カテゴリ:Athletic Training( 401 )

 

KTテープ文献レビュ―その1。

諸事情あって、これからひとつのトピックにつき10の文献を消化していなければいけないので、メモ代わりに内容をこちらにまとめます。スピードが問われるため、主となる10以外の文献の引用は省きます。ご了承を。個人的考察は、研究の評価すべき点はで、疑問点はで示すことにします。

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#1: Shakeri et al., 2013

これはイランの論文ですね。冒頭で人生で一度は肩の痛みを感じる人口の7-36%いる、そしてその半数ほど(44-65%)Shoulder Impingement Syndrome (SIS)である、とした上で、scapula(肩甲骨の)不十分な動き、特に、肩関節の屈曲や外転時に1) Posterior tiltが不十分、2) IRが過度に起こる、もしくは3) Upward rotationが欠如していることがSISとリンクしていることを指摘しています。


さて、この論文で検証しているのは肩甲骨周りのテーピング、中でもKTテープの使用が肩機能に及ぼす影響です。テーピングが具体的にどのようなメカニズムで身体に変化を生むかという点は実はそれほどわかっていないのですが、1) provide (mechanical) support; 2) create proprioceptive feedback; 3) providealignment correction3つの定説が文献などではよく取り上げられます。実際、KTテープを張ることで1) postural alignmentが改善; 2) 肩関節のROM向上; 3) 肩関節の痛みや違和感の軽減が認められた、という「良い」報告もある一方で、4)そのような効果は見られなかった、とするものまでエビデンスは様々。研究のデザインの相違や、テープの張り方が違うとか、要因は色々考えられますが、実際のところはどうなんでしょうね。この研究ではKTテープを肩甲骨周りに張った直後・3日後・1週間後の3つの異なるタイムポイントで、被験者の肩を動かしたときの痛みと、夜中の痛みの程度と、痛みなく動かせるROMを変化を検証しています。


研究タイプ: RCT, double-blinded, placebo-controlled

被験者: SIS患者30人、convenient sample (定員を満たすまで募集し続ける - バイアスの可能性あり)

Inclusion Criteria: 以下のSISスクリーニング項目のうち、最低2つは陽性―1) 過去6か月間以内に一週間以上続く肩関節前方・もしくは外側に痛み;2) (+) painful arc; 3) RC tendonの圧痛; 4) 外転のisometric contractionで痛み; 5) (+) Jobe’s (empty can) Test / 且つ以下のsubacromial impingement testsの最低一つが陽性―1) Neer Test; 2) Hawkins Sign; 3) Yocum Test(これらの診断基準の根拠は?一人の医師が一貫して判断したのか、複数の医師がいたのか?)

Exclusion Criteria: 脱臼、骨折、shoulder complexへのtrauma、過去6ヶ月以内の肩関節手術(なぜ6ヶ月?短くない?)、頸椎損傷疑い、検査セッションの未完了(セッション中に患者が出ていくようなことがあるってこと?ドロップアウトは除外するということ?説明不十分)、急性炎症を伴うRC完全断裂(急性炎症を伴ってなければ完全断裂でも除外されないということ?不明瞭)

Confounding Variable操作?: 検証期間中の1週間はNSAIDsの使用と運動は原則禁止(complianceはどうして計測したのか?self-reportならば、それが正しいという根拠は?)


Block Randomizationを用いてExperiment Group (n = 15, mean 46.53 ±13.31)Control Group (n = 15, mean 46.6 ± 14.24)にグループ分け(Power analysisをした上で、必要な被験者各グループ15名の最低条件を満たしている; 95%CIは決定的だったと言ってよいのか?せっかくだったら求めておいて欲しかった; Table 1にグループ別のdemographicが記載されているが、p valueが書かれておらず、homogeneityは不明。ベースラインでグループ差が存在した可能性あり)

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テーピングはスタンダードな5cm幅のベージュのKinesioTex Tapeを使用。Experiment Group(A)1) Supraspinatusの停止から起始までYストリップを用いたあと、2) YストリップをDeltoid上に、そして3) Iストリップをcoracoid processからposterior deltoidへ貼り、最後に4) YストリップをLower trap(これはKTテープのスタンダードテクニックらしく、Kase氏によってガイドライン化されているものだそう、一人の試験者がテーピングを全て担当; 再現性はどのくらいあるのか?有資格者でないと一貫してはできないようなものなのか?Intra-and Inter-reliability?)、合計4本のKTテープを貼るControl Group(B)は3つのIストリップをテンションを全くかけずにそれぞれAC jointdistal deltoidlower trapに貼るのみ。被験者は自身がどちらのグループかわからない(blinded)


患者はテープをしたまま3日間過ごし、3日目の午後に自分でテープをはがす。4日目の朝に再来診し、再評価したのち、また試験者が同様にテープを貼って自宅へ帰す。再び6日目の午後に各自でテープをはがし、7日目朝に来診という流れ(テープを指定の時間に剥がしているというcomplianceの計測はなし。もし1日目や2日目ではがれてきてしまったら?)


Outcome Measures: pain-free 可動域の限界を超えて動かしたときの痛み(VASADLで感じる痛みと必ずしもcorrelateしないのでは?)、夜中に感じた一番高い痛み(VASrecall bias?)pain-free ROM (外転、屈曲、スキャプション、スタンダードgoniometerを用いて、一人の試験者が計測Reliabilityvalidityは既に文献でestablishされていると書かれているが、intra-rater reliabilityなど、具体的な数字の提示はない、患者のポジションなどの指定の描写もない、なぜこのmotionが選ばれたのか?Goniometerがベストなのか?外旋、内旋はなぜ測定から外したのか?)を記録。計測者は被験者のgroup assignmentに対してblinded

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Results: Pain during movement (VAS) ― Exp: Baselineの5.86 ± 1.80から直後3.73 ± 1.76、3日後3.75 ± 1.76と、一週間後の2.9 ± 2.25へと著しく改善(p = 0.000); Cont: Baselineの5.53 ± 1.55から直後5.13 ± 2.26, 3日後4.6 ± 2.02、一週間後4.2 ± 2.70へと変化したが、これは統計的に有意でない(p = 0.06)。Nocturnal pain (VAS) ― Exp: 6.73 ± 1.86 → 3.66 ± 2.41 → 3.8 ± 2.21 → 2.7 ± 2.34へと著しく改善(p = 0.000); Cont: 5.86 ± 2.44 4.8 ± 2.95 3.93 ± 2.63 3.73 ± 3.23 (p = 0.02)でこれも著しく改善。しかし、回復幅は総じてExp Group のほうが大きい (effect size unreported、VASのMCIDが通常3-3.5であることを考えれば、これは臨床的に有意でない?というかそもそもbaselineのhomogeneityはあったのか?)。Pain-free ROM ― Exp: 外転、屈曲、スキャプションの全てでROMが著しく改善(p = 0.000, 10-19°上昇、これは臨床的にも有意なのでは); Cont: 屈曲は統計学帝に優位な変化なし(p = 0.40, 4°程しか上昇せず)、外転とスキャプションはそれぞれ9°(p = 0.005)と8°(p = 0.01)上昇。しかし、やはり気になるのは痛みもROMもExp Groupのほうが総じて悪い状態からのスタートだというところ。これを考慮し、pre-treatment scoreをcovariateとした分析を再度行うと、KTテープがPlaceboテープよりも優れた効果を発揮したのはテープ直後のPain during movement (p = 0.009)とNocturcal pain (p = 0.04)のみで、一週間後の変化はPain during movement (p = 0.10)、Nocturcal pain (p = 0.23)、Abd ROM (p = 0.34), Flexion ROM (p = 0.70), Scaption ROM (p = 0.73) 全てにおいてグループ間の差は認められなかった。

結論: KTテープは使用直後に痛みを減少させる即効性はあるが、その効果は3日間/一週間保たれるものではなく、また、ROMには影響を生まない。すぐに痛みを軽減したい場合には使用価値はある。
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#2: Hsu et al., 2009
こちらは台湾の論文。これもイントロと研究の導入は上の論文とほぼ同じ。少し違うのが研究のデザイン、こちらはcross-over designを採用しています。で、検証しているのは肩へのKTテープ介入によりscapular kinematics、muscle strength、EMG activityに変化は見られるのか。

研究タイプ: Cross-over (個人的にCross-overは嫌いではない…同一のグループがExpにもなりControlにもなる), random order of treatment (KT→placebo, or placebo→KT), placebo-controlled
被験者: タイペイの野球アマチュアチーム選手17人(23 ± 2.8歳; ピッチャー9人、野手8人; 多くのATにとってはrelateできるpopulation)。Power analysisはなく、95%CIも求められていないめ、この人数で十分だったのかは疑問

Inclusion Criteria: 以下のSISスクリーニング項目のうち、最低2つは陽性―1) 過去6か月間以内に一週間以上続く肩関節前方・もしくは外側に痛み;2) (+) painful arc; 3) RC tendonの圧痛; 4) 外転のisometric contractionで痛み; 5) (+) Jobe’s (empty can) Test / 且つ以下のsubacromial impingement testsの最低一つが陽性―1) Neer Test; or 2) Hawkins Sign(これらの診断基準の根拠は?一人の医師が一貫して判断したのか、複数の医師がいたのか?)

Exclusion Criteria: 脱臼、骨折、shoulder complexへのtrauma、過去6ヶ月以内の肩関節手術(なぜ6ヶ月?短くない?)、頸椎損傷疑い、検査セッション(x2)の未完了(ドロップアウトは除外するということ?説明不十分)。

**つまるところShakeri et alの研究のinclusion/exclusion criteriaと酷似。時間軸から言ってあちらがこちらを真似したというのが正確か。唯一の違いは、こちらの研究では1) SIS specific special testsにYocum Testが含まれていない; 2) Exclusion Criteriaに急性の炎症を伴うRC断裂がはいっていない、の二点。


Outcome Measures: Scapular kinematics肩後方にテープで張り付けた3つのセンサーを用いて計測(記事内にはこのセンサーはKTテープの邪魔にならないように位置したと記述されているが、肌に『余計なテープが張られている状態』であるのもまた事実。この研究結果がKTテープだけによるものなのか、センサーを固定したテープもあって初めて生まれる効果なのかは不明)。EMG activityはSerratus Anterior (SA)、Upper TrapとLower Trapにそれぞれ電極を装着 (SIS患者のSA、Lower Trapは頻繁に抑制され、Upper Trapが過活動をおこしているから、という背景説明は納得。しかし、前述のように電極の装着も厳しいことを言えば少なからずneuro inputを作り出す。検証結果に影響を起こしていないという保証はなく、臨床での再現性を下げている可能性も)。Scapular kinematicsとEMGの計測は患者に2kgの重りを持たせ、scaptionをゆっくり(メトロノームのペースに合わせて4秒かけて上げ、4秒かけて下げる)と繰り返している状態で行う。 Muscle strengthはLower Trapをターゲットに絞り、Hand-held Dynamometerを用いて記録。3回isometricの最大収縮をさせて、blindedな計測者が数値を記録(validity関するメンション無し、写真もないので私はイメージしにくい。Isometricの筋力が、スポーツパフォーマンスにどういう意味をもつのか、applicabilityは不明)

ここで初めてblindingが言及されたということは、Scapular kinematicsとEMGに関してはblindingが行われなかったと考えるのが理に適っている。加えて、これら3つのoutcomeは全て利き手において計測したとあるが、どうして「SIS(患)側」ではなくて「利き手側」という言葉遣いなのか?利き手が患側でなかったケースはないのか?説明が不十分。これらの3つのOutcome Measureとも、pilot studyを通じてwithin-day reliabilityがestablish済み(ICC = 0.74-0.99)という点は大いに評価できる

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今回のテーピングはLower Trapのみ。5cm幅のKinetioTex Tapeを使用。Yストリップを一本だけ用いる(↑写真左: これもKase氏によって提唱されているものなのか?ひとつ前の研究に使われたYストリップとは上下が逆さま。同一とは言えなさそうだが…)。Placebo Tapeは全く同じところに同じテープを、ただしKTテープではなくて3M Micropore Tape (ガーゼ固定などに使われる、伸縮性のない硬いテープ、↑写真右)を使って施す。場所が同じというのは興味深い…。

被験者はBaseline Testを行った後、3分休んでテーピングの施術を受ける。そのあと、再テスト(十分な休憩時間だったのか?疲労はなかったか?)。3日以上空けて(3日という数字は先の研究を見た後だと多少説得力があるが、この論文でなぜ3日で十分だという結論に至ったのかは言及されていない)、二度目の計測は初回でしなかったほうのテープを受けて行う。


Results: Scapular Kinematic ― 総じて1) KTテープはPosterior tiltとIRを増加させる傾向に、2) PlaceboテープはPosterior tiltとIRを減少させる傾向にあり、3) どちらのテープもUpward rotationを腕の上昇前半(30-60°)では減少、それ以降では増加させる傾向にあったが、ふたつのテープで統計学的に有意な(p < 0.05)差が認められたのはarm elevation 30-60°間のPosterior tiltの度合いのみ。Scapular displacementにはふたつのテープで違いは見られず。

EMG ― どちらのテープもscaptionの間、SAとupper trapの活動を増加させる傾向があることが確認された。特にPlaceboテープは90-120°のarm elevation時にKTテープよりも著しく高い活動を記録。対して、Lower trapはPlacebo テープをずると活動が減少する一方なのに反し、KTテープは序盤こそその活動を卯減少させるが、後半、特に腕の下降時には著しく活動が上げるという(p < 0.05)相違が診れれた。

Low Trap Strength ― テープをする前と後で、KTテープは筋力が平均2.0±3.9lb上昇したのに対して、Placeboテープでは0.7±3.3lb減少。この差はalmost statistically significant (p = 0.05)。個人的にはSDの大きさと、2.0lbという筋力の上昇がどんな臨床低価値を伴うのかが気になるところ


結論: KTテープはSISとリンクされることの多い1) Posterior tiltの減少、2) (Late elevationでの)Upward rotation不足を解消するのには即効性があると言える。腕の下降時のLower Trapの活動/筋力の上昇も興味深い。トレーニングをして筋力を挙げようと思えば4-6週間かかるといわれるところを、KTテープで瞬時に作り出せるのは現場での応用力がある。

今回の研究ではテープによるIRの減少効果は確認できなかった(過度なIRはscapular wingingにリンクされる)。

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#3: Kaya, Zinnuroglu, & Tugcu, 2011

こちらはトルコの研究。なんて国際色豊か。この研究でも、SIS(非アスリート、一般人)患者に『KTテープ+エクササイズ』 vs『 超音波・ヒートパック・電気治療 + エクササイズ』の比較を行い、2週間の治療の結果を痛みとdisabilityの観点から比較。


研究タイプ: Non-randomized clinical trial, no placebo, no blinding

被験者: 該当クリニックに肩の痛みを抱えて来院し、下記の条件に当てはまる患者60人(power analysisの数値、各グループ22名を大きく上回る人数)。最初の30人がPT group (59.5 ± 7.9歳)、後半の30人がKT group (56.2 ± 7.2歳、Randomではない。リクルート期間は2006年9月から2008年12月まで、Historyなどの時期的な影響はなさそうに思うが…。Group比較を見る限りベースラインのdemographicに多少違いがあるように見えるが、「実験開始時にグループ間のDASHとVASに大差なかった」とあるだけで、具体的なp値は報告されず。homogeneityは不明)に分類された。

Inclusion Criteria: 運動面を問わず、150°のelevation前に出る肩の痛み(<70°でも?Face validityに欠けているような?); (+) Empty Can; (+) Hawkins-Kennedy; ADLのdifficulty; 18-70歳 (くどいが、これらの診断基準の根拠は?一人の医師が一貫して判断したのか、複数の医師がいたのか?)

Exclusion Criteria: intraarticular steroid injection (過去数ヶ月以内とかではなく、生涯?); 肩帯骨折; 肩関節脱臼・亜脱臼; AC Sprain; 頸椎障害疑い; 過去12週間以内の肩の手術歴 (12週間は短くないか?); 6ヶ月以上続く肩の痛み (既往歴に関してはrecall biasや嘘の可能性あり。加えて、例えばAC sprainなどはどうrule outしたのか?)

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今回のテーピングspace & lymphatic correction techniqueということで、リンパの流れを促進してスペースを確保するのが目的で(あくまで仮説で、立証されてはいないと思うのですが)。Supraspinatus(水色), deltoid (ピンクのTストリップ), teres minor(黒)にそれぞれテープを貼ったそう(一人のセラピストが全て担当。もう一本、肩関節前方に見えるピンクのストリップに関して説明がないのだけど…)。


KT Group : KTテープとHome Exercise Program (isometric exercises, ROM, SA/trap/ERのエクササイズ、ストレッチ(Posterior capsule & pec minor)、trapのリラックス(なにこれ?)を一日2回行う (2週間の治療期間中、3回テープ治療を施した、と後述があるので平均4-5日後にテープを貼り直した計算になるが、詳しい記述はない。4-5日間以内にはがれてきたら?)

PT Group: US (Pulsed, 1 MHz, 1 W/cm2 for 5 min, Duty cycle? Applied where? Calibration? 効果を出すにはdoseが低すぎるのでは?), TENS (20 min, 他のparameterは? High vs low frequency?), エクササイズ(詳細一切なし)とHeat Pack (20min) + 上記のHome Exercise Program (総じて描写が曖昧すぎ、再現性がない)を一日一回、毎日行う

HEPのcomplianceはどう確認されたのか?Modalityによる治療は誰が行ったのか?全被験者が全セッションに参加したのか?仮にGroup 1のOutcomeが優っていたとして、それがストレッチとtrapのリラックスに起因しなかったという保証はどこに?これは致命的なデザインミスでは?その他、2週間の期間内の痛み止めの摂取やスポーツなどのactivityの制限は設けなかったのか?

PT Groupの被験者のうち、5人が「治療プロトコルから逸脱」したとして分析から除外(Dropout率16.7%)。1人はMRIでSLAPが見つかり手術; 3人は痛みがひどく、trigger pointの注射を行った; 最後の一人は治療の後半1週間に来なくなった(理由の説明があるのは好ましいが、5人目のただ来なくなった患者の理由はもっと説明が必要。なぜITT分析を用いなかったのか?)。


Outcome Measures: Interventionは2週間毎日継続され、DASHはベースラインと2週間後に計測、VASはベースライン、一週間後、二週間後の3つのタイムポイントで数値を測定。Data collectは第一と第二著者が行ったようで、blindingは言及されず

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Results: DASH ― 両グループ共にBaseline vs 2週間後では著しく機能回復したが (effect size, KT = 1.99, PT = 1.32、両方ともlarge)、2週間時点ではKT GroupのほうがPT Groupよりより著しく(Table 2: p = 0.027)高い機能が認められた。

VAS ― at night (Table 3), at rest (Table 4), by movement (Table 5)は2週間を通じて両グループとも著しく減少したが、総じてKTGroupのほうが回復幅が大きく、中でも治療開始から一週間時点ではPT Groupとの差が著しく(p = 0.01, 0.001, 0.001)開いた(2週間時点ではPT Groupの回復に追い付かれる感じで大差はなくなっているが、それでも回復幅はKT Groupのほうが優っている)。


結論: 2週間という短期間ではあるが、毎日行ったmodality & rehabの治療に比べ、たった3回のKT Tape applicationでそれを上回る機能回復・痛みの軽減が実現できたということで、労力・コスト共に優秀と言ってよい。

統計は美しいがデザインの大きなflawが目立つ研究。結果が面白いだけに惜しい。


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  by supersy | 2017-02-08 14:03 | Athletic Training | Comments(0)

Dream Big, and I mean it ― 若者よ、年寄りのいうことを聞くな。

今回のブログはただの備忘録のようなものなので、偏見と主観でしか書かれていません。読み流していただけるとありがたいのですが…
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教職についていると、学生が「夢」を語るのに触れる機会が多くあります。例えば、ATプログラムに入れるか入れないかを決める一年に一度の選考面接で、「あなたの5年後、10年後の将来の夢はなんですか」という質問を毎年受験者全員に尋ねるのですが、半数以上の学生が「プロスポーツで働きたいです!」と元気よく返してきます。それらの返事への私の反応はというと、ついついほぼ反射的に(心の中で)顔をしかめてしまうんですよね。プロスポーツで働く、というのがどういうことかわかっているのかな…、どんなに狭き門か(プロで働くATは、全米NATAメンバーのたった2%と言われています1)、実力以上にタイミングとネットワーキングが必要だということとか、考えたことあるのかな…、だったらうちじゃなくてプロと直接繋がりのあるもっと大きくて有名な大学に行った方がいいのに…、プロスポーツの医療現場は決して華やかなことだけではないし、高校・大学などの他のどのsettingよりも政治的・経済的なチカラが大きく加わるので理想的な医療環境は作りにくいよ…、プライベートは無いくらいの激務だし、今の実習・授業量で音を上げているようではとても無理だよ…。ネチネチと彼らに説教したくなる気持ちをぐっとこらえて、「なるほど、そうですか、では次の質問です」と返しますが、頭の中で「この子は業界のリサーチが足りない、見通しがちょっと甘い子かな」と判断してしまっていたりもします。

しかし、ふと手を止めて辺りを見回してみると、自分の周りにはアメリカのプロの現場で働くATの知り合いが山のようにいます。メジャーリーグサッカー(MLS)、NBA、NFL、MLB…それぞれの分野で輝いている友人知人らを見ながら、改めて自分の中にある偏見に気が付きます。「彼らは『2%』というオッズに勝ち、しっかり夢を実現させているじゃないか」「きっと彼らも学生の時に『プロで働きたい』と宣言し、一度は他人に笑われた経験があるだろう」「しかし、彼らの信念をrespectし、支える周りの人がいて、それに見合う以上の努力を彼ら自身が積み重ねて…最終的に彼らは目的地に立つことができている」「はて、私は教育者として学生の夢を笑う立場にあるのか?彼らに何を『夢』見るのが正しくて何が正しくない、と教えるような立場にあるのか?」「熱心な教育者のフリをして、学生を一番信頼していないのは私なんじゃないか?」…と少し立ち止まって考える機会があり、私は自分の「反射的な嘲笑(例えそれが物理的でなく、心の中だけのものであっても)」を大きく反省しました。学生は彼らが見たいだけの大きな夢を見て、それを語る資格がある。彼らができること、できないことを定義するのは私ではない、彼らと彼ら自身の行動です。"Dream big (夢は大きく持て)"と言いますが、何がtoo bigでtoo smallかは彼ら自身がこれから人生を歩み進める中で決めればいいことで、私が私の今の物差しを使ってやいやいというようなことではありません。いやー、歳を取る、経験を積むというのは恐ろしい。独りで勝手に「分かった気」になって、若い子に「分かったつもり」で説教をしたくなってしまうのです。私が「分かって」いるのはあくまで「私の人生」と「業界の過去」であり、「他人の人生」と「業界の未来」は私の想像できる範疇を超えている…という実に当たり前のことを、私は私自身に強くしつこく言い聞かせなければなりません。例え女の子の学生が「(土地柄熱心なファンの多い)サンアントニオ・スパーズで働きたいです!」と言って、「あそこは女性ATは雇わない」と私が見聞きして「知って」いるとしても、「それは無理だよ」と断言し、彼女の夢を摘んでしまってはそれこそ「無理」になる。女性でも同じ土俵で働けるはずだ、と信じてやまない女性ATがこれからの弛みなく努力を重ね、波となってうねりとなってプロの世界にぶつかっていくことで新たな道が拓けるんだと思います。私の尊敬する磯AT(女性初のNFLアスレティックトレーナー)もそうして道を切り開いていったんでしょう。先のことなど誰にもわからない。教育者として、学生の夢を広げる使命こそあれ、狭めるような心持で仕事をしていたのは本当に反省すべき点でした。

夢のある若者は、その存在だけでも大きな財産であり、宝なのだということを、業界そのものが受け入れないといけませんね。

そんなわけで若者よ、「無理だ」という年寄りの言葉になど耳を傾けるな!夢を大きく大きく持ってください。そしてそれらを語るのをやめないでください。「これをやりとげるのだ」という夢を声に出して宣言するというのは「しおりを挟む」「再確認・再認識する」という意味も持つ、見た目以上に重要な行為です。「夢」を多角的にリサーチし、分析し、必要なものを集め、目標に向かって一歩一歩進んでいってください。周りの景色も楽しみながら、知らぬにも触れながら、見聞も広めながら…自分の中の芯を太く太く、根を深く深く生やしていけば、「無理」と言われた夢を実現できることなどいくらでもありえます。
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"You can do anything when you are young and stupid (若くてバカだと、なんでもできる)."と私は自分の身の上話をするときによく言うのですが、私も17歳の時「アメリカへ留学をしたいと思っています」と言って多くの大人に笑われました。英語も喋れないのに成功するわけがないと言われました。でもやってみなきゃわからないよね、という若さと浅はかさ、そして盲目的なまでの情熱があったからここまで来ることができたのかもと思っています。

若者よ、バカであれ。若者よ、盲目であれ。貴方たちの若く青いお尻はまぎれもなく貴方たちの武器である。そのお尻をふりふり、前に進むのです。我々のような年寄りに足を引っ張られ、歩みを止めないでください。「へーそういう見方もあるんすね」とするりとかわし、地面を蹴ってそのマントで空高く高く飛んでいってください。我々の手の届かないところまで。貴方たちこそがこの業界の未来。君たちの活躍を心から楽しみにしています。

1. NATA. Where ATs Work. http://www.nata.org/about/athletic-training/job/settings. Accessed on February 2, 2017.


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  by supersy | 2017-02-03 17:00 | Athletic Training | Comments(2)

Globe Luxation - 目ん玉が飛び出たら、どうするか。

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先日、バスケットボールの試合中に選手の眼球が飛び出すというとんでもない怪我があり、話題になりましたね。そんな怪我どうやったら起こるの?動画を見たい、という方はこちらをどうぞ。見たくない方は再生しないでくださいね。
*今回、この動画以外にグロテスクな画像はこのブログに含まれていません。苦手な方も安心してお読みください。


この件に関して、学生やスタッフらとも、「目が飛び出したら…どうしたらいいんだと思う?」という議論になり、私を含め誰も正解を知らなかったので調べてみました。少しまとめてみます。

とにかく複数の文献で共通して言われているのが「滅多に起こる怪我じゃない」ということ。眼科医が長いキャリアで一度出会うか出会わないかくらいの発症率1らしく、今まで英語文献で発表された症例がたった34件しかないそうです。2 34件のデータを検証してみると、
 - 患者の男女比は4.7: 1
 - 原因は交通事故 52.9%, 転倒・落下 8.8%, 衝突 5.9%, 暴力・乱暴 5.9%, その他 26.5%
 - Traumaticな症例は若い患者に多く、多くは眼窩骨折を伴う(67.6%)
 - ほとんどが前方突出であるが、paranasal sinusesに向かって脱臼することもある
 - Unilateralのケースほうがbilateralよりも多い(全体の97%)
 - 最悪の合併症は視神経の断裂(=視力完全喪失, 全体の38.2%のケースで見られる)
 - 38.2%のケースでは視神経(optic nerve)に損傷が見られず、視力は回復している
 - 眼球そのものが無傷である場合、まずはreposition(修復、後で記述します)を試みたケースがほとんど(73.5%)で、機能、見た目、心理的な観点からこれが最も安定したアウトカムを生んでいる
 - 痛みが原因、もしくは患者の要望などで眼球摘出を行ったケースは5.9%
…だそうです。このsystematic review2 はなかなか面白かったので興味がある方にはおすすめします。視神経の断裂もですが、 外眼筋の裂傷を伴うことも、伴わないこともあるそうで。1それらの損傷の有無により、長期障害が出るか出ないかもケースバイケースになるわけですね。

受傷メカニズムの種類は大まかにわけて3つあり、1,3
Traumatic: スポーツなどで眼球に衝撃がかかるか、自転車・バイクでの転倒事故や交通事故などの急な減速によって起こる
Spontaneous: 生まれつき眼窩の造りが浅い人やFloppy eyelid syndrome(慢性乳頭結膜炎により上眼瞼が伸びきったゴムのように緩まり、少しの力で外翻・べろんと引っ繰り返すことができるようになっている状態。肥満体系の男性によくみられる)など、特定の疾患を持った患者はnon-traumatic, spontaneous(外からの力が加わることなく自発的・自然)に脱臼が起こり得る
Voluntary: oedipismという精神疾患の患者さんは自分の意志で自分の目を穿り出したりもするそうですぎゃーーーーーやめてーー。
Spontaneousなケースでいうと、瞼をつまんで動かしていた、力んでいた(valsalva maneuver)、麻酔下だった、4 コンタクトレンズを入れようとしていた5…などが今までの症例報告から浮かび上がる「脱臼を引き起こしやすい動作・要因」なんだそうで。

修復は「至ってシンプル」。患者に下を見るよう指導して、上瞼を掴んで持ち上げながら、人差し指で眼球上部を押し下げるように修復するんだそうで。6 うーん、いや、まあ、シンプルっていいますけど、そして修復は早いほうがいいようですけど、我々ATがやるのにはscopeを超えている、というか、訓練を積んでいる事柄ではないので、私はやっぱりこれはできないかな。眼球を乾かさないように何かで覆って、EMSが最も妥当かなぁと思います。

いくつか症例報告を読んだんですけど、中でも興味深かったものを。
1) 27才の男性、自転車から落ちて左眼球を前方脱臼。1 その一日後、激しい痛みと左の視力喪失で来院(つーか、なんで一日待つん?)。描写を読んでぐぇっとなったのが「眼球後方が閉じた瞼に挟まっている状態で」というやつで、記事には写真もついてるんですけど、この画像では眼球がかなりはっきりくっきり飛び出ています(後で読んで分かったのですが、眼球が前に飛び出すと、orbicularis・眼輪筋が反射的に収縮して結果、眼球をさらに前方突出させてしまうんだそう。で、瞼が後ろで閉まってしまって戻れなくなる、と)。緊急手術で顔面麻酔をして上記のように上瞼を前方に引っ張りながら、眼球を押して脱臼修復。千切れた眼筋を探すも、腫れが邪魔して見つけられず。一週間たって痛みは改善されたものの視力回復は望ましくなく、眼球の動きにも制限あり(abd以外はほとんと動かず)。CTスキャンで確認すると視神経の断裂が確認でき、筋肉の損傷も激しかったことから、視力と眼球運動の回復は見込めないことを患者に伝えた…と。

2) 46才のCOPD患者が病院に入院中、両眼球を脱臼。3 聞けば以前(過去4-5年)にも脱臼をしたことが数回あり、決まってCOPDの症状が悪化しているときに起きるのだという。上記と同じく、上瞼を引っ張り上げながら押し下げて修復。しかし、ICUに入院中、2時間に一回という割合でその後も脱臼を起こし続けたのだとか。5-6回目くらいにこりゃかわなんと、やむなく瞼板縫合を行ったが、その後患者はCOPDの合併症で入院から3日後に亡くなったそう。2時間毎って…壮絶だ。著者は「(COPDの影響で)上がっていた胸郭内のプレッシャーが眼窩内のプレッシャーも押し上げる形になり、さらにこの患者の場合は既に弛緩していた眼筋・靭帯もあってこれだけ脱臼を起こし成すくなっていたのだろう」と考察しています。

3) 5歳の子供がバイクと接触する交通事故で病院へ。2 左の眼球脱臼と目の周りに激しい裂傷あり、視力喪失。CTにより視神経のavulsionと眼窩の外側壁・上壁の骨折が認められる。手術によって骨折部と裂傷、脱臼の修復が行われる。一か月後、目のわずかな突出あり、視力喪失、眼球運動も制限あり。3ヶ月たっても痛みが取れなかったのと、患者のコスメティックな希望により、眼球摘出の手術を行い義眼を入れた。

などなど…他を書いてもきりがないのでこれくらいにしておきますが、いやー、見ているだけで、こう…。しんどい記事ばっかりでした。調べてみたのですが、スポーツの現場でこの怪我が起きた場合にはこう対処すべし!というガイドラインは見つけられませんでした。やっぱり症例数が少ないですもんね。修復方は確かにそれほど複雑には聞こえません。しかし、くどいですが我々はその専門訓練を積んでいませんし、骨折、筋肉や視神経の断裂などの複雑なcomplicationが起こっている可能性があることも考えれば、我々が安易に修復を試みるより、眼球を保護して救急車、という対処法が一番真っ当ではないかと思います。もし他の救急対応をご存知の方がいましたら、ぜひ教えてくださいー。

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さて、冒頭の選手ですが、上のツイートにあるように幸運にも視神経の損傷はなく、視力にはどうやら問題はなさそうです。筋肉も無事で、眼球運動も問題ありませんように!もう二度とこんな怪我をしなくてすむよう回復することを祈っております。

1. Kumari E, Chakraborty S, Ray B. Traumatic globe luxation: A case report. Indian J Ophthalmol. 2015;63(8):682-684. doi: 10.4103/0301-4738.169795.
2. Amaral MB, Carvalho MF, Ferreira AB, Mesquita RA. Traumatic globe luxation associated with orbital fracture in a child: a case report and literature review. J Maxillofac Oral Surg. 2015;14(Suppl 1):323-330. doi: 10.1007/s12663-013-0539-y.
3. Kumar MA, Srikanth K, Pandurangan R. Spontaneous globe luxation associated with chronic obstructive pulmonary disease. Indian J Ophthalmol. 2012;60(4):324-325. doi: 10.4103/0301-4738.98720.
4. Clendenen SR, Kostick DA. Ocular globe luxation under general anesthesia. Anesth Analg. 2008;107(5):1630-1631. doi: 10.1213/ane.0b013e3181839262.
5. Kunesh JC, Katz SE. Spontaneous globe luxation associated with contact lens placement. CLAO J. 2002;28(1):2-4.
6. Tse DT. A simple maneuver to reposit a subluxed globe. Arch Ophthalmol. 2000;118(3):410-411.

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  by supersy | 2017-02-01 22:30 | Athletic Training | Comments(0)

Positional Release Therapy講習へ行ってきました。

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今週末はダラス・フォートワースで、Positional Release Therapy Institute (PRTi)によってオファーされているLower Quarter (下肢) Positional Release Therapy (PRT)の講習会に参加してきました。字面はPRIと似ていますが、全く別の団体による、別内容の講習です。ストレイン・カウンターストレインや、ポジショナル・リリース・セラピーといえばご存知の方も少なくないと思いますが、私が今回学んできたのは、Dr. Jonesが提案した1964年のオリジナルなものでも、かの有名なDrs. D'Amobrogio & RothやDr. Chaitowが受け継いだものとも少し異なり、Dr. SpeicherというPositional Release Therapy Instituteの創設者が少しツイストを加えた、時系列的には最新のものです。Dr. Speicherは私の博士課程の授業も担当してくださった、文字通り私の「師」でもあり、2年前に彼の授業を履修したときにはこの方のエビデンスの読み込み具合、そしてNeuroscienceへの専門性と情熱に文字通り圧倒されました。それに反映されるように、彼の授業は、博士課程の間で最も刺激的で、最もしんどい(褒め言葉です。朝の2-4時まで寝かせてもらえないくらいヘビーな課題が次から次へと出ました)ものでしたし。そういう先生とほど、仲良くなり後々付き合いも続くものです(笑)。

PRTに以前から興味がなかったわけではないのですが、「Tender Pointを探して圧迫して、その筋肉を最短縮位に持っていって90秒待つんでしょ?難しい技術ではないし、解剖学と神経学の知識があれば臨床で欲しい成果を出すのに十分なレベルでは使えてるから、講習を取るまででもないかな」と考えていました。しかし、Dr. Speicherとこないだの学会でばったり会ったときに直接施術してもらって「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!私が知っているPRTとは全く違う!」と衝撃を受け、以来、彼の教えるPRT講習には早いところ参加しなきゃいけない!と決意したところだったのです。今回の講習はタイミングも場所も完璧だったので、やったぜふらりと行ってきました。

彼のアプローチは1) 筋肉や靭帯、腱やfasciaにあるtender pointを触診によって見つける (同構造内に複数ある場合は最も痛みのレベルの高いところを治療箇所とする); 2) その個所を「圧迫」するのではなく、患部の上に「軽く」指を置いてfasciculation(線維束性攣縮、ものすごく微細な組織の揺れ)を感じながら、その揺れが最大になるポジションまで患部を動かす。このとき、目指すポジションは基本的には組織の短縮位であるが、個人差があり、必ずしも最大短縮位とは限らない; 3) 患者に深呼吸をさせる。このとき、呼気と吸気それぞれのfasciculationも感じながら、もし呼気の場合にfasciculationが増える場合には空気を吐ききらせた後に、吸気にfasciculationが増える場合には吸い切らせた後に数秒ポーズさせる; 4) fasciculationが消失するまでそのポジションを保つ(多くの場合は90秒かからない)…といった感じです。文字で書いても「は?」という感じかもしれないので、Dr. Speicherのデモ動画をここに貼っておきます(僧帽筋上部の治療動画です)。


PRTの根本にあるセオリーは比較的シンプルで、多くの筋肉などの「張り」は実際に組織が拘縮を起こしているというよりは(もちろんその可能性も無くもないですけれど)、神経反射の影響が最も強いのではと睨んでいるわけです。つまり、特定の筋肉の過活動によって緊張が生まれ(strain)、その対となる筋肉も引っ張られて緊張が生まれ(counterstrain)、stretch reflexの状態が慢性的に続いた結果、muscle spindleの閾値が下がってhyperirritabilityが起き、痛みと張りが取れなくなってしまっている、というわけ(このとき、筋緊張によって局所的に血流も遮られるため、hypoxiaによる痛みと、ATP生産不可によるenergy crisisも付随します。これらは状況を悪化させる要素にしかならないでしょう)。なので、この解決はストレッチ(このセオリーではむしろ悪化しますね)でもsoft tissueを無理やり動かすことでもなく、まずは筋肉を短縮位に持っていってGamma Gainを減少させ、muscle spindleの閾値を下げてやればいいのでは?というのがこのアプローチの軸なのです。

このコンセプト全てに私が賛同するかは別として(大きな目で見ればまだまだ犬が自分のしっぽを追っているように感じるのですが)、私がこのアプローチの最大の魅力だと感じるのはその即効性と「患者が痛みを感じない」点です。痛いところをぐりぐりやるのに達成感を感じる施術者というのも世の中にはいるのかもしれませんが、私は「患者が痛みを感じずに治療できればそれに越したことはない」と考えています。Dr. SpeicherのPRTが追っているのはあくまで「fasciculation」であり、「圧痛」ではないので、痛みも無くものの1分程の施術で患者の痛みが(10段階の)9から0に落ちたりする様は爽快以外の何物でもありません。
(例えば痛みのレベルが高すぎて、PRIエクササイズなどをしようにもとにかくうんともすんともリラックスができず、交感神経優位になりすぎている患者さんに一発こういうテクニック挟むと、お互いのアプローチを補足・補完し合えていいんじゃないかなんて思うわけです。これはDr. Speicherも賛同しています)
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しかしねー、fasciculationが最大になるポジションを探すのが、本当になんというか、言うは易く行うは難し…。Dr. Speicherはさすがにそこがずば抜けてうまいんですけど、私はまだまだ。それでも、2日目の終わりの頃にはそれまで6から4くらいにしか減らなかったパートナーの痛みが7から0、6から0まで落とせるようになりました。彼みたいにもっともっとうまくなりたけりゃ、練習するよりほかありません。今回は下肢の授業でしたが、今度は上肢も出たいな…。頭蓋の奴が一番興味あるなー。
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そんなわけで刺激的で楽しい週末でした!Thank you Dr. Speicher for an awesome course!

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  by supersy | 2017-01-17 22:00 | Athletic Training | Comments(2)

月刊トレーニングジャーナル2月号発売 & 脳震盪診断指標としての聴覚テスト

とある講習に参加するため、今週末はダラスに来ています!久しぶりにPRIではない講習で、今日一日目が終了したところです。これね、ずっと「機会があれば取ってみたいなー」くらいの興味があった講習なんですが、ちょっと今回ばかりはどうしても見逃せない理由があったのと、近場+学期が始まる直前の余裕が(まだ)ある週末というタイミング諸々の良さも重なったので思い切って今回初めて来てみました。やっぱり新しいことを学ぶのは刺激があっていいですね!これについての詳しい内容は、次回にまとめたいと思います。
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さて、月刊トレーニング・ジャーナル2月号が発売になっています!連載9回目の今回は「スポーツ障害予防」について書いています。この度、日本のEBP講習でも「予防医学編」を追加したばかりですが(自分ではこれ、なかなかの出来だと思っています)、ATの仕事の中でも一番軽視されがち、そしてサボっていてもバレないのが「スポーツ障害の予防」という分野かなと感じます。今回の記事では、どうして予防が重要なのか、そしてどういう風に現場での「予防」実践が可能なのかなどについて提案をしています。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



では今回は手短に、本題です。月刊トレーニング・ジャーナルの昨年12月号で「脳震盪の評価・診断」についてまとめたところですが、この分野で新しい論文を見つけたのでさくっとまとめます(ちなみにこの論文もオープンアクセスです)。
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脳震盪の評価は多角的でなければならない、幾つものテストを組み合わせて行わなければならない…というのが現代の常識というかスタンダードですが、それでも「患者の報告(self-report)に頼らなくても良い、且つ『これさえやれば間違いない』という客観的な単独テストはないものか」という研究者のクエストは日々続いています。血液検査やNear Point Convergence (NPC)と呼ばれる視覚検査、dual-taskのバランスや歩行テストなどについてはトレーニング・ジャーナル記事でも言及していたように把握していたのですが、今回の論文1 は聴覚刺激とその処理能力についてです。ひゃー、これは知らんかった。
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「聴く」というのは、考えてみれば想像以上に複雑で高等な行為です。聞かなくていい「ノイズ」は無視され、必要なシグナルだけを意図的に拾い、取り込みながら、入ってくる音の強弱やProsody(韻律)に基づき、社会的な意味付けをし、文脈のある情報にconvertする…。この論文の著者らは、脳震盪の影響でこのプロセスの能力が落ちるのでは、そして、それを推し測ることで脳震盪の診断基準として使えるのでは、と提案しています。英語の原文では "...the auditory system may be sensitive to neurological insults that disrupt microsecond-level temporal resolution (p.2)"ということなんだそうです、ごく微量の情報処理の乱れもキャッチできるかも、ということですね。

さて、この論文で検証されたのはspeech-evoked frequency-following responses (FFRs)というものが脳震盪診断を推し測るのに妥当(valid)、且つ信頼性のある(reliable)バイオマーカーか、 ということ。もう少し細かく書くと、脳震盪と診断された子供の患者20人(男子6人、女子14人、平均年齢13.69歳)と、matched control group(健康な被験者20人、男子6人、女子14人、平均13.64歳)とを比較して、1) ふたつのグループのFFR値に統計学的に有意な違いは見られるか、2) 脳震盪の症状の深刻度(PCSS)とFFR値に関連性は見られるか、3) FFR値を元に、脳震盪の有無が判断可能か、4) 脳震盪から患者が回復すると共にFFR値も回復するか、について調べたそう。FFRというものを聞いたことが無かったので、何ぞや?と調べてみたら、「聴覚的刺激によって脳幹にどれだけの電位反応が見られるか」、つーのを計るものらしくてですね。様々な周波数の、ものすごく短い(40ms)音を聞かせてその反応を計測するそうで、つまるところ、どれだけ速く、正確に健全に聴覚刺激を脳でプロセスできるかという処理能力を数値化したもの、と捉えていいようです。

…で。この論文のすこぶる妙なのはMethodsがResultsの後にあるところ。結果(p.2)をいったん飛ばしてp.7にいくと、やっとMethodsセクションが出てきます。Methodsで気になるのが1) 被験者の特徴(Participants demographics)が非常に限定的にしか触れられていないという点(Table 1参照)、加えて、2) Inclusion criteriaが非常にシンプルで、これを読んだだけだとコントロールグループの被験者に脳震盪既往歴があってもオッケーということになるし、学習障害がある子も被験者に含まれてもいいことになるけれど、もうちょっと制限かけなくてよかったのかな?脳震盪患者は脳震盪を受傷してから平均26.7日経過していたということだけど、それってそこそこの期間ですよね。これは論文の最後にこの研究が行われたのがtertiary-care clinic settingだった、という記述があって少し納得したのですが、そうだとしたらそれはそれで、ほとんどの脳震盪患者は14日で『回復』すると言われていますから(今回の被験者は子供なので、もう少し長くかかるでしょうけれど)、脳震盪は脳震盪でもかなり重症のケースを中心に扱った研究ってことになりますね。こういうのはバイアスの素になりかねません。受傷後6-56日という広いrangeも気になります。これも「受傷から〇日以内」と制限してもよかったのでは、と個人的には感じます。あとは、3) 6人:14人で女子が多い(70%)ね、そしてあくまで子供が被験者だから、大人にこの結果は当てはまらないと考えたほうがいいね(大人と子供では脳震盪からの回復にかなり違いがあることは、もう言うまでもありませんね)、ということと、4) Power-analysisを行ったわけじゃないから、各グループ20人の被験者が適切だったかは分からないよね、しかも95% CI求めていないし、point valueの解釈には注意…ということを念頭に入れてデータを見ていきましょう。

そんなわけで、Methods(p.7)から戻ってきての、p.2の結果(results)です。私が重要だと思うものを偏見たっぷり個人的に抜粋します。

1) 脳震盪患者は、受傷していない被験者と比較して、約35%の聴覚刺激に対する反応の低下が見られ(p< 0.001, Cohen's d = 1.223)、特に反応する音のピッチ幅が著しく狭くなっていた(p = 0.009, Cohen's d = 1.14)。
Cohen's dが1を超えてくるのはすごいですね(= effect sizeがどでかい)。そうなると95% CI領域を見ても決定的なんだろうか、と推測はしたくなりますが、なんにせよ書いてくれていないので推測の域を出ません。

2) 脳震盪患者の中でも特に症状の重い患者は、FFR値は著しく低いという関連性が見られた(R2 = 0.548, p = 0.001)。
Correlationとしてはmoderate(中程度、≒0.6)というとこでしょうか。Outlierがどれくらいあったのか、マッピングされたものが見たいなぁ。

3) 言語刺激への反応開始・終了(onset/offset of sound)のタイミングは脳震盪の影響を受けてなかったにも関わらず(p ≥ 0.183)、脳震盪患者は特定の音に対する処理と反応が遅れる(p = 0.002)、という限定的処理能力低下が見受けられた。
時間にすると0.4msという非常に短いものらしいんですけど、脳神経界ではこれはオオゴトである、と著者は述べています。

4) 平均して脳震盪患者は健康な被験者と比較して聴覚情報のcodingにエラーが多く見られ、正確性が低下する(p = 0.011, Cohen's d = 0.841)。

(1)~(4)を繋げてみると、脳震盪を起こした患者の聴覚刺激に対する反応は、Neuro firing(神経的発火)のタイミングは正常でも、特定の音やピッチの取りこぼしがあり、その後の処理が追い付かず、結果正確性も低下してしまう…という感じでしょうか。取りこぼしがあったらそれを補いながらの「意味付け(make sense out of it)」が余計労力のかかるものになりそうっていうのはイメージが沸きます、ふむふむ、なるほど。

5) さらに、被験者の年齢、神経的バックグラウンドノイズ(聴覚刺激とは無関係な電気アクティビティー)などを考慮に入れてlogistic regressionを組み込むと、FFR値を元にこれが脳震盪患者だったか、健康な被験者だったか、言い当てることが可能
Regression Score = 0.596を閾値とすると、90% sensitivity、95% specificity、94.7% positive predictive value、90.4% negative predictive valueが取れるそうな。これだけ見るとImPACTやSACよりも優秀ですね。95% CIは知らんけど。

6) 20人の脳震盪患者のうち、11人(男子3人、女子8人)が一度目の計測から平均34.9日後にfollow-upに来て、FFR値を再度測定する機会があったそうですが(単純に考えて20人中9人のドロップアウト…45%のdropout rateは容認できるものではありませんが…、理由も不明…)、PSCCの著しい回復(p = 0.002)に比例するようにFFR値も大幅に改善(p = 0.031)、コントロール・グループのそれとほぼ一致するところまで戻ったそう。
つまり、FFR値を継続して計ることで、脳震盪からの回復っぷりを可視化することもできそうですよ、と。

そんなわけで、多少限定的な結果も見られたものの、聴覚の能力を推し測ることで患者の脳震盪の有無、深刻度とその回復をモニターすることができる可能性は大いにあるという結論が導かれていました。私はこの研究は様々なレベルで「統計的にもデザイン的にも問題は多く残る」、「一般化はまだ早い」、「実装までにはまだまだ残された壁は多い」と慎重に判断しますが、それでも脳震盪で聴覚にまで影響が及ぶというのは目から鱗が落ちる思いでした。これからのこの分野の研究にも注目していきたいと思います!


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  by supersy | 2017-01-14 22:45 | Athletic Training | Comments(0)

女性医師 vs 男性医師?「死にたくなければ女医を選べ」は本当なのか

「死にたくなければ女医を選べ」日本人の論文が米で大反響

こんなYahooニュースの記事が目に入ってきたので、思わず元となっている論文(free full-text)を引っ張ってきて読んでしまいました。すごく面白かったので、この論文を読んで思ったことをまとめておきます。

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この論文1の第一著者、Dr. 津川友介はハーバード大学で研究されている日本人の内科医さんなんですね。だから冒頭の「日本人の論文で」、になるわけです。書き出しに、まずこんな内容のことが書かれています。

女性医師と男性医師では、そのアプローチに違いがある、ということは複数の研究で既に実証されていることなんだそうです。例えば、女性のほうがクリニカル・ガイドラインにきちんと沿った治療方針を打ち出したり、2-4 予防的治療に積極的だったり、5-12 patient-centeredなコミュニケーションを実践していたり、13-16 スタンダード化されたテストの実践が上手だったり、17 患者に対して心理社会的カウンセリングを提供したり15 するんですって。知ってました?私は知らなかった!今ままで仕事をしてきた数々のチームドクター達を振り返っても、総じてみると確かに…と頷けるところも多いです。

だがしかーし、こういった男女医師によるアプローチの違いが実際に患者のアウトカムにどういう影響を与えるか、という論文は存在しないことから今回の研究が生まれたそう。この研究チームが検証したのは、acute care hospitalに入院してきた患者の 1) 病院に入院してから30日以内の死亡数(30-day mortality)と、2) 退院した場合、退院してから30日以内に再入院をした件数(30-day readmission)で、それらについて女性内科医と男性内科医が治療を担当した場合における比較を行っています。なぜ30日という制限を設けたかについては言及されてません。なんでだろう?

ここまで読んで私が危惧したのは、『単純に結論づけられない、第3や第4の要素の影響が強いんじゃないかしら…。女性医師の数が増えてきたのはより近年と考えれば、男性医師のほうが総じて年齢も高く、経験もあるためにより難しい患者を任されることが多い、故に死亡率も必然的に高くなってしまうのでは?』ということだったのですが、そこはだてにハーバード大の名前を背負っていません。幾つもの観点から修正を加えた複数の分析を行うことで、こういったバイアスを極力減らしています。Module 1) 患者のcharacteristics(i.e. 年齢や人種など)に基づいた修正を加えた分析、Module 2) (1)に加え、同一の病院の女性医師、男性医師同士を比較した分析(病院によってはより重病の患者が集まりやすいなど、これもバイアスの元になることがあるため)、Module 3) (1)と(2)に加え、性別以外の医師のcharacteristics (i.e. 勤務年数など)に基づいて修正を加えた分析…という風に。さらに、最も臨床でよく見られるという8つの疾患(sepsis, pneumonia, congestive heart failure, COPD, UTI, chronic obstructive pulmonary disease, acute renal failure, arrhythmia, GI bleeding)に絞って行った分析と、各病気の重症度(illness severity)別に行った分析もあります。Methodを読んだところまででは、mass dataを上手に使った、丁寧にデザインされた研究だなぁという印象です。うーむ、いいですね。

さて、ではここから結果に飛びます。全Medicare(アメリカにある65歳以上の老人医療保険)患者からその20%を無作為に選んだ結果、1,615,855人の患者が内科系疾患で入院を余儀なくされ、58344人の内科医師(うち18,751人、32.1%が女性、39,593人、67.9%が男性)がその担当を担ったそうなんですが、このときの患者群の死亡率、再入院率はこんな感じ。
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このテーブル上部が「死亡率」なのですが、女性医師担当の場合の全体の死亡率は10.82% (95% CI 10.71-10.93%)だったのに対して男性医師が治療した患者の死亡率は11.49% (95% CI 11.42-11.56%)…統計学的に有意な(p < 0.001)差が認められました。再入院率(テーブル下部)に関しても同様です。15.01% (14.89-15.14%)と15.57%(15.49-15.65%)で、95%CIの幅を考慮しても決定的に女性医師が診た患者のほうが再入院率が低い(p < 0.001)という結果になっています。これは、Module 2、Module 3とより多くの要素を考慮に入れた分析でも変わりません(all p < 0.001)。

8大疾患別の分析も、女性医師が治療した場合のほうが死亡率、再入院率共に低いという結果は動きませんでした。ただ、統計学的に有意ではない結果も複数あったようです(↓下参照)。特に、sepsis (敗血症)、pneumonia (肺炎)、acute renal failure (急性腎不全)、arrhythmia (不整脈)患者は、女性医師に治療を担当してもらった場合、男性医師に比べてその死亡率が著しく減ったようです。興味深い…。
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これは、病気の重症度でも同様(↓)。ほとんど全てのカテゴリーで、女性医師のほうが死亡率、再入院率共に低い結果に。
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さて、では、結論としてどういうことが言えるか?
冒頭の「死にたくないなら女医を選べ」は少しばかりoverstatementですが、とりあえずこの研究からはこういう結論が導き出せそうです。
貴方がMedicare保険を持つ65歳以上の患者で、内科系疾患で入院を余儀なくされた場合、男性医師よりも女性医師を担当医に選んだ方が30日以内に死亡する確率は減り、退院から30日以内に再入院するリスクも減る…つまり、貴方がより快方へ向かう可能性は高まる、と。

どのくらいリスクが減るのか?文中にこんな表現がありました。
"Patients treated by female physicians had 0.95 times the odds of death (95% CI, 0.93-0.97; p < 0.001) and 0.96 times the odds of readmission (95% CI, 0.95-0.97; p < 0.001) compared with patients cared for by male physicians (E6)."
患者の抱える疾患、その重症度、患者の年齢や性別、人種、医師の経験年数などに関わらず、女性医師に治療してもらったほうが男性医師に診てもらうよりも死亡オッズが約5%(3-7%)、再入院オッズが4%程(3-5%)低くなるようです。これは、統計学的に有意なだけではく、臨床的にも大いに意味のある数字といってもいいのではないでしょうか。

さらに、こんな表記も。
"...we estimate that approximately 32,000 fewer patients would die if male physicians could achieve the same outcomes as female physicians every year (E7)."
つまり、男性医師が女性医師と同じだけのアウトカムが生産できるようになれば、年間あたり32,000人の患者の命が救える、ということまでも書かれています。この論文ではあくまで30日間の死亡率のみ扱っているので、このstatementは少しばかりストレッチかもしれませんが、「男性医師、もちょっとがんばりたまえよ!」と注意喚起するには面白い論議です。

いやー、実に面白い研究でした。これって、他の医療従事者、例えばATとかPT、OTにも当てはまるのかな…とか、色々妄想させられてしまいますね。Medicare患者に限定した結果であり、あくまで30日間のアウトカムを追ったもの、というlimitationを考慮しても余りある、噛みごたえのある統計群です。あえて疑問を上げるならば、やはり最初の「なんで30日縛り?」というところと、あとTable 1のPhysician and Patient Characteristics, by Physician Sexというところ、「どうしてp valueを計算して書いておかなかったのかな?」というところです。男女の医師の特徴の違い、そしてそれぞれの医師が見た患者の特徴の違いは数値化して比較していてほしかったです。

この研究はあくまでobservational studyであり、実際にどういったアプローチの違いが決定的となってこのアウトカムの差を生むのかという因果関係についてはまだわかっていません。しかし男女問わずお互いのアプローチの違いから学び合い、良いところは認め合い、盗み合いながら、患者のアウトカムをより上げていけるような治療を進めていきたいものですね。くどいですが、この研究はfree full-textですので興味のある方はぜひご自身でも読んでみてください。

1. Tsugawa Y, Jena AB, Figueroa JF, Orav EJ, Blumenthal DM, Jha AK. Comparison of hospital mortality and readmission rates for medicare patients treated by male vs female physicians [published online December 19, 2016]. JAMA Intern Med. 2016. doi: 10.1001/jamainternmed.2016.7875.
2. Kim C, McEwen LN, Gerzoff RB, et al. Is physician gender associated with the quality of diabetes care? Diabetes Care. 2005;28(7):1594-1598.
3. Berthold HK, Gouni-Berthold I, Bestehorn KP, Böhm M, KroneW. Physician gender is associated with the quality of type 2 diabetes care. J Intern Med. 2008;264(4):340-350.
4. Baumhäkel M, Müller U, Böhm M. Influence of gender of physicians and patients on guideline-recommended treatment of chronic heart failure in a cross-sectional study. Eur J Heart Fail. 2009;11(3):299-303.
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  by supersy | 2017-01-13 15:00 | Athletic Training | Comments(0)

EBP東京講習終了!

一昨日の12月25日、クリスマスには神田の連合会館でEvidence-Based Practice (エビデンスに基づく実践)講習をしてまいりました!連合会館にお邪魔するのは初めてだったんですけれど、実は父の職場から徒歩3分という、妙な身内スポット…。交通の便もよく、分かりやすく、使いやすく綺麗でユーザーフレンドリーな施設でした。
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講習のほうは朝3時間が「評価編」、昼3時間が「治療介入編」、そして夕方3時間が「予防医学編」で、参加者さんは好きな講習を好きに受講可能、というスタイルにしてみました。全部で50名弱の参加者さんが入れ代わり立ち代わりでしたが、うち30名ほどは「全講習参加」というツワモノさんたちでした。しかし、我ながら9時間は長かったですね(笑)。ワークシートを使った実践などはあるものの、立ち上がって実技ー、という講習ではないので、座学9時間は構成として長かったかな。次回はもうちょっとうまいことわけわけしたほうがいいかなぁ。
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ちなみに予防医学編は今回BOC認定が下りて初めてお送りしましたが、Prevalence (有病率), Incidence (発生率), Injury Rate (受傷率)といったEpidemiologyの基本用語から、予防介入のエビデンス解釈には欠かせないControlled/Experimental Event Rate (対照群・治療群イベンド発生率)、Relative Risk (相対危険度)、Absolute Risk Reduction (絶対危険減少)、Relative Risk Reduction (相対危険減少)、Number Needed to Treat (治療必要数)というコンセプトの理解、それから実際に文献を引っ張り出してこういった統計を計算して、臨床的に解釈してみる、という練習もしました。脳震盪リスクが最も高い大学スポーツは?ACL予防にエクササイズプログラムは有効なのか?ハムストリング肉離れ予防にノルディック・ハムストリング・エクササイズはあり、なし?シンスプリント予防には何をすれば?結局のところテーピングやサポーターって足関節捻挫予防に効果はあるの?そんなトピックをがっつり3時間exploreしました。準備していても非常に楽しかった内容なので、参加者の皆様にも楽しんでいただけていれば幸いです!

南は熊本、宮崎、福岡、そして岡山、兵庫、大阪、愛知に滋賀、北からは福島と、遠方からも多くの方にお越しいただきました。参加者の皆様、そして運営をしてくださった高橋さん、あゆみちゃん、本当にありがとうございました!

さて、講習が終わった後はATC7名とDC1名が集い、講習会場から徒歩2分くらいのGreen Tea Restaurant 1899というお食事処で大人の茶会をしておりました。「茶を食す」というコンセプトの和食ダイニングだけあって、出てくるものすべてに「お茶」のツイストが入っています。写真は抹茶ビール(左)、抹茶とろろのかかった出汁巻き玉子(中央)、ほうじ茶黒ビール(右)…特にほうじ茶黒ビール、ほうじ茶の香りが芳醇でお勧めです!楽しかったー!これもコーディネートしてくれたあゆみちゃんありがとうー。
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一日明けた昨日、12月26日はぽっこりあいたオフ日だったので、フロリダ組の友人ら2人と旦那との4人で新宿で昼から忘年会してました。お昼の12時から夕方6時までまったりお酒を飲むなんて初めてで贅沢!こちらも楽しかったー。日本は楽しいことばかりー。

さぁ、また仕事です。これから大阪に行ってきます。2016年最後の仕事、集中して臨みたいと思います!

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  by supersy | 2016-12-27 10:30 | Athletic Training | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル1月号発売 & Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその3。

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月刊トレーニング・ジャーナル1月号が発売になっています!連載8回目の今回は「脳震盪シリーズ」第三弾です。今回は脳震盪からの回復、というところに焦点を置き、現行のガイドラインで推奨されている「休息」について掘り下げたのち、最新エビデンスに基づく「休息」とは逆の発想の治療法についても言及しています。私はものすごく近い将来こっちがスタンダードになると思っているのですが…。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。これで脳震盪シリーズは一区切りで、次回からはまた別のトピックに移ります。



思いっきり私事ですが、2016年秋学期が無事に終了いたしました!学生としても、教授としても、です。明日、日本に帰ります。EBP、PRI、EBP、PRIと講習が立て続けにあるので楽しみです!もう一仕事して12月を無事に終えたら、少し年始はゆっくりしたいなぁと思っちょります。

さて。今回のブログは本当に脈絡がないのですが、以前に何度か書いたことのあるLever Sign Testについて、新しい論文を見つけたのでまとめておきます。なので、最新エビデンスまとめその3ということにしておきますね。以前の記事へのリンクも下に貼っておきます。

Lelli's Test―ACL断裂のための新しいスペシャルテスト!?
Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその1。
Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその2。

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2015年12月発表らしいこの論文1…どうして前回のまとめのとき(2016年3月)に見つけなかったんだろう。見落としていたのかな?ちなみにこれはPMCなので、誰でもフリーアクセスで読めますよ。興味のある方はこちらから。

今回のこの研究で評価できるのは1) 麻酔有りと無しの場合を比較したのち、2) 被験者全員がDiagnostic Gold StandardであるArthroscopy(内視鏡)をしてACL断裂の有無を確認している、というところですね。例えばDr. Lelliの以前の研究2なんかは診断基準としては甘いMRIを使ってましたからね。

ただ、inclusion criteriaはちょっと不可解です。「内視鏡によってACL断裂が認められた患者117人 (男96人、女21人、平均25.8 ± 5.9歳)」ということなんですけど、もし前述の「実験の手順」の記述が正しいとしたら、この実験で検証された患者が被験者になれる資格(eligibility)があったかどうかは一番最後に判明したことになります。被験者になれるかどうかわからないまま、とりあえず実験に参加させて最後にふるい落とす…そういう実験デザインは聞いたことがありません。そういう意味ではこれはRetrospective Studyってことになるのでは?Prospectiveでそんな後付けのinclusion criteriaってありますか?どうしてinclusion criteriaを「Physical Examの結果、(Lachman、Anterior Drawer、Pivot Shiftのいずれかが陽性などで)ACL断裂の疑いが濃厚な患者」にしなかったのか?それで診断研究の一環として最後に内視鏡をして、実際にACL断裂の有無で2x2 Tableを作ればよかったのに…。 「ACL断裂があるかないかわからない」患者を使うからSensitivityもSpecificityも実際の臨床状況に近い数値が出るんです。「ACL断裂があることがもうわかっている」患者しか使わなければ、Sensitivity(除外力)しか求めることができませんし、Specificity(確定力)は未知のままです。確定力と除外力のバランスが取れていることが確認できなければ、「触れただけで全ての者にぼこぼこ陽性を出してしまうようなやたら敏感なだけのテスト」ではないという保証がないではありませんか。これは比較的致命的なデザインミスかも。

まぁとりあえず読み進めます。2人の"臨床家"が、手術前の患者の麻酔が無い時とあるときに健側と患側の両膝にLever Sign、Lachman、Anterior Drawer、Pivot Shift Testを使って結果を記録。この際、2名の臨床家はお互い、もうひとりの臨床家がどういう判断を下したのかを知らない状態(=independently assessed, blinded to the other clinician's results)で陽性・陰性の判断を行います。しかし、この臨床家(clinician)という緩い表現もあまり文献では見かけませんね、整形外科の医師なんでしょうか?PA?AT?臨床経験はどのくらい?Lever Sign Testのトレーニングをどのくらい積んでいるの?これもここらへんが分からなければ、再現性の高さが保証されませんね。
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で、結果です(↑)。麻酔前と後での数字を比べると、1) Pivot Shift TestとAnterior Drawerは患者が意識がある状態では除外力に限界がある。そして、2) Lachman TestとLever Sign Testは麻酔の影響が比較的少ない、つまり、意識がある患者に行っても有効、ということが言えそうです。Muscle spasmやGuardingの影響を最も受けにくい、と言い換えてもいいですね。4つ全て比較しても、Lever Sign Testが一番優秀ですね!94%、98%とは非常に高い数値。前回紹介したThapa氏らの研究3の85.71%より高いです。

ちなみに2人の臨床家のテスト結果を比較したInter-rater Reliabilityも計算されているんですけど、ICCがLever Sign Testで0.89と0.96、Lachman Testで0.85と0.91、Pivot Shift Testで0.82と0.88に、Anterior Drawer Testで0.84と0.93と、いずれもかなり優秀でした。これも4つ比較するとLever Sign Testが一番高いんですね。Lever Sign TestのReliabilityが報告されたのはこれが初めてじゃないかな?「どんな経験を持つ臨床家がテストしたのか明記されていないので、再現性は保証されない」ということはくどいくらいに強調しておきたいですが、それ以外はencouragingな結果です。

さて、著者らはLever Sign Testのシンプルさと実用性の高さ、そしてACL断裂という傷害の解剖学的な観点から「tibiaではなくfemurをmanipulateすることは理に適っている」と論じています。その上で、他の一般的なACLテストよりもLever Sign Testのほうがsensitivityとreliabilityの高い、有効なテストである、というのがこの論文の結論です。私は個人的に、以前にも論じたようにLever Sign Testのそういった利点を踏まえたうえで、
1. 95%CIは分析含まれておらず、決定性のある統計かは不明
2. この研究の前述したinclusion criteriaでは、研究に多大なバイアスが生じている可能性がある
3. Exclusion criteriaに、medial meniscus posterior root tear, bilateral ACL tear, multiple ligament injuries or previous arthroscopic surgeryが含まれていることから、こういった患者に対するLever Sign Testの有効性は全く分かっていない
4. 試験者の素性(といういい方もアレですけど)もわからないので、私のするLever Sign Testと彼らのするそれがどれだけ一致するか不明…
という大きな制限がこの研究には存在するのだ、ということも噛みしめておきたいと思います。この論文も読めてよかったけれど、研究の質や読みごたえとしてはThapa氏らの研究3のほうが面白かったなぁ。

個人的には、次は被験者対象をもっと拡大して、半月板損傷付随やACL再断裂の患者にどれほどLever Sign Testが有効なのかということについて学んでみたいです。そんな研究出ないですかね、楽しみにしてます。しかし、これだけ名実ともに大きくなってくると、いよいよ下肢の傷害診断の授業でLever Sign Testも教えなきゃいかんな。来学期、少し膝のところ内容を入れ替えてみるか…。

1. Deveci A, Cankaya D, Yilmaz S, Özdemir G, Arslantaş E, Bozkurt M. The arthroscopical and radiological corelation of lever sign test for the diagnosis of anterior cruciate ligament rupture. Springerplus. 2015;4:830. doi: 10.1186/s40064-015-1628-9.
2. Lelli A, Di Turi RP, Spenciner DB, Dòmini M. The "Lever Sign": a new clinical test for the diagnosis of anterior cruciate ligament rupture. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2014. doi:10.1007/s00167-014-3490-7.
3. Thapa SS, Lamichhane AP, Mahara DP. Accuracy of Lelli test for anterior cruciate ligament tear. J Inst Med. 2015;37(2):91-94.

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  by supersy | 2016-12-14 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

息を「吐く」重要性: 横隔膜への徒手療法で頸椎・腰椎・股関節の可動域が改善する?

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ついさっきですが、スカイプ経由で第二回スポーツ救急サミットにて発表させていただいておりました(日本時間では昼、私には夜10時過ぎでした)。途中コネクショントラブルで会話が切れてご迷惑をおかけしましたが、私の発表後もそのまま繋いでいただいたので思いがけず他の先生の講義を聞く貴重な機会もあり、日本でのスポーツ救急対応にかける皆様の熱意が伝わってきてこちらにもとても良い刺激になりました。山本先生、太田先生を始めとするお世話になった関係者の皆様、ありがとうございます。

それから、引き続き12月25日開催のEBP講習のお申し込みも受け付けております!クリスマスにも関わらず、都内や関東圏はもちろん大阪、滋賀、福岡、熊本に福島など、様々なところからお申込みいただいていて、とても有難い・嬉しいです。楽しい一日にしましょう!広い会場を抑えたのでまだ残席ありますよぉー。

<講習日時>
2016年12月25日
 9:30am-12:30pm エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで
 12:30pm-13:30pm 昼食(各自)
 13:30pm-16:30pm エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで
 16:45pm-19:45pm エビデンスに基づく予防医学: 基本から応用まで

参加はお好きなコースひとつだけでも、2つでも3つ全てでも可能です(複数講習参加する場合は、お手数ですがこちらから各イベントひとつずつお申し込みください)。参加資格の指定はありません、エビデンスという言葉が苦手な方や学生さん大歓迎です。ATCのクレデンシャルをお持ちの方には、各コースEBP CEUが3つきます。3つ全て受講すれば3 x 3 = 9 EBP CEUsです。

<会場> 連合会館 402会議室 東京都千代田区神田駿河台3-2-11
 東京メトロ千代田線  新御茶ノ水駅 B3出口すぐ
 東京メトロ丸ノ内線  淡路町駅 B3出口すぐ(B3出口まで地下道徒歩5分)
 都営地下鉄新宿線  小川町駅 B3出口すぐ(B3出口まで地下道徒歩3分)
 JR中央線・総武線  御茶ノ水駅 聖橋口徒歩5分

<定員> 70名

<受講料>セット割引、学割あります! 
  一般 1コース 9,000円
     2コース 16,200円 (10% off - 1,800円引き)
     3コース 22,950円 (15% off - 4,050円引き)
  学生 1コース 8,100円 (10% off - 900円引き)
     2コース 14,400円 (20% off - 3,600円引き)
     3コース 20,250円 (25% off - 6,750円引き)



さて、本題です。今回は読んだ論文のレビューを忘れないうちに書き留めておこうと思います。横隔膜系の論文を読むのは完全に趣味なので、これも個人コレクションに加えなきゃなりませんから…。んで。今回紹介するのはふたつの論文ではありますが、同一の研究チームによるものなので造りは非常に似ています。まずはこちら(↓)1から。
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この論文ではハムストリングの柔軟性が欠けているとバランスやスポーツパフォーマンスの低下が見られる、且つそのままにしておくと可動域の制限、姿勢異常、痛みや怪我のリスクにつながることから、2 早めの介入の必要性を呼び掛けており、特にShort-Hamstring Syndromeの患者が特定の腰椎異常も持っていることが多い3,4のであれば、腰椎に付着した横隔膜への介入も有効なのでは?というのがバックグラウンドです。ここまでは私もよく見聞き知っている理論ですが、正直なところここまでのLit reviewの引用と文献を用いての論理展開は雑な印象です。あまりそそられません。つーかShort-Hamstring Syndromeの学術的な定義ってなに?伸張位にあるから「張り」を感じるんであって、実際短くなってるわけじゃないでしょ?色々とつっこみたいけれども、まぁでもここはぐっと堪えて最後まで読むです。
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で、この研究では60人の"Short-Hamstring Syndrome (PAT >15°且つFFD >5cm、上図参照)"の被験者をランダムに1) Diaphragm Technique Groupか2) Placebo Groupにわけ、Diaphragm Technique Groupの患者には下の写真のような、「施術者が徒手療法を使って胸郭を下げ、横隔膜をリラックスさせ、呼気を強調することでそのドーム型をrestoreする」ことを目的とした5-7分間の治療が施され、その前後に計測したoutcome measureを比較しました。長期的な治療を追っかけたものではなくごく短期の、single-session studyですね。データコレクターがグループアサインメントを知らない、ということでsingle-blinded studyというカテゴリー分けになっています。
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"Doming of the diaphragm is a technique designed to relax the resting state of the diaphragm, enhancing its contraction and relaxation functions (p.344)." 原文より。このテクニックはイギリスのオステオパス医師、Leon Chaitow氏が提案・推奨した横隔膜不全/過呼吸患者へのアプローチテクニックですね。患者は胸椎屈曲位を取り、息を吐いている間に施術者が肋骨を下へ導く、という徒手療法で、肋骨を引き下ろしたらこの位置を5-7分キープするのだそう(吐き切った肋骨の位置を保つことにより、横隔膜が休まった位置をキープできる。これは横隔膜のストレッチと呼ばれたりもしているそうだけど、横隔膜を引っ張って伸ばしているわけでじゃなく、弛ませて休ませているわけだから、個人的にストレッチという名称はどうかと思います。誤解を招きそうかなぁと)。著者らはスペインの大学に勤務する研究者のようですが、これはスペインでよく使われているテクニックなんでしょうか?私は個人的にこれは見聞きしたことがあるだけでfamiliarではないので、一回施術風景を見てみたいです。

で、結果は以下の通り。Placebo組が全てのoutcome measureにおいて治療前後で何も変化がなかったのに比べ(p > 0.05)、Diaphragm組はハムストリングの柔軟性、腰椎と頸椎の可動性の全てが著しく改善。Power Analysisをした上で、最低限必要な被験者の数以上(各グループ28人のところ30人)用意したことは評価されるべきで、95%CIのLower End Valueを見てもこれは統計的に決定的な結果と言うべきでしょう。
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そんなわけで、呼気を強調し、ドーム型を修復する横隔膜へのアプローチで、頸椎・腰椎の可動域が上がり、ハムストリングの柔軟性が向上する、つまり"Short-Hamstring Syndrome"に有効な治療法である…というのがこの論文の結論です。一回のセッションで得られた効果がどれだけ持続するかはこの研究では検証していませんが、横隔膜へのアプローチでハムストリングの柔軟性が回復するのなら、組織の拘縮はどうやら起こっていないのではないか、日々ストレッチをして軟部組織を「伸ばす」必要はどうやらなさそうではないか、ということも言えるかもしれません。ここんとこは、私の個人的な考察です。

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もうひとつの研究はこちら(↑)。5
こっちの論文のほうが冒頭の文章がさっきのものより格段に好みなんだけど、やっぱり文献引用がめちゃめちゃ甘い気がするんだけどなー。そんなことないのかなー。とりあえずこちらの論文ではですね、Short-Hamstring Syndromeは置いといて、健康な被験者に対しての横隔膜へのアプローチが脊椎の動きにもたらす影響について掘り下げています。

担当統計学者が研究目的やデザインを知らないままデータ分析を行った/データコレクション担当者もグループアサインメントは知らないままだった(=single blinded)、というところと、被験者はランダムに1) Diaphragm Technique Groupと2) Placebo Groupに分けられたのは先の研究と同じ。検証されたテクニック(横隔膜徒手療法)も上記と同じもの。で、計測されたOutcomeは頸椎のROM、腰椎のROMとFinger-to-Floor Test (FFT - 前回のFFD Testとほぼ同じ)の他に”Abdominal and rib cage excursion"、つまりテープメジャーによる胸囲の計測(2nd intercostal space, xiphoid process, midpoint between the xiphoid and umbilicusの計3箇所)を入れています。明記はされていないのですが、恐らく呼気と吸気の胸部の広がりをcmで記録したものと思われます(数値が高い=胸郭の開閉度が大きい、ということなんじゃないかな)。このMeasurement、私は初めて聞くのですがintra-rater reliabilityとinter-rater reliabilityはそれぞれ0.96-0.98、0.84-0.87だそうです。6 それぞれ問題のない、優秀な数字です。

で、結果は以下の通り。横隔膜のアプローチは頸椎・腰椎の可動域とPosterior Chain Muscleの柔軟性に対する改善が著しかったのに比較して、Placebo Groupは変化なし。これは前回の研究と同様の結果と言えますね。それから、Diaphragm Technique Groupは横隔膜の位置するXiphoid levelでの胸郭の開閉度も平均約2.6cmと大幅に改善。比べて、Placebo Groupは腹部のExcursionのみ1cm程増加…これは、お腹を休めるような恰好を7分間取っていたからでは、というのが著者の考察です。
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そんなわけで、こちらの研究5でも横隔膜へのアプローチで頸椎・腰椎の可動域が改善、Posterior Chainの筋緊張が取れ、ひと呼吸において胸部がより深く閉じた状態からより大きく、効果的に開けるようになる…というのが結論です。どちらの研究でも、徒手療法て触れてすらいない股関節や頸椎の可動域に影響が出ているのが非常に面白いと思います。使っているテクニックこそ違えど、テクニックの意図とコンセプトは私が勉強しているものと全く同じなので、こういう研究に出会えるのは楽しいですね。この冬に教えるPostural Respirationにも繋がってきそうな内容なので、講習参加予定の方はぜひ今回の論文ふたつ読んでみてほしいです!

1. Valenza MC, Cabrera-Martos I, Torres-Sánchez I, Garcés-García A, Mateos-Toset S, Valenza-Demet G. The effects of doming of the diaphragm in subjects with short-hamstring syndrome: a randomized controlled trial. J Sport Rehabil. 2015;24(4):342-348. doi: 10-1123/jsr.2014-0190.
2. Forman J, Geertsen L, Michael E, Rogers ME. Effect of deep stripping massage alone or with eccentric resistance on hamstring length and strength. J Bodyw Mov Ther. 2014;18(1):139-144. doi: 10.1016/j.jbmt.2013.04.005.
3. Raftry SM, Marshall PW. Does a 'tight' hamstring predict low back pain reporting during prolonged standing? J Electromyogr Kinesiol. 2012;22(3):407-411. doi: 10.1016/j.jelekin.2012.02.008.
4. Biering-Sorensen F. Physical measurements as risk indicators for low-back trouble over a one-year period. Spine. 1984;9:106-119.
5. González-Álvarez FJ, Valenza MC, Torres-Sánchez I, Cabrera-Martos I, Rodríguez-Torres J, Castellote-Caballero Y. Effects of diaphragm stretching on posterior chain muscle kinematics and rib cage and abdominal excursion: a randomized controlled trial. Braz J Phys Ther. 2016;20(5):405-411. doi: 10.1590/bjpt-rbf.2014.0169.
6. Cahalin LP, Braga M, Matsuo Y, Hernandez ED. Efficacy of diaphragmatic breathing in persons with chronic obstructive pulmonary disease: a review of the literature. J Cardiopulm Rehabil. 2002;22(1):7-21.

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  by supersy | 2016-11-26 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

ひとつのスポーツに特化する高校生アスリートは怪我をしやすい?: マルチスポーツのすゝめ。

アメリカの高校スポーツが面白いのは、シーズン制を採用しているところなんですよね。例えば9月から11月くらいまではアメリカンフットボールとバレーボール、11月から2月までがバスケットボールにサッカー、2月から5月までが野球にソフトボール…という感じで、終わりと始まりがはっきりと決まっているので、ひとりの選手が複数の競技に参加することが可能なのです。私が高校で働いていた頃も、運動神経のいい子はアメフトからバスケットボール、野球へと移行し、ついでに陸上も…、といったように、あちこちにひっぱりだこでなんでも活躍しちゃうマルチな子がたくさんいました。
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一方で、近年アメリカで問題になっているのが、高校のチームのみでなくクラブチームにも所属して、ひとつのスポーツに特化し一年中そのスポーツをプレーし続ける選手が増えていることです。これに関しては、IOC1やAMSSM2などの複数の団体がポジションステートメントを介して「若いうちは複数のスポーツをするほうが良い」と進言しているにも関わらず、それを無視する形で現状は悪化しているようです。3「プロになるには早いうちから専門性を高めなければ」と選手も親御さんも思うのでしょうけれども…、運動能力という意味でも、燃え尽き症候群を防ぐためにも、様々なスポーツを経験しておいたほうがいいのでは、と危惧する声が上がっています。
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もうひとつ、ATとして知っておきたいのが怪我のリスクです。ひとつのスポーツに特化したほうが怪我をしやすいのか、それとも複数するほうが怪我のリスクが高いのか?今回レビューするこの論文(↑)3では、1) どのくらいの高校生アスリートが「特化」しているか、 2) 「特化」するアスリートに、性別、学年、高校の生徒数など、特徴はあるのか、そして 3) 「特化」しているアスリートとマルチスポーツアスリートとで、下肢に起こる慢性傷害の頻度に差はあるか、を検証しています。

研究対象になったのはウィスコンシン州にあるふたつの高校で、ひとつは生徒数が2000を超えるジャイアント校、もうひとつは生徒数が600余りと規模の小さ目の学校。13-18歳のサッカー、バスケットボール、テニスとバレーボール選手302人を対象に、1) 特化かマルチ、自分のスポーツ歴をどのように評価するかと 2) 今までに下肢(股関節、大腿、膝、脹脛、足首、足部)に怪我をしたことがあるかをアスリートにアンケート形式で答えてもらい、結果を分析しました。

ここまでで私がうっかりがっかりした要素を上げておきますね。まずは、あらかじめスポーツの特化を調べてからそれぞれの選手を1シーズン追い、起こる怪我をその都度ATが研究者に報告するようなprospectiveの研究ではなく、後出しで「貴方のスポーツの特化具合はどうなの?あ、ちなみに今までどんな怪我をした?」という尋ねているタイプのretrospectiveな研究であるということ。Retrospectiveは選手の記憶が全てなので、例えば彼らがウソをついたり、わからなくて適当に答えたり、もしくは記憶違い (=recall bias) があればそれだけでデータがskewしてしまいます。
加えて、たったふたつの学校、それにスポーツもたった4競技というのはサンプルとしてどうなのでしょうか。あまりgeneralizabilityがないように思います(=この研究結果を「アメリカ在住の全高校生アスリート」という大きな対象に広げて解釈することはできません)。だってね、これだけサンプルに偏りがあると、コーチによる影響の比率が大きすぎるのではないかと思うんですよね。例えば、その高校のバレーボールコーチがクラブチームのコーチも兼ねていて、高校のチームに所属している子はクラブチームにも入るのが暗黙の了解になってしまっている場合なんか見たこともありますし、逆に高校のコーチが「勝手に変な癖をつけてほしくない」などの理由で、逆にクラブチームの参加に反対だとかという可能性もないことはないと思うんです。そんなコーチが一人でもいれば、かなりこの研究のデータも引っ張られてくるでしょうね。
それから、研究対象になった怪我が「慢性的な下肢傷害」に限定されている理由が明記されていないのが気になります。たぶん、高校スポーツで起きる怪我の半数以上が下肢の怪我だから、そして急性のコンタクトによる怪我はスポーツの特化性とあまり関りがないと判断したからなのでしょうが、それらを文献を引用して説明するのとしないのとではだいぶ印象が変わってきますね。
ここらへんは私は読みながら頭に「??」とクエスチョンマークが浮かぶあたりです。ここらを念頭に置きながら読み進めます。本題に戻ります。

で、結果なのですが。突っ込みどころはここでも多いんですけど、それをなるべく置いておいて、私が面白いと思った結果を中心にまとめますね。

● 規模の大きい高校のほうが、選手がスポーツに特化している傾向にある (↓下グラフ)。
これは理に適っているように感じますね。大きい学校のほうが人材が豊富にある分、それぞれの部活のニーズを満たすのに十分な選手数がそれぞれのチームで確保できる。ロスターに残る競争率も高い分、よりレベルが高くなければチームに所属すらできないということもあるでしょう。あとね、これは、組織の意識による影響も少なからずあるんじゃないかと思うんです。小さい高校ではコーチも複数のスポーツコーチを兼任にしていることも多く、「兼任」が当たり前という雰囲気がある一方で、大きな高校でコーチと環境がそれぞれのスポーツに「特化」していると、「あのーすみません、他のチームの練習があるんで抜けてもいいですかね?」とは選手は言い出しにくいですよね。大きい高校のほうが兼任が許されない雰囲気ができるかなと。
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ちなみにこのグラフの"High" "Moderate" "Low"というのは「どれだけ他のスポーツを排除し、一年を通じて特定のスポーツのトレーニングをしているか」の度合いを示したもので、「ひとつのスポーツに集中するために他のスポーツを辞めたことがあるか」「一年のうち8ヶ月以上をひとつのスポーツのトレーニングに費やしているか」「他のスポーツよりも『重要だ』と感じる特定のスポーツがあるか」という3つの項目に対する「Yes」の数を数えたものです。「Yes」が3つあれば「High Specialization」、2つなら「Moderate」、0-1なら「Low」という風に分類されます。
 
この3-point scaleが研究で使われたのには「スポーツの特化はyes/noの白黒ではなく、白が徐々に黒になるようなスペクトラム状のもののはずだ」という理念を著者らが持っているからなのですが(そしてそこは私も賛成です。例えば、普段はずっとバスケットボールばっかりやっていて、陸上部員として大会の日だけぶっつけ本番で競技に出る、みたいな選手がいた場合、この選手がシングルスポーツかマルチか、と言われれば所属上マルチと分類せざるを得ませんよね。でも、この選手は陸上競技に費やしているトレーニングは実質ゼロなので、事実上シングルに限りなく近いと思うんです。少なくとも、この選手が「陸上とバスケの練習、一日おきに交互に出ています」という選手と全く同じ「マルチ」組に分類されるようではあかんと思うのです。どのスポーツをどのくらいやっているか、もっと可視化して細かく分類する必要があります)、この論文中で述べられているように、3-point scaleによる「スポーツの特化度」の計測が正確で非常に有効である、と断定するのに十分な根拠は乏しいのではと私は感じます。なぜかというと、この計測法も結局選手の自己判断・自己報告に頼っているからです。集計が面倒くさくても、例えばもっと客観的に、各競技のトレーニングに費やしている時間を計測し、記録するべきなのでは?と私は考えます。それぞれの練習ボリュームをvariableにすべきではないかなと。…あ、また話が逸れてしまった。

"High Specialization"のカテゴリーに入った選手は、"Low"の選手らに比べ、膝関節の慢性傷害を経験している可能性が著しく高い(p = 0.048)。
これはなんでORが報告されていないんでしょう?個人的にはp値で言われてもちょっと…という感じ。

「一年のうち8ヶ月以上をひとつのスポーツのトレーニングに費やしているか」の項目に"Yes"と答えた選手は膝関節 (overall knee injury OR 2.32; 95% CI 1.22-4.44; p = 0.009, overuse knee injury OR 2.93; 95% CI 1.16-7.36; p = 0.018) と股関節 (OR 2.74; 95% CI 1.09-6.86; p = 0.026)の怪我の既往歴があることが多い。
なるほど。こうなると「そうか!やっぱりマルチスポーツしてるほうが怪我をしにくいんですね?」と言いたくなるところですが、correlationとcausationは異なる、ということはやっぱり指摘しておかなければなりません。これらの怪我がいつ起こったか分からない以上 (それこそ10年前の怪我だって数に入っちゃうわけですから)、シングルスポーツが怪我のリスクを上げるとは断定できません。もしかしたら、怪我をした選手が泣く泣くマルチを諦め、ひとつのスポーツを選択せざるを得なくなったという真逆の可能性だって考えられますもんね。因果関係をもっとはっきりさせたければ、やはり選手を予めシングル組・マルチ組に分類したあとで、1シーズンの怪我を現在進行形で追う、prospectiveタイプの研究をやらなければダメでしょう。

逆に非常に面白いなぁと思ったのは8ヶ月という数字ですかね。実は「ひとつのスポーツを一年のうち8ヶ月以上プレーすべきでない、年間を通じて休息時間を設けるべきだ」という提案は他の論文でもこれまでにいくつかされているんです。4-6 今回の研究もこれ(=8ヶ月)が結局のところ一番の怪我のpredictorということで、「8ヶ月」という時間軸がマジックナンバーである?という説を支持する結果になっています。こうなってくると本当に8ヶ月が適切なcutofffなのか、さらに検証する必要がありそうですね。例えばひとつのスポーツを6ヶ月やっている選手たち、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月…なとどグループ分けして怪我の頻度を追えば、どの期間が境界線として最も相応しいかデータ化が可能です。他にも「ユースの選手は自分の年齢以上の時間を一週間に練習に費やしてはいけない」なんていう提案も以前にされてましたけど(i.e. 15歳なら一週間練習も15時間以内)、5 これも併せてぜひ検証していただきたいものです。こうすることで怪我のリスクを下げられるのか、気になります。

色々書きましたが、この論文をまとめると「どうやらマルチスポーツをしたほうが怪我のリスクは総じて低そう?」ということは抜き出せるかと思います。この研究の質は決して高いものではないですが、マルチスポーツをすることに関する不利益は今のところなさそうですし…どちらがより安全?と聞かれたらマルチ、と答えたくなるのが私の脳内の現状です。早期特化派のママさんなんかからは「でもそんなに呑気に色々なスポーツに手を出していたら遅れを取ってしまう、うちの息子がスポーツ推薦もらっていい大学にいけなくなってしまうわ!」と言われそうですが、実はそれを否定するエビデンスはあるんですよ。NCAA Division Iの選手のほとんどは、実は高校を通じてひとつのスポーツに特化せず、マルチスポーツ選手として活躍している場合が多かった、7というのがね。もしかしたら「複数のスポーツをプレーできる環境」というのは、怪我のリスクを下げるだけでなく、燃え尽き症候群を防ぎ、しかも高い運動能力を兼ね備えられる、やはり優れたモデルなのかもしれない、という気がしてきますね。日本でもこういう機会、若い子が持てればいいのですが…。

1. Bergeron MF, Mountjoy M, Armstrong N, et al. International Olympic Committee consensus statement on youth athletic development. Br J Sports Med. 2015;49(13):843-851.
2. DiFiori JP, Benjamin HJ, Brenner JS, et al. Overuse injuries and burnout in youth sports: a position statement from the American Medical Society for Sports Medicine. Br J Sports Med. 2014;48(4):287-288.
3. Bell DR, Post EG, Trigsted SM, Hetzel S, McGuine TA, Brooks MA. Prevalence of sport specialization in high school athletics: a 1-year observational study. Am J Sports Med. 2016;44(6):1469-1474. doi: 10.1177/0363546516629943.
4. Brenner JS, American Academy of Pediatrics Council on Sports Medicine and Fitness. Overuse injuries, overtraining, and burnout in child and adlescent athletes. Pediatrics. 2007;119(6):1242-1245.
5. Jayanthi NA, LeBella CR, Fischer D, Pasulka J, Dugas LR. Sports specialized intensive training and the risk of injury in young athletes: a clinical case-control study. Am J Sports Med. 2015;43(4):794-801.
6. Valovich McLeod TC, Decoster LC, Loud KJ, et al. National athletic trainers' association position statement: prevention of pediatric overuse injuries. J Athl Train. 2011;46(2):206-220.
7. Post EG, Thein-Nissenbaum JM, Stiffler MR, et al. High school sport specialization patterns of current division I athletes [published online on November 2, 2016]. Sports Health. 2016;pii:1941738116675455.

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  by supersy | 2016-11-16 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

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