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チーム医療の実践のために知っておくべきこと、その3。

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#7 Ambrose-Miller & Ashcroft, 2016
Social workerさんがIPPをしていく上で直面する問題点を挙げた論文。冒頭でIPPを成功させるカギとしてこんなことが挙げられています。
- Organizational Structure
組織の中にcollaborative leadershipがあること、そして組織の文化そのものにコラボをしましょうね、という文化や雰囲気があるのは大事で、そのためのコミュニケーション方法が確立されていることも大事である…としたあとで、「colocationも大事」と述べられています。Colocationという単語を初めて耳にしたので、なんじゃら、と思って調べてみたら、別々の団体、様々な職種の人たちが同じ施設に勤めている環境を意味するようです。なるほど、physicallyに一緒のところにいるって確かに強いですよねー。
- Professional Identity and Scope of Practice
プロとしてのアイデンティティー…これは他の文献でも言われていることですが、面白い表現だなぁと思ったのが"social workerはinterdisciplinary teamの中で効果的に機能しようと思ったらその役割をnegotiateしなきゃいけない"というところですかね。役割を「定義」するのではなく「交渉」するというところが面白い。「私こういうことが得意なんだけどこれやってもいい?」「これはあなたがやるの?それとも私やろうか?」という感じでしょうか。これは、social workerに限らず、全てのプロがすべきなんだろうなと解釈しました。
- Power Differentials
医療界にはovert (あからさま…i.e. 金銭的優位)とcovert (一見目につきにくい…i.e. 何かを決める際の発言力の違い)なpower differentials (権力格差)があり、これによってIPPが促進されることも抑制されることもある…とのこと。やはりその中心にいる(=最も権力が高い)ことが多いのはdoctor (医師)で、この階級制度を平らにしようと思ったら一番影響を受ける(=権利を手放さなければならない)のは医師だ、と書かれています。逆に言うと、その変化を医師が恐れていては本当の意味でのIPPは実現できないでしょうね。

さてさて、研究はNational Conferenceの間の2日間に行われたようで、自主的に参加の意思を示した11人のSocial workerに携わっている学会参加者(educators, practitioners, researchers, studentsのごちゃまぜ)に対してsemi-structured focus group (90分のインタビュー)をおこない、その結果をqualitative studyとしてまとめています。IPPのbarrierとは?Facilitatorとは?と問うたわけです。ここまでの突っ込みどころとしては1) 11人という少ない人数に対して、あまりに様々な背景(教育、臨床、研究、学生…)を集めすぎたのではないか?data saturationに達せるとは到底思えないのだけど…; 2) 90分というインタビューの長さにはまったく幅が無いけれど、11人全てきっちり90分インタビューしたとは考えにくい; 3) インタビュー内容は録音されておらず、研究者はノートを取りながらまとめたのみ。90分正確なノートを取り続けるのは不可能に近いと思うのが…; 4) member checkingやその他のtrustworthinessを高めるテクニックは一切使われず。信憑性は低い…というところでしょうか。

でてきた6つのテーマは…他の研究ともかぶっているものがかなり多くて、特に目新しいと感じたものはないんですが、1) Collaborative Culture…平等主義と「コラボするぞ」って雰囲気が組織内にあることが大事。そして、こういうのは気を抜くとすぐになくなってしまうものでもあるので、大事に育む(nurturance)という精神が大事; 2) Self-identify…患者を個人として、そして社会の中の一部として見つめる…それこそがSocial Workerの仕事である、と自覚すること。そしてSocial workerという仕事はそもそも曖昧な役割を担うものである、と自覚すること。仕事の中にFlexibilityがあるところが難しいところでもあり、面白いところでもある、という理解すること; 3) Role Clarification…他人の仕事を理解し、他人に仕事を理解してもらう。お互いから学び合うには、受けてきた教育(IPE)とColocationがやはり大事; 4) Decision Making…医者が決めてしまうのではなく、チームとして物事を決める; 5) Communication…これは、もういいですよね?こまめに、形態化して行う。意外なことにElectric medical recordsには問題が多いと感じているsocial workerが多いようです; 6) Power Dynamics…医師が権力を持ちすぎていて、social workerの発言が打ち消されることがある。

やはり、「お互いの役割と領域をしっかり理解した上で、その壁を崩してfluidityを持って仕事をする」というのがカギのようです。チームとして物事を決めていく、ということも最後にもう一度強調されているのですが、これが実現するには医師がチームの他のメンバーを信頼し、権限を共有する勇気を持たないと始まらないように思います。
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#8 Theberge, 2007
今までもう長いことオーソドックスな医療のみが主流だったのが、近年になってComplementary and Alternative Medicine (CAM、代替医療)が受け入れられるようになり、医療に幅が出てきました。特にスポーツ医療の分野はその傾向が強く、鍼灸師やマッサージセラピストなど、様々なプロが入り混じるようになってきています。この論文では、その代替医療の筆頭であるChiropracticがスポーツ医療の現場でどのように機能しているかまとめたものです。

トップレベルのスポーツ現場(オリンピックなどを含む)で勤務経験のある35人の医療従事者(11人のphysicians, 10人のphysiotherapists, 6人のathletic therapists, 8人のchiropractors)に対して個別にinterviewを行い、それを録音、文字起こししてcodingしましたとさ。

スポーツ医療の目的は、リスクを見極め、最小化して、その上で選手の持つ最高のポテンシャルをパフォーマンスとして引き出すこと。この中心にいるべきは間違いなくathleteであり、athlete-centeredのケアを提供するということは選手が欲しいというものを提供することでもあります。医療スタッフ陣も、オリンピック協会からも「選手が欲しがるものを提供しろ」と直接プレッシャーをかけられたりすることがあるんだそうです。ひえー。逆に言えばこうして求められてpopularになってきたのがカイロプラクターということなんですよね。しかし、同時に医療チームの他のメンバーが、「(カイロよりも)もっといい治療があるのに…」と感じていたりなんかすると、カイロを快く思わない他の医療従事者との間に溝が出来ていたりもするそうです。

スポーツ医療チーム内のコラボはもちろん超重要。オリンピックレベルともなると、その世界の専門家が集結するわけですから、お互いからの学び合いを「貴重なもの」と感じているプロが多いようです。こういったコラボが順調に進むためにカギとなるのは、やはりプロとしての境界線とcomplementarity(相補性)のバランス、そして「最終決定権は医師にある」という暗黙の了解なんだそうな。オリンピックとかだと、やっぱり責任の出どころなどははっきりしていないといけませんしね。

カイロプラクターにとっての障壁とは?というセクションでは「どの職業でもチームとしての枠で上手く働けない性格の人というのはいるけど、カイロはその中でも特にチームの一員として働くのが不得手」と多くの被験者が回答しています。もちろん「人による」のでしょうけれど、普段のpracticeが基本ソロで、全部自分で決められるから、チーム内でも同じようにやってしまう人が多いという背景があるようです。カイロからしてみると、「我々はprimary health care provider、診断も治療もreferもする。Manipulationしかしない人、という認識は侮辱的だ」という意見だし、医師や他のセラピストは「チーム医療でカイロに求められているのはあくまでManipulation」と考えている…ここらへんに大きな認識のズレがあるようです。
それから、「あくまでカイロがここにいるのは選手が望んだことだから」という認識も医療チーム内ではあるようです。「他のセラピストとやることは被っていたりもするし、どうしてもチーム医療のメンバーでなくてはならない、と我々が感じているというよりは、やはり選手に求められているからいる」ものだと考えている人もいると。「本当にもう上手くいっている、医師とPT、AT、Massage Therapistのチームが既にあったとして、そこにカイロを足すことがマイナスになることもある。上手くやれていたバランスが崩れる」という厳しい医師の意見も紹介されています。

カイロプラクターを取り巻く論争、という章ではカイロの(誰が何と言おうと)一番の武器であるmanipulationが、「quick, not long-lasting fix」というところに引っかかる医療従事者も多い、と論じられています。「いや確かに直後のパフォーマンスは良くなるかもしれない、選手も精神的に満足かも知れないけど、やっぱり僕はもっと根本的な治療も組み込まなきゃダメだと思うんだ。試合の場ではそういうことが難しいのは分かるけど…」というPTや、「ぽきっとやってもらうことは『普通』になった選手は、自分独りではそのズレた『普通』を見つけられなくなり、カイロプラクターにぼきぼき「やり続けて」もらわなければ『普通』になれなくなる。これはdependent(依存)と呼ぶべきだろう」という医師のコメントも。これに対して興味深いのが、とあるカイロプラクターの「大事な試合の前には派手にぼきっとはやらないよ、すごく軽いものだけ」というコメント。それに対して「そんなに『軽い』ものだったら生理的な効果はあるんですか?」とインタビュアーにつっこまれ、「試合前はフィジカルもだけどメンタルも大事。(生理的な効果はなくても)それによって気持ちが整えられれば損じゃないでしょう?」「手を置いて、信頼関係を築くことが大切」と答えた、という描写があります。うーん?こうなってくるとその前の医師の「依存性が生まれてくる」というコメントがさらに映えてきますね。自らのスキルや専門性を、ただの気持ちを整えるルーティーンの一部にすることに満足してしまうのってもったいなくないですか?せっかくそんな大事な場にいて、選手の身体を触れる立場にあるのに。他にも「最近のカイロプラクターはもっとholisticなことをしているよ。エクササイズを使うのが主流になってきてるし」というカイロによるコメントもありましたが、だったらエクササイズの専門家、PTさんに任せておけばよくない…?という疑問も湧きますね。カイロプラクターがカイロプラクターたるそのニッチを、カイロプラクター自身が言葉にして説明できないのは最大の弱点かもしれません。この章は、他にもカイロ対他医療従事者のかなりヒートアップした意見が事細かに綴られています。詳細はどなたかの気分を害すと嫌なので書かないでおきますが、気になる方はfull textを読んでみてくださいな。

プロとしての妥当性、という最後のまとめでは、「それでもスポーツ医療チームに招かれるカイロは、manual therapistとしての役割が望まれていること、つまりreduced scope of practiceで働くことが求められているということを理解した上で参加すべき。そして、他の医療従事者は、カイロプラクティックのadjustmentが信頼と自信によって確立されており、placeboに深く関わる効果がある、ということを認め、カイロをチームへ受け入れるべきだ」と述べられています。私も過去8年程、大学勤務中に数名のカイロさんと仕事しましたけど、その経験からでいうと、陽気でエネルギーに溢れていて仕事は一緒にしやすい方が多かったです。でもなんというか、個人的に、カイロさんと一緒に仕事をしていく上で一番苦労したのは、カイロさんの下へ送った選手の15%くらいが悪化して帰ってくるってところでしたね…。私の個人的な経験に基づく数字で言うと、25%くらいは「劇的に良くなる」、30%くらいは「多少良くなる」、30%ほどは「特に変わらない」で、15%は悪化、という感じでしたかね。総じて良くなる患者さんのほうが圧倒的に多いんですけど、私の中で「悪化」だけは絶対にダメだと思うんです。この選手、カイロさんに見せたいんだけど悪化したらどうしよう、明日試合だし…みたいな葛藤があると、やっぱり「自分で治療しよう」と思ってしまいます。あとは、うーん、時折教育的背景を疑問に思うことがあったというか…sprainとstrainみたいな基本的な用語をごっちゃにしてしまっていたり、Thomas TestとThompson Testを覚え間違えているとか、解剖学の知識が曖昧とか、そういうところを垣間見てしまうと同じ医療従事者として尊敬しにくくなるというのはありました。たまたま知識のupdateをしそびれていた分野、とか、そのカイロさんだけの問題だったのかもしれないけど。

チーム医療のメンバーになる、ということは、「他のメンバーにそれを貴方よりも上手くやる人がいたら、その役割は譲る」ということなんだろうと思います。例えば診断は医師もPTもATもカイロもみんなできますが、チーム医療を実践する場合、それの役割は医師が担うのが全うだ、と判断し、PT、AT、カイロが一歩引くのが「チーム医療」なんじゃないでしょうか。やっぱり一番最初の線引き、領域の定義がしっかりしており、それを全員が受け入れてからでないと、理想的なIPPの実践は難しいですね。
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#9 Pellatt, 2005
脊髄損傷は実に一人の人間の人生に多大な影響を及ぼす怪我。そのリハビリに、IPPのアプローチはうってつけなんじゃないの?現実はどんな感じなの?というのがこの研究。イギリスのとあるLarge spinal cord injury unitに勤務するInterprofessional Teamのメンバー(14人の看護師、5人の医師、3人のOT、5人のPhysiotherapist)にsemi-structuredなインタビュー。長さは30分から1時間程度で、テープ録音 & transcribeされ、そのあとcodingされました。Rigorの確立のためにreflexive approachは使われましたが、member checkingは行われず。うーむ。最低でも2つは何かした方がいいと思うんですけどね、rigorのために。

この研究の結果は面白かったです。一言に要約するなら「Knowing Paradox (知ってるつもりパラドックス)」とでも言いましょうかね。

●Overlapする役割
NurseとOT、PTとOT…他業種間の仕事内容のOverlapが多いというのはここまでの文献でも言われていることですが、今回の研究の参加者の中にはこれは「弱み」ではなく「強み」と感じている人が多かったそうです。お互いを補い合え、また同時に、同じことでも少し違う視点から見合えることでよりcomprehensiveなviewをつかめるというわけですね。

●わかってもらえない
しかし、overlapしない役割も多くあります。インタビューされた医療従事者はそれぞれ『もう、他の皆ってば私の職業が何なのか、どんなことができるのか十分にわかってくれていない!』と感じているというんですね。興味深いことに、NurseとOTは「私たちはもっとできることがあるのに、下に見られている。有効活用してもらえていない」、PTは「リハビリにおける自分の役割は他のプロよりも重要でhigh profileなのに、そこんところを周りが理解しきれていない。そんなことでイライラされてもなぁ…」。医師は「俺らってはそんなに何でも屋じゃないのに、どんなことにも完璧な知識を持ってると思われてる。そんなわけじゃないよー」…という、別々の理由で「わかってもらえていない」と不満を感じている、というのも実に興味深いです。

●でも私はわかっている
そんな反面、多くの医療従事者が『でも私は他の皆の仕事をよくわかってるもんね』と感じている、というのです。「自らを棚に上げ現象」ですよねぇ。

この論文の考察がまた面白いっす。なんか教科書みたいというか、個人の意見がかなり入っている気がするんですけど、self-fulfilling prophecyとでもいうんですかね、このKnowing Paradoxは「自信がなくてdecision-makingに入っていけない人がmisunderstood/underratedと感じがちなんじゃないか(=自信がなくて行動に踏み切れないことが、「大したことができない」と思われる原因を作ってしまっている)」、そして「自分はみんなのことを分かっている、という自信がある人はその自信ゆえにそれ以上他人を知ろうとしないからこそ、溝が広がってしまう」ということが原因なんじゃないか、と論じているんです。これは面白い考え方です。加えて、英語には"othering (他人化する、ヒトを自分とは異質のものであると認識する)"という言葉があるんですけど、NurseやOTは"self-othering (自らを他人とは違う、「どうせ私はPT/Doctorじゃないもんね」と区別)"する傾向にあるんじゃないんか、とも述べています。Doctor/PTがdominantな存在で、NurseやOTは自分らを「それに従う」存在と認識しているってことです。

Otheringをやめること、そして、「自分は他人を理解している」という認識を忘れ、真摯に他人を学ぶ姿勢がIPPの成功には大事なんじゃないかなっつーことですかね。
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#10 Semlyen et al., 1998
最後の論文です。Traumatic Brain Injuryのリハビリにmultidisciplinary rehabを取り入れて、そのアウトカムがどうだったかを2年間に渡って追ったUKの研究。古い論文なのだけど、とても気を使ってデザインしたんだろうなぁという心配りが感じられ、まだ研究のデザインなどに不慣れな人も読みやすいように丁寧に良く書かれている印象です。

Hunters Moor Regional Rehabilitation Centreでmultidisciplinary rehabを受けた患者(Hunters Moor Group、略してHM組; 33人、うち男性28人、女性5人、平均年齢36 ± 13歳)と他の施設で一般的な(single discipline approachの)リハビリを受けた患者(Other Rehabilitation Group、略してOR組; 18人、うち男性15人、女性3人、平均年齢30 ± 12歳)を対象に行った研究。Inclusion Criteriaはsevere traumatic head injuryを受傷してRegional Neurosciences Centre at Newcastle General Hospitalを受診した患者で、1) initial Glasgow Coma Scaleが最低でも6時間、≦8; 2) 16-65歳; 3) 家族・保護者がconsentを出せる状況; 4) 病院近辺に住んでいる; 5) surgically stableで受傷後4週間以内に退院できた人 (根拠は分からないけど、そこそこ細かくいいinclusion criteriaに見える。exclusion criteriaは明記されていないが、drug/alcohol misuseがあったり、神経系疾患が元々あった人は除外されている)。

上記の条件を満たした上で、病院から「(退院して)transferしてよし」と判断された状態でinterventionがスタート。で、患者さんが住んでいる地域と、Hunters Moorのベッドの空き状態に基づいてHunters Moorか別のlocal hospitalかに振り分けていったんだそうな(ランダム化はされていない、OR組はグループ内のheterogeneityを減らすためにせめてひとつの病院に送るべきだったのでは、グループの患者数が33人 vs 18人と約2倍の大きな差がある)。HM組の患者は毎日nusring care, physiotherapy, speech & language therapy, occupational therapy, clinical psychology, rehab medicine, counseling, social work inputという幅広い医療を提供されていた一方、OR組はinpatient, outpatient, home-basedなどで患者のgoalに最も合ったsingle disciplineのセラピーを受けていた(i.e. ひとりのphysiotherapistと週に一回一時間のみ、とか) (やはりリハビリ内容のバラツキが気になる。しかも、HM組は毎日リハビリで、OR組は週に一回一時間、とかなんだったら、仮に差があったとしてもリハビリ頻度の問題かもしれない。単純に比較するにはコントロールしきれていない要素が多い)。
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リハビリ開始前の脳損傷の程度などはグループ間の差はなかった、というけど、このテーブル2を見る限りだと統計的に有意でないながらもHM組の脳損傷の程度のほうが悪い傾向にあるのが分かります。加えて、HM組のほうがリハビリを始める前に著しく時間が経過していた (49.37 ± 29.62日 vs 17.94 ±13.60日, p < 0.001)ことが分かりますね。つまりoutcomeにはHM組のほうが不利だったんじゃないかなーと感じてしまいます。しかし、リハビリそのものの長さも、統計的に有意ではなかったとしながらも、平均201 ± 144.12日 vs 111.80 ± 175.17日というのはかなり差があるように見えます。HM組のほうがそもそも高い頻度でリハビリを受けていたんですよね…その上、期間までも長期にわたって受けていたのだとしたら、仮にHM組のoutcomeがOR組より著しく向上したとしても、単に(リハビリの内容以前に)長期間、高頻度でリハビリを受けていたからってだけかもしれません。うーん、ここはSDも大きいように感じますし、ちょっとグループ内個人差も大きいような。Control GroupにあたるOR組のリハビリがコントロールしきれなかったのはやっぱり痛い。

Functional Assessment (Barthel Index, Functional Independence Measure, Newcastle Independence Assessment Form-Research…いずれも患者の機能的・身体的independence性を計るmeasureである。それぞれのツールのvalidationやreliabilityなども言及されている。私の専門外なのでどれほど優れたものなのかはわからないけど、3つのpatient-based outcome measuresを1998年に使ったというのはすごい) は受傷後4週間、8週間、12週間、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月後に行われ、caregiverさんの精神状態もGeneral Health Questionnaire (GHQ-28)を使って12週間、6ヶ月と12ヶ月後にも計測されたそうです (脳損傷は家族や身近な人にも影響が出ます。これらの人たちの精神的ストレスを計ろうとしたところはすごい。怪我の社会的影響も見ようとしているわけだから。改めて、1998年の研究なんだけど、先見の明がありすぎるなぁと感嘆)。
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さて、上のテーブルは患者のindependenceの変化を「8週間時点から12週間時点」など特定期間の変化(つまり患者がどれだけ機能回復していったか)をまとめたもの。HM組のほうがスタートが悪かったということもあるんですが、OR組の機能回復が頭打ちになっているのに対し、HM組が計測毎に時間が一年二年と経過してもぐいぐい回復しているのがよくわかります。欲を言えばグループ間の比較のp valueも乗っけておいてほしかったんですけどー。
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caregiverさん(家族や一緒に住んでいる身近な介護している人)のpsychological well-beingはというと、上の4つのグラフを見ると結構明確かなと思います。点線がOR組、線がHM組。左から、「somatic symptom」、「anxiety/insomnia」、「social dysfunction」、「severe depression」のスコアになっていて、一年経過時にはそのどれでもHM組のcaregiverさんが精神的に良い状態にあるのが分かります。中でも「somatic symptom(p = 0.001)」と「social dysfunction(p = 0.057)」ではより顕著な差が見られました。

まとまると、2年間という比較的長いスパンで患者を追ってみると、multidisciplinary rehabilitationを受けた患者は(開始時点では機能状態はむしろ悪かったにも関わらず)、single-discipline rehabを受けた患者に比べ、リハビリ期間が終わっても著しい機能回復を続ける傾向にある。caregiverの精神的ストレスに関しては、受傷から一年するとmultidisciplinary approachを受けた患者のcaregiverはストレスが減るが、single-disciplinary approachの場合は増える傾向にある…ということがわかりました。いやー、OR組のリハビリがバラバラであること、頻度と期間も問題はかなり致命的ではあるとは思うんですが、くどいですけど1998年にこれだけの研究が成されていたというのが驚きです、感動です。かなり読み応えがありました。致命的なdesign flawを補って余りある先見の明のある、有意義な研究です。

さて、これでチーム医療シリーズは一区切りです。あと10論文、読まなければいけないのがあるのですが…他に勉強しなければいけないこともあるし、文献レビュ―はちょっと2週間ほど休憩しようかな。時間ができたらまたもどってきまーす。

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  by supersy | 2017-03-15 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル4月号発売 & チーム医療の実践のために知っておくべきこと、その2。

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月刊トレーニング・ジャーナル4月号が発売になっています!連載11回目の今回は、「新しい臨床スタンダードは、新しい教育から」というキーワードと共にアメリカAT教育で取り入れられている様々な教育方法について書いています。理想の教育って、どんなものなんでしょう?私自身、今でも試行錯誤の毎日です。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。

ちなみに私の連載は次回5月号分で終了です!一年間、長いようであっという間でした。



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#4 Kraft et al., 2013
近年の医療はservice-orientedから、patient-centered, collaborative & interprofessional approachへと移り変わっています。この際、それだけ効果的な「コラボ」ができるかどうかでquality & safety of health careが提供できるか決まるわけですが、この論文ではスウェーデンのShort-term care (STC) unit (患者が退院してから自立した生活を送れるようになるためのリハビリ・ケアを行うintermediate stageのことを指すらしい)に勤務する4人のOT、3人のPT、3人のRN(女性)を対象に、個別に45-90分のsemi-structured interviewを行い(ちょっと幅が広すぎるのが気になる…)、IPPに関する現状について調査し、まとめたのが今回の論文です。

出てきたテーマは4つ。
1. Crossing Professional and Organisational Boundaries
興味深いと思ったのは「give & take」というメンバーの関係性と、互いが互いの代わりとなれるよう、メンバー同士が教え合い、育て合って「入れ替わり可能」な環境をつくるのがよい、とされているところです。ただ、それを実現するにはどうしてもextra timeがかかってしまうので、それを負担に感じるメンバーも出ることでしょう。お互いのことを、仕事の面だけでなくpersonalなレベルで知ること、そして医療界のhierarchial system (階級制度)を考慮し、尊敬した上で仕事を行うことも大事だと書かれています。これは、前回の論文の「階級制があっては成功しづらい、全員が平等な立場であることが大事」という意見と少し異なりますね。

2. Awareness of Own Professional Identity
それなりに経験を積み、能力と責任が取れるプロたちが自分の専門性を役割を理解して仕事に臨む、ということも大事です。これは先のstatementと矛盾する感じもしますが、私は「境界線はぼかして交わることがあっても、自分の役割の核となる部分は自分だけが担う仕事であるからして、そこは責任を持って全うする」ということなんだと理解しています。あまりに駆け出しだと自分に自信が無くて迷いが出てしまう(=核が揺れる)ことから、こういったコラボ業務はまだ向かないのでは、とも書いてあります。

3. Information and Knowledge Transfer
情報をいかに共有するかは他の論文でも散々論じられていることですね。ここでも強調されているのはやはり「頻繁」に行われるミーティング、そしてそれに対してメンバーがきちんと集い、意見交換おこなうこと。daily reportでも、electrical reportでも、約束事を決め、それをこまめに実践することです。これらの効果的な実践にはsupervisionとfeedbackがあったほうがいい、という一文も興味深かった。この論文では実際の業務中、Assistant Nurse (AN)が忙しくてミーティングに参加する時間があまり取れなかったこと、そして彼らはmedical recordを読むスキルに欠けていたため、時にこれらのコミュニケーションから取り残されていたことが「問題」として述べられています。どんな医療業務でも、SOAPノートやMedical abbreviationを読む能力は必要ということですね。

4. Balancing Between Patient, System and Process
患者さんの健康状態、法律、リハビリのバランスを上手く取ることというのは実に面白いテーマです。ここでは、「どれがひとつがdominantになってしまうとダメ、特に法律によってケア期間が定義されてしまうなど、dominantしやすい傾向にある」と書かれています。そういった「縛り」のせいで、提供できたケアが最善のものだったのか疑問に感じていた医療従事者もいたと。法律に起因する時間や経済的制限が大きなinhibitorになってしまうのは、どこの国も一緒ですね。

まとめのところで印象に残ったのは、コミュニケーションの欠如はとにかく様々な問題を引き起こす大きな大きな要因である、ということ。例えば自分のメンツや周りとの関係を気にして質問をすることを躊躇してしまう、という環境は問題が起きるのをクチを開けて待っているようなもんで。supervision (監視)が必要である、と最後に複数回強調されているのだけど、どういう監視が理想的なんだろう?チームの中のリーダーが監視するの?それとも総合的に「チーム医療監視役」という人を設けるべきなのかな?以前の論文から受けた「spontaneousなのがいい」というのとはだいぶ逸れた、「管理」「監視」推しの厳しめの意見がこの論文では論じられているけれど、そちらが本当に理想なんだろうか?それから「駆け出しの医療従事者には向かない」とも何度も言及されていたけれど、「この子ならもうコラボ開始しても大丈夫!」という判断はどこでしたらいいんだろう?「準備」と早めるのに有効な教育やトレーニング法には、どんなのがあるんだろう?新たな疑問も多く出てくる研究でした。

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#5 Arvinen-Barrow & Clement, 2015
この論文の著者であるArvinen-Barrow & Clement氏らは「スポーツリハビリに臨むmultidisciplinary approachは『2層』であるべきだ」という信念を持っており、Primary rehab teamとSecondary rehab teamに患者を取り囲む周りの人間を分類、それぞれがそれぞれに合った役割を埋めていくものである、と主張しています。Primary rehab teamは怪我をした選手と直接、長時間を共に過ごすプロ集団、つまりPT, AT, physicians, surgeonsによって構成されており (direct interactions)、Secondary rehab teamにはその他の医療従事者や専門家 (S&C Coach, biomechanists, sport psychology consultants, sport nutritionists)と一般の人 (coaches, family members, friends, teammates)が関わっているそうです(direct and indirect interactions)。

さて、この研究ではATがこのArvinen-Barrow & Clementの提案するmultidisciplinary approachを採用することに対してどう感じているか、実際に現場でどういったmultidisciplinary approachを体験しているかについてオンラインアンケート調査を行いました。対象となったのはランダムに選ばれたNATA会員2000人(教育者と臨床者を区別もしなかった模様…在住国もランダムなのでは?)。ちなみに調査に使われたアンケートは「ATと最低でも10年のトレーニング・臨床経験のあるsport psychology consultantsに事前に見てもらってface & content validityを確認したもんね」と書かれていますが、他のvalidity、例えばcriterion or construct validityは未確認のまま。論文では「初期の研究はこんなもんである」みたいなことが書いてありますが、うーん、どうなのかなー。いろいろ緩い感じがするけどなー。途中の「リハビリ時にはどのくらいの頻度でmultidisciplinary teamを構成して取り組んでいますか?」という質問に「全く使わない」と答えた人は「アンケートにご協力ありがとうございました」で強制終了する用に作られており、仮に「1%(100回に1回)」とでも答えていれば最後まで回答可能だそうです。

さて、アンケートをメールで受け取った2000人のうちその19.65%にあたる、393人から回答(低く聞こえるかもしれませんが、この手のアンケートで20%のresponse rateは一般的と言っていいでしょう。しかし、よりIPP意識の高いATが回答する確率が高いと考えれば、sample biasがないとはいえません)。男女比は45.8%:54.2%, 男性平均年齢は39.48 ± 10.87歳、女性平均年齢は33.65 ± 9.76歳、ATとしての平均勤務13.3 ± 19.99年。

ケガをした選手が、リハビリをしていく中でmultidisciplinary teamへのアクセスがあることは…という質問に対し、27.5%が『重要だと思う』、44.9%が『非常に重要だと思う』と回答(合計72.4%)。Multidisciplinary teamを構成すべきメンバーは?という質問のTop 10回答は
1. Athletic Trainer (99.4%); 2. Injured Athlete (97.2%); 3. Physician (94.6%); 4. Athletic Coach (84.7%); 5. S&C Coach (78.8%); 6. Parents/Family (74.9%); 7. Surgeon (65.8%); 8. (Sport) Nutritionist (62.4%); 9. Sport/Exercise Psychology Consultant (58.8%); 10. Teammate (52.5%)
…という風になっています。

Primary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. Athletic Trainer (98.80%); 2. Injured Athlete (91.70%); 3. Physician (81.50%); 4. Athletic Coach (60.70%); 5. Surgeon (50.00%)
Secondary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. S&C Coach (49.50%); 2. Athletic Coaches (46.70%); 3. (Sport) Nutritionist (46.00%); 4. Sport/Exercise Psychology Consultant (43.20%); 5. Teammates (42.90%)…となっています。リハビリにおいて最も重要な、最も患者と密にコミュニケーションを取っているべきPrimary point personは?という質問では77.8%がAthletic Trainer、15.4%がPhysicianと答えたそう。

実際の経験はというと、64.9%のATがmultidisciplinary team approachを採用したことがあると回答、割合でいうと、毎回、毎患者ではなく、時間にすると全体の業務の66.7%ほど。総じて多くのATはmultidisciplinary team approachをポジティブなもの、価値があるものだととらえており、コミュニケーションを密にして全員が"on the same page"でいることが大事であると感じているようです。コミュニケーションのツールとしてはemail (n = 187)、電話(n = 157)、顔を合わせてのミーティング(n = 149)、携帯のメール(n = 121)などが一般的。回答したATの約半数(55.3%)が今のリハビリアプローチが最適であり、満足していると答えた一方で、 44.7%が「改善の余地あり」と感じており、具体的には他のプロらと仕事できるアクセス(Sport psychologistやSport Nutritionistなどが特に『不足』気味)や、決まったreferralの形態、共通したelectronic record、そして他のプロとのコミュニケーションの頻度・質を高めることなどが課題として挙げられたそうです。

さて、このアンケートの結果のほとんどは著者の予想というか、propose通りでしたけれども、指摘すべきは「Athletic Coachesが(著者らの提案したSecondary rehab teamではなく)Primary teamのメンバーとして挙げられていた」というところでしょうか。コーチは選手の大きな支えになることもあれば妨げになることもあるので、これは解釈が難しいところです。著者は「コーチはあまりその介入が直接的だとやはり問題を増やす可能性は否定できない」とし、アンケート結果を無視する形で「コーチはsecondary rehab teamのメンバーに留めるべきだ」と述べています。ふーむ…。私はコーチによってはPrimaryであるべきだと思うけど、これは人柄なども大きな要因だし、一概には言えないんじゃないかなーと思ったり。

あと、ここでは書かれていないんですけど、"Physiotherapist"の需要がPrimary teamでは12位(25.00%)、Secondary teamでは21位(14.30%)とかなり低かったこと。リハビリの専門家なのに?と少し疑問です。もしかしたらこれが要因かな、と思い当たるのは、このアンケートはアメリカで行われたものなのに(アンケートの回答者99.2%がアメリカ在住)、Physiotherapistという欧州でよく使われる呼称が使われていたこと。これは他のいくつかの名前、例えばSports therapist、Sport/Exercise Psychology Consultantという名前にも同じことが言えます。存在しない呼称、混乱させるような呼称は回答者が選ばなかった理由になりえると思います。そもそもこのPrimary vs Secondary Rehab Teamというコンセプトはこの著者らが打ち立てたものであり、アンケートでもその定義がきちんと共有されているようにも感じられなかった。このアンケートそのもののvalidity、そして回答ATのランダムさが少しこの研究の問題点かな。興味深くはあるんだけど、あんまりわくわくは読めませんでした。

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#6 Arvinen-Barrow & Clement, 2017
同じ研究者らにより、同じアンケートを同じ形式でSport Psychology Consultant(SPC)対象で行ったのがこの研究。ちょっと疑問なのがSPCだけでなく、Sport psychology studentにもアンケートを配布したというとことかな…そういえば前回のアンケートもあくまで対象は「NATA会員」だったから学生も含まれていたということ?学生メンバーってかなりの割合を占めていたはず…となると、それってどうなのよー。前の論文で「経験が浅い子はIPPに向かない」という報告もあったし、若い子の意見を入れてしまうと反IPPに結果が偏ることもあるのでは?

アンケートを受け取った1245人のうち、5.0%にあたる62人から回答(ひくっ!途中までしか回答しなかったresponseは分析に含まなかったそう)。男女比は56.5%と43.5%で、平均年齢は38.2 ± 11.1歳、臨床経験は10.4 ± 9.98年。71.0%はアメリカ在住、25.8%はヨーロッパ在住(これも多いなぁ、回答者のバラツキは前回の研究と変わらないか、質は落ちている印象)。

ケガをした選手が、リハビリをしていく中でmultidisciplinary teamへのアクセスがあることは…という質問に対し、平均回答は『非常に重要だと思う』。Multidisciplinary teamを構成すべきメンバーは?という質問のTop 10回答は
1. Sport/Exercise Psychology Consultant (91.8%); 2. Athletic Coaches (88.5%); 3. S&C Coach (80.3%); 4. The Injured Athlete & Athletic Trainer (同率・78.7%); 6. Physician (72.1%); 7. (Sport) Nutritionist (67.2%); 8. Parents/Family (62.3%); 9. Physical Therapist (59.0%); 10. Teammate (54.1%)
…という風になっています。それぞれ自分の職業が一位になっているのはごく自然として、こちらではコーチ、S&Cコーチの順位が高いのが面白いなーと…ここをon the same pageにしておくことが選手の精神状態に多大な影響を与えるからかなーと勝手に考察。逆にAT、Physician、PTなどの順位は低めです。ちなみにここではPhysiotherapistからPhysical Therapistに呼称を直してますね。Sport Therapistというよくわからない職種はそのままだけど。

Primary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. The Injured Athlete (91.50%); 2. Sport/Exercise Psychology Consultant (86.45%); 3. Athletic Trainer (72.9%); 4. Athletic Coach (64.4%); 5. S&C Coach (49.2%) …これはATのそれとほぼ一緒ですね。一番違うのはSPCが2位にランク入りしていること。
Secondary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. (Sport) Nutritionist & Teammates (同率・49.1%); 3. S&C Coach (47.40%); 4. Massage Therapist (42.10%); 5. Parents/Family (40.40%)…となっています。これもほとんど一緒…Massage Therapistが入っているのはびっくり&意外。患者はマッサージがあると満足しやすい、精神的に落ち着いたりリラックスしたりがあるから?やはり精神的要素がちょっと強めなような。リハビリにおいて最も重要な、最も患者と密にコミュニケーションを取っているべきPrimary point personは?という質問では29.0%が「AT」、次いで12.9%が「患者自身」、8.1%が「SPC」、6.5%が「PT」「Physician」と答えたそう。ここは全然違いますね!ATとして他業種者さんにそれでもATという職業を一番高い割合で回答してもらっているのは嬉しく思うけど、全体としてはかなりばらつきあり。患者自身がPrimary point personというのは私からしたら怖い回答だけどな…Patient-centered careと患者自身に舵を取らせる医療とは違うと思うんだけど…。

実際の経験はというと、64.5%のSPCがmultidisciplinary team approachを採用したことがあると回答。これはATの64.9%とほぼ一緒ですね。実践したことのあるSPCのうち、50.0%が「改善の余地あり」と感じており、具体的に改善すべき点は 1) もっと患者を真ん中に置くこと; 2) procedureやmeetingをもう少し形式立てて行うこと; 3) お互いの仕事について、チーム内での教育の機会があること; 4) physicalとpsychosocialという患者のケア要素をもっと混ぜ合わせること…などが挙げられたそうです。これは全然違って面白い!

さて、これとひとつ前の研究で明らかになったのは、ATはSPCをSecondary rehab teamの一員であるべき、と思っている一方で、SPCはSPCをPrimary rehab teamのメンバーであるべき、選手や他業種のプロともっと密にコミュニケーションを取るべきである、と考えているということ。このギャップは興味深いですね。文章では「ATは生理的な回復に重きを置くのでphysicianやsurgeonなど、他医療従事者をPrimaryに置く傾向があり、SPCはあくまで『たまに来る人』、indirectなメンバーという認識なのでは」なんてありましたけれど、個人的な考察だと、「ATたちからしたら、SPCは本来Primaryであるべきだと感じてはいるものの、何しろavailabilityに限りがあり、現実的にそういった人材を身近に置いておけない環境があるため、それらを考慮した上でのSecondaryなのではないか」というところもあるんじゃないかと思いますよ。SPCさんたちは理想としては、そりゃーチームの身近にずっといてほしい。Primaryになってくれればこんな素晴らしいことはない。でもうちみたいな小さ目のNCAA Division-Iでは今のところそんな可能性はしばらくないからなぁ。

さて、同じアンケートを別職種で使い結果を比べる、ということのできる面白い論文群でした。次回に続きます。

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  by supersy | 2017-03-12 12:00 | Athletic Training | Comments(0)

意識消失した患者の舌をひっぱる必要はあるのか。

救急医療のスタンダード化の重要性を強く信じている医療従事者のひとりとして、どうしても書き記しておきたかったので、この記事を残しておきます


3月2日、スペインのサッカープロリーグの試合中にフェルナンド・トーレス選手が後方から接触を受け意識を失って倒れ込み、同チームの2選手が即時に舌を引っ張って対応する、という出来事がありました(↑上動画)。2選手の反応の速さにも驚きましたが、私が一番ショックを受けたのはこの記事で(↓下リンク)担当医師がこれを「完璧だった」と称賛したという点です。


味方の急変に対して救急性を感じ、即座に行動した2選手のhumanityは高く評価されるべきであると思うのですが、医療的観点という角度から、私はこの対応を必ずしも「完璧」ではない、むしろ、下手をするとトーレス選手の命を危険にさらす可能性もある行為だったと考えます。選手がチームメイトの危機にいてもたってもいられなくなり、行動を起こしたその勇気と、その行動の内容の正当性はきちんと分けて、別次元で話されるべき事柄なのではないでしょうか?この記事では、医学的観点から、本当は何がなされるべきだったのか、もしそんな場面に選手や指導者が出くわすことがあればどうするべきかをまとめておきたいと思います。

●頸椎損傷の可能性
受傷時の動画から見ても、トレース選手が後方からの接触で頸椎を損傷していた可能性はこの時点で否定できません。少し大げさな表現になりますが、万が一頸椎の骨折や脱臼などが見られた場合、患者の頭部や首をほんの少しでも動かすことは「死」をも意味します。骨折や脱臼で不安定になっている骨(↓下MRI画像)が、動いた拍子に脊髄を傷つけてしまう可能性があるからです。だからこそ、我々医療従事者は「意識消失している患者は全て頸椎損傷があると見做し、即座に頭部・頸椎固定。最新の注意を払って迅速丁寧にスパインボーディングをすべし」という徹底した教育を受けています。常に最悪の状況を想定し、それを考慮して対処する習慣を叩き込まれているのです(実際に頸椎骨折を受傷したスポーツ選手が、現場にいたアスレティックトレーナーの適切な頸椎固定で九死に一生を得た、などというエピソードも毎年のように耳にします。彼らは決まって病院で医師に「動いていたら死んでいたよ」と言われるようです)。
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ですので、この受傷シーンの本当に正しい対応は下写真左(↓)にあるようにひとりの医療従事者が即座に頸椎を固定することです。そうして選手に声をかけ、意識が確認できない/頸椎損傷の可能性が除外できなければそのままスパインボードに患者を移動(↓下写真右)、頸・胸椎及び脊髄を固定した状態で病院へ搬送するべきでした。スパインボーディングのテクニックについてはこのブログでは割愛します。興味のある方は以前の記事をご覧ください。
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●頸椎損傷の疑いが除外でき、意識消失が見られる場合
(この状況では臨床的に不可能に近いと思いますが)仮にトーレス選手の頸椎損傷疑いが100%除外できたとして、その上で意識消失の対応を迫られているとしましょう。次にすべきはHead tilt/chin lift (頭部後屈頭部挙上法)という頭を後ろに反らし、顎を上げるようなポジション(↓下写真右)を患者に取らせながらの呼吸と脈の有無の確認です。…というのも顎を引いた通常の状態(↓下写真左)で意識を失うと舌根が沈下して気道を塞いでしまい、呼吸が停止する恐れがあるんですね。それを防ぐために、頭を剃らせ、顎を前に突き出すことで舌を浮かせて、気道を確保するのです。
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トレース選手に対応をした2選手は、恐らく「気を失うと舌が沈下し、気道を塞ぐことがある」という知識はしっかりあったのでしょう。だからこそ「指で舌をつかんでひっぱりあげる」という行為をおこなったのでしょうけれど、実はその必要はないのです。おでこと顎に手を添えて、頭部を反らせるだけで十分なのです。患者の口に不用意に手を入れるという行為は、感染症の危険性、誤飲、患者のgag reflex(咽頭反射)からの嘔吐、意識を取り戻した際に指をかまれるリスクなど、状況を悪化させてしまうかもしれない不必要な危険を伴うので、すべきではありません。

●頸椎損傷の疑いがあり、意識消失が見られる場合
頸椎損傷の疑いが否定できず、なおかつ意識消失が見られる場合(恐らくこれが今回の事故のシナリオだったかと思うのですが)、頸椎を動かさずに気道を確保する必要があります。この場合は、頸椎を固定した状態で顎だけを前に浮かせる、Jaw Thrust(下顎挙上法)という特殊な気道確保法を用いなければいけません。このテクニックは訓練を積んでいない方がおこなうことは推奨できませんので、敢えて写真は載せないでおきます。

気道確保の方法は他にも色々あり、現在、米国のスポーツ救急医療では、意識のない患者に対してはむしろ徒手でなく道具を用いた気道確保のほうが一般的になってきています。OPA(↓写真右)は挿入に3秒とかからない、シンプルで手軽な道具ですし、NPA(↓写真左)という鼻から挿入するゴム製のチューブは、顔面骨折を伴わない場合であれば患者が意識があっても使える、非常に便利で効果的な道具です(こちらについては以前トレーニングジャーナルの連載記事で詳しく書かせていただいたのでこれも割愛します)。
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道具を口や鼻に挿入することすらあれど、我々が指を患者の口に突っ込むことはまずありません。敢えて言うなら、患者が意識消失状態で嘔吐をし、吐しゃ物が口の中にあってそれを排除しければいけない場合にやむなく小指を使って掻き出すくらいでしょうか。それにしたって、suction deviseというポンプ状の道具があれば、そちらを使って吐しゃ物を吸い上げるほうが効率が良いです。つまるところ、「医療のプロでもよっぽどの必要性が無ければ患者の口に何かを突っ込むようなことはしない」ということを知っていていただきたいのです。

●てんかん発作の対応
「口に突っ込む」ついでに、てんかん発作の対応についても。昔は「てんかんの患者が発作中に舌を噛んではいけない」という考えから、発作中の患者の舌をつかんで引っ張ったり、口にタオルを入れることが推奨されていたこともあったようですが、今はその全てがガイドラインから外されています。発作中の患者の舌をつかむと自分が怪我をする恐れがあったり、口にタオルを入れると窒息の原因になる、という理由からです(日本てんかん協会のウェブサイトによる推奨事項はこちら)。下の写真のように、てんかんの発作中には患者を押さえつけたりせず、周囲のものにぶつかって怪我をしないようモノをどかし、静かに発作が収まるのを見守ることが重要です(プロの医療従事者ならば、時計を見て発作の長さを記録していくことも重要です。5分間たっても発作が収まらない場合は救急車を呼ばなければいけませんから)。発作中に失禁を起こしてしまうことも珍しくありません。周りに人がいるならば、プライバシー保護のために退室を促すなどの気配りも重要です。
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●本当にてんかんなのか?てんかん発作「のような」痙攣の落とし穴
もうひとつ、混乱させるようなことは書きたくないのですが、こちらも非常に重要だと思うので言及しておきます。こうしててんかんの発作について正しい知識を持った人に起きてしまうかもしれない悲劇のひとつに、「心不全患者の対応を見誤る」というものがあります。…というのも、心不全で心拍が停止した患者がてんかんの発作のような痙攣運動をする("seizure-like activity")ことは決して珍しくないからです。下の動画は1990年にバスケットボールの試合中に心不全で倒れ、そのまま命を失ったHank Gathersという選手の発作の動画です。
これを見て、果たして何人の非医療従事者が「てんかん」ではなく「心不全」だと思いつけるでしょうか?この患者に対して「ああ、てんかんかなぁ」と思い込んで、痙攣の停止を悠長に待っていては手遅れになります。知識のあるアスレティックトレーナーならば、てんかんの発作既往歴があり、この発作が120%てんかんが原因であると断言できる場合以外は(=つまりそんな状況は恐らく絶対にあり得ないでしょう)、周りの人間にAEDを持ってくるよう指示をだし、まずは脈の確認をするはずです。くどいですが、医療従事者は常に冷静かつ沈着に最悪のケースを考え、優先づけて対応できるように訓練を積んでいるのです。

●餅は餅屋、スポーツの救急医療対応は救急医療対応のプロへ
これだけの内容を、非医療従事者の方に全て覚えて対応してもらおうなんて、私は全く思っていません。今回一番書きたかったこと、それは、「救急時の対応はプロにぜひお任せください」ということです。

スポーツの現場にいる選手や指導者の皆さんに、無礼を承知でお願いです。怪我をし、倒れている選手には駆け寄って無理に動かしたりせず、「数歩距離を置いて見守る」という行動を通じて、我々の手助けをしてくださいませんか?受傷時の選手の倒れ方や受傷後の選手の身体の動きから障害が絞れることもあるのです。現場の医療スタッフの視界をなるべく遮らず、駆け寄りたい気持ちをぐっとこらえて、プロの知識と力を信じてくださいませんか?我々は現場のプレッシャーに影響されることなく鑑別診断をおこない(=可能性のある障害を頭でリストアップし)、効果的に確定と除外を行い、最短の時間で最善の判断をするように訓練を受けています。全ての命を守ることは不可能かもしれません。それでも我々はスポーツの現場をできる限り安全にしようと、日々ライセンスとプロとしての使命と誇りをかけて仕事をしています。そして自惚れと言われるかもしれませんが、スポーツの現場の「瞬発力」と「救急判断力」に関してはアスレティックトレーナーの右に出る者はいないとすら私は思っています。
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もし、今の皆さんのスポーツの現場に我々のような対応ができる医療従事者がいないとしたら、それこそ皆さんが声を上げ、行動を起こすべきです。中学校、高校、大学、アマ、プロを問わず、安全にスポーツをするためにはアスレティックトレーナーのような専門教育を受けた人間の存在が必要不可欠です。そんな人材を雇うのは無理だって?そんなことはありません。例えば、早稲田実業学校(初等部、中等部、高等部)には小出敦也ATCという私の先輩にあたるアスレティックトレーナーさんが勤務してらっしゃいます。前例など、いくらでもあります。皆さん、車の運転をするにあたって保険に必ず入りますよね。スポーツだってそれと同じだと思いませんか。安全への先行投資って、万が一のことが起こったときに、ああよかったやっておいて、と非常に有意義に感じるものではありませんか。野球で打者がヘルメットを被るように、アメフトで選手がショルダーパッドを着るように、サッカーで脛あてをするように、ラクロスでアイガードをするように、全てのアスリートにはアスレティックトレーナーがいて然るべきと私は思っています。非常時でなければでしゃばりません、後ろから皆さんの様子を静かに見ています、その代わり、何かがあったときは一番に皆さんの下へ駆け付けますから。買える安心を、実現できる安全を、手に入れないのはどうしてですか。
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  by supersy | 2017-03-06 17:10 | Athletic Training | Comments(5)

チーム医療の実践のために知っておくべきこと、その1。

さて、今回からはInterprofessional Practice/Educationというテーマで10文献まとめます。これも今、AT教育では『主流』『王道』となってきているキーワードですね。
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#1 Molyneux, 2001
こちらはUKの文献、16年も前のQualitative研究です。古いですけど、丁寧にまとめられています。 「ここまで(80年代、90年代)に出版されてきたInterprofessional Practice関係の文献は『実現は大変だ』『こんな風にゴタゴタした』『こうすれば上手くいくんじゃないか?』という内容ばかりだったが、筆者はとても素晴らしい経験ができたので、それを共有したいと思います」という流れで、とある脳卒中患者に対してInterprofessional Teamでリハビリをしたらこんなにうまくいきました、その秘訣はどうやらこういうところだったんじゃないでしょうか、ってことをまとめています。

今回の「サンプル」はリハビリチームに参加したOT2名、PT2名、Speech Language TherapistsにSocial Workerがそれぞれ1名の合計6名。彼らに対してまずは45分~1時間ほどの個別のsemi-structured interviewを、そしてmember-checkingを行ったうえで、focus groupをして出てきたアイデアについてさらに語ってもらう…という形式を取ったようです。Focus group→in depth interviewのほうが「フツー」の流れなんじゃないかなと思ったけど、まぁそこは目をつぶっちゃっていいんでしょうか。…で、出てきた3つのthemesというのが…

1. Personal qualities and commitment of staff
メンバー全員が望んでこのチームに入ったというmotivation & commitmentがあったこと、そしてお互いが「臨機応変でなければいけない、柔軟でいよう」という意志があったこと。それから非常に興味深いことにこのチームに医師がおらず、dominateしようとする存在がなかったことから、安全感が生まれた、というのもありました。妬みの感情が無く(メンバーは全員女性だったそうなんですが…「意外」と言ってしまうとイケナイかな)、上下関係が生まれずにお互いがお互いの能力に自信を持てたこと、そしてだからこそお互いの仕事の境界線を動かしてもいいという冒険心も生まれたそうです。医師がいなかったからうまくいったというのは…意外なようで全く意外じゃない、どちらかというとすごくわかりますね(笑)。医師がいると、何となくみんな医師の機嫌を損ねてはいけないと顔色を窺っちゃうんですよね。

2. Communication within the team
少数精鋭のチームで、同じオフィスに全員が勤務しており、頻繁にコミュニケーションの場を設けたこと…詳しく言うと、一週間に一回のcase conferenceをおこない、それに対してメンバー全員が出席するよう最大限の努力をしたことも大事だったようです。全員が発言する機会があり、無駄な脱線は極力避けた、というのも頷けます(私は実りの無いダベリだけのmeetingが大嫌いなので)。患者のcentral noteも設け、そこにそれぞれがやったことを記録していったのも良かった、と。

3. Development of creative working methods
「どうしたらうまくいくのかわからなかった」ことこそが成功のカギだった、というのは面白いstatementですね。ガイドラインがなかったからこそ、全員が常にどうしたらいいか考えながら自由にやることができたそうです。最初こそお互いのtraditional roleを守ろうと動いていたそうなのですが、あれ、もうちょっとこんな感じでもいいのかもね、あら、じゃあ私もこれやりましょうか?とオープンに考え、とにかく患者を真ん中に置いて動いてみたことがよかったのでは、というコメントが多く出ました。

まぁまとめると、あれですね、スタッフになる人物は1) motivated, 2) committed, 3) experienced and 4) willing to be flexibleな人がいい…というのは言われれば当たり前な気もしますね。それぞれが、自分の専門性は何かわかった上で、それを壊す勇気がある、というのかな。わかってないと壊せないし、自我が確立されていなければ壊すことは怖いし。こういう仕事のスタイルはギョーカイの新人には向かなくて、きちんと経験摘んできている同士だからできることなのかな、と思います。ひとつの共通するベースで働く、チームでミーティングを頻繁に開く、どうコミュニケーションを取るかについて共通理解を設けておく…ここらへんも特に驚くようなことではないのですが、「医師がいなかったことで『平等感』が生まれた」というのはいやはやなんとも。これが成功の大きな要因のひとつだったというなら、医師アリでも成功するためにはどんなことを心がければいいのか興味が沸きますね。
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#2 Sumsion & Lencucha 2009
この論文はタイトル通り、Inpatient unitsにてInterprofessional teamの一員として働く12人のOTへのインタビューを通じて、Patient-Centered Practiceをする上でのbarriers (障壁)とfacilitatorsとは何か?それを実践している身として、どんなことを感じているのか?などについてまとめた研究です。こちらもQualitative, カナダの研究チームによる報告ですね。Rich description, member checking, audit trailをtrustworthinessの証明として使用。で、出てきたThemeをConcept Mapにしたものがこれ。
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●Facilitators
- Team cohesion, autonomy and consultation
責任とアイデアを共有すること、そしてこの研究ではinterprofessional teamのリーダーに医師がいたらしいのですが、その医師がその他のメンバーの専門性と知識を信頼し、彼らのclinical judgementを受け入れるとチームの活動が円滑に進みやすかった述べられています。大事なのは意味のある目標(meaningful goals)に向かって進むことなので、そのためにチーム内でのconsultingを頻繁に行い、お互いの抱える問題を声にして話し合い、collective planningを行うことは欠かせません。

- System enablers
この病院には地域と組織の両方のレベルでpatient-centered careをプッシュする風潮があり、community resourceがあったというのも特筆すべきことかなと。"client planning committee"という委員があり、患者こそがdecision makersであるべきだ、という理念を徹底させていたりとか (つまり成功図が見え、比較的ステップが明確な状態で仕事に臨めるんじゃないかなと)、あとは例えば患者さんをもっとよく知るために、一週間に一度一緒にお茶でもしに喫茶店にいったりすることも「仕事」と好意的にとらえてくれるような環境があると、確かにこういったコンセプトは実現しやすいですよね。

- Family collaboration and support
患者の家族にも目標を理解し、セラピストが何をやっているのか理解してもらうことは非常に大事。家族がいると患者の態度も変わったりもしますしね。となれば、家族も巻き込んだ透明性のあるコミュニケーションは当然欠かせません。

●Challenges
- Differing perspectives and paradigms
患者がdecision makerである以上、患者がしたい、やりたいと思うこととセラピストが「本当はこれができるはずなのに」と感じることにギャップがある場合はなかなか難しいそう。あとは、セラピスト間にも良くも悪くも職業別の「傾向」があり、例えば本文によればnurseとpsychiatristは(古い医療モデルである)medical modelに頼り、比較的自分たちが主導権を握ったままの医療を実践してしまうことが多い(今回のcontextとは反する)ので、それらの医療従事者が「現場仕切り役」だとpatient-centered careが実践しにくく感じる、という感想もあったそう。Assessmentの完了を「目標」においてしまっている医療従事者との仕事も(もちろんそれは患者の目標ではないので)非常にしづらかったのだそう。

- Competitive framework and boundaries
チームのメンバーが自分の領域を守るのにやっきになったり、物理的距離があって直接会う機会を設けるのが難しいというのも成功への障壁のひとつ。

- System barriers
「患者とコーヒーを飲みに行く余裕」はあっても、やはりそれなりの期間内に目標を達成しなければいけないというプレッシャー、そして、他のチームメンバーも忙しいのでvisitをどうスケジュールするかなどの時間的苦労はやはり多いようです。患者さんに経済的制限があり、思うように治療に通えない、そしてそれが理由でニーズを満たせない、というのも選択肢が限られてきてしまいますし、それから、このサービスを受けたい患者のwaitlistが長い(患者が希望してからこういった治療が実現するまで一年かかるそうです)ことも大きな障壁になったそう。どうやら慢性スタッフ不足もあるようですね。

- Family goals
家族の向いている方向、見ているものがチームや患者のそれと異なることも十分あり得ますし、文化的な違い(過保護だったり、家族がそうであるように、チームにも24時間体制のサポートを求めたり)が原因で理想的な治療が提供できないこともあったそう。

チームもシステムも家族も、facilitatorにもなる可能性もchallengeになる可能性もあるというのは面白いですよね。「新しいアプローチがしたいです、これ、古いシステムにでもぎゅぎゅっと詰めれば入るでしょ、ではなくて、新しいアプローチを試みる際には構造そのものを変える必要がある」というのにはうんうんと頷いてしまいました。medical modelからpatient-centered careへ、ってのがそもそもかなりのparadigm shiftだもんなぁ。職員の仕事の評価の仕方もがらりと変えなければいけないから、組織の人間全員がon boardじゃないと実現はかなり難しいのではないかと思いました。まぁ、今時medical modelで仕事してたらすぐクビになりそうなもんですけど…。それでもこの論文2009年発表ですもんね、そんなに前の話じゃないんだよなー。
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#3 Breitbach et al., 2015
次はNATA Executive Committee for Educationも中心になって書かれた、非常にAT教育の未来を語るうえで大事な論文です。アメリカAT界では2012年に正式に"Interprofessional Education (IPE)はProfessional/Post-ProfessionalレベルのAT教育で教えられるべき必修項目に入れましょう"と決まったわけですが、IPEの定義とはなんなのか、どう教え・実践されるべきものなんおか、これからの医療はどう変わっていくのか、などに共通理解を広め、深める目的でこのnarrative reviewがまとめられています。
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Uniprofessional practice/educationはともかく、Interprofessional practice (IPP)/education (IPE)とMultiprofessional practice/educationは異なるものなんですね。定義を並べて書いておきます。
Multiprofessional Education: members or students of 2 or more professions associated with health or social care, learning alongside with one another; parallel learning, rather than interactive learning
Interprofessional Education: an educational process whereby professions learn about, from, and with each other to improve collaboration and the quality of care
Multiprofessional Practice: Appropriate experts from different professions handle different aspects of a patient's care independently/ The patient's problems are subdivited and treated seperately, with each provider responsible fo rhis or her own area
Interprofessional Practice: health care provided in a coordinated manner by health professionals who share mutual goals, resources, and responsibility for patient care
"multiprofessional"は数さえあれば成り立つ、passiveなものでもあり得るのに対して、"interprofessional"は互いが互いから学びあい、協力し合う積極的な姿勢が無ければ成り立たないのが印象的です。IPPは医療ミス予防、patient advocacy(患者支援)の改善、医療費負担の軽減を実現させながら患者のアウトカムを最大限に引き出すには無くてはならないアプローチになってきているほか、医療従事者間の仕事に対する満足度、job retentionも向上するとも言われています。加えて、高齢化と慢性疾患の蔓延がますます増加していく社会で重要になる「予防医学」を実現するために、我々がもっと上達しなければいけない分野であるとも言えます。そして、IPPを実現していくためにはIPEを早い段階で取り入れ、学生のうちから他の医療従事者をcollaborative workをしていくのが当たり前であるという文化を植え付けることが大事になるわけです。逆に言うと、これからの若い学生は、こういった教育やトレーニングをしっかり受けている方が"employable"という風に見られることも意識して損はないかもしれませんね。

IPEに参加した学生は1) 他の医療従事者のscope of practice、2) 他の医療従事者の価値、3) patient-centered careのノウハウ、そして4) interprofessional teamで働くチームワークスキルがつくと言われています。お互いの仕事に対するネガティブなstereotypeを減らし、他の医療従事者とのコミュニケーションの自信が培われる、卒業後も自主的に学び続けるwillingnessが向上する、などの利点も。IPEを始めるタイミングに関しては文献によっても意見が分かれており、「学生にプロとしての自我がまずは芽生えるまで控えるべき」「いやいや早いうちからそれでもやるべきだって」の両方の主張があるそうな。共通して言えるのは、IPEを始めた段階では学びの環境はnon-threateningでどの専門の学生が何人ずつ…など、細かいバランス、細部にまで気を使った教育を提供することが大事ということ。他の医療従事者との「絡み」を楽しんでもらうことが第一歩。Didacticとclinicalの2つのphaseに分けてIPEをおこなうことが多いようです。IPEは彼らの日常業務に近ければ近いほどいい…ということなので、例えばケーススタディーに基づいてそれぞれの専門職が何をするか話し合う場合にも、学生が普段実習に出ている現場を意識し、いかにも「ありえそうな」症例をシナリオに使うことなんかが大事なんでしょうね。学生が医療の道を正式に歩み始める前に、他の医療受持者をshadowする機会を設けるというのも大事なのでは…なんて文章もありました。

IPE実践のためには教員自身も同様に他の学部の教員とお互いの領域を理解し合い、コラボしあう必要があります。ただ、多くの教員、そしてPreceptorもこういう訓練を受けていないという事実はどうしても障壁にもなり得る要素なわけで。単純に様々な業界の学生をていやっと同じ教室に入れればいいというわけではなく模擬症例などを使って何を学んでほしいのか、明確なSLOとそれを推し測るmeasureを持ってして意味ある学習体験をデザインしなければいけないわけですよね。これに関してこれ以上の明確なやり方は記述されていませんでしたが、こういったことを実現するにはadminの理解と協力も必要です。

効果的なIPPを行うには、まずはATが自分自身が何者なのかを他の医療従事者に明確に伝え示すことができる能力("ability to communicate the scope of our knowledge, skills, and abilities and value as part of the health care team with others")が必要不可欠。それから上でも言及したことですが、それぞれの役割の理解がしっかりしていない、誰かが場を支配しようとする、などがあるとconflictの原因になるとも書かれていました。相互理解、相互respectがあり、まめにコミュニケーションを取ることが成功の鍵であり、階級制度を持ち込んでしまうと失敗する、というのは肝に銘じておきたいですね。

個人的には「いつ」IPEを始めるべきなのかについてもう少し情報が欲しいです。もちろん、やりようによっては一年目からでもガンガン学べるのだろうとは思うのですけど、文章にもあったように「プロとしての自我」があることがやはり重要に思えるし、自我が無ければ「安全な学びの場」造りが難しいのではと思ってしまうからです。あとつくづく思うのは、以前どこかにも書いたかもですけど、AT学部がやっぱり適切なcollegeにいることが本当に大事だなと…。うちのように、College of Educationにいるようでは他の医療従事者、医療教育プログラムとのコラボレーションは難しいです。College of Health Scienceに一刻も早く移れるものなら移りたい…でもたぶんあと数年は無理だろうなぁ…。リソースの共有、哲学の共有、common languageの共有、理想的な教育にはやはり欠かせません。

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  by supersy | 2017-03-04 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

The Ottawa Ankle Rules最新Systematic Reviewを読み解く。

さて、以前「1テーマ10文献のレビューを続けます」と書いたんですが、あまりに「読まされる」文献ばかりだとストレスがたまるので、今回はちょこっとだけ、本当に手短に自分が「読みたい」文献についてまとめておきたいと思います。以前に二回(2012年1月13日2016年1月25日)記事を書いたことのあるThe Ottawa Ankle Rule(ORA)ですが、昨年11月(正式誌面発表は来月)に最新のMeta-analysisが発表になっていたようです。どんなこと書いてあるんでしょう?
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この論文のイントロに書いてあることで、大きく頷けたのが「今までに発表されたSystematic Reviewでは、ERに勤務する医師がOARを使った場合、どれだけ正確にレントゲンの必要性を見極められるか…というところに焦点が当てられていたが、近年医療の形態は大きく変わりつつあり、今では整形外科の怪我の診断は医師(= secondary care provider)ではないprimary care providerの医療従事者(文献ではオーストラリアで書かれたものなので『NurseやPhysiotherapists』と書かれていますが、アメリカではもちろんこの筆頭がATかと)が担うことが一般的になってきている」というところ。なので、今回のSystematic Review & Meta-analysisでは「誰が評価をしたのか」にも区別しながら分析をおこなっています、なんだそうだ。ふむふむ。確かに私もそこに興味があるので(i.e. 医師がERで使った場合とATがスポーツの現場で使った場合で違いは出るのか?)、今回は特にここの結果に注目しながらまとめたいと思います。

Systematic Reviewにincludeされたのが68論文に含まれていた66の研究(何故論文数>研究数?この数の差についてはきちんと説明されていないのですが…しかもうち60がfull textで8がabstractってどういうこと?Full text手に入れなよ!ちなみに総患者数は22,273人とこれは文句のないサイズ、平均28.3±10.4歳)。Meta-analysisからは「骨折が一件も含まれていなかったひとつの研究は除外した(n = 65が含まれた)」そうなんですが、それでも2x2テーブルがあればMeta-analysis組に入れても良かったのでは?それは除外するのに足りる理由なのか、個人的には疑問が残るところです。
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さて、一気に結果に飛びます!医師 vs その他のPrimacy care providerの比較ができたのはOAR 足首編(写真一番上の赤い四角)とOAR 足首・中足編(写真一番下の赤い四角)。その他のPrimary care providerを「その他」という表記にして数字を抜き出したのが下の表です。
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研究の絶対数が少ないので「その他」の95%CI幅が場合によっては少し広いのはまだまだ仕方ないと考慮するとして。総じて「その他のPrimary care provider」のほうがほんの少し低い数字になってはいますが、95%CI幅を見るとお互いの数字を含んでいますし、総合的には「OARは医師がおこなっても、その他のPrimary care providerがおこなっても効果は同じ」と現段階では断言して良いと思います。もっとちゃんと言うと、「医師とその他の医療従事者のどちらがおこなっても、OARはレントゲンの必要性を除外する力は強く(陰性だった場合、骨折がある可能性は0.2-2.3%にまで激減する)、確定する力は少ない(OARが陽性でも、骨折がある可能性はせいぜい20.4-22.1%程度にしか上昇しない)」ということです。

Prevalenceから考えて、Post-test probabilityを陽性、陰性の場合でそれぞれ計算してくれてあるのはイメージがしやすくていいですね。骨折そのもののPrevalenceが2万以上の患者数を併せて全体の16.3±6.6%だった、というのも結構貴重な数字かな。覚えておこう。陽性でもせいぜい20%止まりっつーのは、あれだな、OAR陽性ちょっと意識的に「軽視」したほうがいいってことなのかもな(臨床現場では、「オタワ陽性患者」には前回紹介したTuning Fork Testを追加でおこなってそれで最終判断を下すっつーのがやっぱり一番現実的かなー)。

正直言ってTable 1の表はMeta-analysis論文としてはかなり雑な印象なんですけど(カテゴリー別の総患者数も入れておいてくれよ、とか、比較するならp値も入れてよ、とか色々注文をつけたくなってしまう)、雑なだけについつい見ながら「ここに注目すればこういうことも言えるのかな…」「こういう見方をすればああいう風にも解釈できるのかしらん…」とあれこれ考えさせられてしまう、妙な中毒性のあるデータ群です(苦笑)。統計好きな人は、ぜひ実物を見てみることをおススメします!

1. Beckenkamp PR, Lin CC, Macaskill P, Michaleff ZA, Maher CG, Moseley AM. Diagnostic accuracy of the ottawa ankle and midfoot rules: a systematic review with meta-analysis. Br J Sports Med. 2017;51(6):504-510. doi: 10.1136/bjsports-2016-096858.

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  by supersy | 2017-02-27 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

医療と環境問題: Sustainabilityという言葉を考えてみて一区切り。

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環境問題の話も今回で一区切りにします。今回は最後の3つの文献をレビュー。
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#8 Overcash 2012
素晴らしいLast nameですね。これはアメリカの文献。

さて、手術時にガウンや患部以外の部位を隠すdrape(perioperative gowns and drape)などが使われたりしますが、これは手術で使う織物類の総重量30%くらいを占めるんだそうです。これらを一度使ってぽいっと捨ててしまうか、再利用するかで出るゴミの量もだいぶ変わってきそうですね。様々な観点から、reusable(再使用可能ガウン)とdisposable (一度使い切り、使い捨てガウン)を比較してみよう!というのがこの論文です。

さぁ、複数回使える vs 使い切りのガウンやdrapeを「どちらがより良いのか」という視点から比較しようとしたときに、1) 患者と職員に適切な保護を提供できるか、2) 着心地、使い心地が良いか、3) 経済的か、4) 環境への配慮、5) 関連する業界・職の可能性や未来性…などが判定基準のカギになってきます。「繊維素材もどんどん変わり、ガウンの安全基準の試験法も変化しているから、廃止された素材・試験法を検証した古い研究はちょっといったん忘れようぜ!経済的な時代背景も今とは違うしな!現在使われている新しい素材・基準のみに絞ってちょっと文献調べてみたぜ!あ、あんまり数がなかったんで、qual中心にまとめてみたわ!」というのが、まーこのnarrative reviewのざっくりとした主旨です。

1. Protection of Health Care Workers and Patients
もともとあくまでgowns & drapeはく複数ある感染予防要素のひとつでしかなく、且つ文献も限られているので論じにくい分野ではあるかと思うのですが…。最新のスタンダードでは、liquid & viral protection penetration testに合格したものがLevel 4 (最高の安全性)で、そこから液体が染み込みやすくなっていく順にLevel 3, 2, 1…と下がっていくようなランキングになっているそうで、この同じ基準を一貫して使ってreusable vs disposableを比較していないと比べようがないですよね、というのは至極真っ当な意見。つまるところ、そういう研究はまだないみたいです。ざっくりとしたデータで「reusableもdisposableでも、gown/drape共に感染予防に目立った差はありません」というCDCその他の報告があるくらいだそうで。
ただ、現存するデータでは「使い切りのほうが安全」という考えはエビデンスに基づいてはいない、ということにもなります。ここらへんの誤解は、徐々に解かれていく必要がありそうです。それと同時に、何回ガウンを使ったのかきちんと記録を付けるようなシステム、定期的なガウンの防護力のテストなど、新たに取り組まなければいけない事柄も出てきそうですね。ここらへんは、続報を期待です。

2. Comfort
ここもデータとしてあまりないそうなんですが、敢えて計測できそうな要素を挙げるならbreathability (通気性)でしょうか。他にももちろん「フィット感」「ゴワゴワ感」「音」なども着心地という言葉に含まれるとは思うのですが、そういうのはもう、ほんとに、研究されていないところなので(むずかしいことじゃないから、だれか研究しちゃえばいいのに、と思うけど)。Thermal manikinを使って行われたreusable vs disposableガウンの「着心地」比較実験では、どちらの種類も同様に3時間以上の手術でも体温をcomfortレベルに保てたという報告があり、他にも水分の蒸発率も大差なしという研究、そして最後に実際に執刀医らに着せ、軽めの手術から重ため、長めの手術まで119件の手術を行ってもらい、実際に「どーでした?」と尋ねてみた、という研究では、「reusableのほうが着心地がよかった」と答えた人が多かったそうです。

3. Economics
今までに発表された論文は1) トルコ: reusable gownsのコストはdisposableの25%だった ($8 per surgical package vs $33); 2) アルゼンチン: reusableのほうが78%ほど割高だった ($16 vs $9 per surgical package); 3) カナダ: reusableのほうが4%ほど割安だった…が、これは誤差の範囲内かもしれない、という値段に関しては一貫性のない結果が出ているそう。Reusable gownsを使う病院の99%は、その殺菌消毒を外注しているらしいので、そこらへんも考慮するとなると、実際のコストはほとんど同じくらいで、出てきている「違い」は外注業者との交渉次第ってことになるんでしょうか。

4. Environmental Life Cycle Analysis
これは製品の制作、使用、廃棄に至るまでの全ての段階でのCO2発生、人間への毒性や水質汚染などを総合的に推し測り、(reusableがその一生を終えるくらいの)複数回使った場合の影響をlife cycle inventoryとして査定するという分野なんだそう。1998年に立てられたCDCの仮説では、(再利用するために必要な洗濯や消毒を考慮すれば)reusableもdisposableも環境にかかる負担は結果的には同じだろう、だったそうなんですが、それ以降発表された6件のlife cycle studiesでは一貫してreusable gownsのほうが環境への悪影響は圧倒的に少ないと結論づけられています。Reusablesの代わりにDisposablesを使うとエネルギー消費、温室効果ガスが200-300%増え、水消費量は250-330%増加(reusableは洗濯いっぱいしなきゃいけないのに?と疑問だったんですが、disposableを作る際に必要な水の量はreusableの洗濯で使う水消費量よりもはるかに多いようです)、廃棄物は1000ガウン当たり38-320kg出て、これはreusableの750%増にもなるのだと。うわ、すごい数字。これはreusableの圧勝で、議論の余地なし。

5. Related Job Market
Reusableの使用が増えれば、洗濯、消毒、そしてtransportation関係の職種は活気づきそうですね。Localなレベルで。しかし、比較labor studyなどがあるわけではないので、この分野はまだまだ研究が必要です。

さて、5つの基準に基づいて改めてこのふたつを比較してみると、reusableとdisposableはどちらも必要なProtection Standardを満たし、着心地は同じか少しreusableがいいくらいで、コストはほぼ同じ、しかし環境に圧倒的に優しいのはreusable…となれば、どちらがsustainabilityにとってより必要かはもう明確ではないかと思います。筆者は「どちらかを完全に排除すべき、というわけではなくて、恐らく正解はmix、適切な時にreusableを、適切な時にdisposableを使えるという充実した選択肢だ」とも述べています。なるほど、適材適所で上手く選べるようになるってことね。これはなかなか、繰り返しも多いけど読み応えのある、興味深い論文でした。
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#9 Sattler & Hall, 2008
家、学校、職場などでどんな製品をどう使うかが環境に大きな影響を与えることはよく知られていますが、医療施設ももちろん例外ではありません。「健康」を促進する我々は、「環境に配慮した、健康で安全な場所を作る」模範的立場にいなければいけないのに、まだまだ程遠いというのが現実。医療施設は医療サービスの提供の場であるだけでなく、大きな買い物も行われている場所でもあるわけですよね…例えば、食べ物、医療器具、紙、オフィス用品、電池、リネン、建築製品などなど…。そういった製品がどう作られ、使われ、廃棄されるかという一生(life cycle)を理解した上で、何を買って何を買わないか決める、つまり、環境に配慮した製品選びをすること=「Environmentally preferable purchasing (EPP)」について、この論文の前半で説明がなされています。

例えば、ほんの10年前まで(この論文が出たのが9年前なので、今でいうと19年前ですけども)、水銀の入った体温計や水銀灯の使用は非常に一般的でした。しかし、今ではデジタル式体温計や蛍光灯の使用が当たり前で、さらにそれらを再使用、リサイクルしたりもしていますね。代用品が出始めた当時は「水銀体温計交換運動」なども地域でかなり積極的に行われたようです(これは知らなかった)。その甲斐あって、今では医療器具が原因で起こる水銀汚染は劇的に減ったと言ってよいでしょう。印刷紙も大量に買いますよね、その際には塩素漂白された(→そのプロセスでも、焼却廃棄する際にも両方でダイオキシンが発生する)新しい紙を使うのではなく、漂泊のされていない再生紙を買うほうが環境への配慮が大きいと言えます。これらがEPPの実践例です。

Environmentally Conscious Waste Management(環境に配慮した廃棄マネジメント)も、Purchasing Decision同様に重要です。
  ● Reduce
  ● Reuse
  ● Recycle
この3つのRに関してはもう散々書いているので今更説明はいいですよね。医療廃棄物に関して歴史を少し振り返ってみると、そもそもなんでこんなに慎重になるようになったかというと、1980年代のHIV/AIDSの流行がきっかけだったんですって。その時は何を介して感染するのか分かっておらず、病院で生まれる医療廃棄物は「容疑者」だったわけで、とにかくなんでも赤いバイオハザード袋に隔離して、デカデカとした危険印貼って…と仰々しく廃棄していたわけです(恐怖というのは時に非常に大きなモチベーションになりますね、良くも悪くも)。病気感染経路についてより知識が広まった現代では「なんでも」ではなくて、体液の付いたものに限ってこういった「隔離」廃棄が行われているわけです。
リサイクルに関して、紙やプラスチックはまだ一般的かもしれませんが、忘れられがちなのが電池のリサイクルです。アメリカでは電池も分別せずに捨て、そのまま焼却されて環境汚染の原因になることは珍しくありませんが、これを病院規模でリサイクルしよう!と活動を始め、それが大きな歴史的ムーブメントになった…なんて看護師さんも過去にいるそうです。電池のリサイクルは病院に限らず、うちの大学でも是非積極的にやってほしいなぁー…。リサイクルという選択肢が住んでいる場所に無いというのは正直非常に困る…。
その他、焼却処理してはいけないものの典型として、水銀(airborneとなり、そのうち水に溶け込んで、魚などを汚染、最終的に人体へ入ってくる)やプラスチック(焼却時にダイオキシン発生→植物や水を介して肉や魚を汚染→人間へ。脂溶性のため、母乳などに溶け、幼児の身体にも入る)があります。育児では母乳はなるべく推奨されるべきもの、という前提を守るためには、病院では特にダイオキシンの発生の多いPVCというタイプのプラスチック製品の使用を減らすようなPolicyを打ち立てる必要があると筆者は述べています。

空気汚染も考慮しなければいけません。特に分解されにくく、長期的に渡って私たちの健康を脅かす存在なのがPersistent Organic Pollutants (POPs)という化学物質類で、これらは殺虫剤や産業廃棄煙によく含まれています。この論文では、病院での殺虫剤の使用を減らすため、Integrated Pest Managementという方法も提案されています。この手法では、まずは1) 虫の食べ物、2) 飲み水、3) 巣へのアクセスを発ち、そして4) 入口(建物のヒビなど)と防ぐ、という物理的な方法を試したうえで、非毒性の虫よけを使う(もしくは、使うならば非拡散系のゴキブリホイホイ系のものに限る)んだそうです。あと、POPsに限らず、病院で頻繁に使われるものの中にはAsthmagensやAsthma triggerになるものって結構多いんですって。消毒剤とかラテックスとか。DEHPというプラスチックを柔らかくするために使われる化学物質は男性生殖器官の機能低下(不妊や新生児の先天性欠損症)ともその関係性が報告され、今では医療器具にDEHPの使用しないよう、FDAから通達が出ているんだそうな。

それから、病院で提供する食事(患者はもちろん、職員やその他見舞いなどの来院者用も)はなるべくローカルな農家や業者が卸しているもの、オーガニック野菜や、合成ホルモン・抗生物質を使っていない牛乳や肉を使うなどが大事である、と筆者は述べていて、他にもsustainable food practiceとして、自販機でより健康的な食べ物を売る(ものすごくざっくりとした書かれ方ですが、アメリカの自販機で売っているものって基本的に恐ろしいものばかりなので私は個人的に頷けます)、食べ残しはcomposerへ、Farmers Marketsなどをホストする…などの面白い提案を挙げています。

病院で実践できる細かい提案を多く含んだ、これも面白い論文でした。実際にこういう取り組みをおこなっている病院に、時間があれば是非見学に行ってみたいなぁー。AT施設でこれからsustainable practiceを実践するためのいいお手本、いい学びになると思うんだけど。私もこういうところ、これからもっと積極的に学びにいかないと教えられないよ。
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#10 Verderber et al., 2008
最後の論文です。こちらは、Health Administration(i.e. 病院管理職)の観点からSustainabilityを考えています。論文冒頭では医療産業の爆発的な拡大、そしてそれに環境管理が追い付いていないことを指摘。環境保護が盛んに訴えられるようになっても、医療団体の多くは「コストがかかりすぎる」とGreen化に否定的だとも注意喚起しています。

1990年代に建設物のエネルギーパフォーマンスを総合的に評価するランク付けシステム、Leadership in Energy Efficient Environmental Design (LEED) rating systemが完成。一定の基準を用いポイント形式で評価、優秀な建物には銀、金、プラチナ認定が贈られるといった仕組みを採用し、環境保護を視野に入れた建物を表彰する取り組みを始めました。 2006年までに30,000を超える団地がLEED認定を受けており、LEEDは史上最も成功したプログラムのひとつとして一般に広く認知されています。多くの都市や政府レベルの建物は最低でも「銀」レベルのLEED認定を受けることが義務化されているそう。そんな建物の中に病院などの医療施設はさぞかしたくさんあるんだろうかと思えば、全くそんなことはないというのだからびっくり。最初に認定が下りた病院はBoulder Community Hospital Foothills Campus in Coloradoで、これは2005年とかなり最近の話みたいです。
2003年にLEEDと並行する形でThe Green Guide for Health Careというプログラムも開始。Green GuideではLEEDとは少し異なるポイントシステムを採用し、より「まだまだ始まったばかり」の医療界の環境への取り組みに寛大な姿勢を示した、医療に特化した環境保護建設プロトコルとして、こちらも広がっているそうです。こういったシステムについて、Health Adminの教育プログラムでしっかりと教育がおこなわれるようになるのが理想的である、文化を植え付けることができる、と筆者は述べています。

Sustainability関連で起こり得そうなジレンマ、そしてその解決策について教育プログラムで話し合う機会を設けることで、将来のHealth AdministratorsがLEED/Green Guideというシステムにより詳しくなったり、interdisciplinary curriculumを通じて「様々な職種のプロ(i.e. architect, interior designer, landscape architect, urban planner, etc) と手を貸し合って問題解決をする」ことの習慣づけなどをしてはどうか、とこれも教育に関してクリエイティブな提案をしています。私はHealth Adminのカリキュラムについて全く詳しくないので、ふーん、というのが正直な感想ですが、この論文で紹介されている「10のジレンマ例」のシナリオはなかなか面白かったです。様々なプロと協力しあいながら、色々な視点で物事を分析できる能力は、確かにHealth Adminさんたちには必要な能力だと思うので、願わくば、彼らのmultidisciplinary educationの一環に我々ATが含まれているといいなぁーなんて思いながら読んでいました。

さて、Sustainabilityは、不慣れながらも興味深いトピックでした。しかし、私の専門分野ではないので、これらの文献を読むのは思いのほか骨が折れました…。次は、また別のトピックで文献10レビューします。ひー、全然終わらないよ。

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  by supersy | 2017-02-26 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

医療と環境問題: Sustainabilityという言葉を引き続き考える。

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前回に引き続いてsustainabilityの文献を読んでいます。こうして読んでみると、前回紹介した3つのAT関連のsustainabilityの論文は、かなり流行りの最先端だったんじゃないかという気がします。他の医療職と、後れを取っていない!あれを書いた人たち、すごいなー!
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#4 Anaker & Elf, 2014
スウェーデンの文献、舞台はATから看護師界へ。環境破壊が進み、異常気象、土地が枯渇し、海水が上昇し、食べ物がなくなって健康にも影響が出始めているにも拘わらず、看護界に現存するsustainabilityに関する文献はごくごく限られていることを指摘。これからこのコンセプトが看護教育の中で"sustainability curriculum"として根付いていくことの必要性、そして環境保護を意識した看護臨床での実践が行われていく重要性を強調しています。

看護界隈の文献で、sustainabilityに関してどんな定義付けがおこなわれ、どのような実践が提案されているのか?というのをまとめたのがこのnarrative review。14の文献をレビューし、要約しています(看護界って新しいトレンドに敏感で、色々なことを活発に話しているイメージがあったのでこの少ない数字は個人的には意外。探し方に問題があったのかもしれないけど)。ではまずは言葉の定義から。

sustainability/sustainableという言葉の語源はラテン語の"sustinere (= to hold)"からきており、そこから派生した意味として現在では1) able to continue for a long time (長く続けられる)、2) causing little to no damage to the environment and therefore able to continue for a long time (環境を破壊することなく、長く続けられること)という意味で使われるようです。ここで紹介されていたひとつのsustainabilityの定義、"a development that meets the needs of the present without compromising the ability of future generations to meet their own need (まだ見ぬ世代の未来の人々の生きる選択肢を妨げることなく、今日の我々のニーズを満たすこと)"は中でも秀逸だなぁと。

Sustainabilityを理解、実践する上で重要な単語は1) Ecology (生態系のバランスを保つ); 2) Environment; 3) Future (この二つはsustainabilityの中心となる単語と言っても過言ではない、と筆者); 4) Globalism (地球規模で考える); 5) Holism (我々はHolistic practitionerである以上、holistic perspectiveでsustainabilityを考えていかなければいけない、とのこと);6)Maintenance (…これはholdともほぼ同じ意味ですね)。
例えば、看護師の勤務するsurgical unitでモーションセンサー式スイッチの導入でスタンドバイ電力消費を減らしたり、麻酔ガスのリサイクル(…なんていうのができるんですね!ここらへんは全く不慣れなので分からないです)などを通じてmedical waste (医療廃棄物)の削減をしたり、牧場運営関係の温室効果ガス発生を減らすため、病院での食事は週に二回は肉無しにしたり(これは、一概に素晴らしいともいえないのでは、という気もしますが…職員、患者さんの声は聞いているのかな)…という取り組みを提案しています。

ユニークだったのが「Antecedents and Consequences」というセクションですかね。Sustainabilityが生まれるまでに起こらなければいけない「前提」があるのだとしたら、1) climate change (気候の変化、特に温室効果ガスの影響が大きい); 2) environmental awareness (それに気づくものがいること); 3) confidence in future (未来への希望が無ければ、we have nothing to build upon…とは耳に痛い一言); 4) responsibility (個人もそうだが、社会と政府レベルでも); 5) willingness to change (これら全ての前提が意味を成すかはコレにかかっていると言っても過言ではない)…の5つなんだそうで。

Sustainabilityに関する人々の知識、態度、実践をobservation, interviews, surveyを通じてこれからも積極的に推し測っていく必要があるでしょうし、実際に環境に起こせる変化はCO2排出量などの具体的な数値を使っても示していくことができますね。

…うーん、concept analysisという、「今産声を上げたばかりのコンセプトを検証してみました」という、こういうタイプの論文を読んだことがなかったからかもしれませんが、よくこの(どちらかというと薄い)内容でこの(多くの)ページ数書いたなぁという、なんというか、読みにくい文章でした…。あんまりピンとこない…、そんな意味のある情報があるように感じられなかった…。もう一回後で読んでみよう…。
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#5 Grose & Richardson, 2016
こちらも看護学、2016年発表の比較的新しい文献。イギリス。
「医療は温室効果ガスの『大いなる出元』であり、リソースを著しく消耗している」― という入口から、sustainability literacyをcore competencyとしてprofessional levelの学生に学ばせる必要があるのでは、という近年の提言も紹介。Sustainabilityを教育に組み込んでいくために、こんなことをしてみたんですけど、皆さんも参考にしてみてはいかが?と教育案を提示しています。
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さて、この論文で紹介されているのは2年生の看護学生を対象に行った、シナリオ・ベースのsustainabilityへのアプローチ。まずは「将来的にプラスチックが手に入りにくくなり、価格が上昇する」という想定(シナリオ)を聞かされたあとで、学生たちはグループに分かれ、プラスチックという資源はどのように作られるのか、それによって我々の提供する医療がどう影響を受けるかディスカッションを行います。そのあとで、プラスチックで作られている「日常品」がどれくらいあるか、他に同様に影響を受けそうなマテリアル(綿や紙など)についても協議。インターネットを使ってそれぞれの物質がどれほど普及しているのか、どんな代用品が可能なのかを調べながら、無くなった場合の影響が大きい順番に並べていきます。順位を付けたところで、それぞれの物質に対し、医療の現場でそれぞれがどのように使われているかを明確にしながら、clinical waste, general waste, recycle/reuseのうち、どの処理法が適切かさらに議論。その「処理法」のコストも考慮に入れながら、「これはこういう用途だと血がつくので臨床廃棄しかないね」「これはもう一回使えるんじゃない」とわいわい話し合うわけです。

この経験を通じて学生が何を学び、何を考えたかアンケートを取り、レビュー。学習に参加した293人のうち、290人から回答(任意だったため)。98.97%の参加者が「役に立った」、97.57%が「現実味があった」と答え、具体的には「特に影響順に並べたのがよかった」「毎日やっている臨床との関連性がはっきりしていた」「結果を考えずにモノを使っていたんだなぁと実感した」とポジティブなコメントが並ぶ一方で、廃棄処理に関しては「病院のwaste management policyやinfection control policyと反するところもあり、今回話した内容をそのまま現場で実践するのは難しい」という懸念も多くあがったそう。

「実際にこのトレーニングを受けてみて、これからどんな行動をとりますか?」という項目では、「他のスタッフとも話し合ってみようと思う」「ゴミの分別などもう少し注意してみてみようと思う」「ポリシーに疑問をぶつけてみようと思う」という回答が。「何か他にコメントはありますか?」という最後の質問では、「3年時にsustainabilityについてのリサーチプロジェクトを設けては」「一方的な講義ではなく、参加型の話し合いスタイルだったのがいい」という好意的、積極的な意見が見られた一方で、「司法からの介入の必要性を感じる。一人で行動し、ライセンスを失うのはリスクが大きすぎる」という心配をシェアしたものも。

まとめると、懸念として挙げられたのは1) 上記の通り、現場で定められている廃棄法と環境保護を理想とした場合の廃棄法とのギャップ; 2) non-sterile gloveの過使用 ― 必要でないときにも手袋をする傾向(overuse, misuse)が多く示唆されたが、「手袋をしていないとpoor practiceだと思われる」というプレッシャーもどうやらあるのでは…。しかし、手袋のmisuseはかえってcross-contaminationを招くこともあり、ここは更なる研究が求められる分野かも、とのこと。ふーむ、これは看護師ならでばの面白い視点!あんまり考えたことなかった(ATの多くはまだまだunder-useが問題なので)。この論文は面白かったなー!やっぱりqual中心でもデータがあるほうが楽しい。
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#6 Bretti et ai., 2014
こちらはOncology (腫瘍学)界からの論文、イタリア発信。
1980年代にbiomedical modelが主流となり、医療は化学、物理と分子生物学の影響のみを受け、一人の医師が一人の患者を担当するのが当たり前の時代がしばらく続きました。この時代、患者のアイデンティティーはなく、「あなたはこの病気だからこういう治療をする」という一直線のレシピ本のようなアプローチが多く見られたといいます。
1977年あたりに台頭してきたbiopsychosocial modelという考え方が徐々に広まり、患者の人生を考慮に入れ、患者自身が病気をどう見ているか、どういう人生を送りたいと思っているかに医療判断が大きく影響されることがよしとされ、一直線ではなく、holisticなもっと複雑なアプローチが許されるようになったのです。一人の医師が全てを担うのではなく、multi-professional teamによって、複数のプロが患者の快方に関わっていくのも、そう考えると至極当然です。
さて、筆者らは「現代の医療はとにかく治療効果が重視され、cost-effectivenessとsustainabilityは後回しだが、それでいいのか」と問題提起しています。「効果のある」治療を受けるためには法外ともいえるような退学の治療費を払わないといけない…なんてケース、TVなどでも目にしますよね。Oncologyはそういった問題の一番の被害者といっても過言ではないかもしれません。今出現すべきは環境にも配慮を払ったecological model」なのかもしれません。アウトカムを落とさず、患者一人一人の個性をappreciateした上で、コスト的に最も効率のよく、更に環境への悪影響が最も少ない選択肢も同時に選んでいきましょうよ、というわけです。

イタリアの"Italian College of Hospital Medical Oncology Directors"という団体は"Position Paper of Green Oncology"という公衆声明を発表したそうですよ。その中には大きく以下の11の項目が含まれています。

1. プラスチックの使用は最小限に。
2. 経済的負担を軽減するために、risk sharingと結果に基づく医療費請求が行われるべきである。Drug Day Therapyは可能であればどんどん採用されるべきだし、t使われなかった薬は回収されるべきだ。
3. 効果と安全さえ確立されたならば、biosimilar drugsの使用は大いに歓迎されるべきである。
4. 細胞増殖抑制剤のprepでは、teratogenic, mutational, そしてcarcinogenic riskは最小限に抑えられるべきである。
5. Oral chemotherapeutic treatmentは適切なケースでは一刻も早く開始されるべきである。
6. emailやインタネットを介してのコミュニケーションは患者と医師の関係を補完するためにも積極的に行われるべきである。
7. エビデンスとclinical guidelineに基づき、不要なfollow-up visitsは軽減
8. biomedical modelではなく、biopsychosocial modelが使われるべきである。
9. 可能であれば、トレーニングや教育はオンラインで行うべきである。
10. Overtreatmentはunacceptableなものであるとみなされるべきである。これは患者、医療従事者の両者にとって脅威にしかならない。
11. 癌の予防医療、そして生態系への配慮はいかなるときも行われるべきである。

こういうのが2013年に発表されているんだとしたら、イタリア腫瘍学界、最先端まっしぐら恐るべしですね!やはりヨーロッパのほうがこういう取り組みはアメリカの10年は先を行ってるんでしょうか。
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#7 Aditya & Rattan, 2014
さて、今回のまとめ最後の論文は薬学の世界から、インドの文献。
飲み残しや期限切れの薬は「医療リソースの無駄遣いであり、ひいてはlost opportunities to achieve therapeutic outcomesの反映、環境への負担である」という強いstatementから始まるこの論文。イギリスでは€300、アメリカでは$4180億という額のお金が年間で「薬剤廃棄」によってドブに捨てられているんですって。「薬学」に関わる医療廃棄物というと、まぁ前述したように、処方されたものの使われなかった薬や期限以内に使用されなかった薬、汚染されてしまった薬のことを指すわけですけども、こういうのを文字通り「水に流してしまう」ことで川や池、そしてそこに住む魚たちの生態系が変わってしまってきているという報告もあるんですって。私知らなかったんですけど、薬って28年とか経ってもactive ingredientのほとんどは90%以上の濃度を保ったままactiveだというのだからびっくり(じゃなんでそんなにさっさと「期限切れ」になっちゃうんだろう?)!NSAIDsとかホルモン剤、抗生物質は特に危ないそうです。抗生物質なんか、あれですね、薬の効かないおっそろしい化け物ができそう…。抗うつ剤やカルシウムチャンネル抑制剤なんかも水への影響が強いとか。

さて、薬剤師は適切な薬の廃棄法について知っているのか?この重要な知識の有無と、患者への説明の仕方についてsurvey形式で調査したのがこの研究です。北インドに住む薬剤師を無作為に選び、そのうち56%にあたる、84人から回答がありました。多くの薬剤師が未使用の余った薬はdistributor(支給会社)に送り返していたそうですが、固形の薬、しかも少数の場合は一般ゴミとして廃棄してしまっていると回答する者も多かった(29%)そう(もちろんこれは不適切)。90%の薬剤師が「定期的に期限切れの薬を撤去するシステムがある」と回答していたのは喜ばれるべきことですが、ほぼ同数の89%が「適切な廃棄法については学校で習ったことがない」とも答えていたというのにはびっくり。教育の根本的な改善が求められますね。「distributorがどう薬を廃棄しているか知らない」という人も21-37%いたそうで、「焼却が最も適切な薬の廃棄法である(=正解)」と答えたのは69%、つまり31%が不正解。98%が「患者に薬の廃棄法について聞かれるたことはない(=教育をしたことがない)」と答え、58%が「薬の不適切な廃棄は環境汚染につながるであろう」と回答しています。うーーーむ。これは色々と課題の見えてくる結果です。

薬学はproduct-orientedからpatient-oriented serviceへと変わるべきだ、とは筆者。FDAの規定に従えば、薬の多くはトイレに流したりではなく(流していいものも26種類あるようですが)、例えば固形の薬である場合、猫のフン入れとか、ヒトが触らなさそうな容器に入れて捨てるか、コミュニティー内の薬回収プログラム(Take-backサービス)を通じて返却したりするといいそうです。液体のものは塩や小麦粉と混ぜ、ヒトが寄らなそうな匂いをつけてから捨てるなど、やっぱり一工夫するのがいいみたいですね。もちろん、中毒性が高いようなcontrolled substanceに関してはstate-licensed facilityに書類を提出して処分する、といったようなもっと細かい決めごとがあるようですが。ちょっと先に書いたように、汚染を起こさない方法としてはincineration (焼却)が最も良いそうです。で、燃えカスを漏れない容器に入れ、薬剤廃棄物として特別廃棄する、と。
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Take-backサービスという地域単位の取り組み、私は初めて耳にしました。使わなかった薬を郵送で送り返したり、ボックスに返却したりするようなシステムなんだそう(↑)。こういうのには今回調査対象になった薬剤師さんの中にも「こういったサービスはもっと行われるべきである」という積極的な態度の人は多い(73%)ようで。こういうの、薬剤師学生も巻き込んで各地域が積極的に取り組めば、コミュニティーにも個人にも根付いていいかもですね!あとは処方する際のタイムスパンを短くする(i.e. 何ヶ月分と出す代わりに数週間区切りにする)とか、新しい薬が効くかどうか試す際は一週間だけのトライアル処方にするとか…。

この調査はインドでおこなわれたものですが、この薬社会アメリカではどうなのかものすごく気になります。しかし、薬剤師という職業、薬を調合し生み出すチカラだけではもうだめな時代ですね。きちんと廃棄できて処理できて、環境への配慮ができて確かに「一人前」なのかもしれません。こちらも非常に興味深い内容でした。

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  by supersy | 2017-02-25 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

アスレティックトレーニングと環境問題: Sustainabilityという言葉を考える。

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"Go green!"という言葉は英語で「地球に優しく!」という意味でよく使われます。環境問題への取り組みはまだまだ後進国であるのがアメリカの現状ですが(州にもよると思いますが、テキサスではゴミの分別すらしません。リサイクルも大学では一定規模おこなっていますが、地域規模の取り組みはゼロ)、それでも「もっと変わっていかなければいけない」と危機感を持って様々な形でメッセージを発信している人たちもいます。今回からは、数回に渡ってスポーツと医療の現場での環境問題への取り組みについての10の論文をまとめていきたいと思います。

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#1 Dietrich, 2009
Sustainabilityとは文字通りだと"the capacity to maintain processes, function, diversity, and productivity over time"という意味ですが、この論文では"a philosophy that promote habitual behaviors that help create a vibrant economy and an optimal quality of life, while respecting the need to sustain natural resources and to protect the environment"という風に定義づけられています。長いですね。つまるところ、『自然資源と環境を守りつつ、経済的活気と人生の質を保てるように生きていくための生活習慣を根付けていこうという哲学』ということなんだそうです。生活の質を犠牲にして環境を守るのではなく、両方を成立させる方法を模索する、とでもいうんですかね。
もちろん、我々の職務は医療であり、最優先事項は「sanitation=衛生」ですので、例えば一度使った手袋や注射針をそのまままた使うとか、そういう形のリサイクルは絶対に許されるものではありません。しかし、例えばアイスバッグを再利用可能なマテリアルのものにするといったような工夫は十分可能ですよね。「適切な環境下で、持てる全てのresourceを最有効活用する」ことこそがsustainabilityの実践なのです。
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され、アメリカのスポーツというのは「エコ」というところからある意味一番遠いところにいるような気もします。アメリカに現存する至高のエンターテインメントのひとつであり、「無駄」も「贅沢」として楽しまれているからです。大きな試合のtailgateなんかに参加したことのある方ならわかりますよね、そこらへん泥酔のお祭り騒ぎ、食べ残しに飲み残しが散らかって、ゴミがあちこちに溢れていますから。

この論文では、ATが主体となってAthletic Departmentに"Sustainability Committee"を設立することを推奨しています。そして、組織的に「Go Green=環境にやさしく」なるために、やるべきことは3つあると述べられています。

1) Research What Other Schools Are Doing/他の大学がどんな取り組みをしているか調査する。
例えば、University of Colorado at Boulderでは1970年から学生が中心となってEnvironment Centerという組織を形成し、環境問題情報の共有と大規模なリサイクル活動に取り組んでいるそうです。大学のフットボールの試合でも"Zero Waste (無駄ゼロ)"活動を行い、試合で出たゴミの80%(なんと40トン!)をリサイクル、再利用、もしくは堆肥化することに成功。さらに、自転車での来場を推奨する"Free Bike Valet(おまかせ駐輪無料)"サービスも展開し、車での来場者も劇的に減っているそうな。
University of Wisconsinでは、ひとりの学部生が教授らの協力を経て、スポーツの試合、ひと試合で生まれる二酸化炭素などの温室効果ガスの量を測定(carbon footprint、チームや観客などの移動、試合中のエネルギー消費などに基づいて計算)。そして、その(1,170トン)二酸化炭素を相殺するに足るだけの木々を地元や州の農協などと協力して植林し、「保護森林地区」として制定、"carbon-neutral condition"を作り上げました。
Athletic Departmentが主体となって行っている環境キャンペーンには、University of Wisconsinの"Wear Red Think Green"キャンペーンというのが有名です。ゲームデーメディアで積極的に環境問題に関する提言をおこなったり、試合の日に積極的にリサイクルしたり。「3-5年以内にはティッシュは全て100%リサイクル古紙のみを使うようにする」や、「試合の送迎シャトルを増やす」などなど、長期的なプランも含めて腰を据えてじっくりと進んでいるプロジェクトです。加えて、Athletic Departmentのスタンダードモデルを作るべく、現在NCAAとYale大学が提携して"best practice in sustainability for athletes"を形態化しようとしているところなんだとか。ふむ、この論文は数年前のものだけど、形になっているのかな?むくむく興味が出てきます。

2) Initiate a Sustainable Project/環境保護プロジェクトを始める
知った後は、何かを自分でも始めることです。誰もが始めやすいものとして良い例が、Nikeの"靴リサイクルプロジェクト"。もう使わなくなった靴をNikeに送り返すとその靴をリサイクルしてくれるそうで、既に2250万もの靴が集められたとか。コカ・コーラ社とEPA(Environmental Protection Agency、アメリカ環境保護庁)が提携しておこなっているRecycle Mania Competitionという取り組みも。 10週間という時間的括りの中で、どんな環境保護キャンペーンをおこなっているのか、全米各地の大学(参加校は全米400を超えるとか)の取り組みを競争形式でランク付けするんだそうです。

3) Be an Advocate Who Leads by Example/まずは自分が模範役に
大学規模の取り組みは大事ですが、もちろん個人個人のレベルでどんなに小さなことでも始める、続けるということも等しく大事です。私の母校、University of Floridaでは卒業生が自主的に「緑の誓い(Green Graduation Pledge)」を述べる機会が設けられているのだとか。意思表示をしたい卒業生は、卒業式に胸に緑のリボンをつけ、「これからの人生の選択をする際に、環境問題を念頭に置きます。この大学で学んだことを、これから私が学び、働き、生きていくコミュニティーのsustainabilityを増やすために使います」と誓うんですって。私が卒業した年(2009年)にはなかったから、最近の試みなのかしら?面白いですね。
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#2 Dietrich, 2009
Part 2のこの論文では、冒頭で「アメリカ人は人生で平均して成人の体重x600倍のゴミを生み出す」という恐ろしい統計をシェアしています。そこから改めて、医療従事者として、そして多くの若者の確かな情報源としてATはsustainabilityを謳う最適なリーダーであると言及。我々がすること、しないことは多くの人に見えているし、ATが「持っているものを最大限に使う」ことに長けているという点は、個人的にもかなり納得です。

●Reduce, Reuse, Recycle, and Buy Recycle!
できる限りのものを電子化して、paperlessへ。ミーティングの資料もメールやパソコン、プロジェクターで共有し、紙の消費を減らす(reduce)。試合の際、紙コップを使わずにボトルやカウを使用する(reduce)。テーピングの代わりにサポーターを使うのも資源には優しいですね(reduce)。使用した紙コップや空のペットボトル、段ボールなどはリサイクルへ、一定保存期間が過ぎた医療記録もシュレッドしてリサイクル(recycle)。デスクカレンダーは使用した後、小さく切ってメモパッドに、ぷちぷち緩衝材は足のリハビリ器具に(reuse)。あと、結構忘れられがちなのが「リサイクル商品を選んで買う」という努力なんですって。なるほどー。

●Be Smart About Transportation
ゴルフカートなどを乱用せず、必要ない時は歩くとか、あとはガソリンで動くものではなく、太陽電池や電気充電タイプの乗り物を使用するのもいいですね。教育で言うと、オフキャンパスの移動の際になるべくcarpoolをしていくとか、最近ではZipCarという「燃費のいい車の時間毎のレンタルサービス」っていうのもあるんですって。知らなんだ。

●Conserve, Don't Consume
電灯を普通のものからCFL電灯に変えるだけでエネルギー消費が75%削減できるとか、「部屋を出る最後の人が電気を消しましょう」と注意書きをしておく/Motion Detector式の電灯にするとか、パソコンは5分触らなければ画面が消える設定にしておくとか…定期的に不要なメール履歴を削除することでデータ容量が増えたりも(個人的には消しすぎないよう気を付けたほうがいいと思いますが)。手や食器を洗う際に水をこまめに止めたり、手を乾かす際にペーパータオルではなく空気乾燥機にするなどもできますね。

●Teach Sustainability
未来のATにこういったことを教え込むことも重要。Administrationの授業などで教えられるのが最適かも。
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#3 Potteiger et al., 2014
最後はこの論文。環境破壊の影響で増えてきているスポーツ障害の例として、heal illnesses, asthma, respiratory disorders, nutritional deficienciesを挙げ、「2012年の調査によれはATの多くはenvironmental sustainabilityに対しての知識もあるし、積極的な姿勢を見せているものの、プラスチックや水、紙の使用などでまだまだ我々が改善できる点が多くある」と指摘。

●Effects of Heat
地球温暖化が進むにつれ、低外気温が理由での死亡率は減り、郊外気温が原因で起こる死亡率は上がることが予想されます(まぁ当たり前なんですけど)。外気温が上がることで最も影響を受けやすいと言われているのが高齢者と女性。精神疾患患者、子供、暑さの影響を受けやすい職業の人と持病持ちの人も同様にリスクが上がると考えていいでしょう。

●Effects of Air Pollution
空気汚染で悪化が懸念されるのが喘息とアレルギー。中でもメジャーな空気汚染物質の6つのうちの2つ、オゾンと二酸化酸素の増加と喘息とその他呼吸器系の疾患の発生率は密接な関りがあると追われています。特に空気の状態が悪い日や時間帯に、例えば喘息持ちの選手は外での練習を避け、締め切った室内で代わりにトレーニングを行うなどの介入をする必要がこれからは増えてくるかもしれませんね。

ひとつ前の論文同様、こちらでもATが率先して環境問題に取り組む基盤を作っていくことの重要さを強調。既に環境問題担当のCommitteeがあればそちらと提携して、もしないならば組織の上の人間にそういったCommitteeの設立を提言することが大事だと書いてあります。一度基盤ができたら、現在ATスタッフで取り組んでいる環境への取り組みと、これからもっと改善できることを列挙し、何をとにかくすぐに取り組むべきか、どれをもう少し長い目で見ていくべきか…優先順位を付けるとよいそうです。現在のエネルギー消費やコスト、廃棄の量などを把握するために、Facility Managerに連絡を取ったり、企業などにEnergy Audit(施設全体でどのようなエネルギーがどのように消費されているのか分析する)を依頼したりする必要もあるかもしれません。現状のデータがあってこそ、そこから先の取り組みの成果が見えてくるものなので。

a) 施設のACの設定温度を変える、b) パソコンや、モニター、物理療法器具などの電源をこまめに切る、c) 一日の終わりに道具のコンセントを抜く、電気を消す、d) 物理療法器具の定期評価、必要があれば買い替えをする、…などを通じてエネルギー消費削減への取り組みを深めたり、あとはやっぱりMotion Detector式の電灯はいいみたいですね、10-40%のエネルギー削減になるんだとか。必要なもの以外はプリントアウトしない、などもやはりここでも言及されています。こうすることで紙はもちろん、電源やプリンターのカートリッジも長持ちしますしね。パソコンやコピー機も、場合によっては購入せずレンタルしたほうが安かったり、無駄も無かったりするみたいです。

さて、この論文後半ではATデパートメントで環境保護に特化したポリシーの成立をすべきである、そして、他の論文でも述べられているように、reduce, reuse recycleに取り組むべし、と推奨されています。紙コップからボトルに、というのは特に目新しいものではないですけど、他に進言していることとしては、飲み残しの水やスポーツドリンクを氷を足して低い温度に保ち、翌日の練習に使う、や、whirlpoolやcold tubsに使った水は、棄ててしまう代わりに、植物にやる水に再利用する、などもすべきであると書かれています。なるほど、確かに家でもお風呂の残り湯で洗濯したりしますもんね。紙もそうですが、ATクリニックではプラスチックの利用もかなり多いので(plastic bags, plastic wraps)、そちらのリサイクルも取り組むべきであると述べられています

ATで取り組む環境問題…。恥ずかしながら、あんまり考えたことはありませんでした。それに、「アメリカは無駄を何とも思わない国だ」というところを受け入れすぎていたのかも。例えば建物は基本、夜間ずっーーーーーと電機は付けっぱなしとか(防犯のためらしいです、お店なんかもずーっと電気ついたままなので渡米当初はびっくりしました)、クーラーもバカみたいにガンガンとか(アメリカ人のほうが基礎体温が高い、何ていいますけど、本当なんですかね?でも私が凍えていても、けろっとしているのがアメリカ人です)、そういうのがこの国の文化なんだから、部外者の私がやいやい言うことでもないんだろう、と思っていたので…。こうした活動、これからも広まるといいですね。今度はATに限らず、医療従事職の他分野のお仕事についても読んで学んでみようと思いまーす。

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  by supersy | 2017-02-20 23:00 | Athletic Training | Comments(0)

KTテープ文献レビュ―その3。

って、KTテープじゃない文献も入ってきてるんですけど、そこはご愛敬。
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#7 Mey et al., 2012
こちらはベルギーの論文。王室御用達ベルギーチョコレート食べたい。SIS患者では筋肉の活性のバランスの乱れ、そして発火のタイミングの遅れが見られるということから、リハビリによる介入の可能性を示唆。リハビリとModalityの併用の研究などは過去にあるが、リハビリそのものをin isolationで検証したものはないよね、ということでのこの研究です。Overheadスポーツをする軽度(まだ運動ができる程度)のSIS患者に限って、6週間のエクササイズ介入をし、その結果を追っています。

研究タイプ: Case series (Control groupがないのは痛い)
被験者: 47人(男性25名、女性22名、平均24.6 ± 7.81歳)の、「週に平均で6時間はcompetitiveなoverhead sports(バレーボール、テニス、カヌー、水泳、バドミントン)をしている」というアクティブな人たちが対象 (年齢層、アクティビティーレベル共にrelevant、ただ、週に平均6時間という中途半端な練習量が気になる…アスリートにしては少なすぎる)。競技歴は平均6±1.5年で、症状は最低3ヶ月以上続いていたものの、総じて症状は軽く、競技は継続可能だったため、研究開始時点で医師の診察を受けた人数はゼロ、time lossもゼロだったそう(痛みはあるけど競技ができないわけじゃない…こういうケースはATとしては一番対処が難しいので、この研究設定は興味深い)。このサンプルサイズはこういう結果を確認する前提で決められました…という「見たかった結果」の記述はしっかりとしているところと、15% dropoutを見こんだところは評価できるが、実際その計算の結果何人が必要と出て、今回実際に被験者となった47人という数字がその基準を満たしていたかどうかは説明がない。いや、恐らくしてるんだろうけどそこはちゃんと書いてほしい。
Inclusion Criteria: 以下の5項目のうち最低2項目が当てはまること ― 1) (+) Neer sign; 2) (+) Hawkins sign; 3) (+) Jobe's sign; 4) Apprehension testで痛みが伴う; 5) Relocation testで痛みが伴う(ApprehensionとRelocationは前方不安定症のテストであり、SISのテストとして使うにはvalidityが不十分、それに、Relocationで陽性になるにはApprehensionも陽性であるのが条件と考えれば、これらの要素は独立していない。基準を本来のapprehension = 陽性ではなく、痛み = 陽性と変えているところも主観的で、何故それを基準にしたのか説明とrationaleが不十分。"No subjects were included in the study based on the last 2 criteria alone"と文中に追記はあるが、私の解釈が正しければそれは結果論であり、理論上は4)と5)で痛みが伴えば研究に参加可能だったことに変わりはない)。加えて、Resting Scapular PositionとScapular Dyskinesisがある患者のみが研究に参加可能 ― Scapular Dyskinesis Testを行い、Uhl et alの推奨するyes/noの基準を元にScapular Dyskinesisの有無を検査したとあるが、このテストは(私も臨床で使っているからこそ言わせてもらうと)Sensitivityは76%、Specificityは30%とestablishedされたテストというわけではないし、これは動的な異常(= Scapular dyskinesis)を計るテストであって、resting scapular positionを計った方法は一切記述がない (Lateral Scapular Slide Testなどをどうして入れなかったのか?)。
Exclusion Criteria: 肩の脱臼歴、肩の手術歴、頸椎損傷疑い、NSAIDsを摂取している(一定期間以上?過去何週間にまで遡る?)、過去12ヶ月以内にステロイド注射を行っている(肩に?それとも他の部位を含む?)、肩のelevationのROMが欠けている、もし他のリハビリを既に開始している場合は対象から除外される(これらの既往歴は患者本人に尋ねたのか、それとも医療従事者に確認を取ったのか?)。
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リハビリエクササイズ: 被験者は6週間、上の写真の4つのエクササイズを毎日続けた (軽度の障害に対して、6週間という介入期間は長くないか?現場での実用性はあるのか?)。10回を3セット、セット間に1分間の休憩を挟みながら。1回目のセッションで直接PTによる指導を受け、各エクササイズの説明イラストを受け取ったのち、残りの運動は自宅で各自で行う(文中にはホームエクササイズも監視下で行うエクササイズも効果は同じという研究を引用していたが、果たして?)。正しくエクササイズを行えているか、適切なprogressionを踏んでいるか確認するため、第2週と4週時にクリニックに来院してもらうか、PTと電話で話す機会が設けられた(来院は強制すべきだったのでは…電話では正しくエクササイズを行えているか確認できるとは思えない)。エクササイズ中の痛みはVASで5/10までならオッケー(軽度の障害で5/10の痛みというのもそこそこ高いのでは…、痛みを伴うということは特定の患者は好まないエクササイズということになる)、それ以上なら負荷を減らし、regressする、という流れ。きちんと運動をこなしていることを確認するために、被験者はcompliance logをつけていた(どういった形式のものなのかは不明、結局のところself-report)。"repetitive overload"を最小限に抑えるために、エクササイズを行う順番は毎週変えた(Week 1: 1→2→3→4、Week 2: 4→3→2→1、Week 3: 1→4→2→3、Week 4: 4→1→3→2、Week 5: 1→3→2→4、Week 6: 4→2→3→1…しかし、これでrepetitive overloadが避けられるという理屈を教えてほしい。結局やっている運動は同じなのだから、総負荷は同じだと思うが?)。実験期間中、被験者はスポーツを続けるのは認められていたが、"additional upper limb strength training"は禁止されていたとのこと(その定義は?実際に上肢のトレーニングを行っていないことはどう確認したのか?)。

Outcome Measures: Shoulder Pain and Disability Index (SPADI、13項目の質問、0-100点で評価し、点数が高いほうが機能制限も高い、validity & reliabilityは過去の研究によってestablishされている、MCID 8-13.2点)とnormalized EMG (upper trap, middle trap、lower trap、SAに装着)…1) それぞれの筋肉に対してMMTしながらそのmaximal voluntary isometric contractions (MVIC)を計測 (ICC = 0.96-0.99)、加えて、2) 負荷なしScaptionをconcentric (腕を上げる), isometric (上げ切ったところでhold), eccentric (腕を下げる)のphaseでそれぞれ3秒間かけて(メトロノーム使用)行った場合の各筋肉のEMGも記録(↓写真、このelectrodesが筋活性に影響を与えた可能性は?)。この研究ではpre-trainingの結果を知らない研究者がデータcollectを行った(= blinding)とあるが、Control groupがないのだからblindingの意味もほとんどないと思われる
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Results: 47人の被験者で始まったこの研究だが、7人がdropout (7/47 = 14.89%、これはこの研究では想定の範囲内)。4人は「プライベートな理由」で(詳細不明)、3名は痛みが悪化したから(これはこの運動で悪化した可能性も否定はできない、Control groupがないのでnatural historyかどうかも分からない。記述がないことから、この研究ではITT分析を使わなかったと予測される。その場合、これらのデータをただ無かったことにするのはバイアスの危険性を高める)。実験を完了した40人のうち、12人は再来院をせず、電話のみでコミュニケーションを行った ― この12人は「特にこまめに」連絡を取り続けたというが、やはり来院と電話では隔たりがあるように思える。Compliance logを提出したのは68%の被験者に留まった(少ない。また、compliance logの結果どの程度患者がcompliantだったかは報告がない)。報告されたresultには95%CIがついておらず、統計的決定性は不明
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SPADI ― スコアは平均で、29.86 ± 17.03から11.7 ± 13.78 (p < 0.001)に減少。6週間が経った段階で、被験者40人のうち7人(17.5%)がSPADI 0点に(機能制限ゼロ)。統計的、臨床的(MCID= 8-13.2)にも有意義な改善に思われるが、Control groupが無いため、どこまでがnatural historyなのか判別不可能
EMG (MMT) ― 上テーブルにあるように、最大筋出力という観点から、統計的に有意な改善が認められたのはUpper (p = 0.003), middle (p = 0.026), lower trap (p = 0.003)の3つの筋肉のみで、SAの活性レベルの上昇は統計的に有意ではなかった (p = 0.285)。イマイチEMGの臨床的有意性がわからないのよね、私の知識不足なのかもしれないけど
EMG (Scaption) ― 最大筋力は改善が見られたtrap筋群だが、scaptionの腕の上昇中の筋出力は3つのtrap全てにおいて減少していた(p = 0.43、筋肉がより効率的に収縮できるようになった?)一方で、SAに関してはscaption中の筋活動の減少は認められなかった(p < 0.05)…とあるが、p-valueが逆では?これだと、trapの変化が見られず、SAが統計学的に有意な変化があったということになり、文章と矛盾が見られる。これは、UT/SAの活性化率がトレーニング後には腕の上昇、停止、下降時のいずれの時も著しく減少した(p = 0.005、つまり、UTの活性度が低下したのに対してSAの活性が上がり、より理想的な筋収縮のratioがrestoreできた)ことからも、「矛盾」と捉えられる内容だが…。同様に、「UT/MT, UT/LTの活性率には変化がなかった(p < 0.05)」という記述も矛盾が…p > 0.05では?
筋発火のタイミングに関してはトレーニング前後で変化は見られなかったが(p = 0.69)、scaptionという動作において、異なる筋肉が異なるタイミングで発火されることは明確に(p<0.001)記録できた。腕を上げる際、まず真っ先にSAが活性化され、その約0.25秒後にLTが、その更に0.4秒後にUTとMTが同時に発火されるようである(↓Posterior Deltoidと比較=0した場合の各筋肉の発火のタイミング。正直この研究ではこのfindingが一番おもしろい!ただ、発火のタイミングに関しては様々な研究でやれUTが先だ、いやいや、MTも早いとか、consensusは今のところないそうだ)。
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結論: 6週間のホームエクササイズにより、肩の機能は著しく上昇、UT, MT, LTの最大筋出力、つまりポテンシャルは上がったもの、負荷の無いscaptionという単純な作業中の筋出力は低下した、つまり、簡単な動作を最低限の出力で行う、能率の良さが身についたと言える。SAの活性化は大きな変化はなかったものの、UTの動作中の活動は低下したため、相対的にUT/SAの筋活動のバランスがより最適化した。筋肉の発火のタイミングはこのエクササイズでは変化が見られなかった。結果自体は面白いのだが、Controlがないため、個人的にこの研究の臨床的な意味はあまり感じない。RCT希望
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#8 Henri, 2015
これはフィンランドのSatakunta Universityという大学に所属していた学生の書いた学士論文ですね。学生として、SIS患者へのKTテープの知識・実践をどの程度持っていればいいか、みたいなちょっと変わった切り口の論文です。研究ではなく、narrative review。

このまとめによれば、KTテープの大きな効果は4種類: 1) 筋肉のサポート、2) 体液の流れのつまり(congestion)の除去、3) 痛みの減少、4) 関節の(ポジションの?)修正。テープを実際に貼る際は、
 1) 肌にオイルやローションがついてないことを確認
 2) テープを適切な長さに切る
 3) Y, I, X, Fan, Web, Donutのいずれかの形に切り、角を丸める
"Y"…筋活性にも抑制にも使用可能。大きな筋肉や、複数の筋肉をカバーするのによい。ターゲットを包むようにapply。
"I"…急性の筋損傷向き。ひとつの筋肉をターゲットとし、包むというよりは直接その上にapplyする。
"X"…originとinsertionが動作によって入れ替わるような筋肉や、ふたつの関節をcrossする筋肉に適している。
"Fan"…腫れ向き。アンカー部分をductに、腕をlymphatic drainの方向に伸ばすように貼る。
"Web"…Space correction向き(意味が100%分からないのだけど、lymph用のスペースができるってことかな)。
"Donut"…同じくSpace correction向き。真ん中の空洞に治療したい部位を持ってくる。
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 4) アンカーとなる部分(i.e. Yの場合は一番下の根本部分)にはテンションをかけずに貼る。
…というのがどのテクニックにも共通したルール。Contraindicationとしてはopen wound, unhealed scars, neurodermatitis, psoriasis…それから、妊娠後期に性器周辺に貼ることは禁止だそうだ(むしろ後期じゃなければいいのか?)。あとは、テープやテープの接着素材にアレルギーがある場合も。

Muscle Technique (Y, I, or Xテープを用いるのが一般的)
筋抑制が目的の場合はInsertionからOriginへ、活性したい場合はOriginからInsertionへ貼る(近年起始停止というコンセプトは使われなくなっていると思うが…?)。アンカー部分となるテープ両端はそれぞれ起始停止を越えた部分に、5cmほど、テンションかけずに貼るべきである。貼る際は、筋肉を最大限まで伸ばしながら、Kase氏よれば抑制なら15-25%ほど、活性なら25-50%ほどテープにもテンションをかけつつ貼るそうだ…が、10%のストレッチで十分だという研究者もいる。

Fascia Correction Technique
Y stripをFasciaを動かないようHoldするか、より望ましい場所に導く目的で使う。

Ligament/Tendon Correction Technique
損傷したり、overloadが起きている腱・靭帯に対してmechanoreceptorを刺激するために使う。Ligamentなら25-75%のテンションを、tendonなら>50%のテンションをかけ、方向は自由ではあるが抑制目的ならinsertion → originで貼ることが推奨されていたりもする。真ん中から初めて、両端に伸ばしていくような貼り方もOK (しかし、両端のアンカーは伸ばさないよう気を付ける)。

Lymphatic Technique
肌を引き上げ、リンパ液や血液の流れを促進させるのが目的。

SIS用のKTテープ
SupraspinatusとDeltoidにMuscle Techniqueを使って抑制をかけ(insertion → origin)、さらに周辺のFasciaにFascia Correction Techniqueを作ってスペースを広げるのがKase氏の提案するSISテープ。…で、これが今まで言及されたようなThelen et al, Kaya et al, Hsu et alさんなんかが検証してますよーと。うーん、使ってるテープはいちいち違うんだけどなー。

結論: 結論というか、ただのKTテープとは、という紹介の記事なので特に特筆することはなし。やはり、「そんなにSISのテープがKase氏によってスタンダード化されているというなら、なんでこんなに各研究で検証されているテープが異なるの?」というところの疑問は消えない。
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#9 Wong et al., 2012
この論文ではKTテープを膝に貼った場合と貼らなかった場合の筋活動を検証。

研究タイプ: Cross-over (前述通り、個人的にCross-overは嫌いではない…同一のグループがExpにもなりControlにもなる), random order of treatment (コイントスで決められた、KT→テープなし, or テープなし→KT)、no-placebo
被験者: Power Analysisに基づき、とある病院に勤務するスタッフ30人(男性14人、女性16人、平均28.4 ± 4.7歳。分析の結果、最低30人いればよかったのか?明記はされていない)を被験者としてリクルート。
Inclusion Criteria: 筋骨格系や心肺系の疾患がなく、関節の痛みやその他の症状が過去12ヶ月にわたってないこと(これはどう事実確認を行ったのか?self-reportの場合、recall biasなどのリスクは?)。あくまで健康な被験者なので、怪我をしている患者で同じ結果が出るかは不明
Exclusion Criteria: 特になし
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テーピングはKase氏による公式ガイドラインからそのまま引用したもので、股関節を30°、膝を50°屈曲した状態から、KTテープをVMに沿ってoriginからinsertionへ75%のテンションをかけて貼る (= facilitation effect)。テンションのかかり具合はanthropometricを使って計測し、同一人物がテーピングを一貫して担当

Outcome Measures: Biodexを用いての最大Knee extension & flexion (concentric) 筋力測定 (peak torque = 10回の筋収縮で記録された最大筋出力の平均値、normalized; total work done = 10回収縮合計の総エネルギー消費量、normalized; time to peak torque = 全てのトライアルで、最大筋出力到達までにかかった時間、をそれぞれ記録)。各被験者のテスト前にcalibrationをおこなった。股関節の角度や他の関節の固定、練習回数など、手順はスタンダード化済み (ICC = 0.82-0.95)。Carryoverをなくすため、2セッションの間は最低でも7日間あけていた。しかし、あくまで椅子に座った状態の計測であるため、実際のfunctionalな筋出力と同等とは解釈ができない
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Results: テープをしてもしていなくても、膝の屈伸・伸展共にpeak torqueに大差は見られなかった(p≥0.37)。Total work doneは、p < 0.05を「統計的に有意」と設定しなおすと(この研究ではp < 0.01としているようなので、上のテーブル参照)、伸展60°ではテープをしたほうが総労力が下がる傾向(trend, p = 0.07)が、120°と180°では著しい減少(p = 0.04, p = 0.03)が確認できたが、ANOVA分析によるinteraction効果に関しては統計的に有意な差は認められず(p = 0.24)。屈曲は一貫して変化が見られなかった(p≥0.63)。
Time to peak torqueはというと、テープをしたほうが伸展のpeak torqueにかかるまでの時間が著しく減少(p < 0.01、ANOVAで測定したinteractionもp = 0.03、時間にして36-101ms速くなった)、屈曲は変化が見られなかった。36-101msという差はスポーツパフォーマンスだったら大きな差になるのかなケガの予防にもつながるかも (VMOの発火がVLに比べて3.4-10 ms遅れるだけでPFPSになりやすいという研究もある)

結論: KTはどうやら健康な人間の筋出力を上げる効果はないが、恐らくtactile inputを増やし、皮下のmechanoreceptorの刺激を上げることでVMの発火を早める効果があるようである。しかし、ケガや痛みのあるアスリートでの再現性と、(テープ直後の計測だったため)効果の持続性は不明。また、Controlがなかったため、効果がplaceboであることも否定はできない
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#10 Williams, et al., 2012
最後はKTテープが外傷治療・予防にもたらす効果のMeta-analysis。

"kinesio taping/tape"のキーワードでデータベースを検索、96つの文献から、Inclusion/Exclusion Criteria: 1) 筋骨格系障害に関連したoutcomeを報告している(i.e. pain, ROM, proprioception); 2) 比較グループがある(i.e. KT without tension, placebo taping, no taping); 3) 英語でfull textが入手可能…に当てはまる、10の文献を分析。

10つ全ての文献で1) control groupがあるか(これはinclusion criteriaに入っているのでyes前提)、2) random allocationが行われていたか、3) 被験者のblindingが行われていたか、4) 試験者のblindingが行われていたか、に基づき、それぞれ人項目当てはまる=1点加点、という要領で研究の質を1-4点でランク付けした。これも沿って紹介することとする(研究の質を推し測るにはかなりsimplifyされすぎという気もするが…PEDroをなぜ使わなかったのだろう)。

痛み: 意外なことに、痛みに関して統計的に有意な差が認められたのはGonzalez-Iglesias et alのひとつの研究(Quality 4点)のみ。それでも、変化の度合いはテープ直後で0.9 ±0.2、24時間後には1.1 ± 0.3と、MCID (=2)に満たなかった。もうひとつの研究、Thelen et al(4点)でも痛みに関しては統計的に有意な変化は報告されず。つまり、痛み軽減の効果はtrivialであると言える。

ROM: 10の文献のうち、4つがROMに関しては統計的に有意な改善が見られたと報告。Thelen et al(4点)は9つ図ったROM measuresのうちのたったひとつ、肩のpain-free abductionが1日後に19.1 ± 10.8°増加(MCID = 15°)したと報告されており、これをlikelihoodに換算すると「74%の確率で臨床的に小さな利益がある」と言える。統計的に有意な差はなかったものの、3日後には「58%」、6日後には「30%」の効果がある可能性があるそうな。つまり、pain-free肩外転を即座に増やすのには有効か、しかし、長期的な効果は期待できないかも?という結論が出せる
Gonzalez-Iglesias et al(4点)の研究ではテープ直後と24時間後の頸椎の動き全6方向を測定、その全てで統計学的に有意な改善が見られている。一方で、MCIDは方向によって屈曲9.6°、伸展7.0°、右側屈5.9°、左側屈9.1°、右回旋7.6°、左回旋6.7°と既存の研究によって示されており、それと比較すると12Measures中8の増加がtrivialでしかないことが見えてくる。つまるところ、KTテープで頸椎のROMはテープ施術直後、24時間後共にほとんど臨床的意味がない程度しか増加しない、と言える。
Hsu et al (3点)の研究ではSIS患者の野球選手においてKTテープがScapular orientationに及ぼす影響を調査。Scaption @30°と60°でPosterior tiltに関してのみ統計的に有意な変化が認められた。MCIDが過去にestablishされていないので、Baseline段階での0.2の差をそれと仮定すると、Posterior tiltに関しては臨床的に有益な効果があると言える。しかし、他の動き(残りの19 measurements)に関してはtrivialな変化というだけでなく、うち8 measurementsに関しては有害な変化がある可能性も…総じて、KTテープのScapular orientationへの効果はtrivialかpossibly harmfulであり、お勧めはできない
Yoshida et al (2点)の研究では、健康な被験者でKTテープの胴体の屈曲、伸展、側屈ROMを検証。屈曲に関しては90%の確率でsmall effects (平均17.8cm、MCID 6.4cm)が起こると言える(6.4cmがMCIDで17.8cmってかなり大きくないか?)。伸展と側屈は統計学的に有意な変化なし。
さて、全てを総合して考えると、「ROMへの効果はまだよくわからない(unclear)」としか言えなさそうである。小さく、短期的な効果が認められるものもあれば、効果は無視できるほど微々たるもの、場合によっては有害という恐れもある。現段階で、筆者たちはROMの改善にKTテープの使用を推薦していない

筋出力: 10の文献のうち、4つの研究がKTテープ使用によるStrengthの改善を示している。Hsu et al (3点)の研究ではKTテープの使用でLower Trapの筋出力の増加(1.2 ±1.0 kg)が認められ、これはCohen's d = 0.2 = ±0.7kgと比較しても「81%の確率で、最低でも小さな程度の臨床的有意さを伴う効果がある」ことが言えそう。
Lee at al (2点)の研究では、健康な被験者でのgrip strengthの変化を計測。屈曲筋群にKTテープを使用した場合、しなかった場合と比較して統計的に有意な筋力の増加が見られた。こちらも臨床的に有益なgrip strengthの増加が期待できると言えそう。
Vithoulka et al (2点)の研究ではKTを大腿四頭筋にapplyして"concentric isokinetic exercise," "eccentric exercise"と"eccentric isokinetic exercise"の3種類のpeak torqueを計測(eccentricとeccentric isokineticの違いってなに?)。"eccentric exercise"のpeak torqueが上がったと報告されたが、placeboとnon-tapingとも比較してみると、どうやらplaceboの効果が大きいようである。このメタ分析では「97%の確率でeccentric exerciseのpeak torqueにはtrivialな効果しか生まない」と結論付けられている。"eccentric isokinetic exercise"と"concentric isokinetic exercise"はというと、「eccentric isokinetic exerciseは64%の確率で最低でもsmall clinical benefitが、concentric kinetic exerciseは41%の確率でtrivialな効果がある」という統計が示されている。
Fu et al (2点)の研究では健康な大学生を対象に、KTテープを使って「79%の確率でテープを貼った12時間後にQuadsのconcentric contractionの筋出力増加に小さな効果がある」と示された。そのほかは特筆する有意さはなし。31.5%の確率でQuadsのeccentric contractionが上がるかも?というのがあったくらいで。
最後、Chang et al (3点)では健康な大学選手21を被験者としてKTテープあり、なし、placeboテープとで比較したが、grip strengthに関して統計学的に有意な変化はなし。
全ての研究を踏まえて、今のところKTテープが筋出力を小程度(small beneficial effect)上げるというエビデンスが多少(some evidence exists)存在するということが言えそうである。

Proprioception: Chang et al (3点)の研究ではGrip Strength Measureにおいて、KTテープを用いれば95%の確率でabsolute force sense errorが最低でも小程度減少、93%の確率で最低でも小程度、related force sense errorsが減少することが示されている。一方、Halseth at al (2点)の研究によれば、足首にKTテープをしてもPflex, inversionのposition senseに変化はなし。この項目に関しては、結論付けが難しい…

Muscle Activity: Hsu et al (3点)ではscaption時に「92%の確率で60-30°の腕の下降中にLower Trapの活動がi著しく上がり(MCID10%の変化に対して14 ± 12%)、80%の確率で90-120°の腕の上昇中にUpper Trapの活動が著しく下がる」という結果が。Slupik et al (1点)の研究ではVMの筋活動がテープ後24時間後に54%増加、この変化は72時間後にも22%保たれた(10分後、96時間後の変化はtrivial)。この研究はplaceboもない、crossoverもしていないということで結果が読み取りにくい。今のところ筋活動に関してはどうやら大きな効果がありそうだと言いたいところではあるが、まだまだ質の高い研究を見てみないとわからない。

結論:
1) KTは筋出力、force sense errorの減少、そして怪我部位のAROMの向上に小規模な利益が期待できる
2) KTは痛み、足首のproprioception、muscle activityなどの改善をサポートするのに十分なエビデンスはまだない

ふーむ…色々とKT関係の文献見てみましたけど、例え同じ部位、同じ障害の患者さんでもKTテープの貼り方が異なっていたりで、様々な研究同士を足すことすらもままならないのがもったいない。ありがちかもしれないけど、「より高い質の研究がもっと必要」の典型例ですね。ただ、私としては総合してもadverse effectは超短期間の肌の発疹やかゆみなどで、比較的軽度であるということと、他の治療法がとことん失敗したときにKTテープを貼ったら一気に痛みが取れた、機能が劇的に向上した、というケースも数件以上目にしてきているので、KTテープはこれからも私のツールボックスに残しておきたい道具のひとつ。それぞれの文献、もう一回読んでみようっと。

これでKTテープシリーズは終わり。次から別のテーマで10個文献レビュ―します。

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  by supersy | 2017-02-18 18:30 | Athletic Training | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル3月号発売 & KTテープ文献レビュ―その2。

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月刊トレーニング・ジャーナル3月号が発売になっています!連載10回目の今回は「より長く、生き生きとしたアスレティックトレーナーであり続けるために」というタイトルで、献身さの度が過ぎるあまり、自らブラック職場環境を作り出しがちな我々AT業界の文化について書いています。仕事のために生きるのではなく、仕事と共に生きていく―恐れながら、こうしたらより長く、楽しみながら仕事ができるんじゃないでしょうか?という提案をしてみたりなどしています。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



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さて、ここからは前回の続きです。
#4: Thelen, Dauber, & Stoneman, 2008
やっとでてきました、アメリカの文献。

研究タイプ: RCT, double-blinded, placebo-controlled
被験者: 軍の病院施設に肩の痛みを訴えて来院した、SIS/RC腱炎の患者(軍の訓練生で現役の大学生、18-24歳)42人 (軍隊系の論文はvariableのコントロールが行き届いていることが多いのでいいですよね、というのは勝手な私見かな)が対象。Random-number generatorを用い、被験者にもグループアサイメントが分からない状態(= blinded)を作った。Power Analysisによれば各グループ26人の被験者が必要だったようだが、被験者数はそれには満たず。KT Groupに所属した被験者は21人 (21.3±1.7歳、男性19名、女性2名)、Sham KT Groupも21人 (19.8±1.5歳、男性17名、女性5名) 。総じて男性が多く(85.7%)、女性患者にこの研究結果がそのままapplyできるかは不明。年齢、男女比、肩の状態などのグループ差はbaselineでは見られなかったと文中記述があるが、p値がレポートされていないため、真偽は不明。個人的には肩の痛みの期間のグループ差(KT Group 19日 vs Sham KT Group 8日)はかなりしっかりと大きい、つまりKT組の肩の状態のほうがbaseline時点でより深刻だったのではないかと思ってしまうが…。
Inclusion Criteria: 運動面を問わず、150°のelevation前に出る肩の痛み(<70°くらいでもよかったのでは?Face validityに欠けているような?); (+) Empty Can; (+) Hawkins-Kennedy; ADLのdifficulty; 18-50歳 (くどいが、これらの診断基準の根拠は?4人の、最低5年は臨床経験のあるPTがスクリーニングしたとあるが、一貫性が無かった可能性も)
Exclusion Criteria: 肩帯骨折; 肩関節脱臼・亜脱臼; AC Sprain; 頸椎障害疑い; 過去12週間以内の肩の手術歴 (12週間は短くないか?); 6ヶ月以上続く肩の痛み (既往歴に関してはrecall biasや嘘の可能性あり。AC sprainなどの除外法は説明がなく、再現性に欠ける)
**つまるところKaya et alの研究のinclusion/exclusion criteriaと酷似。時間軸から言ってあちらがこちらを真似したというのが正確か。唯一の違いは、こちらの研究では1) 年齢制限が20歳狭い、18-50歳 vs 18-70歳; 2) steroid injectionがExclusion Criteriaに含まれていない、の二点。
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テーピングは一人のKTテープ有資格者が一貫しておこなった(良いことである反面、これは同時に資格を持たない一般的なmajorityのセラピストには使えないテーピング術ということにもなる?)。スタンダードな5cm幅のKinetio Tex Tapeを使い、Kase氏の推奨するSIS/RC腱炎のテープを施された ― Yストリップをsupraspinatusに(肩上後部)、Yストリップをdeltoldに、そして20cmのIストリップをcoracoid processからposterior deltoidを包むように横に貼る、というもの。Sham KTテープは10cmの長さのふたつのIストリップを上部と下部に張り付けるのみ。何故このテーピング法をshamとして使うことにしたのか丁寧な説明があるが、その選択経緯には主観的な部分が多いように思う。最後の「実験後に被験者が全員自分のグループアサイメントが分からなかったと証言している」ことから、blindingが守られたところを確認した点は評価できる(これは別にこの論文に限った批判ではないけど、SIS患者という共通の疾患のためのテープなのに、各研究で施しているテープの詳細が異なるのはなぜ?Kase氏がスタンダード化したプロトコルを使っているという割には一貫性に欠ける)。

Outcome Measures: Shoulder Pain and Disability Index (SPADI、13項目の質問、0-100点で評価し、点数が高いほうが機能制限も高い、validity & reliabilityは過去の研究によってestablishされているMCID 10点), 痛みのないROM (flexion, abduction, scapular plane evelationの3点をgoniometerで計測、この研究ではMCIDは15°と設定 根拠は?15°って多くない?)、痛みのないROMのエンドポイントでのVAS(100mm、20-mmがMCID)という3つのアウトカムを、第二著者がグループアサイメントを知らない状態(= blinded)でoutcomeを測定。測定が行われたのはbaseline、テーピング直後、3日後、6日後の4回。Day 6で来院しなかった(lost to f/u)が合計7名(KT3名、14.3% dropout; Sham 4名、19.0% dropout)いたが、これは全員症状が順調に改善し、クラスが忙しくて来院できなかったのが理由だそうで(真実であれば、dropoutの理由としてdataをskewするようなものではない)、取得できなかったデータはITT分析を使って補った
Confounding Variables: NSAIDsを処方されていた患者は指示通りに薬を摂取し続けるように、一方で処方されていない患者には痛み止めを取らないよう指導していたのは、人道的に考えて仕方がなかったのかもしれないが、研究のデザインとしてはバイアスを生む要素になり得る。Activityに関しては「limited-duty」状態に被験者を全員指定し、上肢の運動は(研究期間中の)一週間は"excuse"させた、とあるが、現場の指揮官にその指示は徹底させられたのかは疑問が残る。被験者はテープを48-72日間つけたままにして、各自テープを取った12-24時間以内に再来院(Day 3)して二度目のテープ施術を受けるように指導されたようだが (x 2、Day 6も同様)、施術後その日のうちにすぐに勝手にテープを取ってしまわなかったかなどはself-reportでしか確認しておらず(確認によればして維持か前にテープを外した被験者数はゼロだそうだが)、真偽は不明
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Results: ROMは両グループ共にFlexion, Abduction, Scaption全てにおいて6日間で統計的・臨床的に著しく(>15°)改善したが、グループ間の差が見られたのはDay 1のAbductionのみ (↑平均差 19.1°, 99%CI 1.7-36.5°, p = 0.005)。これはただの想像だけど、95%CIにしてたらDay 3 AbductionとDay 3 Scaptionでも決定的な差は出たのでは?Power Analysisによる「十分な被験者数」も満たしていないのに99%CIというのは少しambitiousすぎるのでは?
VASも両グループ等しく6日間で著しく改善(> 20mm)、SPADIも両グループでDay 3で等しく臨床的に有意な改善 (>-10 decrease)、Day 6でも更なる改善が見られた。
Adverse effectは、2人の被験者に見られたという肌の赤みと痒み(rash)だが、これは深刻なものではなく、テープを取った1-2日後には消失した(Adverse effectを報告している研究は常に評価できる)。
テーピングで改善が見られなかった7人の患者(3 KT, 4 Sham)のうち、6人がその後のMRIでLabral tearであると診断されたのは特筆すべきではないかと思う。そもそもこれらの患者は単なるSIS/RC腱炎患者ではなかったわけで、screening processの信憑性が問われるべき。

結論: この研究によれば、KTテープは「直後に肩外転ROMを平均16.9°向上させるにはいいが、それ以外(その他ROM、痛み、機能)はshamと変わらない」ということが言える。あまりKTテープの臨床的使用価値を感じさせない内容。
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#5: Simsek et al., 2013
この研究はトルコですね。トルコアイス食べたい。

研究タイプ: RCT, double-blinded, placebo-controlled
被験者: 38人のSIS患者(平均年齢51歳、男性13名、女性25名― 平均年齢はアスリートと比較するには高め、女性被験者25/38 = 65.8%)が対象。一人のorthopedic surgeonがレントゲンとMRI診断を使いつつ、SISという最終診断を下した(画像診断も用い、labral tearなど他のconditionをr/oしたのは評価できる)。KT Group (n = 19, 男性8名、女性11名、平均48歳)とSham Group (n = 19, 男性5名、女性14名、平均53歳)にランダムに分けられた。Power Analysisの結果、各グループ最低17人の被験者が必要とわかっており、この人数はそれを満たしている
Inclusion Criteria: 18-70歳; ADLのdifficulty; 症状が>一ヶ月続いている; (+) Neer; (+) Hawkin's (これだけでSISと診断するに足るのか?)
Exclusion Criteria: Calcific tendinitis, degenerative arthritis, abnormal MRI; 肩、手首、胸部の手術; 肩の脱臼・亜脱臼の既往歴; 頸椎間板損傷疑い; inflammatory joint disease; 過去3ヶ月以内のリハビリ経験(今までのExclusion Criteriaに比べて、画像診断内容も含まれてreasonableのように感じるが…)
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テーピングは一人のcertified physiotherapistによって施された。その手法はひとつ前の研究(Thelen et al)と全く同じ。敢えて言うなら、写真を見るだけだと最後のIストリップが少し高めな気がするが?
エクササイズ: 両グループ共通して処方されたエクササイズはHughstonによってデザインされたRC強化目的の6 Exercisesと、Riivaldによってデザインされた、赤いセラバンドを用いたDynamic Scapular Stabilization(それ以上の記述は無し、一応スタンダード化されたもののようであるが)の大別してふたつ。それぞれ5 reps (許容できれば最大15 repsまで増やす)、一日一回、平日ならば1セットもしくは週末2セット、合計2週間繰り返した。記述がわかりにくいが、恐らく平日の5日間はセラピストの監視のもと、週末の2日間は各自自宅で(Compliance?)行ったものと思われる。

Outcome Measures: VAS at rest, sleepとduring activity、トルコ語版のDASHとConstant Score、AROM・PROM(Goniometerを用いて)とShoulder Isometric Strength (flex, ext, abd, ER, IR; Isometricの筋力はどれほど患者にとって機能的な意味合いがあるのか?)が測定された。計測はテーピング直後、5日後、12日後の合計3回、グループアサイメントを知らない(blinded)研究者によって測定された(なぜ直後も計測しなかったのか?テーピングの「直後」の効果が今まで報告されているのに、これは見合わない)。

Results: 性別、年齢、左右の肩、症状のdurationなど、baselineで両グループ間に差は無し(詳細、p値はprovideされず)。
両グループ共に痛み、ROM、機能と筋力の改善が見られた。グループ間差では、特にpassive flexionとpassive abduction ROMに関してはKT groupは著しく改善したものの、Sham groupは改善が見られないという違いが確認された。全体的にKT groupはSham groupを上回る結果を出しており、1) VAS during activity at Day 5 (4.87 ± 2.29 vs 6.71 ± 1.68, p = 0.01) & Day 12 (4.32 ± 2.64 vs 6.28 ± 1.93, p = 0.009); 2) VAS at night at Day 12 (2.37 ± 3.19 vs 4.82 ± 2.95, p = 0.018); 3) DASH at Day 5 (30.14 ± 17.77 vs 48.05 ± 18.59, p = 0.004) & Day 12 (25.14 ± 17.35 vs 47.10 ± 17.87, p = 0.001); 4) Painless ROM-Abduction at Day 12 (128.53 ± 30.94 vs 103.42 ± 21.67, p = 0.004); 5) Flexion Strength at Day 1 (8.74 ± 2.62 vs 7.53 ± 3.15, p = 0.032), Day 5 (10.21 ± 3.11 vs 8.42 ± 3.09, p = 0.050), & Day 12 (11.21 ± 3.37 vs 8.42 ± 3.15, p = 0.005)…これに関しては、スタート地点でそもそもKT組が有利な位置におり、Day 5で追いつかれそうになってDay 12で最後突き放した感じ; 6) ER Strength at Day 12 (8.16 ± 3.35 vs 5.95 ± 2.30, p = 0.030)ではグループ間に統計的に有意な差が確認された。
統計的に有意な差があったもののなかで、臨床的に有意な差がありそうなのがVAS at night (MCID = 2), DASH (MCID = 10), painless ROM-Abduction (15°?)か。筋力のMCIDが私にはよくわからない…。
逆にShamのほうが数値が秀でていた項目が2つある。1) AROM-Flexion at Day 1 (143.42 ± 29.63 vs 166.68 ± 20.23, p = 0.002), Day 5 (157.63 ± 22.01 vs 171.58 ± 15.88, p = 0.002) & Day 12 (165.68 ± 19.45 vs 172.89 ± 12.72)…これに関しては、スタート地点でShamが有利な位置いて、その差が縮まらなかったイメージ; 2) PROM-Flexion at Day 5 (173.47 ± 11.44 vs 178.16 ± 4.77, p = 0.03)。ただし、5°の差は臨床的に有意と言えるか疑問

結論: リハビリにKTテープを併用した場合、痛み、機能、painless ROM、muscle strengthが2週間に渡ってより大きく改善されることが見込める。多少項目別にばらつきはあったものの、総じてKT tape outperformed Sham tapeと言ってよさそう。

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#6: Smith et al., 2009
これはUKの文献。フィッシュアンドチップス食べたい。この研究では、肩甲骨周りの筋肉のimbalanceが症状に関連しているのか、そしてテープでそれが効果的に介入可能かを検証。具体的には、1) 健康な被験者とSIS患者のUpper vs Lower Trapの活性度を比較、そこにimbalanceがあるか、2) SIS患者にのみScapular tapingを使ってUpper vs Lower Trapの筋活性に変化が出るかを研究しました。今回検証されたテープはKTではなくて、Leukotape。

研究タイプ: Cross-sectional Study, with no randomization, no blinding, no placebo-control
被験者: 16人のsymptomatic patients (平均年齢 29.8 ± 8.3歳、男性7名、女性9名)と「比較役」として性別、年齢、BMIと利き手をmatchさせた32人の健康な被験者(平均 26.5 ±4.5歳、男性14名と女性17名は)が対象。Power Analysisに関しての記述は無し
Inclusion Criteria: Symptomatic被験者は1) has full shoulder AROM; 2) unilateral shoulder pain > 1mo; 3) それからスポーツをする人を集めたいということで、少なくとも一週間に一回は泳いでいる人を選んだそう。一週間泳いでいるからってスポーツをしていると言えるか?あまり例を見ない、浅はかにも受け取れるinclusion criteria"熟練の"physiotherapistひとりがそれぞれの患者のSIS診断を担当("熟練"の定義は?)。1) 肩の前外側面に症状がlocalizeされており、i) Neer & Walsh Test, ii) Hawkins-Kennedy Test, iii) Active Shoulder Elevation、iv) Supraspinatus腱の触診、v) Resisted Isometric Abduction、vi) Empty Can Test、vii) Painful Arcのうち最低でも2つが陽性(痛みあり)である患者をeligibleとする(7項目のうち最低2つ?5つ陰性だとすると、それは下手をするとSISでない可能性のほうが高いのでは?)。 Asymptomaticなほうの被験者は、大学の学生で 1) full AROM; 且つ 2) 肩の怪我、痛み、不安定症の既往歴無しが条件。
Exclusion Criteria: (+)ULTT1; 頸椎・胸椎損傷疑い; GH不安定症 (= Load and Shift TestもしくはSulcus Sign 陽性; Load and Shift Testは悪くないテストだとは思う、Sn, Sp, +LR, -LR共に優秀と記憶している); Gross RC weakness (これはどうやって確認されたのか?)
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テーピング: Coverrollを下地に、Leukotapeを使ってUpper Trapを抑制、Lower Trapを活性化する目的でデザインされたScapular Tapingを使用。1人の「このテープを熟知した」研究者が一貫してテーピングを担当(熟練の基準とは?熟練でないと、このテープは同じようにはapplyできない?)。
Outcome Measures: 分間60ビートを刻むように設定されたメトロノームに合わせて、被験者はScaptionを行う(4秒かけて上げ、4秒かけて下げる)。そのScaption中、EMGによるUpperとLowerの筋活動を測定し、Upper : Lowerの比率として記録した。
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Results: Upper/Lower Ratio―(Table 3)はテーピングの有無(テープなし、p = 0.007; テープあり、p = 0.035)にかかわらず、健康な被験者に比べてSIS患者のほうがUpper:Lower Trapの活性化のratioが高い、つまり、僧帽筋下部の活動が低下・僧帽筋上部が過活動を起こしていることが確認された(95%CIで見るとわずかなoverlapがあり、これは統計的に決定的ではない)。SIS患者のテープをする前と後では筋肉の活性バランスに大きな変化は見られなかった。個々の筋肉のEMGに目を移してみると平均してLowerの抑制がわずかに起こっている(p = 0.145、統計的に有意でない、被験者間のvariabilityは高い)のに対して、Upper Trapの抑制がテーピングによって著しく起こっている(-13.0%, 95% CI -8.6 to -17.3%、p = 0.000, 95%CI幅から見ても統計的にも決定的)ことがわかる。2人の被験者(2/16 = 12.5%)がテープを「キツい(restrictive)」と感じた。

結論: SIS患者が、健康な人に比べてUpper Trapの活性度が高く、Lower Trapに抑制が多くみられる。Scapular Tapeをすることで、Lower Trapの活性はかなりランダムに影響を受けるが、Upper Trapの活性を決定的に下げる(=効果的に抑制する)ことができる。
これらの筋活性・抑制の変化が実際のADLやスポーツパフォーマンスに及ぼす影響、そして効果の持続性は不明である。

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  by supersy | 2017-02-12 19:30 | Athletic Training | Comments(0)

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