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脳震盪診断シリーズ、一区切り。脳震盪で最低限知っておきたいこと。

以前、脳震盪関連で法的ケースを抱えている方から伺ったのですが、
日本では脳震盪の理解がまだまだ乏しく、頭を打ったわけではないから脳震盪ではない、とか、
意識を失わなかったから脳震盪ではない、とか、CTスキャンで異常は確認されなかった、とか、
そういった被告側の主張でケースが思うように進まなかったり、ということがあるようです。

正直これを聞いて私は本当にびっくりして、
「Concussionはそもそもラテン語で"concutere = to shake"という意味です。頭部に直接衝撃がかからなくても、脳を揺らすだけの力がかかればそれで十分脳震盪なのですよ」と言ったら、
向こうが逆に驚かれて、とても助かります、と陳謝され、
更に私がええ、これくらいで!とびっくりした、なんてこともありました。
日本は脳震盪に関してかなり遅れていると聞いてはいたけど、本当に「頭を打った打たない」が日本の裁判で実際に焦点になっているのだとしたら、これではアメリカの学生レベル以下の知識です。今回の内容は本当に、少なくとも日本の医療従事者の間では「アタリマエ」であって欲しいことですが、一応、明記しておきます。
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今回はSCAT3の基になったThe new Zurich paperを引用しながら書いていきたいと思います。
ちなみにこれも今月発表されたばかりで、脳震盪の文献としては最新・最大の規模のもの。
去年の11月に行われた第四回スポーツにおける脳震盪国際学会(the 4th International Conference on Concussion in Sport)で話し合われ、決められたことを合意声明として発表したもので、書いているのは様々な国の脳震盪の権威。錚々たるメンバーです。Primary authorは例の「SISは本当に存在するのだろうか?」というものすごい切り口の疑問を過去に投げかけた、Dr. Paul McCrory氏で、他のco-author達も文献で見た名前ばかり。Cantu Grading SystemのRobert Cantu氏や、Maddocks ScoreのMaddocks氏もいますね。


1. "Concussion may be caused either by a direct blow to the head, face, neck or elsewhere on the body with an “impulsive” force transmitted to the head. (p.90)"
脳震盪は頭に直接がつーんと物がぶつかったりして、衝撃が加わって起こるものだ、と考えている一般の方は少なくありません。もちろんこれは間違いではないですが、実はそれほど限定的でもないのです。頬骨や顎、首、胸部や背中に衝撃が加わったり、引いては直接どこかを何かにぶつけなくても、交通事故などで起こる急激な原則が原因でムチウチになるように首が大きく振られ、脳が頭蓋骨内で滑り、頭蓋骨内部にぶつかること(sudden movement of the brain)で起こります。これは、前後の揺れだけではなく、横の揺れ、回転的運動でも起こりえます。以前にも紹介しましたね(この記事の前半部分をご覧下さい)。
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2. "[Concussion] may or may not involve loss of consciousness (p.90)."
脳震盪=意識を失うもの、という認識は正しいものではありません。統計的に、90%以上の脳震盪はLOCを伴わないということが確認されています。

3. "[Concussion] is defined as a complex pathophysiological process affecting the brain, induced by biomechanical forces (p.89)" and "the acute clinical symptoms largely reflect a functional disturbance rather than a structural injury (p.90)."
脳震盪というのは、脳の一部から出血が起きたり、脳細胞が死亡したりという状態ではありません。構造的な怪我ではなく、機能的な障害をもたらす怪我なのです。脳内のコミュニケーションの役割を果たす神経細胞・axon(軸索)の一部が引っ張られたりして損傷を起こし、様々な化学物質がそこからリリースされることで、脳内の代謝のバランスが崩れ、脳内の血流が悪くなったりコミュニケーションが円滑に行われなくなったりすることが確認されています。

4. "Brain CT (or MR brain scan) contributes little to concussion evaluation (p.91)."
前述したように、構造上の損傷は伴わないのが脳震盪ですので、脳のCT scanやMR scanでは異常は認められないのが普通です。頭蓋骨の骨折やその他脳そのものの損傷をrule outする目的でこれらの診断画像を取ることは場合によっては必要ですが、これが陰性だからと言って脳震盪はない、とは結論付けられません。見えなくてアタリマエです。診断画像という意味では、今のところfMRI (functional MRI)が有効とされています。これは、患者に数学の問題を解かせたり、特定の動画を見せたりしながら、その間に脳がどういった活動を行っているかを目に見えるよう具現化したものです(↓)。
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5. "No return to play on the day of concussive injury should occur (p.92)."
「脳震盪を起こしても、その症状が5-15分以内で無くなればその場で競技復帰を許して良い」なんて言われていた時代もありましたが、それももはや過去のこと。脳震盪の深刻な影響(特に長期的なもの)が次々と明らかになる中、「一度脳震盪と診断された患者はその日のうちには競技復帰をするべきではない」というのが現在の専門家の一般的な見解です。症状が本当に無いのかどうか確認するのは難しいこともありますし(選手が試合に戻りたい一心で嘘をつくこともあります)、仮に一時的に症状が無くなったとしてもまだ症状が戻ってきたり、脳震盪受傷後すぐは脳が一時的に脆くなっており、次の衝撃がかかるとより深刻な脳震盪を起こし易いことが分かってきているからです。少なくともその日は休み、プロによる診断を仰ぐ、というのが最も適切です。

ここらへんは、医療従事者はもちろん、
ハイリスクスポーツに関わる選手・指導者・親御さんなんかも、是非知っておいてもらいたいなぁ、
と私が個人的に思う脳震盪101です。
日本で脳震盪関連のワークショップやセミナーの開催も増えていると聞きます。
医療従事者の知識の底上げももちろんですが、指導者や保護者、選手自身を対象にした教育の場も、これからどんどん全国的に、学生、アマチュア、プロの満遍無い競技レベルで設けられていけばいいなぁと思います。もし私が次に日本に帰国して(いつになるか分かりませんが)、そういう機会に是非お手伝いできたらとも個人的に感じています。脳震盪の専門家ではないですが、是非こんな私も使ってやってください。
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  by supersy | 2013-03-20 13:00 | Athletic Training | Comments(2)

脳震盪の診断:AANの最新"Evidence-Based" Guidelineを考察する。

SCAT3の話を書いたまさに昨日、
The American Academy of Neurology (AAN)がエビデンスに基づいた
最新のConcussion Evaluation & Management Guidelineを発表しましたね!
SCAT3が出てあまりに日が浅いので、もしかして脳震盪診断推進月間にでもなっているのかしらん?とニュースを見てびっくりしてしまいました。
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AANと言えば1997年に打ち出したガイドライン(↑)が最後になっていて、
授業で習ったときも「これらは総じてoutdatedだなぁ」という印象を受けていました。
しかし、今回AANが過去57年のエビデンスを総結集して再編した新たなガイドラインがこちら

気がついた点をピックアップしてなるべくさらりとまとめたいと思います。
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●ハイリスクスポーツ(→)
男:フットボール、ラグビー、アイスホッケー
  (アメフトはポジションで言うと
  特にOL, LB, DB)
女:サッカー、バスケットボール

●防具の効果性
ラグビーのヘッドギアは脳震盪予防効果あり。
一方でマウスピースの予防効果は確認されず。
フットボールヘルメットが、どのメーカー・タイプのものが特別良いと結論付けるのに十分はエビデンスは今のところ存在しない。

●選手自身の要素
BMIが27kg/m²以上、もしくは練習・トレーニングが週に3時間に満たない選手は脳震盪のリスクが増える。

●脳震盪の疑いがある患者の有効診断法
Post-Concussion Symptom Scale (PCSS)とGraded Symptom Checklist (GSC)は脳震盪の診断に有効(sensitivity 64-89%, specificity 91-100%)
Standardized Assessment of Concussion (SAC)も有効(sensitivity 80-94%, specificity 76-91%)
Neuropsychological testingは筆記もコンピュータータイプも両方効果的(sensitivity 71-88%)。ここは、特記されていないけれどImPACT Test系のものたちのことなのかな?思春期前の若い患者に対しての使用はまだverifyされていない。
BESSはイマイチと言ったところ。low-to-moderate accuracy(sensitivity 34-64%, specificity 91%)
Sensory Organization Test (SOT)もイマイチ。low-to-moderate accuracy(sensitivity 48-61%, specificity 85-90%)
テストは、単独よりも複数を組み合わせたほうがより効果的である。しかし、どの組み合わせがベストなのかを結論付けるデータは不十分。

●選手が脳震盪の疑いがある場合、どうやってより深刻な患者を見極めることができるか
PCSSとGSCのスコアが高い、SAC、Neuropsychological test、SOTのスコアが低い、BESSでエラーが多い場合はより深刻な脳震盪であると言える。

●選手が脳震盪を受傷した場合、どういった要素があるとよりこの脳震盪が深刻である、症状が長く続くかもしれない、と予測できるか
以前に受傷した脳震盪の症状が今も続いている状態である、過去に脳震盪をsustainしたHistoryがある、などと言う場合が当てはまれば、新たな脳震盪を受傷したときにそれがより深刻になりやすい。
患者が若ければ若いほど、脳震盪からの回復にも時間がかかる傾向がある。
また、アメフトにおいて人工芝でプレーにしていた最中に受けた脳震盪は天然芝よりもより深刻な脳震盪につながり易い、という結果も。
脳震盪を過去に受けたことのある患者は、二度三度と受傷しやすい。特に一度目の脳震盪を受傷してから10日間以内は次の脳震盪を受傷しやすい状態にある。更に、過去に何度も脳震盪を経験したことのある患者は、慢性的なneurobehavioral impairmentを起こし易い。

●効果的な治療
今のところ、脳震盪受傷後に回復を早めるのに効果的な治療、慢性的な症状を予防する方法などは見つかっていない。


これらを踏まえた上で、AANが今回推奨している「すべきことたち」は:
● Pre-Participation Counseling
経験のあるLicensed Health Care Provider(LHCP)が選手とその周りの大人たちを教育すべき。

●脳震盪の診断、管理
選手が脳震盪を受傷した疑いがある場合、すぐに競技を中止させ、experienced LHCPが診断をするまで復帰させないこと。この際、LHCPはbaseline scoreと複数のテストを使用し、総合的に脳震盪の診断を行うこと。

●脳震盪後の競技復帰
LHCPによる診断で、(頭痛止めなどの)薬を飲んでいない状態で症状が完全に無くなってから復帰を試みること。患者が高校生かそれよりも若い場合、よりconservativeになること

●複数の脳震盪受傷による、競技続行の中止
プロの選手が複数の脳震盪受傷経験があり、長期のNeurobehavioral impairmentに悩まされている場合は長期的な脳に起こる致命的な変化についてLHCPが患者を教育した上で、脳神経医などの専門家に委託すること。

…こんな感じでしょうか。やっぱりな、と思うものがほとんどですが、
個人的に、あまり知識が無かった、面白い!と感じた部分に赤で色をつけてみました。
最近の法律の変化にも通じるところがありますが、やはりAANの新しいガイドラインでも、
「選手・患者の身近に精通した医療従事者がいること」と最重要視しているのが明らかです。このAANのガイドラインに関して、NATAの現プレジデントであるJim Thornton氏も賛同を示しています。
…これが発表されたってことは、以前のトレンドであった「脳震盪の深刻度をGrade付けする」という動きはなくなった、と見ていいのでしょうか?実は私は個人的にアレは無意味だと思っていたもんで…。脳震盪がいかに深刻だったか、なんて症状が完全に治ってからじゃないと言えないじゃないですか。脳震盪自体はたいしたこと無くて、患者はLOCが全く無い、記憶障害もない…けど、頭痛がもう2ヶ月も続いている、というケースより、患者が受傷時に意識を5分ばかり失ったけど、1週間で全ての症状が消えた、というケースのほうが、格段にGradeが軽いと言えるでしょ?でも、現在のGrading Scaleでいうと、逆になってしまう場合もある。脳震盪が起こったときにこれはGrade 1、3、とか数字を課すことに必死になるよりも、ひとつひとつの脳震盪をケースバイケースでユニークなものとして扱い、多方面から診断して、回復まで慎重に待つ…に勝るものは結局今のところないのかな、と個人的には思います。
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  by supersy | 2013-03-19 09:05 | Athletic Training | Comments(4)

脳震盪の診断:SCAT3を考察する。

さて。今回は簡単に脳震盪の診断について。
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Sport Concussion Assessment Tool(SCAT)の最新版が一週間ほど前にリリースされましたね。
初版が2005年に発表されてからこれが2回目の改定となるので、
今回のが3rd Edition、つまり『SCAT 3』ということになります。

SACもそうなんですが、こういったテストの良い所は、
医療従事者だけでなく、一般の人も簡単にテストの実施ができるよう、患者に与える指示などが全て記載されていて、文字通りそっくりそのまま「読むだけ」で良い、という点です。さらに、全員が同じ指示文を読むことで、不十分な指示による被験者の混乱や得点への影響は減り、よりstandardizedされたものが提供できるようになります。同じ質を毎回保つことって大切ですからね。
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アメリカでは脳震盪への関心がここ2~3年ほど非常に高まっていて、いわゆるNFLのスター選手なんかの脳震盪被害の実態がどんどん暴かれる中、中高生の若い選手への影響も心配されています。最近では「うちの子にはフットボールなんてさせられないわ、危なすぎる!」みたいな若い親御さんも増えてきているように感じますね。

そんな懸念が法律改正を呼び、私が住んでいるテキサス州でも2011年にNatasha's Law(ナターシャ法)という新たな法が制定されました。これは、かいつまんで言うと、公立高校に於いて、
 - 各学校で必ず一人はPhysician(医師)を含む、「Concussion Oversight Team」という
  医療チームを結成しなければいけない(その他の構成員はアスレティックトレーナー
  (ATC/LAT)や看護婦、神経心理学者やPAなど、特に決まりは無いが、
  『(学校に)ATC/LATがいる場合は必ず彼らは構成員になること』とは記載されている)
 - Concussion Oversight Teamはエビデンスに基づきRTP Protocolを製作しなければいけない。
 - 選手が脳震盪を受傷した可能性を、1) 医師、2) その他医療従事者、3) コーチ、
  4) 選手の保護者 のいすれかが疑った場合、その選手は練習・試合に復帰する前に必ず
  医師によるMedical clearanceを得なければならない。
 - Oversight Teamの構成員、そして全スポーツのコーチは最低2時間脳震盪に関する教育を
  受けなければならない。(ワークショップやセミナーに参加してなど、具体的には自由)

という感じです。似たような法律はつい最近オハイオ州でも制定され、
こちらはコーチだけでなく試合のオフィシャルや審判もトレーニングを受けなければいけないという
より幅広いものになっています。

*予断ですが、「医師によるMedical clearance」を得るのは貧困層では非常に厳しく、
 脳震盪の「疑い」がある子供をどうしても医者に連れて行かない親御さんなんかがいると、
 その子は法律上復帰が不可能なので、次の年のPPEを終えるまで復帰できず=事実上
 season ending injuryになってしまう、というケースは本当にあります。
 こういった法律の、避けられない落とし穴です。

もっとProtectiveになろう、疑わしきはKeep outしよう、
という流れは一部の指導者・選手から批難が出そうですが、
もっと脳震盪について知識を持とう、という意識は純粋に素晴らしいものだと思います。
でも、アメリカの高校の半数以下はAthletic Trainerがいない、というのが現実です。
(参考記事:"Athletic Trainers: Every High School Should Have One")
Athletic Trainerがいない学校でこういった脳震盪に関する厳しい法律を掲げてしまうと、
コーチやましてや審判への「怪我のrecognition」という責任と負担がかかって、
離職につながりかねないのでは、と少し心配には思いますね。

脳震盪の診断ツールが一般の人を含めた人々に幅広く知られるようになる・使われるようになるのは大賛成ですが、やはり診断そのものには医療界のスポーツ最前線に位置する私たちATCが
主に関わっていくべきだと思うし、責任を取るのも私たちプロであるべきだと思う。
医療判断の(たとえ一部でも)重圧を他の人に押し付けるなんておかしいっすよ。
コーチや審判には試合中、すべき仕事が他にあるわけですし、プレーしている選手たちもそう。
そんな彼らが怪我に関して気を揉むことなく、彼らの仕事に集中できる環境を作るのも私たちATCの仕事だと自負しております。そんなわけで、結論は「より多くの現場にATCを!」といういつものやつになってしまうのですが、これ以上の解決法は無いんですよね。「どうして皆ヘルメットを買うお金がなければフットボールはできない、ということが分かっていながらATC無しにスポーツをやるのか」なんてstatementをどこかで最近目にしましたが、本当にそう思います。お金がない、はもはや理由にはならない。スポーツセーフティーをensureする努力を怠っておきながら、運動で健康になりましょうなんて謳う学校は怠慢です。

は、話が逸れた。
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SCAT 3に戻ります。

まずは、皆さんがSCAT 2をご存知だという設定で、
どういった部分が新しいのかを考察していきたいと思います。
SCAT 3は、2と同じ4ページ構成。まずは、全体図を見てみましょう。
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こういう順で並べてみます。
まずは、古いほうのSCAT 2(↓)から。
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で、こちらがSCAT 3(↓)。
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まず気づくのは、内容はほとんど同じなんですが、
加えられたもの
 - 序盤に「こういった症状が見られたら(脳震盪以上の深刻な怪我の可能性が高いので)
  EAPをactivateしてERに行きましょう」という注意書きが加わった。目の前の怪我が
  mTBIなのかserious TBI/Spinal cord injuryなのか見極めるのは非常に重要です。
 - バランスのテストの中に、「BESSとTandem Gaitの両方かもしくはどちらか片方」という
  選択肢が加わった。このTandem gait testというのは、1.5 inch幅のテープを3m分床に
  直線で張り、つま先とかかとをくっつけるように一直線でその上を歩いて行って帰ってくる、
  というもの。4回挑戦させ、ベストのタイムを記録します。線からはみ出たり、
  つま先とかかとが離れたり、何かにつかまってしまったらノーカウント。
  (個人的には3mを測るのが面倒臭くないかなーなんて)
 - Neck Examinationのセクションが加わった。
  首の可動域、圧通、四肢への痺れや麻痺がないか、という非常にシンプルな項目。
  これは、脳震盪の診断というよりはその他の首への怪我(頚椎損傷等)、
  MOIによる首筋肉のSpasmなどの有無を調べる、という感じに近いかなと。

除外されたもの
 - SCAT 2では一番目の項目であったSymptom scoreが無くなった。
 - 同じく二番目の項目であったPhysical signs scoreが無くなり、少し変形して
  Potential signs of concussion?という形でイントロの一部に加えられた。
  (個人的にこの部分はどう診断に活用すべきなのか曖昧で分かりづらい)

順番の変更
 - Glasgow Coma Scaleが最初に持ってこられた。
  意外にも前バージョンでは3項目目に位置されていたGlasgow。今回は一番最初に。
  最も最初にすべきはdetermining LOCですから、これは理に適っています。
 - 全体的にテストの名前と得点表記だけが1-2ページに残り、それぞれの細かいinstructionは
  3-4ページにまとめて整理された。これで、選手のフォルダーに記録として残しておくのは
  1-2ページのみで良いし、その気になれば3-4ページはLaminated copyでも作って、
  1-2ページだけ紙に印刷して…なんてことをすれば、地球にも優しい。

そんなわけで、特に大きい変化というとNeckとTandem Gaitの追加というところでしょうか。
それにしてもよくできていますね。文字はやっぱり多く、初見では抵抗がある人も多いかも知れませんが、よくよく見ると「こんな狭いスペースに上手いことまとめたもんだなぁ」と毎回関心してしまいます。色も効果的に使われている印象。
うちにはImPACTがあるのでこれだけ長いSCAT 3を実際に使うことはありませんが、
高校で働くATCたちには非常にusefulな道具ですし、チームの規模によってはImPACTやK-D testと併せてより多方面から脳震盪を診断する、ということは可能かもしれません。
とにもかくにも、ATCとして(もちろんATSの皆さんも)SCATは最低限の知識!
まだの方はこれを機会に是非reviewしてみてくださいね!

一応、蛇足かもしれませんが、
SCATはSACやImPACT同様、単独で診断目的で使われるために作られたのではなく、
他の診断方法(単純なHistory takingやCranial nerve testingなど)も含めて、
総合的に診断されるものだ、ということは是非ご理解下さい。

追記:リンクです。
SCAT 3™
Child SCAT 3™ (5~12歳の子供用)
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  by supersy | 2013-03-18 13:30 | Athletic Training | Comments(4)

Valgus Stress Testの適切な角度。

さて。長かったシーズンがようやく終わり、
今週はSpring Break(春休み)ということもあって、出勤時間を短めにして一息ついています。
(つーか本当は出勤義務はないのだけど…ついつい行かなきゃいけない気がして行ってしまう)
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そんなわけで、今週は「教育者」として授業の準備・採点をしたり、
「Clinical Education Coordinator」として色々とプログラムの細かい修正・フォローをしたりと、
わりかしのんびり過ごしています。せっかくなので気になっていた文献も読み進め、
まとめたいことができたのでブログも更新です。
今日のテーマはスペシャルテストのOriginal Description vs Now、
特に膝について手短にまとめたいと思います。

授業準備のために色々調べていて、「あれ、このスペシャルテスト、私が学生の頃に習ったのと手の置き方・関節の角度が少し違う」、「どっちが正しいんだ?」となることが結構あります。
例えば、最近気がついたものだとPatellar Apprehension Test
私が習ったのは「Apply lateral force to the patella while the knee is fully extended(↓写真左)」なのですが(そして、これは屈曲させるとPatellaがTrochlear Grooveに深く座ってしまい、安定性が出てしまうからイカンと説明された)、このテストを最初に提唱したFairbank氏1は実は膝の角度は指定していないんです。彼が言ったのって言葉にすると、「何か膝蓋骨を外に押したら患者嫌がること多くね?」くらいのもんで、単純に傾向を客観的に述べただけなんですね。それをテストとして確立させたのはかの有名なHughston氏。2 彼が正式に発表したテストのやり方は「試験者の太ももを患者の足の下に置き、膝を30°屈曲させた状態で、親指を使って膝蓋骨をlateralに押す(↓写真右)」と、「患者は不安を覚え、大腿四等筋を緊張させ膝を伸展することで膝蓋骨を戻そうとする」のが陽性のサインであるということ。えーー、膝曲げちゃうの?腿の上に置いて、という指定があるということは、テーブルの角を使った30°では股関節の角度が異なるからダメなんだろうか(↓写真中央)?はてはて。
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ここから派生して、「30°で始めて、lateral forceをかけながら伸展に持っていく」や、「いやいや、さらに屈曲させ70-80°に持っていく」などと、調べてくうちに様々な『やりながら動かす』バージョンも出てきてもう何がなんだか。内視鏡による実験では、70-80°の屈曲におけるgross lateral laxityが最も顕著だった3というから、実はこっちのほうが信憑性があるのか…。にゃむにゃむ。あまり角度別の実験もしっかり行われていないようなので、学生たちには申し訳ないけど「スタンダード」と、「派生系」をまとめて教えないとダメかな。様々なバージョンがある、というのは知っておいて損はないから。

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…で、本題です。
今回のメイントピックは実は膝のValgus/Varus Stress Testなのです。
え、これは違うtissueを試すのに、30°でやるんじゃないの?アタリマエじゃん!
…と思う方も多いかも知れません。ええ、そうです、非常に単純なテストです。
違う角度で二回繰り返すんです。そのとき、痛みの出方と関節がどれだけ開くかによって
(そしてend-feelの種類によって)、どの組織が関わっているのか、
そして、Grade 1~3に靱帯の損傷が分類できるんですよね。
そうですそうです。

しかし、ここで恥を承知でひとつ大きな指摘をさせていただきたいっ!
30°の屈曲を保ちながら、Valgus forceをかけるのって、難しくないですか?
Hipがどうしても一緒にrotateしちゃうんだ、なんてことありません?
純粋なValgus forceになってない気がするんですよねっ!

実はこのことは文献でも指摘されていて、
屈曲の角度は少なければ少ないほど、チカラを正しくかける、という概念からは好ましい
=角度が増えれば増えるほど難しくなる
というのが研究者・クリニシャン共通の意見になっています。

ここで改めて尋ねたいのが、MCLをisolateするために、本当に30°の屈曲をしなければいけないのか?という点です。もしもっと少ない角度でもMCLのみをstressできているんだとしたら、上の共通概念からすれば、less is better。より少ない角度でテストを行ったほうが、やりやすいしお得!ということになりますよね。
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これを実際に実験で試したのが上の文献。4
簡単にまとめると:
●屈曲の角度が増えると、Posterior joint structures, medial joint structuresも次々とslackになり、除外されてゆく。
●最終的に、MCLのなかでもSuperficialなAnterior portionが残る(こいつは唯一taut throughout ROM)。

この前提を踏まえて:
Full extension、5°、10°の屈曲においてstressされる組織に大差はない。→Posterior & Medial Joint Structures (including deep posterior MCL)
15°と20°の屈曲時にstressされる組織に大差はない。→Superficial anterior MCLに力が集中
●つまり、Valgus Testは、30°でやるのではなく、15°でやっても同様に効果的、ということになる。

そんなわけで、どうやら境目は10°と15°の間にあるらしい!
これがどうしてそんなに素晴らしいのかって?
●前述したように、30°の屈曲と15°の屈曲でValgus stress testをやるのでは、効果は同じでも難易度が全然違う!15°のほうがよりisolated valgus forceを正しくかけ易い。
●また、逆にでも同様の効果があるのに注目して頂きたい。怪我の直後、患者はよく痛みや腫れで関節の稼動域が制限され、full extensionが欠如していることがよくある。「0°も5°も効果は同じ」という知識があれば、患者がfull extできなくても軽く曲げた状態で実施すれば問題無し。


Valgus testは0°と30°でやるもの、と思っていた皆さん、実は5°と15°でやっても同様の効果があり、しかも、実用的でやり易く、しかも正確だということが分かって頂けましたでしょうか。もちろん0°と30°でやられている方を非難しているわけでもありませんし、それが間違っているわけでもないのですが、現場の人間として、いかにラクして、且つ正確にspecial testを行うかって結構大事なところだと思うんです。これをきっかけに、皆さんの日々のpracticeが少しでも効率の良いものになりますように。

1. Fairback HA. Internal derangement of the knee in children and adolescents. Proc R Soc Med. 1936;30:427-32.
2. Hughston JC. Subluxation of the patella. J Bone Joint Surg Am. 1968;50:1003-26.
3. Sallay PI, Roggi J, Speer KP, et al. Acute dislocation of the patella. A corrective pathoanatomic study. Am J Sports Med. 1996;24:52-60.
4. Aronson PA, Gieck JH, Hertel J, et al. Tibiofemoral joint positioning for the valgus stress test. J Athl Train. 2010;45(4):357-363.

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  by supersy | 2013-03-15 13:00 | Athletic Training | Comments(4)

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