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続・脳震盪の新たな治療法?DHAサプリメントについて考察する。

意外と色々と反響頂けて嬉しく思っております。
(ここでは静かだけど主にFacebookとTwitterで)
こういう論文あるよ!とか言って下さったり送って下さったりする皆さん大好きです。
…というかリアクション返してくださる皆様の面々が豪華すぎて本当に有り難いです。

さて。今日は某ゆっけ氏が送って下さった論文(これは壮絶なcase studyだった…)と、某じでんが勧めてくれたもひとつのcase report、それから某しゅうへい氏がsuggestしてくれたSystematic reviewを読んでみました(もはや某に意味が無くなってますが)。さすが、皆の紹介してくれる論文は最新のものだったりマニアックだったり。勉強になります。結構ジデンの紹介してくれた記事1(↓)がユニークで面白かったので、まずそこから。
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これは、交通事故でsubdural & epidural hematomaが起きてしまった、10代の男性患者の話。受傷後10日で、植物人間になるのを避けるため、チューブを介してのenternal feeding(腸内投与)を始めたらしいのですが、それと同時に15mL/d x2 a day (30mL/d、DHAにして6756mg/d)というかなりaggressiveな量のOmega-3 fatty acidもサプリメントで投与。そこから患者は驚異的な回復を見せ、事故から2年後、喋れる&杖をついて歩けるようにまで回復したとのこと。Case studyではありますが、サプリメントの投与が大いな効果をもたらした
例として紹介されています。

この研究に紹介されていた別の研究結果で興味深かったのが、
"When DHA was given within an hour of spinal cord injury, neuromotor function was maintained; but the effect was lost when treatment was delayed for 4 hours"2という一文。更に、"Early nutrition intervention in TBI is underappreciated. Patients not fed within 5 and 7 days after TBI have a 2- and 4-fold increased likelihood of death, respectively; and decreasing amount of nutrition in the first 5 days is related to increased mortality rates"3という表記も。
つまり、この論文では『早期のアグレッシブな栄養療法』の重要性を大きく訴える結論が導かれており、「ERか、もしくはそれよりもっと早い事故現場ででも」投与を始めるべきだとしています。量も、一日約7000mg近い量のDHAというかなりアグレッシブなdosageを2年に渡って投与していましたが、何も副作用は見られなかった、それくらいでいいのでは、と。

投与開始のタイミングは気になっていたところだったので、ASAPというこの一つの答えの提示は興味深いです!

で。Systematic review4(↓)で学んだこともさらっとまとめます。こちらは、hematomaとかじゃなくてsport-concussionに特化したreviewになっています。
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Rest or Exercise
意外とrestがConcussionにはいいんだぜ!というエビデンスも欠如してるもんなんですね。受傷時期を問わず(脳震盪受傷から一週間の患者も一ヶ月経っている患者もひっくるめて)有無を言わさず一週間休ませ(complete physican & cognitive rest)たら、総じてPost-Concussion Symptom ScaleとImPACTのスコアが改善された、という研究がひとつあるのと(control groupは無かったのでデザインとしてはイマイチと評されてますが)、Retrospective studyで「受傷後に運動を全くしないのもしすぎるのも回復には逆効果。ほど良いジョギングくらいのlight activityをしていた患者が一番回復が見られた」というものがありました。
まとめとしては、「受傷後2-3日、特に脳がvurnableになり、neurometabolic crisisを起こしている期間はphysical cognitive restが望ましい。その後は、軽い運動ならもしかしたらbeneficialかも知れない…でもまだ分からない」みたいな感じでした。ほわほわしとる。「prolonged bed restは好ましくない」という表記もありましたが(休むにしたってそこまですることはない、という意味で)、とにかく良い研究に欠けており、強いevidenceではないみたい。

Pharmacotherapy
症状が21日以上続いている脳震盪患者にAmantadine (100mg x2 daily for 3-4 wks)を処方。Historical controlsと比較した所、両グループ共に改善が見られたが、Amantadineグループの方がverbal memory, reaction time, number of symptomsにおいて特に改善幅が大きかった。しかしcontrol groupのほうが元々スコアが総じて悪かったというから…うーむ?ちなみに、Amantadine(アマンタジン)というのはパーキンソン病の治療に使われたりする、ドーパミンの放出を促す薬(↓)なんだとか…。初めて聞いた。これはひとつの研究にしか基づいていませんが、脳震盪からの回復を早める可能性のある薬として、これからも研究が続けばいいなぁと思います。注目ですね。
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Other Therapy
Cervical spine manual therapy, neuromotor retraining, sensorimotor retraining and vestibular physiothetapy treatmentは回復が遅い患者に対し効果があったそう。5-6 具体的な内容は、オリジナルを読んでいないので分かりませぬ。。。

そんなわけで、このsystematic reviewは総じて「もっとhigh quality studyが必要」という結論ではあったのですが、いくつか今後の脳震盪治療へのヒントは散りばめられている感じでした。早期のDHAサプリメント投与、Amantadineという薬の処方、初期のrestからの適度な運動への移行、そして複合セラピー(manual therapy, vestibular exercises, neuromotor/sensorimotor re-training)の可能性…これからも目をしっかり開けて、将来わんさか出てくるであろう論文達に大いなる期待をしたいと思います!

改めまして、色々な論文を紹介してくれた友人たち、ありがとう!

1. Lewis M, Ghassemi P, Hibbeln J. Case report: therapeutic use of omega-3 fatty acids in severe head trauma. Am J Emerg Med. 2013;31:273.e5-273.e8.
2. Michael-Titus AT. Omega-3 fatty acids: their neuroprotective and regenerative potential in traumatic neurological injury. Clinical Lipidology. 2009;4(3):343(311).
3. Hartl R, Gerber LM, Ni Q, et al. Effect of early nutrition on deaths due to severe traumatic brain injury. J Neurosurg. 2008;109(1):50-56.
4. Schneider KJ, Iverson GL, Emery CA, et al. The effects of rest and treatment following sport-related concussion: a systematic review of the literature. Br J Sports Med. 2013;47:304-307.
5. Schneider K, Meeuwisse W, Emery C. Symptoms and functional improvements followinf a course of vestibular rehabilitation, manual therapy and spinal stabilization exercise in high performance athletes with complex concussions. Clin J Sport Med. 2009;19:265-266.
6. Schneider K, Meeuwisse W, Boyd L, et al. Multimodal physiotherapy in the treatment of individuals with persistent symptoms following a sport related concussion; a randomized controlled trial. Clin J Sport Med. 2012;22:295.

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  by supersy | 2013-05-28 22:30 | Athletic Training | Comments(0)

脳震盪の新たな治療法?DHAサプリメントについて考察する。

いやー、今週末は土~月曜と、アメリカでは珍しい三連休だったんですけどね。
風邪ひいちゃってすっかり無駄にしちゃいました。お出かけでもしたかったのになー。
日本→ミネソタと間髪入れず飛び回っていたツケかしら。
ようやく体調が回復してきました。よかったよかった。

さて。本題です。
脳震盪って、一度受傷したらひたすら「待ち」の怪我なんですよね。
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脳はダメージからゆっくりゆっくり回復していく。それをひたすら待たなければならない。その間、テレビゲームはだめよ、とか、辛いものは食べちゃだめよ、とか、走り回っちゃだめよ、とか適切な指示を与えつつね。で、脳が準備できたかな、と思ったら我々は適切な量のストレスをかけてみて、症状が戻るか検証→無事にRTPまで行ければ万々歳、というか。
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この間、セラピストとして私たちが出来ることと言えば「患者を観察し続けること」くらい。
靱帯の損傷等と違ってsoft tissue mobilizationしたり、冷やしたり暖めたりということもない。
回復を待つ。これだけなんです。
治療としてできることはない。



…と思ってたんですけどね。

某SEC大学で働く友人に
「うちのチームドクターは脳震盪の患者にDHAのサプリメントを処方するんです。
受傷後数日してから、これだけの量を今日からあげ始めてね、と指示を受けて…」
という話を聞いて、へぇー、アメリカ医学最先端ではそんなことが!とびっくり。
(私の働いている大学はアメリカ最先端というには程遠い…)

一応この夏もRegionalレベルでConcussion Workshopをホストする身としましては、
ちゃんとそういうEmerging treatmentにも目を向けていかなければ!と思ったので、
とりあえず自分で調べられる範囲で調べてみることにしました!
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●DHAとは?
英語での正式名称はDocosahexaenoic Acid、日本語ではドコサヘキサエン酸。
DHAはOmega-3 polyunsaturated fatty acidsの代表的なもののひとつ。魚に多く含まれることで有名ですが、日本人の魚離れも進む近年、現代っ子はDHAが不足気味とも聞きます。

DHAを取ると頭が良くなる!なんて小さい頃聞きましたが、あながち間違いではないのです。
DHAは脳内のfatty acid contentの97%を構成する!というだけあり、
その効果も神経系や脳の機能に直結したものが多いんですよ。

DHA is essential for:
 normal neurological development, maintenance of learning and memory,
 neural plasticity

DHA can affect:
 neural function by enhancing synaptic membrane fluidity and function,
 regulating gene expression, mediating cell signaling, and enhancing long-term potentiation.
脳の均衡を保つために必要なNeuroprotein D1 (NPD1)のprecursorでもあるので、
怪我が起こった後のoxidativeを抑える、という受傷時の大切な役目もあるようです。
以前Neuroplasticityについてまとめたことがありますが、DHAはこの源。脳を文字通り柔らかく保ち、臨機応変に、活発に保つ、という重要な役割を果たしていることが分かります。
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では、DHAのサプリメントというのは一般的によく知られていますが、
これはどういった効果が今まで研究によって認められているのでしょうか?

Dietary DHA supplementation:
 improves learning ability, enhances long-term memory in both young and old animals,
 can reduce cognitive decay during aging and Alzheimer's disease1
老化やアルツマイハー病に効果あり!と言われれば、
Traumatic Brain Injury (TBI)による脳機能の低下を克服するのにも使えないのかな?
という流れは言ってみれば自然なことかも知れません。

●What does Evidence say?
そんなわけで、DHAサプリメントとTBI、というこの2つのトピックに絞って、
文献を探してみました…が、これがなかなか手に入らないったら!
特に、あれですね、人体実験の文献は一切無い。
そんなわけで、大学院以来初めて動物を対象にした実験モノを読んでいます。
この分野はまだまだこういう段階なのですね。
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例えば、こちらの研究。Wu et al2は…
1. 48匹のネズミをランダムにグループ1と2に分類。
2. グループ1はRegular Diet(RD)組、グループ2はFish Oil Diet (FO)組。
 これらの食事を4週間続ける。
3. 4週間後、グループ1aと2aのネズミは人工的にTBIを受傷させる。
 グループ1bと2bはShamなので、prepのみして受傷はナシ。
4. さらに一週間、RDかFOの食事を続け、脳を検査。b0112009_630359.png

加えて各ネズミにcognitive testingも実施。
足の付かない深さのプールに泳がせ、
唯一立って休めるplatformをどれだけ短時間で短距離で見つけられるか、というテストをやらせた結果(足場の位置は一定なので、学習さえすればすぐに短時間・短距離で見つけられるようになるはず、というもの)…Sham-RD、FPI(人工的に怪我をした)-FOグループがほぼ同様に20秒以下で見つけられた=高いcognitive levelを発揮したにも関わらず、FPI-RDグループは断トツのビリ。受傷によってcognitive thinkingの能力が落ちたままで回復も他のグループに比べ見られないことが明らかになりました(↓下グラフA)。
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Neural excitabilityをpromoteし、シナプスの伝達を促進するBDNF (brain-derived neurotrophic factor)のレベルも測定され、Sham-RDとFPI-FOはほぼ変わり無いという結果に。Sham-FOの数値がずば抜けて高いのも特筆すべき(↑上グラフB)。

つまり小難しいことを一切省いてまとめると、
DHAサプリメントはTBI受傷後のoxidative damageを抑圧し、cognitive functionをrestoreする効果がある。故に、TBIの治療における可能性は十分にある。
…ということが言えると思います。

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では、サプリメントの投与を受傷後のみに限った場合はどうでしょう?
Mills氏が行った動物実験は、大まかに以下の通り。3
1. ネズミを 1) injured-10mg/kg/d DHA supplement、2) injured-40mg/kg/d DHA supplement、
 3) injured-no supplement、4) sham injured-no supplement の4グループに分類。
2. グループ1-3は受傷した後、30日間のサプリメントを投与。
 4はprepだけして実際の怪我は与えず。
3. 受傷30日後、脳を検証。

…すると、 APP-positive axons(つまり受傷によって損傷を起こしたaxonの量)がグループ1では7.7 (± 14.4)、グループ2では6.2 (± 11.4) axons per mm2だったのに大して、グループ3は182.2 (± 44.6) axonsだったというのだからこれは顕著な差です。ちなみにグループ4は4.1 ± 1.3(↓下グラフ参照)。つまり、『受傷後のDHAサプリメントは脳の損傷拡大を最小限に防ぐor回復を高め、受傷30日前後で受賞前のレベルにほぼ戻る』という結論付けができます。
Bailes氏の研究も、構造・結果・結論共にこれとほぼidentical。4
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●実験を現実に応用できるか?
さて、これらの実験を丸々現実に移し替え、
「なら脳震盪患者も皆DHA取ればいいんじゃない?」
と結論づけてしまうにはちょっと気が早いかも知れません。その理由として考えられるのは、
1. 実験された怪我はTBI、頭部にincisionを作って人工的に損傷を起こさせているので、
 mTBIである脳震盪に同じ結論がそのまま当てはまると考えてしまっていいのか。
 (mTBIはあくまでTBIの一種ですから。どうも実験に使われている怪我はmTBIと呼ぶには深刻かなと)
2. つーか実験対象ネズミだし。
 人間相手だとちょっと結果が変わってくる可能性はありますよねー。

ですが、DHAサプリメントの副作用もほぼ確認されておらず、老化予防に効果はあることからも、比較的万人向けで、リスクの少ない有効なサプリメントと言ってもいいのではないのかな、と色々調べた結果、私は個人的に考えています。金銭的に許すならば、かなりの人が今日からでも摂取し始められ、長期的で多面的な効果を得られるサプリメントと言ってもいいのではないでしょうか。

将来これが脳震盪治療の主流になってくるかは分かりませんが、
これからもっともっと研究もされ、注目されていく分野かも。
私も現時点で自分の選手にこういった治療法を勧めるかはまだ分かりませんが、
個人的には是非取ってみたいサプリメントではあります。脳みそ、たるんできとるし。

皆さんのところでも、もうこれを採用している!なんてところありますか?
是非専門家の意見を聞かせてください。(文献も面白いのがあれば是非シェアもらえたら嬉しいなー)

1. Hashimoto M, Hossain S, Shimada T, et al. Docosahexaenoic acid provides protection from impairment of learning ability in Alzheimer's disease morel rats. J Neurochem. 2002;81:1084-1091.
2. Wu A, Ying Z, Gomes-Pinilla F. Dietary omega-3 fatty acids normalize BDNF levels, reduce oxidative damage, and counteract learning disability after traumatic brain injury in rats. J Neurotrauma. 2004;21(10):1457-1467.
3. Mills JD, Bailes JE, Sedney CL, et al. Omega-3 fatty acid supplementation and reduction of traumatic axonal injury in a rodent head injury model: laboratory investigation. J Neurosurgery. 2011;114(1):77-84.
4. Bailes JE, Mills JD. Docosahexaenoic acid reduces traumatic axonal injury in a rodent head injury model. J Neurotrauma. 2010;27(9):1617-1624

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  by supersy | 2013-05-27 14:00 | Athletic Training | Comments(0)

顎の話をしよう:Having A Dentist in the Sports Medicine Team

昔から歯にはあまり興味がなかったんですよね…。
歯並びは悪いほうじゃないんですけど、小さい頃から虫歯をひっきりなしにしていたので、自分にとって「自信の無い」部位だったのかも。できれば目を瞑りたい、知らないフリしたい、関わらないようにしていきたい、だからあんまり勉強もしない、みたいな(苦笑)
医療従事者としても、歯医者という確立されたカテゴリーがあるんだから、
自分の患者に歯科の問題があれば専門家にreferすればいいんでしょ、くらいに思っていたし。
実際、そうしてきたし。
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でも、きっかけは、なんだったか。
某マウスピース会社の「噛み合わせが良くなるとパフォーマンスも向上」みたいな
謳い文句を聞いて、関連文献を幾つか読んだ頃ぐらいからでしょうか。
少しずつ、歯そのものというよりは「噛み合わせと身体の関係」に少し興味が出てきて、
そのあと、TMJの解剖学を詳しくやって、その複雑さの虜になったりして…。
趣味でたまに勉強するsubjectくらいになっていたのです。

しかし近年、
いくつもの要因が重なり、TMJとそれに付随する歯・口腔・頭蓋骨はもっともっと注目していくべきなのでは、Orthopedic evaluationで触れられるべきものかのかな、と思いはじめています。
我ながら、横隔膜の評価するだけでも十分マニアックだったのに、
ここまでくるともう変人の域かも知れないという自覚はありますが(苦笑)。

とりあえず、最近まとめた文献を読んだりもしたので自己整理も兼ねて、
ベーシックなことだけなるべくシンプルにまとめていきたいと思います。
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●リラックスしているときの、クチ。
あなたが(喋ったり、モノを食べたりしているのではなく)リラックスをしている状態のとき、
以下のことがクチの中で起こっているべき、と一般的に考えられています。
 1. Lips closed (唇はそっと閉じている)
 2. Teeth slightly open (歯の上部と下部は触れておらず、軽く隙間が空いている)
 3. Tongue touching the roof of the mouth (舌は口腔内上部に柔らかく平らに押し付けられている)
え、クチを閉じている時、歯は開いているもんなの?触れてないの?
と思われる方も多いかも知れませんが、そうなんです。開いているべきものなんです。
ヒトが普通に生活していて、喋ったり咀嚼をしたりして歯が触れ合う時間は
一日20分にも満たないと言われています。
(実は私、初めてこれを聞いたとき3がピンとこなかったのですが…これは後に説明します)

●歯が触れ合っていては、ダメ!
…ということは、睡眠中の歯軋りはもちろんん、無意識に昼間でも歯を食いしばっていたり、引いては歯が軽く触れ合っているだけでもいかん!ということになります。
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Nocturnal Clenching/GrindingやDiurnal Clenchingでなく、Daily Light Touching of Upper & Lower Teethでも十分悪影響を及ぼすのだ、としっかりと最初に定説として唱えたのは日本の歯科医師たちです(↑)。1彼らはこれをTeeth Contacting Habit (TCH=歯牙接触癖)と名づけ、非常に軽いcontactでもmasseterやtemporalis、SCMの緊張を高めるには十分、故に、TMJにかかるストレスが上がると説明。更に、「患者のほとんどは無意識でこれをやっており、自覚が無い」ともこの論文で述べています。

以前NHKのためしてガッテン!でもこのTCHは紹介されていて
(たまたま母が録画し送ってくれたDVDの中にあったので偶然にも私も見ることができたのですが)
それによれば、自分がTCH患者かどうか確認するためには必要なのは手鏡ひとつ。
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1. 口腔内、頬の内部に歯の噛み合せに当たる部分に白い線が出来ている。(↑写真右)
2. 舌には不自然にカクカクとした波型の“歯に押し付けられていた跡”がある。(↓写真左&右)
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これらがあれば晴れてあなたも立派な無自覚・TCH持ち!
ちなみに、私もばっちり両方ありました。だから、「リラックス時の三原則」の
「3. 舌が口腔上部に触れている」感覚が私には分からなかったんです。
私の舌は絶えず歯の裏側、前方に押し付けられていたわけで、それが私にとってもはや
「アタリマエ」になってしまっていたわけですから。

●噛み合わせやTCHが原因で起こる弊害
こうした「軽く触れている状態の歯」は、様々な問題を引き起こしかねません。
恐らく最も代表的なのはChronic TMJ Dysfunction (慢性顎関節機能不全症候群)。常に顎・顔・頭が緊張状態にあり、慢性頭痛、理由の無い「イライラ」感を生む原因にもなります。2

SCM等が常にactivateされた状態になると、
1) Forward neck postureが促進され、c-spineのカーブが無くなり平らになる。
2) 呼吸時にも首の筋肉がメインに働き、胸が上下するThoracic/Clavicular breathingが起こる。
 (Thoracic/Clavicular breathing elevates the lower ribs → diaphragm flattens and thus inhibited)
…であるから、横隔膜が上手く使えなくなり呼吸にまで影響が出る3ことになります。
喘息持ちの子供全員にTMJ dysfunction&Neck ROM restriction/painが確認された、
という研究もありますし、呼吸と顎・噛み合わせは大いに関係があるのです。4

歯を食い縛るだけで体重もシフトする、5という研究があることも考えれば、
噛み合わせに問題があれば姿勢も悪くなる、という結果が出るのにも納得がいきます。6
顔の歪みがPelvic Anterior tiltを促進し、更にはPronated footにもつながる、7
なんて発表もあるのだから面白いですね。
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ん、顎が足に影響ってどういうこと、って?
例えば、上のは古い研究ですが、噛み合わせを変えるだけで足の筋肉に緊張が生まれる、
ということがEMGで確認されたというものです。8
右顎に綿を噛ませ、敢えて噛み合わせのバランスを崩すと、
右(ipsilateral)のperoneus longusと左(contralateral)のgastrocnemiusにも緊張が起こるそうです。
左で噛むと、左のperoneus longusと右のgastrocnemius。
(面白いのが、tibialis anteriorには異常なactivityは全く見られなかったということ)
このことから、筆者は「long muscle chainというのが人体には存在する」と結論付けています。
顎をactivateすることで、遠方にあり一見関わりが無さそうに見えるその足の筋肉も、
chainでつながっているから連動するのだ、ということですね。

●なぜ?
なぜ噛み合わせや顎の状態ひとつでここまで弊害が広がってしまうのか?
これを説明できるかも知れない理由のひとつに、"[TCH] could result in persistent activation of the neurological system that could, in turn, produce the central nervous system changes seen in chronic pain patients."9という興味深いtheoryがあります。
咀嚼筋は主にCN V(Trigeminal Nerve)によって支配されていますが、
実際はそれだけではありません。噛む、ということが命を保つのに欠かせない、
重要で原始的なタスクだから、BrainstemもCerebellumもコントロールに関わっている。
加えて、CN VII、IX、X、XIIとも非常に近い関係にあります。
だって、モノを噛むときって、咀嚼筋を使って顎を動かすだけじゃなくて、
舌を使って食べ物を感じ動かし右に左にコントロールしたり、食道が食べ物を飲み込んだり、
全て連動しているでしょ?それに付随して、呼吸のパターンを必要に応じて変化させたり、
咳き込んだり、吐いたり、えづいたり…なんてことも食事中に起こりえる。
(食事中じゃなくても、下顎を動かせば舌も自然と動くことが実感できるはず)
つまるところ、TMが動いたり刺激されたりすることで連動するモノたちも反応を起こすから、水面に落とした小石のように、顔全体から首、肩、胸にかけてまで反応が広がる。CN X(Vagus)なんかは横隔膜までInnervateしているわけだから、文字通り上半身を丸々影響することになります。
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Yin et al10は、この理由から、"TMJはNeurological window and leverとして考えられるべき"というユニークなanalogyを展開しています。分かりやすくいえば、TMJを的確に作用させればそれを起爆剤にその他のシステムもぐっと有効に使えるようになるし、TMJが間違って使われたりノイズが混ざったりしたら、身体の他の部位にも悪影響が出る、みたいなことです。彼ら(彼女ら?)は最後に"If the window gets dirty, it might be appropriate to cleanse the window. But if the window and the object over the window gets dirty, it would be best to clean both of them"と締め、TMJを様々なアプローチを使って治療することのメリットを強調しています。
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そんなわけで最近は、ヒトの顔を見るときに無意識にその歪み(↑)、
引いては全身への影響をついつい考えてしまうようになっています。
もしお会いしたらジッ…と顔を見つめてしまうかも知れませんがお許しを。

●Sports Medicineに応用する
あれこれ考えていく中で、整形外科疾患へのHolistic approachにおける
優秀なPedorthist(これは言わずもがなですが)とDentistの役割の重要性を再確認してます。将来腰を据えて働く時には、こういった視点から人体を診ている歯科医さんと一緒に仕事をしたい…!
…というのも、どうしても治療面で私らには出来ないことがあるからで。
噛み合わせや顔の歪みには、ALF applianceやFlat splint (↓)のような道具が必要不可欠な場合が絶対に出てくると思うからです。それに、彼らから学ぶことはとってもとっても多い気がする!これからスポーツの現場でも、ATとDentistとの関係はもっともっと強くなっていくのではないでしょうか?優秀なチームには優秀な歯科医アリ!みたいな。
なんだかわくわくしますね(私だけ?)。
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さて、今回まとめたことは、分かる方からは「歪みが来ているのはascendingかdescendingが起源か分からないじゃないか」とか「肋骨飛ばして説明すんじゃねー」とか言われそうですが、
まだこの分野は私も勉強を始めたばかりで、今回のは走り書きのようなものなので不完全なのは
お許しを。まだまだ読むべき文献が転がっておりますし、解剖ももうちょっと勉強しなくては。

逆に「こんなの絶対ウソ!」と思っていただけてもいいです、
…というか、そういう方大好きです。Evidence-Basedの根本は"Be open-minded and skeptical"。怪しいと思ったらぜひご自分で納得の行くまで調べてみてください。
そして、是非の判断を自分ですればいい。
押し売りはしませぬ。そうして皆、自分らしさを確立していくのだと思います。
*でも面白いArticle見つけたら是非是非教えてくださいね!

1. Sato F, Kino K, Sugisaki M, et al. Teeth contacting habit as a contributing factor to chronic pain in patients with temporomandibular disorers. J Med Dent Sci. 2006;53:103-109.
2. Glaros AG, Urban D, Locke J. Headache and temporomandibular disorders: evidence for diagnostic and behavioral overlap. Cephalalgia. 2007;27:542-549.
3. Correa ECR, Berzin F. Temporomandibular disorder and dysfunctional breathing. Braz J Oral Sci. 2004;3(10):498-502.
4. Chaves TC, Grossi DB, de Oliveira AS, et al. Correlation between signs of temporomandibular (TMD) and cervical spine (CSD) disorders in asthmatic children. J Clin Pediatr Dent. 2005;29(4):287-92.
5. Yoshino G, Higashi K, Nakamura T. Changes in weight distribution at the feet due to occlusal supporting zone loss during clenching. Cranio. 2003;21(4):271-278.
6. Nicolakis P, Nicolakis M, Piehslinger E, et al. Relationship between craniomandibular disorders and poor posture. Cranio. 2000;18(2):106-112.
7. Rothbart BA. Vertical facial dimensions linked to abnormal foot motion. J Am Podiatr Med Assoc. 2008;98(3):1-8.
8. Valentino B, Melito F. Functional relationships between the muscles of mastification and the muscles of the leg. Surg Radiol Anat. 1991;13:33-37.
9. Glaros AG. Temporomandibular disorders and facial pain: a psychophysiological perspective. Appl Psychophysiol Biofeedback. 2008;33:161-171.
10. Yin CS, Lee YJ, Lee YJ. Neurological influences of the temporomandibular joint. J Bodyw Mov Ther. 2007;11:285-294.

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  by supersy | 2013-05-23 15:30 | Athletic Training | Comments(2)

PRI Course in Minneapolis, MN。

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さて。
PRIのとあるコースを受講するためにミネソタはミネアポリスに来ています。
一日8時間の講義 x 2日間、合計16時間も教室にカンヅメでお勉強する、という
久しくやっていないことを体験。いやー、なんだかアメリカに来たばっかりの頃、英語の授業を集中して聞いていると疲労度が半端じゃなかった時のように、集中して聞いていないとあっという間に置いていかれるので、ずっと気を張っていてめちゃめちゃ疲れました(苦笑)!

今回の一番の収穫はNeurological reference centersという
Exerciseの最中や日常生活に於いての『カラダの中の意識を集中させるべき点』を学べたこと。
(これでverbal cueがちぃっとばかり上手く出せるようになるかも…)
そして「気づき」としては、
Orthoticsが整形外科的にモノを押し上げたり衝撃を和らげたり、というだけでなく
Neurologic deviceとして、neurological inputをブーストする目的で使われることが
実はケースの半数以上なのではないか、ということ。
そして、以前からこっそりずっと気になっていた、
顎や歯、そして付随する頭蓋骨が身体に及ぼす影響というものを改めて認識することができ、
クリニシャンとして新たに一歩踏み出せた思いでした。極端に言うと、顎の噛み合わせや頭蓋骨のズレが足首の痛みにつながったりすることがある、みたいなことです。
独学でやっていたことがこうしてつながると自信にもなります。
これからは頭蓋骨と顎も積極的に評価していかなきゃいかん。
ヒトとその動きというものを、また新たな視点から見られるようになったかも。
それを技術として会得するにはもっと勉強しなければ!わくわくしますね。

ちなみに。
勉強以外でも充実した時間が過ごせたのは幸いでした!
ホテルでもしっかり運動したり、プールで泳いだりホットジャグジーに入ったり。
講習会場に隣接したグローバルマーケットを歩くのも楽しかった!
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中でも食事は毎回リーズナブルにも関わらず、結構豪華なものを…。
昨日の夕食は近くで評判の良かった「FUJIYA」という日本食屋さんへ。
アサヒビールを呑みつつちらし寿司をつついたりして至福の一時。
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今日の夕飯は「MOTO-I」という日本風居酒屋さんへ。
ここではミネソタの地ビールとラーメンを頂きました!
私が食べたのは野菜らーめん(ピリ辛 写真右↓)。
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日本から帰ってきてから間髪入れずに講習会なんて身体にキツイかな…と思ったけれど、
思いがけずリラックスできる数日間になりました。
明日早朝の便でCorpus Christiに帰りますー。
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  by supersy | 2013-05-19 22:30 | Athletic Training | Comments(0)

落ちこぼれとはなにか、教師の観点から考える。

こんなことをハッキリ書くのもなんですが。。。
毎年うちのAT学生の実習場所を決めるときに、プログラムディレクターと1on1の話し合いをするのですが、「この子は勉強/現場でこういった課題がある」→「しっかりしたSupervisorに見てもらって、鍛えて欲しいから、Syお願いね」となるパターンは結構多いのです。つまり、私の下にやってくる生徒は「問題児」が多い。頑張り屋さんなんだけどお勉強で所謂落ちこぼれだったりとか、頭だけは異様にいいけど、人間性に難があったりとか(苦笑…去年の今頃にもとある四年生の話を書きましたっけ)。うちのプログラムの実習期間は一年ローテーションと長期。だからこそ、どういったニンゲンとこういう学生を組ませるかは非常に大事。こんなこと、日本語だから書けるんだけど。
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まぁでも私の身にも少しなってみてください。
毎年毎年、クセのある学生ばかり来る。苦労が多いったらありゃしない。個性が豊かだから、学生同士の衝突もあったりする。本当にまぁ、幼稚園児の遠足みたいなもんです。
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でもね、実は思うほど大変でもないの。
うーん、何と言うかな、大変なのは最初だけ。

ウチではこういう風にやっていこうと思ってる。最低限こういうルールは守ってほしい。でも、君たちが一緒に仕事をやってみて、これはこうしたほうがいいんじゃないかな?とか、何でこうしてるんだろ?と思うことがあったらいつでも遠慮無く聞いてほしい。必要があれば皆で話しあおう。一年間皆がいる場所だから、居心地よくしたいし、お互いにとってベストになるようにしたい。そのためには、お互いから学ぶ姿勢が必要不可欠!どんな意見にもオープンだから、イチクリニシャンとして同じ目線でモノを見て、考えあっていこう。

こういう話をちゃんと最初にして、それから、自分の言葉に忠実に仕事をしてみせる。
(あなたのこと尊敬しますよ!と口先だけで言っても行動が伴わなければそんなの嘘だとすぐバレるでしょ?ちゃんと有言実行するのが大事。そして「ああ、言ってるだけじゃなくこの人本当にやるんだ」と学生が感じてもらうことに意味がある。独りよがりは現場ではタブー)
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どうやって?と思われる方もいるでしょうか。
私がやることなんてシンプルなのです。
1. 相手の意見、言い分は時間を作ってでもじっくり聞く。挟む言葉は少なめに、でも「それはどうして?」ともっと言葉を引き出しつつ、彼女・彼ら自身の言葉で説明してもらう。
2. 良いことをしたら、とことん褒める。人前で褒める。私自身が学ぶことがあれば、「キミのこういうところからこういうことを教わった、ありがとう!」と礼も言う。
3. 間違えた時、失敗した時、しっかりそれが間違いだったと気づかせてやる。その上で、次はどうしたらいいんだろうか、話し合ったり提案したりする。
4. 学生にやれということは、自分もやる。掃除洗濯もしっかりと協力。

1は、良いクリニシャンになるための準備でもある。「自分の判断の理由や根拠を説明できるようになる」というのはATにとって必要不可欠な技術。
2は、誰だって褒められたら嬉しいでしょ。本人は「頑張ったらこんなに褒めてもらえるんだ!」と思うし、周りは「私も頑張ればああして褒めてもらえるんだ!」と感じる。こういうことを繰り返していると、学生同士がお互いを褒め合い始めたりする。オープンに褒めることがアタリマエになる。自信もつくし、笑顔も増えるし、良いことばかり。
3は、学生だからたまに間違えても間違いと本人が認識していないことがあるので、それを指摘することが大事。ここはあえて感情を混ぜず、何がまずかったかを客観的に説明する。例えば、学生がテーピングをきつく巻きすぎて選手が痛みを訴えたり、水ぶくれが出来てしまうことがある。そういう場合、選手はこっそり私に言ってきたり、「次からはSyがやって」と言ってきたりするのだけれど、「それ、いい成長のきっかけになるから、言い難いかもしれないけど、ちょっとキツすぎたって本人に伝えてくれるかな?」と選手にお願いしてみる。そして、「私も失敗たくさんして上手くなったんだ。本人もあれがマズかったと理解できれば工夫できるはず。もう一回だけ付き合ってもらえないかな?」とも頼んでみる(「いや!絶対Sy!」と言われればそれまでだけど)。失敗した子に、改善する機会を与えるのも教育者の役目。良いイメージを持って次へ。
4は、単に自分がふんぞり返って学生に命令ばかりするようなニンゲンにはなりたくないから(苦笑)。掃除するゾーイ、と先頭切って行くくらいで。

こういうことを現場で数週間、数ヶ月やってると、あとは学生にスイッチが入って、勝手にどんどん成長してくれる。そこらへんで私もひとりひとりの能力を見極められるので、時に「彼らのcomfortable zoneをちょっと超えた」レベルの仕事を敢えて課してみたりする。この選手さ、こういう怪我で今こういう症状なんだけど、どういう治療したらいいかな?プロとしての意見を聞きたいんだけど、と聞いてみたり。最初は「え、私がそれを決めるの?」とタジタジな学生も(いや、実際は学生に決定権が全てあるわけじゃないけど、あると思わせたほうが良かったりする)、「こないだ授業でこんな話をやったところだよね、それの応用だ。この選手はこういう状況だから…」とほんのちょっとだけ手助け。「じゃあ○○とか△△とか?」と言葉が出てきたら儲けもの。「おおっ、それいいじゃん!採用!じゃあ、ついでに治療もやってみて!」と、学生に「全部自分で決め、自分で実行した」達成感を与える。そうすると、こういった私のミニテストみたいな意地悪も、なんだか楽しくなってくる。成長を学生自身が感じてくれるというかさ。

勉強もそう。落ちこぼれな子って、「何が分からないのかも分からない」状態の子が多い。
テストが迫ってるけど、何から勉強していいのか分からない、とか。
別に勉強自体ができないわけじゃないんだよね、
単に、ものすごく効率の悪いことをしている子が多い。

全部を知ってもらうようには出来ない、というのは私自身もよく理解しているので(だって私だって教えてるけど全部暗記しているわけじゃないもーん)、授業中は「ここんとこは最悪忘れてくれてもいいけど、これだけは覚えといて!」とか「私この説明をもう3回くらいしているよね。…ってことは、きっと小テストや試験にも出るってことカモネ!」とか「今めんどくさいと思ったでしょ。でもこれは将来違うクラスでも出てくる項目だよ、いずれ覚えるなら今にしなさい」とか、情報に軽く順位をつけてやる。逆に「ここは敢えて時間使って覚えてくれなくてもいいけど」とか「ここまで知ってるとマニアだけど、面白いよね」みたいなことも言うからこそ、奮起して覚えてくるやつもいる(苦笑)。これを私は情報の色塗り、という風に感じているんだけど(黄色とか赤とか青とかで塗り分けてやるイメージ)、これだけで学生が復習するときのアクセントになる。
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あと、これは以前に書いたことにもなんとなくつながるんだけど、「これを知っていると、こういうことが出来るようになる」というのを具体的に見せてやる。教室で習う知識と、現場での技術がイマイチ結びついてないんじゃないか、と学生が疑いだすと、「これをやるのは時間の無駄」と結論付けかねない。そう思われるのは悲しいし、教師としても避けたいところ。だから、「超音波がどう身体に影響を及ぼすのかってさ、複雑だけど、患者さんに『これどういう効果があるの?』なんて聞かれることはしょっちゅうなのね。その時に、この機械にはね、水晶が入っていて、それに電気をかけることで水晶が伸び縮みして振動が生まれて…なんてサラッと答えられたらカッコイイし、何より、患者さんが『この人すごい!』と思ってくれたりするでしょ。そしたら尊敬してもらえちゃうよね!」なんて、clinical valueを付け加えてみる。
「この勉強つまんない…」と思っているかもしれない子に「そうか、でもこれを知ってたら・出来たら現場でこういう風に役立つんだ!」と気づいてもらえるのは大きなステップ。教室での勉強と、現場の技術をつなげてやる。こういうところ、想像力がイマイチ乏しい学生は先生の手助けがいるんじゃないかと思うのです。
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まー長くなってしまいましたが、結局のところ、
本当の落ちこぼれなんて私は今まで見たことありません。
情熱とかやる気って教えられないというけれど、私らは身近にいるからこそ、その源を突っついて刺激してやることはできる。一度火がついてしまえば、後はそれとなく方向修正してやるだけで、自分で勝手に好きなことをドンドン勉強していくし、自主的な動機だからこそ、それらが自分のものになる。教師って、意外と楽な仕事なのです。

私に任された勉強面で「落ちこぼれ」な学生たち、今までに本当に手こずった子は中でも実に一握り。逆に言うと、周りに「落ちこぼれ」と思われていた子で、本人も勉強は苦手という自覚があったけれども勉強に目覚め、むくむくと成長していく、なんて学生は少なくなく、そういった脱皮のような豹変を見られるのは至高の幸せでもあります。学年のどんけつから一番に踊り出る、なんて、別に珍しくもない話。今年見ていた中で、頑張り屋さんなのに成績は全く伸びず、その学業の不出来から「次の学期で改善が見られなければプログラムから強制退出(kickout)」という宣言を受けていた崖っぷちな子がいました。しかし、この一年で彼は一変。私に最後の実習評価で「一年間でこんなに成長した子は見たことない」と言わしめるほどの学年トップ優良児に。自主的にarticleを読み色々なevidenceを勉強したり、暇があれば私の授業のパワーポイントを眺めて予習・復習したり、授業中質問をすると答えるのは必ず彼だったり…という、本当に見違えるような逞しい二年生に成長しました。彼の成長は他のPreceptorや他学年の学生の目から見ても顕著で、「あの子あんなに出来る子だったっけ」「いつも頑張っているよね」というコメントを数多く耳しました。彼の授業を一年半担当し、彼の実習supervisorとして一年過ごした自分としては、本当に嬉しい限りです。
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そんなわけで、実習最後の日に彼にサプライズプレゼントを用意。「こんなことしたことないんだけどさ、キミの頑張りは何かの賞に値する!と思ったので、賞を作っちゃいました。(指導者としてでもClinical Education Coordinatorとしてでもない)Sy個人からの、特別賞ってことで!」と、お手製のミニプラーク(↑写真はイメージです)を用意して贈呈。この彼というのは190cm、150kgはあろうかという大巨漢なのだけど、これをあげたら彼は言葉が詰まって、ふぐ…と涙ぐむもんだから、こっちまで…。。。「(うらやましがるから)他の子に言っちゃだめだよ」と言うと、「ありがとう、これは僕にとって表現できない価値があります」と。

別に特別な何かをするわけじゃない、根気強く、そして真摯に接すること。
それさえしてくれれば学生は勝手に自らを磨いていくんじゃないかと思いますね。
教えることより、教わることのほうが多い。その証拠に、ここ数年の私自身の成長ったら結構目醒しいんじゃないかと思うもの!それもこれも学生たちのお陰です。
話はちょっと変わりますが、この週末はとある講習に参加するので、完全に教わる側、学生になります。こういうのは久しぶりなのでかなり楽しみ!良き師に出会えて、思いっ切り学べたらいいな。
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  by supersy | 2013-05-15 19:20 | Athletic Training | Comments(5)

日本一時帰国中その2。今日帰ります。

●KITTE
東京駅前に一ヶ月前ほどにオープンしたというKITTEに行って来ました。
京料理の菜な(NANA)というお食事処でお昼ごはん。変にデザートもついておらず、
「いろいろなもの、ちょっとずつ」の御膳がとても充実していて美しい!
三十路手前の私には嬉しい造りです。
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…で、その後は同建物内にあるという、「インターメディアテク 東京大学コレクション」というレトロモダンな展示へ行って参りました。これ、かなり立派で展示と言うよりは博物館レベル。実際に東京大学が所有している理学系の、例えば動物の剥製とか骨格とかそういった学術標本コレクションが惜しげも無く並んでいます。数式をビジュアル化した模型も素晴らしかった。東大もマニアの集まりなのね、というのが垣間見られる楽しさが。しかも、入館料は無料!
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●うににお呼ばれ
帰る前にはどうしても行っておきたい!ということで、築地です。
うに丼が食べたかったので、既に行列ができていた仲家さんへ。
天気はあいにくの雨でしたが、友人たちとわいわいお喋りしながら待っていたらあっという間に店の中。ボリューム満点のうにまぐろサーモン丼を食べて、幸せ幸せ!しかし、待ち時間も店内の狭さも正直それほど気にならないけど、店員さんの接客がちょっと、いや、かなり残念な感じ…。向こうもニンゲンなのはわかるけれど、一人の人に食事と、食事する時間・空間を提供するってどういうことか考えているプロなのだろうかとちょっと疑問。食事って味ももちろんだけれど、雰囲気や気持ちも美味しさに作用してくるじゃない?
次に築地に来るなら、別のところに行こうかな。
(あっ、味は美味しかったですよ。早いし)
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●藤子・F・不二雄ミュージアム
それから、友人の希望で藤子・F・不二雄ミュージアムにも足を伸ばして来ました。
ここは、ジブリ美術館と同様、日時指定の完全予約制。
ローソンで事前チケット購入でのみ入館できるミュージアム。
交通アクセスは、登戸駅からのミュージアムバスが便利です。時間帯にもよりますが、10分間隔くらいで運転されているよう。私達が乗ったのは「ドラえもん号」(↓)。中の造りまで細やかなのが、嬉しいですね!途中、「パーマン号」や「オバQ号」にもスレ違いました。色々タイプがあるみたい。
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入館前に受け取るパンフレットには、「ネズミの入館はご遠慮いただいています」なんて表記されてる遊び心も。むむっ、ってことは世界一人気者の某ネズミは入館お断りなのね、こんなところにまで派閥争いが…!といらぬ詮索をしてみたり。

中に入ると、「おはなしデンワ」という音声ガイドを受け取り、展示室を回りながらその解説を聞くことができます。藤子先生の生原稿が見られるのはワクワク!先生の仕事場の復元も素晴らしかった!でも、ドラえもん意外はほとんど知らないワタシ…。

展示を見終えて「はらっぱ」という屋外に出ると、ドラえもんの空き地の土管や、どこでもドア、それからもしもボックス等が展示されており、自由に触ったり写真を取ったりできるようになっています。テンション上がっちゃいますね。
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ワタシらが大受けしてしまったのが、
知る人ぞ知る「きこりの泉」のエピソードのきれいなジャイアンの展示。
正直に泉の女神の質問に答えると、きれいなものがもらえる…というアレで、
ジャイアンがついつい欲張って泉の中に落ちてしまい、「きれいなジャイアン」になって出てくる、という話のオチが見事に再現されています。
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泉についているレバーを上下に動かすと、徐々に「きれいなジャイアン」が出てきて…。
ずーん!10秒ほど停止した後、また泉の中に戻っていきます。すごい存在感です。

…で、せっかくだからミュージアムカフェでお茶でもしたいね、なんてふらふら行ったら甘かった!待つ覚悟はあったのですが、完全整理番号制で、私達が行ったときは「100番待ち、待ち時間は約150分」という表示でした。ひょぇー。それでも、キャンセルする人も多そうだし、はらっぱやきこりの泉、Fシアターなどがまだだったので、何とかなるかな?と整理券を受け取り。そのあとあちこち回って、結局一時間半ほどで入れたかな?
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メニューも豊富で、せっかく待ったし…お腹も減ったし…とあれこれ迷って、がっつり早めの夕御飯もここで頂いちゃうことに。私が頼んだのは、これー(↓)!「ジャイアンとカツ丼」、「どら焼きシフォン」、そして「カフェラテ」(フレンチトーストdeアンキパンも頼みたかった…!)。カフェラテの絵柄は選べないので、どのキャラクターか出てくるまで分からない、とのことでしたが、ラッキーにも私はドラえもん!友人はドラミちゃんでした。
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ちなみに、待ち時間に活躍してくれたのが「まんがコーナー」(↓写真左)。
ドラえもん等の漫画が好きなだけ読める、フリースペース。大人も子供もいっぱいでついつい無言で漫画を読みふけってしまう。。。これがあれば半永久的に時間を潰せます。あと、館内は遊びたっぷりなのですが、例えばこのFシアターのチケット(↓写真中央と右)…チケットを切られた跡が「F」になっています。よくできてるー。
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(実はFシアターだけは、なんというのかな、やっぱり私たちはドラえもんと言えば大山のぶ代さんの世代なので、新しいドラえもん・のび太の声はできれば聞きたくなかったというワガママが…。どうしても理屈では拭えない違和感があるもの)

そんなわけで、思った以上にたっぷり楽しんで帰りました。
滞在時間は四時間ほどだったかも。
ドラえもんのキャラクター達も私たちとの別れを一際惜しんでくれたようでした(笑)。
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さて、今日はこれから家でお昼ごはんを食べたら、成田空港に向かいます。
12時間ほどのフライトをまたこなして、アメリカです。
仕事が涙がでるほど溜まってる…体調を落としている暇はありません。がんばりやすぜい。
日本で遊んだり構ってくれた皆さん、本当にありがとう!また来年。
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  by supersy | 2013-05-12 11:00 | Comments(0)

日本一時帰国中です。

ご存じの方も多いかと思いますが、
祖母が他界しまして、お通夜と告別式に出席するため日本に急遽帰って来ました。
こうでもないとこの夏は帰国できなかったと思うので、優しかったお祖母ちゃんの最後のプレゼントと思って期末試験の時期にも関わらず思い切って9日程帰ってくることに。

帰国してそのままお通夜に直行(便が遅れてしまい、ちょっと遅刻)。
告別式にも間に合って本当に奇跡でした。
身内の葬儀は初めてで、火葬場に行くのも、収骨式も初体験。
変な言い方ですが色々と勉強になりました。「のど仏」なんて、軟骨が焼いた後残るのだろうか?と疑問でしたが、実は第二頸椎のことを指しているのだと聞いてびっくり&納得。仏様が手をあわせているように見えることからこういう名がついているようです。

さてっ。暗い話をしてもしょうがないので、
せっかくだから帰国してからのActivity Logでも。

●早稲田実業高等・中等学校へ見学に
日本(恐らく)唯一の高学・中学専任アスレティックトレーナー、高橋さんの職場にお邪魔してきました。高橋さんとは初対面だったにも関わらず「見学したい」という申し出を快く受けて下さり、しかも3時間くらいみっちりお喋りに付き合って頂いて、感謝感激。
日本で、高校・中学の現場で働くということの真実を色々聞かせて頂いて、
考えることも多くありました。
高橋さんのようなレベルの方に診てもらえるなんて、ここの生徒は本当に恵まれてるっ!
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●Rolfing初体験
そのあとは、西麻布にある知り合い・森部さんのロルフィング事務所、Kukuna Bodyへ。
ご厚意でお試しロルフィングセッションをやっていただいちゃいました。
ロルフィング自体、実際目にするのは初めて。体験するなんてもちろん初めて。
お邪魔にならないよう、でもあれこれと施術してもらいながら質問しまくってしまいました。
こうして小一時間ほど寝そべって、「自分の身体とがっつり向き合う」なんてことないから
面白かった。身体が今どういう状態にいるか…自分の腕や足、頭を実感したひとときでした。

●サムギョプサル!
そのあとは(ええ、これ全部同じ日です)、森部さんとこれまた初対面の相棒のみかさん、
更に仕事を終えた高橋さんも合流して、4人で麻布十番の「豚とんびょうし」へ。
サムギョプサル食べてみたいです!と言った私のリクエストに森部さんが応えて下さり、
こんな素敵なところでがっつり夕御飯を頂きました。
ここではAT話に花が咲いたのですが、やっぱりしっかりキャリアを積んでらっしゃる先輩方は私の通った道は大概同様に通ってらっしゃるのだなーと。似たような所で躓いたり、そして、同じように歯を食いしばって進んできた過去がある。比べることも失礼な程の大先輩の方々でしたが、それぞれがそれぞれのバトルを戦ってきて、今があるのだというお話を聞けて少しほっとしたのと、まだまだ次へ向かう大志や野望をシェアしていただけて、私もまだまだ頑張らねば!という気持ちになれたのとで、とてもとても貴重なお時間でした。
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●もずくは飛ば…なかった
翌日は、もっちゃん、小平さん、紀平さんと、それからTwitterで知り合ったあいさんとで、
新宿の沖縄料理屋さん・新宿やんばるで呑んだり食べたり。
最近歳を取ってきて味覚が日々変わりつつある私は、紀平さんおすすめのもずく酢に挑戦。
もずく酢、小さい頃は大嫌いだったけれど、ここのは美味しい美味しい!
飛びこそしませんでしたが、苦手克服してぺろりと美味しく頂きました。
皆様仕事上がりに出てきてくださり、いつもより会合自体が短かったからか
私達にしては珍しく、比較的普通な会話で終わったので自分たちでびっくり(笑)。
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●根津美術館
母と根津美術館にも行って来ました。
根津美術館は小規模な展示を常に6種類くらいやっていますが、
今の目玉は国宝燕子花図屏風。で、丁度お庭のカキツバタも見頃(↓写真右)!
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実はこの燕子花図屏風はさほど私の好みではなかったのだけれど、
同じ特別展示であった七夕図(↓写真左)と常設・古代中国の青銅器の双羊尊(↓中央)が
素晴らしかった!双羊尊はチケットにもなっているだけあります(↓右)。
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●Yoku Mokuでガレットランチ
お腹が減ったので、美術館から程近い、ヨックモックの経営するレストラン、
ブルーブリックラウンジへ。ここはケーキも美味しいですが、売りはやっぱりガレットです。
私が選んだのはサーモンとジェノバクリームチーズのガレット。美味しいしボリュームも満点。
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●渋谷LOFTのえんぴつちょうこく展
表参道を歩いた後は渋谷に出て、LOFT最上階のギャラリーへ。
ここでは、えんぴつちょうこく展というのをやっていました。これは何かと言うと、
鉛筆の芯の部分を細かく掘り出して、それで文字や形を作っちゃおうという、
お米粒に絵を描くよりも気の遠くなるような作業を経ての美術作品の展示でした。
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作品はものすごい数あるんだけど、ひとつひとつが小さいし場所を取らないので、
展示自体はとてもコンパクト。丁寧に虫眼鏡まで置いてあり、
それを使ってひとつずつをじっくり見ることができます。
えんぴつの芯の細工の細かさももちろんすごいのだけど、
シャーペンの芯を細工してあるのには本当に驚き!えんぴつの細さの比じゃないんですもん。
これは失敗もしただろうなぁ…と思ったら、「がんばったけど折れちゃったボツネタコーナー」
もちゃんと展示してあり、丁寧に作ったけど折れてしまった作品たちも並んでいます。
うーん、こっちまで泣けてくる。

●ご飯が美味しい
とにかく日本はご飯が美味しいですね…。
これだけでも十分日本に帰ってきたい理由になります。
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そんなわけで、短い滞在ですがそれなりに行きたいところに行ったり、
会いたい人に会ったりしています。初対面の方との出会いももう今回既に3回ほどあったし。
残す所あと3日弱。もうちょっとだけ息抜きしてからアメリカへ帰ります。
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  by supersy | 2013-05-09 17:45 | Just Thoughts | Comments(0)

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