カテゴリ:Athletic Training( 407 )

 

脳震盪の鑑別診断。

今週はふたつの異なる授業で「脳震盪の診断」について話す機会がありました。ひとつはAT学生3年生の上肢評価の授業(頭部外傷の章)で、もうひとつはAT学生4年生の一般医療の授業(神経疾患の章)で、です。異なるレベルの学生が相手でしたが、脳震盪の基礎知識を共有したあとでこんな質問をぶつけてみました。
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「脳震盪で起こり得る諸症状、挙げてみて?」

意識障害、記憶障害、睡眠障害、人格障害、視覚障害、頭痛、眩暈やふらつき、吐き気、光や騒音に対する過敏性、耳鳴り、集中力や反応時間の低下、倦怠感、混乱、イライラ、落ち着きがない、理由もなく悲しい…さすがにこの辺りは生徒を指していくと次々と出ます。これらを全てボードに書き上げます。
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「脳震盪とヒトクチに言っても症状は実に多岐に渡るよね。それじゃあ、この中でも特によく見られるものって何か知ってる?」

色々と推測を飛ばす学生。「頭痛?」と言う子がいたので、「大当たり!頭痛は脳震盪の9割超…数字にすると93%だったかな、94%くらいだったかな、それくらいのほとんどの場合に見られるという統計が出てる。1 これが第一位。じゃー第二位は?」
「吐き気?」という声が聞こえるも「これは思ったより少なくてね、3割くらいと言われてる。二位は実は…」「眩暈?」「その通り!眩暈とかふらつきなんだよね、これは全体の75%くらいかな。それでね、3位が集中力の低下。これは60%いかないくらいだったと思うよ1

「じゃあ記憶障害とか、意識障害は?どのくらいの頻度で見られるものだと思う?」

あんまりないと思う、と答える学生たち。「そうなんだよね、脳震盪といえば『ココハドコワタシハダレ』みたいな印象がある一般の人って少なくないんだけどさ、健忘症(Amnesia)は全体の25%以下くらいにしか見られないと言われていて、それから意識消失(LOC)に至っては10%以下…5%以下という統計もあるね。1 まあ、意識消失も例えば5秒以下とかの極短期のものだったらそもそも我々ですら確認が取れない可能性が高いわな。駆けつける頃にはもう意識取り戻してるかもしれないから。あんまりこればっかりに頼るのもよくないけど、脳震盪の諸症状の中でもどれがより一般的で、どれが珍しめなのかは何となく知っておくといいよ」

「じゃあ、ちょっと違う視点からこれを見てみよう。これらの症状を引き起こすような、脳震盪以外の障害や病気…つまり、鑑別診断(DDx)には何があるかな?」

うーん?と首を捻る学生たち。

「言い方を変えるね。『頭が痛い』『眩暈がする』…ここに書き上げたような主訴で来た患者さんに、君たちは他にどんな可能性を考える?脳震盪じゃないとしたら?」

ここは面白いくらい学年差が出ました。3年生は頑張って「労作性熱中症・熱疲労、脱水症、低血糖症、脳卒中、硬膜外・下血腫、頭蓋・顔面骨折、睡眠不足や不規則な生活による過労、一般的な風邪 (URI)、偏頭痛、軽度の頭部打撲」くらいでしたが、4年生はこれに加えて「アブサンス発作やfocal seizureなども含む広い意味でのseizure、内耳炎などの耳の障害、糖尿病合併症、カフェインの過剰摂取/離脱症、ドラッグやアルコール乱用/離脱症、鬱・パニック障害や過呼吸などの精神疾患、貧血などによる慢性疲労、労作性低ナトリウム血症」なんかも出てきます。なかなか厚みのある、いいリストです。これも全部「脳震盪の諸症状」の横に書き上げます。

「うわー、いっぱい挙がったね。じゃあ、患者さんが『頭が痛いです』『なんだかだるくてしんどいです』とやってきました。これだけの可能性があります。どうやって絞る?問診するなら、何を聞きたい?○○を除外するために△△と聞きたいです、ってな感じで教えてよ」

これにも色々な回答が飛び交います。「えーと、脱水とか不規則な食生活をしてないか見るために、『今日のお昼ご飯食べた』とか?」という学生いるので、「そうだね、でも決して適切な食事でなくても本人がそれすら認識できてなければ『一応腹に何かは入れた』ってことで『うん』と答えられてしまう場合があるし、単純に食べてなくても怒られたくなくて『うん』とウソをつく可能性もないわけじゃない。もうちょっと別の、もう少し工夫した聞き方ないかしら?こう、もっともっと答えを引き出すような?」と尋ねると「『お昼ご飯に何を食べた、飲んだ?』ですか?」という学生。「そうだね、質問をopen-endedにして、具体的なメニューを言わせた方がいいよね。お昼ご飯だけじゃなくて、今日の食事を朝から全部言ってもらったっていい。ついでにカフェインの摂取についても聞けるし、これで健忘症の検査も同時にできちゃうね(笑)。しかし、脱水についてはもうちょっと聞きたいな…水分をどれだけ取ったか以外に、体の脱水状態を見られるような指針になるものあるかな?」「尿の色?」
b0112009_13203058.png「おおいいね!私だったら『最後にトイレに行ったのいつ?そのとき尿の色はどんなだった?』と聞きたいね。トイレに行ったのが2時間以内だとなお良い。ちなみに、どんな色が適切なんだっけ?」学生は揃って「clear」と声を上げますが「clearじゃ選手はイメージしにくいかもしれないな、透明ってこと?水みたいな?」とさらにつっこむと、「そうじゃなくてー、ちょっと黄色くてー」というふわふわした返事。「選手でもわかりやすい例えを使ってくれると助かるな。選手は君たちのようにこの尿のカラーチャートを記憶してるわけじゃないからさ。同じ色をイメージしてることを確認したいじゃない。例えば、レモネード色はどう?」「レモネード色はOK!」「だね、ピンクレモネードじゃない限りはね。じゃあアップルジュール色は?」「それはダメ!」「脱水状態だね。茶色でどす黒かったりなんかだったりしたらもっとダメだ、そんなんだったら横紋筋融解症かもしらん。こういう風に、選手が反応しやすい言葉を選んで質問するのもテクニックのひとつだね」

「偏頭痛とか糖尿病合併症かどうかの可能性を探るのには何を聞く?」「既往歴を聞けば…既に診断された病歴や、以前に同じような経験をしたことがあるかどうかとか…」「そうそう、ここは深く考えず聞いちゃえばいい。とくに偏頭痛なんか、『偏頭痛持ちなの?普段の頭痛と比べてどう?』ってね」「外傷(trauma)かそうでないか(nontraumatic)を判断するのに、MOIというか…どう症状が始まったかも聞く必要がありますよね?」「もちろん!このとき、『頭をぶつけなかった?』と質問するのはどうかな、良い?悪い?」「頭部をぶつけなくても脳震盪が起こることを考えればいいとは言えないのかと…」「そうだね、別にこう聞いても悪くないけど、『いいえ』と返答されたときに、『それじゃあ首や肩、胸や腰にタックルを受けたり?』と他の部位にも質問を広げる必要もあるね。あとはね、本当に脳震盪だったらどう始まったなんて覚えてない可能性もあるよね?珍しいとはいえ、健忘症があったらさ?『よくわからない、覚えてない…』と言われる覚悟も持っておくようにね。高校アメフト選手に呆れたように、『さゆり…タックルなんて毎プレー受けてるからそんなの分からないよ』と言われたこともあったな。この手の質問は答えがYesなら外傷疑いが強まるけど、No/I don't knowだからといって除外はできないことを肝に銘じておいてね」

「あとは脳震盪よりももっと深刻なものもまず除外しなきゃいけないね。この中で命に関わり得る外傷は?」「脳卒中、硬膜下・外血腫と頭蓋・顔面骨折」「正解!脳卒中も年齢を考えればゼロじゃない、若年層の脳卒中の原因一位は頭部外傷による二次的なものだから。脳卒中だったら、どんな症状が他に見られる?」「顔がdroopしたり、しゃべりがもたついたり、片腕が下がってきたり(バレー徴候)…」「そうだね、そこらへんは検査方法を君たちはもう知っているね。硬膜下・外血腫の話も前回した…これらは症状の出方に特徴があるんだったよね。前者は静脈からの出血で下手すると数日・数週間かけてじわじわ悪化、後者は動脈からの出血でより進行が早く、lucid intervalを挟んで一気に悪化。CNテストも異常が見られる可能性が高い。そいじゃあ、頭蓋や顔面の骨折は?何か見つけられるようなサインなんかある?」「触診による圧痛や、crepitusが確認できるかも…」「そうだね、あと、見てわかるサインなんかは?」「Battle's signにRaccoon Eye」「いいねいいね!あと何かが漏れちゃったりとか?」「Halo sign!」「そのとおり!ということはどういうことかわかる?君たちが積極的に耳や耳の裏、鼻なんかを見にいく必要があるってことだよ。Halo signが天から降ってくるのを待ってちゃダメだ、見に行くのは君たちだからね、能動的にね!」
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こんな風に鑑別診断のひとつひとつの可能性のつぶし方を話し合い、検討し、その上で「じゃーこの中から何かひとつ選んで、シナリオを作り上げて!どういう症状で、どういう既往歴で、どういうcomplaintで…ちょっと練りこんで考えてみて。それから、人格もつくりあげてportraitの仕方を考えて!プレーしたくてたまらないアメフト選手(ウソつきがちかも?)とか、とにかく倦怠感で受け答えがゆっくりな患者さんとか…。できた?できたら、パートナー組んで、評価の練習!」…ということで、あとはひたすら練習です。どういう目的をもち、何を聞き、何を探し、何を引き出し、それらをどう並べ、意味を持たせるのか。ここまでいけば練習を繰り返すしかありません。シナリオを作り上げるのも、勉強の一環になる…と私は願っています。そんなわけで、今週はこんな練習ばっかりしてました。演技派の学生もいっぱいいて、見ていて楽しいです(笑)。

各授業の最後に学生に強調したのは…「脳震盪だと分かった前提ありきの脳震盪診断なんて誰だってできる。問題は脳震盪だかなんだか分からない怪しい主訴の患者さんが来た時に、このDDxのリストを頭にぱぱっと並べてさ、効率よく除外していけるのかっていうのが本当に難しいところだし、醍醐味かななんて思うんだよね」
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「あとね、もうひとつ最後のカーブボールを投げるよ。脳震盪患者の主訴がいつも脳震盪関連の症状だとは限らない。本当に難しいのは他に見た目に明らかな怪我がある場合だ。例えば顎関節脱臼の患者さんが脳震盪も受傷していたとか、眼底骨折の患者さんが脳震盪を…とか、歯の脱臼の患者さんが…とか…。こういう風に見た目が派手な怪我は、こっちも「あっ」となって注意力を全部そっちに持っていかれちゃうことも珍しくない。だから私いつも言うでしょ?"Do you have any pain anywhere else (主訴以外のどこか身体の他の部位に痛みはありませんか)?"って絶対聞けって。こういう目を奪われる鮮やかな怪我があるときにこそ、『もしかしたら脳震盪受傷しているのでは?』と考え、しっかり除外(もしくはもちろんしっかりと確定)できる能力を持つことが大事だよ」

「さゆりはDDxにうるさい」とは今ではすっかり学生の間では知られたことですが、私は「他の可能性」を考えられる能力、そしてそれらの可能性を潰すのが上手いかどうかがかなり現場での実力に繋がると思っています。最終診断は△△です!と学生がつけた名前が仮に正しくても、「○○の可能性は考えた?」の答えがNoだったら、私の立場からすればそれは完璧な診断ではないと思うからです。最短で最長の遠回りを。ここらへんがOrthopaedic injuryの診断の奥が深いところですかね…。

1. Meeham MP, d’Hemecourt P, Comstock RD. High school concussions in the 2008-2009 academic year: mechanism, symptoms, and management. Am J Sports Med. 2010;38(12):2405-2409.

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  by supersy | 2016-09-21 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

「脳震盪受傷後に休息しても意味はない」論を考える。

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月刊トレーニング・ジャーナル10月号が発売になっています!
連載5回目の今回は「医療最前線だからこそ求められる救急力」という前回からのテーマを引き継ぎ、『急性頚椎損傷疑い』を米国ではATがどう判断しどう処置を施すのかという具体的な手順と手法に焦点を置いています。最新のPosition Statementに書いてあることはもちろん、未来のそれに含まれるであろう変更点についてもまとめました。いつもは難産ですが、これは筆の走りが良かった回です(笑)。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



さて。
キレイなもの、美しいもの、好ましいものを見せられて「素晴らしい!」というのは簡単ですが、見たくないものを目の前に出された時にヒトの本性が出るんじゃないかななんて思うんですよね。貴方はそれを直視し、冷静に見定められますか?こっそりと見なかったことにしますか?それとも感情的になって「こんなものはデタラメだ、嘘っぱちだ、認めない」と叫びますか?
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研究や論文の世界…つまりエビデンスの世界でもひとつのことに対してふたつの食い違う見解が出てくることはよくあります。例えば前回は「脳震盪受傷直後に、いかに速やかに運動を中止し、休息することが大事か」という論文を紹介しましたが、そしてそれを読んだ多くの人がその結論を「好ましい」と感じ、900を超えるFacebookの "Share"や "Like"をしてくださった訳ですが、今回は前回同様最新の、しかしこんなタイトルの論文を紹介したいと思います。1「脳震盪後、急性期の精神的・肉体的休息は回復を早めないかもしれない」―つまり、前回の論文と真逆の響きです。

この研究は脳震盪受傷後翌日丸一日(24時間)に、「徹底的な肉体的・精神的休息」を強制させた患者("Rest"組)25人と、そうでない患者("No Rest"組)25人の回復を調べたもの。症状が完全消失までにかかった日数、神経認知テスト (CNT)、バランステスト (BESS)、SACがBaseline値に戻るまでの日数、と競技復帰に向けた運動開始までにかかった日数を比較すると、CNT、BESS、SAC値回復と運動開始までの日数はグループ間に差は無かったものの(p > 0.183)、症状消失までにかかった日数はなんとRest組のほうが悪いという結果に(5.2 ± 2.9 vs 3.9 ± 1.9日, p = 0.047)。

この研究では「Rest組の患者は(受傷当日と翌日の合計で)平均約40時間ほど休息をしていたわけであるが、この比較から、急性期の肉体的・精神的休息は脳震盪の回復を早めないどころか、症状の消失を1.3日ほど遅らせる可能性があると言える」…という結論が出されています。休息が悪影響を及ぼす?一つ前のブログ記事とは完全に矛盾する内容のように思えます。では、我々はこの結果をどう受け止めればいいのでしょう。
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この結果を鵜呑みにすることも、拒絶することもできます…が、私が思うに、真のクリニシャンがすべきはそのどちらでもありません。真のEvidence-Based Practitionerが持つべきは「Be open-minded and skeptical (受け入れろ、しかし疑え)」というマインドセット。「真実」に近づくためには、より多角的にモノを見つめる必要があります(上図: 「これは丸だ」「いや四角だ」と、一見食い違うように見える意見も、本当はどちらもその角度から見たものとしては正しくて、複数の意見を合わせた「円柱」こそが真実なのかもしれません。どちらかの意見に捕らわれすぎていては永遠に真実は見えてきません)。受け入れろ、しかし疑え―今回もするべきは同じだと私は考えます。「ふむふむ、キミの見方、考え方は面白いねぇ」とその切り口に敬意を払い、感謝をしつつ、「でもじゃあまぁ、キミの疑わしいところをまず洗ってみようか」と冷静にざっくりと見定める必要があるということです。ではこの研究の「疑わしいところ」とはなんでしょう?

●Odd Study Design and Potential Selection Bias
この研究のデザインは実に妙です。分類するならRetrospective (後ろ向き)とProspective (前向き) study(研究)の合いの子といったところでしょうか。というのも、これは論文冒頭にも書かれている通り、事前に計画されたわけではなく、偶発的に生まれた研究だからなのです。元々何らかの脳震盪研究をしていた真っ最中に、たまたま脳震盪からの競技復帰(RTP)に対するポリシーの変更が決定し、「じゃあ、前後で回復の早さを比べちゃえ」ともうひとつエクストラの研究(今回の論文)をひねり出したわけ。なので、ポリシー変更前の脳震盪患者25人が「No Rest組」でどちらかというとRetrospective(=取っておいたデータを急きょこの論文を書くのに使うことにした)のに対して、変更後の25人が「Rest組」でProspective(=この研究をすると分かった状態で新たにデータを取った)なんですよ。グループ分けがランダムではなく時間軸で分けられており、加えてよく読むと「consecutive(連続した)」という表記もないので、「RTPポリシー変更直前に脳震盪受傷した連続した25人と直後に受傷した連続25人(下図、例1)」ではなく、「RTPポリシーを変更する前に脳震盪受傷した25人と変更後に受傷した25人(下図、例2)」を使った可能性が高いです。ニュアンスの違いがわかりますか?後者は格段に研究者が使用するデータを作為的に選んだ可能性が高まります。使用するデータを研究者が作為的に選んだのだとしたら、この研究結果には研究者のバイアスが色濃く残っているかもしれません。
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●"History" Effect
加えて、RTPポリシー変更が採用された2012年7月という時期も引っかかります。アメリカでは各メディアの報道や各州での脳震盪法令の制定に伴って、脳震盪に関する世間の知識と意識はここ数年で劇的に変化しつつあります(今では「CTE」という言葉を理解するアメリカの一般の方も多いんじゃないでしょうか)。この「意識改革」の真っ只中にいたであろう被験者たちが、たまたま2012年7月より前には脳震盪の影響を軽視して復帰したいがために「もう症状はない」とウソをついていた可能性 、そして2012年7月以降は脳震盪の深刻さを実感する被験者が増え、「実はまだ頭が痛む」などとより正直に報告するようになった可能性というのは十分にあります。研究者の意図しないところで、時代そのものの変化の影響を受けた可能性があるわけです。これはちなみにHistory Effectと呼ばれ、研究の妥当性を下げる要素としてよく知られています。
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●グループ間のDemographicの差
これは論文内のTable 1で性別、年齢、身長・体重や過去の脳震盪受傷数などに関して「グループ間の差は無かった、p > 0.05でした」という報告がありますが、私個人としてはきちんとp valueをそれぞれの項目に対して見せてほしいです。例えば、p = 0.055だったら統計学的に有意な差まではいかなくても十分に影響を与えうるトレンドがあった可能性もあります。少なくとも、男女差はかなりあるように見えるので(Rest組は男18/女7、No Rest組は男13/女12)、実際に数値を表記してくれないなんて、何か後ろめたいことでもあるの?と意地の悪い私なんかは疑りたくなってしまうわけです。

●実際のRest組とNo-Rest組のアクティビティー
もうちょっと詳しく解説したいのが両グループのアクティビティー制限です。
1) Rest組: 受傷当日はもちろん、翌日丸々、コーチと連絡を取り、一切のチーム・個人練習や筋トレ、他の怪我の治療も禁止。Student Disability Service Officeの協力も得て授業には参加させないのはもちろん、チームミーティング、スタディーホール、課題やテスト勉強も禁止するという徹底っぷり。テレビやパソコン、携帯電話の使用も「やりすぎないよう」患者に直接指導したそう。しかし、この24時間研究者が実際に監視を行っていたわけではなく、患者がこの「指導」に従ったかどうかは直接患者に「実際のところはどうだったの」とself-reportする形でのみ確認を取っています。患者がウソをついた可能性が十分に考えられるのと、それよりももっと大きな問題なのはこれをデータ化して結果として報告してないことですかね。もし患者が「いやー、休めとは言われたけど一日中ゲームしてましたわ」とか「結局宿題ちょっとやっちゃいました」とか正直に報告していたとしても我々読者はそれを知る余地もないのですから。
2) No Rest組: 2012年7月以前の25人は学業に関する制限はなく、むしろ授業はなるべく休まないように指導していた("absence is strongly discouraged")という記述が確認できます。肉体面は、チームとの運動は症状がなくなるまで再会してはいけないという制限は当時もあった一方で、私生活での運動やADLには特に制限を設けなかったそう。なるほど。これもRest組との「指導」の違いは理解できますが、こちらのほうがより不明瞭なアドバイスで、「学校にはなるべく行くように」と「指導」されていた患者が実際に学校をサボって一日休んでいた可能性も確認できませんよね。self-reportで確認もしなかったわけですから、選手が実際受傷翌日に何をしていたかのデータは一切存在しません。「体調と相談して」と言われたら休みたくなり、「絶対に学校に行ってはダメ」と言われたら行きたくなるのが、人間の性じゃありませんか?私だけ?
そんなわけで、グループ・アサインメントが実際のアクティビティー・レベルを示唆していない可能性がまだまだ強く残っている以上、この研究の結果は慎重に読み取るべきだと私は考えます。第三者の監視役にActivity Logをつけてもらうとか、最近ではAccelerometer(加速度計)やPedometers(歩数計)、Activity-Tracking Phone Appsなど様々なテクノロジーがあるわけですから、こういったものも併用しながらより客観的に患者のCompliance Rateを表記するべきだと思います。

●Statistical Analysis
あとは私が個人的に数字のデータが好きなので、95%CIの報告がない、Effect Sizeの報告がないことは評価を下げざるを得ませんね。被験者の数が各グループに25人というこのグループサイズもPower Analysisで定められた最低数に基づくものではないようですし、この研究で出たPoint valueはPoint valueでともかくとして、統計的に十分なパワーがあったのかなかったのか分からない状態ではどんな結論も出せません。

さて、それでは私がこの研究を受け入れ、疑った結果は「上記したような問題点が改善された研究を見てみないと最終的な結論は出せない。が、他に急性期の休息が効果がなかったとする論文(こちらは受傷後5日間のStrict Rest)2が出ていることも考慮すれば、やはり『休めばいいというものではない』という最近のトレンドを支持する研究は増えてきている6-8」という結論です。現時点で私は「受傷翌日の休息は有害である」というのはOverstatementだと思わざるを得ませんし、各団体のPosition Statement/Consensus Statement3-5がまだ受傷後24-48時間ほどの急性期の休息を推奨している以上、この研究結果だけを受けて急性期対応を変えるわけにもいきません。…が、しかし、脳震盪のリハビリとして運動が効果があるのではないかと言う声が徐々に大きくなってきているように、「やりすぎず、やらなすぎない」絶妙にコントロールされた肉体的・精神的ストレスはむしろ回復を早めるのではというエビデンスも次から次へと出てきています。私の勝手な見立てでは、この「程よいストレス」という理念が現在の「休息」一辺倒のガイドラインをいずれ取って代わるでしょう。これからも目を離せない分野です。

卑怯な言い方かもしれませんが、この記事が前回と比べていくつくらいのFacebookの "Share"や"Like"がつくのか個人的に興味があります…。恐らくタイトルがそれでも好ましくないという理由で、前回の1/9もいかない(つまり100以下)だろうというのが私の勝手な予想です。

1. Buckley TA, Munkasy BA, Clouse BP. Acute cognitive and physical rest may not improve concussion recovery time. J Head Trauma Rehabil. 2016;31(4):233-241. doi: 10.1097/HTR.0000000000000165.
2. Thomas DG, Apps JN, Hoffmann RG, McCrea M, Hammeke T. Benefits of strict rest after acute concussion: a randomized controlled trial. Pediatrics. 2015;135(2):213-223. doi: 10.1542/peds.2014-0966.
3. Giza CC, Kutcher JS, Ashwal S, et al. Summary of evidence-based guideline update: evaluation and management of concussion in sports. Report of the guideline development subcommittee of the american academy of neurology. Neurology. 2013;80(24):2250-2257. doi: 10.1212/WNL.0b013e31828d57dd.NATA.
4. Broglio SP, Cantu RC, Gioia GA, et al. National athletic trainers’ association position statement: management of sport concussion. J Athl Train. 2014;49(2):245-265. doi:10.4085/1062-6050-49.1.07.
5. McCrory P, Meeuwisse W, Aubry M, et al. Consensus statement on concussion in sport-the 4th international conference on concussion in sport held in Zurich, November 2012. Clin J Sport Med. 2013;23(2):89-117. doi:10.1097/JSM.0b013e31828b67cf.
6. Gibson S, Nigrovic LE, O'Brien M, Meehan WP. The effect of recommending cognitive rest on recovery from sport-related concussion. Brain Inj. 2013;27(7-8):839-842. doi: 10.3109/02699052.2013.775494.
7. Majerske CW, Mihalik JP, Ren D, et al. Concussion in sports: postconcussive activity levels, symptoms, and neurocognitive performance. J Athl Train. 2008;43(3):265-74. doi:10.4085/1062-6050-43.3.265.6.
8. Silverberg ND, Iverson GL. Is rest after concussion "the best medicine?": recommendations for activity resumption following concussion in athletes, civilians, and military service members. J Head Trauma Rehabil. 2013;28:250-259.

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  by supersy | 2016-09-11 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

脳震盪受傷にすぐ競技中止をしなければいけない理由。

SNSで見かけて、面白そうだったので読んでみました。ほんの3日前に発表になった論文です。忙しくてあまり時間がないので、簡潔にまとめます。
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脳震盪受傷疑いがある場合は直ちにスポーツをやめ、専門のトレーニングを積んだ医療従事者の指示を仰ぐこと…とは様々なガイドラインや米国の州法律で謳われていることですが、1-3 選手自身がその深刻さに気が付いていても4 やはりその3割程はまだ報告義務を怠り、5 なんとかプレーを続けようとする傾向も根強く見られます。
「もうちょっとだけならいいんじゃないか…」「この試合終わってから報告するから…」という甘い考えを改めさせられるのがこの記事。6 脳震盪を受傷したならSecond Impact Syndrome/Diffused Cerebral Swellingの危険性を回避するために即刻プレー中止すべきである、というのももちろんですが、この論文6 によれば脳震盪を受傷後にプレーを続けた患者は即座にプレーを中止した患者に比べて脳震盪からの回復が倍以上もかかったというのだから驚きです。69人の脳震盪患者(年齢12-19歳)に「受傷後プレーをすぐ辞めたか、続けたか」を聞き、その回復を追った、というこの研究では、「受傷後もプレーを続けた」と回答したPlayed組(n = 34, 49.3%)が、「すぐに中止した」と答えたRemoved組(n = 35, 50.7%)と比較して、来院時の言語記憶、視覚記憶、情報処理能力、反応速度の全てにおいて著しく劣っており(p ≦ 0.002)、完全競技復帰までにかかった時間も44.4 ± 36.0日 vs 22.0 ± 18.7日 (d = 0.80, p = 0.003)と格段に長くなっている様子が報告されています。脳震盪界では21日以上かかっても回復しない患者を時折「Protracted recovery (長引いている)」とカテゴリー分けしたりしますが、この研究の統計によれば受傷後プレーを続けた場合、回復が「長引く(≧21日)」可能性が8.8倍高くなるそうです。

この実験の被験者が総じて若いことは特筆されるべきかと思いますが(子供の脳震盪からの回復は成人より遅いことが知られています。故に、この結果がそのまま成人に当てはまるかは少し疑問が残ります。同様の研究を是非プロや大学選手でもやってほしい)、「このプレーだけやらせて!そしたら引っ込むから!」などとbargainしようとする選手に「『あとワンプレー』で回復にかかる時間が倍になるんだよ。2-3週間をフイにするほどの価値が本当にある?」と返せる、切り札になる非常に重要な研究だなと思います。あとはこの研究と「回復が『長引いている』脳震盪患者には運動」というコンセプトを組み合わせれば、「脳震盪受傷後にプレーを続けた選手は来院時点で『high risk』患者と認定し、直ちにExercise Protocolを始める」みたいな新しいガイドラインも生まれそうな気もしてます。続報を待ちます…。わくわく…。

1. Broglio SP, Cantu RC, Gioia GA, et al. National athletic trainers’ association position statement: management of sport concussion. J Athl Train. 2014;49(2):245-265. doi:10.4085/1062-6050-49.1.07.
2. McCrory P, Meeuwisse W, Aubry M, et al. Consensus statement on concussion in sport-the 4th international conference on concussion in sport held in Zurich, November 2012. Clin J Sport Med. 2013;23(2)89-117. doi:10.1097/JSM.0b013e31828b67cf.
3. Giza CC, Kutcher JS, Ashwal S, et al. Summary of evidence-based guideline update: evaluation and management of concussion in sports. Report of the guideline development subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology. 2013;80(24):2250-2257. doi: 10.1212/WNL.0b013e31828d57dd.
4. Chrisman SP, Quitiquit C, Rivara FP. Qualitative study of barriers to concussive symptom reporting in high school athletics. J Adolesc Health. 2013;52(3):330-335.e3. doi: 10.1016/j.jadohealth.2012.10.271.
5. LaRoche AA, Nelson LD, Connelly PK, Walter KD, McCrea MA. Sport-related concussion reporting and state legislative effects. Clin J Sport Med. 2016;26(1):33-39. doi: 10.1097/JSM.0000000000000192.
6. Elbin RJ, Sufrinko A, Schatz P, et al. Removal from play after concussion and recovery time [published online August 29, 2016]. Pediatrics. 2016. pii: e20160910.

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  by supersy | 2016-09-01 07:00 | Athletic Training | Comments(0)

不要な筋抑制を取り除け!最新エビデンスの示す最も有効なAMI治療、Disinhibitory Interventionとは?

AMIの知識をアップデートしようと思って下のSystematic Review1を読んでました。面白かったのでめもめも。ちなみにこの記事は無料公開されているので誰でも全文読めます。下の参考文献にリンクをぺたりと貼っておきますので興味のある方はどうぞ。
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1965年から2012年までに発表された大腿四頭筋の活性化に関する論文をまとめたこのReview、条件を満たした10件の論文を最終的にincludeしていますが、実験対象は健康な被験者からKnee OA、膝の人工関節手術後にPFPS、Meniscusまで様々です。比較対象(control)としてAMI患者との対比目的で健康な被験者を使っているならともかく、AMIのない健康な被験者のみを使った研究も含まれているのは個人的には少し納得が行きません。あくまで大腿四頭筋に抑制がかかっていることを前提とした研究のみをreviewすべきと思うのですが(じゃないとdisinhibitoryという言葉そのものが成り立たなくなりやしませんか?)…私がこのReviewを行ったわけではないので、まあここは仕方ないですね。

さて、読み進めてみると知らないことがいっぱいだったので驚きました!私の知識は2002年発表のHopkins氏らの論文2あたりで止まっていたようで、今日の今日まで1) AMIに最適な物理療法はCryotherapy。20分のアイシングでdisinhibitory効果が40分は持続する。2) 30分のTENSも同様のdisinhibitory効果が見られるが、電流を流し終えたとたんにその効果も消えてしまう。TENSをしたまま運動をさせることは現実的に考えて簡単ではなく、故にDisinhibitory InterventionとしてのTENSは実用性に欠ける…と理解していました。前回ブログにまとめた内容そのままですね。しかしよくこのReviewと、それからReviewに含まれる個々の論文も読んでみると、どうやらこの論文(↓Pietrosimone et al, 20093)あたりで「TENSのほうがCryotherapyよりも効果が高いのではないか」という研究結果が出始めて、結論がひっくり返った様子ですね。知らんかった!
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Pietrosimone氏らのこの研究2では33人の膝OA患者をランダムに 1) 20分間座っているだけ(Control); 2) 20分間の膝周りのアイシング (Cryotherapy); 3) 45分間のTENS治療 (TENS)の3組に分け、それぞれの治療を施した後に大腿四頭筋の活性度を検証。結果だけざっと紹介してしまうと、こんな感じ(↓)。
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この研究で大腿四頭筋の活性度を示すのに使われたのがCentral Activation Ratio (CAR)というコンセプトですが、このCARのベースラインからの変化をパーセンテージで表したものが上のグラフです(+の変化が改善、-が悪化を意味します)。見ての通り、より+の、高い数値をたたき出したのはTENS。著者らの「CryotherapyのほうがTENSよりも効果が高いだろう」という仮説に反して、「Disinhibitory効果はTENSのほうがより長く強く続いた」という結果が出たのです。Controlと比較して、TENSは20、30、45分後全てのタイムポイントで、Cryotherapyは20分後のみに統計的に有意な差が認められました。Effect sizeはTENSは3つ全てのタイムポイントで"strong"だったのに対し、Cryotherapyは20分後と45分後が"strong," で30分後は"moderate"。つまるところ、膝OA患者により程度の高い大腿四頭筋の活性化を促したいならば何もしないよりも、アイシングを20分するよりも、TENSを45分使った方が効果が高い、という結論が出たわけです。

これを踏まえて一番最初のSystematic Review1に戻りますが、こちらでも最終的な結論は:

●20分間のCryotherapyをしたのちのdisinhibitory効果は最低でも45分間は持続するようである。Effect sizeは時間と共に増加する傾向にあり、30分後でCohen d=0.46 (moderate)ほどなのが45分後にはCohen d=0.76 (large), 95%CI -0.13 ~ 1.59まで上がる。しかし、見ての通り95%CI幅は広くゼロを挟んでいる

●45分間のTENSは、治療後20分後は小さな(small)効果しか認められないが(Cohen d=0.38, 95%CI -0.52 ~ 1.25)、30分後には"moderate"(0.63, 95%CI -0.30 ~ 1.50)、45分後には"large" (1.03, 95%CI 0.06 ~ 1.92)になり、最終的に95%はゼロを挟まない生の数のみになる。つまり、統計的に良い効果が保証される。

●Lumbopelvic manipulationやPROM、Active Releaseなどの徒手療法は総じてイマイチ。治療直後は効果が少し見られるものの(Cohen d=0.38, 95%CI -0.35 ~ 1.09)、時間と共に効果は薄れ、60分後には消えている(0.18, 95%CI -0.54 ~ 0.89)。95%CI幅はやはり広くゼロを挟んでいる

●4-5人を対象にしたCase Seriesによれば、4 NMESは長期的に使えばそこそこ効果があるようである。 3週間継続して使えばCohen d=1.66 (95%CI 0.10-2.90)、6週間で1.65 (95%CI 0.09-2.89)、3ヶ月で1.71 (95%CI 0.13-2.96)に6ヶ月で1.87 (95%CI 0.24-3.13)とどのタイムポイントでも非常に大きく、決定的な効果が得られるという報告がされている4一方で、効果が無いどころか悪影響(5週間NMES使用で -0.25, 95%CI -0.94 ~ 0.45; 16週間使用で -0.50, 95%CI -1.19 ~ 0.22)があったというRCT研究もあり、矛盾が見られる。長期に渡って使用した場合のみの数字であることを踏まえ、さらにエビデンスのレベルとして信用すべきはRCTのほうと判断すれば、現場で使う臨床的価値には今のところ欠けるか。


…といった感じで、Systematic Review1 の結論としては "The current literature finds TENS to be the most effective intervention in increasing voluntary quadriceps activation because it produced positive homogeneous findings and CIs that did not cross zero (p.418)" ということになるようです。ふぅむー、まだまだ研究が足りないのは考慮するにしても、現時点でのこの結論は納得です。Cryotherapyより今はTENS、なんですね!

しかしこの結果は真摯に受け止めた上で、私はそれでも個人的にCryotherapyをこれからもAMI治療目的で使う可能性は大いに残しておきたいと思います。なぜか?CI幅が広いのはまだ研究が少ないのでこれから狭めていくとして、Cryotherapyのdisinhibitory効果を否定するエビデンスは現時点で存在しないこと、そして今まで出ている研究結果は総じて「効果アリ」であるから、ということと、あとはやっぱり効果の早さですかね。20分のアイシングで得られる効果 vs 45分のTENSで得られる効果、となると、Cryotherapy < TENSだったとしても、その20分という足の速さが魅力的に思える現場の症例も多くあるんじゃないかと思うからです。例えば、患者がリハビリできる時間が45分しかない場合、その45分全てをTENSに使うだけで終わらせてしまうのか、20分Cryotherapy使って、残り25分思いっきり運動させるのかではだいぶ、こう、なんというか、実用性が異なると思いませんか?逆に時間が無限にある場合、Cryotherapyを45分使ったとして、もしかしたらTENS45分を凌ぐほどのDisinhibitory効果が出る可能性もあるのでは?そっちの研究も是非見てみたい…という欲求もムクムク沸いてきますね。TENSが必ず45分でなければいけないのか(もっと短くても同様の効果は認められないのか?)という疑問も生まれます。現時点ではどうやらTENSがベスト、ということを学べたのはとても良かったですが、理想のprotocolを是非これからも皆様に突き詰めて研究し続けていってほしいです。私は数年したらまたこのトピックに戻ってくることにしましょうー。

1. Harkey MS, Gribble PA, Pietrosimone BG. Disinhibitory interventions and voluntary quadriceps activation: a systematic review. J Athl Train. 2014;49(3):411-421. doi: 10.4085/1062-6050-49.1.04.
2. Hopkins J, Ingersoll CD, Edwards J, Klootwyk TE. Cryotherapy and transcutaneous electric neuromuscular stimulation decrease arthrogenic muscle inhibition of the vastus medialis after knee joint effusion. J Athl Train. 2002;37(1):25-31.
3. Pietrosimone BG, Hart JM, Saliba SA, Hertel J, Ingersoll CD. Immediate effects of transcutaneous electrical nerve stimulation and focal knee joint cooling on quadriceps activation. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(6):1175-1181. doi: 10.1249/MSS.0b013e3181982557.
4. Stevens JE, Mizner RL, Snyder-Mackler L. Neuromuscular electrical stimulation for quadriceps muscle strengthening after bilateral total knee arthroplasty: a case series. J Orthop Sports Phys Ther. 2004;34(1):21-29.
5. Palmieri-Smith RM, Thomas AC, Karvonen-Gutierrez C, Sowers M. A clinical trial of neuromuscular electrical stimulation in improving quadriceps muscle strength and activation among women with mild and moderate osteoarthritis. Phys Ther. 2010;90(10):1441-1452. doi: 10.2522/ptj.20090330.

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  by supersy | 2016-08-30 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

電気治療 (TENS): 「鎮痛効果」のみを狙った対処療法に意味はあるのか? と、ネブラスカ出張。

Electrical Stimulation (通称E-stimもしくはStim、電気治療)と言えば、多くの治療家に「意味がない物理療法」の代名詞として使われることが多いように感じます。英語でも「あの人はIce & Stimしかしないからね」という表現は「症状を一時的にマスクする対処療法をするくらいしか能のない、Old Schoolなセラピスト」という意味でよく使われますしね。

私はIce & E-stimのコンビネーションにこそ意味がないとは思いますが、痛みそのものを治療対象にすることに関しては全く否定的ではありません。個人的な話ですが先学期いわゆる重度の「寝違え」を起こしてしまい、ふとした拍子に左を向こうとすると、そのたびに気が遠のくほどの電流のような激痛が左腕を駆け抜ける、という、ひどく不快で、しんどい思いをした日が2日ほどありました。その痛みたるや仕事にならないほどで、同僚に「この痛みを何とかしてくれるならなんでもする」と泣きついたくらいです。痛みは人から機能を奪い、感情をロックアップさせます。ですから(もちろんcontextによりますが)、痛みそのものを取り除こうという施術者側の努力は、決して周りから嘲笑されるようなものではないと思うのです。以前も書きましたが、there's time and place for everything -鎮痛治療が求められる場面で、適切で最も効果的なそれを選択・deliverできる力はATとして必須だと私は思います。
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さて、話を戻すと数ある電気治療の中でもとくにPain controlに使われることが多いのがいわゆるTENS (transcutaneous electrical nerve stimulation)というモードですが、これに関して読んだ研究を忘れないうちにまとめておきたいと思います。まず一番のお勧めはこの論文―TENSを使って鎮痛効果を狙う場合、どういうパラメーターが最も効果的なのか?というところをエビデンスを通じて振り返り、要約しているのが2008年発表のClaydon & Chesterton1 のSystematic Review(↓)です。
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Claydon & Chesterton1 がこの論文で強調しているのは「High intensity TENS」がどうやら最も効果がありそうだということ。Low-intensity(微弱電流)ではなく、がっつりビリビリくるようなそれなりに強いものがいい、ということなんです。もっと細かく言うと、「high frequency, high intensity, local application ‘intense’ TENS」か「low frequency, high intensity, remote ‘acupuncture-like’ TENS」がよさそうである、と。 他の論文も見てみましょう。Chen氏らのSystematic Review2 によれば、Pulse Durationの長短とそれに反比例するPulse Frequencyはどうやら鎮痛効果の程度に影響がないのでは、という指摘もあるのです。特に様々なPulse Frequencyを使った研究結果を比べてみても鎮痛の程度に大差がなかったことから、1) どのPulse Frequenciesでも等しく効果的である; 2) どのPulse Frequenciesも等しく効果的でない; もしくは 3) 研究のデザインが甘く、Pulse Frequency間の違いを認められるような造りではなかった…という3つの可能性が今のところ考えられますが、鎮痛効果を高める上で、今のところPulse Frequencyを気にしすぎる必要はないようです。

私がTENSをPain Control目的で使う場合、個人的なルーティーンはいつもこうでした。1) Motor level intensity, 2) Low frequency (≤10 Hz), 3) Longer pulse duration. セオリーでいうと、このパラメーターが上脊髄性疼痛抑制 (by releasing endogenous opioid peptides and serotonin)を促し、また脊髄内で上がってくる痛みのシグナルをブロックすることで鎮痛効果が高いと、つまり下行性 (descending) & 上行性(ascending)疼痛抑制の併用が可能だと認識していたもので…、High frequency (≥50 Hz) TENSだと後者のみですからね。3 一般的に疼痛抑制は上脊髄性 (supra-spinal)のメカニズムのほうが効果が長く続くとも言われていますし。でもこうしてエビデンスを読み返してみると、どうやら「Frequencyは治療アウトカムに影響を与えない2、むしろ「大事なのはIntensity1,4なようですね。 “Strong but not painful (ビリビリと強く感じるけど痛くはない程度)” で “sensory” レベルのTENSは"sub-sensory"かプラシーボより格段に鎮痛効果が高い、というのはわりかしはっきりとしたエビデンスのようです。4 なので、これらのエビデンスを加味した上で、これから私が患者にTENSを使うというのであれば、私が新たなルーティーンにすべきば… 1) 患者にhigh- と low-frequency TENSの両方をそれぞれ異なる治療セッション中に試し、どちらが好みか選んでもらい、そちらの周波数を使う。どうせ違いがないというならば、患者が好きだという方を選んでもらった方が不快さは減るかもしれない。2) Intensityは最低でもSensory Levelで。もし患者がもっと強いのが好みなら(Motor Levelが好きな選手も今まで結構出会ったので…ちなみに私もMotor Levelは結構好き)、私はここも好みに応じて上げてしまってもいいと考えます。論文では総じて「最低でもSensory」という表現が使われていたので、「Motorになるとダメ」というわけでもなさそうなので。私が考えていたよりもTENSのパラメーターはもうちょっとフレキシブルなものなのかなー、というのが率直な印象です。これからは患者にももっと多くの選択肢を与えられ、色々試してもらったうえで、その人好みの治療をtailorしていくことが可能かも!

例えば術後の痛み(postoperative pain)とか、どうしても数日間患者の感じる痛みのレベルが上がらさるを得ない場合にも、TENSを使うことで痛み止め薬の服用量が抑えられ、痛み止め薬の副作用というリスクを負わなくてもよくなる、5-9 というのはTENSの二次的な隠れたbenefitであると私は考えています。また、TENSはCryotherapyに並ぶdisinhibitory modalitiesとしても有効な物理療法であり、AMIの治療には欠かせないツールでもあると思うのです。10,11 最近のSystematic Review11 にはTENSのほうがCryotherapyよりも "より強い、一貫性のある効果をもたらす" と報告されており、"現存する最善のdisinhibotory interventionである” ともまとめられています。これは私の個人的な見解ですが、例えば膝の術後の『鎮痛効果』の一部には、もしかしたらdisinhibitoryメカニズムによる鎮痛もいくらか入っているのかもしれませんよね。例えば、効果的にdishinibitionできたから、大腿四頭筋の機能回復が迅速に起こり、それによって膝が安定性を再獲得したことによって歩行時の痛みが減少した、とか…。



さて、話は全く変わりますが、今週末はネブラスカ、リンカーンにあるPRI本部へ行ってきました!8ヶ月ぶりくらいです。詳しいことは諸事情があって書けないのが残念ですが、今年4月にオープンした新しいPRI本部の建物(↓)をたっぷり満喫させてもらい、それからRonやMikeにたくさん質問をぶつける機会があり、本当に充実した2日間を過ごすことができました。なんとカンザスからケニーも片道3.5時間の道のりを運転してきてくれて、夜には12月の日本講習に向けての打ち合わせもがっつりすることができました。遠いところをありがとう、友よ…!
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こんな書き方も自分でどうかと思いますが、今更改めてPRIにドはまりしています。最近楽しくて楽しくて…。やっと少しわかってきた、ような気がする…(数か月後には「やっぱり全然わからない」とか泣いてるかもしれないけど)。Ronの言葉を聞いていると、徐々に「宇宙に飛ばされる」回数よりも「核の部分が見えてきた」感覚のほうが多くなってきてそれが楽しいです。前回の彼の「上腕三頭筋は周波数だ」のコメントじゃないけど、徐々に私が彼の「周波数」に合わせられるようになってきたのかも!昨年12月のRonの「右に脊柱側弯症があるならば、左にも曲げればいいじゃない」というマリー・アントワネットばりの言い回しにわかったつもりになって笑っていましたが、今になってその言葉の本当の意味がわかるようになってきました。彼の言葉をいかにそのまま(でもわかりやすく)日本で伝えるか、まだまだ試行錯誤の日々です!

1. Claydon LS, Chesterton LS. Does transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) produce ‘dose-responses’? A review of systematic reviews on chronic pain. Phys Ther Reviews. 2008;13(6):450-463.
2. Chen CC, Tabasam G, Johnson MI. Does the pulse frequency of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) influence hypoalgesia? A systematic review of studies using experimental pain and healthy human participants. Physiother. 2008;94:11-20.
3. Resende MA, Sabino GG, Cândido CR, Pereira LS, Francischi JN. Local transcutaneous electrical stimulation (TENS) effects in experimental inflammatory edema and pain. Eur J Pharmacol. 2004;504:217–222.
4. Moran F, Leonard T, Hawthorne S, Hughes CM, McCrum-Gardner E, Johnson MI, Rakel BA, Sluka KA, Walsh DM. Hypoalgesia in response to transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) depends on stimulation intensity. J Pain. 2011;12(8):929-935. doi: 10.1016/j.jpain.2011.02.352.
5. Bjordal JM, Johnson MI, Ljunggreen AE. Transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) can reduce postoperative analgesic consumption. A meta-analysis with assessment of optimal treatment parameters for postoperative pain. Eur J Pain. 2003;7(2):181-188.
6. Unterrainer A, Friedrich C, Krenn MH, Piotrowski WP, Golaszewski SM, Hitzl W. Postoperative and preincisional electrical nerve stimulation TENS reduce postoperative opioid requirement after major spinal surgery. J Neurosurg Anesthesiol. 2010;22(1):1-5. doi: 10.1097/ANA.0b013e3181b7fef5.
7. Kara B, Baskurt F, Acar S, et al. The effect of TENS on pain, function, depression, and analgesic consumption in the early postoperative period with spinal surgery patients. Turk Neurosurg. 2011;21(4):618-624. doi: 10.5137/1019-5149.JTN .4985-11.0.
8. Unterrainer AF, Uebleis FX, Gross FA, Werner GG, Krombholz MA, Hitzl W. TENS compared to opioids in postoperative analgesic therapy after major spinal surgery with regard to cognitive function. Middle East J Anaesthesiol. 2012;21(6):815-821.
9. Eidy M, Fazel MR, Janzamini M, Haji Rezaei M, Moravveji AR. Preemptive analgesic effects of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) on postoperative pain: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Iran Red Crescent Med J. 2016;18(4):e35050. doi: 10.5812/ircmj.35050.
10. Gabler CM, Lepley AS, Uhl TL, Mattacola CG. Comparison of transcutaneous electrical nerve stimulation and cryotherapy for increasing quadriceps activation in patients with knee pathologies [published online Jan 5 2015]. J Sport Rehabil. 2015.
11. Harkey MS, Gribble PA, Pietrosimone BG. Disinhibitory interventions and voluntary quadriceps activation: a systematic review. J Athl Train. 2014;49(3):411-421. doi: 10.4085/1062-6050-49.1.04.

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  by supersy | 2016-08-21 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

運動前のアイシングは、パフォーマンスを向上する?

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運動前にあなたが身体の痛むところがあったとして(膝や肩など)、あなたはその患部を温めますか?冷やしますか?

Pain Control (鎮痛効果)
とりあえず、現時点でCryotherapy (冷却療法 - i.e. postop wrist,1 knee,1,2 acute ankle sprains,3 neck and back strains,4 LBP5)もThermotherapy (温熱療法 - i.e. neck and back strains,4LBP,5 chronic pain,6bluebottle stings7)も鎮静効果アリ、というのはエビデンスとしてはっきり出ていると思うんですよね。で、じゃあ比べたときにどちらのほうがより効果が大きいのかな?と疑問に思い、直接比較をしている研究を探してみたらふたつのRCTが見つかりました。一つ目は60人の頸・胸・腰椎の痛みを抱える患者(平均37.8±14.7歳、被験者の51.5%が女性)を使ったRCTで4 は鎮静効果は冷却と温熱で「等しい」という結論。もうひとつのほう(患者87人、平均34.48歳、被験者の51.72%が女性)では5急性腰痛には温熱のほうが冷却よりも効果が高かったという報告が(McGill Pain Questionnaireを使って計測した痛みの減少度 - 温熱治療 12.70±3.7から0.75±0.37へ vs 冷却治療 12.06±2.6から2.20±2.12, p≤0.05)されています。うーん、もうちょっと見てみないとわからないですね。現時点で決定的にこっちが優秀!と断言できるわけでもないみたい。
大前提として、施術者は冷却と温熱ではとりあえず身体に働きかけるメカニズムと、その生理学的効果が真逆である、ということは考慮すべきですよね。鎮痛効果に加えて、冷却療法は組織の温度を下げ、代謝を下げ、血流を遅らせ、炎症とtissue extensibilityを低下させるなどの変化を引き起こすに対して、温熱療法ではその逆が起こる。8,9 なので、今のところ私個人の解釈としては、Pain controlに冷却か温熱を使おうと思ったら、今のところどちらも有効であるから、患部にアクティブな炎症が見られるかどうかでやはり判断しようかな、という感じです。患部が熱を持って赤みを帯びていれば冷却を、そうでなければどちらでも害がないと判断し、患者の好みを考慮した上でケースバイケースで決めようかな、という。

Prior to Activity (運動前)というタイミング
で、次に考えたいのが「運動前」というタイミングで痛みを抑えたい場合、どちらがより相応しいのか?という切り口。運動前にアイシングなんかしたら筋肉が縮こまっちゃってダメなのでは?という一般的な見解とは裏腹に、「暑い場所で運動をする前ならば(例えば夏場、Footballの2-a-daysとか)、冷却療法の使用は非常に良い」という結論を出したのは2013年発表のMeta-Analysis。10 運動前はもちろん、運動中のアイシングもアリだ、と論じています。このMeta-Analysis10で報告された唯一の「悪影響」は「スプリント競技のパフォーマンスは低下する」というところでしたが、でも「中・長時間 (intermittent & prolonged)の運動ならばパフォーマンス、キャパシティー共に著しく向上する」というのです。10 もうひとつのシステマティックレビューでも11 運動前の外・内部からのクーリング (i.e. air, water, ice)を推奨する結果が報告されています。運動前に冷やすことで、体温調節能力 (thermoregulatory - core, skin and or body temperature)、心肺機能 (cardiovascular - heart rate, sweat rate)、そして精神的 (psychological - thermal sensation of comfort, rating of perceived exertion)機能値が上がり、長期的(prolonged)パフォーマンスが向上するとのこと。11 しかし例によって、先ほどのMeta-Analysis10と同様、爆発的で短期間のスプリントのような運動、そしてこのReviewでは中期(intermittent)の運動も少し悪影響を受ける ("minimally affected")と書かれてもいるんですけども。11 良い効果は、運動後にも続くようです。Mila-Kierzenkowska氏ら12 はsubmaximal exercise前の全身冷却 (whole-body cryotherapy)は酸化ストレス度を減少させ、リカバリーを早める効果があると報告しています。これは選手にはありがたいですね。
「運動前のアイシング反対派」の意見としては、Bleakley氏ら13が自身のシステマティックレビューで「運動前にCryotherapyを20分以上使用すると筋力、スピード、パワー、アジリティー、手先の動きの正確さなどが低下する」と論じていますが、Pritchard & Saliba14氏らはこのシステマティックレビューの臨床的実用性に疑問を呈しています。彼ら曰く、運動前のアイシングはほとんどの場合が20分以下であるし、それにしっかりとしたウォームアップを組み合わせればその冷却効果が害になることは少ないはずだ、と。これにね、もう2つくらい研究を加えると面白い全体像が見えてくるかなと思うんです。 1) あるControlled laboratory study15 によれば10分間の足首をアイシングするとDynamic postural-stability ability (Star Excursion Balance Test Score)が低下する、という報告がある一方で、 2) 最近発表されたRCT16 には10分間の足首のアイシングをしても筋肉の反応時間 (Reaction time)は影響を受けなかった、とある。 つまるところ、運動前に行う冷却療法の『悪影響』というのは 1) duration-specific (どれくらいの間、冷却を続けたかに影響を受ける、≤10分がより安全?) であり、 2) task-specific (その後に行う運動がどういったタイプなのかに左右される、i.e. short-, intermittent- vs prolonged activity)であるのではないか、というのが私の導いた結論です。
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Clinical Bottom Line
臨床的にこのエビデンスをどう使うべきか?と考えたときに、私の個人的な見解としては、運動前、痛みを軽減するためには運動が暑い中行われる、もしくは長期的な運動 (且つ、スピード系、パワー系ではない運動)である場合には率先して冷却療法を使おうと思います。その際、使う長さは短め(10分かそれ以下)に押さえたほうが賢明でしょうね。また、部位が指や手で、そのスポーツが指先の細かいmotor controlを必要とするようなスポーツの場合は (i.e. 野球や弓道、射的など)、悪影響が優る恐れがあるので冷却療法は避けたほうが良さそうです。温熱療法のほうがface validityがありますし (=選手も運動前にはあたたかくする、がアタリマエで、より理に適ってると考える子が多いでしょう)、あとは個人的にはやはり練習前には患部を温めることを好む選手のほうが多いかなとも感じるので…温熱が患者の抵抗も少なく、色々な意味で安全なチョイスかと。温熱療法が好きだ、と特に強く感じている選手には私もそれに反論することはないかと思います。唯一私が「いや、温めないほうがいい」というのは、くどいですが、アクティブな炎症が見られる場合のみかな。

まだまだ世の中アンチCryotherapyの人が多いみたいですけど、私は使いどころさえ正しければ(アイシングに関わらずですけど、どんな療法でも)絶対に良い効果を発揮すると思ってます。しかし今回、「運動前にアイシングはcontraindicated(禁忌)」くらいに教わったことのある私には、運動前のアイシングがパフォーマンスが向上するようなことがあるとは、なかなか衝撃的でした。いやいや、まだまだ勉強が足らんみたいっす。

1. Bleakley C, McDonough S, MacAuley D. The use of ice in the treatment of acute soft-tissue injury: a systematic review of randomized controlled trials. Am J Sports Med. 2004;32(1):251-261.
2. Raynor MC, Pietrobon R, Guller U, Higgins LD. Cryotherapy after ACL reconstruction: a meta-analysis. J Knee Surg. 2005;18(2):123-129.
3. Bleakley CM, McDonough SM, MacAuley DC, Bjordal J. Cryotherapy for acute ankle sprains: a randomised controlled study of two different icing protocols. Br J Sports Med. 2006;40(8):700-705.
4. Garra G, Singer AJ, Leno R, Taira BR, Gupta N, Mathaikutty B, Thode HJ. Heat or cold packs for neck and back strain: a randomized controlled trial of efficacy. Acad Emerg Med. 2010;17(5):484-489. doi: 10.1111/j.1553-2712.2010.00735.x.
5. Dehghan M, Farahbod F. The efficacy of thermotherapy and cryotherapy on pain relief in patients with acute low back pain, a clinical trial study. J Clin Diagn Res. 2014;8(9):LC01-LC04. doi: 10.7860/JCDR/2014/7404.4818.
6. Masuda A, Koga Y, Hattanmaru M, Minagoe S, Tei C. The effects of repeated thermal therapy for patients with chronic pain. Psychother Psychosom. 2005;74(5):288-294.
7. Loten C, Stokes B, Worsley D, Seymour JE, Jiang S, Isbister GK. A randomised controlled trial of hot water (45 degrees C) immersion versus ice packs for pain relief in bluebottle stings. Med J Aust. 2006;184(7):329-333.
8. Malanga GA, Yan N, Stark J. Mechanisms and efficacy of heat and cold therapies for musculoskeletal injury. Postgrad Med. 2015;127(1):57-65.
9. Nadler SF, Weingand K, Kruse RJ. The physiologic basis and clinical applications of cryotherapy and thermotherapy for the pain practitioner. Pain Physician. 2004;7(3):395-399.
10. Tyler CJ, Sunderland C, Cheung SS. The effect of cooling prior to and during exercise on exercise performance and capacity in the heat: a meta-analysis. Br J Sports Med. 2015;49(1):7-13. doi: 10.1136/bjsports-2012-091739.
11. Ross M, Abbiss C, Laursen P, Martin D, Burke L. Precooling methods and their effects on athletic performance : a systematic review and practical applications. Sports Med. 2013;43(3):207-225. doi: 10.1007/s40279-012-0014-9.
12. Mila-Kierzenkowska C, Jurecka A, Woźniak A, Szpinda M, Augustyńska B, Woźniak B. The effect of submaximal exercise preceded by single whole-body cryotherapy on the markers of oxidative stress and inflammation in blood of volleyball players. Oxid Med Cell Longev. 2013;2013:409567. doi: 10.1155/2013/409567.
13. Bleakley CM, Costello JT, Glasgow PD. Should athletes return to sport after applying ice? A systematic review of the effect of local cooling on functional performance. Sports Med. 2012;42(1):69-87. doi: 10.2165/11595970-000000000-00000.
14. Pritchard KA, Saliba SA. Should athletes return to activity after cryotherapy? J Athl Train. 2014;49(1):95-6. doi: 10.4085/1062-6050-48.3.13.
15. Fullam K, Caulfield B, Coughlan GF, McGroarty M, Delahunt E. Dynamic postural-stability deficits after cryotherapy to the ankle joint. J Athl Train. 2015;50(9):893-904. doi: 10.4085/1062-6050-50.7.07.
16. Thain PK, Bleakley CM, Mitchell AC. Muscle reaction time during a simulated lateral ankle sprain after wet-ice application or cold-water immersion. J Athl Train. 2015;50(7):697-703. doi: 10.4085/1062-6050-50.4.05.


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  by supersy | 2016-08-17 21:20 | Athletic Training | Comments(0)

同じステロイド剤を入れるなら、注射がいいのかiontophoresisがいいのか?

私、たまに「手技しかしないヒト」となぜか誤解されたりするんですが、実は物理療法大好きです。バランスの取れたクリニシャンでありたいと思っていますし、患者を改善させていくにあたって物理療法と運動療法、そして徒手療法を併用してこそ最も効果が出ると思っています。そんなわけで、今日は物理療法の話を。
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物理療法の中でも特に私が「ポイントを抑えて使えば大きな効果が期待できる」と思っているものがいくつかあるのですが、そのひとつがiontophoresis(イオン導入療法)です。抗炎症剤や鎮痛剤など患者が医師から処方された場合、その薬を体内に導入する投与経路は1) 経口投与、2) 皮下、経静脈、経動脈や筋肉内などの注射投与などなど色々ありますが、3) 薬剤をイオン化し、電解質溶液にしてそこに直流電流を流し、例えば薬剤が+の電荷を持つ電解質になったならばそこに+電極を持ってきて、同じ電荷をぶつけあい、反発を促すことで薬剤を物理的に動かし、体の深部に浸透させる…という面白い方法もあるのです。これがiontophoresisです。
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一般的に経口投与はどうしても全身の血流に乗って薬が巡るため、効果が局所ではなく全身に広がってしまうこと、そして、肝臓や腎臓に負担がかかることなどが短所です。注射による投与は、局所的な投与が可能という利点こそあれ、やはり注射が痛い・怖いという患者が一定数いること(アメリカは特に多い印象があります、国民性かなー…)、そしてinvasive(肌を突き破り、侵入的である)な治療なので感染症のリスクがあることなどが挙げられます。そうなると、iotophoresisはなかなか魅力的な選択肢に思えます。局所的な治療が可能で、肝臓や腎臓に負担をかけず、針を刺す痛みもなく、感染症のリスクも生むことなく薬の投与が可能なんですから。

比較研究: そんなわけで、効果と危険性をざっとreviewしたくて、iontophoresisと注射によるステロイド剤の投与の比較研究を引っ張り出して読んでみました。 直接比較している論文は4つしか見つけられなかったです。さっくりまとめます。

1. Gökoğlu氏らの1 研究では30人のCarpal Tunnel Syndrome (CTS、手根管症候群)患者をランダムに1) 40mg methylprednisolone acetate injection (1回ポッキリ) もしくは2) iontophoresis経由でのdexamethasone sodium phosphate (一日おきに一週間)組にわけて治療。治療から2週間後と8週間後の経過を追いました。 両グループとも痛み、諸症状、機能共に著しい回復が見られましたが、回復の度合いは注射組のほうが高かったそう。Adverse effect, side effect, complicationなどの悪影響はどちらのグループでも報告されず、だそうです。

2. Karatay氏らは2 45人のCTS患者にdexamethasoneを 1) injection、2) iontophoresis、3) phonophoresis による投与の3組(どれもn = 15)にわけて治療。結論としてはiontophoresis/phonophresisの効果は3ヶ月と持たなかったのに対して、注射による症状改善は治療開始後1ヶ月から如実に出始め、4ヶ月をピークに6ヶ月後まで保たれていた、 と。悪影響については記事では一切触れておらず(なかったともあったとも記述なし)、こちらのほうの比較はできませんでした。

3. Stefanou氏らは3 1) 10mg dexamethasone iontophoresis, 2) 10mg dexamethasone injection, と 3) 10mg triamcinolone injection組のいずれかに82人の外側上顆炎 (lateral epicondylitis)患者を分類。3つ全てのグループが等しく痛み・機能が短・長期的(治療終了直後と6ヶ月後)共に回復したのですが、短期的に見たグリップストレングスと職場復帰はIontophoresis組が格段に良かったとのこと(『制限を感じずに職場復帰できた』患者の割合 – 82% in ionto group, 29% in dexamethasone injection and 33% in triamcinolone injection, p < 0.05)。合計7人の患者が改善が見られず結局手術に踏み切ったそうですが、著者によれば「数が少なすぎるため」統計的に分析することは不可能、だそうで、どのグループが特に手術のリスクが高い云々とは断言できない、とのこと。それでもcomplicationsについてはこんな記述がありました: 1) 注射組患者の10%未満が注射後に患部の痛みを訴えたが、2日以内に全てなくなった、2) iontophoresisを受けた患者のひとりが薬剤パッチを張った部位に皮膚のかぶれを訴えたが、パッチを取ってから3日以内に完治、3) パッチを張る前に患部の毛を剃ったことで、同様に2人の患者が皮膚荒れを訴えた…とのこと。どれも比較的すぐに回復する、マイナーなものばかりという印象ですね。

4. 最後、これは整形外科の怪我ではないのですが、Mehrsai氏ら460人のPeyronie's diseaseの患者を集めて行った研究も一応紹介を。1) 10mg verapamil and 4mg dexamethasone via iontophoresisと2) 同じ薬をinjectionした場合 (どちらもn = 30)を比較したこの研究では、どちらのグループもplaque size、erectile dysfunction、penile deviations等について等しく著しい改善が見られたとのこと。ただ、erectile painに関してより大きい減少が見られたのはIonto組だったそう(from 5.1 to 1.0 in the Ionto, from 5.4 to 3.6 in the injection group, p = 0.006)。Complicationsやadverse effectsについてはこの研究では一切言及がなく、ここんとこは不明のままです。

比較研究からは安全性に関して十分な情報が得られなかったので、リスクなどを論じている論文をiontophoresis, injectionそれぞれで別途で探してみました。こちらもさっくりまとめます。

Iontophoresisとその安全性: やはり電流を使う物理療法である、ということで、Warden5氏はiontophoresisのcontraindication(禁忌)に 1) 電流に対するhypersensitivityや、以前使用したときに有害反応が見られたことがある、もしくは2) 処方された薬物そのものの副作用を感じたことがある、という2項目を挙げています。肌荒れやかぶれ(skin irritation)は決して珍しくはない、とした上で、「稀ではあるが」と前置きして、電流が非常に強い場合、やけどなどの熱性の怪我が起こる確率もゼロではない、とも書いています。しかし、この論文で Warden氏は5 iontophoresisの利益は不利益をはるかに上回るものであり、治療者が患者としっかりコミュニケーションを取りさえすれば(例えばどこまでがこの治療の「アタリマエ」で、どんな感覚が生まれたら「報告すべき異常」なのかとか) iontophoresisの危険性は最小限に保たれ、「安全な物理療法」と呼ぶに足る、と結論を出しています。Patane氏ら6はウサギを使ってiontophoresis (dexamethasone)をカラダの中でも最もsensitiveな部位である目に使用してみたらしいのですが(ひー!)、この治療はウサギちゃんにとって"well-tolerated(耐容性良好)"であり、一時的にmild complicationsが出たくらいで(i.e. conjunctival hyperemia, chemosis, and mild corneal opacity)『安全』だったそうな。次のステップは人体実験ですが、著者らはこの動物実験に基づき「iontophoresisは長期的、もしくは反復的なステロイド剤の使用を必要とする炎症系眼疾患を治療するには有効な治療法かもしれない」と結論づけています。へー。

ステロイド剤注射とその安全性: やはりどうしても針が体内に入る関係で、例えば手術前に関節内にステロイド剤を注射した患者は、注射しなかった場合に比べて格段に手術後の感染症のリスクは高まるそうな。7 あと、ご存知の方も多いかと思いますが、軟部組織に使った場合(特に複数回)、損傷や組織の弱化、症例でいうと足底筋膜8 腸腰靭帯(IT Band),9それからアキレス腱10などの断裂につながったという報告はありますね。 あと、疲労骨折や骨の壊死が起こったケースもあるんですって。11 こういうのは症例ベースの報告が主体なもので、残念ながら何人当たり何件、とか、こういう条件に当てはまる人のリスクが何%、とか、そういうのを計算できる公式のようなものは現時点で存在しないですし、実際のprevalenceがどんぴしゃで何%くらいなのかというのも分かっていません。あ、あとね、文献を読んでいたらびっくりするような症例もありまして、えーと、51才の 2型糖尿病、甲状腺機能低下症、PTSDと不安症・鬱と両側の膝関節症がある女性患者さんが(これもすごいリストですけど)膝のOA治療にステロイド注射を打った後、自殺衝動を訴えて病院に緊急入院、ということがあったそうで。12 これだけなら因果関係はわからないじゃん、と言われそうですが、この患者、数ヶ月経って心の症状が安定したので、また膝のOAの注射を打ちに行った→自殺衝動再発→緊急入院→退院…をこのあと2回、合計3回繰り返したそうで、これはもう偶然ではないと。ステロイド注射にどうやら起因するのではないか、ということで、精神医学的副作用が出た最初の症例ということで論文に報告されています。12そんなこともあるんか…。

こうして文献を色々見てみると、直接リスクを比較した研究が無いのと、Iontophoresisに関してはまだまだ長期的(年単位とか)に患者を追った研究が欠如しており、決定的な結論を出すのは難しそうですが(今回reviewした研究も障害、治療期間、薬剤、服用量ともに異なりますしねぇ)、私の個人的な見解としてはiontophoresisの副作用・有害反応は総じて軽く、一時的なものが多い反面、ステロイド剤注射のそれは中には長期的なdisabilityにつながる(i.e. soft tissue ruptures, bone disruptions)ものもあるなぁと。頻度、深刻度、両方の観点から、iontophoresisのほうがより安全な選択肢であるようだ、というのが今のところの私の結論です。iontophoresisの長期的効果を追った研究、これから出ますかねー、見てみたいなー。

1. Gökoğlu F, Fındıkoğlu G, Yorgancoğlu ZR, Okumuş M, Ceceli E, Kocaoğlu S. Evaluation of iontophoresis and local corticosteroid injection in the treatment of carpal tunnel syndrome. Am J Phys Med Rehabil. 2005;84(2):92-96.
2. Karatay S, Aygul R, Melikoglu MA, Yildirim K, Ugur M, Erdal A, Akkus S, Senel K. The comparison of phonophoresis, iontophoresis and local steroid injection in carpal tunnel syndrome treatment. Joint Bone Spine. 2009;76(6):719-721. doi: 10.1016/j.jbspin.2009.02.008.
3. Stefanou A, Marshall N, Holdan W, Siddiqui A. A randomized study comparing corticosteroid injection to corticosteroid iontophoresis for lateral epicondylitis. J Hand Surg Am. 2012;37(1):104-109. doi: 10.1016/j.jhsa.2011.10.005.
4. Mehrsai AR, Namdari F, Salavati A, Dehghani S, Allameh F, Pourmand G. Comparison of transdermal electromotive administration of verapamil and dexamethasone versus intra-lesional injection for Peyronie's disease. Andrology. 2013;1(1):129-132. doi: 10.1111/j.2047-2927.2012.00018.x.
5. Warden GD. Electrical safety in iontophoresis. Rehab Manag. 2007;20(2):20,22-23.
6. Patane MA, Schubert W, Sanford T, Gee R, Burgos M, Isom WP, Ruiz-Perez B. Evaluation of ocular and general safety following repeated dosing of dexamethasone phosphate delivered by transscleral iontophoresis in rabbits. J Ocul Pharmacol Ther. 2013;29(8):760-769. doi: 10.1089/jop.2012.0175.
7. Werner BC, Cancienne JM, Burrus MT, Park JS, Perumal V, Cooper MT. Risk of infection after intra-articular steroid injection at the time of ankle arthroscopy in a medicare population. Arthroscopy. 2016;32(2):350-354. doi: 10.1016/j.arthro.2015.07.029.
8. Acevedo JI, Beskin JL. Complications of plantar fascia rupture associated with corticosteroid injection. Foot Ankle Int. 1998;19(2):91-97.
9. Pandit SR, Solomon DJ, Gross DJ, Golijanin P, Provencher MT. Isolated iliotibial band rupture after corticosteroid injection as a cause of subjective instability and knee pain in a military special warfare trainee. Mil Med. 2014;179(4):e469-472. doi: 10.7205/MILMED-D-13-00438.
10. Turmo-Garuz A, Rodas G, Balius R, et al. Can local corticosteroid injection in the retrocalcaneal bursa lead to rupture of the Achilles tendon and the medial head of the gastrocnemius muscle? Musculoskelet Surg. 2014;98(2):121-126. doi: 10.1007/s12306-013-0305-9.
11. Nichols, A. W. Complications associated with the use of corticosteroids in the treatment of athletic injuries. Clin J Sport Med. 2005;15(5);E370.
12. Malladi AS, Gratton SB, Stone D, Scalapino KJ, Charles JF. Recurrent adverse psychiatric effects following intra-articular corticosteroid injection. J Clin Rheumatol. 2011;17(5):284-285. doi: 10.1097/RHU.0b013e318227ab11.

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  by supersy | 2016-07-22 10:00 | Athletic Training | Comments(2)

月刊トレーニングジャーナル8月号発売 & EBP講習 in 船橋!

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船橋整形外科病院さんとおおすか整形外科さんの共同開催で、昨日は船橋で一日Evidence-Based Practice (EBP)講習してきました!若い理学療法士さんを中心に50人弱もの医療従事者さんにご参加いただきました。7時間半の講義、しかも英語論文までガンガン読まされたらさぞかし脳みそトロトロだったろうかと思うのですが、皆さん若さをパワーに最後まで食らいついてきてくれました。日本の講習では珍しいくらいガンガン質問もしてもらってうれしかったです。参加者様、関係者の皆様、ありがとうございます!最後、なぜか皆でカンチョ―ポーズで写真を撮りました。
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今回運営していただいた船橋整形外科病院の梅原さんとおおすか整形外科の根本さんと私は実は1983年生まれの同級生と分かり、一気に親近感!同年代の仲間がそれぞれの分野で活躍していると特別うれしく感じるのは、なんででしょうね?今度はぜひもうちょっとゆっくりお喋りしたりしましょう!楽しい一日をありがとうございました。


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さて、月刊トレーニング・ジャーナル8月号が発売になっています!
連載3回目の今回は実はずっと書きたかったテーマ、culturally competentな医療従事者になることの重要性とその意味などについて書いております。貴方は自分の文化的能力、育てていますか?興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。
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  by supersy | 2016-07-11 14:30 | Athletic Training | Comments(2)

Digital Patientについて学んでみました。

以前にStandardized Patient (SP)の話を書きましたが、今回はデジタル患者というか、ヴァーチャル患者について学ぶ機会があったのでまとめておきます。ただの感想記になりますが。

私が今回学んだのはShadow Healthというシステムを通じてのヴァーチャル・ラーニングで、一般には看護学生によく使われているらしいのですが、他にも薬学やATの授業でも用いられているそうな。
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紹介動画はこちら。別に宣伝しているわけじゃありません(私自身購入して使ったわけでも何でもなく、ああこんな手段もあるのねー、と思ってるだけです、念のため)。

用途別に色々な使い方ができて、例えば、下級生には急性の症例を課して、History taking中心の診断経験をさせ、そのあとその患者が3日ほど病院に入院している経過を時間軸と共に追っていく、とか、上級生は慢性的な症例を担当し、DDxからのPlanningに重きを置く、とか…。色々工夫のし甲斐はあるようです。患者さんと対面している最中は時間と言う概念がないので、例えば「えーと、えーと、次は何を聞こうかな…」と考えている間に妙な沈黙が生まれても何も弊害はありません。むしろ学生が一問一問時間をかけて質問を練りこみ、的確なHistoryを取る、つまり、何ていうんでしょうね、質問のmappingとでも言うのでしょうか?そういうスキルが伸びるようです。こうして徐々に「問診時の緩やかな流れ」をつかむことで、実際の患者さんを診断するときにスムーズな会話力が身に着くのだとか。

ここまでで私に浮かんだ疑問は、「患者さんに感情表現はあるのか?例えば、患者さんを怒らせてしまったり、なんてこともある?」「触診やSelective Tissue Assessment Testのような、endfeelなんかを触覚的に感じなければいけない項目はどうやって表現されているんだろう?」でした。担当の方に伺ったところ、前者の質問の答えは「No」。例えば腰痛を訴えてる患者さんが、「仰向けになって/うつ伏せになって」と指示した時に痛みで顔をゆがめたり、ということはあるようですが、不適切な質問をしたり、同じ質問を何度も繰り返しても患者がイライラしたり不快感を示すようなことはないそうです。あくまで、プログラミングされた質問に対して、プログラミングされた答えを述べる、と。そして二つ目の質問の答えは「○○が発見された、というように触覚によってのみしか判断できないfindingは文字にして提供している」そうです。なるほど。

私の率直な感想としては、「なるほど、事実をただ詰め込むより、problem-solving learningとして今の世代の学生とってこういうツールは『ツカむ』のに有効そう」。前回のSPの時も触れたかと思うんですが、clinical reasoningとclinical decision-making skillsってなかなか教えるのが難しい。文献でも、ヴァーチャル体験はそこらへんを教え込むのに良い、とあります。1,2
どうしても疑問だったのはリアリズム。意外なことにGesundheit氏らの研究1によれば、(まだ実習を始めていない)医学部2年生はこの ヴァーチャル体験をSP体験に比べてより “believable (信じるに足る)”そして“appropriately challenging (ちょうど良い難易度)” と評したらしいのですが、私としては、学生の中に「ゲーム感覚」が生まれてしまって、「コイツどこまでついてこれんの?」と、無関係だったり場合によっては不適切な質問をぶつけるようになってしまうのでは、という心配があります (Siriにスリーサイズを聞いたり好きな食べ物を聞いたり…皆さんも身に覚えがあるでしょう?)。これは実際にWebinarの最中にもプレゼンターさんが言及したところで、「あまりに変な質問にいちいち患者が対応してしまわないように、実は返答可能な質問数をかなり最近削ったんです」とのこと。これを実際に授業で用いるとしたら、いくらでも使えるようには敢えてしてしまわずに機会を制限したり、きちんと実際の患者という心持で扱うよう指導することは必要だなぁと思いました。ゲームではない、と一線を引かせないとね。

楽しい、という率直な感想は素晴らしいと思うんですよ。2 楽しく学んでもらえるというのはこういうシステムの強みですよね。それに、まだまだ駆け出しの学生にとってこの学習環境は『安全』であり、時間に追われず、自分自身のペースで考えながら学び進むことができる。焦ったりパニックになったりは、実際の患者を目の前にしているときよりは格段に起こりにくいでしょうからね。ただ、問題は実際の患者さんの診断をしてるときにはもっと考慮・実践すべき要素があるわけです。例えば患者さんがなんだかそわそわ、居心地悪そうにしているなぁ、と思ったらnon-verbal communicationを通じて(i.e. 声のトーンを変えたり、表情を変えたり)患者を安心させる必要もあるし、言葉遣いを細かく選びながら彼らがまだ打ち明けてくれてないかも知れない情報をするすると引き出したり、患者がぼんぼこぶつけて来る情報の塊を整理しながらもスムーズな会話を続ける話術とかもですね、まぁ色々と必要ですよね。ここらへんもひっくるめて『患者との対話力』なんじゃないかと。こういうスキルはどうしてもデジタル患者とのやりとりでは身につかないでしょうし、だからこそ(実習を既に始めている)医学部4年生の子らには(2年生の子らと比較して)現実味があると判断する子が圧倒的に少ない(p≤0.05)なんていうこともあるんだろうな、と。1 結論としては、SPもデジタル患者を通じての教育も、学生からしたら等しく「満足である」らしいのですが、やはり提供している学びの質が少し違うように思いますね。1 私としては、デジタル患者とのやり取りはどちらかというと駆け出しの学生向きなのかなと。新しいコンセプトを学び、実践していく上で (i.e. 良いHistoryを取る, 適切なDDxと治療プランを打ち出していく, etc)、学生をoverwhelmさせることなく、安全に楽しくそのコンセプトをつついたりつまんだり練ったりしながら模索してもらうにはちょうどいいかなと思うんです。で、基礎力がついたところでSPを使う、という流れが私の頭の中でできています。

ちなみに価格は学生ひとりあたり$99と教科書とさほど変わらないほか、一度購入すれば一生アクセス権は保持できるらしいので、卒業しても学びの道具として使い続けることが可能のようです。コストパフォーマンスは良いですね。それぞれの患者との対面が終わった後に自動的に評価レポートがシステムによって作られ、指導者も学生も見直すことができるのもポイント高いです(評価とか採点って、意外と本当に時間がとられる作業なのです…)。私の職場環境から、今すぐに使い始めるってわけにはなかなかいかなそうですけど、機会があればこういったプラットフォームを通じての教育も、これからもっと積極的に取り組んでいきたいです!


1. Gesundheit N, Brutlag P, Youngblood P, Gunning WT, Zary N, Fors U. The use of virtual patients to assess the clinical skills and reasoning of medical students: initial insights on student acceptance. Med Teach. 2009;31(8):739-742.
2. Forsberg E, Ziegert K, Hult H, Fors U. Clinical reasoning in nursing, a think-aloud study using virtual patients - a base for an innovative assessment. Nurse Educ Today. 2014;34(4):538-542. doi: 10.1016/j.nedt.2013.07.010.

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  by supersy | 2016-07-08 09:00 | Athletic Training | Comments(0)

NATA Clinical Symposia in Baltimore おまけ。

NATAに参加すると各分野の最新の研究に触れる機会があり、massive knowledge updateができる利点もありますが、それ以外にも懐かしい・新しいATさんとの出会い、そしてExhibit Hallでの面白い商品やコンセプトとの遭遇なんて楽しさもあります。
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…で、今回も例にもれずExhibit Hallをふらふらしていたのですが…、まずとにかく今年の展示場はでっかい!!!今までもこんなに大きかったっけ?いくつか顔を出さなきゃいけないブースがあったのですが、本気で迷ってしまって何回かに分けてようやく一通り回ることができました。とりあえずPRIスタッフに挨拶をして、RMUoHPのブースで予期せぬリクルーティングを手伝って、それから…あれ、Positional Release Therapy(PRT)のブースで創設者のDr. Speicher発見!わーいお久しぶりですー、とお喋りしていたら、どういう流れか、Dr. Speicher直々にPRTを施術してもらうことに。最近はPRTは「圧痛をつくる」「90秒短縮位を維持」という理念からはだいぶ離れつつあり、「痛みを作らず治療する」「fasciculationが最も起こるポジションを探す」「呼吸も併用する」「fasciculationが無くなれば施術終了(90秒もかからないことがほとんど)」というセオリーを元に筋肉の過活動に抑制をかける、といった印象です。いやー、さすがDr. Speicher、テクニックがやばかったっす。各運動面ごとに角度を作り、joint manipも使いながらピンポイントでのポジション決め。施術後には数年取れたことのなかったupper trap spasmが融けるように無くなって、首がスルスルすかすか緩まりすぎて怖いくらいでした。もちろん(他のテクニックを併用して)それが維持できてナンボだと思うのですが、この即効性は確実に武器になるよなぁという印象。PRTは今まで「時間があれば勉強したい」と思っていたdisciplineのひとつでしたが、勉強したい度がこれで第3位くらいにまで跳ね上がりました。特に脳震盪治療にも使えるのではないかというCranialのPRTテクニック、興味ある…。
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そして今回もJATOのレセプションにお邪魔させていただいたのですが、先輩・同志らに進路相談(?)をしたり、現役の学生の子たちや卒業したての若い子らからエネルギーを分けてもらったりで充実していました。長年会えなかったAT仲間に今回初めて会えたのも大きな収穫でしたー。AT界で皆それぞれの分野で輝いていて眩しいったらありゃしない!あ、あと知人にBaltimoreに来たらCrab Cakeを食べなきゃアカン(名物らしい)、と言われていたのでそれも頂きました。うーん、まぁまぁ?
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Baltimoreはかなり治安が悪いらしいのですが、Inner Harborのあたりは景色もいいし、ショッピングモールやレストラン、水族館に博物館などエンターテインメント施設も多く、とても過ごしやすかったです。観光はほとんどできませんでしたが、またいつか!
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  by supersy | 2016-06-28 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

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