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痛み止め薬の代償。

日本ではこちらほどひどくないと思うのですが
(自分の経験からの独断と偏見によりますが…プロとか大学だとそうでもなかったりして?)、
アメリカでは痛みを訴える選手にATC/医者が痛み止め薬、特に抗炎症剤を与える光景が日常的です。医療従事者が進んで与えずとも、選手が「痛み止めくれ」とやってくることも。
これらの抗炎症剤には薬局で処方箋無しで買えるものが多く、一般的なものだとIbuprofen, Advil, Aleveなどなど。ブランド名に詳しくなかった渡米当初、これらの名称が分からなくて苦労したっけ…。
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以前とあるコーチに(今の職場ではありませぬ)、"痛み・炎症予防の為に全選手に毎日抗炎症剤を飲ませるべきだ”と進言されたこともあり、アメリカの薬依存はなかなかのものだなぁとびっくりしたのを覚えています。

それほど日常茶飯事になってしまっているアメリカの抗炎症剤(Non-Steroidal Anti-inflammatory Drugs = NSAIDs)。いくらOTC(処方箋なしで手に入る)だからと言って、そんなに頻繁に摂取してしまって良いものなのでしょうか?人体に悪影響があったり、副作用等の心配は?
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で、最近目にしたのがこのArticle。オランダの研究者により、Ibuprofen(アメリカで恐らく最もポピュラーなNSAIDs)を運動前に取ることで、消化器官にどのような影響が出るのかを実験した結果がまとめられています。1

このArticleの深い内容に入る前に…。
人間の身体は常に需要に応じ、血流をどこに集中させるかadjustしています。例えば、食後は食べ物の消化を促進するため、胃や腸などの消化器官に、寒い気温の時は深部体温を維持するために末端の手足よりも内蔵・胴体周りに、逆に運動時は手足の筋肉に血液が行くように…と、血管を部分的に収縮・膨張させながら微調整を繰り返しているのです。
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…んで。私は最近まで知らなかったのですが、運動時におけるこの現象には
Exercise-induced Splanchnic Hypoperfusionという名称がついているそう、
 Exercise-induced = 運動に起因する
 Splanchnic = 内蔵の
 Hypoperfusion = 低潅流(血液の循環が少なくなり、滞っている状態)
その名の通り、激しい運動時に末端の筋肉に血液が集中することで、内臓が一時的にischemia(局所的血液不足)に陥り、小腸の浸透圧が一時的に上昇して、酷い場合には細胞の損傷が起こることが明らかになっています。運動の最中や直後に腹痛が起こったりするのも、これが一因と考えられています。2

…で、本題に戻ります。
NSAIDsの一般的によく知られる副作用に、「胃腸に負担がかかり、荒らしやすい」というものがあります。結果、出血(↓写真左)や穿孔、潰瘍が起きたり、横隔膜状の狭窄(↓写真右)が出来たりというケースも報告されており、「運動前にこれらのNSAIDsを摂取した場合、そもそも運動によって起こるsplanchnic hypoperfusionが更に悪化をするのでは?」というのが研究前のvan Wijck氏たちの仮設でした。
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被験者となったのは日頃から運動をしている健康な男性9人。4回に渡ってそれぞれ違う条件で検査を受けました。
1. ibuprofenを2回服用(一回目は検査前夜、二回目は運動の60分前)し、
 一時間の運動をした状態。
2. 何も摂取せずに一時間の運動した状態。
3. ibuprofenを2回服用(同様に、検査前夜と60分前)し、運動をしなかった場合。
4. 何も摂取せず、運動もしなかった場合。
結果、ibuprofenと運動を合わせた場合の小腸への負担は他のどの条件よりも大きく、実際に細胞に損傷が見られたそうです。彼らは、研究の最後に「アスリートによる抗炎症剤の摂取は無害とは言えず、should be discouraged (薦められるべきではない)」と断言しています。
これ、私は個人的に「本当に怪我によるアクティブな炎症が起きていて、それを抑えようという意味ならばともかく、練習中・後のsorenessを『予防』するためとか、毎日取っているから今日も、とか、そういった習慣的な摂取は断じて薦められるべきではない」という風に解釈しています。
この強いStatement、アメリカではそこそこの意味を持つんじゃないかなー。
アメリカ人が耳を貸せば、だけど。
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この他にも、NSAIDsと心臓疾患の繋がりも次々に研究で発表されているし、
やはり薬を飲んだだけではどうやら利益よりも実害の方が多そう。
元々薬嫌いの私としては、ほーらね!という感じ。
今まで何の抵抗もなく、選手に「今日も痛み止め、飲むけ?」と尋ねていた私ですが、
(そういう文化だと思って安易に受け入れすぎていたところがあったかも…反省)
これを読んでからは、選手が「ちょうだい」と口に出さない限り、自分からは聞かないようになりました。ちょっとしたことだけど、選手の抗炎症剤使用率はここ数週間で結構落ちた…かも。まぁ、試合のスケジュールがちょっと楽になったってこともありますが。

シーズン中は「選手にとって一番良い」治療をしてあげられないこともあるし、
選手も痛みを押して試合に出なきゃいけないこともある。
理想と現実のバランスが取れてこその一流のATC…と思うけれど、
大学で働いている以上、引退した後も彼女たちが健康な人生を送れるよう、
選手自身が見えないところまで先を読んで教育するのも私たちの大事な仕事かなと思います。
世のATCの皆様、このArticleは無料で読めますんで、是非目を通して見てくださいな。
リンクはこちら

1. Van Wijck K, et al. Aggravation of exercise-induced intestinal injury by ibuprofen in athletes. Med Sci Sports exerc. 2012;44(12):2257-62.
2. Van Wijck K, et al. Exercise-induced splanchnic hypoperfusion results in gut dysfunction in healthy men. PLoS One. 2011;6(7):e22366.
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  by supersy | 2012-12-19 16:30 | Athletic Training | Comments(0)

しごとのゆめ。

最近、寝ていても仕事の夢ばっかり見てしまいます。

先日、UTとの試合当日は朝早めの出発だったのと、
(朝八時に試合用の格好=スタッフはスーツでホテル出発)
色々心配事もあって何度も朝早くに目が覚めてしまいました。
その時に見たのが、選手をテーピングしている夢。
起きた時に、「あの選手とこの選手はもうテーピングが済んでるから…あ、あれ?済んでない?」とひとりで大混乱してしまいました。またやんなきゃいけないのか、と、なんだか損した気分!
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そしてつい昨日は、何週間か振りに練習のないオフの日で
希望する選手を対象に治療をしていたんのですが、その最中にふと、

私:「あれっ、アレ、夢だったのかな?」
選手・学生:「何が?」
私:「Microcurrentに関するArticleを読んでいたんだけどさ。それがすごく斬新な切り口で面白くて、へぇー、こんな新たな効果があるのが明らかになったのか!と驚いて…。これからもっとMicrocurrentを使わなきゃ!と思ったのよ。でも、よく考えたら、あれはもしや、夢!?」
学生:「Syって…夢でまでArticle読んでるの?HAVE A LIFE(もっと人生楽しみなよ)!!!」
私:「う…いやそれが変なのは認めるけど、本気であのArticleが夢だったことがショック…。ものすごい画期的な発見で、これからの私の治療プランのアプローチが本当に変わるかと思ったのよ…」
学生:「Syって…ヘン」
選手:「(一部始終を聞いて大爆笑)」

…という感じで、なんだかもう、
仕事の夢を見すぎて現実と夢の違いが分からなくなってきていて。。。
夢のなかでも働いている感覚なので起きても疲れているし、なんだかなぁ(苦笑)。
シーズン中のバスケットボールチームで働くATCの皆さんも、きっと皆こんな感じなのでしょう。
休むときはしっかり休んで、また次の試合に向けて頑張りましょうね!
おー。うがー。
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  by supersy | 2012-12-02 18:30 | Athletic Training | Comments(0)

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