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スポーツ医療におけるATと医師の診断力はどれほど差があるのか。

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めちゃんこ面白い論文1 を発見しました。去年の今頃発表されたらしい。むー!一年間もこの子と出会わなかったなんて!先に言っておきますが、この論文の解釈はものすごく私の個人的バイアスが入ると思います。読むならば話半分程度に、テキトーに読み流してください。もしくはご自分でfull-textをお読みください。
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そもそものきっかけはこのSNSポスト(↑)です。多くの友人らがシェアしていたのですが、はて、どんな研究なんだろう?と興味が沸いたので探してみました(この写真、こういう書き方をするならばきちんとcitationを伴うべきです。なかったお陰で探さなければいけなかったではないですか!まぁ、3分くらいで見つかったんですけど)。

現在、アメリカでは公立高校の70%2、私立高校の58%3 にアスレティックトレーナーが雇用されていると言われていますが、我々のするべき重要な仕事の一つにon-site injury evaluation/diagnosis、つまり怪我が起きてすぐその場での評価や診断があります。日本では「診断」という言葉は医師にしか使えないと聞きますが、アメリカでは我々アスレティックトレーナーも合法的に「診断」をすることが可能なのです。

厳密には、アメリカには2種類の診断が存在します。これはClinical Diagnosis (臨床診断)Medical Diagnosis (医療診断)で、我々アスレティックトレーナーが行うのはClinical Diagnosisのほうです。Clinical Diagnosisは問診、観察、触診やROMテストやMMT、selective tissue testsなどを用い、最小限の用具も併用しながら (i.e. tuning fork, reflex hammer)、しかしほとんどはクリニシャンがその手と目のみに頼って診断を下すことを指します。一方で、血液検査やレントゲン、MRI、CTスキャンなどの画像診断などを使い、目や手では測れない身体の状況を推し測った上で出す結論のことはMedical Diagnosisと呼ばれます。これらの検査は我々ATではオーダーすることはできないので、アメリカでもほぼ医師の専売特許といっても過言ではないでしょう。もちろん、より決定的な力があるのがMedical Diagnosisのほうで、もし臨床 vs 医療診断に食い違いがあった場合、Medical Diagnosisのほうが「最終診断」として使われることになるわけです。
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んで。

ご察しの通り、正確なClinical Diagnosisを下すのは難しいです。理由は幾つもありますが、そのうちの一つは「怪我が起こった直後」というタイムラインにもあると思います。怪我をしたばかりの選手の多くは感情的になっており、泣いたり怒ったり、十分な意思疎通ができないことがあります。感情以外にも、怪我直後の痛みはより多くのnociceptorの活性を伴うため高いですし(どこが一番痛い?と聞いても、とにかく全部痛い、触診をしようにも少しでも触られると痛い、ということは珍しくありません)、guardingやspasmが本来の怪我の正体を隠してしまったり(i.e. ROMが本来よりも少なく見えたり、MMTの評価が影響を受けて下がったり、本来陽性になるべきテストが偽陰性になったり…)と、厄介なことが多いのです。もう一つ、画像診断等無しでは内部で何が起こっているかを完全に可視化することができず、我々が代わりに用いるselective tissue test (= special tests)の中にゴールドスタンダードとなりえるような完璧なものはありません。100%確実に特定の傷害を確定・除外することはできない、ということを念頭に入れながら、どのテストを選んで、どの結果をどう解釈して、決して100%や0%にならない確率(pre- and post-test probability)の変移を考慮に入れながらの診断にならざるを得ないということもあります。加えて、練習や試合中にフィールド上でおこなう(in-field)診断は、観客全員が固唾を飲んで見守っていたり、時にコーチや親御さんに怒鳴られながらおこなうなど、我々のコントロールできる範疇の越えた、distractionになり得る要素が多いことも特筆すべきでしょうか。オフィスの中でおこなう(in-office)診断はもう少し静かで落ち着いて、診断にしっかりと集中できる環境が整っています。

そこで、この論文です。In-field assessment by AT vs In-office diagnosis by physiciansを比較して、一体どれほどのagreementが得られるのか?この研究では、5つの高校を対象に、2010~2012年の間に起こった「ATが臨床診断を下したのちに医師にreferし、医師が医療診断を下した」傷害を全て検証。これらの条件を満たす怪我は検証期間内に全部で286件数起こったようなのですが、その詳細をInjury Databaseから引き出した上で、臨床 vs 医療診断が一致していたか、はたまた不一致だったのか分析したというわけ。
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結果は、286件中263件(92.0%)の診断が一致。この全ての怪我を種類別に見てみる(↑)と、一致率はmeniscal / labral tearが71.43%と最も低く、ATが5件「meniscal/labral injury」と診断したのに対して、医師は7件と、ATが2件見逃した形になっています。全体でのKappa Coefficientは0.907とかなり高い数字です。95%CIも求めておいてほしかったですが。

誤診というか、診断が合わなかった23件の「不一致」ケースもよく見てみると興味深い(↓)です。これを眺めているとATがoverdiagnosisしがちなのは骨折で、ATが骨折だと判断した傷害10件のうち1件は脳振盪、3件は打撲、6件は捻挫と医師からの最終診断が下されたことがわかります。これは、あの、身内擁護に聞こえるかもしれませんが、決して悪いことじゃないと思うんです。逆のケース(= ATが骨折ではないと思ったが、実は骨折だったケース)は3件と、overdiagnosisに比べてunderdiagnosisのほうが格段に少ないですよね。我々ATのモットーは「判断しかねるなら、常に悪い事態を想定せよ(= be safe than sorry)」なわけですから、骨折を除外(rule out)できなければ医師に受け渡すのが義務です。私は、これを誤診と呼ぶ必要はないと思っています。
もちろん、この表を見ていて、「おいおい、そりゃダメでしょ」と思うものもありますけどね。骨折の見落としは個人的には絶対にしたくありませんし、一番上の「ATが鼻骨骨折と思ったものが脳振盪だった」は、うちの学生にも「目に見えやすい怪我ばかりに捕らわれるな、顔面周りに衝撃を受けた怪我ならば、目に見える怪我が鼻骨骨折だろうが顎関節脱臼だろうが眼底骨折だろうが付随する脳震盪の可能性も考えられなきゃだめだ」と教えたばかりですから、これはアカンです。
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一方でですね、これらの『不一致』を見ていて、「これは『一致』で良くない?判断厳しくない?」と思うものもあります。例えば「AT: PFPS and Meniscal Tear」→「Physician: Meniscal Tear」とか、「AT: Possible Anterior Shoulder Subluxation」→「Physician: Shoulder Sprain」とか。前者はconcernとしては一緒じゃん、と思ってしまうし、後者は、そりゃーお医者さんのところに着くころにはsprainって診断されるでしょうよ、と個人的には感じるのですが…。

ともあれ。

この論文の結論には「Athletic trainers are highly qualified health professionals with several areas of expertise... (e947)」「...athletic trainers showed impressive accuracy in evaluating acutely injured athletes, especially in the absence of imaging equipment (e949)」と書かれています。贔屓目たっぷりだと自覚しながらそれでも書きますが、複数の専門性(i.e. 予防、救急医療、治療、リハビリ、そして今回の焦点である診断)がある医療従事者であるATが、診断の専門家である医師と92%一致する診断ができるってけっこうすごくないですか?画像診断なしで、目の前で起こった怪我を自分の目と手と頭のみを頼りに診断して、ですよ?これは全然胸を張るべきことじゃないんですけど、アメリカの給与比較を見てみると、ライセンスを取り立ての新人医師をひとり雇うお金で中堅ATが4~10人は軽く雇えてしまうんですよ。そう考えるとやはり、全ての高校や中学校にATを雇うことは大いに有意義なのではないかと、ずっと思っていましたし今回の論文を読んでも強く感じますね。

もちろん、この論文にも穴は多くあります。一つ目に、公平を期すならば、期間中に起こった怪我は全てATと医師によってそれぞれ別々に診断されるべきでした。この実験ではまずATが診断して、必要があると判断された場合に医師にrefer、という形なので、必然的にこの分析に含まれた怪我はどちらかというと重度寄りのもの、ということになります。それから、個人的にはこの研究に関わったATと医師それぞれのprofileが知りたいです。例えば、ATが全員職歴15年越えのベテランで、医師側はライセンスを取ったばかりの研修医が大半だったとか、経験の不一致がこの結果に与えた影響がどれくらいあるのか、データ無しには妄想すらもできません。それから、医師が診断を下す際に、ATの診断に対して何らかのblindingはおこなわれていたのか?現実的には難しかったかと思われますが、もしなかったならば、医師の診断がATのそれに引っ張られた、つまりバイアスがあった可能性もあるのでしょうか?

それから最も「一致率が低かった」とされるmeniscal/labral injuryですが、これは医師が画像診断を使っているが故に過剰診断をしている可能性はないのでしょうか。MRIによる画像診断でmeniscal tearが仮に発見されたとしても、それが患者のcomplaintと関連性があるとは限りませんよね。asymptomaticな(症状を伴わない)meniscal/labral tearもありますから。そこらへんはどう判断されたのか…。

まーそれにしても、とても面白い、そして自信をもらえる論文でした。100%の正確性のある医療が少数の人に届くことも大事ですが、92%の正確性のある医療がその何百倍、何千倍の患者に届くことも同じか、それ以上に意味があると思います。より多くの人の医療のエントリーポイントとなれるように。医療を身近に感じてもらえるように。ATが世の中にできることはまだまだ沢山ありそうです。

1. Lombardi N, Tucker B, Freedman K, Austin L, Eck B, Pepe M, Tjoumakaris F. Accuracy of athletic trainer and physician diagnoses in sports medicine. Orthopedics. 2016;39:e944-e949. doi: 10.3928/01477447-20160623-10.
2. Pryor RR, Casa DJ, Vandermark LW, Stearns RL, Attanasio SM, Fontaine GJ, Wafer AM. Athletic training services in public secondary schools: a benchmark study. J Athl Train. 2015;50(2):156-162. doi: 10.4085/1062-6050-50.2.03.
3. Pike A, Pryor RR, Mazerolle SM, Stearns RL, Casa DJ. Athletic trainer services in US private secondary schools. J Athl Train. 2016;51(9):717-726.

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  by supersy | 2017-09-22 17:00 | Athletic Training | Comments(0)

脳振盪は生理周期にまで影響を及ぼす。

先週末はテキサスはダラスで行われていたPRIのCervical Revolutionの講習へ行ってきました。この講習はPRI講習の全ての中でも最も難解なのではないかと個人的には思ってます。Cranioのコースだった頃から考えて3回目の履修になるんですが、うーーーーむ、半分くらいはわかってきたような、まだ全然わからないような…。
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同じホストさんで何回も講習やってもらってますし、さすがにセカンダリーコースともなると知り合いも増えてきます。PRC/PRTの参加者だけでもこんなに(↑)集まりました!楽しかったー。
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ただのこぼれ話なんですが、この講習の中でひょいと「身体の中で一番強い筋肉はどれだと思う?」という話題が上がりました。多くの人はtongue(舌)!と叫び、私はmasseter(咬筋)かと思ったのですが、講師のMikeは「実はね…」と意外な筋肉の名前を挙げたのです。参加者全員ええーとびっくり。

時間があったのでその後少し調べてみました。「強い」をどう定義するかによるようですが(例えば、最もサイズが大きいのは大殿筋ですし、休みなく働き続ける筋肉こそ強いと考えれば心筋に勝るものはありませんし、強い圧を生み出すという意味ではmasseterなどの咀嚼筋が一番のようです。舌は複数の筋肉の集合体なので、厳密にはこれらのランキングから外れるようです)、ただ、「与えられたタスクに対して異様なまでの力を兼ね備えている」という相対的な意味で最も強い筋肉は、なるほど確かにMikeの言う通りなんと…extraocular muscles(外眼筋)なんだそうです。
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By OpenStax College [CC BY 3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/3.0)], via Wikimedia Commons

眼球は直径25mm程とピンポン玉程で、重量もそれほどないですよね。そんな眼球を動かすためにそれほどチカラは必要ないはずですが、extraocular muscleは本来眼球を動かすのに必要な力の100倍の力を出す潜在能力があるんだそうです。眼球1コどころか、100コを同時に動かせるというわけです。ひぇー!でもよく考えれば、我々って本を読んでいるときや、スポーツをしていて対峙しているプレイヤーからボールへと目を動かす際などには、よく考えたらとんでもないスピードで眼球を動かしていますよね。加速度がとてつもないということは、それを止める減速力も十分にないといけないわけで。1時間の読書で目は10000回動く、なんてのもどこかで目にした覚えがあります。ほえー、意外と頑張ってくれてるんですねー。



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さて、本題です。今月頭に発表されたできたてホヤホヤの研究です。脳振盪が全身に及ぼす影響の話は以前にも少ししたことがありますが、今回の論文1 では生理周期の乱れとの関係について検証されています。もともと脳振盪という分野において性別差というのは顕著に表れているんですよね。例えば、同じような運動をしていても女性のほうが脳振盪受療率が高いとか、2-6 より重度な症状を報告しやすいとか、7-10 回復に時間がかかる10とか…。女性のほうが首の筋肉が弱いからじゃないかとか、男性よりも嘘をつかずに症状を報告しやすいからじゃないとか、理由は色々と推測されていますが、真相はまだ不明です。

ともあれ、脳というのは身体のありとあらゆるリズムを司っていますし、生理周期も例外ではありません(私は知らなかったのですが、月経周期はneuroendochrine hypothalamic-pituitary-ovarian axis, 通称HPO axisによって制御されているそうです)。今までにmoderate-severe TBIの患者さんが受傷後にamenorrhea(無月経)やoligomenorrhea(希発月経)を発症するリスクがあることが報告されていたりはする11,12 ようですが、脳振盪を受傷した後の生理周期に関してはまだほとんど研究が存在しないのだとか。脳振盪によって生理周期に乱れが生じるとしたら、女性ホルモンのレベルにも恐らく変化が見られ、そうなるとbone heathの制御も異変が…これらの余波はスポーツ選手に深刻な影響を及ぼす可能性があります。なるほど、これは面白そうです。

実験の対象は、12-21歳で、1) 最低でも初潮から2年間が経過している; 2) 昨年一年間定期的(11-12回)な月経があった; 3) 英語を話せて、携帯メールのやりとりができる…という条件を満たした患者。妊娠や過去6ヶ月以内のピルの使用、視床下部・脳下垂体異常に摂食障害、鬱など、月経周期に直接影響があるような病歴がある患者は除外対象。被験者は受傷後120日間、毎週日曜日に携帯メールを通じて、オンラインアンケートに回答してもらったらしいのですが、そのアンケートでは 1) 生理はあったか、2) 新たな怪我はなかったか、3) ピルの使用の開始はなかったか、4) 妊娠したり、妊娠の可能性はないかの4項目が含まれていたそうな。もし実験期間中に患者のステータスが変われば(i.e. ピルを使い始めた)、inclusion criteriaを満たし、exclusion criteriaが有効でなかった週まで(i.e. ピルを使い始めた週の前まで)のデータに限定して集計、分析したそうな。回答が無い場合、もしくは回答が不明瞭だった場合には直接電話で連絡したりと、こまめにfollow upしていたようです。
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さて、結果です。Sports-related concussion (SRC)を受傷した患者68人(平均15.7 ± 1.8歳)と、Sport-related, non-head orthopedic injury (非頭部スポーツ外傷、i.e. 骨折、肉離れに捻挫など)を受傷した患者を60人(平均16.6 ± 2.0歳)比較した結果、SRC組の23.5% (16/68人)がアンケート期間内に2回以上の生理周期異常(これは間隔が36日以上と長すぎても、21日未満と短すぎても、出血期間が3日未満か8日以上のいずれかの場合でも『異常』とみなされたようです)を起こした一方で5% (3/60人)の非SRC組が同様の生理周期異常を認めた…つまり、脳振盪を受傷した患者の生理周期は、受傷後120日間以内、より統計的に有意に複数回乱れやすかった(OR 5.85, 95%CI 1.61-21.22)という結果が出ています。Amenorrheaになった患者は各グループ共にゼロだったそうな。

脳振盪ではないortho injuryをコントロールに設定したところは美味いです(怪我によってプレーできないという精神的な影響は少しばかりはバイアスから除外でき、完璧とはいいませんが、よりピュアな脳振盪のみの影響が推し測れるでしょう)。毎週繰り返したというアンケートの集計率も94.5%というのだからかなり高いですね。被験者の数も、power analysisによる「各グループ59人」という条件を満たしてきています。ここらへんはさすがにJAMA、デザインが丁寧です。敢えて突っ込むなら、「去年一年間普通に生理が来ていました」というのはあくまで自己報告なので、記憶違いやrecall biasを含む可能性がありますね。私が次に興味があるのは「受傷後の変化をprospectiveに集計する」ことで、特定のチーム(もちろん、複数も可)を受傷前の健康的な状態から時系列に沿って追いかけ、受傷前のデータと受傷後のデータをコントロールも用いて比較するべきではないかと思います。そうすればグループ内での受傷前・後の比較も可能になりますし、今回の研究のような、グループ間の年齢にそもそも統計的有意な差があった(平均15.7 ± 1.8歳 vs 16.6 ± 2.0歳, p < 0.01)とか「データをゆがめたかもしれない要素」の存在が少し薄くなりますから。私は今回は年齢の差、という要素が今回のデータを致命的にskewした可能性は低くはないと思っています。

ふーむ…。バイアスの可能性はひとまず置いておいて、脳震盪を受傷して、4ヶ月間以内にこれだけの生理周期の乱れが生まれるかもしれないというのはなかなかに興味深いです。これはさらにどのくらいのスパンで起こるものなのか(これらの異常は受傷直後に集中して起こっていたのか、それとも4ヶ月間に広がるように満遍なく起きていたのか?)、もう少しデータを見てみたい気がしますね。一体どれくらいの期間を経ればきちんと正常に戻るのでしょう?乱れてしまった場合、どういった治療法が有効なんでしょう?実際に、どれほどのorthopedic injuryに繋がりやすいのでしょう(疲労骨折のリスクが上がるとか)?もう少し腰を長く据えて結果を追っていきたい分野です。

1. Snook ML, Henry LC, Sanfilippo JS, Zeleznik AJ, Kontos AP. Association of concussion with abnormal menstrual patterns in adolescent and young women. JAMA Pediatr. 2017;171(9):879-886. doi: 10.1001/jamapediatrics.2017.1140.
2. Covassin T, Swanik CB, Sachs M, et al. Sex differences in baseline neuropsychological function and concussion symptoms of collegiate athletes. Br J Sports Med. 2006;40(11):923-927.
3. Gessel LM, Fields SK, Collins CL, Dick RW, Comstock RD. Concussions among United States high school and collegiate athletes. J Athl Train. 2007;42(4):495-503.
4. Hootman JM, Dick R, Agel J. Epidemiology of collegiate injuries for 15 sports: summary and recommendations for injury prevention initiatives. J Athl Train. 2007;42(2):311-319.
5. Lincoln AE, Caswell SV, Almquist JL, Dunn RE, Norris JB, Hinton RY. Trends in concussion incidence in high school sports: a prospective 11-year study. Am J Sports Med. 2011;39(5):958-963.
6. Powell JW, Barber-Foss KD. Traumatic brain injury in high school athletes. JAMA. 1999;282(10):958-963.
7. Broshek DK, Kaushik T, Freeman JR, Erlanger D, Webbe F, Barth JT. Sex differences in outcome following sports-related concussion. J Neurosurg. 2005;102(5):856-863.
8. Colvin AC, Mullen J, Lovell MR, West RV, Collins MW, Groh M. The role of concussion history and gender in recovery from soccer-related concussion. Am J Sports Med. 2009;37(9):1699-1704.
9. Covassin T, Elbin RJ, Bleecker A, Lipchik A, Kontos AP. Are there differences in neurocognitive function and symptoms between male and female soccer players after concussions? Am J Sports Med. 2013;41(12):2890-2895.
10. Zuckerman SL, Apple RP, Odom MJ, Lee YM, Solomon GS, Sills AK. Effect of sex on symptoms and return to baseline in sport-related concussion. J Neurosurg Pediatr. 2014;13(1):72-81.
11. Colantonio A, Mar W, Escobar M, et al. Women’s health outcomes after traumatic brain injury. J Womens Health. 2010;19(6):1109-1116.
12. Ripley DL, Harrison-Felix C, Sendroy-Terrill M, Cusick CP, Dannels-McClure A, Morey C. The impact of female reproductive function on outcomes after traumatic brain injury. Arch Phys Med Rehabil. 2008;89(6):1090-1096.

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  by supersy | 2017-09-21 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

噛み合わせとスポーツパフォーマンスの関連性。

日本人研究チームの発表したふたつの歯科関係のpilot studyを見つけました。面白いのでまとめておきます。

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b0112009_05231922.png最初はこちら(↑)。1 英語がところどころかなり怪しくなるのが少し残念な文献ですが、イントロでは「初期の咀嚼筋活動を計測した研究ではEMGのワイヤそのものが活動に変化を及ぼした可能性があったが、今ではワイヤレスの装具も開発が進み、その心配がなくなった(←)」点を指摘。ほー、知らんやった、なるほど…。

今までは野球、バレーボール、ハンドボール、サッカーなどで選手が力む瞬間(i.e. バレーボールをスパイクする瞬間)にmasseter (咬筋)の活動が増加することが報告されており、「陸上ではどうかしら?」というのがこの研究の焦点です。

28人の大学陸上選手(平均年齢20.0歳、SD不明、男21人、女4人…短距離、やり投げ、砲丸投げ、走り幅跳び、高跳びの5種目のmix)のmasseterにEMGの電極を付け、それぞれの競技動作中の筋活動を計測したそうな。もう少し詳しく解説すると、腕や足にも電極を付け、動画も撮影して、実際の競技動作とどう連動してmasseterが活動を起こすのかを分析したようです。

結果を見てみると、やはり予想通りというべきか。陸上選手は加速時に、投擲選手は投動作時に、そしてジャンプ種目の選手は踏切りと着地時にmasseter activityが増加するという結果が出ました(個人的には、投擲種目では投げた瞬間にmasseterの筋活動が一気に落ちる一方、ジャンプ競技では着地時にも、踏切時に劣るとはいえまだ顎に力が入っているという結果が興味深かった)。動きの中で姿勢を保つ、且つ、強い力を生み出すにあたって食いしばりを利用して身体の安定性を出すことが目的なのではと考察では説かれています。


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もうひとつ。歯を食いしばる(teeth clenching)と静的バランス能力が向上する、という研究はあるけど、動的バランスに関してはあんまり報告がないので調べてみました、というのがこちらの研究。2 これも英語がたどたどしく、かわいらしい感じなのだけど、こういうのって、あまり指摘されないものなのかしら?Typoも複数あるような…。

この論文で検証されたのは3つ。1) ジャンプからの着地、という動的バランスタスクの最中に、歯の食いしばりはどのように起こるのか? 2) 観察から導き出せる関係性はあるか? 3) 意図的に食いしばりをさせた場合、パフォーマンスに変化は出るのか? 20-30歳の25人(男15人、女10人、平均年齢不明)の被験者に、5分間のエアロバイクでのウォームアップののち、20cmのボックスから片足で跳び、厚さ5cmフォースプレートに着地する(=落差15cm)…というタスクを前に跳んだ場合と横に跳んだ場合でそれぞれ3回繰り返してもらい、着地時のGround Force ReactionとCenter of Pressure (CoP)を記録、分析したそうな。もちろん食いしばり度を計るためのMasseterのEMGもね。
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で、結果です。指示がない状態で「自然に」ジャンプ・着地してもらった際には、前方ジャンプ時には19/25人が、横方向ジャンプ時には10/25人が歯を食いしばったようで、前方からの衝撃のほうが、横からのそれに比べて歯を食いしばりやすい(p = 0.009)ということが一つ言えます。前に進みながらの着地のほうがOptic flowが激しく、衝撃がくる!という感覚が強いからでしょうか?

着地時の身体の使い方をもっと詳しく見てみると、横へのジャンプでは歯を食いしばった(clenching)被験者と食いしばらなかった(non-clenching)被験者で着地に違いは認められなかったものの、前方ジャンプに限っては「masseter活動の高かった被験者の着地のほうがhard landing (= 柔らかい着地でなく、衝撃をうまく吸収しきれていない、激しい音を伴うような着地)と、より大きな身体のswayが見られた」ことが確認されています。このグループ間の差は、全員に歯を食いしばって着地するように指導した際には消えたことから、「片足でジャンプ・着地する際には歯を食いしばると身体がよりグラつき、衝撃吸収がうまくできない」、つまりもっとgeneralizeすれば「歯を食いしばると動的バランス能力が低下する」可能性を示唆しています。

歯を食いしばれば静的バランス能力は上がるのに、動的バランス能力は上がらない、むしろ下がるかもしれない、というのは興味深いfindingですね。しかし、静的バランスタスクは歯を食いしばって身体をstiff upさせ、こわばることでなんとかmanageできてしまう一方で、着地のような動的バランスが求められるタスクは、身体をこわばらせるのではなく、刻一刻と変わる状況に合わせて身体を動かしながら、衝撃や環境にadaptしていけなければうまくこなせないわけですから、そういった本質の違いが出ているのかもしれません。これは、先の陸上選手の研究で確認された、「短距離の選手は、最初の加速時には歯を食いしばる傾向にあるものの、スピードに乗ってくるとmassterの活動は下がる」という報告とも合うんですよね。lock upしなきゃいけないときには歯を食いしばり、free upしたいときには顎も休ませるのが一番、ということなのか。そう考えると、先の研究で、踏切時と着地時の療法にmasseterの活動が上がっていたという報告があったけれども、本当は踏切時に噛み締めて、着地時には噛み締めないほうが本当は理想的なのか?色々考えてしまいますね。

この研究を読んで頭に浮かんだ疑問を挙げるとすれば、1) (指示なしに)自然にジャンプ・着地させた場合の計測時に、被験者は「この研究は歯の食いしばりが着地メカニズムに影響を与えるかどうかを検証している」という事実を知っていたのか?表記がない以上、こういったblindingはなかったと考えるのが真っ当な気がするが、その場合、この結果はどれだけ「自然」と言えるのか? 2) どうして指示は「歯を食いしばる」のみだったのか?「歯を食いしばらない」指示も加え、2種類の指示の違いも検証すべきだったのでは? 3) この研究で計測された片足のジャンプ・着地という比較的単純で予測可能なタスクで出た結果が、実際のスポーツでの動きにどれだけ当てはまるかは謎である…というところでしょうか。

まぁどちらもPilot studyですから、穴が多いのは当然なんですけども。どちらの研究も、噛み合わせが身体全体の動きや機能と連動している、というところが面白いですよね。スポーツ選手の歯科介入はこれから日本でももっともっとメジャーになっていってほしい分野なので、日本人研究チームがこういった検証を行っていることは嬉しく、心強く感じます。もっといろいろな研究が見てみたいですねー、続報を待ちます!


1. Nukaga H, Takeda T, Nakajima K, et al. Masseter muscle activity in track and field athletes: a pilot study. Open Dent J. 2016;10:474-485. doi:10.2174/1874210601610010474.
2. Nakamura T, Yoshida Y, Churei H, et al. The effect of teeth clenching on dynamic balance at jump-landing: a pilot study. J Appl Biomech. 2017;33(3):211-215. doi: 10.1123/jab.2016-0137.

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  by supersy | 2017-09-16 23:00 | Athletic Training | Comments(0)

ピンクと水色の間で。

アメリカATという業界人口の半分以上は女性だけれど、まだまだNCAA最高峰と言われるDivision Iの現場やプロの世界は男社会。学生時代や就職活動中、実力が足りなくて選ばれないならともかく、「女性の人は募集していないから、ごめんね」と仕事やインターンを断られた経験は私にも山ほどあり、そういう言葉を他でもない仲の良い友人らから言われたことも数多くある。「どんなに女性側がプロフェッショナルでも、関係ないんだよ。選手はヤれるかどうかしか見ないからさ」「ないわー、うちは女はないわー」「女の人は、めんどくさいんすよ」。そう面と向かって言われた時の私のハラワタがどれだけ煮えくり返っていたかは、皆さんの想像にお任せする。まぁ敢えて言うなら美味しい鍋焼うどんが鍋三つ分くらいは煮えたと思う。

女はめんどくさいってなんだ。それを言われて私はどう受け止めればいいのだ。

私が何千時間、何万時間とかけて培った知識と技術は、たかだか10cmだか20cmだかの臓器が飛び出していないからという理由で、無かったことにされるのか。そんな理屈が通ってたまるか。

煮えくり返ったものが時間をかけて少しずつ冷めはじめて、ふと空しくなった。悔しいとどんなに地団太を踏んだところでどうにもならない。男女差別です、法律違反ですと声を上げてもしょうがない。そういう文化にどっぷり飲み込まれた彼らは、そういう発言をすることが間違ったことだとすら自覚していないのである。なんといったって、私の友人ですらそうなのである。ペニスありき、ペニスこそ全てと思っている人たちとは、こちらも気持ち良く仕事ができるわけがない。私はそういう舞台で勝負をしていない。

行ってみたかった世界は、私が受け入れる準備をしていた理不尽さとは全くスケールの異なる、タールのような泥沼から成っていた。私は、行ってみたかったと思っていた世界に行くことなく、その世界をくずかごへ捨てることにした。この無念さは、とても言葉では表しきれない。

これがきっかけになったかどうかわからないが、私は仕事をする上でどんどんジェンダーレスな像を理想とするようになっていった。元々女らしいほうではなかったが、化粧もマニキュア・ペディキュアもせず、爪は短く切り揃え、髪はさっとひとつにまとめるだけで、ピアスは飾りっ気が無くシンプルなもの、カーキのズボンは足を出さなくて済むようなるべく長いものを選んだ。身体のラインが出ないよう、わざと少し大きめのTシャツやポロを着るようにした。他人から批難を受けたときにも感情的にならず、客観視して、論理立てた解決法を提案するようにした。座る、立ち上がる、テーピングを巻く、掃除をするなどの際にはできる限りてきぱきと動き、その所作全てに女性らしさが出さないようにした。クリーニングに出したばかりのスーツで汗まみれの選手を担ぐとき、突然のゲリラ豪雨が襲ってきたとき、泥だらけの地面に膝をつくとき、選手の吐瀉物を処理するとき、躊躇わず一気に仕事に食らいつくようにした。その効果があったのか、「Syのこと最初Gayかと思った」と言われた回数は1回や2回ではない(これは喜ぶべきことだろうか)。

プロとして長く仕事をするようになり、自分の中で柱が一本確立されて、長らく自分が女であることに対するあの呪いのような感情も忘れていた。そんなころに、ぽつりぽつりと日本での仕事が舞い込むようになってきたのである。異世界に足を踏み込むと気が付く。見渡すとあちらにもこちらにも、アメリカとはまた違った種類の男女差別がここにはある。

日本のスポーツ界・医療界は独特の、異様な空気感がある。いや、スポーツ・医療界に限定した話でもないのかもしれない。仕事場でも勤務時間外でも、同じ空間にいる男性と女性とでは求められる役割が違うものなのだとありありと実感している。講習会では「女性ならお化粧くらいしないと失礼だよ」、懇親会では「女は飲み会でお酌の一つもできないと」と言われるし、女性専用車両がないと成り立たない世の中も異常だ。コンビニに入ったら一番に目に飛び込んでくるのはエロ本の山。電車の釣り広告にも水着の女性。女性はどこにいっても性的搾取の対象だ。ハッキリ言って、きもちがわるい。

男性諸君、少し想像してみてほしい。コンビニに入ったらぴちぴちブーメランパンツのイケメンおにーさんモデルが股間をもっこりさせて挑発的なポーズを取っている雑誌が立ち並び、それをおばさんたちがむさぼるように立ち読みしていたら、身の危険を感じやしないか。スポーツ観戦に行くと、女性選手が汗を滴らせながら一心不乱にボールを追いかけているその横で、例の股間もっこりダンサーたちが、毛深い足と野太くも黄色い声を高々と上げながら試合の応援をしている。そして、横のおばさんたちは「目の保養だわー」とそれを撮ってSNSに上げるのだ。大袈裟なようだが、これが日本で女性として生きるということだ。

話を仕事に戻す。日本で依頼されたとある仕事を(内容云々というよりはタイミングが悪かったので)お断りさせてもらおうかな、と少し悩んでいたときに、男性が20名以上いるその舞台に女性がひとりもいないことに気が付いてはっとしたことがあった。私が「米生活の長いゲテモノ枠」として起用されるなら、それでもいい。それを利用してでも、女性がひとりこの舞台に立つことが重要なんじゃないか、と思って結局その依頼は受けることにした。

ゲテモノ枠、上等である。私は「アメリカ帰りの空気の読めないニンゲン」としてこれからもバリバリ仕事をしよう。自分が女性であることを忘れたふりをして、男性の舞台にズカズカ上がっていこう。そうして開く扉があるなら、そこから後に続く日本人女性も出るかもしれない。こういう役割をこなす人が、業界にひとりくらいいてもいいだろう。

あまりフェミニストという言葉は好みではないし、自分をそういったコミュニティーの一員だとも捉えたことはない。我々は女性なんだからこういう風に特別に扱われるべきだとも思っていない反面、男女は同等だとも思っていない。男女は身体の造りが違うのだから、どうしても越えられない、普遍的な性差は必ずある。それを無視して、さも違いが全く無いかのように振る舞うのは無理があるし、かといって女性が男性ばかりに「我々はか弱いのだから配慮せよ」と一方的に迫るのもおかしな話だ。

平等ではないのだから、平等に扱えとは言わない。男性から何かを貰おうとも、奪おうとも思わない。ただ、女性が工夫することを許容してほしい。

もし、「重たいものを持てる」ことが仕事の必須条件で、その仕事の最終選考に残った男女ひとりずつが筋力以外の観点からは全く同じレベルの能力を有していたとしよう。力の強さを考慮に入れた結果男性候補者のほうが優れていると判断され、男性が最終的に採用になることについて、私は文句は言わない。しかし、女性が「本当に重たいものを持つ必要があるのでしょうか?職場環境をこのように変え、道具を使用することで、重たいものを持つ必要がなくなるのではないでしょうか。それによって、仕事そのものの効率もこれだけ上昇します」と提案したとしたら、せめてそれに耳を傾けてくれる世の中であってほしいと私は思う。

発想こそ、平等である。前述の筋肉モリモリ男性だって、この柔軟な発想はできるはずである。女性の専売特許などというつもりは毛頭ない。

男に生まれてくればよかったと心から思ったことは一度や二度ではない(性同一障害というのとは違うと思うが、「男だったらこの業界でどんなことができていただろう」と想像してみることはよくあった)。しかし、この歳になるともうそんな考えもしなくなった。私が女性であるということは紛れもない事実で、今からでも変えられますけどどうしますかァと神様に声をかけられても今さら変えようとは思わない。女性であることも利用して、うまいことやって生きていくしかないのだ。

しかし勘違いしてほしくないのが、これから歩みを進めていく中で、「私は女なのよッ!」とわざわざ一歩一歩主張して歩こうとも思っていない、というところである。「私が女性である」ということは「私の好きな色は黒である」「犬派よりはネコ派である」などのその他の「わたし」を構成する要素のひとつでしかなく、「わたし」そのものではないのだ。ある日突然私が女性でなくなったとしても、私は残りの私の欠片を集めて、私を再び見つけて生きていく。だから、「Women Rule (女、サイコー!/女こそが正義)」みたいなTシャツを着て練り歩こうとは思わない(正直言うと、そういうことをすると男性の敵を増やすだけなんじゃないかと思ってしまう)。

どんなに控えめに見ても、現時点でこの業界でやっていこうと思ったならば、女性であるということが不利に働くことの方が多いのは不動の事実。ならば周りを凌駕し、ぐうの音も出させないほどの圧倒的な実力を持つしかない。業界で自分自身が唯一無二の存在になるしかない。その仕事なら阿部さんがいるよ、阿部さんに聞いたらきっとわかるよ、阿部さんにやってもらえばいいじゃん、と言ってもらえるようになるまで、業界のニンゲンの大半がぐーすか寝ている時にもmidnight oilを燃やして日々コツコツと勉強を続けるしかないのだ(いやまぁ、これはモノの例えで、寝るのは好きなので寝られるときは寝るけれども)。圧倒的な実力には男性も女性もあがらえない、というのが今のところの私の答えだ。現時点では、悔しいけれど、知識レベルも技術レベルも、まだまだ自分の納得いくところまで達していない。しかしながら、同じ「悔しい」という表現を使ってみても、この「悔しさ」は冒頭の無力感を伴う「悔しさ」とは全く違う、もっとワクワクする「悔しさ」だ。あっもしかしたらこれが、オラ、もっと強いやつと闘いてぇ!というやつだろうか(違う?)。

まぁ私が勉強を続けるのは単純に勉強が楽しいからで、「ざまぁみやがれ男ども」と思いながら毎日学んでいるわけではない(そこまで心がすさんでいたとしたら、さすがに自分で自分を軽蔑するかもしれない)。とりあえず、ここまで勉強を続けてみて、分かることが増えたら、その倍の速さで分からないことのほうも増えるのだということが分かった。いつかこの業界の全てを学びつくしたと言い切れるようになるか、全く別の分野で新たな情熱を見つけるか、体力の限界が来るその日まで、これまで通り自分に合ったペースで学び続けてみようと思う。いやぁ、女らしいネチネチとした文章を、失礼した。

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  by supersy | 2017-09-11 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

脳を活性したければ、鼻から空気を吸え!呼吸のルートとフェーズに呼応した、脳内ニューロン活性のエビデンス。

友人が面白いと教えてくれた論文1 読みまーす。
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冒頭の英語がうっとりしますね。"The act of breathing results in a cyclical flow of air through the nose, providing an entry point for respiratory entrainment of neural activity" (p.12448). 鼻から空気が入ってくるとolfactory bulb (嗅球)とpiriform cortex (梨状皮質)…つまり嗅覚を司るlimbic system (大脳辺縁系)と呼ばれる脳の部位が活性化されるのですが、2-4 これは例えば口呼吸をするなどして、「鼻腔内の空気の渦流」を減少、または制限してしまうと、この部位の脳の活動もまた低下するのではと言われています。5
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● Limbic systemは感情、記憶、行動を調整する役割も持つ (特定の匂いを嗅いだりすると強烈に過去の記憶が蘇ったりする所以ですね)
● 鼻腔内で起こる空気の流れは、匂い物質の流れを作り、嗅覚を司るLimbic systemを活性化する

ここまでわかっているこういった知識の欠片を並べ、眺めてみると、色々つながりそうなところが見えてきます。例えば、ストレスを感じたり、不安になったり、知らないところに探検に出かけてみたりするときには、我々の呼吸は自然と浅く、早くなったりしますよね。特定の感情や行動によって呼吸の深さや早さが変化する(脳活動の変化→呼吸の変化)のは皆さん自身も体感したことがあるかと思うのですが、ということは、順番をひっくり返せば「呼吸の仕方を変えることで、感情や思考、行動が変わることもあるのでは?(= 呼吸の変化→脳活動の変化→それによる認知機能の変化)」という説の道筋も見えてくるんじゃないかと思うんですよ。ここらへんを掘り下げているのが今回の論文なわけです。

具体的には、1) intracranial EEG(iEEG, 頭蓋内脳波↓)を用いて鼻腔内の空気の渦流はPiriform cortex (梨状皮質)の活性を生むのか?Amygdala (扁桃体)やHippocampus (海馬)の活動はどうか?; そして 2) 呼吸は(偏桃体や海馬機能と深く関わりのある)実際の認知的タスクにも影響を与えるのか?などについて検証しています。
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iEEGを用いた実験は頭蓋を開け、脳に直接電極を埋め込むというこれ以上ないinvasiveな計測法(↑)であるが故、健康な人を被験者にするわけにもいきませんから(IRBの許可が下りませんよね)、被験者は7人のtemporal lobe epilepsy (側頭葉てんかん)持ち患者(平均42.4±10.4歳、男4人、女3人)に限って行われたそう。投薬治療が経過が思わしくなく、頭蓋を開放しての手術が必要な患者に絞り、その手術をする際にこの実験も…という形だったようです。ここでは、被験者に鼻呼吸をさせた場合と口呼吸をさせた場合とで、脳の活性がどのように異なるのかを計測、記録しています。
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呼吸と認知タスクの関係性を計った実験では、健康な被験者を用いて、彼らを(口を物理的に塞いだ強制)鼻呼吸 vs (鼻を物理的に塞いだ強制)口呼吸 vs (物理的には何も塞がず、口を開けたままで鼻呼吸をするという)コントロールの3グループに分け、それぞれに1) Emotional Recognition Taskと、2) Visual Object Memory Taskをしてもらいました。1) Emotional Recognition Task(62人、18-30歳)のほうでは、それぞれassignされた呼吸をしながら、驚いた顔と恐怖心に溢れている顔の写真をランダムに被験者に見せ(ひとつの写真につき100msという、限られた認識時間)、できる限り早くどちらの表情か見分けてもらう(=ボタンを押して判別)というタスクを、そして、2) Visual Object Memory Task(33人、18-30歳)では建物や果物、楽器などの写真を180枚見てもらったのちに、見たことのある("old")写真180枚と見たことのない("new")写真180枚をランダムに見せ、これを見たことがある("old")かない("new")か見分けてもらう、というタスクをおこなったそうな。ちなみにこれらの認知タスクをおこなっている際の脳の活性を計測するために、一人だけtemporal lobe epilepsy患者にも、iEEGを付けた状態でEmotional Recognition Taskをやってもらったそうであります。

被験者の選抜やグループ分けに明確なルールを設けたり、それぞれの判断にjustificationを添えていないため (i.e. なぜEmotion Recognition Taskは驚いた表情と恐怖心に溢れた表情のふたつに限定したのか?)、ちょっと好き勝手自由感はありますが、なかなか興味深いデザインですね。この研究、幾層にも実験が重ねられていてかなり濃密なので複数の論文に分けて発表しても良かったくらいなのでは…。ここまでは、epilepsy患者が頭蓋を開けた状態でおこなっているこの研究結果が、健康で頭蓋が完全に閉まった状態の成人の脳の活動をどれほど再現すると言えるのか?と、鼻を物理的に塞いで、口のみからしか空気が通らないようにしておこなった口呼吸は我々が自然におこなうそれとどれほどsimilar/differentなのか?というapplicabilityに関する疑問が浮かびますね。

では結果に飛びます。長くしたくないのでbullet pointsで。
 - 鼻 vs 口呼吸: iEEGの分析によれば、鼻腔内の空気の渦流とpiriform cortex(梨状皮質)のニューロン活性には統計学的に有意なcorrelationが見られたが、amygdalaとhippocampusでは同様の現象は確認できなかった。 口呼吸をおこなった場合、これらの脳の部位に目立った活動は見られず、Limbic systemは活性されなかった。
 - 呼吸のフェーズ - 吸気 vs 呼気: 脳の活動のパターンは、吸気を始める際にamygdalaとhippocampusの活動が、そして吸気全体を通じてpiriform cortexの活動の振れ幅が上昇し、吸気に下がるという呼吸フェーズとのsynchronization(同調性)が確認された
 - Emotional Recognition Taskは、「恐怖に満ちた表情」は吸気のほうが素早く認識された一方驚いた顔に関しては呼気・吸気の差は無し。口呼吸をしていた被験者は総じて鼻呼吸によりも認識が著しく遅れた。「口呼吸被験者のほうのパフォーマンスが低かったのは、口を開けていなきゃいけない、という意識が邪魔をして、タスクに集中できなかったのでは」というバイアスを取り除くために採用した、(口を開けた状態で鼻呼吸の)コントロールグループの結果を見てみると、やはり(鼻を物理的に塞いで)口呼吸をしていた被験者よりも認識が格段に速かったので、総合すると「鼻呼吸をしているほうが、口呼吸に比べて相手の感情を素早く的確に読み取りやすい」ということが言える。
 - 「この写真を見たかどうか」思い出す記憶力のタスクでは、鼻呼吸 vs 口呼吸で統計学的に有意な差は見られなかったものの、鼻呼吸組の被験者間では空気を吸いながら覚えようとした場合と、空気を吸いながら思い出そうとした場合は、同様の動作を空気を吐きながら行った場合よりも正確性が上がることが分かった。

えーなにこれめっちゃ面白くないですか。まとめるとこういうことですかね。
ヒトのpiriform cortex(梨状皮質)の活動は、呼吸と呼応している。鼻から空気を吸う際にはこの部位は活性され、呼気と共に活動が下がる。この呼吸と対応した波のような活動は、amygdala(扁桃体)とhippocampus(海馬)でも見られ、これらの影響により、他人の表情(特に恐怖の表情)の判別は、鼻から空気を吸っている際が最も素早く正確におこなえるし、記憶の入力・取り出しもより正確になる。

つまり、脳を活性させたければ鼻から空気を吸え!逆に休めたければ口から息を吐け!ってことですかね。感情や状況に呼応して呼吸が変化するだけでなく、呼吸を通じて脳の状態を変えることができる…一方通行でなく、two-way streetなんだというのは非常に意味のある発見です。久しぶりにかなり読み応えのある…というか、難解といってもいいレベルの文献でしたが(久々にundergradに戻って論文と格闘しているような気分になった、2日かけて読みました)、すんごいワクワクしました。読みたいという方はぜひ!全文無料ですよー。

1. Zelano C, Jiang H, Zhou G, Arora N, Schuele S, Rosenow J, Gottfried JA. Nasal respiration entrains human limbic oscillations and modulates cognitive function. J Neurosci. 2016;36(49):12448-12467.
2. Adrian ED. Olfactory reactions in the brain of the hedgehog. J Physiol. 1942;100:459–473. doi: 10.1113/jphysiol.1942.sp003955.
3. Kay LM, Freeman WJ. Bidirectional processing in the olfactory-limbic axis during olfactory behavior. Behav Neurosci. 1998;112:541–553. doi: 10.1037/0735-7044.112.3.541.
4. Fontanini A, Spano P, Bower JM. Ketamine-xylazine-induced slow (<1.5 Hz) oscillations in the rat piriform (olfactory) cortex are functionally correlated with respiration. J Neurosci. 2003;23:7993–8001.

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  by supersy | 2017-09-06 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

タトゥーはアスリートにとって悪影響か?を科学的に読み解く。

色々ありましたが生きております。事情をご存知の皆様、大変ご心配をおかけしました。街にはまだまだ生々しい傷跡が数々残っていますが、徐々に平穏な日常生活が戻ってきつつあります。明後日には一週間遅れて無事に大学のほうも秋学期が開始する予定です。なんとかここまで漕ぎつけました…が、当然というかなんというか、非常にバタバタしています。今学期はもう、根性で乗り切るしかありません。気合いだー。




タトゥーはサッカー選手に悪影響? パフォーマンスの低下招く可能性

さて、こんな記事を先日見かけました。内容を読んでええー!と思い、元ネタになっているという研究をそれはそれは躍起になって探してみたのですが、どうにもこうにも見つかりません。なんてタイトルなんだろう?Dr. Ingo Froböse氏発表でしょう?どこにあるんだー?ご存知の方がいたらぜひ教えてくださいー。
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で。代わりと言ってはなんなんですが、こんな論文を発見しました(↑)。1 今年7月発表の論文だそうなので、こちらもそこそこ最新と言えると思います。こちらを読んでまとめておきます。

タトゥーの文化は古代からあったそうですが、近代になってそれはますますエスカレートする傾向にあり、現在は4500万人ものアメリカ人が少なくともひとつのタトゥーを有しているのだとか。日本ではまだまだ「ヤクザ」のイメージも強く、欧米のそれほどポピュラーではない印象ですが、それでも増えていますよねー。
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タトゥーは一般的に細い複数の針で肌を突き破り、体内にインクを入れる、という手法を取っています。指された針の数だけpuncture woundができ、真皮層(dermis)は損傷され、炎症反応が起こります。この真皮層には汗腺(sweat glands)も含まれているため、「タトゥーを彫ることによって汗腺の損傷が起こるのでは?」「そしてそれは汗腺の持つ『汗をかく』という機能、そして『押し出された汗から塩化ナトリウムを再吸収して、発汗による塩分のロスを最小限に防ぐ』機能に悪影響を及ぼすのでは?」という疑問を著者らが持つのも当然のことかもしれません。
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で、この研究では身体の片側にタトゥーがある健康な男性被験者を10名(平均21.2±1.0歳)用意し、タトゥーがある側の身体を「実験群」、ない側の身体を「コントロール群」としてそれぞれのsweat rate(発汗率)とそのNa+ concentration(塩化ナトリウム濃度)を計測したそうな。正確には、タトゥーがある側の身体のインク濃度が最も高い部分を「実験群」とし、逆側の全く同じ部位を「コントロール群」としたらしいのですが、この「インク濃度が最も高い部分」 というのはどういう計測によって決められるのでしょう?特殊な機器を使っての測定?それとも目分量?ここの記述は抜けていますね。

私が気になるのはstudy designなんですよ。まず被験者の数は明確に少ないですよね。Statistical powerによれば被験者の数は3-16人必要だった、とのことですから、贅沢を言えばその上限値を越えた20人は用意していればよかったのでは、と思います。それから、どうせだったらこういうグループ分けが見たかった。片側ではなく、ヒトを単体として見た場合の発汗量を、1) タトゥー無しの人; 2) タトゥー軽めの人(定義はよくわからないけど、例えば肌露出の〇〇%未満とか); 3) タトゥーをかなりヘビーに入れてる人…別に計測する、とか。同じ人間の半分を実験組、もう半分をコントロール、という実験は個人的にあまり好きではないのですよ。だって人体の機能って適応できるようにできているから、例えば写真のように左半身がタトゥーでカバーされて発汗作用が下がると、右半身の汗腺が逆に発達して発汗能力が上がり、トータルの発汗量のつじつまを合わせようとする、って可能性があるんじゃないかと思うんですよね。そうなると、左右差がより大きくなる、つまり「コントロール」として使っているはずの側が本来のコントロール以上の能力を持っている可能性もあるんじゃないかなぁと感じたりするんですけどね、どうなんでしょうね。

加えて、発汗率の測定は、19-21℃、湿度50-60%の室内で20分間座った状態でおこなったそうですが、ここも1) なぜ室温、湿度に幅があったのか?(19°で湿度50%の部屋と、21°で湿度60%の部屋とでは体感も変わってくるのでは?); 2) 計測前に運動禁止とか、サウナ禁止とか、cold whirlpoolやアイシングは禁止などの指定を設けなかったのはなぜか?; 3) もっというと被験者のexclusion criteriaに発汗に影響しそうな要素…例えば火傷とかmetabolic disordersなどを一切言及しなかったのかなぜか?という疑問も残ります。加えて、座ったままの発汗量は、スポーツ中の体温が上がった状態での発汗量とはまた違うものかも知れません。なので、この研究の結果がそのまま「屋外で運動中のスポーツ選手」にも当てはまるかは甚だ疑問が残ります。

あとは発汗能力はHeat Acclimatization (熱順化)の程度によっても大きく変化するはずですよね。2,3 つまり、10人の被験者の基礎発汗能力には個人差がそもそもある可能性が高いわけです。そうなればそのままのraw dataを平均化することにそもそも無理があるのでは…何らかの形で数値をnormalizeしなければならなかったのでは?と私は思ってしまうのですが…。どちらにしてもsample biasはかなり強そうです。
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され、それでは結果です。実験群とコントロール群との比較では、タトゥーがあった側の発汗量(↑左)は、無い場合と比べて格段に低かった(0.18±0.15 vs 0.35±0.25mg/cm/min, p = 0.001)、とのことで、その平均の差は-0.17±0.11mg/cm/min (Cohen's d = -0.79)だそうで。おお。随分ありますね。これを発汗率に直すと、「タトゥーがある側の身体はない側と比較して、発汗率がおよそ53±12%、つまり泊半分にまで低下していた」ということが言えるようです。うおおおお半分!

塩化ナトリウム濃度もタトゥーありとなしではある方が著しく高く(69.1±28.9 vs 42.6±15.2 mmol/L, p = 0.02)、その平均の差は26.5±29.7 mmol/L (Cohen's d = 1.01)だそう。これもかなり大きな差。比に直すと「タトゥーがある側の身体はない側と比較して、塩化ナトリウム濃度がおよそ1.73±0.83倍高い」ということが言えます。おおおおお。

まとめると、タトゥーをするとその個所の発汗性及び塩化ナトリウムの再吸収の能力は著しく低下する、ということですね。汗をかかないわりに、塩化ナトリウムを失う量は激しい、という効率の悪い発汗が起きる、と言い換えてもよいのでしょうか。タトゥーを入れてからの期間と、これらの能力低下に関連性は見られなかったことから、結論ではこれは(タトゥー施術による)汗腺の(一時的ではなく)恒久的変性そのものの結果である可能性が高い、と書かれています。

デザインの穴は致命的と言えるほど大きいかとも思う反面、結果はかーなーりー面白いです。発汗率が半分はアツいです。因果関係を証明できるような研究デザインではないので、この実験からはこれが実際にパフォーマンスにどのような影響を及ぼすのか、トレーニングでそれなりに克服可能なのか、そしてHeat illnessなどのスポーツ障害の危険性を上げることもあるのか…こういったことは全く分かりません。新たに出てくる疑問も非常に多いです…が、しかしそれは色々と想像力を掻き立てられるような興味深い研究だってことでもあるんですよね。いやー、後続の研究に期待です!

1. Luetkemeier MJ, Hanisko JM, Aho KM. Skin tattoos alter sweat rate and na+ concentration. Med Sci Sports Exerc. 2017;49(7):1432-1436. doi: 10.1249/MSS.0000000000001244.
2. Lorenzo S, Halliwill JR, Sawka MN, Minson CT. Heat acclimation improves exercise performance. J Appl Physiol. 2010;109(4):1140–1147.
3. Sawka MN, Leon LR, Montain SJ, Sonna LA. Integrated physiological mechanisms of exercise performance, adaptation, and maladaptation to heat stress. Compr Physiol. 2011;1(4):1883–1928.

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  by supersy | 2017-09-03 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

脳震盪関係おもしろ論文レビュー。*個人の感想です

個人の感想と言えばなんでも罷り通ると聞いて。

諸事情あって脳震盪関連の論文をまた洗っています。この分野はどんすか新しい論文が出るっすよね…わりに似たような内容も多く、「そんなに一生懸命最新の論文を読んでなくてもそこまで取り残されない」という妙な油断が生まれやすいので、そんな甘い気持ちじゃいかんぜよとちょっと自分で自分を戒めながらここ一週間ほど山のような文献と睨みっこしておりました。
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中でも面白いなと思った論文について、新旧問わず少しだけ書き残しておきます。
一つ目はこちら(↑)。1

脳震盪患者の大部分が7-10日以内に自然と回復する一方で、2 10-15%の脳震盪患者がPostconcussion Syndrome (PCS, 脳振盪後症候群)と呼ばれる、頭痛や睡眠、記憶障害などの一ヶ月以上続く長期的な後遺症を発症してしまうのはよく知られた事実です。3-5 しかしPCSの定義って未だに曖昧なんですねー。冒頭ではICD-10のPCSの定義とDSM-IVのそれがいかに異なるか、という議論も展開されており、この論文では「3つ以上の症状が最低でも脳震盪受傷後一ヶ月続いている且つMRI/CTなどの画像診断で異常が見られない場合をPCSと呼ぶ」(↓テーブル)という、まぁ確かにリーズナブルそうでしかし根拠の欠ける新たな定義を採用しています(個人的にはこの定義は非常に理に適っていると感じる一方で、こうして各論文で各自が正しいと思う独自の定義を採用し続けたら全く持って世間が役立てにくい・一般化しにくい情報になってしまうなぁ、と少し残念にも感じます)。
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この論文1では1997年から2013年にかけてカナダのとあるneurosurgeonの勤務する医院に来院した284人の脳振盪患者を上の定義を使って振るいにかけ、合計221人の「PCS」基準を満たした患者のプロファイルをretrospectivelyにレビューしました(= retrospectively cohort study)。PCS患者221人のうち、男性127人(57.5%) vs 女性94人(42.4%); 患者の年齢層は10-74歳と実に幅広く、latestの脳震盪受傷時平均年齢は27.0歳; 今までの総脳震盪受傷回数は平均して3.3回(↓左グラフ); 今までに複数回脳震盪を受傷した患者は221人中170人(76.9%); PCSの有病期間は平均が14.7ヶ月、中央値が7ヶ月で、幅はなんと1ヶ月からなんと最長で26年まで(↓右グラフ)。26年間も頭痛が続くなんて、アタマおかしくなりそう…。
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PCS患者が訴える症状のトップ15を記事から抜粋して下にまとめてみました。トップ5は特に過半数(=50%以上の患者が訴える)を超えていますね。頭痛に記憶障害、集中も出来ないとなったら勉学は大変そうです。
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この研究は、どういった要素がPCSになる・ならないを左右するか、ではなく、どういった要素がPCS患者の経験する症状数・有病期間に関係しているかを調査したもので、結論を言うと1) (この怪我が原因となった出来事で)訴訟沙汰に巻き込まれている; 2) extracranial injuriesがある; 3) 記憶障害 and/or LOCが脳震盪受傷時に見られた; 4) 女性である…という要素があると症状数が増える・PCSが長く続きやすいという関連性が発見されたようです。一方で、過去の文献によってPCSのpredictorと発見されている1) 精神疾患 and/or 偏頭痛の既往歴; 2) 受傷の原因 (スポーツか、交通事故か、等); 3) 過去の脳震盪受傷数; 4) 年齢は、PCSの有無そのものはともかく、PCSの症状数・有病期間には関連性は見られなかったそうな。

あと面白かったのは「PCS患者が経験している症状数はPCS有病期間を予測する単体の要素として最もチカラがある」ということですかね。つまり、例えば頭痛・吐き気・いらいら・視覚障害・疲労感という5つの症状を訴える患者は、頭痛・眩暈・記憶障害という3つの症状があるPCS患者よりもより長くPCSの症状が続きやすいというわけ。ひとつ要素が増えるごとに回復する可能性が25%下がるという数字も面白かった…大きな影響力がありそうですね。

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この論文6も面白いです。ざっくり解説すると、「脳震盪患者は頭痛や記憶違い、睡眠障害などの症状が一般的だけれど、これらの症状は脳震盪をしていない、『健康』と言われる一般の人にも決して珍しくないものである」という観点から、「非脳震盪患者の大学生アスリートにどれくらい『concussion-like symptoms』があるか調査をしたら、一体どれくらいの選手が『脳震盪』の診断基準を満たす症状を報告するだろうか?」を調査したものです。そんでたぶんコレ、伏せられていますけど、うちの母校でやった研究っすね。何で隠すんでしょ?

調査された現役大学アスリート738人(男452人、女286人)のうち、前述のICD-10の「脳震盪」の診断基準を満たす症状を報告したのは120人(16.3%)で、中でも女性(21.7%)は男性(12.85%)に比べて1.7倍(OR = 1.67, p = 0.002)その基準を満たしやすいとのこと。それから、Fatigue/Drowsiness (疲労・倦怠感)が中でも一番多い症状で、頭痛も少なくなかったそうです。うーん、無作為に脳震盪をしていない大学生アスリートを捕まえて調査すると、その人が16%の確率で『脳震盪』になってしまうって、やはり診断としてはnot specific enough(特異性に欠ける)ってことですよね。

類似した研究と比較すると…メイン州在住の31,958人の中・高生を対象にした研究7では女子は28.0%と男子は19.3%が、フロリダ州在住の349人の中・高生を対象にした調査8では女子は20.2%と男子は20.4%がICD-10の脳震盪診断基準を満たす症状を報告しています。16-20%超のアスリートは中高大学を問わずにconcussion-like symptomがある、というのは一貫した発見のようですね。中高生のほうが大学生より割合が高いというのは少しびっくりだけど。男女差がある(女性の方が症状を報告することが多い)というのは今のところAsken et al6とIverson et al7に共通する結果というところでしょうか。このふたつの研究の被験者の数(738人+31,958人)からも、かなり確定していそうではないかというのが私の個人的な印象です。

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最後の論文です。9 これは発表したときかなり騒がれたのでご存知の人も多いかも。
Chronic Traumatic Encephalopathy(CTE)はまだまだ症例報告にのみ基づいており、clinical presentationが多様性がありすぎるが故に、確立された疾患として認められるには時期尚早だという厳しい声も専門家から上がっていましたが、10,11 2016年に国立神経疾患・脳卒中研究所(National Institute of Neurological Disorders and Stroke, "NINDS")と国立生物医学画像・生物工学研究所(National Institute of Biomedical Imaging and Bioengineering, "NIBIB")が発表した共同声明では"an accumulation of abnormal hyperphosphorylated tau (p-tau) in neurons and astroglia distributed around small blood vessels at the depths of cortical sulci and in an irregular pattern"と正式にCTEの定義づけがなされ、診断基準も明確に定められるようになりました。12 少しずつではありますが、枠作りは着実に進んでいる印象です。

さて、話が逸れましたが、本論文では死亡後にBrain Bankに脳を提供した202人の脳(死亡年齢47-76歳、中央値66歳)を検証した結果、177人(87.6%)にCTEが認められたと報告されています。9 やはりというかなんというか、非常に高い数字です。最終フットボール歴がpre-schoolだった(= それ以降はフットボールをプレーしていない)人の脳は2人中0人がCTE(= 0%)だったのに比較して、最終フットボール歴が高校、大学、NFLと上がるにつれて14人中3人(21.4%)、48人中53人(90.6%)、111人中110人(99.1%)とCTE率も爆発的に上がっています。

CTEと自殺の関連性も少し興味があって調べていたところだったので書いておくと、mild CTE(Stage I-II)と診断された44人中最も多かった死亡原因は自殺(n = 12, 27.3%)で、severe CTE患者のそれはneurodegerative (133人中61人、46.6%)だったそうな。

最後にひとつだけ書いておくと、このBrain Bank関係の研究の全てにsample biasが含まれる可能性は否定できません。「既に亡くなって」いて「脳を提供する」だけの理由がある人しか研究対象にならないのですから。なので、この研究を読んで「現役NFL選手の99%もこれからCTEを発症するというわけだろう」と結論づけてしまうのは話が飛躍しすぎです。解釈にご注意を。

現在の技術では「検死解剖」が唯一の確実な診断方法ですが、他の画像手段などを用いてタウたんぱく質を可視化する方法や、その他のバイオマーカーの存在の有無など、様々な研究が進んでいます。13 そう遠くない将来、生きたままでも診断する方法が見つかるのではと思っていますが…。


1. Tator CH, Davis HS, Dufort PA, Tartaglia MC, Davis KD, Ebraheem A, Hiploylee C. Postconcussion syndrome: demographics and predictors in 221 patients. J Neurosurg. 2016;125(5):1206-1216.
2. McCrory P, Meeuwisse WH, Aubry M, et al. Consensus statement on concussion in sport-the 4th international conference on concussion in sport held in Zurich, November 2012. Clin J Sport Med. 2013;23(2):89-117. doi: 10.1097/JSM.0b013e31828b67cf.
3. Jotwani V, Harmon KG. Postconcussion syndrome in athletes. Curr Sports Med Rep. 2010;9:21–26.
4. Prigatano GP, Gale SD. The current status of postconcussion syndrome. Curr Opin Psychiatry. 2011;24:243–250.
5. Shenton ME, Hamoda HM, Schneiderman JS,et al. A review of magnetic resonance imaging and diffusion tensor imaging findings in mild traumatic brain injury. Brain Imaging Behav. 2012;6:137–192.
6. Asken BM, Snyder AR, Clugston JR, Gaynor LS, Sullan MJ, Bauer RM. Concussion-like symptom reporting in non-concussed collegiate athletes. Arch Clin Neuropsychol. 2017:1-9. doi: 10.1093/arclin/acx018.
7. Iverson GL, Silverberg ND, Mannix R, Maxwell BA, Atkins JE, Zafonte R, Berkner PD. Factors associated with concussion-like symptom reporting in high school athletes. JAMA Pediatr. 2015;169(12):1132-1140. doi: 10.1001/jamapediatrics.2015.2374.
8. Asken BM, Snyder AR, Smith MS, Zaremski JL, Bauer RM. Concussion-like symptom reporting in non-concussed adolescent athletes. Clin Neuropsychol. 2017;31(1):138-153. doi: 10.1080/13854046.2016.1246672.
9. Mez J, Daneshvar DH, Kiernan PT, et al. Clinicopathological evaluation of chronic traumatic encephalopathy in players of american football. JAMA. 2017;318(4):360-370. doi: 10.1001/jama.2017.8334.
10. Randolph C. Is chronic traumatic encephalopathy a real disease? Curr Sports Med Rep. 2014;13(1):33-37. doi: 10.1097/OPX.0000000000000170.
11. Bailes JE, Turner RC, Lucke-Wold BP, Patel V, Lee JM. Chronic traumatic encephalopathy: is it real? The relationship between neurotrauma and neurodegeneration. Neurosurgery. 2015;62 Suppl 1:15-24. doi: 10.1227/NEU.0000000000000811.
12. McKee AC, Cairns NJ, Dickson DW, et al. The first NINDS/NIBIB consensus meeting to define neuropathological criteria for the diagnosis of chronic traumatic encephalopathy. Acta Neuropathol. 2016;131(1):75-86. doi: 10.1007/s00401-015-1515-z.
13. Montenigro PH, Corp DT, Stein TD, Cantu RC, Stern RA. Chronic traumatic encephalopathy: historical origins and current perspective. Annu Rev Clin Psychol. 2015;11:309-330. doi: 10.1146/annurev-clinpsy-032814-112814.

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  by supersy | 2017-08-21 18:00 | Athletic Training | Comments(0)

Vanishing Twin - あなたにもいたかもしれない、双子の片割れ?

こんにちはー。今週末はとある講習会に参加しにポートランドはオレゴンに来ています。講習の合間を縫って、新しくできた友人らと色々街を回ったりもしていました。楽しかったー!
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今回の講習は過去の出来事によって凝り固まってしまった感情をどう解き放つかという、言葉にすればするほど怪しい内容なんですが(苦笑)、ココロに巻き起こる感情は化学物質となって脳内を駆け巡る、というコンセプトは決して信じがたいものではないし、自分でも気づかないうちに特定の出来事が「しこり」のようにぎゅぎゅっと固まって、そこから雪玉のようにどんどんカサを増していくことってあるでしょう?何層にも重なって溶けにくくなってしまった雪玉をひとつひとつその層を剥がしていって、「核」となった小さな小さな雪の塊を解かす作業って、バカにできないと思うんですよ。

まーセミナーの内容やその背景にあるエビデンスはいつか気が向いたら書くとして、今回はこの講習の中で出てきたと「Vanishing Twin (消えてゆく双子の片割れ)」というコンセプトについて書きたいと思います。


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出産において、双子が生まれる確率は3.2%と報告されています…1が、実際に双子が命として宿る可能性はそれよりももっと高いのではとも言われているんです。2 どれくらい高いのかって?新旧様々な論文を見てみると、本当は双胎妊娠そのものはその約1.25~1.67倍頻繁に起こるのではないか(つまり3.2%ではなく、約4~5.4%まで確率が上がる)という指摘があります。3 言い換えると、双胎妊娠が起きても、約20~40%ほどの確率でその片割れが成長せず何らかの理由で自然死してしまう、"Vanishing Twin"という現象が起こるんだそうです。2,3
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Vanishing Twinが起こる理由は明らかになってはいませんが、単胎妊娠でも自然流産が起こる可能性は確率は15%程と言われていますから、「2名のうちどちらかが死亡する確率」と考えると、Vanishing Twinの約20~40%という数字もそこからそう遠くもないのかもしれません。狭い子宮の中で命の競争が行われ、強いほうが生き残るという自然な流れもきっとあるのでしょう。4 動物界では、「全員は生き残らない」前提で、多く子供を産んでおくことは当たり前でもありますしね。
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Vanishing Twinsの真のPrevalenceはわかっていません。2,3 過去に研究によって報告された数字は先に述べた通りですが、いやきっともっと高い、60-70%程の確率で起こるのでは、と主張する人たちもいるようです。2 なぜならば、胎児の死亡が起こりやすいのは、心拍がはっきりと確認できるようになる以前の1~8週目。もしこの期間の間に双胎一児死亡が起これば、そもそも双胎妊娠であったことが医師や母親にも認識されない、つまり、母親も生まれてくる子も「妊娠時には双子だった」と知らない、ということになるのでは?というわけ。最近は超音波の画像診断の技術も上がり、より初期妊娠診断ができるようになって、Vanishing Twinの実情もよりはっきりと見えてき始めてきているのだとか。ふーーーむ。



なぜこんな話になったかというと、今回の講習で「ひとりぼっちは寂しい」という深層心理がある人1名、「生きることに罪悪感を感じる」と言う別の人1名に、それぞれ「貴方にはVanishing Twinがいた」という診断結果が出たんですよ…。本人にその記憶がなくても、生理学的な反応でそれが見えてきたりするんです…。言われた本人らは、その瞬間に堰を切ったように泣きだしたりするんだからもう鳥肌ものです…。ひー。

ちなみに、悲しい話ではありますが、妊娠初期に死亡したVanishing Twinはそのまま子宮に吸収されて消えていなくなる場合がほとんど。その場合後遺症など無く、生き残った胎児の成長は「正常」に進むケースが多いそうですが、妊娠中期や後期に死亡が起こると生き残った赤ちゃんや母体に影響・障害がでることもあるのだとか。そして、稀に双子の片割れが、もう一人の胎児の身体を飲み込むようにして成長する"Fetus-in-Fetu (封入奇形胎児)"という症例もあるようです。4 香港で生まれた赤ちゃんの身体の中(肝臓と腎臓の間)からもう一人の大事が出てきた症例や、「普通に」生まれ育った36歳のインド人男性の身体の中で、もうひとりの胎児がそれに寄生するように成長を続けていた(生まれてこの方、妙なお腹のでっぱりがあったそうですが、36歳になって息苦しいなどの症状が出始め、病院へ。医者は最初は大きな腫瘍かと思ったそうな…)症例などが今までにニュースになっていたりします。画像検索をすることは…あまりオススメしません。

別に怖い話をするつもりはなかったのですが、改めて人体って不思議に満ち満ちているなぁ…と思ったのと、もしかしたら私にも双子がいたりして?と妄想を膨らませてみたりしたので、ここに書き記しておきます。あっ、明日朝早い飛行機に乗るんだった、そろそろ寝なくてはです!

1. Chauhan SP, Scardo JA, Hayes E, Abuhamad AZ, Berghella V. Twins: prevalence, problems, and preterm births. Am J Obstet Gynecol. 2010;203(4):305-315. doi:10.1016/j.ajog.2010.04.031.
2. Landy HJ1, Keith LG. The vanishing twin: a review. Hum Reprod Update. 1998;4(2):177-183.
3. Márton V, Zádori J, Kozinszky Z, Keresztúri A. Prevalences and pregnancy outcome of vanishing twin pregnancies achieved by in vitro fertilization versus natural conception. Fertil Steril. 2016;106(6):1399-1406. doi:10.1016/j.fertnstert.2016.07.1098.
4. Mawhiney RB. Fetal absorption: no effect without a cause - case study. Am Chiroprac. 1993.

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  by supersy | 2017-08-12 23:30 | Athletic Training | Comments(1)

「椎間板ヘルニアには腰椎伸展位が良い」を問い直す。

良い姿勢、ってなんでしょうね?

姿勢は動的に評価してこそ意味があるのではないか、という議論はひとまず置いておいて、今日は静的な面に限った姿勢の話を少ししたいと思います。さて、良い姿勢ってどんなものだろう?と、「Good Posture (良い姿勢)」という言葉で画像検索すると、実に様々な写真が引っ掛かります。
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例えば、とあるウェブサイトで「良い姿勢」の見本としてこんな写真(↑)が使われています。これは私個人に限った経験かもしれませんが、「姿勢が悪いよ、背筋伸ばしなっ」と注意されてこんな風に背筋を「反らす」ヒトって少なくないんじゃないか(↓、こちらも「良い姿勢」で検索)と思うのです。しかし、
私はこれらの姿勢を「良い」とは全く思えないのです。
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腰椎の形状、アラインメントやそのカーブが腰痛や機能不全に与える影響1-5は大きく、中でも椎間板は(様々な定説こそあれ)腰痛の原因となっている可能性は根強く残っています。6 そしてその椎間板にかかる負荷やストレスは、無理矢理外部からの力によって腰椎をへし曲げられているんでもない限りは、他でもない胴回りの筋活動に大きく左右されているのです。7
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ではどういった筋活動、どういった姿勢が椎間板にかかるストレスを増やす・減らすのか?…ということを検証した論文7をひとつ読んだ(↓)のでまとめておきます。
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この論文では腰痛の既往歴の無い18人の健康な被験者(男13人、女5人、平均28.0±6.94歳)を対象に、2種類の姿勢を取らせてそれぞれの脊柱をレントゲン写真に撮り、パソコンに取り込んで特殊なソフトウェアを使って椎間板にかかる力を生体力学的に分析をしています(なるほど、椎間板にかかるストレスってどう可視化、モデル化してるんだろうと思ったらこういうのが一般的なんですね8-10)。

検証対象となる姿勢というのはA: 骨盤を動かさず、しかし胸を前に突き出す姿勢 (Anterior translation of thorax、T1がT12の真上に来るイメージ↓写真A)と、 B: 力を抜いて自然に立ってもらう(↓写真B)の2種類で、実際の脊柱のカーブはこれによってこういう風に変化したそうです(↓写真右)。当たり前ですが、Anterior Postureのほうが脊柱・身体そのものが前方にシフトしており、Center of Mass(COM)もつま先へ前方移動していることは容易に想像できますね。7 前方に移動した体重を何とか後方に引き返そうと脊柱起立筋群が過活動を起こし、腰椎の一部(特にL4-5)を、腰を反るように極端に伸展させているのも見て取れます。さらに特筆すべきは、胸椎もそれに付随するように伸展し、それによって胸椎の前弯が失われて、いわゆる「フラットバック」という状態が生まれていることです(写真右: T4-L3までがほとんど平らです)。その一方で自然に立ってもらったほうの姿勢Bは腰椎は本来のLordotic(前弯)カーブがL1からL5にかけて満遍なく保たれながらも局所的で過度な進展は見られず、胸椎(T1-12)はこれまた全体的にゆるやかに屈曲、つまりKyohotic(後弯)カーブを描いています。加えて、姿勢Bでは脊柱全体が姿勢Aに比べて後方に位置しているため、COMはつま先から踵へ後方移動を起こしていることもわかります。7
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要約すると、Aの姿勢は「腰椎の一部と胸椎全体で過度に伸展/フラットバック」、「つま先体重」と結び付けられる一方で、Bはむしろ「腰椎の全体の滑らかな伸展と胸椎全体のこれまた滑らかな屈曲」、「かかと体重」と深い関係にあることがわかるわけです。これらのVisual findingsは、実験内の統計によっても裏付けられており、1) T1-12の胸椎のポジションは姿勢AとBでは統計学的に有意な差が見られ(p = 0.007); 具体的には、姿勢Aを取ることで、Bと比較して: 2) 胸椎(T1-12)の角度が平均13.1±10.3度失われ(= 胸椎伸展)、3) 腰椎(T12-S1)の角度が平均1.7±12.9度増え(= 腰椎伸展);Ferguson Angle (腰仙角度)は平均9.5±6.7度増えた(= 骨盤前傾)と論文内で報告されています。お、おもしれぇぇぇぇ…!

さて、それではこの姿勢の違いがどんな椎間板へのストレスの差を呼んだかというと、わかりやすいグラフはこちら(↓)。一つ目のグラフがCompressive Stress(圧縮応力)、二つ目がShear Stress(剪断応力)を示しています。
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一目瞭然、という感じではありますが、グラフが示すように、姿勢Aは姿勢Bに比べて、T9-10からL5-S1の椎間板にかけて(Compressive Stress)、そして、ST6-7からL5-S1の椎間板にかけて(Shear Stress)、ハッキリと高い負荷がかかっていることが分かったのです。これらの差は統計的に有意(p < 0.05)で、中でも最大の負荷上昇率が見られたのはCompressiveでL5-S1椎間板の92.2%、Shearに至ってはL3-4椎間板で609%、つまり約6倍ものストレスが確認されました。L5-S1椎間板にかかる負担は、数字にすると400N(= 40弱kg重分の重さ)にもなるのでは、と著者らは予測しています。加えて、それに伴うように脊柱起立筋群の負荷もT7以下では942%も高まっており、「姿勢Aは筋肉がより頑張らなきゃいけない上に、椎間板にかかるストレスも格段に増える、非常に生きていく上で効率の悪い姿勢」ということがわかります。

この論文7は「矢状面での姿勢・脊柱アラインメント異常(Anterior Trunk Translationとそれに伴う胸椎伸展、腰椎伸展、骨盤の前傾)は脊柱起立筋群の過活動を促し、下位胸椎及び腰椎の椎間板にかかるストレスを増やす」という結論を述べていますが、これは従来の「椎間板ヘルニアに屈曲は悪い、伸展してNucleus pulposus(髄核)を押し返せ!」という『伸展推奨』理論の真逆を言っています。見る人が見たら非常に衝撃的な結論かも知れません。ええー!?と気になる方は、ご自分でこの研究の全文を読むことをお勧めします。面白いのでオススメです。
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「椎間板ヘルニアに伸展位はむしろ悪い。屈曲位のほうが良いのでは」という『屈曲推奨』説をサポートする論文はもうひとつあります。こちらの論文(↑)11は最新型のフルオープンMRIを用いれば患者のポジションを様々に変えながらでも画像を撮ることが可能になったので、「同じ患者でも、患部をよりはっきりと写すにはどういったポジションで画像を撮るのが理想的か?」という観点から、色々試し撮りをおこない、その報告をまとめているわけです。こんな論文滅多に出会えないですね、これも面白い…。
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中でも見ていただきたいのが上の比較画像です。これは、実は全く同じ「椎間板ヘルニア」持ちの患者の腰を撮ったもので、左は立位・伸展位(↓左)で、右は立位・屈曲位(↓右)で撮影がおこなわれました。右の画像(↑)はL4-5とL5-S1椎間板にヘルニアがはっきりと見て取れますが、左の画像(↑)を見て「ヘルニアが認められる」と判断する医師や画像技師はいないのではないでしょうか。
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著者らはこの研究で最も意味のある発見のひとつとして「立・伸展位のMRIは、ヘルニアが悪化しより狭窄が顕著に出る一方で、立・屈曲位のMRIではその度合いが小さくなるか、場合によっては完全に狭窄が消失することがある("complete resolution of the same central canal and neural foramen narrowing")」と記しています。



そんなわけで、椎間板ヘルニアの患者を治療するにあたって、カギはいかに「骨盤前傾、胸椎伸展、腰椎伸展のポジションに陥らない」かじゃないかと思うんですよね。先日、ちょうどまさに腰椎間板ヘルニアの選手のコンサルティングをする機会があったのですが、座位でも立位でも伸展しっぱなしのこの選手を伸展位から脱させることに重きを置き、一時間半ほどセッションをしました。癖ですぐに背を反らせてしまうので、いかに屈曲が素晴らしいポジションなのかを分かりやすい言葉で話し、「ここ(伸展位)から出てもいいんだよー」「ここ(屈曲位)にいってもいいんだよー」と、それをまず理解・実感してもらうことにたっぷり時間を費やしました。
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こういうことを書くと、「屈曲って、こういう姿勢がいいって言ってるの?(↑写真左)」と怪訝に思われる方もいるかもしれませんが、そうではありません。左の写真の女のヒト、一見すると「屈曲位」にいるように見えるかもしれませんが、実は彼女がしているのは「伸展位からの屈曲(しているように見せかけているだけ」で、真の屈曲ではないのです。この人は一度も伸展位を出ていないんですよ…線を付けるとよりわかりやすいでしょうか(↓)。
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こんな風に「猫背」に見える人が屈曲の達人かというとそうではなくて、実は進化しただけの伸展の達人ということはよくあります。見た目の脊柱のカーブに捕らわれず、安易に屈曲を悪者にせず、 患者にとっての理想的な姿勢を作り上げていくことって、大事じゃないかなぁと思っていたりします。

1. Colloca CJ, Keller TS, Peterson TK, Seltzer DE. Comparison of dynamic posteroanterior spinal stiffness to plain film radiographic images of
lumbar disk height. J Manipulative Physiol Ther. 2003;26:233–241.
2. Harrison DD, Cailliet R, Janik TJ, Troyanovich SJ, Harrison DE, Holland B. Elliptical modeling of the sagittal lumbar lordosis and segmental rotation angles as a method to discriminate between normal and low back pain subjects. J Spinal Disord. 1998;11:430–439.
3. Jackson RP, McManus AC. Radiographic analysis of sagittal plane alignment and balance in standing volunteers and patients with low back pain matched for age, sex, and size. A prospective controlled clinical study. Spine. 1994;19:1611–1618.
4. Janik TJ, Harrison DD, Cailliet R, Troyanovich SJ, Harrison DE. Can the sagittal lumbar curvature be closely approximated by an ellipse? J Orthop Res. 1998;16:766–770.
5. Troyanovich SJ, Cailliet R, Janik TJ, Harrison DD, Harrison DE. Radiographic mensuration characteristics of the sagittal lumbar spine from a normal population with a method to synthesize prior studies of lordosis. J Spinal Disord. 1997;10:380–386.
6. Harrington JF, Messier AA, Bereiter D, Barnes B, Epstein MH. Herniated lumbar disc material as a source of free glutamate available to affect pain signals through the dorsal root ganglion. Spine. 2000;25(8):929-936.
7. Harrison DE, Colloca CJ, Harrison DD, Janik TJ, Haas JW, Keller TS. Anterior thoracic posture increases thoracolumbar disc loading. Eur Spine J. 2005;14(3):234-242.
8. Keller TS, Nathan M. Height change caused by creep in intervertebral discs: a sagittal plane model. J Spine Discord. 1999;12:313-324.
9. Keller TS, Harrison DE, Colloca CJ, Harrison DD, Janik TJ. Prediction of osteoporotic spinal deformity. Spine. 2003;28:455-462.
10. Nagurka ML, Hayes WC. An interactive graphics package for complex shapes. J Biomech. 1980;13:59-64.
11. Jinkins, JR, Dworkin, JS, Green, CA, et al. Upright, Weight-Bearing, Dynamic-Kinetic MRI of the Spine: pMRI/kMRI. Rivista di Neuroradiologia. 2002;15:333-357.


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  by supersy | 2017-08-09 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

Breathing and Chronic Neck Pain: 慢性頸椎痛と呼吸の関係。

慢性的に首が痛い、というのも決して珍しい主訴ではないと思うんですが、頸部の痛みも呼吸と呼吸障害への密接な関係があります…という論文ふたつ、さくっとレビューです。
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首の痛みが呼吸障害を生むのでは?という論文1は見たことがあったんですけど、これは常々chicken or eggなんじゃないのかなと思っておりました。私個人の意見としては、どちらかというとdriving forceは呼吸なんじゃないかと。それで痛みによって不安に駆られ交感神経優位になり、ますます呼吸が悪化するんじゃないのかな、とか。まー恐らく正解はこの中間の「どちらもchickenでどちらもegg」なんでしょうけれども。

さて。この論文2では45人の慢性頸椎痛患者(男13人、女32人、平均年齢35.9±14.5歳)と同じく45人のmatched-control(男13人、女32人、平均年齢35.4±14.0歳)を対象に、1) 息を吸う・吐く強さ (ICC=0.81~0.83); 2) 首の屈曲筋・伸展筋の強さ (Isometric Strength、ICC=0.90~0.96); 3) Craniocervical Flexion Test (*首の深層屈曲筋群の持久力を見るテスト、ICC=0.91); 4) 頸椎可動域; 5) Forward Head Postureの度合い(craniovertebral angle: C7から耳までの角度を計算、ICC=0.88, 下図参照); 6) VAS; 7) 全5つのPatient-Based Outcome Measures - Neck Disability Index (=痛みによるdisabilityがどれほどあるか), the Baecke Questionnaire of Habitual Physical Activity (普段どれだけ運動をしているか), Hospital Anxiety and Depression Scale, Tampa Scale for Kinesiophobia, Pain Catastrophizing Scale…を計測、記録したそうな。うわー膨大なデータ。これらのOutcome Measureの測定の順番はランダムだったそうで、バイアスやorder effectsがないようにしましたよー、という記述アリです。それぞれの測定法とrationaleをしっかり説明しているところも好感が持てます。
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*知らなかったので調べてみました。テーブルに寝た状態で、バイオフィードバック圧力計を首の下に入れて20 mmHgになるまで膨らませてから(↓写真左、中央)、Chin tuckをして圧を22 mmHg; 24 mmHg; 26 mmHg; 28 mmHg; 30 mmHgまで上げ(↓写真右)それを10秒キープする…というのをそれぞれの圧で3回繰り返すんだそうな。
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で、結果はというと、慢性頸椎痛のある患者は健康なコントロールに比べて…
1. Forward Head Postureと鬱・不安症の症状に関しては大差なし
2. 頸椎伸展筋が著しく弱く(p<005)、屈曲筋群も弱い傾向にある(p-value not reported)。深層屈曲筋群の持久力は著しく低く (p<0.05)、頸椎の可動域も全ての面において制限が大きい(p<0.05)。
3. 吸気/呼気の割合こそ大差が見られなかったものの(p>0.05)、最大吸気圧(13.8%)、最大呼気圧(15.4%)はそれぞれ共に、健康な被験者のそれに比べて著しく低かった(p<0.05、Table 1参照)。
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…で、最大吸気圧と相関性が見られたのは、頸椎屈曲筋(r=0.70, p<0.001)と伸展筋(r=0.62, p<0.001)の強さ、Kinesiophobia(r=-0.43, p<0.01)、とCatastrophizing(r=-0.3, p< 0.05)。最大吸気圧との相関性が認められたのは頸椎屈曲筋(r=0.69, p<0.001)と伸展筋(r=0.66, p<0.001)の強さ、頸椎の痛み (r=0.33, p<0.05)、Neck Disability Index(r=-0.35, p<0.05), Kinesiophobia (r=-0.40, p<0.05)とCatastrophizing (r=-0.36, p<0.05)だったそうで。
つまるところ、ものすごくざっくり言って、首の屈曲・伸展筋群が弱い、首が痛い、機能制限がある、首を動かすことに恐怖心がある…こういった度合が高ければ高いほど呼吸力が下がっている傾向にあるというわけですね。
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この論文は、慢性頸椎痛の患者のアセスメント・リハビリは呼吸の要素を含むべきである、という風に〆られていますが、もっと言うと、呼吸介入を早めにすれば頸椎慢性痛そのものの予防にもつながるかもしれませんね。もちろん、相関関係≒因果関係なので、これは他の研究を持って証明する必要がありますけど。

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同じ研究チームの論文で、こちら3も。
こちらの論文で着目しているのはthe actual gas exchange。冒頭で腰椎などの痛みを抱える患者はHypocapnia(血液中の二酸化炭素が下がり、pHがアルカリ性に傾く現象)に陥りやすいという理論を紹介(これは知らなかった)しており、4,5 この現象が慢性頸椎痛の患者にも認められるかどうか、先の研究と全く同じ被験者(慢性頸椎痛患者45人、Matched Control 45人)を使って検証しています(…というか、上野研究と同時進行で行われていますね、明らかに)。80% Statistical Powerを得るために必要な被験者数は各グループ26人だそうなので、45人はそれを優に超えている、という表記もいいですね。
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手っ取り速く、結果です。動脈内の二酸化炭素は慢性頸椎痛患者のほうが著しく低下しており(34.9±2.9 mmHg vs 37.3±3.5 mmHg、↑上表参照)、35 mmHg未満が一般的に"hypocapnia”と診断のつくカットオフになることを考えれば、平均的な慢性頸椎痛の持ち主はhypocapniaと名前がついて然るべきということが分かりますね。血中二酸化炭素との相関性が見られたのは頸椎屈曲筋(r=0.34)と伸展筋(r=0.35)の強さ、深層屈曲筋群の持久力(r=0.31)、痛みの強さ(r=0.34)、Kinesiophobia(r=0.35)とCatastrophizing(r=0.30; p<0.05)だったそうな。

Substance Pがhyperventilationを生むのか、痛みがあることによって患者の呼吸が浅くなり、self-induced hyperventilationが起こるのか…(過呼吸時は、ちょいとした興奮状態なので、痛みの感覚が鈍るんですよね。6 そのanalgesic effects/鎮痛効果を身体が自然に求めて、浅い呼吸をprogrammingしてしまうのか)。それとも、そもそも呼吸がこの痛みの原因のひとつなのか…。色々と妄想は尽きませんが、「首がずっと痛いんです」と訴えてくる患者の体の中でこれだけ複雑なことが起こっているとしたら、「よし、じゃあ鎮痛剤出しましょう」「ストレッチしましょう」「ホットパック当てましょう」のような対処療法では問題の本質に対して対応しきれないことは明らかですね。患者の主訴に対して原因を見極め、holistic approachを!とはアメリカでもよく謳われますが、最近の様々な研究結果を見ていると、呼吸に介入せずにholisticなアプローチをしているとはもはや言えないだけの科学的なエビデンスは十分にあるように思います。…まぁ、もちろんそう考える私の頭の中は私らしいバイアスでいっぱいなわけですけども。

1. Kapreli E, Vourazanis E, Strimpakos N. Neck pain causes respiratory dysfunction. Medical Hypotheses. 2008;70(5):1009-1013.
2. Dimitriadis Z, Kapreli E, Strimpakos N, Oldham J. Respiratory weakness in patients with chronic neck pain. Man Ther. 2013;18(3):248-253. doi: 10.1016/j.math.2012.10.014.
3. Dimitriadis Z, Kapreli E, Strimpakos N, Oldham J. Hypocapnia in patients with chronic neck pain: association with pain, muscle function, and psychologic states. Am J Phys Med Rehabil. 2013;92(9):746-754. doi: 10.1097/PHM.0b013e31829e74f7.
4. Glynn CJ, Lloyd JW, Folkhard S. Ventilatory response to intractable pain. Pain. 1981;11:201-211.
5. McLaughlin L, Goldsmith CH, Coleman K. Breathing evaluation and retraining as an adjunct to manual therapy. Man Ther. 2011;16:51-52.
6. Chalaye P, Goffaux P, Lafrenaye S, et al. Respiratoryeffects on experimental heat pain and cardiac activity. Pain Med. 2009;10:1334-1340

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  by supersy | 2017-08-06 22:30 | Athletic Training | Comments(0)

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