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アスレティックトレーニングと環境問題: Sustainabilityという言葉を考える。

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"Go green!"という言葉は英語で「地球に優しく!」という意味でよく使われます。環境問題への取り組みはまだまだ後進国であるのがアメリカの現状ですが(州にもよると思いますが、テキサスではゴミの分別すらしません。リサイクルも大学では一定規模おこなっていますが、地域規模の取り組みはゼロ)、それでも「もっと変わっていかなければいけない」と危機感を持って様々な形でメッセージを発信している人たちもいます。今回からは、数回に渡ってスポーツと医療の現場での環境問題への取り組みについての10の論文をまとめていきたいと思います。

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#1 Dietrich, 2009
Sustainabilityとは文字通りだと"the capacity to maintain processes, function, diversity, and productivity over time"という意味ですが、この論文では"a philosophy that promote habitual behaviors that help create a vibrant economy and an optimal quality of life, while respecting the need to sustain natural resources and to protect the environment"という風に定義づけられています。長いですね。つまるところ、『自然資源と環境を守りつつ、経済的活気と人生の質を保てるように生きていくための生活習慣を根付けていこうという哲学』ということなんだそうです。生活の質を犠牲にして環境を守るのではなく、両方を成立させる方法を模索する、とでもいうんですかね。
もちろん、我々の職務は医療であり、最優先事項は「sanitation=衛生」ですので、例えば一度使った手袋や注射針をそのまままた使うとか、そういう形のリサイクルは絶対に許されるものではありません。しかし、例えばアイスバッグを再利用可能なマテリアルのものにするといったような工夫は十分可能ですよね。「適切な環境下で、持てる全てのresourceを最有効活用する」ことこそがsustainabilityの実践なのです。
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され、アメリカのスポーツというのは「エコ」というところからある意味一番遠いところにいるような気もします。アメリカに現存する至高のエンターテインメントのひとつであり、「無駄」も「贅沢」として楽しまれているからです。大きな試合のtailgateなんかに参加したことのある方ならわかりますよね、そこらへん泥酔のお祭り騒ぎ、食べ残しに飲み残しが散らかって、ゴミがあちこちに溢れていますから。

この論文では、ATが主体となってAthletic Departmentに"Sustainability Committee"を設立することを推奨しています。そして、組織的に「Go Green=環境にやさしく」なるために、やるべきことは3つあると述べられています。

1) Research What Other Schools Are Doing/他の大学がどんな取り組みをしているか調査する。
例えば、University of Colorado at Boulderでは1970年から学生が中心となってEnvironment Centerという組織を形成し、環境問題情報の共有と大規模なリサイクル活動に取り組んでいるそうです。大学のフットボールの試合でも"Zero Waste (無駄ゼロ)"活動を行い、試合で出たゴミの80%(なんと40トン!)をリサイクル、再利用、もしくは堆肥化することに成功。さらに、自転車での来場を推奨する"Free Bike Valet(おまかせ駐輪無料)"サービスも展開し、車での来場者も劇的に減っているそうな。
University of Wisconsinでは、ひとりの学部生が教授らの協力を経て、スポーツの試合、ひと試合で生まれる二酸化炭素などの温室効果ガスの量を測定(carbon footprint、チームや観客などの移動、試合中のエネルギー消費などに基づいて計算)。そして、その(1,170トン)二酸化炭素を相殺するに足るだけの木々を地元や州の農協などと協力して植林し、「保護森林地区」として制定、"carbon-neutral condition"を作り上げました。
Athletic Departmentが主体となって行っている環境キャンペーンには、University of Wisconsinの"Wear Red Think Green"キャンペーンというのが有名です。ゲームデーメディアで積極的に環境問題に関する提言をおこなったり、試合の日に積極的にリサイクルしたり。「3-5年以内にはティッシュは全て100%リサイクル古紙のみを使うようにする」や、「試合の送迎シャトルを増やす」などなど、長期的なプランも含めて腰を据えてじっくりと進んでいるプロジェクトです。加えて、Athletic Departmentのスタンダードモデルを作るべく、現在NCAAとYale大学が提携して"best practice in sustainability for athletes"を形態化しようとしているところなんだとか。ふむ、この論文は数年前のものだけど、形になっているのかな?むくむく興味が出てきます。

2) Initiate a Sustainable Project/環境保護プロジェクトを始める
知った後は、何かを自分でも始めることです。誰もが始めやすいものとして良い例が、Nikeの"靴リサイクルプロジェクト"。もう使わなくなった靴をNikeに送り返すとその靴をリサイクルしてくれるそうで、既に2250万もの靴が集められたとか。コカ・コーラ社とEPA(Environmental Protection Agency、アメリカ環境保護庁)が提携しておこなっているRecycle Mania Competitionという取り組みも。 10週間という時間的括りの中で、どんな環境保護キャンペーンをおこなっているのか、全米各地の大学(参加校は全米400を超えるとか)の取り組みを競争形式でランク付けするんだそうです。

3) Be an Advocate Who Leads by Example/まずは自分が模範役に
大学規模の取り組みは大事ですが、もちろん個人個人のレベルでどんなに小さなことでも始める、続けるということも等しく大事です。私の母校、University of Floridaでは卒業生が自主的に「緑の誓い(Green Graduation Pledge)」を述べる機会が設けられているのだとか。意思表示をしたい卒業生は、卒業式に胸に緑のリボンをつけ、「これからの人生の選択をする際に、環境問題を念頭に置きます。この大学で学んだことを、これから私が学び、働き、生きていくコミュニティーのsustainabilityを増やすために使います」と誓うんですって。私が卒業した年(2009年)にはなかったから、最近の試みなのかしら?面白いですね。
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#2 Dietrich, 2009
Part 2のこの論文では、冒頭で「アメリカ人は人生で平均して成人の体重x600倍のゴミを生み出す」という恐ろしい統計をシェアしています。そこから改めて、医療従事者として、そして多くの若者の確かな情報源としてATはsustainabilityを謳う最適なリーダーであると言及。我々がすること、しないことは多くの人に見えているし、ATが「持っているものを最大限に使う」ことに長けているという点は、個人的にもかなり納得です。

●Reduce, Reuse, Recycle, and Buy Recycle!
できる限りのものを電子化して、paperlessへ。ミーティングの資料もメールやパソコン、プロジェクターで共有し、紙の消費を減らす(reduce)。試合の際、紙コップを使わずにボトルやカウを使用する(reduce)。テーピングの代わりにサポーターを使うのも資源には優しいですね(reduce)。使用した紙コップや空のペットボトル、段ボールなどはリサイクルへ、一定保存期間が過ぎた医療記録もシュレッドしてリサイクル(recycle)。デスクカレンダーは使用した後、小さく切ってメモパッドに、ぷちぷち緩衝材は足のリハビリ器具に(reuse)。あと、結構忘れられがちなのが「リサイクル商品を選んで買う」という努力なんですって。なるほどー。

●Be Smart About Transportation
ゴルフカートなどを乱用せず、必要ない時は歩くとか、あとはガソリンで動くものではなく、太陽電池や電気充電タイプの乗り物を使用するのもいいですね。教育で言うと、オフキャンパスの移動の際になるべくcarpoolをしていくとか、最近ではZipCarという「燃費のいい車の時間毎のレンタルサービス」っていうのもあるんですって。知らなんだ。

●Conserve, Don't Consume
電灯を普通のものからCFL電灯に変えるだけでエネルギー消費が75%削減できるとか、「部屋を出る最後の人が電気を消しましょう」と注意書きをしておく/Motion Detector式の電灯にするとか、パソコンは5分触らなければ画面が消える設定にしておくとか…定期的に不要なメール履歴を削除することでデータ容量が増えたりも(個人的には消しすぎないよう気を付けたほうがいいと思いますが)。手や食器を洗う際に水をこまめに止めたり、手を乾かす際にペーパータオルではなく空気乾燥機にするなどもできますね。

●Teach Sustainability
未来のATにこういったことを教え込むことも重要。Administrationの授業などで教えられるのが最適かも。
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#3 Potteiger et al., 2014
最後はこの論文。環境破壊の影響で増えてきているスポーツ障害の例として、heal illnesses, asthma, respiratory disorders, nutritional deficienciesを挙げ、「2012年の調査によれはATの多くはenvironmental sustainabilityに対しての知識もあるし、積極的な姿勢を見せているものの、プラスチックや水、紙の使用などでまだまだ我々が改善できる点が多くある」と指摘。

●Effects of Heat
地球温暖化が進むにつれ、低外気温が理由での死亡率は減り、郊外気温が原因で起こる死亡率は上がることが予想されます(まぁ当たり前なんですけど)。外気温が上がることで最も影響を受けやすいと言われているのが高齢者と女性。精神疾患患者、子供、暑さの影響を受けやすい職業の人と持病持ちの人も同様にリスクが上がると考えていいでしょう。

●Effects of Air Pollution
空気汚染で悪化が懸念されるのが喘息とアレルギー。中でもメジャーな空気汚染物質の6つのうちの2つ、オゾンと二酸化酸素の増加と喘息とその他呼吸器系の疾患の発生率は密接な関りがあると追われています。特に空気の状態が悪い日や時間帯に、例えば喘息持ちの選手は外での練習を避け、締め切った室内で代わりにトレーニングを行うなどの介入をする必要がこれからは増えてくるかもしれませんね。

ひとつ前の論文同様、こちらでもATが率先して環境問題に取り組む基盤を作っていくことの重要さを強調。既に環境問題担当のCommitteeがあればそちらと提携して、もしないならば組織の上の人間にそういったCommitteeの設立を提言することが大事だと書いてあります。一度基盤ができたら、現在ATスタッフで取り組んでいる環境への取り組みと、これからもっと改善できることを列挙し、何をとにかくすぐに取り組むべきか、どれをもう少し長い目で見ていくべきか…優先順位を付けるとよいそうです。現在のエネルギー消費やコスト、廃棄の量などを把握するために、Facility Managerに連絡を取ったり、企業などにEnergy Audit(施設全体でどのようなエネルギーがどのように消費されているのか分析する)を依頼したりする必要もあるかもしれません。現状のデータがあってこそ、そこから先の取り組みの成果が見えてくるものなので。

a) 施設のACの設定温度を変える、b) パソコンや、モニター、物理療法器具などの電源をこまめに切る、c) 一日の終わりに道具のコンセントを抜く、電気を消す、d) 物理療法器具の定期評価、必要があれば買い替えをする、…などを通じてエネルギー消費削減への取り組みを深めたり、あとはやっぱりMotion Detector式の電灯はいいみたいですね、10-40%のエネルギー削減になるんだとか。必要なもの以外はプリントアウトしない、などもやはりここでも言及されています。こうすることで紙はもちろん、電源やプリンターのカートリッジも長持ちしますしね。パソコンやコピー機も、場合によっては購入せずレンタルしたほうが安かったり、無駄も無かったりするみたいです。

さて、この論文後半ではATデパートメントで環境保護に特化したポリシーの成立をすべきである、そして、他の論文でも述べられているように、reduce, reuse recycleに取り組むべし、と推奨されています。紙コップからボトルに、というのは特に目新しいものではないですけど、他に進言していることとしては、飲み残しの水やスポーツドリンクを氷を足して低い温度に保ち、翌日の練習に使う、や、whirlpoolやcold tubsに使った水は、棄ててしまう代わりに、植物にやる水に再利用する、などもすべきであると書かれています。なるほど、確かに家でもお風呂の残り湯で洗濯したりしますもんね。紙もそうですが、ATクリニックではプラスチックの利用もかなり多いので(plastic bags, plastic wraps)、そちらのリサイクルも取り組むべきであると述べられています

ATで取り組む環境問題…。恥ずかしながら、あんまり考えたことはありませんでした。それに、「アメリカは無駄を何とも思わない国だ」というところを受け入れすぎていたのかも。例えば建物は基本、夜間ずっーーーーーと電機は付けっぱなしとか(防犯のためらしいです、お店なんかもずーっと電気ついたままなので渡米当初はびっくりしました)、クーラーもバカみたいにガンガンとか(アメリカ人のほうが基礎体温が高い、何ていいますけど、本当なんですかね?でも私が凍えていても、けろっとしているのがアメリカ人です)、そういうのがこの国の文化なんだから、部外者の私がやいやい言うことでもないんだろう、と思っていたので…。こうした活動、これからも広まるといいですね。今度はATに限らず、医療従事職の他分野のお仕事についても読んで学んでみようと思いまーす。

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  by supersy | 2017-02-20 23:00 | Athletic Training | Comments(0)

KTテープ文献レビュ―その3。

って、KTテープじゃない文献も入ってきてるんですけど、そこはご愛敬。
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#7 Mey et al., 2012
こちらはベルギーの論文。王室御用達ベルギーチョコレート食べたい。SIS患者では筋肉の活性のバランスの乱れ、そして発火のタイミングの遅れが見られるということから、リハビリによる介入の可能性を示唆。リハビリとModalityの併用の研究などは過去にあるが、リハビリそのものをin isolationで検証したものはないよね、ということでのこの研究です。Overheadスポーツをする軽度(まだ運動ができる程度)のSIS患者に限って、6週間のエクササイズ介入をし、その結果を追っています。

研究タイプ: Case series (Control groupがないのは痛い)
被験者: 47人(男性25名、女性22名、平均24.6 ± 7.81歳)の、「週に平均で6時間はcompetitiveなoverhead sports(バレーボール、テニス、カヌー、水泳、バドミントン)をしている」というアクティブな人たちが対象 (年齢層、アクティビティーレベル共にrelevant、ただ、週に平均6時間という中途半端な練習量が気になる…アスリートにしては少なすぎる)。競技歴は平均6±1.5年で、症状は最低3ヶ月以上続いていたものの、総じて症状は軽く、競技は継続可能だったため、研究開始時点で医師の診察を受けた人数はゼロ、time lossもゼロだったそう(痛みはあるけど競技ができないわけじゃない…こういうケースはATとしては一番対処が難しいので、この研究設定は興味深い)。このサンプルサイズはこういう結果を確認する前提で決められました…という「見たかった結果」の記述はしっかりとしているところと、15% dropoutを見こんだところは評価できるが、実際その計算の結果何人が必要と出て、今回実際に被験者となった47人という数字がその基準を満たしていたかどうかは説明がない。いや、恐らくしてるんだろうけどそこはちゃんと書いてほしい。
Inclusion Criteria: 以下の5項目のうち最低2項目が当てはまること ― 1) (+) Neer sign; 2) (+) Hawkins sign; 3) (+) Jobe's sign; 4) Apprehension testで痛みが伴う; 5) Relocation testで痛みが伴う(ApprehensionとRelocationは前方不安定症のテストであり、SISのテストとして使うにはvalidityが不十分、それに、Relocationで陽性になるにはApprehensionも陽性であるのが条件と考えれば、これらの要素は独立していない。基準を本来のapprehension = 陽性ではなく、痛み = 陽性と変えているところも主観的で、何故それを基準にしたのか説明とrationaleが不十分。"No subjects were included in the study based on the last 2 criteria alone"と文中に追記はあるが、私の解釈が正しければそれは結果論であり、理論上は4)と5)で痛みが伴えば研究に参加可能だったことに変わりはない)。加えて、Resting Scapular PositionとScapular Dyskinesisがある患者のみが研究に参加可能 ― Scapular Dyskinesis Testを行い、Uhl et alの推奨するyes/noの基準を元にScapular Dyskinesisの有無を検査したとあるが、このテストは(私も臨床で使っているからこそ言わせてもらうと)Sensitivityは76%、Specificityは30%とestablishedされたテストというわけではないし、これは動的な異常(= Scapular dyskinesis)を計るテストであって、resting scapular positionを計った方法は一切記述がない (Lateral Scapular Slide Testなどをどうして入れなかったのか?)。
Exclusion Criteria: 肩の脱臼歴、肩の手術歴、頸椎損傷疑い、NSAIDsを摂取している(一定期間以上?過去何週間にまで遡る?)、過去12ヶ月以内にステロイド注射を行っている(肩に?それとも他の部位を含む?)、肩のelevationのROMが欠けている、もし他のリハビリを既に開始している場合は対象から除外される(これらの既往歴は患者本人に尋ねたのか、それとも医療従事者に確認を取ったのか?)。
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リハビリエクササイズ: 被験者は6週間、上の写真の4つのエクササイズを毎日続けた (軽度の障害に対して、6週間という介入期間は長くないか?現場での実用性はあるのか?)。10回を3セット、セット間に1分間の休憩を挟みながら。1回目のセッションで直接PTによる指導を受け、各エクササイズの説明イラストを受け取ったのち、残りの運動は自宅で各自で行う(文中にはホームエクササイズも監視下で行うエクササイズも効果は同じという研究を引用していたが、果たして?)。正しくエクササイズを行えているか、適切なprogressionを踏んでいるか確認するため、第2週と4週時にクリニックに来院してもらうか、PTと電話で話す機会が設けられた(来院は強制すべきだったのでは…電話では正しくエクササイズを行えているか確認できるとは思えない)。エクササイズ中の痛みはVASで5/10までならオッケー(軽度の障害で5/10の痛みというのもそこそこ高いのでは…、痛みを伴うということは特定の患者は好まないエクササイズということになる)、それ以上なら負荷を減らし、regressする、という流れ。きちんと運動をこなしていることを確認するために、被験者はcompliance logをつけていた(どういった形式のものなのかは不明、結局のところself-report)。"repetitive overload"を最小限に抑えるために、エクササイズを行う順番は毎週変えた(Week 1: 1→2→3→4、Week 2: 4→3→2→1、Week 3: 1→4→2→3、Week 4: 4→1→3→2、Week 5: 1→3→2→4、Week 6: 4→2→3→1…しかし、これでrepetitive overloadが避けられるという理屈を教えてほしい。結局やっている運動は同じなのだから、総負荷は同じだと思うが?)。実験期間中、被験者はスポーツを続けるのは認められていたが、"additional upper limb strength training"は禁止されていたとのこと(その定義は?実際に上肢のトレーニングを行っていないことはどう確認したのか?)。

Outcome Measures: Shoulder Pain and Disability Index (SPADI、13項目の質問、0-100点で評価し、点数が高いほうが機能制限も高い、validity & reliabilityは過去の研究によってestablishされている、MCID 8-13.2点)とnormalized EMG (upper trap, middle trap、lower trap、SAに装着)…1) それぞれの筋肉に対してMMTしながらそのmaximal voluntary isometric contractions (MVIC)を計測 (ICC = 0.96-0.99)、加えて、2) 負荷なしScaptionをconcentric (腕を上げる), isometric (上げ切ったところでhold), eccentric (腕を下げる)のphaseでそれぞれ3秒間かけて(メトロノーム使用)行った場合の各筋肉のEMGも記録(↓写真、このelectrodesが筋活性に影響を与えた可能性は?)。この研究ではpre-trainingの結果を知らない研究者がデータcollectを行った(= blinding)とあるが、Control groupがないのだからblindingの意味もほとんどないと思われる
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Results: 47人の被験者で始まったこの研究だが、7人がdropout (7/47 = 14.89%、これはこの研究では想定の範囲内)。4人は「プライベートな理由」で(詳細不明)、3名は痛みが悪化したから(これはこの運動で悪化した可能性も否定はできない、Control groupがないのでnatural historyかどうかも分からない。記述がないことから、この研究ではITT分析を使わなかったと予測される。その場合、これらのデータをただ無かったことにするのはバイアスの危険性を高める)。実験を完了した40人のうち、12人は再来院をせず、電話のみでコミュニケーションを行った ― この12人は「特にこまめに」連絡を取り続けたというが、やはり来院と電話では隔たりがあるように思える。Compliance logを提出したのは68%の被験者に留まった(少ない。また、compliance logの結果どの程度患者がcompliantだったかは報告がない)。報告されたresultには95%CIがついておらず、統計的決定性は不明
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SPADI ― スコアは平均で、29.86 ± 17.03から11.7 ± 13.78 (p < 0.001)に減少。6週間が経った段階で、被験者40人のうち7人(17.5%)がSPADI 0点に(機能制限ゼロ)。統計的、臨床的(MCID= 8-13.2)にも有意義な改善に思われるが、Control groupが無いため、どこまでがnatural historyなのか判別不可能
EMG (MMT) ― 上テーブルにあるように、最大筋出力という観点から、統計的に有意な改善が認められたのはUpper (p = 0.003), middle (p = 0.026), lower trap (p = 0.003)の3つの筋肉のみで、SAの活性レベルの上昇は統計的に有意ではなかった (p = 0.285)。イマイチEMGの臨床的有意性がわからないのよね、私の知識不足なのかもしれないけど
EMG (Scaption) ― 最大筋力は改善が見られたtrap筋群だが、scaptionの腕の上昇中の筋出力は3つのtrap全てにおいて減少していた(p = 0.43、筋肉がより効率的に収縮できるようになった?)一方で、SAに関してはscaption中の筋活動の減少は認められなかった(p < 0.05)…とあるが、p-valueが逆では?これだと、trapの変化が見られず、SAが統計学的に有意な変化があったということになり、文章と矛盾が見られる。これは、UT/SAの活性化率がトレーニング後には腕の上昇、停止、下降時のいずれの時も著しく減少した(p = 0.005、つまり、UTの活性度が低下したのに対してSAの活性が上がり、より理想的な筋収縮のratioがrestoreできた)ことからも、「矛盾」と捉えられる内容だが…。同様に、「UT/MT, UT/LTの活性率には変化がなかった(p < 0.05)」という記述も矛盾が…p > 0.05では?
筋発火のタイミングに関してはトレーニング前後で変化は見られなかったが(p = 0.69)、scaptionという動作において、異なる筋肉が異なるタイミングで発火されることは明確に(p<0.001)記録できた。腕を上げる際、まず真っ先にSAが活性化され、その約0.25秒後にLTが、その更に0.4秒後にUTとMTが同時に発火されるようである(↓Posterior Deltoidと比較=0した場合の各筋肉の発火のタイミング。正直この研究ではこのfindingが一番おもしろい!ただ、発火のタイミングに関しては様々な研究でやれUTが先だ、いやいや、MTも早いとか、consensusは今のところないそうだ)。
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結論: 6週間のホームエクササイズにより、肩の機能は著しく上昇、UT, MT, LTの最大筋出力、つまりポテンシャルは上がったもの、負荷の無いscaptionという単純な作業中の筋出力は低下した、つまり、簡単な動作を最低限の出力で行う、能率の良さが身についたと言える。SAの活性化は大きな変化はなかったものの、UTの動作中の活動は低下したため、相対的にUT/SAの筋活動のバランスがより最適化した。筋肉の発火のタイミングはこのエクササイズでは変化が見られなかった。結果自体は面白いのだが、Controlがないため、個人的にこの研究の臨床的な意味はあまり感じない。RCT希望
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#8 Henri, 2015
これはフィンランドのSatakunta Universityという大学に所属していた学生の書いた学士論文ですね。学生として、SIS患者へのKTテープの知識・実践をどの程度持っていればいいか、みたいなちょっと変わった切り口の論文です。研究ではなく、narrative review。

このまとめによれば、KTテープの大きな効果は4種類: 1) 筋肉のサポート、2) 体液の流れのつまり(congestion)の除去、3) 痛みの減少、4) 関節の(ポジションの?)修正。テープを実際に貼る際は、
 1) 肌にオイルやローションがついてないことを確認
 2) テープを適切な長さに切る
 3) Y, I, X, Fan, Web, Donutのいずれかの形に切り、角を丸める
"Y"…筋活性にも抑制にも使用可能。大きな筋肉や、複数の筋肉をカバーするのによい。ターゲットを包むようにapply。
"I"…急性の筋損傷向き。ひとつの筋肉をターゲットとし、包むというよりは直接その上にapplyする。
"X"…originとinsertionが動作によって入れ替わるような筋肉や、ふたつの関節をcrossする筋肉に適している。
"Fan"…腫れ向き。アンカー部分をductに、腕をlymphatic drainの方向に伸ばすように貼る。
"Web"…Space correction向き(意味が100%分からないのだけど、lymph用のスペースができるってことかな)。
"Donut"…同じくSpace correction向き。真ん中の空洞に治療したい部位を持ってくる。
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 4) アンカーとなる部分(i.e. Yの場合は一番下の根本部分)にはテンションをかけずに貼る。
…というのがどのテクニックにも共通したルール。Contraindicationとしてはopen wound, unhealed scars, neurodermatitis, psoriasis…それから、妊娠後期に性器周辺に貼ることは禁止だそうだ(むしろ後期じゃなければいいのか?)。あとは、テープやテープの接着素材にアレルギーがある場合も。

Muscle Technique (Y, I, or Xテープを用いるのが一般的)
筋抑制が目的の場合はInsertionからOriginへ、活性したい場合はOriginからInsertionへ貼る(近年起始停止というコンセプトは使われなくなっていると思うが…?)。アンカー部分となるテープ両端はそれぞれ起始停止を越えた部分に、5cmほど、テンションかけずに貼るべきである。貼る際は、筋肉を最大限まで伸ばしながら、Kase氏よれば抑制なら15-25%ほど、活性なら25-50%ほどテープにもテンションをかけつつ貼るそうだ…が、10%のストレッチで十分だという研究者もいる。

Fascia Correction Technique
Y stripをFasciaを動かないようHoldするか、より望ましい場所に導く目的で使う。

Ligament/Tendon Correction Technique
損傷したり、overloadが起きている腱・靭帯に対してmechanoreceptorを刺激するために使う。Ligamentなら25-75%のテンションを、tendonなら>50%のテンションをかけ、方向は自由ではあるが抑制目的ならinsertion → originで貼ることが推奨されていたりもする。真ん中から初めて、両端に伸ばしていくような貼り方もOK (しかし、両端のアンカーは伸ばさないよう気を付ける)。

Lymphatic Technique
肌を引き上げ、リンパ液や血液の流れを促進させるのが目的。

SIS用のKTテープ
SupraspinatusとDeltoidにMuscle Techniqueを使って抑制をかけ(insertion → origin)、さらに周辺のFasciaにFascia Correction Techniqueを作ってスペースを広げるのがKase氏の提案するSISテープ。…で、これが今まで言及されたようなThelen et al, Kaya et al, Hsu et alさんなんかが検証してますよーと。うーん、使ってるテープはいちいち違うんだけどなー。

結論: 結論というか、ただのKTテープとは、という紹介の記事なので特に特筆することはなし。やはり、「そんなにSISのテープがKase氏によってスタンダード化されているというなら、なんでこんなに各研究で検証されているテープが異なるの?」というところの疑問は消えない。
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#9 Wong et al., 2012
この論文ではKTテープを膝に貼った場合と貼らなかった場合の筋活動を検証。

研究タイプ: Cross-over (前述通り、個人的にCross-overは嫌いではない…同一のグループがExpにもなりControlにもなる), random order of treatment (コイントスで決められた、KT→テープなし, or テープなし→KT)、no-placebo
被験者: Power Analysisに基づき、とある病院に勤務するスタッフ30人(男性14人、女性16人、平均28.4 ± 4.7歳。分析の結果、最低30人いればよかったのか?明記はされていない)を被験者としてリクルート。
Inclusion Criteria: 筋骨格系や心肺系の疾患がなく、関節の痛みやその他の症状が過去12ヶ月にわたってないこと(これはどう事実確認を行ったのか?self-reportの場合、recall biasなどのリスクは?)。あくまで健康な被験者なので、怪我をしている患者で同じ結果が出るかは不明
Exclusion Criteria: 特になし
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テーピングはKase氏による公式ガイドラインからそのまま引用したもので、股関節を30°、膝を50°屈曲した状態から、KTテープをVMに沿ってoriginからinsertionへ75%のテンションをかけて貼る (= facilitation effect)。テンションのかかり具合はanthropometricを使って計測し、同一人物がテーピングを一貫して担当

Outcome Measures: Biodexを用いての最大Knee extension & flexion (concentric) 筋力測定 (peak torque = 10回の筋収縮で記録された最大筋出力の平均値、normalized; total work done = 10回収縮合計の総エネルギー消費量、normalized; time to peak torque = 全てのトライアルで、最大筋出力到達までにかかった時間、をそれぞれ記録)。各被験者のテスト前にcalibrationをおこなった。股関節の角度や他の関節の固定、練習回数など、手順はスタンダード化済み (ICC = 0.82-0.95)。Carryoverをなくすため、2セッションの間は最低でも7日間あけていた。しかし、あくまで椅子に座った状態の計測であるため、実際のfunctionalな筋出力と同等とは解釈ができない
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Results: テープをしてもしていなくても、膝の屈伸・伸展共にpeak torqueに大差は見られなかった(p≥0.37)。Total work doneは、p < 0.05を「統計的に有意」と設定しなおすと(この研究ではp < 0.01としているようなので、上のテーブル参照)、伸展60°ではテープをしたほうが総労力が下がる傾向(trend, p = 0.07)が、120°と180°では著しい減少(p = 0.04, p = 0.03)が確認できたが、ANOVA分析によるinteraction効果に関しては統計的に有意な差は認められず(p = 0.24)。屈曲は一貫して変化が見られなかった(p≥0.63)。
Time to peak torqueはというと、テープをしたほうが伸展のpeak torqueにかかるまでの時間が著しく減少(p < 0.01、ANOVAで測定したinteractionもp = 0.03、時間にして36-101ms速くなった)、屈曲は変化が見られなかった。36-101msという差はスポーツパフォーマンスだったら大きな差になるのかなケガの予防にもつながるかも (VMOの発火がVLに比べて3.4-10 ms遅れるだけでPFPSになりやすいという研究もある)

結論: KTはどうやら健康な人間の筋出力を上げる効果はないが、恐らくtactile inputを増やし、皮下のmechanoreceptorの刺激を上げることでVMの発火を早める効果があるようである。しかし、ケガや痛みのあるアスリートでの再現性と、(テープ直後の計測だったため)効果の持続性は不明。また、Controlがなかったため、効果がplaceboであることも否定はできない
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#10 Williams, et al., 2012
最後はKTテープが外傷治療・予防にもたらす効果のMeta-analysis。

"kinesio taping/tape"のキーワードでデータベースを検索、96つの文献から、Inclusion/Exclusion Criteria: 1) 筋骨格系障害に関連したoutcomeを報告している(i.e. pain, ROM, proprioception); 2) 比較グループがある(i.e. KT without tension, placebo taping, no taping); 3) 英語でfull textが入手可能…に当てはまる、10の文献を分析。

10つ全ての文献で1) control groupがあるか(これはinclusion criteriaに入っているのでyes前提)、2) random allocationが行われていたか、3) 被験者のblindingが行われていたか、4) 試験者のblindingが行われていたか、に基づき、それぞれ人項目当てはまる=1点加点、という要領で研究の質を1-4点でランク付けした。これも沿って紹介することとする(研究の質を推し測るにはかなりsimplifyされすぎという気もするが…PEDroをなぜ使わなかったのだろう)。

痛み: 意外なことに、痛みに関して統計的に有意な差が認められたのはGonzalez-Iglesias et alのひとつの研究(Quality 4点)のみ。それでも、変化の度合いはテープ直後で0.9 ±0.2、24時間後には1.1 ± 0.3と、MCID (=2)に満たなかった。もうひとつの研究、Thelen et al(4点)でも痛みに関しては統計的に有意な変化は報告されず。つまり、痛み軽減の効果はtrivialであると言える。

ROM: 10の文献のうち、4つがROMに関しては統計的に有意な改善が見られたと報告。Thelen et al(4点)は9つ図ったROM measuresのうちのたったひとつ、肩のpain-free abductionが1日後に19.1 ± 10.8°増加(MCID = 15°)したと報告されており、これをlikelihoodに換算すると「74%の確率で臨床的に小さな利益がある」と言える。統計的に有意な差はなかったものの、3日後には「58%」、6日後には「30%」の効果がある可能性があるそうな。つまり、pain-free肩外転を即座に増やすのには有効か、しかし、長期的な効果は期待できないかも?という結論が出せる
Gonzalez-Iglesias et al(4点)の研究ではテープ直後と24時間後の頸椎の動き全6方向を測定、その全てで統計学的に有意な改善が見られている。一方で、MCIDは方向によって屈曲9.6°、伸展7.0°、右側屈5.9°、左側屈9.1°、右回旋7.6°、左回旋6.7°と既存の研究によって示されており、それと比較すると12Measures中8の増加がtrivialでしかないことが見えてくる。つまるところ、KTテープで頸椎のROMはテープ施術直後、24時間後共にほとんど臨床的意味がない程度しか増加しない、と言える。
Hsu et al (3点)の研究ではSIS患者の野球選手においてKTテープがScapular orientationに及ぼす影響を調査。Scaption @30°と60°でPosterior tiltに関してのみ統計的に有意な変化が認められた。MCIDが過去にestablishされていないので、Baseline段階での0.2の差をそれと仮定すると、Posterior tiltに関しては臨床的に有益な効果があると言える。しかし、他の動き(残りの19 measurements)に関してはtrivialな変化というだけでなく、うち8 measurementsに関しては有害な変化がある可能性も…総じて、KTテープのScapular orientationへの効果はtrivialかpossibly harmfulであり、お勧めはできない
Yoshida et al (2点)の研究では、健康な被験者でKTテープの胴体の屈曲、伸展、側屈ROMを検証。屈曲に関しては90%の確率でsmall effects (平均17.8cm、MCID 6.4cm)が起こると言える(6.4cmがMCIDで17.8cmってかなり大きくないか?)。伸展と側屈は統計学的に有意な変化なし。
さて、全てを総合して考えると、「ROMへの効果はまだよくわからない(unclear)」としか言えなさそうである。小さく、短期的な効果が認められるものもあれば、効果は無視できるほど微々たるもの、場合によっては有害という恐れもある。現段階で、筆者たちはROMの改善にKTテープの使用を推薦していない

筋出力: 10の文献のうち、4つの研究がKTテープ使用によるStrengthの改善を示している。Hsu et al (3点)の研究ではKTテープの使用でLower Trapの筋出力の増加(1.2 ±1.0 kg)が認められ、これはCohen's d = 0.2 = ±0.7kgと比較しても「81%の確率で、最低でも小さな程度の臨床的有意さを伴う効果がある」ことが言えそう。
Lee at al (2点)の研究では、健康な被験者でのgrip strengthの変化を計測。屈曲筋群にKTテープを使用した場合、しなかった場合と比較して統計的に有意な筋力の増加が見られた。こちらも臨床的に有益なgrip strengthの増加が期待できると言えそう。
Vithoulka et al (2点)の研究ではKTを大腿四頭筋にapplyして"concentric isokinetic exercise," "eccentric exercise"と"eccentric isokinetic exercise"の3種類のpeak torqueを計測(eccentricとeccentric isokineticの違いってなに?)。"eccentric exercise"のpeak torqueが上がったと報告されたが、placeboとnon-tapingとも比較してみると、どうやらplaceboの効果が大きいようである。このメタ分析では「97%の確率でeccentric exerciseのpeak torqueにはtrivialな効果しか生まない」と結論付けられている。"eccentric isokinetic exercise"と"concentric isokinetic exercise"はというと、「eccentric isokinetic exerciseは64%の確率で最低でもsmall clinical benefitが、concentric kinetic exerciseは41%の確率でtrivialな効果がある」という統計が示されている。
Fu et al (2点)の研究では健康な大学生を対象に、KTテープを使って「79%の確率でテープを貼った12時間後にQuadsのconcentric contractionの筋出力増加に小さな効果がある」と示された。そのほかは特筆する有意さはなし。31.5%の確率でQuadsのeccentric contractionが上がるかも?というのがあったくらいで。
最後、Chang et al (3点)では健康な大学選手21を被験者としてKTテープあり、なし、placeboテープとで比較したが、grip strengthに関して統計学的に有意な変化はなし。
全ての研究を踏まえて、今のところKTテープが筋出力を小程度(small beneficial effect)上げるというエビデンスが多少(some evidence exists)存在するということが言えそうである。

Proprioception: Chang et al (3点)の研究ではGrip Strength Measureにおいて、KTテープを用いれば95%の確率でabsolute force sense errorが最低でも小程度減少、93%の確率で最低でも小程度、related force sense errorsが減少することが示されている。一方、Halseth at al (2点)の研究によれば、足首にKTテープをしてもPflex, inversionのposition senseに変化はなし。この項目に関しては、結論付けが難しい…

Muscle Activity: Hsu et al (3点)ではscaption時に「92%の確率で60-30°の腕の下降中にLower Trapの活動がi著しく上がり(MCID10%の変化に対して14 ± 12%)、80%の確率で90-120°の腕の上昇中にUpper Trapの活動が著しく下がる」という結果が。Slupik et al (1点)の研究ではVMの筋活動がテープ後24時間後に54%増加、この変化は72時間後にも22%保たれた(10分後、96時間後の変化はtrivial)。この研究はplaceboもない、crossoverもしていないということで結果が読み取りにくい。今のところ筋活動に関してはどうやら大きな効果がありそうだと言いたいところではあるが、まだまだ質の高い研究を見てみないとわからない。

結論:
1) KTは筋出力、force sense errorの減少、そして怪我部位のAROMの向上に小規模な利益が期待できる
2) KTは痛み、足首のproprioception、muscle activityなどの改善をサポートするのに十分なエビデンスはまだない

ふーむ…色々とKT関係の文献見てみましたけど、例え同じ部位、同じ障害の患者さんでもKTテープの貼り方が異なっていたりで、様々な研究同士を足すことすらもままならないのがもったいない。ありがちかもしれないけど、「より高い質の研究がもっと必要」の典型例ですね。ただ、私としては総合してもadverse effectは超短期間の肌の発疹やかゆみなどで、比較的軽度であるということと、他の治療法がとことん失敗したときにKTテープを貼ったら一気に痛みが取れた、機能が劇的に向上した、というケースも数件以上目にしてきているので、KTテープはこれからも私のツールボックスに残しておきたい道具のひとつ。それぞれの文献、もう一回読んでみようっと。

これでKTテープシリーズは終わり。次から別のテーマで10個文献レビュ―します。

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  by supersy | 2017-02-18 18:30 | Athletic Training | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル3月号発売 & KTテープ文献レビュ―その2。

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月刊トレーニング・ジャーナル3月号が発売になっています!連載10回目の今回は「より長く、生き生きとしたアスレティックトレーナーであり続けるために」というタイトルで、献身さの度が過ぎるあまり、自らブラック職場環境を作り出しがちな我々AT業界の文化について書いています。仕事のために生きるのではなく、仕事と共に生きていく―恐れながら、こうしたらより長く、楽しみながら仕事ができるんじゃないでしょうか?という提案をしてみたりなどしています。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



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さて、ここからは前回の続きです。
#4: Thelen, Dauber, & Stoneman, 2008
やっとでてきました、アメリカの文献。

研究タイプ: RCT, double-blinded, placebo-controlled
被験者: 軍の病院施設に肩の痛みを訴えて来院した、SIS/RC腱炎の患者(軍の訓練生で現役の大学生、18-24歳)42人 (軍隊系の論文はvariableのコントロールが行き届いていることが多いのでいいですよね、というのは勝手な私見かな)が対象。Random-number generatorを用い、被験者にもグループアサイメントが分からない状態(= blinded)を作った。Power Analysisによれば各グループ26人の被験者が必要だったようだが、被験者数はそれには満たず。KT Groupに所属した被験者は21人 (21.3±1.7歳、男性19名、女性2名)、Sham KT Groupも21人 (19.8±1.5歳、男性17名、女性5名) 。総じて男性が多く(85.7%)、女性患者にこの研究結果がそのままapplyできるかは不明。年齢、男女比、肩の状態などのグループ差はbaselineでは見られなかったと文中記述があるが、p値がレポートされていないため、真偽は不明。個人的には肩の痛みの期間のグループ差(KT Group 19日 vs Sham KT Group 8日)はかなりしっかりと大きい、つまりKT組の肩の状態のほうがbaseline時点でより深刻だったのではないかと思ってしまうが…。
Inclusion Criteria: 運動面を問わず、150°のelevation前に出る肩の痛み(<70°くらいでもよかったのでは?Face validityに欠けているような?); (+) Empty Can; (+) Hawkins-Kennedy; ADLのdifficulty; 18-50歳 (くどいが、これらの診断基準の根拠は?4人の、最低5年は臨床経験のあるPTがスクリーニングしたとあるが、一貫性が無かった可能性も)
Exclusion Criteria: 肩帯骨折; 肩関節脱臼・亜脱臼; AC Sprain; 頸椎障害疑い; 過去12週間以内の肩の手術歴 (12週間は短くないか?); 6ヶ月以上続く肩の痛み (既往歴に関してはrecall biasや嘘の可能性あり。AC sprainなどの除外法は説明がなく、再現性に欠ける)
**つまるところKaya et alの研究のinclusion/exclusion criteriaと酷似。時間軸から言ってあちらがこちらを真似したというのが正確か。唯一の違いは、こちらの研究では1) 年齢制限が20歳狭い、18-50歳 vs 18-70歳; 2) steroid injectionがExclusion Criteriaに含まれていない、の二点。
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テーピングは一人のKTテープ有資格者が一貫しておこなった(良いことである反面、これは同時に資格を持たない一般的なmajorityのセラピストには使えないテーピング術ということにもなる?)。スタンダードな5cm幅のKinetio Tex Tapeを使い、Kase氏の推奨するSIS/RC腱炎のテープを施された ― Yストリップをsupraspinatusに(肩上後部)、Yストリップをdeltoldに、そして20cmのIストリップをcoracoid processからposterior deltoidを包むように横に貼る、というもの。Sham KTテープは10cmの長さのふたつのIストリップを上部と下部に張り付けるのみ。何故このテーピング法をshamとして使うことにしたのか丁寧な説明があるが、その選択経緯には主観的な部分が多いように思う。最後の「実験後に被験者が全員自分のグループアサイメントが分からなかったと証言している」ことから、blindingが守られたところを確認した点は評価できる(これは別にこの論文に限った批判ではないけど、SIS患者という共通の疾患のためのテープなのに、各研究で施しているテープの詳細が異なるのはなぜ?Kase氏がスタンダード化したプロトコルを使っているという割には一貫性に欠ける)。

Outcome Measures: Shoulder Pain and Disability Index (SPADI、13項目の質問、0-100点で評価し、点数が高いほうが機能制限も高い、validity & reliabilityは過去の研究によってestablishされているMCID 10点), 痛みのないROM (flexion, abduction, scapular plane evelationの3点をgoniometerで計測、この研究ではMCIDは15°と設定 根拠は?15°って多くない?)、痛みのないROMのエンドポイントでのVAS(100mm、20-mmがMCID)という3つのアウトカムを、第二著者がグループアサイメントを知らない状態(= blinded)でoutcomeを測定。測定が行われたのはbaseline、テーピング直後、3日後、6日後の4回。Day 6で来院しなかった(lost to f/u)が合計7名(KT3名、14.3% dropout; Sham 4名、19.0% dropout)いたが、これは全員症状が順調に改善し、クラスが忙しくて来院できなかったのが理由だそうで(真実であれば、dropoutの理由としてdataをskewするようなものではない)、取得できなかったデータはITT分析を使って補った
Confounding Variables: NSAIDsを処方されていた患者は指示通りに薬を摂取し続けるように、一方で処方されていない患者には痛み止めを取らないよう指導していたのは、人道的に考えて仕方がなかったのかもしれないが、研究のデザインとしてはバイアスを生む要素になり得る。Activityに関しては「limited-duty」状態に被験者を全員指定し、上肢の運動は(研究期間中の)一週間は"excuse"させた、とあるが、現場の指揮官にその指示は徹底させられたのかは疑問が残る。被験者はテープを48-72日間つけたままにして、各自テープを取った12-24時間以内に再来院(Day 3)して二度目のテープ施術を受けるように指導されたようだが (x 2、Day 6も同様)、施術後その日のうちにすぐに勝手にテープを取ってしまわなかったかなどはself-reportでしか確認しておらず(確認によればして維持か前にテープを外した被験者数はゼロだそうだが)、真偽は不明
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Results: ROMは両グループ共にFlexion, Abduction, Scaption全てにおいて6日間で統計的・臨床的に著しく(>15°)改善したが、グループ間の差が見られたのはDay 1のAbductionのみ (↑平均差 19.1°, 99%CI 1.7-36.5°, p = 0.005)。これはただの想像だけど、95%CIにしてたらDay 3 AbductionとDay 3 Scaptionでも決定的な差は出たのでは?Power Analysisによる「十分な被験者数」も満たしていないのに99%CIというのは少しambitiousすぎるのでは?
VASも両グループ等しく6日間で著しく改善(> 20mm)、SPADIも両グループでDay 3で等しく臨床的に有意な改善 (>-10 decrease)、Day 6でも更なる改善が見られた。
Adverse effectは、2人の被験者に見られたという肌の赤みと痒み(rash)だが、これは深刻なものではなく、テープを取った1-2日後には消失した(Adverse effectを報告している研究は常に評価できる)。
テーピングで改善が見られなかった7人の患者(3 KT, 4 Sham)のうち、6人がその後のMRIでLabral tearであると診断されたのは特筆すべきではないかと思う。そもそもこれらの患者は単なるSIS/RC腱炎患者ではなかったわけで、screening processの信憑性が問われるべき。

結論: この研究によれば、KTテープは「直後に肩外転ROMを平均16.9°向上させるにはいいが、それ以外(その他ROM、痛み、機能)はshamと変わらない」ということが言える。あまりKTテープの臨床的使用価値を感じさせない内容。
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#5: Simsek et al., 2013
この研究はトルコですね。トルコアイス食べたい。

研究タイプ: RCT, double-blinded, placebo-controlled
被験者: 38人のSIS患者(平均年齢51歳、男性13名、女性25名― 平均年齢はアスリートと比較するには高め、女性被験者25/38 = 65.8%)が対象。一人のorthopedic surgeonがレントゲンとMRI診断を使いつつ、SISという最終診断を下した(画像診断も用い、labral tearなど他のconditionをr/oしたのは評価できる)。KT Group (n = 19, 男性8名、女性11名、平均48歳)とSham Group (n = 19, 男性5名、女性14名、平均53歳)にランダムに分けられた。Power Analysisの結果、各グループ最低17人の被験者が必要とわかっており、この人数はそれを満たしている
Inclusion Criteria: 18-70歳; ADLのdifficulty; 症状が>一ヶ月続いている; (+) Neer; (+) Hawkin's (これだけでSISと診断するに足るのか?)
Exclusion Criteria: Calcific tendinitis, degenerative arthritis, abnormal MRI; 肩、手首、胸部の手術; 肩の脱臼・亜脱臼の既往歴; 頸椎間板損傷疑い; inflammatory joint disease; 過去3ヶ月以内のリハビリ経験(今までのExclusion Criteriaに比べて、画像診断内容も含まれてreasonableのように感じるが…)
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テーピングは一人のcertified physiotherapistによって施された。その手法はひとつ前の研究(Thelen et al)と全く同じ。敢えて言うなら、写真を見るだけだと最後のIストリップが少し高めな気がするが?
エクササイズ: 両グループ共通して処方されたエクササイズはHughstonによってデザインされたRC強化目的の6 Exercisesと、Riivaldによってデザインされた、赤いセラバンドを用いたDynamic Scapular Stabilization(それ以上の記述は無し、一応スタンダード化されたもののようであるが)の大別してふたつ。それぞれ5 reps (許容できれば最大15 repsまで増やす)、一日一回、平日ならば1セットもしくは週末2セット、合計2週間繰り返した。記述がわかりにくいが、恐らく平日の5日間はセラピストの監視のもと、週末の2日間は各自自宅で(Compliance?)行ったものと思われる。

Outcome Measures: VAS at rest, sleepとduring activity、トルコ語版のDASHとConstant Score、AROM・PROM(Goniometerを用いて)とShoulder Isometric Strength (flex, ext, abd, ER, IR; Isometricの筋力はどれほど患者にとって機能的な意味合いがあるのか?)が測定された。計測はテーピング直後、5日後、12日後の合計3回、グループアサイメントを知らない(blinded)研究者によって測定された(なぜ直後も計測しなかったのか?テーピングの「直後」の効果が今まで報告されているのに、これは見合わない)。

Results: 性別、年齢、左右の肩、症状のdurationなど、baselineで両グループ間に差は無し(詳細、p値はprovideされず)。
両グループ共に痛み、ROM、機能と筋力の改善が見られた。グループ間差では、特にpassive flexionとpassive abduction ROMに関してはKT groupは著しく改善したものの、Sham groupは改善が見られないという違いが確認された。全体的にKT groupはSham groupを上回る結果を出しており、1) VAS during activity at Day 5 (4.87 ± 2.29 vs 6.71 ± 1.68, p = 0.01) & Day 12 (4.32 ± 2.64 vs 6.28 ± 1.93, p = 0.009); 2) VAS at night at Day 12 (2.37 ± 3.19 vs 4.82 ± 2.95, p = 0.018); 3) DASH at Day 5 (30.14 ± 17.77 vs 48.05 ± 18.59, p = 0.004) & Day 12 (25.14 ± 17.35 vs 47.10 ± 17.87, p = 0.001); 4) Painless ROM-Abduction at Day 12 (128.53 ± 30.94 vs 103.42 ± 21.67, p = 0.004); 5) Flexion Strength at Day 1 (8.74 ± 2.62 vs 7.53 ± 3.15, p = 0.032), Day 5 (10.21 ± 3.11 vs 8.42 ± 3.09, p = 0.050), & Day 12 (11.21 ± 3.37 vs 8.42 ± 3.15, p = 0.005)…これに関しては、スタート地点でそもそもKT組が有利な位置におり、Day 5で追いつかれそうになってDay 12で最後突き放した感じ; 6) ER Strength at Day 12 (8.16 ± 3.35 vs 5.95 ± 2.30, p = 0.030)ではグループ間に統計的に有意な差が確認された。
統計的に有意な差があったもののなかで、臨床的に有意な差がありそうなのがVAS at night (MCID = 2), DASH (MCID = 10), painless ROM-Abduction (15°?)か。筋力のMCIDが私にはよくわからない…。
逆にShamのほうが数値が秀でていた項目が2つある。1) AROM-Flexion at Day 1 (143.42 ± 29.63 vs 166.68 ± 20.23, p = 0.002), Day 5 (157.63 ± 22.01 vs 171.58 ± 15.88, p = 0.002) & Day 12 (165.68 ± 19.45 vs 172.89 ± 12.72)…これに関しては、スタート地点でShamが有利な位置いて、その差が縮まらなかったイメージ; 2) PROM-Flexion at Day 5 (173.47 ± 11.44 vs 178.16 ± 4.77, p = 0.03)。ただし、5°の差は臨床的に有意と言えるか疑問

結論: リハビリにKTテープを併用した場合、痛み、機能、painless ROM、muscle strengthが2週間に渡ってより大きく改善されることが見込める。多少項目別にばらつきはあったものの、総じてKT tape outperformed Sham tapeと言ってよさそう。

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#6: Smith et al., 2009
これはUKの文献。フィッシュアンドチップス食べたい。この研究では、肩甲骨周りの筋肉のimbalanceが症状に関連しているのか、そしてテープでそれが効果的に介入可能かを検証。具体的には、1) 健康な被験者とSIS患者のUpper vs Lower Trapの活性度を比較、そこにimbalanceがあるか、2) SIS患者にのみScapular tapingを使ってUpper vs Lower Trapの筋活性に変化が出るかを研究しました。今回検証されたテープはKTではなくて、Leukotape。

研究タイプ: Cross-sectional Study, with no randomization, no blinding, no placebo-control
被験者: 16人のsymptomatic patients (平均年齢 29.8 ± 8.3歳、男性7名、女性9名)と「比較役」として性別、年齢、BMIと利き手をmatchさせた32人の健康な被験者(平均 26.5 ±4.5歳、男性14名と女性17名は)が対象。Power Analysisに関しての記述は無し
Inclusion Criteria: Symptomatic被験者は1) has full shoulder AROM; 2) unilateral shoulder pain > 1mo; 3) それからスポーツをする人を集めたいということで、少なくとも一週間に一回は泳いでいる人を選んだそう。一週間泳いでいるからってスポーツをしていると言えるか?あまり例を見ない、浅はかにも受け取れるinclusion criteria"熟練の"physiotherapistひとりがそれぞれの患者のSIS診断を担当("熟練"の定義は?)。1) 肩の前外側面に症状がlocalizeされており、i) Neer & Walsh Test, ii) Hawkins-Kennedy Test, iii) Active Shoulder Elevation、iv) Supraspinatus腱の触診、v) Resisted Isometric Abduction、vi) Empty Can Test、vii) Painful Arcのうち最低でも2つが陽性(痛みあり)である患者をeligibleとする(7項目のうち最低2つ?5つ陰性だとすると、それは下手をするとSISでない可能性のほうが高いのでは?)。 Asymptomaticなほうの被験者は、大学の学生で 1) full AROM; 且つ 2) 肩の怪我、痛み、不安定症の既往歴無しが条件。
Exclusion Criteria: (+)ULTT1; 頸椎・胸椎損傷疑い; GH不安定症 (= Load and Shift TestもしくはSulcus Sign 陽性; Load and Shift Testは悪くないテストだとは思う、Sn, Sp, +LR, -LR共に優秀と記憶している); Gross RC weakness (これはどうやって確認されたのか?)
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テーピング: Coverrollを下地に、Leukotapeを使ってUpper Trapを抑制、Lower Trapを活性化する目的でデザインされたScapular Tapingを使用。1人の「このテープを熟知した」研究者が一貫してテーピングを担当(熟練の基準とは?熟練でないと、このテープは同じようにはapplyできない?)。
Outcome Measures: 分間60ビートを刻むように設定されたメトロノームに合わせて、被験者はScaptionを行う(4秒かけて上げ、4秒かけて下げる)。そのScaption中、EMGによるUpperとLowerの筋活動を測定し、Upper : Lowerの比率として記録した。
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Results: Upper/Lower Ratio―(Table 3)はテーピングの有無(テープなし、p = 0.007; テープあり、p = 0.035)にかかわらず、健康な被験者に比べてSIS患者のほうがUpper:Lower Trapの活性化のratioが高い、つまり、僧帽筋下部の活動が低下・僧帽筋上部が過活動を起こしていることが確認された(95%CIで見るとわずかなoverlapがあり、これは統計的に決定的ではない)。SIS患者のテープをする前と後では筋肉の活性バランスに大きな変化は見られなかった。個々の筋肉のEMGに目を移してみると平均してLowerの抑制がわずかに起こっている(p = 0.145、統計的に有意でない、被験者間のvariabilityは高い)のに対して、Upper Trapの抑制がテーピングによって著しく起こっている(-13.0%, 95% CI -8.6 to -17.3%、p = 0.000, 95%CI幅から見ても統計的にも決定的)ことがわかる。2人の被験者(2/16 = 12.5%)がテープを「キツい(restrictive)」と感じた。

結論: SIS患者が、健康な人に比べてUpper Trapの活性度が高く、Lower Trapに抑制が多くみられる。Scapular Tapeをすることで、Lower Trapの活性はかなりランダムに影響を受けるが、Upper Trapの活性を決定的に下げる(=効果的に抑制する)ことができる。
これらの筋活性・抑制の変化が実際のADLやスポーツパフォーマンスに及ぼす影響、そして効果の持続性は不明である。

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  by supersy | 2017-02-12 19:30 | Athletic Training | Comments(0)

KTテープ文献レビュ―その1。

諸事情あって、これからひとつのトピックにつき10の文献を消化していなければいけないので、メモ代わりに内容をこちらにまとめます。スピードが問われるため、主となる10以外の文献の引用は省きます。ご了承を。個人的考察は、研究の評価すべき点はで、疑問点はで示すことにします。

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#1: Shakeri et al., 2013

これはイランの論文ですね。冒頭で人生で一度は肩の痛みを感じる人口の7-36%いる、そしてその半数ほど(44-65%)Shoulder Impingement Syndrome (SIS)である、とした上で、scapula(肩甲骨の)不十分な動き、特に、肩関節の屈曲や外転時に1) Posterior tiltが不十分、2) IRが過度に起こる、もしくは3) Upward rotationが欠如していることがSISとリンクしていることを指摘しています。


さて、この論文で検証しているのは肩甲骨周りのテーピング、中でもKTテープの使用が肩機能に及ぼす影響です。テーピングが具体的にどのようなメカニズムで身体に変化を生むかという点は実はそれほどわかっていないのですが、1) provide (mechanical) support; 2) create proprioceptive feedback; 3) providealignment correction3つの定説が文献などではよく取り上げられます。実際、KTテープを張ることで1) postural alignmentが改善; 2) 肩関節のROM向上; 3) 肩関節の痛みや違和感の軽減が認められた、という「良い」報告もある一方で、4)そのような効果は見られなかった、とするものまでエビデンスは様々。研究のデザインの相違や、テープの張り方が違うとか、要因は色々考えられますが、実際のところはどうなんでしょうね。この研究ではKTテープを肩甲骨周りに張った直後・3日後・1週間後の3つの異なるタイムポイントで、被験者の肩を動かしたときの痛みと、夜中の痛みの程度と、痛みなく動かせるROMを変化を検証しています。


研究タイプ: RCT, double-blinded, placebo-controlled

被験者: SIS患者30人、convenient sample (定員を満たすまで募集し続ける - バイアスの可能性あり)

Inclusion Criteria: 以下のSISスクリーニング項目のうち、最低2つは陽性―1) 過去6か月間以内に一週間以上続く肩関節前方・もしくは外側に痛み;2) (+) painful arc; 3) RC tendonの圧痛; 4) 外転のisometric contractionで痛み; 5) (+) Jobe’s (empty can) Test / 且つ以下のsubacromial impingement testsの最低一つが陽性―1) Neer Test; 2) Hawkins Sign; 3) Yocum Test(これらの診断基準の根拠は?一人の医師が一貫して判断したのか、複数の医師がいたのか?)

Exclusion Criteria: 脱臼、骨折、shoulder complexへのtrauma、過去6ヶ月以内の肩関節手術(なぜ6ヶ月?短くない?)、頸椎損傷疑い、検査セッションの未完了(セッション中に患者が出ていくようなことがあるってこと?ドロップアウトは除外するということ?説明不十分)、急性炎症を伴うRC完全断裂(急性炎症を伴ってなければ完全断裂でも除外されないということ?不明瞭)

Confounding Variable操作?: 検証期間中の1週間はNSAIDsの使用と運動は原則禁止(complianceはどうして計測したのか?self-reportならば、それが正しいという根拠は?)


Block Randomizationを用いてExperiment Group (n = 15, mean 46.53 ±13.31)Control Group (n = 15, mean 46.6 ± 14.24)にグループ分け(Power analysisをした上で、必要な被験者各グループ15名の最低条件を満たしている; 95%CIは決定的だったと言ってよいのか?せっかくだったら求めておいて欲しかった; Table 1にグループ別のdemographicが記載されているが、p valueが書かれておらず、homogeneityは不明。ベースラインでグループ差が存在した可能性あり)

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テーピングはスタンダードな5cm幅のベージュのKinesioTex Tapeを使用。Experiment Group(A)1) Supraspinatusの停止から起始までYストリップを用いたあと、2) YストリップをDeltoid上に、そして3) Iストリップをcoracoid processからposterior deltoidへ貼り、最後に4) YストリップをLower trap(これはKTテープのスタンダードテクニックらしく、Kase氏によってガイドライン化されているものだそう、一人の試験者がテーピングを全て担当; 再現性はどのくらいあるのか?有資格者でないと一貫してはできないようなものなのか?Intra-and Inter-reliability?)、合計4本のKTテープを貼るControl Group(B)は3つのIストリップをテンションを全くかけずにそれぞれAC jointdistal deltoidlower trapに貼るのみ。被験者は自身がどちらのグループかわからない(blinded)


患者はテープをしたまま3日間過ごし、3日目の午後に自分でテープをはがす。4日目の朝に再来診し、再評価したのち、また試験者が同様にテープを貼って自宅へ帰す。再び6日目の午後に各自でテープをはがし、7日目朝に来診という流れ(テープを指定の時間に剥がしているというcomplianceの計測はなし。もし1日目や2日目ではがれてきてしまったら?)


Outcome Measures: pain-free 可動域の限界を超えて動かしたときの痛み(VASADLで感じる痛みと必ずしもcorrelateしないのでは?)、夜中に感じた一番高い痛み(VASrecall bias?)pain-free ROM (外転、屈曲、スキャプション、スタンダードgoniometerを用いて、一人の試験者が計測Reliabilityvalidityは既に文献でestablishされていると書かれているが、intra-rater reliabilityなど、具体的な数字の提示はない、患者のポジションなどの指定の描写もない、なぜこのmotionが選ばれたのか?Goniometerがベストなのか?外旋、内旋はなぜ測定から外したのか?)を記録。計測者は被験者のgroup assignmentに対してblinded

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Results: Pain during movement (VAS) ― Exp: Baselineの5.86 ± 1.80から直後3.73 ± 1.76、3日後3.75 ± 1.76と、一週間後の2.9 ± 2.25へと著しく改善(p = 0.000); Cont: Baselineの5.53 ± 1.55から直後5.13 ± 2.26, 3日後4.6 ± 2.02、一週間後4.2 ± 2.70へと変化したが、これは統計的に有意でない(p = 0.06)。Nocturnal pain (VAS) ― Exp: 6.73 ± 1.86 → 3.66 ± 2.41 → 3.8 ± 2.21 → 2.7 ± 2.34へと著しく改善(p = 0.000); Cont: 5.86 ± 2.44 4.8 ± 2.95 3.93 ± 2.63 3.73 ± 3.23 (p = 0.02)でこれも著しく改善。しかし、回復幅は総じてExp Group のほうが大きい (effect size unreported、VASのMCIDが通常3-3.5であることを考えれば、これは臨床的に有意でない?というかそもそもbaselineのhomogeneityはあったのか?)。Pain-free ROM ― Exp: 外転、屈曲、スキャプションの全てでROMが著しく改善(p = 0.000, 10-19°上昇、これは臨床的にも有意なのでは); Cont: 屈曲は統計学帝に優位な変化なし(p = 0.40, 4°程しか上昇せず)、外転とスキャプションはそれぞれ9°(p = 0.005)と8°(p = 0.01)上昇。しかし、やはり気になるのは痛みもROMもExp Groupのほうが総じて悪い状態からのスタートだというところ。これを考慮し、pre-treatment scoreをcovariateとした分析を再度行うと、KTテープがPlaceboテープよりも優れた効果を発揮したのはテープ直後のPain during movement (p = 0.009)とNocturcal pain (p = 0.04)のみで、一週間後の変化はPain during movement (p = 0.10)、Nocturcal pain (p = 0.23)、Abd ROM (p = 0.34), Flexion ROM (p = 0.70), Scaption ROM (p = 0.73) 全てにおいてグループ間の差は認められなかった。

結論: KTテープは使用直後に痛みを減少させる即効性はあるが、その効果は3日間/一週間保たれるものではなく、また、ROMには影響を生まない。すぐに痛みを軽減したい場合には使用価値はある。
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#2: Hsu et al., 2009
こちらは台湾の論文。これもイントロと研究の導入は上の論文とほぼ同じ。少し違うのが研究のデザイン、こちらはcross-over designを採用しています。で、検証しているのは肩へのKTテープ介入によりscapular kinematics、muscle strength、EMG activityに変化は見られるのか。

研究タイプ: Cross-over (個人的にCross-overは嫌いではない…同一のグループがExpにもなりControlにもなる), random order of treatment (KT→placebo, or placebo→KT), placebo-controlled
被験者: タイペイの野球アマチュアチーム選手17人(23 ± 2.8歳; ピッチャー9人、野手8人; 多くのATにとってはrelateできるpopulation)。Power analysisはなく、95%CIも求められていないめ、この人数で十分だったのかは疑問

Inclusion Criteria: 以下のSISスクリーニング項目のうち、最低2つは陽性―1) 過去6か月間以内に一週間以上続く肩関節前方・もしくは外側に痛み;2) (+) painful arc; 3) RC tendonの圧痛; 4) 外転のisometric contractionで痛み; 5) (+) Jobe’s (empty can) Test / 且つ以下のsubacromial impingement testsの最低一つが陽性―1) Neer Test; or 2) Hawkins Sign(これらの診断基準の根拠は?一人の医師が一貫して判断したのか、複数の医師がいたのか?)

Exclusion Criteria: 脱臼、骨折、shoulder complexへのtrauma、過去6ヶ月以内の肩関節手術(なぜ6ヶ月?短くない?)、頸椎損傷疑い、検査セッション(x2)の未完了(ドロップアウトは除外するということ?説明不十分)。

**つまるところShakeri et alの研究のinclusion/exclusion criteriaと酷似。時間軸から言ってあちらがこちらを真似したというのが正確か。唯一の違いは、こちらの研究では1) SIS specific special testsにYocum Testが含まれていない; 2) Exclusion Criteriaに急性の炎症を伴うRC断裂がはいっていない、の二点。


Outcome Measures: Scapular kinematics肩後方にテープで張り付けた3つのセンサーを用いて計測(記事内にはこのセンサーはKTテープの邪魔にならないように位置したと記述されているが、肌に『余計なテープが張られている状態』であるのもまた事実。この研究結果がKTテープだけによるものなのか、センサーを固定したテープもあって初めて生まれる効果なのかは不明)。EMG activityはSerratus Anterior (SA)、Upper TrapとLower Trapにそれぞれ電極を装着 (SIS患者のSA、Lower Trapは頻繁に抑制され、Upper Trapが過活動をおこしているから、という背景説明は納得。しかし、前述のように電極の装着も厳しいことを言えば少なからずneuro inputを作り出す。検証結果に影響を起こしていないという保証はなく、臨床での再現性を下げている可能性も)。Scapular kinematicsとEMGの計測は患者に2kgの重りを持たせ、scaptionをゆっくり(メトロノームのペースに合わせて4秒かけて上げ、4秒かけて下げる)と繰り返している状態で行う。 Muscle strengthはLower Trapをターゲットに絞り、Hand-held Dynamometerを用いて記録。3回isometricの最大収縮をさせて、blindedな計測者が数値を記録(validity関するメンション無し、写真もないので私はイメージしにくい。Isometricの筋力が、スポーツパフォーマンスにどういう意味をもつのか、applicabilityは不明)

ここで初めてblindingが言及されたということは、Scapular kinematicsとEMGに関してはblindingが行われなかったと考えるのが理に適っている。加えて、これら3つのoutcomeは全て利き手において計測したとあるが、どうして「SIS(患)側」ではなくて「利き手側」という言葉遣いなのか?利き手が患側でなかったケースはないのか?説明が不十分。これらの3つのOutcome Measureとも、pilot studyを通じてwithin-day reliabilityがestablish済み(ICC = 0.74-0.99)という点は大いに評価できる

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今回のテーピングはLower Trapのみ。5cm幅のKinetioTex Tapeを使用。Yストリップを一本だけ用いる(↑写真左: これもKase氏によって提唱されているものなのか?ひとつ前の研究に使われたYストリップとは上下が逆さま。同一とは言えなさそうだが…)。Placebo Tapeは全く同じところに同じテープを、ただしKTテープではなくて3M Micropore Tape (ガーゼ固定などに使われる、伸縮性のない硬いテープ、↑写真右)を使って施す。場所が同じというのは興味深い…。

被験者はBaseline Testを行った後、3分休んでテーピングの施術を受ける。そのあと、再テスト(十分な休憩時間だったのか?疲労はなかったか?)。3日以上空けて(3日という数字は先の研究を見た後だと多少説得力があるが、この論文でなぜ3日で十分だという結論に至ったのかは言及されていない)、二度目の計測は初回でしなかったほうのテープを受けて行う。


Results: Scapular Kinematic ― 総じて1) KTテープはPosterior tiltとIRを増加させる傾向に、2) PlaceboテープはPosterior tiltとIRを減少させる傾向にあり、3) どちらのテープもUpward rotationを腕の上昇前半(30-60°)では減少、それ以降では増加させる傾向にあったが、ふたつのテープで統計学的に有意な(p < 0.05)差が認められたのはarm elevation 30-60°間のPosterior tiltの度合いのみ。Scapular displacementにはふたつのテープで違いは見られず。

EMG ― どちらのテープもscaptionの間、SAとupper trapの活動を増加させる傾向があることが確認された。特にPlaceboテープは90-120°のarm elevation時にKTテープよりも著しく高い活動を記録。対して、Lower trapはPlacebo テープをずると活動が減少する一方なのに反し、KTテープは序盤こそその活動を卯減少させるが、後半、特に腕の下降時には著しく活動が上げるという(p < 0.05)相違が診れれた。

Low Trap Strength ― テープをする前と後で、KTテープは筋力が平均2.0±3.9lb上昇したのに対して、Placeboテープでは0.7±3.3lb減少。この差はalmost statistically significant (p = 0.05)。個人的にはSDの大きさと、2.0lbという筋力の上昇がどんな臨床低価値を伴うのかが気になるところ


結論: KTテープはSISとリンクされることの多い1) Posterior tiltの減少、2) (Late elevationでの)Upward rotation不足を解消するのには即効性があると言える。腕の下降時のLower Trapの活動/筋力の上昇も興味深い。トレーニングをして筋力を挙げようと思えば4-6週間かかるといわれるところを、KTテープで瞬時に作り出せるのは現場での応用力がある。

今回の研究ではテープによるIRの減少効果は確認できなかった(過度なIRはscapular wingingにリンクされる)。

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#3: Kaya, Zinnuroglu, & Tugcu, 2011

こちらはトルコの研究。なんて国際色豊か。この研究でも、SIS(非アスリート、一般人)患者に『KTテープ+エクササイズ』 vs『 超音波・ヒートパック・電気治療 + エクササイズ』の比較を行い、2週間の治療の結果を痛みとdisabilityの観点から比較。


研究タイプ: Non-randomized clinical trial, no placebo, no blinding

被験者: 該当クリニックに肩の痛みを抱えて来院し、下記の条件に当てはまる患者60人(power analysisの数値、各グループ22名を大きく上回る人数)。最初の30人がPT group (59.5 ± 7.9歳)、後半の30人がKT group (56.2 ± 7.2歳、Randomではない。リクルート期間は2006年9月から2008年12月まで、Historyなどの時期的な影響はなさそうに思うが…。Group比較を見る限りベースラインのdemographicに多少違いがあるように見えるが、「実験開始時にグループ間のDASHとVASに大差なかった」とあるだけで、具体的なp値は報告されず。homogeneityは不明)に分類された。

Inclusion Criteria: 運動面を問わず、150°のelevation前に出る肩の痛み(<70°でも?Face validityに欠けているような?); (+) Empty Can; (+) Hawkins-Kennedy; ADLのdifficulty; 18-70歳 (くどいが、これらの診断基準の根拠は?一人の医師が一貫して判断したのか、複数の医師がいたのか?)

Exclusion Criteria: intraarticular steroid injection (過去数ヶ月以内とかではなく、生涯?); 肩帯骨折; 肩関節脱臼・亜脱臼; AC Sprain; 頸椎障害疑い; 過去12週間以内の肩の手術歴 (12週間は短くないか?); 6ヶ月以上続く肩の痛み (既往歴に関してはrecall biasや嘘の可能性あり。加えて、例えばAC sprainなどはどうrule outしたのか?)

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今回のテーピングspace & lymphatic correction techniqueということで、リンパの流れを促進してスペースを確保するのが目的で(あくまで仮説で、立証されてはいないと思うのですが)。Supraspinatus(水色), deltoid (ピンクのTストリップ), teres minor(黒)にそれぞれテープを貼ったそう(一人のセラピストが全て担当。もう一本、肩関節前方に見えるピンクのストリップに関して説明がないのだけど…)。


KT Group : KTテープとHome Exercise Program (isometric exercises, ROM, SA/trap/ERのエクササイズ、ストレッチ(Posterior capsule & pec minor)、trapのリラックス(なにこれ?)を一日2回行う (2週間の治療期間中、3回テープ治療を施した、と後述があるので平均4-5日後にテープを貼り直した計算になるが、詳しい記述はない。4-5日間以内にはがれてきたら?)

PT Group: US (Pulsed, 1 MHz, 1 W/cm2 for 5 min, Duty cycle? Applied where? Calibration? 効果を出すにはdoseが低すぎるのでは?), TENS (20 min, 他のparameterは? High vs low frequency?), エクササイズ(詳細一切なし)とHeat Pack (20min) + 上記のHome Exercise Program (総じて描写が曖昧すぎ、再現性がない)を一日一回、毎日行う

HEPのcomplianceはどう確認されたのか?Modalityによる治療は誰が行ったのか?全被験者が全セッションに参加したのか?仮にGroup 1のOutcomeが優っていたとして、それがストレッチとtrapのリラックスに起因しなかったという保証はどこに?これは致命的なデザインミスでは?その他、2週間の期間内の痛み止めの摂取やスポーツなどのactivityの制限は設けなかったのか?

PT Groupの被験者のうち、5人が「治療プロトコルから逸脱」したとして分析から除外(Dropout率16.7%)。1人はMRIでSLAPが見つかり手術; 3人は痛みがひどく、trigger pointの注射を行った; 最後の一人は治療の後半1週間に来なくなった(理由の説明があるのは好ましいが、5人目のただ来なくなった患者の理由はもっと説明が必要。なぜITT分析を用いなかったのか?)。


Outcome Measures: Interventionは2週間毎日継続され、DASHはベースラインと2週間後に計測、VASはベースライン、一週間後、二週間後の3つのタイムポイントで数値を測定。Data collectは第一と第二著者が行ったようで、blindingは言及されず

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Results: DASH ― 両グループ共にBaseline vs 2週間後では著しく機能回復したが (effect size, KT = 1.99, PT = 1.32、両方ともlarge)、2週間時点ではKT GroupのほうがPT Groupよりより著しく(Table 2: p = 0.027)高い機能が認められた。

VAS ― at night (Table 3), at rest (Table 4), by movement (Table 5)は2週間を通じて両グループとも著しく減少したが、総じてKTGroupのほうが回復幅が大きく、中でも治療開始から一週間時点ではPT Groupとの差が著しく(p = 0.01, 0.001, 0.001)開いた(2週間時点ではPT Groupの回復に追い付かれる感じで大差はなくなっているが、それでも回復幅はKT Groupのほうが優っている)。


結論: 2週間という短期間ではあるが、毎日行ったmodality & rehabの治療に比べ、たった3回のKT Tape applicationでそれを上回る機能回復・痛みの軽減が実現できたということで、労力・コスト共に優秀と言ってよい。

統計は美しいがデザインの大きなflawが目立つ研究。結果が面白いだけに惜しい。


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  by supersy | 2017-02-08 14:03 | Athletic Training | Comments(0)

Dream Big, and I mean it ― 若者よ、年寄りのいうことを聞くな。

今回のブログはただの備忘録のようなものなので、偏見と主観でしか書かれていません。読み流していただけるとありがたいのですが…
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教職についていると、学生が「夢」を語るのに触れる機会が多くあります。例えば、ATプログラムに入れるか入れないかを決める一年に一度の選考面接で、「あなたの5年後、10年後の将来の夢はなんですか」という質問を毎年受験者全員に尋ねるのですが、半数以上の学生が「プロスポーツで働きたいです!」と元気よく返してきます。それらの返事への私の反応はというと、ついついほぼ反射的に(心の中で)顔をしかめてしまうんですよね。プロスポーツで働く、というのがどういうことかわかっているのかな…、どんなに狭き門か(プロで働くATは、全米NATAメンバーのたった2%と言われています1)、実力以上にタイミングとネットワーキングが必要だということとか、考えたことあるのかな…、だったらうちじゃなくてプロと直接繋がりのあるもっと大きくて有名な大学に行った方がいいのに…、プロスポーツの医療現場は決して華やかなことだけではないし、高校・大学などの他のどのsettingよりも政治的・経済的なチカラが大きく加わるので理想的な医療環境は作りにくいよ…、プライベートは無いくらいの激務だし、今の実習・授業量で音を上げているようではとても無理だよ…。ネチネチと彼らに説教したくなる気持ちをぐっとこらえて、「なるほど、そうですか、では次の質問です」と返しますが、頭の中で「この子は業界のリサーチが足りない、見通しがちょっと甘い子かな」と判断してしまっていたりもします。

しかし、ふと手を止めて辺りを見回してみると、自分の周りにはアメリカのプロの現場で働くATの知り合いが山のようにいます。メジャーリーグサッカー(MLS)、NBA、NFL、MLB…それぞれの分野で輝いている友人知人らを見ながら、改めて自分の中にある偏見に気が付きます。「彼らは『2%』というオッズに勝ち、しっかり夢を実現させているじゃないか」「きっと彼らも学生の時に『プロで働きたい』と宣言し、一度は他人に笑われた経験があるだろう」「しかし、彼らの信念をrespectし、支える周りの人がいて、それに見合う以上の努力を彼ら自身が積み重ねて…最終的に彼らは目的地に立つことができている」「はて、私は教育者として学生の夢を笑う立場にあるのか?彼らに何を『夢』見るのが正しくて何が正しくない、と教えるような立場にあるのか?」「熱心な教育者のフリをして、学生を一番信頼していないのは私なんじゃないか?」…と少し立ち止まって考える機会があり、私は自分の「反射的な嘲笑(例えそれが物理的でなく、心の中だけのものであっても)」を大きく反省しました。学生は彼らが見たいだけの大きな夢を見て、それを語る資格がある。彼らができること、できないことを定義するのは私ではない、彼らと彼ら自身の行動です。"Dream big (夢は大きく持て)"と言いますが、何がtoo bigでtoo smallかは彼ら自身がこれから人生を歩み進める中で決めればいいことで、私が私の今の物差しを使ってやいやいというようなことではありません。いやー、歳を取る、経験を積むというのは恐ろしい。独りで勝手に「分かった気」になって、若い子に「分かったつもり」で説教をしたくなってしまうのです。私が「分かって」いるのはあくまで「私の人生」と「業界の過去」であり、「他人の人生」と「業界の未来」は私の想像できる範疇を超えている…という実に当たり前のことを、私は私自身に強くしつこく言い聞かせなければなりません。例え女の子の学生が「(土地柄熱心なファンの多い)サンアントニオ・スパーズで働きたいです!」と言って、「あそこは女性ATは雇わない」と私が見聞きして「知って」いるとしても、「それは無理だよ」と断言し、彼女の夢を摘んでしまってはそれこそ「無理」になる。女性でも同じ土俵で働けるはずだ、と信じてやまない女性ATがこれからの弛みなく努力を重ね、波となってうねりとなってプロの世界にぶつかっていくことで新たな道が拓けるんだと思います。私の尊敬する磯AT(女性初のNFLアスレティックトレーナー)もそうして道を切り開いていったんでしょう。先のことなど誰にもわからない。教育者として、学生の夢を広げる使命こそあれ、狭めるような心持で仕事をしていたのは本当に反省すべき点でした。

夢のある若者は、その存在だけでも大きな財産であり、宝なのだということを、業界そのものが受け入れないといけませんね。

そんなわけで若者よ、「無理だ」という年寄りの言葉になど耳を傾けるな!夢を大きく大きく持ってください。そしてそれらを語るのをやめないでください。「これをやりとげるのだ」という夢を声に出して宣言するというのは「しおりを挟む」「再確認・再認識する」という意味も持つ、見た目以上に重要な行為です。「夢」を多角的にリサーチし、分析し、必要なものを集め、目標に向かって一歩一歩進んでいってください。周りの景色も楽しみながら、知らぬにも触れながら、見聞も広めながら…自分の中の芯を太く太く、根を深く深く生やしていけば、「無理」と言われた夢を実現できることなどいくらでもありえます。
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"You can do anything when you are young and stupid (若くてバカだと、なんでもできる)."と私は自分の身の上話をするときによく言うのですが、私も17歳の時「アメリカへ留学をしたいと思っています」と言って多くの大人に笑われました。英語も喋れないのに成功するわけがないと言われました。でもやってみなきゃわからないよね、という若さと浅はかさ、そして盲目的なまでの情熱があったからここまで来ることができたのかもと思っています。

若者よ、バカであれ。若者よ、盲目であれ。貴方たちの若く青いお尻はまぎれもなく貴方たちの武器である。そのお尻をふりふり、前に進むのです。我々のような年寄りに足を引っ張られ、歩みを止めないでください。「へーそういう見方もあるんすね」とするりとかわし、地面を蹴ってそのマントで空高く高く飛んでいってください。我々の手の届かないところまで。貴方たちこそがこの業界の未来。君たちの活躍を心から楽しみにしています。

1. NATA. Where ATs Work. http://www.nata.org/about/athletic-training/job/settings. Accessed on February 2, 2017.


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  by supersy | 2017-02-03 17:00 | Athletic Training | Comments(2)

Globe Luxation - 目ん玉が飛び出たら、どうするか。

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先日、バスケットボールの試合中に選手の眼球が飛び出すというとんでもない怪我があり、話題になりましたね。そんな怪我どうやったら起こるの?動画を見たい、という方はこちらをどうぞ。見たくない方は再生しないでくださいね。
*今回、この動画以外にグロテスクな画像はこのブログに含まれていません。苦手な方も安心してお読みください。


この件に関して、学生やスタッフらとも、「目が飛び出したら…どうしたらいいんだと思う?」という議論になり、私を含め誰も正解を知らなかったので調べてみました。少しまとめてみます。

とにかく複数の文献で共通して言われているのが「滅多に起こる怪我じゃない」ということ。眼科医が長いキャリアで一度出会うか出会わないかくらいの発症率1らしく、今まで英語文献で発表された症例がたった34件しかないそうです。2 34件のデータを検証してみると、
 - 患者の男女比は4.7: 1
 - 原因は交通事故 52.9%, 転倒・落下 8.8%, 衝突 5.9%, 暴力・乱暴 5.9%, その他 26.5%
 - Traumaticな症例は若い患者に多く、多くは眼窩骨折を伴う(67.6%)
 - ほとんどが前方突出であるが、paranasal sinusesに向かって脱臼することもある
 - Unilateralのケースほうがbilateralよりも多い(全体の97%)
 - 最悪の合併症は視神経の断裂(=視力完全喪失, 全体の38.2%のケースで見られる)
 - 38.2%のケースでは視神経(optic nerve)に損傷が見られず、視力は回復している
 - 眼球そのものが無傷である場合、まずはreposition(修復、後で記述します)を試みたケースがほとんど(73.5%)で、機能、見た目、心理的な観点からこれが最も安定したアウトカムを生んでいる
 - 痛みが原因、もしくは患者の要望などで眼球摘出を行ったケースは5.9%
…だそうです。このsystematic review2 はなかなか面白かったので興味がある方にはおすすめします。視神経の断裂もですが、 外眼筋の裂傷を伴うことも、伴わないこともあるそうで。1それらの損傷の有無により、長期障害が出るか出ないかもケースバイケースになるわけですね。

受傷メカニズムの種類は大まかにわけて3つあり、1,3
Traumatic: スポーツなどで眼球に衝撃がかかるか、自転車・バイクでの転倒事故や交通事故などの急な減速によって起こる
Spontaneous: 生まれつき眼窩の造りが浅い人やFloppy eyelid syndrome(慢性乳頭結膜炎により上眼瞼が伸びきったゴムのように緩まり、少しの力で外翻・べろんと引っ繰り返すことができるようになっている状態。肥満体系の男性によくみられる)など、特定の疾患を持った患者はnon-traumatic, spontaneous(外からの力が加わることなく自発的・自然)に脱臼が起こり得る
Voluntary: oedipismという精神疾患の患者さんは自分の意志で自分の目を穿り出したりもするそうですぎゃーーーーーやめてーー。
Spontaneousなケースでいうと、瞼をつまんで動かしていた、力んでいた(valsalva maneuver)、麻酔下だった、4 コンタクトレンズを入れようとしていた5…などが今までの症例報告から浮かび上がる「脱臼を引き起こしやすい動作・要因」なんだそうで。

修復は「至ってシンプル」。患者に下を見るよう指導して、上瞼を掴んで持ち上げながら、人差し指で眼球上部を押し下げるように修復するんだそうで。6 うーん、いや、まあ、シンプルっていいますけど、そして修復は早いほうがいいようですけど、我々ATがやるのにはscopeを超えている、というか、訓練を積んでいる事柄ではないので、私はやっぱりこれはできないかな。眼球を乾かさないように何かで覆って、EMSが最も妥当かなぁと思います。

いくつか症例報告を読んだんですけど、中でも興味深かったものを。
1) 27才の男性、自転車から落ちて左眼球を前方脱臼。1 その一日後、激しい痛みと左の視力喪失で来院(つーか、なんで一日待つん?)。描写を読んでぐぇっとなったのが「眼球後方が閉じた瞼に挟まっている状態で」というやつで、記事には写真もついてるんですけど、この画像では眼球がかなりはっきりくっきり飛び出ています(後で読んで分かったのですが、眼球が前に飛び出すと、orbicularis・眼輪筋が反射的に収縮して結果、眼球をさらに前方突出させてしまうんだそう。で、瞼が後ろで閉まってしまって戻れなくなる、と)。緊急手術で顔面麻酔をして上記のように上瞼を前方に引っ張りながら、眼球を押して脱臼修復。千切れた眼筋を探すも、腫れが邪魔して見つけられず。一週間たって痛みは改善されたものの視力回復は望ましくなく、眼球の動きにも制限あり(abd以外はほとんと動かず)。CTスキャンで確認すると視神経の断裂が確認でき、筋肉の損傷も激しかったことから、視力と眼球運動の回復は見込めないことを患者に伝えた…と。

2) 46才のCOPD患者が病院に入院中、両眼球を脱臼。3 聞けば以前(過去4-5年)にも脱臼をしたことが数回あり、決まってCOPDの症状が悪化しているときに起きるのだという。上記と同じく、上瞼を引っ張り上げながら押し下げて修復。しかし、ICUに入院中、2時間に一回という割合でその後も脱臼を起こし続けたのだとか。5-6回目くらいにこりゃかわなんと、やむなく瞼板縫合を行ったが、その後患者はCOPDの合併症で入院から3日後に亡くなったそう。2時間毎って…壮絶だ。著者は「(COPDの影響で)上がっていた胸郭内のプレッシャーが眼窩内のプレッシャーも押し上げる形になり、さらにこの患者の場合は既に弛緩していた眼筋・靭帯もあってこれだけ脱臼を起こし成すくなっていたのだろう」と考察しています。

3) 5歳の子供がバイクと接触する交通事故で病院へ。2 左の眼球脱臼と目の周りに激しい裂傷あり、視力喪失。CTにより視神経のavulsionと眼窩の外側壁・上壁の骨折が認められる。手術によって骨折部と裂傷、脱臼の修復が行われる。一か月後、目のわずかな突出あり、視力喪失、眼球運動も制限あり。3ヶ月たっても痛みが取れなかったのと、患者のコスメティックな希望により、眼球摘出の手術を行い義眼を入れた。

などなど…他を書いてもきりがないのでこれくらいにしておきますが、いやー、見ているだけで、こう…。しんどい記事ばっかりでした。調べてみたのですが、スポーツの現場でこの怪我が起きた場合にはこう対処すべし!というガイドラインは見つけられませんでした。やっぱり症例数が少ないですもんね。修復方は確かにそれほど複雑には聞こえません。しかし、くどいですが我々はその専門訓練を積んでいませんし、骨折、筋肉や視神経の断裂などの複雑なcomplicationが起こっている可能性があることも考えれば、我々が安易に修復を試みるより、眼球を保護して救急車、という対処法が一番真っ当ではないかと思います。もし他の救急対応をご存知の方がいましたら、ぜひ教えてくださいー。

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さて、冒頭の選手ですが、上のツイートにあるように幸運にも視神経の損傷はなく、視力にはどうやら問題はなさそうです。筋肉も無事で、眼球運動も問題ありませんように!もう二度とこんな怪我をしなくてすむよう回復することを祈っております。

1. Kumari E, Chakraborty S, Ray B. Traumatic globe luxation: A case report. Indian J Ophthalmol. 2015;63(8):682-684. doi: 10.4103/0301-4738.169795.
2. Amaral MB, Carvalho MF, Ferreira AB, Mesquita RA. Traumatic globe luxation associated with orbital fracture in a child: a case report and literature review. J Maxillofac Oral Surg. 2015;14(Suppl 1):323-330. doi: 10.1007/s12663-013-0539-y.
3. Kumar MA, Srikanth K, Pandurangan R. Spontaneous globe luxation associated with chronic obstructive pulmonary disease. Indian J Ophthalmol. 2012;60(4):324-325. doi: 10.4103/0301-4738.98720.
4. Clendenen SR, Kostick DA. Ocular globe luxation under general anesthesia. Anesth Analg. 2008;107(5):1630-1631. doi: 10.1213/ane.0b013e3181839262.
5. Kunesh JC, Katz SE. Spontaneous globe luxation associated with contact lens placement. CLAO J. 2002;28(1):2-4.
6. Tse DT. A simple maneuver to reposit a subluxed globe. Arch Ophthalmol. 2000;118(3):410-411.

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  by supersy | 2017-02-01 22:30 | Athletic Training | Comments(0)

Positional Release Therapy講習へ行ってきました。

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今週末はダラス・フォートワースで、Positional Release Therapy Institute (PRTi)によってオファーされているLower Quarter (下肢) Positional Release Therapy (PRT)の講習会に参加してきました。字面はPRIと似ていますが、全く別の団体による、別内容の講習です。ストレイン・カウンターストレインや、ポジショナル・リリース・セラピーといえばご存知の方も少なくないと思いますが、私が今回学んできたのは、Dr. Jonesが提案した1964年のオリジナルなものでも、かの有名なDrs. D'Amobrogio & RothやDr. Chaitowが受け継いだものとも少し異なり、Dr. SpeicherというPositional Release Therapy Instituteの創設者が少しツイストを加えた、時系列的には最新のものです。Dr. Speicherは私の博士課程の授業も担当してくださった、文字通り私の「師」でもあり、2年前に彼の授業を履修したときにはこの方のエビデンスの読み込み具合、そしてNeuroscienceへの専門性と情熱に文字通り圧倒されました。それに反映されるように、彼の授業は、博士課程の間で最も刺激的で、最もしんどい(褒め言葉です。朝の2-4時まで寝かせてもらえないくらいヘビーな課題が次から次へと出ました)ものでしたし。そういう先生とほど、仲良くなり後々付き合いも続くものです(笑)。

PRTに以前から興味がなかったわけではないのですが、「Tender Pointを探して圧迫して、その筋肉を最短縮位に持っていって90秒待つんでしょ?難しい技術ではないし、解剖学と神経学の知識があれば臨床で欲しい成果を出すのに十分なレベルでは使えてるから、講習を取るまででもないかな」と考えていました。しかし、Dr. Speicherとこないだの学会でばったり会ったときに直接施術してもらって「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!私が知っているPRTとは全く違う!」と衝撃を受け、以来、彼の教えるPRT講習には早いところ参加しなきゃいけない!と決意したところだったのです。今回の講習はタイミングも場所も完璧だったので、やったぜふらりと行ってきました。

彼のアプローチは1) 筋肉や靭帯、腱やfasciaにあるtender pointを触診によって見つける (同構造内に複数ある場合は最も痛みのレベルの高いところを治療箇所とする); 2) その個所を「圧迫」するのではなく、患部の上に「軽く」指を置いてfasciculation(線維束性攣縮、ものすごく微細な組織の揺れ)を感じながら、その揺れが最大になるポジションまで患部を動かす。このとき、目指すポジションは基本的には組織の短縮位であるが、個人差があり、必ずしも最大短縮位とは限らない; 3) 患者に深呼吸をさせる。このとき、呼気と吸気それぞれのfasciculationも感じながら、もし呼気の場合にfasciculationが増える場合には空気を吐ききらせた後に、吸気にfasciculationが増える場合には吸い切らせた後に数秒ポーズさせる; 4) fasciculationが消失するまでそのポジションを保つ(多くの場合は90秒かからない)…といった感じです。文字で書いても「は?」という感じかもしれないので、Dr. Speicherのデモ動画をここに貼っておきます(僧帽筋上部の治療動画です)。


PRTの根本にあるセオリーは比較的シンプルで、多くの筋肉などの「張り」は実際に組織が拘縮を起こしているというよりは(もちろんその可能性も無くもないですけれど)、神経反射の影響が最も強いのではと睨んでいるわけです。つまり、特定の筋肉の過活動によって緊張が生まれ(strain)、その対となる筋肉も引っ張られて緊張が生まれ(counterstrain)、stretch reflexの状態が慢性的に続いた結果、muscle spindleの閾値が下がってhyperirritabilityが起き、痛みと張りが取れなくなってしまっている、というわけ(このとき、筋緊張によって局所的に血流も遮られるため、hypoxiaによる痛みと、ATP生産不可によるenergy crisisも付随します。これらは状況を悪化させる要素にしかならないでしょう)。なので、この解決はストレッチ(このセオリーではむしろ悪化しますね)でもsoft tissueを無理やり動かすことでもなく、まずは筋肉を短縮位に持っていってGamma Gainを減少させ、muscle spindleの閾値を下げてやればいいのでは?というのがこのアプローチの軸なのです。

このコンセプト全てに私が賛同するかは別として(大きな目で見ればまだまだ犬が自分のしっぽを追っているように感じるのですが)、私がこのアプローチの最大の魅力だと感じるのはその即効性と「患者が痛みを感じない」点です。痛いところをぐりぐりやるのに達成感を感じる施術者というのも世の中にはいるのかもしれませんが、私は「患者が痛みを感じずに治療できればそれに越したことはない」と考えています。Dr. SpeicherのPRTが追っているのはあくまで「fasciculation」であり、「圧痛」ではないので、痛みも無くものの1分程の施術で患者の痛みが(10段階の)9から0に落ちたりする様は爽快以外の何物でもありません。
(例えば痛みのレベルが高すぎて、PRIエクササイズなどをしようにもとにかくうんともすんともリラックスができず、交感神経優位になりすぎている患者さんに一発こういうテクニック挟むと、お互いのアプローチを補足・補完し合えていいんじゃないかなんて思うわけです。これはDr. Speicherも賛同しています)
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しかしねー、fasciculationが最大になるポジションを探すのが、本当になんというか、言うは易く行うは難し…。Dr. Speicherはさすがにそこがずば抜けてうまいんですけど、私はまだまだ。それでも、2日目の終わりの頃にはそれまで6から4くらいにしか減らなかったパートナーの痛みが7から0、6から0まで落とせるようになりました。彼みたいにもっともっとうまくなりたけりゃ、練習するよりほかありません。今回は下肢の授業でしたが、今度は上肢も出たいな…。頭蓋の奴が一番興味あるなー。
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そんなわけで刺激的で楽しい週末でした!Thank you Dr. Speicher for an awesome course!

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  by supersy | 2017-01-17 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル2月号発売 & 脳震盪診断指標としての聴覚テスト

とある講習に参加するため、今週末はダラスに来ています!久しぶりにPRIではない講習で、今日一日目が終了したところです。これね、ずっと「機会があれば取ってみたいなー」くらいの興味があった講習なんですが、ちょっと今回ばかりはどうしても見逃せない理由があったのと、近場+学期が始まる直前の余裕が(まだ)ある週末というタイミング諸々の良さも重なったので思い切って今回初めて来てみました。やっぱり新しいことを学ぶのは刺激があっていいですね!これについての詳しい内容は、次回にまとめたいと思います。
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さて、月刊トレーニング・ジャーナル2月号が発売になっています!連載9回目の今回は「スポーツ障害予防」について書いています。この度、日本のEBP講習でも「予防医学編」を追加したばかりですが(自分ではこれ、なかなかの出来だと思っています)、ATの仕事の中でも一番軽視されがち、そしてサボっていてもバレないのが「スポーツ障害の予防」という分野かなと感じます。今回の記事では、どうして予防が重要なのか、そしてどういう風に現場での「予防」実践が可能なのかなどについて提案をしています。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



では今回は手短に、本題です。月刊トレーニング・ジャーナルの昨年12月号で「脳震盪の評価・診断」についてまとめたところですが、この分野で新しい論文を見つけたのでさくっとまとめます(ちなみにこの論文もオープンアクセスです)。
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脳震盪の評価は多角的でなければならない、幾つものテストを組み合わせて行わなければならない…というのが現代の常識というかスタンダードですが、それでも「患者の報告(self-report)に頼らなくても良い、且つ『これさえやれば間違いない』という客観的な単独テストはないものか」という研究者のクエストは日々続いています。血液検査やNear Point Convergence (NPC)と呼ばれる視覚検査、dual-taskのバランスや歩行テストなどについてはトレーニング・ジャーナル記事でも言及していたように把握していたのですが、今回の論文1 は聴覚刺激とその処理能力についてです。ひゃー、これは知らんかった。
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「聴く」というのは、考えてみれば想像以上に複雑で高等な行為です。聞かなくていい「ノイズ」は無視され、必要なシグナルだけを意図的に拾い、取り込みながら、入ってくる音の強弱やProsody(韻律)に基づき、社会的な意味付けをし、文脈のある情報にconvertする…。この論文の著者らは、脳震盪の影響でこのプロセスの能力が落ちるのでは、そして、それを推し測ることで脳震盪の診断基準として使えるのでは、と提案しています。英語の原文では "...the auditory system may be sensitive to neurological insults that disrupt microsecond-level temporal resolution (p.2)"ということなんだそうです、ごく微量の情報処理の乱れもキャッチできるかも、ということですね。

さて、この論文で検証されたのはspeech-evoked frequency-following responses (FFRs)というものが脳震盪診断を推し測るのに妥当(valid)、且つ信頼性のある(reliable)バイオマーカーか、 ということ。もう少し細かく書くと、脳震盪と診断された子供の患者20人(男子6人、女子14人、平均年齢13.69歳)と、matched control group(健康な被験者20人、男子6人、女子14人、平均13.64歳)とを比較して、1) ふたつのグループのFFR値に統計学的に有意な違いは見られるか、2) 脳震盪の症状の深刻度(PCSS)とFFR値に関連性は見られるか、3) FFR値を元に、脳震盪の有無が判断可能か、4) 脳震盪から患者が回復すると共にFFR値も回復するか、について調べたそう。FFRというものを聞いたことが無かったので、何ぞや?と調べてみたら、「聴覚的刺激によって脳幹にどれだけの電位反応が見られるか」、つーのを計るものらしくてですね。様々な周波数の、ものすごく短い(40ms)音を聞かせてその反応を計測するそうで、つまるところ、どれだけ速く、正確に健全に聴覚刺激を脳でプロセスできるかという処理能力を数値化したもの、と捉えていいようです。

…で。この論文のすこぶる妙なのはMethodsがResultsの後にあるところ。結果(p.2)をいったん飛ばしてp.7にいくと、やっとMethodsセクションが出てきます。Methodsで気になるのが1) 被験者の特徴(Participants demographics)が非常に限定的にしか触れられていないという点(Table 1参照)、加えて、2) Inclusion criteriaが非常にシンプルで、これを読んだだけだとコントロールグループの被験者に脳震盪既往歴があってもオッケーということになるし、学習障害がある子も被験者に含まれてもいいことになるけれど、もうちょっと制限かけなくてよかったのかな?脳震盪患者は脳震盪を受傷してから平均26.7日経過していたということだけど、それってそこそこの期間ですよね。これは論文の最後にこの研究が行われたのがtertiary-care clinic settingだった、という記述があって少し納得したのですが、そうだとしたらそれはそれで、ほとんどの脳震盪患者は14日で『回復』すると言われていますから(今回の被験者は子供なので、もう少し長くかかるでしょうけれど)、脳震盪は脳震盪でもかなり重症のケースを中心に扱った研究ってことになりますね。こういうのはバイアスの素になりかねません。受傷後6-56日という広いrangeも気になります。これも「受傷から〇日以内」と制限してもよかったのでは、と個人的には感じます。あとは、3) 6人:14人で女子が多い(70%)ね、そしてあくまで子供が被験者だから、大人にこの結果は当てはまらないと考えたほうがいいね(大人と子供では脳震盪からの回復にかなり違いがあることは、もう言うまでもありませんね)、ということと、4) Power-analysisを行ったわけじゃないから、各グループ20人の被験者が適切だったかは分からないよね、しかも95% CI求めていないし、point valueの解釈には注意…ということを念頭に入れてデータを見ていきましょう。

そんなわけで、Methods(p.7)から戻ってきての、p.2の結果(results)です。私が重要だと思うものを偏見たっぷり個人的に抜粋します。

1) 脳震盪患者は、受傷していない被験者と比較して、約35%の聴覚刺激に対する反応の低下が見られ(p< 0.001, Cohen's d = 1.223)、特に反応する音のピッチ幅が著しく狭くなっていた(p = 0.009, Cohen's d = 1.14)。
Cohen's dが1を超えてくるのはすごいですね(= effect sizeがどでかい)。そうなると95% CI領域を見ても決定的なんだろうか、と推測はしたくなりますが、なんにせよ書いてくれていないので推測の域を出ません。

2) 脳震盪患者の中でも特に症状の重い患者は、FFR値は著しく低いという関連性が見られた(R2 = 0.548, p = 0.001)。
Correlationとしてはmoderate(中程度、≒0.6)というとこでしょうか。Outlierがどれくらいあったのか、マッピングされたものが見たいなぁ。

3) 言語刺激への反応開始・終了(onset/offset of sound)のタイミングは脳震盪の影響を受けてなかったにも関わらず(p ≥ 0.183)、脳震盪患者は特定の音に対する処理と反応が遅れる(p = 0.002)、という限定的処理能力低下が見受けられた。
時間にすると0.4msという非常に短いものらしいんですけど、脳神経界ではこれはオオゴトである、と著者は述べています。

4) 平均して脳震盪患者は健康な被験者と比較して聴覚情報のcodingにエラーが多く見られ、正確性が低下する(p = 0.011, Cohen's d = 0.841)。

(1)~(4)を繋げてみると、脳震盪を起こした患者の聴覚刺激に対する反応は、Neuro firing(神経的発火)のタイミングは正常でも、特定の音やピッチの取りこぼしがあり、その後の処理が追い付かず、結果正確性も低下してしまう…という感じでしょうか。取りこぼしがあったらそれを補いながらの「意味付け(make sense out of it)」が余計労力のかかるものになりそうっていうのはイメージが沸きます、ふむふむ、なるほど。

5) さらに、被験者の年齢、神経的バックグラウンドノイズ(聴覚刺激とは無関係な電気アクティビティー)などを考慮に入れてlogistic regressionを組み込むと、FFR値を元にこれが脳震盪患者だったか、健康な被験者だったか、言い当てることが可能
Regression Score = 0.596を閾値とすると、90% sensitivity、95% specificity、94.7% positive predictive value、90.4% negative predictive valueが取れるそうな。これだけ見るとImPACTやSACよりも優秀ですね。95% CIは知らんけど。

6) 20人の脳震盪患者のうち、11人(男子3人、女子8人)が一度目の計測から平均34.9日後にfollow-upに来て、FFR値を再度測定する機会があったそうですが(単純に考えて20人中9人のドロップアウト…45%のdropout rateは容認できるものではありませんが…、理由も不明…)、PSCCの著しい回復(p = 0.002)に比例するようにFFR値も大幅に改善(p = 0.031)、コントロール・グループのそれとほぼ一致するところまで戻ったそう。
つまり、FFR値を継続して計ることで、脳震盪からの回復っぷりを可視化することもできそうですよ、と。

そんなわけで、多少限定的な結果も見られたものの、聴覚の能力を推し測ることで患者の脳震盪の有無、深刻度とその回復をモニターすることができる可能性は大いにあるという結論が導かれていました。私はこの研究は様々なレベルで「統計的にもデザイン的にも問題は多く残る」、「一般化はまだ早い」、「実装までにはまだまだ残された壁は多い」と慎重に判断しますが、それでも脳震盪で聴覚にまで影響が及ぶというのは目から鱗が落ちる思いでした。これからのこの分野の研究にも注目していきたいと思います!


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  by supersy | 2017-01-14 22:45 | Athletic Training | Comments(0)

女性医師 vs 男性医師?「死にたくなければ女医を選べ」は本当なのか

「死にたくなければ女医を選べ」日本人の論文が米で大反響

こんなYahooニュースの記事が目に入ってきたので、思わず元となっている論文(free full-text)を引っ張ってきて読んでしまいました。すごく面白かったので、この論文を読んで思ったことをまとめておきます。

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この論文1の第一著者、Dr. 津川友介はハーバード大学で研究されている日本人の内科医さんなんですね。だから冒頭の「日本人の論文で」、になるわけです。書き出しに、まずこんな内容のことが書かれています。

女性医師と男性医師では、そのアプローチに違いがある、ということは複数の研究で既に実証されていることなんだそうです。例えば、女性のほうがクリニカル・ガイドラインにきちんと沿った治療方針を打ち出したり、2-4 予防的治療に積極的だったり、5-12 patient-centeredなコミュニケーションを実践していたり、13-16 スタンダード化されたテストの実践が上手だったり、17 患者に対して心理社会的カウンセリングを提供したり15 するんですって。知ってました?私は知らなかった!今ままで仕事をしてきた数々のチームドクター達を振り返っても、総じてみると確かに…と頷けるところも多いです。

だがしかーし、こういった男女医師によるアプローチの違いが実際に患者のアウトカムにどういう影響を与えるか、という論文は存在しないことから今回の研究が生まれたそう。この研究チームが検証したのは、acute care hospitalに入院してきた患者の 1) 病院に入院してから30日以内の死亡数(30-day mortality)と、2) 退院した場合、退院してから30日以内に再入院をした件数(30-day readmission)で、それらについて女性内科医と男性内科医が治療を担当した場合における比較を行っています。なぜ30日という制限を設けたかについては言及されてません。なんでだろう?

ここまで読んで私が危惧したのは、『単純に結論づけられない、第3や第4の要素の影響が強いんじゃないかしら…。女性医師の数が増えてきたのはより近年と考えれば、男性医師のほうが総じて年齢も高く、経験もあるためにより難しい患者を任されることが多い、故に死亡率も必然的に高くなってしまうのでは?』ということだったのですが、そこはだてにハーバード大の名前を背負っていません。幾つもの観点から修正を加えた複数の分析を行うことで、こういったバイアスを極力減らしています。Module 1) 患者のcharacteristics(i.e. 年齢や人種など)に基づいた修正を加えた分析、Module 2) (1)に加え、同一の病院の女性医師、男性医師同士を比較した分析(病院によってはより重病の患者が集まりやすいなど、これもバイアスの元になることがあるため)、Module 3) (1)と(2)に加え、性別以外の医師のcharacteristics (i.e. 勤務年数など)に基づいて修正を加えた分析…という風に。さらに、最も臨床でよく見られるという8つの疾患(sepsis, pneumonia, congestive heart failure, COPD, UTI, chronic obstructive pulmonary disease, acute renal failure, arrhythmia, GI bleeding)に絞って行った分析と、各病気の重症度(illness severity)別に行った分析もあります。Methodを読んだところまででは、mass dataを上手に使った、丁寧にデザインされた研究だなぁという印象です。うーむ、いいですね。

さて、ではここから結果に飛びます。全Medicare(アメリカにある65歳以上の老人医療保険)患者からその20%を無作為に選んだ結果、1,615,855人の患者が内科系疾患で入院を余儀なくされ、58344人の内科医師(うち18,751人、32.1%が女性、39,593人、67.9%が男性)がその担当を担ったそうなんですが、このときの患者群の死亡率、再入院率はこんな感じ。
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このテーブル上部が「死亡率」なのですが、女性医師担当の場合の全体の死亡率は10.82% (95% CI 10.71-10.93%)だったのに対して男性医師が治療した患者の死亡率は11.49% (95% CI 11.42-11.56%)…統計学的に有意な(p < 0.001)差が認められました。再入院率(テーブル下部)に関しても同様です。15.01% (14.89-15.14%)と15.57%(15.49-15.65%)で、95%CIの幅を考慮しても決定的に女性医師が診た患者のほうが再入院率が低い(p < 0.001)という結果になっています。これは、Module 2、Module 3とより多くの要素を考慮に入れた分析でも変わりません(all p < 0.001)。

8大疾患別の分析も、女性医師が治療した場合のほうが死亡率、再入院率共に低いという結果は動きませんでした。ただ、統計学的に有意ではない結果も複数あったようです(↓下参照)。特に、sepsis (敗血症)、pneumonia (肺炎)、acute renal failure (急性腎不全)、arrhythmia (不整脈)患者は、女性医師に治療を担当してもらった場合、男性医師に比べてその死亡率が著しく減ったようです。興味深い…。
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これは、病気の重症度でも同様(↓)。ほとんど全てのカテゴリーで、女性医師のほうが死亡率、再入院率共に低い結果に。
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さて、では、結論としてどういうことが言えるか?
冒頭の「死にたくないなら女医を選べ」は少しばかりoverstatementですが、とりあえずこの研究からはこういう結論が導き出せそうです。
貴方がMedicare保険を持つ65歳以上の患者で、内科系疾患で入院を余儀なくされた場合、男性医師よりも女性医師を担当医に選んだ方が30日以内に死亡する確率は減り、退院から30日以内に再入院するリスクも減る…つまり、貴方がより快方へ向かう可能性は高まる、と。

どのくらいリスクが減るのか?文中にこんな表現がありました。
"Patients treated by female physicians had 0.95 times the odds of death (95% CI, 0.93-0.97; p < 0.001) and 0.96 times the odds of readmission (95% CI, 0.95-0.97; p < 0.001) compared with patients cared for by male physicians (E6)."
患者の抱える疾患、その重症度、患者の年齢や性別、人種、医師の経験年数などに関わらず、女性医師に治療してもらったほうが男性医師に診てもらうよりも死亡オッズが約5%(3-7%)、再入院オッズが4%程(3-5%)低くなるようです。これは、統計学的に有意なだけではく、臨床的にも大いに意味のある数字といってもいいのではないでしょうか。

さらに、こんな表記も。
"...we estimate that approximately 32,000 fewer patients would die if male physicians could achieve the same outcomes as female physicians every year (E7)."
つまり、男性医師が女性医師と同じだけのアウトカムが生産できるようになれば、年間あたり32,000人の患者の命が救える、ということまでも書かれています。この論文ではあくまで30日間の死亡率のみ扱っているので、このstatementは少しばかりストレッチかもしれませんが、「男性医師、もちょっとがんばりたまえよ!」と注意喚起するには面白い論議です。

いやー、実に面白い研究でした。これって、他の医療従事者、例えばATとかPT、OTにも当てはまるのかな…とか、色々妄想させられてしまいますね。Medicare患者に限定した結果であり、あくまで30日間のアウトカムを追ったもの、というlimitationを考慮しても余りある、噛みごたえのある統計群です。あえて疑問を上げるならば、やはり最初の「なんで30日縛り?」というところと、あとTable 1のPhysician and Patient Characteristics, by Physician Sexというところ、「どうしてp valueを計算して書いておかなかったのかな?」というところです。男女の医師の特徴の違い、そしてそれぞれの医師が見た患者の特徴の違いは数値化して比較していてほしかったです。

この研究はあくまでobservational studyであり、実際にどういったアプローチの違いが決定的となってこのアウトカムの差を生むのかという因果関係についてはまだわかっていません。しかし男女問わずお互いのアプローチの違いから学び合い、良いところは認め合い、盗み合いながら、患者のアウトカムをより上げていけるような治療を進めていきたいものですね。くどいですが、この研究はfree full-textですので興味のある方はぜひご自身でも読んでみてください。

1. Tsugawa Y, Jena AB, Figueroa JF, Orav EJ, Blumenthal DM, Jha AK. Comparison of hospital mortality and readmission rates for medicare patients treated by male vs female physicians [published online December 19, 2016]. JAMA Intern Med. 2016. doi: 10.1001/jamainternmed.2016.7875.
2. Kim C, McEwen LN, Gerzoff RB, et al. Is physician gender associated with the quality of diabetes care? Diabetes Care. 2005;28(7):1594-1598.
3. Berthold HK, Gouni-Berthold I, Bestehorn KP, Böhm M, KroneW. Physician gender is associated with the quality of type 2 diabetes care. J Intern Med. 2008;264(4):340-350.
4. Baumhäkel M, Müller U, Böhm M. Influence of gender of physicians and patients on guideline-recommended treatment of chronic heart failure in a cross-sectional study. Eur J Heart Fail. 2009;11(3):299-303.
5. Andersen MR, Urban N. Physician gender and screening: do patient differences account for differences in mammography use?Women Health. 1997;26(1):29-39.
6. Frank E, Dresner Y, Shani M, Vinker S. The association between physicians’ and patients’ preventive health practices. CMAJ. 2013;185(8):649-653.
7. Frank E, Harvey LK. Prevention advice rates of women and men physicians. Arch Fam Med. 1996;5(4):215-219.
8. Franks P, Bertakis KD. Physician gender, patient gender, and primary care. J Womens Health (Larchmt). 2003;12(1):73-80.
9. Franks P, Clancy CM. Physician gender bias in clinical decisionmaking: screening for cancer in primary care. Med Care. 1993;31(3):213-218.
10. Kruger J, Shaw L, Kahende J, Frank E. Health care providers’ advice to quit smoking, National Health Interview Survey, 2000, 2005, and 2010. Prev Chronic Dis. 2012;9:E130.
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12. Smith AW, Borowski LA, Liu B, et al. US primary care physicians’ diet-, physical activity-, and weight-related care of adult patients. Am J Prev Med. 2011;41(1):33-42.
13. Bertakis KD, Helms LJ, Callahan EJ, Azari R, Robbins JA. The influence of gender on physician practice style. Med Care. 1995;33(4):407-416.
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15. Roter DL, Hall JA, Aoki Y. Physician gender effects in medical communication: ameta-analytic review. JAMA. 2002;288(6):756-764.
16. Roter DL, Hall JA. Physician gender and patient-centered communication: a critical review of empirical research. Annu Rev Public Health. 2004;25:497-519.
17. Ferguson E, James D, Madeley L. Factors associated with success in medical school: systematic review of the literature. BMJ. 2002;324(7343):952-957.

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  by supersy | 2017-01-13 15:00 | Athletic Training | Comments(0)

EBP東京講習終了!

一昨日の12月25日、クリスマスには神田の連合会館でEvidence-Based Practice (エビデンスに基づく実践)講習をしてまいりました!連合会館にお邪魔するのは初めてだったんですけれど、実は父の職場から徒歩3分という、妙な身内スポット…。交通の便もよく、分かりやすく、使いやすく綺麗でユーザーフレンドリーな施設でした。
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講習のほうは朝3時間が「評価編」、昼3時間が「治療介入編」、そして夕方3時間が「予防医学編」で、参加者さんは好きな講習を好きに受講可能、というスタイルにしてみました。全部で50名弱の参加者さんが入れ代わり立ち代わりでしたが、うち30名ほどは「全講習参加」というツワモノさんたちでした。しかし、我ながら9時間は長かったですね(笑)。ワークシートを使った実践などはあるものの、立ち上がって実技ー、という講習ではないので、座学9時間は構成として長かったかな。次回はもうちょっとうまいことわけわけしたほうがいいかなぁ。
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ちなみに予防医学編は今回BOC認定が下りて初めてお送りしましたが、Prevalence (有病率), Incidence (発生率), Injury Rate (受傷率)といったEpidemiologyの基本用語から、予防介入のエビデンス解釈には欠かせないControlled/Experimental Event Rate (対照群・治療群イベンド発生率)、Relative Risk (相対危険度)、Absolute Risk Reduction (絶対危険減少)、Relative Risk Reduction (相対危険減少)、Number Needed to Treat (治療必要数)というコンセプトの理解、それから実際に文献を引っ張り出してこういった統計を計算して、臨床的に解釈してみる、という練習もしました。脳震盪リスクが最も高い大学スポーツは?ACL予防にエクササイズプログラムは有効なのか?ハムストリング肉離れ予防にノルディック・ハムストリング・エクササイズはあり、なし?シンスプリント予防には何をすれば?結局のところテーピングやサポーターって足関節捻挫予防に効果はあるの?そんなトピックをがっつり3時間exploreしました。準備していても非常に楽しかった内容なので、参加者の皆様にも楽しんでいただけていれば幸いです!

南は熊本、宮崎、福岡、そして岡山、兵庫、大阪、愛知に滋賀、北からは福島と、遠方からも多くの方にお越しいただきました。参加者の皆様、そして運営をしてくださった高橋さん、あゆみちゃん、本当にありがとうございました!

さて、講習が終わった後はATC7名とDC1名が集い、講習会場から徒歩2分くらいのGreen Tea Restaurant 1899というお食事処で大人の茶会をしておりました。「茶を食す」というコンセプトの和食ダイニングだけあって、出てくるものすべてに「お茶」のツイストが入っています。写真は抹茶ビール(左)、抹茶とろろのかかった出汁巻き玉子(中央)、ほうじ茶黒ビール(右)…特にほうじ茶黒ビール、ほうじ茶の香りが芳醇でお勧めです!楽しかったー!これもコーディネートしてくれたあゆみちゃんありがとうー。
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一日明けた昨日、12月26日はぽっこりあいたオフ日だったので、フロリダ組の友人ら2人と旦那との4人で新宿で昼から忘年会してました。お昼の12時から夕方6時までまったりお酒を飲むなんて初めてで贅沢!こちらも楽しかったー。日本は楽しいことばかりー。

さぁ、また仕事です。これから大阪に行ってきます。2016年最後の仕事、集中して臨みたいと思います!

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  by supersy | 2016-12-27 10:30 | Athletic Training | Comments(0)

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