et al3 - Yes. The average FMS score was 15.7±1.9 (101 males, 108 females, physically active)
O'Conner et al2 - Yes. The average FMS score was 16.6±1.7 (874 Marine officer candidates, all male)
Peate et al1 - Yes. The average FMS score was 17.2 (408 male and 25 female firefighters)

ここも割れますね。しかし、NFL選手の平均が14未満(しかもラインマンは11.8)ということもあるのだから、14をcutoff scoreにしてしまうと統計的にほぼ全員がテストにfailしたことに…?それは基準として合っていると言えるのか…。しかし、数にするとより多くの研究が「平均は15~17」「14をcutoffにするのは適切」とも言っています。
これはFMSのウェブサイトでも議論になっていて、こんな動画も現在紹介されています。
可能性として、今後この数字が下がることは十分有り得るかも知れません。

▶Can FMS predict injuries?
Kiesel et al4 - Yes. FMSのスコアが14以下の場合は、15以上と比べて怪我をする確率が
 11.7倍になる。14得点以下とSerious injuryのつながりは、Sensitivity=0.54, Specificity=0.91
 (46 NFL players, all male)

O'Conner et al2 - Yes. FMSのスコアが14以下か、18以上の場合は15~17と比べてそれぞれ
 1.73倍と1.34倍怪我の確率が上がる。14得点以下とSerious injuryのつながりは、
 Sensitivity=0.19, Specificity=0.90
 (874 Marine officer candidates, all male)

Hoover et al8 - No. 統計結果がpoorすぎる。
 14点をcut-offとした場合の怪我との関係は、Sensitivity=0.083, Specificity=0.945
 (60 marathon runners)

Sorenson - No. 統計結果がpoorすぎる。
 14点をcut-offにした場合の怪我との関係は、Sensitivity=0.538, Specificity=0.523
 (112 high school basketball players)

これが今回の私のmain focusだったわけですが、こちらもそれなりに割れています。
中でも特にやはり、FMSのスコアが高すぎると逆に怪我につながりやすいのでは、
というこの結果が興味を引きますね。
これはあくまでひとつの研究結果にすぎませんが、subjectの数が他と比べて桁違いに多いので、なかなか重みのあるデータなのでは、と思っています。

私なりに説明を考えてみたのですが、FMSでは非常にMobilityを強調しているので、
("Mobility before stability")Hypermobilityは特に悪とされていないところがあり、
stabilityさえあってコントロールできていればいいのではないか、と論じられています。
でも、患者が例えばコンタクトスポーツをしていれば、
普通にnon-contactで走ったり跳んだりというレベルじゃない負荷が
プレー中に関節にかかる可能性も大いにあるわけですよね。
フットボールのタックルなんかが良い例です。ああいう衝撃が加わった場合、果たしてこれらFMSで測っているStability力でHypermobilityを補えるのか?HypermobilityがStabilityを超え、そして怪我につながってしまうのでは?そういう可能性は大いにあるのかなと感じますね。

さて、長くなってしまったので、このへんで!
グレーな部分も多く、完璧ではない。前回も言ったとおり、FMSはあくまでツール。
だからこそ、これの一番良い解釈の仕方を自分で調べ、納得したくて、色々と今回研究を読んでみました。この道具、どう使うかは自分次第!です。これからの研究にも、注目したいですね。

1. Peate WF et al. Core strength: a new model for injury prediction and prevention. J Occup Med Toxicol. 2007;2:3.
2. O'Conner FG et al. Functional movement screening: predicting injuries in officer Candidates. Med Sci Sports Exerc. 2011;43(12):2224-30.
3. Schneiders AG et al. Functional movement screen normative values in a young, active population. Int J Sports Phys Ther. 2011;6(2):75–82.
4. Kiesel K et al. Can serious injury in professional football be predicted by a preseason functional movement screen? N Am J Sports Phys Ther. 2007;2(3):147-58
5. Kiesel K et al. Functional movement test scores improve following a standardized offseason intervention program in professional football players. Scand J Med Sci Sports. 2011 Apr;21(2):287-92
6. Cowen VS. Functional fitness improvements after a worksite-based yoga initiative. J Bodyw Mov Ther. 2010;14(1):50-4.
7. Teyhen D et al. The Functional Movement Screen: a reliability study. J Orthop Sports Phys Ther. 2012;42(6):530-40.
8. Hoover D et al. Predictive validity of the Functional Movement Screen in a population of recreational runners training for a half marathon. Med Sci Sports Exerc. 2008;40(5):S219.
9. Sorenson EA. Functional movement screen as a predictor of injury in high school basketball athletes [dissertation]. Eugene (OR):University of Oregon; 2009. p.89.

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  by supersy | 2013-07-27 23:00 | Athletic Training | Comments(0)

FMS Level 1 Workshop

今日はこんな講習会に参加してきました。
今更FMS?と思われるかも知れませんが、初めてうちのAT上司たちが自発的に興味を持って企画・ホストしてくれた貴重な機会。自分でお金を払って飛行機に乗ってまでこういった講習会に出席するつもりはありませんでしたが(PRIやDNSで経済的・時間的にカツカツ…)、大学として統一性のあるもの提供したいと、そしてこれが一番適切だと上司らが思うならば私も部下として是非協力しますとも!
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…ということで、朝8時から夕方5時までみっちりお勉強!
AT、PT、Strength & Conditioning Coach、それからKinesiology departmentの学生たちも集まって様々な面々で講義を受けることができました。
(中には秋学期に私の授業を受けるらしい学生も2人いて、講習後に「楽しみにしてます」と挨拶されちゃった。ぎゃー気を抜いて素でわいわいやっているところを見られた)
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FMSについて私の事前知識は「7つのScreening Exercisesをして、0-3点で動きの質を採点」というところ。そのそれぞれのエクササイズについては4-5時間の講義を受けた経験が5年くらいに前にあって、Clearing Testも含めた評価の付け方は知っていました。
ま、このへんはSports Medicine関係のプロの方なら最早誰でもご存知ですよね。

Schedule:
  7:30-8:00 Registration
  8:00-8:15 Welcome and Introduction
  8:15-9:15 Philosophy and Background of FMS
  9:15-12:00 FMS Scoring Criteria and Discussion
  12:00-1:00 Lunch Break
  1:00-2:00 Lab: Group Screening
  2:00-3:00 Scoring Analysis and Interpretation of Scores
  3:00-5:00 Corrective Exercise Philosophy and Exercise Discussion
  5:00-5:30 Question and Answer Session

講習の前半はこのScreening processについてだったので、良いreviewだなという感じでしたが、
後半にそのスコアをどう解釈し、結果に対してどうアプローチしていくべきなのか、という点を学べたのは有難かった!Corrective exerciseそのものは知っていても、こういうScreening resultとこういうExerciseがこう繋がるのね!というのをきちんとプロから教わったのは初めてだったので。明日からでもすぐに使えるシンプルさなのも嬉しい。これはお手軽!あれこれ試行錯誤してみよう。Gray Cook Bandも前からいいな思っていたけど、実際試してみると本当に使い勝手が良い。選手のリハビリのバリエーションが増えるかも。ひとつふたつ自腹で買おうかしらん。。。
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ものすごーく正直に言って、
FMSの基本理念の全てに完全に賛同しているわけじゃないし、
得点システムについても、「Starting positionにすらつけなかった人」が1点なのに対し、
「完璧に動きを実践できたけど、少しばかり痛みが出た」だけで0点というのは
どう説明されても未だに釈然としないけれど、今回きちんと学んでみて、「あれ、私自身結構偏見があったな」「面白いところいっぱいあるな」「なるほどこういう繋げ方をするのか」と発見が多々ありました。こういったスクリーニングシステムはあくまでツールのひとつ。穴のないシステムなんて無いし、それを踏まえた上で私が私のsettingに合ったもっとも理に適う解釈の仕方をすればいいだけ。そういった意味では、こうして手軽に作られたFMSはこれからもスポーツ界で長く残っていく気がする。(嫌味でもなんでもなくて、これだけのものをシステムとして確立させ、Healthcare professionalでない、多少専門知識に欠ける職種の人達でも実践できるようなシンプルさにまとめあげたのはすごいなぁと思うのです)
私はやっぱりPRIのコンセプトが好きだしDNSもまだまだ学びたいけど、
FMSも現場で併用していけたらかなり仕事の効率は上がるだろうなという印象。

Level 2のトレーニングはもっとCorrectiveなほうをがっつりやるというので、
受けるべきか悩んでいます。今のままでも十分実用性があるな、という手応えなのだけど、
Level 2を取った経験のある皆様、もっと桁違いに学べるよ!オススメだよ!でも、
いやー、Level 1で十分なんじゃない?でも、ご意見あれば聞かせて下さい。
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  by supersy | 2013-07-24 19:30 | Athletic Training | Comments(0)

Mission Impossible: PRI in-service。

5月にPRIの講習にミネソタに行った話は少し書きましたよね。
これはPRIのとあるAdvanced Courseを履修するために行ったのですが、
講習を終えて職場に帰ってきてから、
上司に「どうだった?習ってきたこと今度教えてよ」と軽い感じで言われたんです。
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言われたときは正直ちょっとむっとしました。
PRIの基礎レベルを履修したことのない人に今回の内容を教えても分かる訳ありません。
結局、そんな程度のことを勉強しにいってると思われてるの?

あと、陰口を書くつもりはないのですが、私の働くのはテキサスの田舎の小さなD-1の大学。
最新の教育を受けて、ここに来た若いGAたちはともかく、
ここにもう10年もいるような上司たちは自他共に認める「old school」。
怪我をしたらIce + E-stim。自ら講習を取りにアメリカを飛び回ったり、
新しいことを取り入れようというタイプではありません。

そんなわけで、最初は「教えたっていいけど分かるわけ無いでしょ」
という黒い気持ちが膨らみかけたのですが、はたと思い直しました。
「いやしかし、このPRIの内容を彼らでも理解できるように説明できればそれってすごいことかも知れない」 「彼らの糧になるかも知れないし、自分にとっても自信になるかも」 「私自身もPRIをものすごく深く理解していなければできないから、良い復習にもなる」 「よし、やったろう!」
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そんなわけでそれから一ヶ月半ほどかけてじわじわとパワーポイントを制作。
PRI履修済みの仲の良いATの友人たちからも「さゆりアホ?一時間ではとても無理でしょ」
と言われたけれど、約60時間分の講義の内容を1時間にぎゅぎゅっと凝縮。
簡単なコンセプトに絞って、シンプル且つ的確に説明できるよう言葉を選びに選んで、
自分自身勉強したときに混乱した箇所も分かりやすいよう並べ直し、整理し直し。

…で、今日がついにそのin-service当日でしたとさ。

PRIとは何か、どういう風に講習が組織されているか、どういう資格があるのか、から、
L AIC, R BC pattern。ZOAに風船を使ったエクササイズまで、
きっかり一時間でまとめることができました。
(ええ、大の大人たちが狭い会議室で風船を膨らませているのは、
傍から見たらさぞかし滑稽だったでしょうね)
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*写真はイメージです。
来てくれたのは予備知識が全く無い人から「何となくは聞いたことがあって胡散臭いと思っていた」という人まで色々でしたが、終わった後に「こういう説明をしてもらえるとよく分かる。以前、ちょっとした講習でよく説明もされないまま風船だけ持たされてあれこれやらされ、参加者全員目が白黒したんだよね。なるほどね、こういうことだったのか」と言ってもらえたり「身体を左右対象にすることが美学なんだと思っていたよ…目からウロコだ!」というコメントをもらえたりしました。もちろん全てを説明したわけではないし、案の定議論になるところはなったけど、概ね好評だったようで、妙な達成感を感じています。
Mission Impossible was possible!

ちなみに、冒頭の「教えてよ」と言った当の本人は、
今日がin-serviceだということをすっかり忘れて20分遅刻してくる、
というオチがあったんですけどね。
…もう何も言いません。

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おまけですが、タイムリーな話題で:

1) つい3日前、PRIのウェブサイトに私が紹介した本が紹介されました!
 いや、元々私もPRIを介して知った本だったので、creditは向こうにあるのですが、
 タイミングがすごかったのでつい、興奮してしまいました。
 Nature knows best、是日皆さん読んでみてくださいね!
 (それか、私がまとめたものでも)

2) 今日In-Serviceを終えた数時間後に、私がNATAでも出席したJason Masek氏の
 講義の内容がこれまたPRIのウェブサイトにまとめられていました。
 このリンク先にあるビデオをこちら(↓)にも載せさせて頂きます。
 今日のIn-serviceの中身とも繋がるのですが、
 呼吸及びZOAが変わるだけで周囲の筋肉の機能性はもちろん、
 遠方の関節の可動域まで帰ることができる、という良い例です。
 一度目の肩関節の屈曲はこの患者(恐らくPEC持ち)のrib flareがひどく、
 胸郭が"落ち"ていないことからかなり制限が出ていますが、
 治療後「息を吐きながら胸郭を"落と"しながらもう一度」というキューをもらいながらだと、
 楽々テーブルに付くまでに可動域が回復しています。

 呼吸及びZOAのRestorationがいかに大事か、という事を示す良い動画ですね!
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  by supersy | 2013-07-15 20:30 | Athletic Training | Comments(0)

落雷注意!Lightning Safetyの日米差を考える。

Lightning(ライトニング)とThunder(サンダー)の違いって皆さんご存知ですか?
日本語だとLightningは稲妻。Thunderは雷、雷鳴。
そう、つまり、Lightningは(目に見える)光、そしてThunderは(耳に聞こえる)轟なのです。
感じる感覚器が違うんですよ。共通のものから発されるのに違う単語がある、って面白いですね!
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さて、そんな余談はさておき。

先日、ラグビー好きの相方からこんなサイトを見せられてびっくりしました。
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実はこれ、日本ラグビー協会の「雷に関する注意(通達)」というページから抜粋したものです。リンクはこちら。別にラグビー協会さんを個人攻撃するつもりでも何でもないのですが、このリストに皆さん違和感を覚えませんか?少なくとも私は「ええ?」と感じる部分がありました。

「付近で落雷、って、どのくらいで付近なのか」「一回の突風だけでも練習をやめるべきなのか」等、描写がちょっと曖昧すぎやしませんか、という点は置いておくにしても、
一番私が気になるのは「付近で落雷のあった場合は、樹木、ポール、電柱等5m以上の物体を探し4m以上離れた場所に避難する。」という書き方です。高い物体を探し、そこから4m離れる?探しておいて、離れる?どうして4m?遠ければ遠いほうがいいの?4mがベストなの?AさんとBさんだったら、木から4m離れたAさんの位置は理想的なの?Bさんはどうなの?
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木から離れすぎちゃうと自分にモロに落ちちゃうかも知れないから、木にそこそこ近づいておいてそちらに落とさせ、自分はそこから4mの距離を取っていれば影響無いから大丈夫、ってこと?4mで本当に大丈夫なの?どういうエビデンスを根拠にこういう数字を決めたのか、資料も明記されてないし…なんか、よくわかんないなぁって思うのです。

一方で、NATAの打ち出す落雷とセーフティーに関するPosition Statement (正式発表されたのは今年3月と最新)はもっと細かい所まで提言されています。落雷とスポーツの専門家が(私の記憶が正しければ)4年もかけて練り上げた大作です。
1. スポーツをするならば、落雷に関するEAPを作るべし。
 統計によれば、48-64%の落雷による死亡者はOrganized or recreationalのスポーツ参加中
 だったと言います。「屋外でスポーツをするならば、『落雷の時にどう対応するか』という
 緊急時用のプランをしっかり立てておくこと」「誰に、どの順序で連絡をするのか
 (chain of command)、どこに避難するのか(evacuation location)、どのように
 天候の変化を監視し、スポーツ再開の判断は何に基づいて下すのか、
 前もって想定し、話し合い、練習し、シェアしておくこと」


2. どこが安全な場所なのか。
 どういった所が安全なのかにも言及しており、このPosition Statementによれば、
 Substantial, fully enclosed buildings with wiring and plumbing, such as a school,
 field house, library, home, or similar habitable (私達が普段生活・仕事をしているような
 大きくて閉め切り可能な配線・配管装備の建物、例えば学校や図書館、家など)

 それから、
 Fully enclosed metal vehicles such as school buses, cars, and vans
 (金属製の閉め切れる乗り物、例えばスクールバス、車、バンなど)

 という記載がされています。
 どこを見ても、5m以上の樹木、ポール、電柱という表記はないんですよねぇ。

3. 逆に、安全でない場所はどこなのか?
 Most places termed shelters, such as picnic, park, sun, bus, and rain nonmetal shelters
 and storage sheds (シェルターと名の付いた雨宿り場のような簡易避難場所、小さな倉庫)
 Open areas, such as tents, dugouts, refreshment stands, gazebos, screened porches,
 press boxes, and open garages (ガレージやダグアウト、プレスボックスなどの開けた空間)
 Tall objects (eg, trees, poles and towers, and elevated areas)
 (樹木、ポールやタワー等の背の高い物体や、高台など)

 Large bodies of water, including swimming pools (池やプール等の水辺)

 また、室内にいても配線や配管の近くにいたり、シャワー、洗面台、室内プール、
 電気製品を使用していたりすると落雷時に感電→怪我を起こす可能性も大いにあることも
 記述されており、配線・配管があるかも知れない壁から離れ、
 部屋の中心に集まると良いみたいです。

つまり、私が思うのは、
NATAのPosition Statementでは避けるべき場所、行くべき場所がしっかりと定義されているにも関わらず(そして、背の高い物体は避けるようにと明言されている)、
日本は室内や車の中に入れとは一言も書かれていないし、背の高い物体を探した上で、それに近づいて、適度な距離を取る?だいぶNATAのそれとは矛盾しているように感じます。

加えてNATAのPosition Statementには、以前にもまとめましたが、
1. 雷や見えたり聞こえたりしたら、すぐに避難。
昔はFlash-to-Bang theoryという、雷がピカッと光ったのを見たら耳で雷鳴が聞こえるまでの秒数を数え、それを5で割って距離を出す(in miles)。5マイルいないなら競技中止。という面倒くさいことをやっていましたが、それはもう過去の話。今は、「見えたり聞こえたりしたら即中止」というより厳しいものに変わっています。

2. 競技再開は、最後の雷が見え/聞こえてから30分間経ってから。
スポーツにおける落雷死の多くは、嵐の去り際、つまり、30分待たずに外に出て練習を再開してしまうことから起こるそうです。しっかり30分待ち、嵐が去ったのを確認してからresumeすべし。

3. スポーツ参加者、スタッフ、オフィシャル陣、そして観客全員分の避難場所を確保すること。どういう経路で避難するのか、避難するまでにどれくらいの時間がかかるのかも想定しておくこと。
…等の決まりもあります。
うーん。やっぱり、何度読み返しても、だいぶ違う。
詳細がちょっとずれているくらいじゃなくて、メッセージ性が、全然違う。

日米差は何においてもあると思いますし、
全てアメリカのものをコピーして使う必要もないかと思うんです。
例えば、日本では避雷針が非常に普及していて、20m以上の高さの建物では法律上設置義務があると記憶していますが、正しいのかな?あと、学校や病院、危険物を扱う工場等にも大概ありますよね。そういうのは日本独特の優れた部分だし、スポーツでもtake advantageするべきだと思うし。

しかし、ラグビー、アメフト、サッカーという規模となれば、周りに建物のないだだっ広い芝生なんかが会場になることも珍しく無いはず。避雷針が無い状態も想定に入れた上でこの程度の備え?それを日本協会が打ち出している?と考えると非常に怖く感じます。せめて「避雷針がこの範囲内にある場合はこういう避難・対処の仕方。避雷針がない場合は…」とか分けたらどうなんだろうか。どれほどの専門家がこの今年度発表された「注意(通達)」の制作に関わっていたのだろう…。

落雷に打たれる確率は1/10,000,000だと言います…が、
人生で7回に落雷に遭った人物もこの世にいると言います。
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いざ試合・練習を開始しようとしたときに、突然暗雲が立ち込め始めた…。
あなたはどれだけ自信を持って、あなた自身とその場に要る選手たちが安全だと胸を張って言えますか?私たちの仕事は常に起こりうる最悪の事態を想定し、それを避けることを一番に考えるべき職業であるはず。用意は周到でなければいけません―そうであれば、悪いことなど決して起きないのだから。
日本でも、落雷とスポーツの安全について、もう少し議論が進めばいいなぁ、と思っています。

最後に、くどいですがNATA Lightning SafetyのPosition Statementへのリンクはこちら。NATAが発表している全てのPosition Statementsへのリンクはこちらです。興味のある方は是非。
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  by supersy | 2013-07-08 22:30 | Athletic Training | Comments(8)

和式に戻れ!―Nature is calling? 現代のおトイレ事情を考察する。

そういえば今更なんですが。
このブログ、最初に立ち上げたのは私がUndergradの学生だった頃。勉強用ノートくらいの感覚で始め、「一般に公開しないで自分のためだけに細々とやっていこう」なんて浅く考えていたんですが(誰もこんなの読まないだろうと思ったし)、あれからもう、8年くらいですかね。長期更新できなくなる時期はあってもなんだかんだでずっと続けてきていて、訪問者もお陰様で今ではかなりの数に。皆さんモノズキですね お付き合いありがとうございます。

何でこんなことを書くかと言うと、ブログを通じて素敵な出会いも数多くあったし、
初対面の人に「ブログ読んでます!」と言われることも多いです。
ここ最近で、メッセージや対面で「新しいことを知る良い機会になっている」「プリントアウトしてまとめている」「周りの人も皆読んでいて共通の話題になる」「こんなことを考えるきっかけをもらった」「辛い時に読んで、自分を励ましている」なんて言ってもらえることが多くありました。好きなことを好きなときに書く、というワガママなスタイルはこれからも変わらないかと思いますが、それを皆様が自由に色々と活用してもらえているならば幸いの極みです。どこかで発表されるならば事前にお知らせ頂けると嬉しいのですが、個人で使われる範囲なら煮たり焼いたりお好きに使って下さいね。

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さて、本題に移ります。
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ある勉強をしていたらこんな本に行き着きまして。今日はこの本の話をちょっとしようかなと思います。そんなに汚い話でもないのですが、お食事中の方はご注意下さいね。

Colon Cancer, Bladder Incontinence, Colitis, Crohn’s Disease, Diverticulosis, Hiatus Hernia, Prostate Disorders…皆さんはこういった病気の症例が先進国では発展途上国と比べて数十倍に登ることをご存知でしたか?
今ではもはや知らない人はいない、Appendicitis (虫垂炎)を例に挙げて考えてみましょう。驚くべきことに、19世紀半ばまでこの病気はほとんどその存在を知られることがありませんでした。そもそも『虫垂炎』という病名も、1886年にハーバード教授のDr. Fitzによって付けられるまで存在しなかったくらいです。現在でも発展途上国での報告件数は極僅か…にも関わらず、アメリカでは毎年250,000件の虫垂炎が起こり、これが原因で年間一億日間のhospital stayが起こっていると言います。この突発的な発展途上国のみに限る数字の上昇の理由を、私たちはどのように考えればいいのでしょう?
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現代社会の食生活の変化のせいだ、と提言する研究者は多いようです。中でも、イギリスの医師・Dr. Burkittの「High fiber diet(食物繊維を多く含む食事)を取らなくなったのが原因だ」という説は非常に有名になり、これが元で先進国で食物繊維を多く含むサプリメントなどがこぞって売られるようになりました。しかし、よく考えても見て下さい。発展途上国の食生活は国によって様々。マサイ族のようにほぼ肉しか食べない人種もいれば、インドのHindusのように草食の種族もいるし、魚が主食のところも、虫を食べるところも。実際、「高食物繊維の食事が胃・小腸・大腸の病気を防ぐ」というステイトメントは、研究によってイマイチ証明できていないどころか、特定のサプリメントを摂取すると反ってポリープが出来る可能性が上がる、という結果まで出ていたりします。このようにエビデンスの欠如から、この説は徐々に世間から消えつつあります。
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「先進国の生活は清潔すぎて適切な免疫力がついていないのだ」と論ずる人もいますが、これもイマイチ説得力に欠けます。つまり、発展途上国の衛生レベルが低く『汚い』環境で生活している。そのために体内で抗体が多く作られ、免疫力が強い。先進国では逆の現象が起こる、というものですが…偏見が入っているようにも思えますし、仮にそうだとしても、雑菌やばい菌が多く外界から入ってくるというならば、必然的に病気も多くなると考えたほうが自然なのでは?この本の著者のIsbit氏は「多くの学者は外見の衛生に囚われ過ぎだ」と批判しています。そして、「大事なのはInternal cleanliness (体内の衛生環境)なのだ」と断言しています。

では、本当の原因は何なのか?
ここで、あまり知られていないDr. Burkittの2つ目の説を紹介しましょう。
1979年に出版された彼の国際的ベストセラー本、『Don't Forget Fibre in Your Diet』の中で、彼は実はこうも述べているのです。「(大腸がんの劇的に少い)アフリカではしゃがむタイプのトイレを使用しているのに大して、(大腸がんが15倍多い)西洋では座るタイプのトイレが一般的」「もしかしたらこの違いも食物繊維同等に大腸がん発症に影響を与える要素なのかも知れない

そうなんです。
鍵は、トイレの造りにあるというのです。
この主張はこの本の著者であるIsbit氏のものと完全にidenticalで、
彼の一番の世間へのメッセージは、「洋式トイレを捨てろ!和式トイレに戻ろう!
…と、一見突拍子もなく見えるものなのです。

突然そんなことを言われてもほとんどの人が納得出来ませんよね。
ちょっと説明しますね。

和式トイレのメリットを理解するには、少し消化器官のしくみを知る必要があります。
まずは、下の大腸の絵をよく見て下さい。
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先ず理解すべきは食べ物の流れ方。小腸を通過した食べ物はIleocecal Valve (以下IC valve)を通じて大腸に送られ、その先頭部分であるCecumへやってきます。そこにぴょろりと尺取り虫のように繋がっているのがAppendix (虫垂: 我々人間にとってこの部位の消化的機能はほとんど無く、免疫のための組織と考えられるのが一般的。虫垂に食べ物が入ると袋小路の為に流れが滞ってしまい、炎症を起こし虫垂炎になる、という流れが非常にcommon)。Cecumから食べ物はAscending Colon, Transverse Colon, Descending Colonを通じて時計回りに身体を巡り、Sigmoid Colonを通過してRectum (直腸)へたどり着き、肛門から排出されます。ここまではいいですよね。
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では、「しゃがむ」とこれらの消化器官、そして体内を移動している食べ物たちにはどんな変化が起こるのか?これも消化の順番で考えてみましょう。
別に排泄を試みなくってもいいのです。とりあえず「しゃがむ」という行為をするだけです。
(体感してみたかったら、実際に皆さんもちょっとしゃがんでみてくださいね)

1. 右太腿が右腹部を圧迫。
 圧迫によってIC Valveは完全に閉められ、更にCecumがこの圧迫によって潰れる
 形になるため、自然とAscending Colonを通って食べ物が上に押し上げられる。

 右腿の圧迫がなければこの「重力に逆らう」食べ物の上方移動はかなり労力の要る仕事。
 しゃがんでいるお陰でeffortlessに行われる、という大きなメリットがあります。

 *しゃがまないで「力んで」排泄しようとするとどうなるか?
 力むという行為はValsalva Maneuver(↓)と呼ばれ、排泄時や出産時、また、重いものを
 持ち上げるときなどに私達が使う、いや、乱用しすぎる傾向にあるテクニックです。
 人間以外の動物は使わないと言われるこの方法、腹圧を一気に上げ
 下腹部からモノを押し出したり(i.e. 出産や排泄物)、腰椎部の安定性を創りだすのに
 一役買っています。…しかし、こうして「力んで」腹圧が通常の3倍以上に膨れ上がると、
 閉まっていたはずのIC Valveがこじ開けられ、食べ物(…というかこの段階ではもはや便)が
 小腸に逆流する(→小腸炎・癌)、もしくは虫垂に便が押し入れられる(→虫垂炎)等の
 弊害が考えられます。大腸の壁にも同様の圧がかかるので、大腸ヘルニアを起こしたり、
 Hemorrhoids(痔)の原因になることも。
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2. 左太腿がSigmoid Colonを持ち上げねじれを解き、圧迫。
 もう一度大腸の図を良く見て下さい。Sigmoid ColonからRectumになる部分、
 よく見ると一度沈み込んでから上がり、少し捻れながらまた下降してRectumになるのに
 お気づきですか?ここの構造、だいぶぐにょぐにょと曲がっていてそのままでは便が
 スムーズに通って行くには少し無理があるんです。少しばかり外界の助けが要ります。
 ここで「しゃがむ」ことで、左腿がSigmoidの部分を持ち上げてくれるので、
 「一度下がってからまた少し上昇、そして下降」というアップダウンを移動する手間が
 省けます。更に、直腸とつながる軽い「ねじれ」部分も解けて広がることで、
 便がより移動しやすい環境を作ることになります。
この状態で更に左腿がSigmoid Colonを
 圧迫するからこそ、便が直腸→肛門へと自然に移動し、
 「力み」を必要としないスムーズな排泄が可能になるのです。

 *ここを座ったまま「力んで」強行突破すると?
 そもそも便の通り道が十分確保し切れていないので、大腸がねじれて細くなる箇所、
 もしくは下がったり上がったりを繰り返す辺りで流れが滞り便づまりを起こし、
 便が必要以上に腸に留まることになります。…ん、それの何が悪いのかって?
 ご存知でしたか?蚊が一度針を生き物に刺したらそれを抜かない限り
 血を吸うのを止められないように、便が大腸に留まる限り、大腸はその便から
 水分を抜き取ろうとするのです。水分を吸い取られた便は、
 大腸にいるのが長ければ長いほど、どんどん硬くなりセメント状になり、
 大腸の壁にこびりつき始めます
。こうすると便秘炎症(i.e. Colitis, Crohn's Disease)
 起こしたり、更には病変した組織が癌細胞を生み出したりするかも…(i.e. Colon cancer)
 という想像は容易に尽きますよね。
 更に、「力む」という行為はまた、横隔膜をabuseすることでもあります。
 Valsalvaは『気道を閉じた上で息を吐く』わけですから、横隔膜を力強く収縮させることで
 腹部を押し下げ、腹圧を高めていることになります。両腿が色々なものを
 「押し上げ」るのが理想なのに、横隔膜は「押し下げ」でしまっている。
 それが物理学的に不自然で無駄のある原理であることに加えて、
 横隔膜はそれほどのストレスに日常的に耐えられるほど、強くできていないのです。
 慢性的な「力み」が原因で横隔膜がそのものが部分断裂を起こしたり、
 横隔膜の一部が脆くなり胸部へHerniaを起こす(i.e. Hiatus Hernia)という症例も
 確認されています。

3. 「しゃがむ」姿勢がPuborectalis muscleという筋肉をリラックスさせる。
 Puborectalis(恥骨直腸筋)は文字通り恥骨から直腸へと伸びている筋肉で、
 直腸をループ状に引っ掛け、紐でキュっと閉めるような機能を果たしています。
 不意の便漏れを防ぐためのブレーキの役目を果たす筋肉と言っても良いでしょう。
 このブレーキは、座っている姿勢では「ON」になり、しゃがむことで「OFF」になります。
 しゃがむ姿勢で筋肉が緩み、直腸が肛門へと繋がる経路が開く(↓下図参照)ことで
 便がよりスムーズに出るようになるわけです。
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4. 両太腿による「押し上げ」がPudendal nerve(陰部神経)を守る。
 *間違ったメカニズムである「押し下げ」による神経への影響
 「力む」たびに生まれる一時的、しかし猛烈な腹圧。これはPelvic floorにも伝わり、
 Pelvic organsも徐々に影響を受けてきます。中でもその底部に位置するPudendal nerve
 も、このchronic strainにより徐々に伸ばされ、損傷を起こして脳との伝達を断たれる
 ことになります(神経はご存知のようにelasticではありません、12%引き伸ばされれば
 損傷を起こします)。問題は、この神経がbladder, prostate, uterusらを
 支配しているということ。この神経が損傷を起こすということは、これらの臓器が脳との
 コミュニケーションを失うということと同意義です。
 Bladderがコントロールを失えばBladder incontinence(尿失禁)に、
 Prostate/Uterusがコントロールを失えばホルモンバランスが狂いEndometriosis等の
 Gynecological disorderやProstate disorder(i.e. enlargement, cancer etc)に
 つながってきます。

 *その効果は心臓にも?Valsalvaのさらなる弊害
 Valsalva maneuverをすると胸部から腹部にかけて圧力が生まれるのですから、
 この圧力は血流にも影響を及ぼします。静脈にこれらの圧力がかかると、
 それらは一気に圧迫され、血液が押されて心臓へと勢い良く押し寄せます。
 このIncreased vemous return to the heartが心臓をoverwhelmし、
 syncope(失神)やheart attack(心臓発作)を起こすことはよくあるそうです。
 イスラエル人の医師Dr. Sikirovが発表した"cardio-vascular evens at defecation:
 are they unavoidable?"という論文の中には、"Probably every ER physician has
 encountered tragic cases of sudden death in the lavatory"という記述があるくらい、
 医師の間ではよく知られた現象だそうです。これも近代トイレの弊害だったとは!

つまり、まとめると、
「しゃがむ(squatting)」という行動をすることで、IC Valveが締り、捻れが解け、便の通り道が最大限に確保される。さらに両腿が腹部に押し付けられ、圧迫を生むことで、Valsalvaをせずとも便が自然に押し出され、身体に最小限のストレスをかけながら排泄ができる。

逆に、座った状態での洋式トイレでは、上記のような理想的な通り道が確立されないまま、Valsalvaによる胸・腹圧の異常な上昇を使って排泄を行わざるを得ない。結果、小腸、大腸を始めとし、横隔膜から生殖器官・心臓までに多大な負担がかかり、病気や病変の原因になりやすい
…ということになります。
日常的ValsalvaはまさにErgonomic nightmareと表現できるでしょう。

患者の使用するトイレを洋式から和式に変えただけで、これらの病気の症状が大幅に改善されたり、完治したりというケースも多いらしく、この著書でも色々と紹介されています。

実際、ヨガなどでは、「This is the most natural and healthy way to perform our bodily functions」と教えられることも多いようです。その証拠に、アジアやアフリカ諸国では洗濯、食事、新聞を読んだり将棋をしたりという日常の行動の多くをこのポジションで行います。
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ん?そんなことを言われてもうちのトイレは洋式だよ!簡単に変えられないよ!って?
私はこの本の著者の回し者でもなんでもないのですが、
面白いので彼が開発した商品もついでにご紹介しておきます。
その名も、Nature's Platform。これは、洋式トイレをたちまち和式トイレに変えてしまう、取付式の足場。しかも、必要があれば折りたたみ、収納も可能というスグレモノ。5°の前傾がついているので、ふくらはぎが硬い人もかかとを浮かさずにfully squatできるという設計がなされています。
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これは私は購入していませんが(苦笑)、非常にシンプルなコンセプトながら、ちょっと自分の日常生活を考えさせられる本でしたね。この著者は医学の専門家ではないのですが、たどたどしいながらもかなりの数のEvidenceを引用しながらこの本を書いているようで、本を読んで頂ければもう少しmake senseするかも知れません。$10を払う価値は十二分にあると思います。ま、本を買わなくても全く同じ物が彼のウェブサイトで読めるんですけども。
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  by supersy | 2013-07-07 22:00 | Athletic Training | Comments(5)

New NATA Position Statement: Ankle Sprains in Athletesを考察する。

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さて、前述してますが、ついに出ましたね!
今回これ(↑)をじっくり読んで、更にNATAコンベンションでも第一著者であるKaminski氏の講義に足を運ぶこともできたので、自分なりにこの長いArticleをまとめてみようと思います。
あ、ちなみに実際の記事を読みたい方はこちら。Hard copyは次のJATに出るはずです。

始めに言っておくと、NATAがこういったPosition Statementを出した、ということは、
これが全ATCの医療行為のスタンダードとして考えられるようになる、ということでもあります。
NATAは今までに数々のPosition Statementsを発表してますが、
プロの皆さん、これ全てちゃんと把握できていますか?
もし皆さんがこれらのStandardにそぐわないことを現場でして、更に患者から訴えられた場合、
検事は間違いなくこのPosition Statementを引っ張りだしてくることでしょう。「あなたの母体である組織がこうしろと言っているんですよね?何故あなたはそれをしなかった?」という議論になりかねません。
もちろん、NATAが総力を上げて、スペシャリストを次々投入して調べた結果の
「これが今は一番」という結論なのだからきちんとfollowすべき、というethicalな理由もあるけれど、Stay current, don't let these position statements kick your butt!!!ですよ!

話が反れましたね、本題に戻ります。さて、全ては無理ですが、
私が個人的偏見で重要だと思う部分を抜粋、考察してみたいと思います。ちなみに
このPosition Statementでは、Evidenceのレベル別に内容がカテゴリー分けされており、
Evidence A: Based on consistent, good quality patient-oriented evidence
      = What we MUST do
Evidence B: Based on inconsistent or limited-quality patient-oriented evidence
      = What we SHOULD do
Evidence C: Based on consensuss, usual practice, opinion, disease-oriented evidence,
      case series for studies of diagnosis, treatment, prevention, or screening
      = What we CAN do
これらを内容を解釈する上での参考にしてください、ということみたいです。
では、まずは診断から。

Diagnosis:
1. Special test(i.e. anterior drawer, talar tilt etc)は受傷直後にするか(Evidence C)
 受傷5日後以降にしたほうが(Evidence B)より正確。
 つまり腫れががつんと出ている間はstress testのaccuracyはcompromiseされるわけですね。

2. The Ottawa Ankle RulesはX-ray画像診断の必要性を決めるのにとても効果的な道具である
 (Evidence A)
 OARに関しては以前にまとめたことがありますね。
 Position Statementでも約半ページに渡ってOARの有効性が綴られていますが、
 それにちょっと付け加えさせて頂きます。
 OARはAnkle/midfootの骨折をrule outするのには素晴らしい力を発揮するのですが、
 rule inにはまだまだ完璧ではありません。False positiveが多いんですよね。
 なので、positive OARをどうclinicianが解釈するかは難しいところだと思います。
 positiveだからって毎回X-rayにreferしていたら、それはそれで大変なことになると思う、
 プロじゃない限りは。高校や大学なんかは経済的に厳しいですよね。
 (Buffalo Ruleのほうがspecificityが高いのですし、それもPosition Statementの中では
 短く触れられているのですが、だからといってOARに比べてBRが優れているとか劣っている
 とかそういう断言はされないに留まりました。個人的にはもっとそこ掘ってもいいのでは、
 と思ったけど。OARの方がはるかにstudyされているからですかねー)


3. Stress radiography(↓)はligamentous disruptionをdetectするのに良いツールとは言えない
 (Evidence B)MRI is reliable to detect acute tears of the ATF & CF ligaments
 (Evidence B), diagnostic ultrasound is also useful but less accurate and
 sensitive than MRI (Evidence B).
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あれ、Special testは他には?と思う方もいるかもしれません。
実は、Ankle sprainのspecial testってほとんど研究されていないんですよねぇ。
変な話ですよね、ankle sprainがスポーツで一番多い怪我だって言っているのに。
分かっている範囲で上げると、
 - Anterior drawer: sensitivity ranges from 32%-80%,
          specificity was reported only in 1 study, and was 80%
 - Inversion Talar tilt: Only reported once, sensitivity was 52%
…これだけなんです、すごいでしょ。
だから、Position Statementは「引き続き使うべきだけど、もっと研究しないといけないエリア」
みたいなふわっとしたまとめ方をされています。


Treatment and Rehabilitation:
1. RICE is recommended for acute ankle sprains(Evidence C)
 これがEvidence Cってのも意外ですね。

2. NSAIDsの使用は捻挫後の痛み、腫れ、short-term functionを改善するのに効果的
 (Evidence A)
 もちろん、受傷から48時間以内の使用は控えつつ、ですが。

3. Grade III sprainの場合は最低10日はrigid stirrup braceかbelow-knee castで固定し
 その後controlled therapeutic exerciseを(Evidence B)。Grade I or IIの場合は
 固定をするよりも早期のリハビリ開始が効果的(Evidence A)

4. リハビリにはcomprehensive ROM, flexibility, & strengthening of the surrounding
 musculature
を含め(Evidence B)Balance trainingをリハビリ早期~中期~終盤まで
 しっかりと続ける
ことでreinjury rateを下げることができる(Evidence A)

5. DFlexと機能をフルに回復するためにはPassive joint mobilizationsとMWMが有効
 (Evidence B)
 これについても以前まとめました。TarocluralやSubtalar jointのmobilizationも
 もちろんですが(Position StatementはAnteroposterior joint mobilization &
 Posterior talar mobilization with movement techniqueが特に強調されています)、
 特筆すべきはMulliganの名前と共にPositional fault of the fibulaも記述がされていたこと!
 個人的にはDistal tibfib joint mobilizationも同様に重要だと思います。
 是非皆さんの現場でも試してもらいたいテクニックです。


RTP Considerations:
1. 目に見える機能のみでなく、患者本人が自分自身の能力をどのように感じているか
 (patient's perception of function)をRTP decision makingの過程でしっかり取り入れること
 (Evidence C)


2. 当然、目に見える機能もしっかりとassessすること。Single-legged hop for distanceや
 Star Excursion Balance Test (SEBT)等のテストを用い、健側と比べて患側の機能が
 最低でも80%回復していることを確認すること(Evidence B)

3. 競技復帰の際、捻挫のhistoryがある患者はテーピングかサポーターをすること。
 Lace-up, semirigid ankle braceも、traditional ankle taping(↓)も
 recurrent rateを下げることが証明されている(Evidence B)。 
 以前に足首のテーピングとサポーターどっちがいいの?という話を書いたこともありました。
 このあたりのDiscussionはPosition Statementでもかなり長く書かれていますが、
 最終的なところは「まだ分からないことも多いが、足首の捻挫を既にした選手の場合、
 テーピングでもサポーターでも大いに効果がある」という感じです。(捻挫をしたことが
 ない選手に対しての効果はまちまち、なので、チーム全員mandatoryのテーピング・
 サポーター強制着用に関してはその必要性に疑問が残る、という記述もされています)
 靴のセレクションにも少し触れていて、バスケットボール選手に関しては、
 high-top shoes with ankle tapeはlow-top shoes with ankle tapeよりも
 足首の捻挫率が低いという研究がある一方で、アメフトではlow-top shoes with ankle
 stabilizerのほうが怪我が少なかった、という矛盾した事実はなかなか興味深かかったです。
 どういうタイプの靴が良い or 悪い、と言い切るには
 もうちょっとこのへんは研究が必要みたいですね。
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Prevention:
1. Clinicians working with athletes should implement a multi-intervention injury-prevention
 program lasting at least 3 months
that focuses on balance and neuromuscular control
 to reduce the risk of ankle injury. Athletes with a history of ankle injury may benefit
 more from this type of training. (Evidence A)
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んー、こんなところですかねぇ。
これ、実際のPosition Statementを読んで頂ければ分かるのですが、
かなり色々と省いてますので、興味のある方はご自分で是非一度全部読んでみてくださいね。
(Syndesmotic ankle sprainやCAIの記述も実際は結構あるので)
いや、違うな、プロのATCならご自分で一度は必ず読まなきゃダメ!ですね。

今から、この内容をどう授業に組み込んでいこうか、
そしてニュースレターでPreceptor向けにどう紹介するか、
色々考えてうきうきです。このPosition Statementを作るのに6-7年の年月と、
努力を費やして下さった専門家の方々に感謝!大切なresource、有効に使いたいですね!
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  by supersy | 2013-07-03 19:15 | Athletic Training | Comments(2)

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