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NATA Convention in St. Louis その4と、おまけ。

最終日である6月29日。ゆっくりめに起き出して行動開始。
Trade showを最後にもう一回回りつつ、
友人のDaisuke氏のプレゼン『A Comparison of Scapular Muscle Strength and Activation in
Patients With and Without Glenohumeral Joint Pathology and Scapular Dyskinesis』を聞いてから、(これは実はすごく面白かった!もちろん大規模なお金をかけたstudy designではないんだけど、Scapular dyskinesisがある人程Serratus anteriorやLower trapが強いという、今までの見解を覆す結果に!その後に興味があります)
1:15pmからの『Train the Chain – Methods of Addressing Kinetic Chain Bio-Mischanics』というラボに参加してきました。このレクチャーはびっくりするくらい初歩的なところから始まって(Lower cross syndromeにはhip flexorをリリースします。Hip flexorはこういう筋肉で…とか言い出されたときは正直帰ろうかと思った)、徐々に実用的なテクニックへ。個人的にはT-spineのリリースやmobilityを重視した小技は大いに応用力があり、これから使わせてもらおうかしらん、と思わされたものが多々ありました。このうちの幾つかはもう早速使ってます。選手の反応も良し(↓)。
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…で、後はExhibit Hallで気になったものを挙げると…。
●Shuttle 2000-1 & Shuttle Balance by Shuttle System
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Shuttle 2000-1(↑)はShuttle Wobble Boardがkickplate部分にくっついていて、
バランスやProprioception trainingも同時にできるというもの。これは取り外しが聞くので、
必要の無い場合には外して使用することも可能です。いやまー、くっつけただけっちゃだけなんですけどね。ちょっと考えたことがなかったので、面白いなと。
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通常のShuttle MVPのkickplate部分にこういった(↑)色と数字をつけ、Proprioceptive trainingを行うというデモンストレーションもやっていました。これはテープでも出来そうだし、安上がりでcreativeで良いかも。
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…で、これがShuttle Balance(↑)。本当は遊んで試してみたかったんだけど、スーツだったのでできず。クリニシャンの意思で自由に『動かせる』unstable surfaceって実はなかなか作りづらいので、これは重宝しそう。Pertubation等に応用できるなぁ、あんなのもこんなのも?と想像力が刺激されました。私はLEやUEのCKCだけ考えていたんだけど、こんな面白いテクニックの動画も見つけました。これはstroke患者向きのリハビリの例なのでATとしては用途はないかも知れないけど、勉強になる!


●Cold Chamber & Cold Air treatment by US Cryotherapy
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Full body chamber(↑写真左)については前に聞いたことがあったのですが(要はものすごく冷たい部屋に入り、身体全体を冷やす治療法。凍傷を防ぐために末端の部分はマスク、手袋、靴下・靴をしっかりと履きます)、"Localized" cold air treatment(↑写真右)というのは初めて目にしました。この治療の売りは、何と言ってもその治療時間の短さ。通常のice bagであれば、20-30分くらい患部に当てておくのが普通ですが、このLocalized cold air treatmentはその10分の1の2-3分でいいのだそう。それでいて、(自社統計ですが)pain blockの効果は2倍なんだそう。具体的な研究見てみたいなー。Unpublishedであろう、会社がやった(っぽい)研究がいくつかwebsiteに載っていたので、ちょっと読んでみることにします。

…そんなわけで、今年のNATAコンベンションも無事に終了。
一日だけ余分にstayして、Soulard Farmers Market(↓)をぶらぶらしてきたりしました。
色とりどりの野菜や果物がキレイ!そして安い!!家の近くにあったら、毎週通ってるかも!
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とにかく暑さにやられた今回のSt Louis滞在でしたが、沢山学び、沢山遊ばせて頂きました。
しかし、これからのNATA Conventionは、来年はLas Vegas、再来年はIndianapolis、
そして3年後はまたSt Louisなんだそうで。何でこういう順番になっちゃうんだろ?
Indianapolis(2014)とSt Louis(2015)はもう行ったことあるし…参加しないかも知れません。
代わりに他のセミナーにでも行こうかな。行きたいのはいっぱいあるのよねー。
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  by supersy | 2012-06-30 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

NATA Convention in St. Louis その3。

日付と内容に一日ズレが生じてますね。
6月28日の内容です。その3。

この日の午前中はめぼしい講義がなかったので、新吾&サトシ氏とゆっくりまったりブランチを食べた後、「時間があるねぇ…どこか行こうか」ということで、勢いでSt. Louis名物のArchを見に行くことに。この頃二日酔いから復活しつつあった慶太郎もここで合流。
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ちなみにこの日のブランチはホテル&コンベンション近くの日本食レストラン・Mizuで食べてたのですが、このレストランは私達のお気に入りになり、結局5日の滞在で4回もお邪魔してしまいました(苦笑)。チラシ寿司美味しかったなぁ~。

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さて。ここ数日のSt. Louisはまぁ~暑いのなんのって。気温も連日105°Fまで上がり(摂氏だと40℃越え)、この日も例外ではありませんでした。いや、107°Fくらい出てたかな、この日は。コンベンションセンターからArchまでは歩いて10~15分ほどの距離なのですが、暑さにやられ(しかも私はスーツを着ていた)、途中Hyattのホテルのロビーで涼んで休憩をいれつつ向かいました。
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…で、4年ぶりにやってきました、The Gateway Arch!
St. Louisのシンボルと言っても良い、ザ・観光名所。今回のNATAのSt. Louisのロゴ(↓)にもばっちり描かれていますし、どんな観光案内にも一番に載っているほど広く知られており、年間の観光客動員数はなんと400万人にも登るのだとか。
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場所はThe Jefferson National Expansion Memorial公園内で、ミシシッピ川のほとりにあります。外から眺めていても十分迫力がありますが、内部に入ることも可能です。Archの根本にあるゆるい坂を下って行くとそこには大きな地下空間が広がっており、空港さながらのSecurity check を通過すると、ミュージアムやシアターも兼ねたVisitor Centerがあります(↓写真上段)。
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今回は、このArchを登っちゃおう!ということで、Journey to the Top(費用は$10、かかる時間は30-40分くらい?)というミニツアーに参加することに。Gateway ArchはSt. Louisで最も高い建造物で、高さは630 feet (= 約192m)あります。階段ではとても無理、ということで上に登るのに使うのは観覧車のゴンドラのような小さなトラム(↑写真下段左)。オトナ4人で乗り込んだらちょうどぴったりでした。し、しかし、上に向かう最中ガタガタ揺れるし軋む音も不安を煽る…落ちるんじゃないかと皆でびくびくしていました(苦笑)。上りには4分、下りには3分かかるそうです。トラム内には窓がついていて、乗客はArch建造物の内部を見ることができるようになっており、螺旋状や切り返しの非常階段がずーっと続いているのが見えました。
一番てっぺんまで登るとゴンドラを降りることが出来、
狭い窓のある展望台(↑写真下段右)から外の景色を一望できます。
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ここが一番高い、630feet地点。旧裁判所やSt. Louis Cardinalsの野球スタジアムなども見えて景色は素晴らしかったです!ちなみに、ここでは好きなだけ時間を使って景色を見ていていいそうな。
景色に満足したら、下りのトラムに乗り込んで、またカタカタコトコト。
あっという間に地上に帰って参りましたとさ。

そんなわけで思いがけず半日観光に費やしてしまったあとは、
コンベンション・センターに戻って講義を受けてきました。

5. Movement Pattern Progression: Using the Neurodevelopmental Sequence to Address Athletic Injury
Karen Rakowski氏による講義。ベテラン教師って感じでインパクトあったなぁー。最近講義を受けていると、講義の内容だけでなく、その人のTeaching Techniqueのほうにも目が向いてしまうようになってきた…。職業病かな。ついつい目の前を歩いている人を目で追って、Gait analysisしてしまう、という癖だけでも十分annoyingなんだけど(苦笑)。

それはともかくとして、講義内容は近年益々流行ってきているDNSの根本となるセオリー。
私も慶太郎も、一緒に講義に参加した悪友・戦友・親友ケニーも、
「現場で見た経験はあるけど理論をまだ詳しく知らない」か、「理論はかじったけど、現場でのアプリケーションを見たことがない」かのどちらかだったので、その両方を補えたのは良い機会でした。

その大まかな理論は、「人間は、生まれて最初の2年間でmovement patternをdevelopする(=言うなれば、コンピューターのsoftwareを書き上げる)」 で、「2歳を超えてからそのpatternをhardwareを通じて使い始める」 が、しかし、「年齢を重ねるうちに、コンピューターにウィルス(外的・内的要素)が入ってきて、softwareのプログラムを書き換えてしまう(=つまり、動きにcompensationが生まれてくる)」 このcompensationは、言ってしまえばshort-term solution with long-term consequences 。ショートカットをしているようで、長い目で見ると本来の道からどんどん逸れていってしまうような解決策に過ぎない、というわけですね。で、最終的にdysfunctionが生まれたりする、と。

で、Karen氏やその他DNSの提唱者が言っているのは、
software(CNSによるプログラミング)が書き換えられているのが問題なのに、
hardware(カラダ、つまり筋肉とか腱とか骨とか)ばかりに注目してていいんですか?
ということ。つまり、functionalな運動をする前に、赤ちゃんが出来ているような
もっと基本的な動作ができてないとダメなんじゃないの?ということなんです。
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例を挙げると、赤ちゃんが地面に落ちているおもちゃを取るときなどにとる、このポーズ。
丁度スクワットをしたときのような格好です。これ、実は、
 - スタンスは肩幅
 - 膝が丁度つま先の上に来る
 - 首と胴体はまっすぐ
 - お尻は膝よりも下
 - 体重は踵に乗っている
という、完璧なスクワットの条件、全てを満たしているのです。
はて、果たして私達オトナの何割が、この完璧なスクワットを出来るというのでしょう。
私がやったら、すてーんと後ろにひっくり返ること間違い無しです。
このビデオも見てみて下さい。赤ちゃんの移動法、ハイハイ。
あなたはこんなに速く、ハイハイで移動できますか?
できると答えた人、5分ならともかく、一日中、それがもちますか?
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よく考えてみると、肩関節って実は一番最初にweight-bearingになるべき関節なのです。
足よりも先に、です。私たちは生まれてすぐに、バタバタと手足を動かしmobilityを確立させ、
それから徐々に体重を移動していってstabilityを確立しています。
物事には順序があります。私達が徐々にprogressed motor patternを生み出していくのも、たまたまではありません。タイミングに個人差はありますが、ひとりひとりの動きが成長していく順序は全く同じ。誰もが空中でバタバタと手足を動かすところから、徐々に寝返りが打てるようになり、ハイハイを始め、そして直立する、ということを覚えるのです。
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ですから、自由に4肢が動かせなければ(=バタバタと手足を動かす能力がなければ)、寝返りが満足に打てなければ、ハイハイがスムーズにできなければ、それよりも複雑でadvancedな動きにはcompensationがどうしても入ってきてしまうことになります。つまるところ、スポーツのパフォーマンス向上はおろか、美しいフォームで正しく歩く、ということすらできるわけありませんよね。だったら、まずはハイハイができるように、寝返りが打てるように、果ては寝た状態で手足が自由に動かせるように、という、初歩的なところからリハビリをしていくべきなんじゃないですか?というコンセプトです。

これについてはこれからも継続して勉強していこうと思っています…が、
今回は良い機会を頂きました。コンセプト全てが全てに100%納得しているわけじゃないけれど、
これからのリハビリや評価に色々とヒントをもらうことができました。
赤ちゃんの動き…もうちょっと注目して見てみたいな。真っさらなところに毎日どんどんデータが書き込まれているから、ものすごくピュアだけど複雑な動きをする。だって見て下さいこれ(↓)!これなんか、赤ちゃんってば教えられなくても笑顔でFMSのRotaty Stabilityのレベル2を楽々こなしてますもの。
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2歳以下の赤ちゃんが身近にいる皆様!
これからもっともっとよく観察してみて、彼らの動きから学んでみてくださいませ!
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  by supersy | 2012-06-29 05:33 | Athletic Training | Comments(2)

NATA Convention in St. Louis その2。 Diversity and Inclusiveness。

前回の続きです。27日に参加したイベント。

3. Demonstrating the Value of AT Services Regardless of Workplace Setting
これは正直予想外に面白くなかった…。
Billableなサービスは記録していつでもpresentできるよう手元に持っておけ、とか、(君を雇ったことでわが社はどれだけお金をsaveできたのかね、と聞かれたときに、2-3日待って下さいね、すぐやります、と言うのと、このくらいです、とサッと資料を出せるのとでは大違い、という話は納得)
テーピングや怪我の評価はその際に記録に入れるべきではない…が、
referした件数はbillable serviceになる、とか、
(なんかここらへんはよくわからん。それじゃー何でもreferすればいいの?)
しまいには、Physician Extenderみたいなsettingの場合、仕事を振り返って、患者さんの高いsatisfactionを得ることも大事だけど、一番大事なのはお医者さんをsatisfyさせること
…という、医者の犬になれってこと?みたいな講義内容もあり。

正直、これからATという専門職をどう日本で価値を示し、確立させていくかという
ヒントが得られれば、と思って行ったんだけど、学んだことは特にありませんでした。
うーむ。ま、こういうのもある。

4. The Game Changer: The Importance of Diversity in Your Setting
これはNATA Ethnic Diversity Advisory Committee (EDAC)がホストしたプレゼンだったのですが、今までこんなに聴衆が明確な目的意識と意図を持って講義に臨んだことがあるんだろうか、と思えるほどパワフルでinspirationalな2時間でした。イヤほんと、参加してない皆さん、勿体無いっすよ!

まず最初に議題に上ったのは、「DiversityとInclusivenessは違う」ということ。
Diversityというのは統計的なものであり、Inclusivenessを必ずしも伴わない
というstatementは非常に理解しやすかったし、多くの現場に欠けているのはそっちだよな、
と身をもって体験している私は聞きながらうんうんと頷いてしまいました。
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「Melting potという表現がよく使われるけれど、Toss saladと呼ぶべきよね」
と言ったのは、プレゼンターのJoann Jackson氏。「混ぜて混ぜて溶けて一緒になるんじゃなくて、違いを楽しむのよ。ちょっと苦味が欲しければピーマンを、酸味が欲しければオリーブを、
ぱりっとした食感を楽しみたければレタスを一口。それぞれのメンバーがテーブルに何を
持ち寄ってきたものを、ひとつひとつリスペクトするの。それこそがInclusivenessってことね」と。
さらに、有名ホテルの人事を任されてきた彼女は、
「ホテルの従業員を雇うことになって面接したんだけど、場所がカリフォルニアだったから、応募してきた人の中にアジア人が結構いてね。聞くべき沢山の質問の中に『あなたの上司が間違ったことをしていたらどうしますか?』っていうのがあったの。もちろん指摘するとかさらに上に報告するとか、そういった答えを期待していたんだけど、アジア人の候補者は皆『上司の言うとおりにします』と言うのよ。『でも会社に損失を招くかもしれないわ、どうするの?』って更につっこむと、皆『じゃあ会社を辞めます』と言うの。この時、ああ、私たちが彼らの文化を正しく理解していない、この質問は適切じゃない、と思ったわ。だって、彼らの文化では上司に逆らうことは許されないことなんですもの」なんて経験もしたそうで。ちょっと苦笑いしちゃいました。これはちょっと極端な例かも知れないけど、でもお互いの文化や、大切にしているものを理解しようという気持ちはとても大事。それを押し付け合うのはまたちょっと違うけどね。

しかしInclusivenessを持つためにはDiversityを理解しておかなければいけない、
ということで、現在NATAのメンバーのPopulationは:
  White 79.12%
  Asian 3.61%
  Hispanic 3.52%
  Black 2.92%
  Multi-Ethnicity 1.03%
なんだそうです。この世界はやっぱりまだまだWhite-dominantってことですね。
しかしこのパーセンテージ、本当にDiversityがアメリカ中どこでも実践されていれば、
例えば勤務先として、高校、NCAA Division-I、プロスポーツの世界別に統計を出しても
同じ割合になるはず…ですが、実際は全然なっていません。
傾向として、高いレベルに入れば入るほどやはりminorityの割合は減り、
白人の占めるパーセンテージが多くなってきます。難しいですね。

いかにMinorityをrecruitし、retainするのか?これは"人種のるつぼ"アメリカが何年も直面している課題であります。Joann氏が繰り返し言っていたのは、「組織を変えるには、組織のトップに立つ人間がinitiativeをとらないといけない。会社ならCEOやSenior leaderたちがその動きを先導しないと駄目ね」ということ。他のEDACのメンバーや参加者からもそれに関しては大きな賛成意見があり、「この部屋を見てください。私たちが伝えようとしていることは、肝心な人たちに伝わっていないのではないでしょうか」と指摘する人もいました。部屋を見渡すと、黒人とヒスパニックがほとんどで、アジア系は私のみ。白人に至っては、プレゼンターの一人であるDr. Perrin氏以外はゼロでした。もちろん、NATAのプレジデントなんているわけありません。当面の課題は、こういったトピックにmajorityの人たち、そしてNATAという組織のトップに立つ人たちをどう呼ぶかというところなんではないか、と思いました。
Minorityのrecruit、retentionに対して積極的に活動しているところだと、
こういった例もありますよ、と挙げられたのがNYUのこのビデオ。興味深い試みです。


日本人としての感想を言うと、あれだけ日本人のNATA参加者が毎年いて、
こういったイベントに参加している人は皆無に近いというのはちょっと恥ずかしく感じますね。
もちろん、今回のNATA Conventionに於いて他にもNATA EDACは複数のイベントをホストしており、
それらに参加された日本人の方もいらっしゃることと思います。スケジュールの関係もありますし、
全てのEDAC eventに出なきゃ駄目だぜ、なんて言うつもりは毛頭ありません。
でも、どんなに忙しくても3-4日あるNational Conventionのうち、
皆さんひとつくらいは絶対に出られると思うんです。
興味を持たない、というのは一番怖いことです。

アメリカという国で、「ガイコクジン」というレッテルを貼られて生きていくのは簡単なことではありません。私たちがアメリカ人と同様に扱われることはありませんし、雇用の機会、就労ビザにグリーンカードの取得は、信じられないくらいの困難にぶち当たります。
それに関して文句を言う日本人を沢山見てきましたし、そういう方の言い分も分かります…が、何か変えたければ、私たちも何か行動を起こさなければいけません。怒りでなくポジティブな動機を持って、リーダーシップを取り、人を先導して、解決策を示さなければいけません。こういう風に変われたらこんなに素敵になるよ、と皆の想像力を掻き立てるくらいでなければなりません。それをせずにただ文句だけを言うのは、非建設的以外の何者でもありませんよね。私はNATAのコンベンションにおけるこういったEDACのイベントって、完璧なopportunityだと思うんです。あれだけの人が、ATCたちが毎年集まる場です。新しいアイデアや経験を共有し、交流を深め、NATAが組織として、また、自分個人の職場を、ローカルレベルでどう変えていけるのか、模索する最高の場所だと思うのです。皆にも、もっともっと有効活用してもらいたいなぁと思います。

…というのも、たぶんここには書いていなかったと思うのですが、
こういった集まりや、EDAC committee memberに日本人が一切参加していないのが以前から不思議でならなかったので、それなら自分がやろう、と、私はこの春からSWATAのEDACに加えて頂くことになりまして。もっともっとこういったDiversityやInclusivenessという問題にもlocallyにもgloballyにも取り組んでいけたらと思っています。今回の講義でも、自分の大学で挑戦・実践できるかもしれないアイデアを色々もらいました。小さいですが、まずはうちのATEPから始めていけたらなー、と思っています。

違いを楽しむ、という簡単なこと。
自国から一歩も出たこと無い人には、案外難しいコンセプトなのかも知れない。
時間をかけて、何かを生み出せればと思います。日本とアメリカ、両側から働きかけたいな。
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  by supersy | 2012-06-28 22:30 | Athletic Training | Comments(2)

NATA Convention in St. Louis その1。

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今年もやってきましたコンベンション、ということで、
写真はExhibit HallのMuellerにあった巨大足首サポーターの展示です。
毎年Muellerは派手なことするけど、今年は格別だな。運ぶの大変だったろうに。
6月26日(火)の夕方に現地入りして、その日はご飯食べてお酒ちびっと飲んで大人しくしておりました。…というのも、翌日の朝イチのMinicourseに登録していたもんで。翌朝は5:45am起きで6時半にちゃっちゃとRegistrationをすませ、まず向かったのは…

1. Clinical Applications of Tararell & Simon's TrP Techniques by Peggy Houglum
Trigger Pointの種類やPrevalenceから始まって、話はElectrophysiology of TrPから、Histopathological Charateristics of TrPに。Sustained fiber contractionが起こってしまってmetabolic demandが増える一方、blood flowは制限されるしATPも供給されづらくなることからEnergy crisis & Hypoxiaが起こる、という電気生理学的悪循環と、筋肉に付随して筋膜も厚く硬くなり、癒着を起こして行動を制限→痛みがさらに増えるという組織学的悪循環でどんどんごりごりしてくる、というのはイメージがしやすく、Trigger pointのmechanicを独学でしか勉強したことなかった自分としては、「Trigger pointのできた筋繊維を、結んでコブ(knot)のできたゴムとしてイメージしてみて(↓)。必然的にもっとテンションが出来、ほかの繊維よりもストレスがかかるでしょう?」みたいな比喩が聞けたのは有難かった。なるほど、こう言われると想像しやすい。
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あと、TrPを正しく治療する上で把握しておかなければならないのがReferral Pattern。
例えば、下の図のバツ印(X)が実際にTrPが出来ている場所で、
赤い部位が痛み(Referred Pain)が出る箇所なのですが、
実際に治療すべきは必ずしも痛みの出ている箇所ではなく、TrPが出来てしまった箇所なわけですよね。赤い部位をいくらマッサージ、ストレッチ、電気治療しようが、根本を解決していないので何もBenefitはない、と。
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例えば、面白いのがSupraspinatusのTrP Pain Pattern。SupraspinatueにTrPが出来ると、その痛みはDeltoidのinsertion周りとLateral Epicondyleにreferします。私、deltoidは有名なので知ってましたが、Lat epicondyleは知らなかった!これに気づかず、Lat epicondilitis(テニス肘)かも、なんて思って患者にelbow strapあげたり、Eccentric load中心の腱のリハビリなんかしても、何の効果も出ずに時間を無駄にするだけになっちゃいますよね。同様に、Subscapの痛みは手首に出たり(↑)、Soleusの痛みは踵に出るのでPlantar fascitiisと勘違いしたり、Gluteus Mediusの痛みがSIに出るのでSIJ dysfunctionと間違えたり(↓)…なんていうことがあります。
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感覚的に分かっているつもりでも、個々のPatternを完璧に把握出来てる自信はないなぁ…
もうちょっと時間を使って勉強してみよう。

2. Management of Shoulder Instability in the Athlete
この講義は予想外にめちゃめちゃ面白かった!!!
まず、肩の「手術を必要とするtear」と言えばSLAPやBankartが代表的ですが、Humeral Avulsion of the Glenohumeral Ligament (HAGL) Lesionというのはこの講義で初めて知りました。
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Forceful abduction等でInferior GH ligamentが断裂を起こし(ほぼ確実にDislocationを伴います)、anterior instabilityに結びつくのだそう。Bankart等と比べてrecurrent rateも高いんだそうな。へー。

で。「Shoulder instabilityのclassificationは、思われるほど統一性がなく、未定義なものである」というイントロから、講義はSurgical Consideration & Outcomeの話へ。
- 一般的に、肩の脱臼はクセになりやすく、手術をしない場合の再発率は50%である。
- クセになってしまった肩の脱臼はOAのリスクを高める。
- しかし、手術をすること自体もOAのリスクを高める、という統計もあるため、どっちにしても一度怪我をしてしまえばOAは起こりやすくなる。
- 手術をしないほうがいい、contraindicationとなる事項は、以下の通り。
 ▼"Volitional" Instability
 ▼Neurologic shoulder
  (例えばaxillary nerveが損傷してdeltoidがfireできなくなって付随的に起こっているinstabilityの場合、など)
 ▼Developmental Instability, Collagen Disorders, etc
  (Marfan's syndromeとか、ですね)

面白かったのがこの"Volitional" instabilityに関してで、
つまるところ、「自分の肩をガコッと外しちゃぁそれを楽しんでいる患者さん」のことです。
皆さんも回りにいませんか?「俺の肩、外れるんだよね」とか、「私の指、こんなに曲がるのよ」とか、身体に起こっている『異常』を、「私って何て特別」と思っちゃってる、自慢のタネにしちゃってる人。

例えば、上の動画。これはただのVoluntary subluxationのデモの動画で、"volitional" patientではないのですが、例えばお医者さんに「肩のinstabilityということだけど、どういったときに外れそうな感覚があるの?見せてもらえる?」と聞かれて、「ちょっと痛みが出るんでやりたくないんですけど…こういう感じです」と"しぶしぶ"見せるのがnon-volitional patient。「いいですよ!」と、うきうき自慢げに笑みを浮かべながらごきゅごきゅ外して見せちゃうのが"volitional" patientというわけ。Dr. Kuhn曰く、「こういう人は精神的に問題があるので、私たちのところよりも先に、精神科医に診察していただかないといけない」と随分はっきりモノを申しておりました。「こういう患者が手術で満足できる結果を得られるわけがない。そもそも脱臼を楽しんでいるのだから、手術によってstabilityが戻ってくればむしろそれを悲しく思うわけだ。また外そうとしてあれこれやって、instabilityを再発させるに決まっている。こういう患者は、手術する意味がない」というわけなんだそう。

その他にも、EBMに基づいた肩の脱臼のreduction、手術、術後のimmobilizationに関しては:
①What we KNOW (Level I-II evidence)
  Open surgeryとArthroscopic surgeryは、昔は内視鏡手術のほうが成功率が低かったが、
  技術の進歩もあり、今ではどちらも同様にsuccessfulである。
  術後のimmobilizationは、従来の『IRで固定』よりも、『ERで固体』のほうが経過が良い。
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②What we THINK are true (Level III-IV evidence)
  脱臼を直す場合にはFARESが一番良いが、成功率は患者の年齢や体型にも左右される。
  (年齢で言うと、若い方がreduceしやすく、又、体型は太めに比べて細身のほうが成功しやすい)
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*FARES: 肩をtractionかけつつ、oscillationしながらfully abduct。120°くらいで通常reduceする。

③What we BELIEVE (Level V evidence)
  安全にRTPするには、患者が健側と比べて、『normal ROM, normal strength,
  little to no pain, sport-specific taskが可能であること』という条件をクリアしているべき。
ということが分かっているんだそう。講義を行ってくれた医者たちもプレゼンが上手で、
かなり勉強になりました。紹介されたアーティクルたちにも興味深いものがあったので、
探して見つけて、読んでみようと思っています。うちにも肩の故障がある子が多いので、
勉強しなきゃと思っていたのよ。ちょうど良い。

ほかにも初日に様々なレクチャーにいったのですが、随分長くなってしまったので今日はここまで!
次回に続きます。
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  by supersy | 2012-06-27 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

Athletic Training Camp

数日前の話になるんですが、先週の土曜日、
うちの大学でAthletic Training Camp、というのをホストしました。
対象はAthletic Trainingに興味のある高校生で(テキサス州はATに対するawarenessが高く、ひとつの高校に2人以上のATC/LATがいるのは結構当たり前で、そのヘルパーとして、高校生でも「学生トレーナー」としてチームに帯同して経験を積んでいる子たちは結構いる)、
キャンプと言っても泊まりがけではなく朝9時から夕方4:30までのDay Camp。
…とはいえ、一日がかりの大仕事なので、本当はATSのヘルプも借りて運営したかったけれど、
何しろこれがうちのATEP史上今回初の試みなので、財政的蓄えもなく、
参加者の数も予想がつかなかったことから、Program DirectorのMary、
Head Athletic TrainerのJerry、そしてClinical Coordinatorの私と、3人で一日キリモリすることに。
3人のよぼよぼオトナ vs 元気盛りの高校生たち。 た…大変だった!

内容はというと、前回のプロ対象のWorkshopとは大違い。
今回はろくに解剖学の知識も無い高校生が対象だから、いかに楽しく、かつ使える情報を混ぜ込むか、というところを個人的に配慮しました。私はいくつかの講義とhands-onセッションを担当したのですが、visual aidもあったほうがいいかしらん、と色々考えて、久しぶりにお絵かきしてworksheetを作っちゃいましたよ。内容は足の骨です。
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「全部レントゲンみたいに中身がシースルーで見えたら苦労しないけどさ、そういうわけにはいかないし、だからって患者さんの皮をいちいちひっぺがすわけにもいかないじゃん?だから、手を目の代わりに使って、触りながらひとつひとつの構造のintegrityを確かめていくわけよ。何を触っているのか、どんなtextureか、常に意識しながらね」と、palpationの極意を教えた後、足の骨をひとつひとつ触診させたら、「すごい!骨が触って分かるなんて!これ、ほねだー!」という実に新鮮なリアクションが。か、かわいい。

お昼ご飯の後には揃って眠くなっちゃうし、集中があまり長く続かない子もいるので大変でしたが(苦笑)、アクティビティーも交えつつ、最後には今日習った内容をベースにQuiz Bowlも設けたりしてわいわい楽しく過ごすことができました。(ちなみに写真は選抜選手による最後の問題での一場面。地面に置いてあるペンを取った者に解答権があるので、「わかったー!!!」とコドモたちがダイブしてます)
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参加したとある子から、早速「Great Training camp and learned a lot form the Instructors that provided a wealth of knowledge that will last a life time. Thank you!」なんてコメントをもらって嬉しかった。来年ももっと規模を大きくして楽しくできればいいなー、と思っとります!そして、来年こそはお給料が発生してくれてもいいんじゃないかなともちょっと思う!ちょっとだけ!

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ちなみに、こないだの残ったモッツァレッラで、今度はパスタを作りました。
ベーコンとほうれん草の、モッツァレラトマトソーズパスタ。
モッツァレラが効いてて美味しかったですよ!うままー。
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ちなみにちなみに!明日からNATA ConventionでSt. Louisに行きます。
向こうで会えるかも知れない友人知人の皆さん、また楽しくわいわいやりましょう。
明日の夕方には到着予定です。いっぱい勉強して帰ってきたいと思います。
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  by supersy | 2012-06-25 22:00 | Athletic Training | Comments(2)

Second Impact Syndromeは本当に存在するのか。

Second Impact Syndrome(SIS)って皆さんご存知でしょうか。
ATCなら知らないなんてありえない、という常識ですが、日本での認知度はどうなのかな。
理由は後述しますが、今回色々と調べてみて、もしかしたら日本ではあまり
馴染みのない言葉なのかも知れないなぁ、なんて思いました。
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そもそも脳というのは頭蓋骨という硬い壁と、三重もの膜と、CSF(脳脊髄液)という液体に包まれてふわふわと浮いた状態で守られているわけですが、脳自体はsudden forceには比較的弱く、頭が急激に動いたりすると、脳も頭蓋骨内でつるっと動き、頭蓋骨に激しく叩きつけられたり(↓)することがあります。脳がよく守られていると言っても、脳のtexture自体は木綿豆腐のようなもんですから、外界からはともかく、内部から直接負荷がかかればそのshear forceで割りと簡単に損傷や挫傷を起こしたりします。これが、いわゆる脳震盪なわけですね。
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ちなみに、脳震盪に関して、なかなか良い説明をしている動画(↓)を発見しました。
興味がある方は是非。



で。

SISはATCがConcussion(脳震盪)に対してconservativeになる理由の筆頭に挙げられます。定義で言うと、”Sustaining another (second) impact while you are having symptoms from the initial concussion"という状態のことを指し、日本語だと「脳震盪を起こした後、それが回復しきらず、まだ頭痛や吐き気といった症状が残っている状態で、再び脳に衝撃を加えること」と言った感じでしょうか。
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例えばですね。膝を机かなんかにしたたか打ち付けて、派手にアザを作ってしまったとしましょう(↑)。こうなっちゃうと、内出血し、炎症を起こしている部分を指でちょん、と触っただけで痛いですよね!こんな風に、損傷を起こした部位って、一時的に敏感に、脆くなるもんなんです。
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これは、脳みその場合でも同じで、小規模でも損傷が起こると、細胞が死んだ時に発する化学物質によって周りの細胞までも死亡したり、細胞内の代謝の需要が上がって供給とのバランスが取れなくなったりして、一時的に「次の衝撃」に弱くなることが研究によって証明されています。個人差はありますが15日ほど続くこの不安定な時期・vulnerable windowを怪我無く過ごせれば、時間とともに脳の機能も回復されていくのですが、ここでもう一度衝撃がかかってしまうと脳はものすごい速さで腫れ上がり、行き場をなくした脳がお互いを押し合ってherniaを起こし、致命的な結果を招くことも…。これがいわゆるSISです。
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『二度目の衝撃』が掛かってから、患者本人が倒れて意識を失うまで、たった2-5分程度だと言われています。そして、一度倒れれば死亡確率は50%以上。仮に生き残ったとしても、重度の障害が残ることが今までに確認されています。だからこそ、私達ATCは脳震盪の認識の大切さをこれまでも訴えてきたわけです。「ちょっと頭が痛いけどプレーに支障はない」「大したこと無いから、アスレティックトレーナーには言わなくてもいいや」とかすかな、でも大事なsigns & symptomsを無視してプレーを続けていると、本当に命に関わることになるんだよ、と。少なくとも、私はこういうargumentが軸なんだと思ってました。脳震盪が本当に怖いのは、無視しているとSISが起きちゃうからだよ、だとね。
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だからこそ、結構衝撃的だったんです。この記事(↓)を目にしたときは。
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Dr. McCrory氏は大胆にも、「SISなんてmythなのでは、存在しないものなのではないか」と訴え、それをsupportする様々な根拠を挙げています。更に、今年発表したこの論文(↓)は新たなevidenceも加えられ、我々が今まで軸にしてきたと言える論理を崩し、これからのreturn to play guidelineを変えかねない影響力を持っていると私は思います。最初は私自身も「なーにを言っとる」と懐疑的な気持ちで読んでいたのですが、読み終える頃には、「こ…こいつ…やりおるな!」と冷や汗モノでした。皆さんも是非読んでみてほしいなぁ。目から鱗ですよ。
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McCrory氏の論理を非常に簡潔にまとめると、

1. SISのエビデンスはそもそもanecdotal case reportのみによってしか基づけられておらず、それらの症例も全世界で17件しか発表されていない。 =症例自体がそもそも信ぴょう性に欠ける。

2. その17件全てが北アメリカによる文献で、ヨーロッパやアジア、オーストラリア圏等での症例は今までにゼロ。単純にスポーツで言うと、アメリカンフットボールよりも脳震盪の起こる確率が15倍高いと言われるオーストラリアン・フットボールではSISの症例がもっと確認されても可笑しくなさそうなのに、過去35年のオーストラリアン・フットボールで起こった死亡例を全て確認してみても、SISという記述は一切無い。 =本当に存在する症状ならば、これはあまりに不自然すぎる。 (=あ、だから日本ではあまり知られてないのかなと今回思ったわけです)

3. SISというのは、構造的な損傷(structural injury)を含まず、あくまでrapid brain swellingだと考えられてきたが、『SIS』によって死亡した患者を解剖したりCT scanを撮ってみると、実際はsubdural hematoma (= structural injury)を伴っているケースも多い。 =直接の死亡原因はむしろこちらにあったのではないか。

4. 全17件の症例のうち、実際に"Second" impactが関係していたのはたったの5件(それ以外はrepeated injuryではなく、initial injury)。この5件に関しても、initial injuryとsecond injuryがどれほど関係があったのかは怪しい。 =single blowでも起こりえるのならば、second impactという名前は不適切では?

そんなわけで、McCrory氏は、「SISは、"Second" impactに限って起こるわけではなく、一度の衝撃でも十分起こりえる。よって、SISという名前より、Diffused cerebral swelling(DCS)、という名前のほうが相応しい」 「脳震盪の症状が残っている患者はRTPすべきでないというのは変わらない、が、それはあくまで(一般的な)怪我の予防という観点からであって、SISを予防するという必要性に迫られるべきものではない」という独自の議論を展開しています。ここらへんは賛成反対するは別として、途中の主張はかなり説得力があるように思えました。

私が個人的に今思っていることを乱雑に書くと、
●でもvulnerable windowは存在するわけだし(←ここはMcCrory氏も認めている)、やっぱりこの期間内のsecond impactは更なる脳の損傷を引き起こすわけで。死亡するに至るかは別として、プロとして「second impactの恐ろしさ」はこれからも伝えたい…というか、無くなって欲しくない。ぶっちゃけ、SISってかなりインパクトがあるので、素人さんやアスリートにも覚えてもらいやすくて、concussionのseriousnessを伝えるのにかなり有効な手段だったから、無くなるとまたアプローチの仕方を考えなきゃいけないなぁ。(←イチクリニシャンとしての勝手な感想)
●名前っていう意味ではDCSのほうが包括的で正しいんだろうなぁ。
●こんなにSISに関してやんわりしたevidenceしか存在しなかったとは知らなかった。そんなほわほわコンセプトが力を持っていたとはかなり意外。

…なーんてことを色々考えています。こういった傾向を受けて、NATAがこれからどういう立場を取っていくのか興味が湧きますね。いやー、しかし、「教科書や教室で教わることは10年前の知識」なんてことを良く言うけれど、本当なんだなぁと実感。学生の頃かなりしっかり教えられてきたし、先入観でSISは完全に確立されたコンセプトなんだと思っていたけれど、その存在すら疑ってかかることが時には道を開くカギになるわけで。直接的にも、間接的にも、かなり目から鱗させていただきました!面白かった。
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  by supersy | 2012-06-24 20:30 | Athletic Training | Comments(5)

マルゲリータ・ピッツァ。

美味しいイタリアンが食べたくなって、マルゲリータ・ピッツァを手作りしてみました…
って、生地は市販のにしちゃいましたが。

マルゲリータはトマトソースの赤、バジリコの緑、そしてモッツァレッラの白が相俟ってまるでイタリア国旗のよう、とのことで、日本でもよく見られるクラシックなピザです。…が、アメリカでは結構良いイタリアンレストランとかでもないと出て来ません。アメリカ独自のピザの文化が(といっても、ペパロニとかイタリアンソーセージとか、一品物の大衆料理ですが)発展してしまっているからでしょうか。

で、そういうんじゃなくて、美味しいピザが食べたいね!ということで、
材料を買ってきて作ってみましたー。モッツァレッラはシュレッドされたものじゃなくて、フレッシュ・モッツァレッラ(↓丸くちぎられ、水につけてあるもの)を買って来ました。
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左が焼く前、右が焼いた後。バジルが効いていて美味しかったー。
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別に特に値がはったわけでもなし、こっちのほうが宅配や冷凍よりずっと美味しかったので、
またやってみてもいいかも!今度はトマトのスライスも乗せたら美味しいかなぁ?
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ワインと合わせてぱくぱくかぱかぱ飲んで食べていたら、すっかり酔っ払ってしまいました。
ふぅー、良い気持ち。ほわほわ。
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  by supersy | 2012-06-16 20:00 | Cooking & Baking | Comments(2)

EAHおまけ。そしてキャンプ終わり!

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Shun氏が紹介してくれたArticleも読んでみました。
こっちの意見はやはりどちらかと言うとInternational Consensus寄りで、
 - Thirst is stimulated with decrease in body water of approximately 1.7-3.5%.「飲みたいだけ飲む」という手法の水分補給だと、ヒトは失った分の56%ほどしか補給しないという研究結果が出ている。
…ということは認めつつも、
 - しかし、カラダは水分そのものの喪失よりも浸透圧のバランスに敏感なので、それに合わせて喉の渇きが起こる。つまり、喉の渇きは立派なFluid balanceのバロメーターといえるのではないか。そもそも、そうした進化の中で遺伝子に組み込まれた生まれたメカニズムなのだから、種の生き残りに有効であることは明白である。
という議論を展開しています。
さらに、
 - 失った水分を完全に補給する(運動前と運動後の体重が全く同じになるよう水分を摂る)と、軽度のナトリウム濃度低下が見られる。
 - 完全補給したからといってパフォーマンスに利益があるとは思われない。
とのたもうております。

 - 1%でも水分を失ったら心肺機能に影響が、と訴えるヒトたちもいるが、それは運動に伴う体温の上昇から起こるのであって、必ずしも水分が原因ではない。
 - 4%の水分が失われるとパフォーマンスが確実に落ちる、というのは研究でも実証されているが、ここまで脱水が進めば喉の渇きも感じるハズ(=故に喉の渇きを待ってからで十分)。

唯一認めているのが、
 - 喉の渇きメーターが効果を発揮しないかもしれないのは、選手が65歳以上の場合、Extreme cold (<5℃)conditions、そして、extreme heat conditions (>38℃)で、選手本人がacclimitizedされてない場合。
というところで、
その場合はthirsty thresholdが上がっているので、多めの水分補給が必要、なんだそう。
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私が個人的に今回のIMMDAと、前回のInternational Consensusを読んでちょっとびっくりしているのが、どちらも体温の上昇を全く無視して話を進めているところ。今回の記事でも、運動に伴うCore tempの上昇がパフォーマンスに支障をきたす、と認めているのならば、冷たい水分をしっかり取って、水分補給と同時に体温の上昇を抑えるのも非常に大切なはず。

そして、くどいように、私のように、何も飲まなくっても一日平気でいられる。12時間以上トイレに行かなくても別に平気、みたいな万年脱水症・故に喉の渇きの感じ方が鈍感になってるニンゲンもいるわけで。喉の渇きが、種の生き残りに今までは有効なバロメーターの役割と果たしてきたかもしれないけど、フルマラソンで5-6時間ぶっつけで走る、なんて、そもそも現代のニンゲンは動物学的にムダ以外のナニモノでもないことをしようとしているのだから、そのバロメーターで覆いきれないこともあるのでは?

生き残るためには十分なバロメーター、とそもそも言ったって、私達ATCにとって、患者が死なないのは大前提。最高のパフォーマンスができるのがやっぱり最善なわけで。生き残るギリギリのバロメーターが出てきてしまってる時点でそもそもまずいんじゃないかということも考えられますね。

…というわけで、この記事を読んでみても、やっぱり私は改めて、喉が渇いたら水分を採るので十分。と言い切ってしまうのはoverstatementだと思います。喉が潤されたと思っても、あと一口だけ飲んでみるくらいが最適だと個人的には思うのです。だって、これを私自身で実践するとしたら、私、毎日恐らく何も飲まずに過ごします。冗談でも誇張でもなく。でもだって、そんなのが健康にいいわけないもの。アスリートで、余分に汗をかいてエネルギーを使っているなら尚の事。しかも、練習や試合に非常に集中してしまうと、喉の渇きを感じないこともある。水分補給は、臨機応変に、しかしあくまで「習慣的」であるべきだと私は思うのです。

そもそも、(NATAの推奨する)運動前と運動後の体重が同じになるよう完全補給したからといって、ナトリウム濃度が少し落ちてasymptomatic hyponatremiaになっても、どこにも支障はでないわけですよね…?パフォーマンスは保たれる、ちょっとナトリウムは通常より低いけど、症状が出るほどではなく、すぐに回復が見込まれる。Risk managementで言ったら、こっちのほうが安全じゃないですか?何故反対派がそんなにやっきになって反対するのか、私はちょっと疑問。

有名マラソン等のMass eventをホストするならoverhydrationを予防するもっと厳しい指針を設けたほうが良いでしょうが、顔なじみばかりのアスリートの毎日面倒を診るATCとしては、普段からのPatient educationが大事なわけで、それぞれに水分補給の指針を立てて(例えばうちにはUTI & Kidney infectionのmultiple-hxがある選手がいるのですが、彼女は普段から水分を少量ずつこまめに補給する習慣を話し合って数年前からつけている。こうすることで水分が常にカラダの中で循環し、古いものがすぐに出ていくようなサイクルを作っている)、本人がcomfortableな範囲で実践していけばそれが一番だとどうしても思うのです。で、練習外でも一日を通じて水分を摂るクセ、食事も出来る範囲でhealthier food choiceを選ぶクセをつける。まー彼らもまだ学生だし、本人の出来る範囲で、ね。アスリート自身も納得してないと、しょうがないし。でも、ATCという、アスリートと毎日とんでもない時間を共にしている仲だからこそ、医者にすらできないこういった基本的生活の見直しができると思うんです。私は、医者とATCのFluid replacement position statementの違いはこういう立場の違いからも来ていると思う。

…そんなわけで、今回は水分補給に関して色々考える良い機会になりました。
恐らくもう少しでUpdated NATA Fluid Replacement Position Statementも新たに出版されると思うのですが、ここ5年ほどで高まったEAHのawarenessがどれほど反映されるのか、他の問題(高体温症・脱水)と比べてどれにどれほど重きを置くのがATCとして相応しいのか等、組織としてNATAがどういう判断をするのかとても楽しみになってきました。それがどんなものであれ、ATCとして私たちはそれをしっかり読み、理解し、考え、自分たちのPracticeにアプライしていく事が大事ですね!

…というわけなんで、とりあえずEAHの話題はここで一旦終了にしますー。
自分なりの結論は出たので良しとします!

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今日で、ようやく女子バスケの中・高校生対象のキャンプが終わりました!
全部で2週間。な、長かった~…。
お昼ごはんのピザともオサラバです。

実は来週末には高校生対象のAT day campをATEPとしてホストしたり、
再来週にはNATA Conventionのためにセントルイスに行くし、
その翌翌週末にはConcussion Workshopがあったりと、なかなか落ち着く暇がありません。
できることから、一日一日、頑張っていこうと思います。

ふぅ~…(ちょっと疲れた)。
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  by supersy | 2012-06-14 19:00 | Athletic Training | Comments(3)

Hypohydration vs Hyperhydration。防ぐべきはどっち?

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sh氏とShun氏のコメントがきっかけで、EAH(Exercise Associated Hyponatremia)という言葉に初めて今回出会うことができたのですが、この名前自体unfamiliarだったのと、Hyponatremia(低ナトリウム血症)は
『行き過ぎたLow-sodium dietや摂食障害等で十分な食事を摂れていなかったり、
 病気・風邪等で嘔吐や下痢を起こしたことによって
 Sodium intakeが日常的・慢性的・もしくは一時的に不足している人に起こる現象』
としか私自身が認識できていなかったこともあり、
水分の過剰摂取がそこに加わるとどうなるのか、
ということをあまりつなげてみたことがありませんでした。
調べてみたら、どうやらこういった可能性を知っておくのはとっても重要なことらしい…
というわけでちょっとだけまとめてみます。

●そもそも、Hypomatremiaとは
Hyponatremiaとは、体中のSodium(ナトリウム)濃度が極端に低下することによって起こる現象で、基本的に以下の3つのメカニズムによって起こりえます。

1) Euvolemic hyponatremia
total body water increases, but the body's sodium content stays the same

2) Hypervolemic hyponatremia
both sodium and water content in the body increase, but the water gain is greater

3) Hypovolemic hyponatremia
water and sodium are both lost from the body, but the sodium loss is greater

アメリカで過去に起こった「水飲みコンテスト」での死亡例は1)のEuvolemic hyponatremiaにあたるわけですね。体内の水分が一気に増えたせいでナトリウム濃度が急激に減少し、死に至るまでになった、と。

で、今回のEAHというのは、分類するならば3)のcomplicationなのでしょうか。
運動をする→発汗してSodiumを失う(ここで既に3. Hypovolmic)→水分補給としてpure waterを飲む(←ここが悪化ポイント。1の要素も加わる)→結果、更に濃度が下がる、と。

●どんな症状が起こるのか?それは何故か?
よく見られる症状は、
  - Fatigue
  - Headache
  - Irritability, Restlessness
  - Loss of appetite
  - Muscle spasms or cramps
  - Convulsions
  - Muscle weakness
  - Nausea, Vomiting
といった初期症状から、深刻なものは
  - Abnormal mental status
   Confusion, Decreased consciousness, Hallucinations, Possible coma
まで。CNSに影響が出るのは、浸透圧が原因です。
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通常の状態では、細胞の中と外のナトリウム濃度が等しいため、細胞の通常の形状が保たれる(↑写真上)わけですが、Hyponatremiaになって細胞外のナトリウム濃度が極端に落ちた場合、細胞を取り囲む水分がそのバランスを保とうとして細胞内に移動するため、結果的に、細胞が膨張する(↑写真下)ことになります。

ここで特筆すべきは、体内のほとんどの細胞はこの膨張に耐えられるだけの耐久性があるのですが、Brain cellだけはそうではない、というところ。
脳の細胞は、固い固い頭蓋骨に囲まれていて、拡張には非常に弱いのです。それぞれの細胞が拡張を始めると、限られたスペースしかないのでお互いを圧迫し合い、細胞同士の損傷が起こり、encephalopathyになり、最悪の場合は死に至る、というわけですね。

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●EAHの症例
2000年以降8件の死亡例が確認されており、その中では『athletic eventの最中・後で起こったものよりも数日・連日に及ぶ軍隊の訓練の結果起こったものが多い』というのは事実です。
スポーツに関して起こった症例で、具体的な例を幾つか挙げると、
1) ロンドン・マラソンを終えた後、22才の男性ランナーが倒れて亡くなった
2) 39才の女性が、朝ごはんを食べずにテニスやweight lifting等の2時間の運動をした後、家に帰ってきて倒れ、救急車を呼んだ
いずれのケースも、患者は運動中に水分補給は特に気にしており、積極的に水分を飲んでいた、という記述があります。

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●EAHを理解する
EAHを正しく理解する上で大切なのが上のふたつ(↑)のArticle。
国際レベルで、EAHの共通理解を持とう、と開かれた第一回と第二回International EAH Consensus Development Conferenceで(第一回は2005年南アフリカ・ケープタウンで、第二回は2007年にニュージーランドで開催されました)決められた様々な項目についてまとめてある記事で、
どちらもfull textがavailableですので興味のある方は是非!(第一回第二回)

"EAH is the occurence of hyponatremia during or up to 24 hours after prolonged physical activity"
これは彼らは導き出した定義の一文ですが、キーワードはprolonged。
1-2時間の短い運動では起こった症例はごく少なく、ほとんどの場合、運動は4時間以上続く長いものであることがわかっています。マラソンとか、トライアスロンとかが、主なリスクスポーツにあたります。

具体的には、Serum(漿液)内のナトリウム濃度が、

 135-145mmol/L  Normal (通常)
 130-135mmol/L  Biomechanical hyponatremia (低度低ナトリウム血症)
            (relatively asymptomatic, resolve spontaneously)
 125-130mmol/L  Clinical hyponatremia (中度低ナトリウム血症)
            (started having signs & symptoms)
 <125mmol/L  Serious hyponatremia (重度低ナトリウム血症、生死に関わる)

これらの値であるときにHyponatremiaという診断がなされるそうです。
上にもある通り、患者が症状を感じ始めるのはナトリウム濃度が130を切ったあたりからです。
ここで面白いと思ったのは、『ほとんどのSymptomatic(Clinical) hyponatremiaは、運動前と運動後(症状をdevelopし始めた時点)で、体重が増加している』、という統計。つまり、汗で失った水分を補って余りある程の水分補給を行ったため、結果的に運動前と後では体重が増えてしまっている、と。水分の過剰摂取が非常に如実に見られるケースで確認されています。

EAHのRisk factorは、以下のとおり。
  ▶ Athlete-related
    - excessive drinking behavior
    - weight gain during exercise
    - low body weight
    - female sex
    - slow running or performance pace
    - event inexperience
    - nonsteroidal anti-inflammatory agents
  ▶ Event-related
    - high availability of drinking fluids
    - >4 hours exercise duration
    - unusually hot environmental conditions
    - extreme cold temperature
まとめると、競技経験の比較的少ない、小型の女性アスリート、と言ったところでしょうか。

EAHを予防するには、ということですが、このConsensusによれば、
『水分補給のuniversal guidelineは、一人ひとりsweat rateもrenal water excretory capacityも異なるので作るのは不可能だ』と述べています。

"The goal should be to expect to lose up to 2% of body weight & never to gain weight during exercise"
ここで具体的な予防法の代わりに彼らが打ち出したのは、非常にpassiveなstatement。上にあるように、「間違っても運動後に体重が増えているというような水分補給はしない。目標としては、運動前と運動後で体重の2%くらいの水分を失っているのが理想的」というのです。そのためには
  1. Drink ONLY according to thirst (喉が渇いた時のみに水分補給を行う)
  2. Monitor body weight so as to avoid weight gain during exercise

ではEAHになってしまったらどう対処すべきなのか?分かっている事項として、
  - Drinking hypo (<135mmol/L)/isotonic (=135) fluids worsens condition.
Commercial sports drinkはsodiumを20mmol/Lしか含まないので、Sodiumの補給源としては不十分どころか、それを飲んでしまうと、ナトリウム濃度がますます低下してしまうことになります。EAHの患者には、水やスポーツ飲料を飲ませるのは厳禁です。
  - Sodium tablet/drinkの効果は、今のところconflicting results。
じゃあ塩分がっつり入ったカプセルを飲んじゃうとか、塩分がっつり含む液体を飲めばいいのか?というと、理論上はそうなんだけど、現実はなかなかそうでもない。研究結果はまちまちで、効率の良いナトリウム濃度の上げ方はまだ見つかっていません。
  - 回復法として一番成果が出ているのは、hypertonic saline (3% NaCl)を注射すること。
病院でこの治療を受けた患者は今のところ全員回復しており、通常のsalineを注射された患者は死亡したことが確認されています。

Medical Staffとして、知っておくべきことは、
マラソンやトライアスロンのイベントを開催する立場になったら、医療テントでナトリウム濃度を計測できる環境を整えておくこと。そして、ランナー全員のレース前の体重を記録として持っておくこと、だそうです。水飲み場の数も限ったほうがいいそうで、例えばトライアスロンなら、
  - 自転車区間は20km毎に、走る区間は2.5km毎にaid stationを設置する。
マラソンなら、
  - 5km間隔でaid stationを設置する。
等、指針が書かれています。これは、なかなかusefulな目安かも知れませんね。

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●NATAの推奨する水分補給法
一方で、私達ATCが従うべきは、母体であるNATAが打ち出しているPosition Statements。Fluid replacementについてのもの(↑ 全文リンクはこちらから)もあるので、International EAH consensusとどれだけ違う・同じなのか水分補給の指針を比較してみました。

NATAは、水分補給の指針を19項目にまとめています。ざっと書き並べてみると、
1. Athlete's sweat rate, sport dynamics, environmental factors, acclimatization state, exercise duration/intensity, individual preferenceを考慮した上で、それぞれのアスリートに合ったHydration protocolを作るべき。
(これは、個人的にはInternational EAH Consensusの「universalなものは作れない」をひとつ進めた次元の話で、それならindividualizedしたものを作るしか無い、というもの)
3. 水分は、透明な容器に入れて、100mlごとにマーカーなんかで印をつけておくと
どれだけ飲んだかが分かりやすい。味付けはお好みで(これで、選手自身がどれだけ積極的に水分を取るかが変わってくるので)。水分補給量の目安としては、Drink beyond thirst satiation or the typical few gulpsと選手にremindすべし。
6. 脱水量は、体重の2%以下に抑えること。水分補給で言うと、200-300ml every 10-20minに等しい量をコンスタントに補給するのが理想的。
12. 以下の状況の時には、水分にSodium chloride (NaCl)を足すのが好ましい。
   - 食事が不十分・または食べていない
   - 運動が4時間以上
   - 気温が高い中での運動、最初の1~5日目くらいまで
Modest amount of salt (0.3~0.7g/l)はcramp、hyponatremiaの予防に有効であるし、stimulate thirst, increase voluntary fluid intake, enhance palatability & retentionという利点があり、害はないハズ。
…といったモノたちがあります。International Consensusとはだいぶ異なる内容です。

というのも、NATAの水分補給指針の目的は、EAHを予防すること、ではなく、
  1. Hyperthermia(高体温症)を防ぐため
  2. Athletic performanceを最善に保つため
ということを目標に書かれているからです。International Consensusは、言い方がちょっと悪いかも知れませんが、EAHさえ防げれば他は何が起こっても気にしない、みたいなスタンスで書かれている印象を受けました。ATCとしては、そういった心構えでアスリートを送り出すわけにはいきません。目標はあくまで、健康を保った上で、より高いパフォーマンスでないと。
この時大切になってくるのが、『体重の1-2%分の水分を失うと、パフォーマンスは低下する』という運動生理学界のゆるぎない事実なのです。International Consensusはむしろ『2%までの体重低下は理想的である。これを目指すように』と書いていましたが、これではパフォーマンスはcompromiseされてしまうのです。NATAは、『水の飲み過ぎによって起こるHyponatremiaという現象もあるが、それは非常に稀であるし』、と認めた上で、"Every athlete will benefit from attempting to match intake with sweating rate and urine loss"と断言しています。飲み過ぎを肯定しているわけでは一切ありませんが、2%低下をよしとする水分補給ではいけない。失った分はきっちり補給すべきだ、というわけですね。

---------------------------------------
●NATA vs International EAH Consensus、Hypohydration vs Hyperhydration
…というわけで、両者の言い分は大いに食い違っているように思います。特に、水分補給量の目安に関して、です。喉の渇きのみに従うべきなのか?喉が潤されてももうちょっと余分に水分を摂るべきなのか?で、前述したようにこれはお互いの目標が異なるからなわけで(NATAは体温の維持と、パフォーマンスの維持。International Consensusは、EAHの予防)、あなた自身の目標によって、どちらに耳を傾けるべきかが変わってくるのではないでしょうか。

しかし、現実的に考えてですよ。
EAHは予防したいけど、脱水してしわしわになって死んじゃってもいいですよ、なんて、そんなはちゃめちゃな論理が通るわけがない。私にとってはInternational Consensusは少しばかり偏り過ぎの指針に見えるのです。中庸の徳、という言葉がありますが、上手く両者の良いところを取って、これからの私たちのpracticeに反映できないものでしょうか。

ここからは私個人の意見になりますが、
全く喉の渇きを感じずにHeat exhautionになった自身の経験も踏まえて、「喉の渇きのみに従って水分補給」という大いに誤解を招くようなstatementを医療従事者として選手に言うわけにはいきません。ぶっ倒れて、全身が痙攣を始めても、私、全く喉の渇きは感じませんでしたからね。そんなsubjectiveな指針はちょっと頼るには怖すぎます。加えて、喉の渇きを感じた時点で体重の1-2%の水分は既に失われており、『軽く脱水している状態』ですしね。前述のとおり、1-2%の脱水は、パフォーマンスにも影響がでることは研究によって十分に証明されています。我々の目標は、もっと高いところにあるはず。

なので、一般の水分補給の目安としては、
個人のsweat rateとニーズに基づいたものを、という、NATAのPosition statement通りのものをこれからも実践し続けていきたいと思います。飲みたい、と思う量よりちょっと多めに飲むくらいがいいんだよ、と、ATCとして私はこれからも言い続けます。練習中、あまり水を飲まない子は、「もうちょっと飲むくらいがカラダにはいいのよ、ちょっと意識して飲んでみ?」と今まで通り勧めます。

現実と向き合ってくると自ずと答えが見えてくる気もするのです。
ここ12年で8件の死亡例、しかもその多くが連日に渡る軍隊のトレーニングや、マラソン・トライアスロンと言ったultra-distanceの4時間以上動き続けるようなイベントで起こるEAHの心配をするよりも、肌を刺すような日差しの真夏のテキサスで、毎日ばったばった多数の死人が出る脱水の方を気にするべきは、土地柄、統計的にも当たり前のように思います。しかも、私の担当スポーツは、比較的室温のコントロールされた室内で行うバスケットボールですもん。練習も、長くて2時間半。EAHのリスクは恐らくとんでもなく低いはず。

選手が例えば摂食障害(i.e. Anorexia)等があってまともに食事を摂っていない、もしくは、一時的な風邪で嘔吐・下痢が続いて体内のナトリウム濃度がそもそも低下している場合は、EAHの可能性を頭に留めておいて、選手の体調と相談しながら運動を許可、ということにはなるでしょうけれども。個人的にはこれを怖がりすぎて、aggressiveな水分補給をしなくなることのほうが怖いのではと思います。
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だって、アメリカの典型的な食事(↑)を毎日摂っていて、塩分が足らない、なんてこと、そうそうないと思うんです。

ただ。万が一EAHだった場合、今回初めて知ったのが、
EAHの症状は何ら特別なものではなく、言ってしまうと脱水の症状にも酷似している。だからこそ、ひとつ怖いのが、脱水と勘違いして、EAHの患者に水やスポーツドリンクを飲ませると、ナトリウム濃度はますます下がり、悪化してしまうので絶対にしてはいけない。というところ。
食事をちゃんと摂っていない、4時間以上の運動をしていて、水分はごくごく率先して十分に補給していた、等の印象があれば、それは重要なred flag。焦って更に水分を飲ませるよりも、まずはSodium levelを確認することが先。…というのは、これからも頭の片隅に留めながら仕事していきたいな。

いやーー、勉強になった。しかし。思いがけず時間を使ってしまったな(苦笑)。

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ちなみに。
NATAのPosition Statementはこちらから一覧することができ、PowerPointもArticleも原本を誰もが無料で閲覧することが可能です。(NATAのMembershipを持っていない方も含めて、です)日本のスポーツ医学界で活躍されている方、興味のあるトピックがありましたら、是非お時間を使って読んでみることをオススメします!

さらにちなみにちなみに。
Fluid ReplacementのPosition Statementは2000年に発表された比較的古いものであり、現在最新のPosition Statementの準備が着々と進められています。また、変わる内容も多々あるかもしれません。EAHについての記述も増えたりして?
新しいFluid Replacement Position Statementの傾向に関しては、去年のNOLAのコンベンションで触れられた点について、過去にまとめたものがあります。こちらも宜しければ是非!

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  by supersy | 2012-06-13 20:00 | Athletic Training | Comments(5)

夏学期。

先週から、夏学期が始まっています。

アメリカでは、夏の間にoptionalの学期があり、
「履修したい生徒は」授業を履修することができます。
もちろん、オファーされている授業に限りは在り、あとは、短い期間内(約一ヶ月)で通常の学期(約3ヶ月半)と同じだけの内容をカバーしなければいけないので、ほぼ毎日授業、しかも授業時間も長かったりと、短期集中の授業になりますが、そういうのが好きな生徒もいますしね。

私はというと、アスレティックトレーナーとしては12ヶ月契約なので、休みなく働き続けなければいけないんですが、教師としては9ヶ月契約(8月~5月)なので、夏の間に教育義務はありません。
なので、労働時間も半分になって、ゆっくりとした夏を過ごせる…はすでした。
「Sy、夏の間もお給料キープしたいし、教えたいでしょ?授業教えられるようにリクエストしといたから」と、心遣いか嫌がらせなのか分からない上司の”アドバイス"をもらったのが2ヶ月ほど前。
お陰様で、この夏はSummer IもIIもWeight Trainingの授業を教えることになっちゃいました。
ATとしてS&Cを教えるということに対して思うことは山のようにありますが(苦笑)、
そこらへんは忘れることにして、一日一時間、一般の学生相手に筋トレなんかを教えています。

ま、個人的に好きじゃない科目でも、教えることで何か学ぶことがあるだろう、
とポジティブに考えていたんですけどねぇ…。あんまり、ありませんねぇ…。
こういう風に時間を使うなら、好きな論文を読んでいたほうが有意義だなぁ、と思うので、
来年からは、もう教えないかも知れません。今年履修している学生諸君、レアですよ(笑)。

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それに加えて、先週と今週いっぱいは、これまた予想外の仕事に巻き込まれています。
小学生対象(6月4~7日)と、中・高生対象(6月11~14日)の
女子バスケットボールのキャンプのカバー(アメリカでは、大学のチームが夏季にこうした小中高生を対象にキャンプを開催するのが通例。彼らにとっては大学生からスキルを習う良い機会、大学にとってはこれが大きなfund raiser=資金集めになります)。
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こういったのは、普通卒業したてのSeniorやGAとかがやる仕事なのですが…
一般的に時給も悪くないし、小金も稼げるので結構皆喜んで飛びつく…と思っていたけど、
聞いてみても予定が合わなかったり、certificationが予定通りに送られて来なかったりで、
結局対象者無し。仕方ないかぁ、と私がカバーすることになったのですが、
これ、まぁ何と言うか、Full-timeのATCがやる仕事じゃないわ、というのが正直な感想です。
子供たち、とってもとっても可愛いけど、転んで膝打って10分間泣き止まない小学3年生の面倒とか、ぶっちゃけ見てる暇がないのよね…。一日朝8時~夕方4時の8時間をがっつり取られるし、自分の仕事ははかどらないしでやることは溜まる一方。泣きたいのはこっちのほうだわさ!
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まぁしかし幸いなことに派手な怪我は今のところ全く無く、
小学生対象のキャンプでは突き指がものすごく多かったくらい。
普通、突き指のテーピング時は、1.5インチのホワイトテープを半分に割いてよく使うのですが、
彼らの指がちっちゃすぎて、1/4に切らなきゃいかんかったっすよ!
こんな子らがぱたぱた走り回ってるものだから、見ていて飽きなかったですけどね。
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ちなみに、キャンプ中、参加者スタッフ共に無料支給されるお昼ごはんはこれ(↑)。
ピザに水。希望者は、チップスとかチョコバーとかも追加で有料購入可能。ジャマイカ人のLaToyaと、「運動させてピザ食わせて。変な国だねぇアメリカは」とぼやいていましたとさ。
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  by supersy | 2012-06-12 16:30 | Athletic Training | Comments(4)

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