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「Availability」を作り、「Variability」を確立する―PRIの神髄のおはなし。

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さぁ、あなたはビュッフェ形式のレストランへやってきました。和食から中華、イタリアン、フレンチ…世界各国の料理が並んでいます。野菜もお肉も魚も、ケーキもアイスクリームも、あなたが望めばなんでも手に入ります。なにを取りますか?

選択肢が十分にある、というのは素晴らしいことです。その日の体調や気分、状況や環境によって、自分に最も適した料理を自分で選ぶことができるからです。今日はがっつりお肉が食べたいな、とか、今日はちょっと胃腸が弱ってるから、お粥がいいな、とか。同時に、何かを選ぶということはほかのものを選ばなかった、ということでもあります。Available(手に入る)なものを敢えて選ばない(= 「今日はこれは食べなくてもいいや」)、という選択は高等であり、非常に贅沢なことです。この贅沢は、全員が欲しがっているものでもあり、しかし残念ながら決して多くの人が手にしているものでもない、という事実をまず我々は噛みしめなければなりません。

限られた選択肢の中のみで生きていかなければいけないのは非常に窮屈であるし、その窮屈さはどこかに局所的負荷を作るものであると私は思います。例えば、私は前述のビュッフェレストランにカップラーメンがひとつ並んでいても全く良いと思いますし、もしかしたら私自身時折、数ヶ月に一度ほど、無性に食べたくなってそれを選ぶこともあるかもしれません(カップヌードル・シーフード味ならその可能性はさらに高まります)。これは、「数ある選択肢の中からカップラーメンが最善だと思い、自主的に選んだ」環境であり、低い頻度なら健康に悪影響を及ぼすこともないでしょう。しかし、カップラーメン「しか」選択肢が無いとしたらどうなるでしょう?カップラーメンが最善であるないに関わらず、「それ以外を選ぶ」という選択肢がそもそも存在しなくなるわけです。そういった極端な「選択」という名の「強制」を毎日続けざるを得なくなった結果、「偏った栄養」という局所的負荷が身体にかかることになり、これが長期に渡って繰り返された場合、疾患や機能不全のような目に見える形になって現れる可能性は十分にあるでしょう。これはカップラーメンが悪いわけではない、問題は「限られた選択肢=Limited Availability」である、と私は考えます。
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これは食事だけでなく、人生のあらゆる場面で当てはまります。
転職したいと考えた35歳の青年に、「今の会社に残る」「A社に行く」「B社に行く」「独立する」etc…どれだけの選択肢があるか。ゴール前、パスを受け取ったサッカー選手に、「右にパスをする」「左にパスをする」「ドリブルで右から相手を抜く」「左から相手を抜く」「右に行くと見せかけたフェイクを入れ、左から抜く」「いきなりシュートを打つ」etc…どれだけの選択肢があるか。我々は人生のあらゆる場面で無意識に、手持ちのカードを睨みながら「最善」と思えるものを選択し、生きているのです。そして「最善の一手」を選ぶなら、手持ちのカード…選択肢は、多ければ多いほど良い、Availabilityは高ければ高いほど良いのです。



さぁ、話を本題に戻します。今週末は、ダラス方面へ出張し、Impingement and Instability、通称I&IというPRIのアドバンスト・コースに参加してきました。今回の講師は大先輩のJames Anderson。I&Iを取るのは二度目なのですが、前回履修した時は同じく大先輩のMike Cantrellが講師で、彼が同時ハマっていたCranio/Dental色が強い話が多かったので、今回は正統派I&Iの話が聞けるかも!とうきうきでした。

"We love instability because instability gives us variability. We want those motions to be available. We just hate that you can’t control it." - James Anderson

この講習冒頭に発したJamesの言葉が先の「選択肢」というコンセプトを見事に物語っていると思うんですよね。Instability(不安定症)がある、ということは悪いことに見られがちですが、不安定である、ということは、その関節に「動くという選択肢が様々にある」という意味では必ずしも悪くない状態です(もちろん、厳密にいえば選択肢が「多すぎる」ということもあり得ないことはないと思います。「無くてもいい選択肢まで並んでる」とか。しかしこの文脈でJamesはinstabilityをそういう意味で使っていないので、ここでは少し割愛させてもらいます)。だからこそ、PRIはinstability(=ここへもあそこへも動ける)とかimpingement(=ここでもあそこでも挟んだりつまんだり捻ったり乗っかったりできる)というコンセプトを2日もかけて掘り下げる価値があると思っているわけです。

この「選択肢(Availability)が豊富にあり、好きなものを選べる状態」を我々はよく「Variabilityがある」という風に表現します(念のため断っておくと、この表現は別にPRIが発明したものでも、PRIの世界に限ったものでもありません。様々なdisciplineで使われる言葉です)。右に動きたいときに右に行ける。左に行きたければ左にも行ける。前にも、後ろにも、上にも、下にも行ける。動きたいときに動きたいところへ動ける能力はMovement Variabilityと呼ばれます(ここで、PRIではlegallyに行けるのかillegalなのか、そんな話も入ってはくるのですが、ここはPRI講習でもっと深くお話しするためにとっておきます)。自分の身の回りの世界に対し、右も左も、前も後ろも上も下も望む方向に意識を広げ、感知・認識できる能力はPerception Variability…世の中には様々な種類のvariabilityが存在します。

PRIの治療介入の究極目標は、これらの様々な事象に対して、患者さんのvariabilityをrestore(取り戻す)ことです。PRIは患者さんに対して「貴方のやっていることのこれが間違っている、このままだとこうなります」と脅して選択肢を取り上げたり、「貴方はこれを選ばなければいけない」と特定の選択を強要するようなことはしません。その代わり、患者さんに「貴方はどうやら『この場面ではこれ!』という特定のものを選ぶ『好み』や『癖』が強いようですけど、他にも選択肢はあるのをご存知でしたか?」と本来あるべき全ての選択肢を共に見つけ、並べて、その中から患者さん自身が「(その状況に合った)最善の一手」を選べるようにする手助けすることを目標としているわけです。

抽象的でどういう意味かよく分からない、という方のために、新たな例を交えて説明します。例えば、呼吸にもvariabilityがあります―Respiratory Variabilityです。横隔膜を使った呼吸(腹式呼吸というと語弊があるかもしれませんが、ここでは敢えて深く言及しないでおきます)、呼吸補助筋であるSCMや斜角筋を使った首呼吸、ヨガなどで使われるお腹を深くへこませるホローイングやドローイング、腰椎・胸椎の伸展を伴う胸式呼吸…。PRIは特定の呼吸法に対して「これが正しい呼吸である」「これが間違った呼吸である」という表現の仕方をしたことがありません。何故なら、どれが正解かは「状況による」からです。しかし、「呼吸の選択肢が限られていて、特定の呼吸に頼り切りにならなければいけなくなっている」状態が理想的ではないのは明らかです。
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バタフライ専門の水泳選手が競技中、一息吸いに水面から顔を出した際、胸椎と腰椎が伸展したそのポジションから肺になんとか空気を引き込もうと思ったら、SCM/斜角筋を活性化し、第一・二肋骨を引き上げるような呼吸「しかできない」のは当たり前です(そんな選手に対して「首呼吸はだめだ」という施術者は選手のニーズを全く理解していないことになります)。

しかし、この選手が練習を終え、プールを出てシャワーを浴び、着替えたりしている休息時には、横隔膜をしっかり上下し、肋骨の内外旋を伴う、深く静かに空気を動かす呼吸をするのが最も理に適っているはずです。この呼吸が選択肢に存在すらしないとしたら、大きな『問題』になり得ます。そんなわけで、我々の目標のひとつは前述したRespiratory Variabilityを確立することです。呼吸のバリエーションを増やし、それぞれの状況に適切な呼吸法を患者が選べるようにすることを、今までもこれからも、PRIはずっと説いています。PRIは一度も「弱い横隔膜はいかん」「横隔膜を強くしなければ」みたいな表現は使ったことはありません。だってそもそも横隔膜の強さって、かなりinvasive(侵襲的)なEMGでも打たないと計れないんじゃないですかね?そんなirrelevantなoutcome計ってどーするんですか?

横隔膜でも胸椎・腰椎でも首でも呼吸が行える(Respiration Variability)、好きな方向を見て(Vision Variability)、好きな方向の音を聞いて(Auditory Variability)、好きな方向の空間を感じ(Perception Variability)、好きな歯で物を噛み(Occlusional Variability)、好きに歩き(Gait Variability)、好きな方向へ飛んだり跳ねたり捻ったり止まったり加速したりできる(Movement Variability)…右へ左へ行ったり来たりのその揺らぎを楽しめるようになれば「variabilityがある」ということになります。交感神経・副交感神経の振れ幅も例外ではありません。状況によって最大限にギラギラと興奮することも、最大限にゆらゆらとリラックスすることも、両方できてこそ人は人としての機能を最大限に発揮できます。横隔膜呼吸は我々が不得意な副交感神経優位性を作るのにも有効である…PRI講習講習に参加してくださった方ならここらへんはしっかり理解してくださってるはずだと思います。Training Variabilityという言葉もありますね。PRIでやるエクササイズは寝転がってやるものばかり、ウェイト(レジスタンス)トレーニングにはアンチなんでしょ、や、屈曲一辺倒主義で伸展は一切ダメなんでしょ、…と勘違いされることがたまにありますが、1) PRIのエクササイズなんて患者を立たせてなんぼですし(重力に逆らって立つことには見た目以上の意味と価値があるからです)、2) 負荷の高いトレーニングを否定したこともありません。荷重する準備ができている身体なら荷重して何にも悪いことはないじゃありませんか、それに、3) 伸展を鍛えなければ強く動き速く走り高く跳べるアスリートなど、待っていても生まれませんよね。PRIほど伸展をappreciateしている団体はいないと思いますよ、ただ、効果的で爆発的な伸展をするためにはその逆への触れ幅である「屈曲」ができないといけないんじゃないの、と説いているだけで。

結局大事なのは触れ幅の確保と揺らぎ(perturbation)なんだよなー…、ああ、「世界は揺らぎでてきている」という宇宙粒子学の本を最近読んだなー…、人体と宇宙はつながっているなー…、生きているということは揺らぐということなんだなー…、とかなりおかしな思考になったところで今回の講習が終わりました(笑)。今回のI&IはGaitやPeroneus+Glu Med、Subscapの話など、かなり掘り下げて討論できてすごく有意義でした。グループ写真を撮るときに、「James! I am in my left hemisphere right now」「Yeah…illegally!」というnerd jokeも飛び出して、皆で大笑い。アドバンストならではの濃い2日間を過ごすことができました。アドバンスト講習に参加する人たちはさすがに顔見知りが増えてきて、同じ言葉で同じ思考を共有できるのがとても心地よいです。日本でもこれができるようになったら楽しいだろうなーと思います。おっと、そんなに夢をはせる前に、まずは最後のプライマリー講習であるPelvis Restoration開催が先なんですけど。

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  by supersy | 2017-01-30 18:30 | PRI | Comments(0)

PRIポスチュラル・レスピレーション大阪講習終了!

一週間ほど前にさかのぼってのブログ投稿ですが、12月28・29日に大阪は履正社医療スポーツ専門学校さんでPRIポスチュラル・レスピレーション講習を終了してまいりました!12月22・23日の東京講習に続き、参加者53名+ラボアシスタント2名+講師2名の大所帯で楽しい年末の2日間を過ごすことができました。エネルギッシュな参加者さんたちでなんだかこう、こんな表現があるのかはわかりませんが、頭脳の遊園地でみんなでわいわい遊んだような気分。ジェットコースターあり、お化け屋敷あり、観覧車ありのあっという間の2日間でした、充実したー!
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日本で講師活動を初めて一年半。少しずつ知り合いができて、「はじめまして」の代わりに「お久しぶりです」を言うことも増え、そんな出会いやご縁もまた楽しいですね。昔お世話になった先輩や長年の友人らともこういう機会に会えて(いやー、ほんとうにこういう人たちに講習会に来てもらえるのは特別にうれしい…)、夜食事に行って腹を割った話をしたり、人生のアドバイスをいただいたり…、そんなのも今の生きるエネルギーになっています。大阪でお世話になったヒロさん、ヒデキさん、ノブさんにジデン、りょうこさん、ありがとうございました。

講習会に参加してくださった皆さんには最後にお伝えしましたが、これからPRIジャパンではポスチュラル・レスピレーションに磨きをかけながら、マイオキネマティック・リストレーションも引き続き提供しながら、そしてまた一年半かけて新たな講習であるぺルビス・リストレーション開催の準備を進めていきたいと思っています。確約はできませんが、ぺルビス講習の第一回開催目標は2018年夏ですね。本業を疎かにするわけにはいきませんし、家族との時間も大事にしたいのですが、PRIを学び続けたいと思う人たちが日本にいる限り、我々もできるだけの努力を重ね、精進し続けるのが使命と思っています。頑張りますので、皆様も長くお付き合い続けていただければ幸いです。

さぁ、それでは日本滞在のもう少しの時間、家族や友人と過ごすことにします。あそぶぞぉ、おいしいものたべるぞぉ。

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  by supersy | 2016-12-30 23:00 | PRI | Comments(0)

PRIポスチュラル・レスピレーション東京講習終了!

ついについにこの日が!12月22・23日にPRIポスチュラル・レスピレーション講習を日本で初めてお送りすることができました、50名の参加者さん+2名のラボアシスタント+2名のPRI講師で文字通り熱気むんむんあふれる2日間でした。参加してくださった皆様、そして主催していただいたスポーツプログラムスのスタッフの皆様、本当にありがとうございました!
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PRIは生きた講習なので、少しずつ教える内容は変化しています。PRI講師間でも「ここを強調して教えよう」「ここはこういう誤解は招かないようにしよう」と肩を叩き合い、確認し合って足並みを揃えたりもしますし、講習中使うテキスト(教科書)もここはもっと説明しなきゃいけないんじゃないか、ここはいらないんじゃないか、このページをこっちへ持ってきた方がいいんじゃないか、などと常に話し合い、改訂を行うことで、よりよいメッセージのdisseminationを目指しています。そういう意味では、ポスチュラル・レスピレーションという講習そのものがまだまだ育ち盛りのコースだなと思うんです(これは、ポスチュラル・レスピレーションが以前は唯一のPRI講習であり、3日間を使って頭からつま先まで教えるような内容だった…という歴史的な背景を理由に含みます)。まだまだいじる余地と楽しさがあります。もっともっとシャープで面白いものになり続けると思います。

そういう講習を教えるのですから、勝手に内容を変えることなくオリジナルを保ったままで、どう情報を整理しようか、様々なバックグランドから来られる参加者さんに平等に均等に理解してもらうにはどういう日本語を使えばいいか…この試行錯誤の作業は楽しくもあり、時に苦しくもありました。「すごくいいものができそう!」「いや、全然できない気がする」という気持ちのアップダウンの繰り返しの一年半でした。講習開始直前には色々な気持ちが絡み合って講師二人とも妙なテンションになり、「ロンさんが!!!大丈夫、できるよって!!!言ってくれてる声が聞こえる!!!」と励まし合いながら臨みました(笑)。

そんな講習だったので、終了後に参加者の皆さんのナマの感想や建設的な意見・提案を聞けてとてもありがたかったです。受け取り手があっての講習会ですので、参加者さんの学びに最も適切な形態をとれるよう、頂いた意見を元により良いポスチュラル・レスピレーションの形作りに取り組んでいきたいと思います。実際、この一年間で日本で教えられるマイオキネマティック・リストレーションも進化してきましたし、これからポスチュラル・レスピレーションも進化し続けていく予定です。現時点でのベストの講習だった、という終わっての達成感はありますが、これからもより濃い講習を目指して頑張っていこうと思います。あと4日で大阪でのポスチュラル講習がありますが、そちらもがんばるぞう。
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空気の流れ(エアフロー)が見えますか?という切り口からの、刺激だらけの講習会でした。熱意ある参加者さんに助けられ導かれ、あっという間の2日間、楽しかったです。ありがとうございました!

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  by supersy | 2016-12-24 10:00 | PRI | Comments(0)

月刊トレーニングジャーナル9月号発売 & New York出張!

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月刊トレーニング・ジャーナル9月号が発売になっています!
連載4回目の今回は「まさかに備える」という特集のテーマにも沿って、アスレティックトレーナーのお家芸(?)でもある、救急対応のあれこれについて書いています。糖尿病、喘息、呼吸停止時の気道確保、熱中症などについて、アメリカではどう判断しどう処置を施すのが「現在のATのスタンダード」なのかが焦点です。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



もうちょっと濃い内容のブログを書きたいとも思うのですが(最近読んでる論文のまとめとか…)、なかなかどうして集中してパソコンの前に座る時間が取れず、バタバタしてしまっています。せっかくなので今回は、先週末行ってきたNew Yorkのお話を少し書きたいと思います。

先週末はNew Yorkはマンハッタンで、PRI創始者のRon Hruska氏によるPostural Respiration講習会があり、最後のFaculty Trainingにと私もお邪魔させてもらっていました。だって、Ronが基礎コースであるPosturalを教えるのって、めったにないことで。Ron自身も、「最後に教えたのはいつだったかな…思い出せないや」というくらいですから。マンハッタンにあるThe Maritime Hotelという海をイメージしたホテル(↓)に泊まりましたが、かわいらしくて快適なホテルでした!夜中も外のクラクション音がパーパーうるさかったのを除けば(これはもう立地的に仕方ない…NYの皆さん、運転荒すぎ、気が短すぎ)、もう完璧に最高でしたよ。また来たい…。
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土曜日の朝8時から講習開始だったので、朝5時過ぎに起床してセントラルパークに散歩に行ってきました!朝から自転車レースやっていてにぎやか。ランニングしてる人もいっぱい。朝日を浴びながら小一時間散歩して、すっきり。この「ビルに囲まれた深い自然」感、浜離宮恩賜庭園を思い出します。
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肝心の講習はというと、最近のPRI講習にはめずらしく6-7割が初受講者という顔ぶれ。Ronが「さゆりたちが日本の講習でかなり実技の時間を増やしてて、それが好評だっていうから…」と言ってくれて(逆輸入?光栄です)、Posturalにしてはかなり確かに実技が長めな構成でした。それでも合計一時間くらいかと思うけど…。日本の講習では実技3-4時間くらい設けたりしてますからね。私個人的な感想としては「このタイミングでRonから改めて学べて良かった!」Ronの発言でときどき宇宙に飛ばされるのは相変わらずですが、この講習に関しては自分の理解も深まっているので特に混乱することもなく、本当に「掘り下げる」ことに自分でも時間を有効に使えたなぁと思っています。いい意味で他の講師が教えているPosturalをぶち壊すような構成で、「そうか、これもアリなのか」と目から鱗でした。でも、「Ronがいずれ日本に来てくれたら、この言葉を日本語に訳さなきゃいけない」となんとなく考えながら講義を聞いていたので、3つに1文くらいに翻訳不可能な言葉が飛んでくるたびに苦笑してしまいました。"Triceps is resonance, triceps is frequencies!"とか、どう訳せばいいの(苦笑)?
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今回、学びの収穫として私が一番改めて聞けてよかった、と感じたのはこういうこと。
1) PRIには数少ないマニュアル(徒手)テクニックがあるが、それでも何かをひっぱったり伸ばしたりしているわけではない。あくまで施術者の手を神経的デバイスとして、患者に必要なNeurological cueを入れるために使うのであって、患者を治療するのはマニュアルだろうとノンマニュアルだろうとあくまで患者自身。
2) 身体をうまく正しく使おう使おう、もっとくれもっとくれ、と要求を重ねると手に入るものは少なくなる。理想的な身体の反応を引きおこすには患者の精神状態も重要な要素。これが如実に出たのがRonがとある参加者を使ってデモを行ったとき。Ron曰く、『気が張っててやったるでぇー!と意気込みすぎていた』参加者さんの顔を見て、「このままエクササイズをさせてもこの人はRepositionできないだろうな」と判断した彼は、あえてこの参加者さんを実験台に選び、優しい口調でゆっくりと、丁寧に運動指導をしました。たちまちRepositionが完了する参加者さん。おおさすが、ぱちぱちぱち。このあとRonはくるりと受講者に向きなおり、「今から全く同じことをもう一回やるから見ていてね」と、この参加者さんに全く同じ指導を『命令口調で』繰り返したのです。言っている内容は同じなのに、「次はこれをしろ!」「これは絶対しちゃだめだ!」と威圧的なトーンで言われることで、参加者さんの筋緊張は目に見えて変わり、同じ運動をしたにも関わらず、エクササイズ後にはPositionが完全に崩れた状態に。明らかに交感神経優位です。このデモを終えて、Ronはにっこり「PRI理論なんて別に重要でもなんでもないんだよ、キミが穏やかなトーンで患者に声をかけさえすれば、それだって時に患者をRepositionさせるのに十分なんだ」と。う、うす…!患者の精神状態の話を講習に取り込む講師はぽつぽついますが、「我々の患者に対する態度も大きな差を生む要因になる」とハッキリ強調してくれたのはRonが初めてだったので、これは次回の講習でも参加者さんにシェアしたいと思います。
3) 「この講習の目的が『強くなること』だと思っている人がいたらそれは大きな間違いです」と、Ron。「この講習は『弱くなるため』のものです」と。これもRonらしい言い回しですが、つまり彼が言わんとしていることは「既に存在するパターンの色を濃くして濃くして、レイヤーを重ねて重ねて『強く』することはPRIの目的の真逆」、そして、「パターンの『色』を『弱く』して、PRIの言うNeutralityを確立する講習である(=そうしないとそもそも鍛えられないよ、強くなれないよ)」ということなんですね。だからもちろん正しくやれば最終的には『強く』なるんですけど、そのためには一度現在のパターンから出ることを覚えなきゃいけないよ、と。ここらへんはMyokinを取ってくださった方はご理解いただけると思うのですが。強くなるのではなく、弱くなるための講習…これに興味がある方は、ぜひまた冬のPRI講習にも遊びに来てください。
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…で。土曜の講習が終わってから、タイムズスクエアに繰り出してきました(↑)!これはタイムズスクエアの全く同じ場所の、夕方 vs 夜中。騒がしくて新宿のようで、私はこういう場所が好きです。ついでに、やっぱりブロードウェイも見なきゃでしょ、ということでリバイブされたばかりのCATSも見てきました(↓)。素晴らしかった…!Orchestraのめちゃめちゃいい席で、舞台から3列目という距離でパワフルな歌とダンス楽しんできました。芸術って素晴らしい、心が洗われるぅ。
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10年ぶりのNew York楽しかったな。いっぱい学んで芸術に触れて、知的に満たされた。博物館や美術館ももっとどっぷり行ってみたいので、次回NYCに来るときはがっつり観光で、5日は使う計算で来ようと思います(笑)。

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  by supersy | 2016-08-16 22:30 | PRI | Comments(0)

PRI福岡講習終了。PRIの夏が終了!

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5月28・29日にあった福岡でのPRIマイオキネマティック・リストレーション講習を終え、昨日埼玉へ帰ってきました!今回は初のソロ講習ということで実はどうなるかかなりこっそりドキドキしていたのですが(朝から晩まで一日しゃべり倒したことはあるんですが、2日がかりの講習をこうして教えた経験はなく、体力的にもどうなるか未知でした)、意外なことに疲れもなく私自身心から楽しんで講習を終えることができました。これも40名の受講生さんが明確な学習意図を持って参加してくださったこと、そして主催のImprove株式会社代表の合原さん、会場として福岡リゾート&スポーツ専門学校を快く貸してくださった所さん、現役学生でスタッフとして切り盛りしてくれた福永さん、ラボアシスタントとして鋭い意見をたびたび投げ込んでくれた近藤くんらバックボーンの活躍があったからこそです。皆さま本当にお世話になりました、ありがとうございました!
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後半に全員でやった大腿筋膜張筋の抑制エクササイズ。なかなかの絶景でしょ(笑)?

せっかくの福岡出張なので、一日早く前乗りしてちょっとだけ観光も楽しんできました。私が泊まっていたホテルから電車で二駅くらいのところに福岡市美術館があったのでまずはそちらへ遊びに行って(↓)、静物画展を観覧。静物は英語で"still life"になるらしいのですが、本来生きて動いていたものがそのアイデンティティーである「動き」を奪われ、stillになってからも生き物として時間が過ぎるということはどういうことなのか、というなんか哲学的なことを考えながらゆっくり見てました。…まぁ、そんな偉そうなこといって一番気に入ったのはこの右上の「豆腐」っていう作品なんですけど。とうふ。
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美術館があったのは大濠公園という大きな公園の中だったので、美術館を出てから一周ぐるりと歩いてみました。すごいすごい、都内ではなかなか見られない鳥がいっぱい!マガモ、ダイサギ、アオサギ、カワウにぴーひょろろと鳴いてるトビの大家族もいました。
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そこからさらに駅で二駅のところの福岡市博物館にも足を延ばしました。美・博物館のハシゴというのもなかなかしないかも。こちらは特別展示で「魔女の秘密展」というのがあったので、あら、ハリーポッターからの魔法ブームでファンタジーな感じの展示かしら?と気軽に見に行ったら、中世ヨーロッパの魔女狩りの歴史などに焦点を置いており、拷問に使われた様々な道具も並べてありました。「魔女裁判の決め手は自白だったので、とにかく自白させるために酷い拷問が繰り返された」という解説を読んだ後に、顎を砕いたり脛を折ったりする道具を見るとなかなか…むう。
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そこから徒歩数百メートルにあるのが福岡タワー!日本では東京スカイツリー、東京タワーについで3番目に高い建築物なんだそう。博多湾、海浜公園、マリゾン、ヤフオクドームも見える。お天気も良くてよい眺め!ちなみに展望料金は大人一人800円なのですが、福岡市美術館や博物館、各特別展の半券提示で160円ほど値引きになりました。逆でも割引があるみたい(福岡タワーの半券で美術館・博物館が200円値引き…ということはタワーに先に来たほうがよりお得なんですね)。
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その後は展望台から見えていたシーサイドももち海浜公園まで行ってきました。みんな昼間っから海沿いのお食事処で焼き鳥にビールとかやってて楽しそう。
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連日連夜様々な方と一緒にお食事できたのも楽しかったです。福岡の皆様、ヒト癖フタ癖あってアツいですね。打ち上げのもつ鍋美味しかった…。また食べたい…。
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4泊5日の福岡滞在でしたが色々たんまり満喫できました。また絶対遊びに学びに帰ってきます!3週連続で名古屋・東京・福岡とお送りしたPRIのこの夏の(…というか、まだ5月なんですけどね)マイオキネマティック・リストレーション集中講習はこれで終了ですが、次の帰国の12月にパワーアップした講習が提供できるよう講師一同頑張ってまいります。講習に参加してくださった皆様にはお伝えしましたが、12月にPostural Respirationの講習を実現するのが今の我々の目標です。有言実行にしなければ!
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  by supersy | 2016-05-31 15:00 | PRI | Comments(0)

PRI東京講習終了!

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58名の猛者たちと最高に楽しい週末を過ごしてきました!PRI Myokinematic Restoration東京講習が無事終了です。今回は素晴らしくしつこい参加者さんがいっぱいで(めちゃめちゃ褒め言葉です)、自分の言葉でPRIを喰らいついて噛み砕き表現しようとする人、休憩返上で実技の練習を繰り返す人たちが沢山で我々講師も幸せを左奥歯で噛みしめておりました。せっかく皆さん土日返上で講習に来てくださっているんですもの、心行くまで学んで帰ってほしいじゃありませんか。

アンケートの過去の要望を読みながら、講師もそれぞれ試行錯誤しながら、毎回教え方や内容を少しずつ変えています。PRIのオリジナルさは変えず、現在提供できるMyokinの内容のみでもいかに多くの患者さんに使えるよう応用可能か、というところも考えながら…。今回の講習の実技時間は過去最高に長く取りました。福岡もこの感じで行こうと思ってます。実技は京都から弾丸日程で駆けつけてくれたPRI教育コーディネーターぬっきーさんと、EBP講習のたびにもお世話になっている高橋さんにもラボアシスタントとしてお手伝いいただきました。

あと今回本当に縁の下の力持ちで講習開催を支えてくださったのは主催の帝京大学スタッフの皆さん!初日、会場入りしたらこんなに素敵な看板が出ていたのでびっくり!軽食にも心憎い演出が…(たけのこの里派な私の好みにもどんぴしゃ)。参加者の皆さんはもちろん、我々講師もゆったりしっかりまったり過ごせるような環境を作っていただいて助かりましたー、本当にありがとうございました。
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  by supersy | 2016-05-23 18:00 | PRI | Comments(0)

苦しい時には、手を膝につけ!

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よくキツいworkoutの最中に、コーチが選手に「膝に手を付けるな!手は頭の上!」「うなだれるな!前を向け!」と指導したりしますが、私は敢えて言いたいです。苦しい時には、うなだれやがれ!
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…ま、うなだれるという表現はちょっと大げさですが、胸・腰椎の屈曲、肋骨を内旋位に持っていって、Zone of Apposition (ZOA)をrestoreした状態でまずstate of exhalation (空気を吐き切った状態)を確立し、そこから空気を吸ったほうが効果的な空気の動きが実現するのではと思います。ちょっと絵も描いてみました(↑)。

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これはWestern Washington Universityの修士学生が2014年に発表した論文1なんですけれども、面白かったのでまとめておきます。この研究では『伝統的』なHands on head (HH)と『非伝統的』であるHands on knee (HK)のふたつのリカバリーポジションを比較しています。被験者になったのは女子サッカー選手20人(平均年齢20.3±1.1才)。Treadmillを使って4分間激しいランニング(90-95% HRmax)をさせ、その後3分間recovery positionで休憩、これを4回繰り返す。このとき、休息中に取るポーズはランダムでHHかHKと事前に決まっており、休息中はHRR (heart rate recovery)、VCO(carbon dioxide elimination)、VT(tidal volume)を計測、記録。一番最後の3分休息の後、Wingate Anaerobic Test (stationary bikeを30秒をできる限り早く漕ぐ)を使ってanaerobic powerも計測しました。
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…で、統計的に優位な違いが認められたのは一分当たりのHeart Rate Recovery (53±10.9 vs 31±11.3 bpm; p<0.001)とTidal Volume (1.4±0.2 vs 1.3±0.2 L/min; p<0.008)。つまるところ、休憩中の呼吸を吸う・吐く時の空気量が多く、air exchangeがより効率よく行われていること、そしてその結果、心拍数がより早く通常へ戻っていることが確認されたわけです。

もちろん被験者がたったの20人じゃん、とか、あくまで修士論文でジャーナルでは発表されてないじゃん、とか色々あるとは思うのですが、この2 positionsを比較した研究は他で見たことないので私は面白い情報源だと思って読ませていただきました。backgroundなどとてもよく書かれていますね。だからね、"Keep your head up! (頭を上げろ)"という言葉が見た目だけでなく精神的なメッセージも含まれているのは分からなくはありませんが、最も効率が良い回復の為には、上げる頭は心の中だけにして、実際の頭はうなだれているくらいで、膝は手についていたほうがいいぜよ!という結論を、なんとなくここにぽつりと置いておきます。コーチングスタッフの理解さえあれば、現場での応用の仕方は色々あると思いますですよ。過呼吸気味の子とか特に…。

1. Houplin JVM. The effects of two different recovery postures during high intensity interval training. [master's thesis]. WWU Masters Thesis Collect;2014:330.
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  by supersy | 2016-05-01 15:00 | PRI | Comments(0)

Frisco, TXにて。

今週末はダラス、というかダラスの少し北のフリスコというところでPRI Pelvis Restorationの講習に参加してきました。Pelvisを取るのは二年半ぶりくらいだったので良いリフレッシュになりました。今回の講師はネブラスカのHruska ClinicでRonと共に働くLori氏。彼女もPRIセラピストとして長く活躍されてるベテランさんで、きちりきちりと教える方なので私好きです。Inlet...Outlet...イメージしやすい…楽しい…ふふふ…。
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施設も素晴らしかったです。今回EXOS (旧:Athletes' Performance)さんがホストしてくださったので、施設見学もフラフラとさせてもらったのですが(EXOSに来たのは実は初めて)、Fieldhouse USAという巨大スポーツ施設と隣接しており、大きなバレーボール、バスケットボールの大会が巨大体育館で行われていたり、室内の芝グラウンドでインドアサッカーの練習も行われていたりと、週末でもとてもアクティブに人が出入りしていました。
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こんな裏話を書いて楽しく読んでくれる人がいるのがわかりませんが、このPelvisのコースはLori氏自身が時間をかけて作り上げたもので、Ronが作ったMyokinやPosturalとは構成がだいぶ違います(もちろん、Ron氏が監修はしていますが)。はっきり言って、分かりやすい、追いやすいです。今回の講習に参加して、改めてMyokinの次に日本で提供するのをPelvisにしていたらもっと楽だっただろうなぁ…と身勝手に思ったりもしてますが、PRI講習ができたばかりのころ一番最初にRonが作ったのはPostural Respirationだったほど、呼吸と胸郭はPRIの心臓になるところなので、やっぱり次はPosturalです。肋骨をappreciateせずにPRIの神髄に近づくことはできません。ただ、あの講習はめちゃめちゃ内容が複雑なので、準備にはもう少し時間がかかりそうです。マニュアルの翻訳はケニー氏が頑張ってくれていますが、私個人の講師としてのトレーニングという意味でももう少し時間を使わないと、私が納得いくものが提供できないぜ!という気がしています。うーむ。一日が30時間あったらなぁ。
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あっ!この写真、キレイにL AF IRできてる。私はPelvis patientではないと思う。とりあえず、今はDFW空港です。これから夜の便でCorpusに帰ります。楽しい週末だったー。
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  by supersy | 2016-04-04 08:00 | PRI | Comments(0)

Indianapolisにて。

今週末はインディアナポリスにてPRIのPostural Respiration講習に参加してきました。大先輩のJamesの指導の下、今度新しく講師に加わるLouiseも研修に来ており、さらには今年PRT(Postural Restoration Trained)の資格を取得した友人のまささんもシカゴから参戦してPRI Familyは大所帯!その他40人超の参加者さんと、わいわい賑やかに勉強してまいりましたよ。
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せっかく二年ぶり?くらいのまささんとの再会だったので、何か楽しいこともしたいねー!ということで、土曜日の夜は講習が終わった後にIndiana Pacers vs Oklahoma City Thundersの試合を観戦に行ってきました。インディアナポリスダウンタウンに車を停め、ふらふら観光もしながら会場のBankers Life FieldHouseへ。早めに会場についたのでお散歩していたら、伝説のReggie・Millerのジャージが展示されているのを発見。こ、神々しい…!
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試合は一度見てみたかったPaul GeorgeもKevin DurantもRussell Westbrookも怪我もなくフル出場で、最後の最後まで分からない大接戦!見応えがありました。Georgeのシュートタッチ柔らかい!Durantの足長い!WestbrookはBad boyかと思っていたらチームメイトに満遍なくボールをdistributeし、試合が止まると真っ先にチームメイトに声をかけ、勝負どころでは自分で猛烈に点も取りに行ける、self-lessで素晴らしい選手でした。悪いほうの魔人ブウみたいだなんて思っててごめん…!彫りが深いだけなんだね…!
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そんなこんなでここのところ仕事が立て込んでいて殺伐とした気持ちになっていましたが、職場を離れ、がっつり学んでがっつり楽しんで、リフレッシュして帰ってくることができました。また新たな一週間、気持ちを新たに頑張りたいと思います。
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  by supersy | 2016-03-20 23:10 | PRI | Comments(0)

なぜ風船を使ってエクササイズをするのか?

先週は一学期に一回の博士課程のオンサイト授業でユタ州はプロボまで行っておりました。寒かった…雪がちらついてた…ひー。
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さて、最近PRI(Postural Restoration Institute)という名前がメディアで出回っていたりもするようなので、きちんとした理解を持ちたいと思って下さっている方々のために文献紹介の簡単な記事を書いておきます。

●コアとは
コアとか体幹とかいう言葉がトレーニング界隈で騒がれるようになって久しいですが、それがどういう意味を持つか皆さんご存知ですか?コアの定義はその医療従事者・トレーニング専門家の信じるprincipleによって様々なものがあるかと思いますが、多種多様な定義に必ず含まれているのがThe Lumbo-Pelvic-Hip complex。腰椎、骨盤、股関節にかけて形成されている、その名の通り複雑で緻密な複合体です。胸椎を入れる入れないとか、頚椎を入れる入れないとか、頭蓋骨はどうだとか、そこらへんは諸説あっても、とりあえず腰椎・骨盤・股関節を「コアの一部と考えない」流派はまずいないのではと思います。
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●Intra-Abdominal Pressure (腹圧)
加えて、腹腔内で作られる圧力のコントロールと維持も体幹の安定性に欠かせない要素です。この圧力(Intra-Abdominal Pressure = IAP)は、上部は横隔膜 (diaphragm)、背部は多裂筋 (multifidus)、下部は骨盤底筋群 (pelvic floor)、そして横周りをコルセット状の腹横筋 (transverse abdominis)から四方八方からむぎゅっと囲まれることで初めて安定します。これら4つの筋肉が協調的に活動、拮抗しあいながら適切なIAPを確立・維持するという能力は、スムーズで無駄と負担のない人体の動きを実現するのに必要不可欠なわけです。
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実際この4つの筋肉は英語ではanticipatory musclesと表現されることもあり、文字通り四肢の動きを予期 (anticipate)し、腕や足の筋肉よりもコンマ数秒早く活性化されることは様々な研究でも実証されています。1-7 腕を動かそう、と考えた時点でこれらの筋肉の活動はもう始まっているなんて、せっかちというか頼もしいと言うか。Feedfowardメカニズムともよく言われますね。腹圧管理係4人集なわけです。

b0112009_7195724.pngb0112009_7341988.gif左の写真(腹水症の患者)は、病理によって受動的に腹圧が上がっていますが、この4つの筋肉の拮抗しあう力がかかっていないため、体幹の安定性は確立されてない状態になります。ただ圧がかかっているだけではダメなのです。圧が前方に逃げてしまわないよう包み込むように4つの筋肉それぞれが拮抗して収縮し、そのバランスが取れていないと(写真右)。

●代償
骨盤痛8 や仙腸関節痛9 や腰痛10 の患者は、健康な人に比べて、これらのfeedforward musclesを活性化する能力が低下し、代償的に起こる大腿二頭筋や外腹斜筋、脊柱起立筋などのいわゆるグローバルマッスルの過活動に頼って何とか体幹の安定性を出そうという傾向があると報告されています。言いかえれば、これらの患者を治療していく上で、仙腸関節そのものや、腰椎ばかりを診るのではなく、例の4人集の機能をいかに回復するかが真の症状改善の重要な鍵になるわけです。

中でも横隔膜は実に面白い筋肉です。姿勢筋としての機能はもちろん、呼吸筋としてもっと大事な機能も担っています。「人がこの世に生を受けて一番最初に使う筋肉であり、最期に使う筋肉でもある」なんて聞いたこともあります。理想としては横隔膜が呼吸筋 兼 姿勢筋として、その能力をノビノビと発揮できれば言うことがないわけですが、横隔膜の活動が低下すると胸鎖乳突筋、斜角筋、僧帽筋上部などがその呼吸機能を補おうと過活動を起こし、胸郭を引っ張り上げる形で吸気を行おうとする、いわゆる"Dysfunctional Breathing Pattern"が始まってしまいます。23, 24 呼吸の代償行為です。

●代償の結果
こうして呼吸や姿勢を保つのに本来使うべき筋肉を使えない状態が続くと、前述したようなグローバルマッスル(= prime movers)の過活動がおき、姿勢・呼吸が理想的に保てない・行えないばかりか、スポーツ等のパフォーマンスにも影響が出てくることになってしまいます。最適なスポーツパフォーマンスとは、使うべき筋肉の活性化と、休むべき筋肉の抑制のバランスが取れてこそ実現するからです。例えば、今まさにジャンプをしようと大腿四頭筋を収縮させる時には、対となる大腿二頭筋が抑制されてこそ大腿四頭筋の真価が発揮されるわけですよね?大腿四頭筋と大腿二頭筋の収縮が同時に起こってしまうようなことがあれば、co-contractionと呼ばれるような足の動きの硬さが生まれてしまい、しなやかで流れるようなジャンプの実現は難しいでしょう。これを示唆するかのように、「自覚症状が全くない人でも横隔膜を適切に使えていないとFMSのスコアも低くなる傾向にある」という研究も発表されていたりします。28 いやはや面白い。
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●代償パターンから抜け出す
横隔膜を使った呼吸はヨガ11 やピラティス12、太極拳13 などのトレーニングでも随分昔から使われており、近年ではそういった呼吸法をスポーツ医学やアスレティックパフォーマンス、ストレングス&コンディショニングの分野でも取り入れられることが増えてきました。実際に、呼吸に特化したトレーニングを積むことで、持久力や筋力の向上が見られたと2つのメタ分析論文によって報告されています。14,15 自然な呼吸パターンを取り戻すことで 1) 頭部、頚椎、額関節、肩甲骨に胸椎の姿勢改善が見られること、16 2) 腰椎の痛み低下につながること、17 3) 4人集の機能が回復され、体幹の安定性が取り戻せること18, 19 などが分かっているのです。

本筋からは脱線しますが、横隔膜を使った深い呼吸で副交感神経優位になることから、血圧が下がったり、20 練習後にこうした呼吸トレーニングを足すことで運動誘発性酸化ストレスの程度を下げ、効果的なリカバリーが促進される21とも発表されています。エリート水泳選手を対象にした「週に最低一回の呼吸トレーニングで風邪を引く頻度が減った→免疫力の向上に効果アリか?」という論文22も面白かったなぁー(これに関しては私はまだ懐疑的です)。

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その横隔膜の機能獲得に、風船を使ってエクササイズをしてみたら面白いんじゃない?というのが上の論文です。25 読みやすいので興味がある方には是非読んでいただきたいです。ちなみにこの論文はfree full textですよ、リンクはこちら

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こちらは実験タイプの論文です。26 腰痛・骨盤痛のある患者をOber's Test (= Adduction Drop Test)を用いて評価して、その結果によって2つの異なるエクササイズを処方(両方陽性の場合は左、片方のみ陰性の場合は右)。それぞれの運動をワンセッションのみ試したところ、エクササイズ前と比べて股関節の可動域と痛みが大幅に改善(それぞれp <0.01、p <0.01)されたという報告がなされています。こちらもfree full textですよ。
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こちらの記事はClinical Suggestion。27 横隔膜をターゲットにした呼吸に加えて、IC Adductorと呼ばれる内転筋を活用したエクササイズの臨床に於ける臨床的価値を議論しています。これもfree full text。

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こちらは症例報告。29 21歳の「日常生活に支障が出るほど」の腰痛が主訴の大学生野球選手が取り上げられており、当初3週間かけてMuscle Energyやカイロプラクティック・マニピュレーション、腰椎の安定性を上げるような運動をしてみるも効果が見られず。アプローチを変え、特殊なメガネ(視覚情報のinputに対する治療介入)と、横隔膜を使ったエクササイズとの併用で症状が完全に消失し、競技完全復帰まで持っていけた、という内容です。こちらもfree full text。

そんなわけで、少ないですがPostural Restoration Institute (PRI)に直接関わる文献をここで紹介させていただきました。興味がある方は是非読んでみて下さい。でもね、タイトルこそ「風船を使って…」って書きましたが、PRIエクササイズは風船を使わないものの方が多いんですよ。風船は、まだまだ腹壁が上手く使えない段階で「拮抗」の感覚を出すのに有効なので使っているだけで、腹壁が活性化できるようになれば風船無しでも呼気を意識しながら様々なエクササイズが行えます。

最後に、本家PRIのウェブサイト(英語)と、PRI Japanのウェブサイト(日本語)へのリンクもどうぞ。2016年5月に公式の講習会が名古屋、東京、福岡の3会場で予定されており、申し込み受付は3月14日(月)日本時間午前8時に開始いたします。座席には限りがあり、かなり早いペースで埋まる可能性がありますのでご理解ください。5月に色々な方にお会いできるのを楽しみにしております。

(ちなみに、このブログで初めてPRIを紹介する目的で書いたエントリーがこちらです。個人的なPRIに対しての思いをかなり正直に書いてます。ぶっちゃけすぎた?こちらも宜しければどうぞ)

1. Hodges P. Is there a role for transversus abdominis in lumbo-pelvic stability? Man Ther. 1999;4(2):74-86.
2. Hodges P, Gandevia S, Richardson C. Contractions of specific abdominal muscles in postural tasks are affected by respiratory maneuvers. J Appl Physiol. 1997;83(3).
3. Hodges PW, Butler JE, McKenzie DK, et al. Contraction of the human diaphragm during rapid postural adjustments. J Phys. 1997;505(2):539-48.
4. Sapsford RR, Hodges PW, Richardson CA. Activation of the abdominal muscles is a normal response to contraction of the pelvic floor muscles. In: International Continence Society Conference. Japan, 1998.
5. Hodges PW, Richardson CA. Contraction of the abdominal muscles associated with movement of the lower limb. Phys Ther. 1997;77(2):132-43.
6. Hodges PW, Heijnen I, Gandevia SC. Postural activity of the diaphragm is reduced in humans when respiratory demand increases. J Physiol. 2001;537(3):999-1008.
7. Kolar P, Sulc J, Kyncl M, Sanda J, Neuwirth J, Bokarius AV, Kriz J, Kobesova A. Stabilizing function of the diaphragm: dynamic MRI and synchronized spirometric assessment. J Appl Physiol. 2010;109(4):1064-71. doi: 10.1152/japplphysiol.01216.2009.
8. Bussey MD, Milosavljevic S. Asymmetric pelvic bracing and altered kinematics in patients with posterior pelvic pain who present with postural muscle delay. Clin Biomech. 2015;30(1):71-77. doi: 10.1016/j.clinbiomech.2014.11.002.
9. Shadmehr A1, Jafarian Z, Talebian S. Changes in recruitment of pelvic stabilizer muscles in people with and without sacroiliac joint pain during the active straight-leg-raise test. J Back Musculoskelet Rehabil. 2012;25(1):27-32. doi: 10.3233/BMR-2012-0307.
10. Kolar P, Sulc J, Kyncl M, Sanda J, Cakrt O, Andel R, Kumagai K, Kobesova A. Postural function of the diaphragm in persons with and without chronic low back pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2012;42(4):352-362. doi: 10.2519/jospt.2012.3830.
11. Telles S, Sharma SK, Yadav A, Singh N, Balkrishna A. Immediate changes in muscle strength and motor speed following yoga breathing. Indian J Physiol Pharmacol. 2014;58(1):22-29.
12. Barbosa AW, Guedes CA, Bonifácio DN, de Fátima Silva A, Martins FL, Almeida Barbosa MC. The Pilates breathing technique increases the electromyographic amplitude level of the deep abdominal muscles in untrained people. J Bodyw Mov Ther. 2015;19(1):57-61. doi: 10.1016/j.jbmt.2014.05.011.
13. Lan C, Chen SY, Lai JS, Wong AM. Tai chi chuan in medicine and health promotion. Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:502131. doi: 10.1155/2013/502131.
14. Illi SK, Held U, Frank I, Spengler CM. Effect of respiratory muscle training on exercise performance in healthy individuals: a systematic review and meta-analysis. Sports Med. 2012 Aug 1;42(8):707-24. doi: 10.2165/11631670-000000000-00000.
15. HajGhanbari B, Yamabayashi C, Buna TR, Coelho JD, Freedman KD, Morton TA, Palmer SA, Toy MA, Walsh C, Sheel AW, Reid WD. Effects of respiratory muscle training on performance in athletes: a systematic review with meta-analyses. J Strength Cond Res. 2013 Jun;27(6):1643-63. doi: 10.1519/JSC.0b013e318269f73f.
16.Neiva PD, Kirkwood RN, Godinho R. Orientation and position of head posture, scapula and thoracic spine in mouth-breathing children. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2009;73(2):227-236. doi: 10.1016/j.ijporl.2008.10.006.
17. Lamberg EM, Hagins M. The effects of low back pain on natural breath control during a lowering task. Eur J Appl Physiol. 2012;112(10):3519-3124. doi: 10.1007/s00421-012-2328-6.
18. Vieira DS, Mendes LP, Elmiro NS, Velloso M, Britto RR, Parreira VF. Breathing exercises: influence on breathing patterns and thoracoabdominal motion in healthy subjects.
Braz J Phys Ther. 2014;18(6):544-552. doi: 10.1590/bjpt-rbf.2014.0048.
19. Kim E, Lee H. The effects of deep abdominal muscle strengthening exercises on respiratory function and lumbar stability. J Phys Ther Sci. 2013;25(6):663-665. doi: 10.1589/jpts.25.663.
20. Lee JS, Lee MS, Lee JY, Cornélissen G, Otsuka K, Halberg F. Effects of diaphragmatic breathing on ambulatory blood pressure and heart rate. Biomed Pharmacother. 2003;57 Suppl 1:87s-91s.
21. Martarelli D, Cocchioni M, Scuri S, Pompei P. Diaphragmatic breathing reduces exercise-induced oxidative stress. Evid Based Complement Alternat Med. 2011;2011:932430. doi: 10.1093/ecam/nep169.
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24. De Troyer A. Effect of hyperinflation on the diaphragm. Eur Respir J. 1997;10(3):708-13.
25. Boyle KL, Olinick J, Lewis C. The value of blowing up a balloon. N Am J Sports Phys Ther. 2010;5(3):179-188.
26. Tenney HR, Boyle KL, Debord A. Influence of hamstring and abdominal muscle activation on a positive ober's test in people with lumbopelvic pain. Physiother Can. 2013;65(1):4-11. doi: 10.3138/ptc.2011-33.
27. Boyle KL. Clinical application of the right sidelying respiratory left adductor pull back exercise. Int J Sports Phys Ther. 2013;8(3):349-358.
28. Bradley H, Esformes J. Breathing pattern disorders and functional movement. Int J Sports Phys Ther. 2014;9(1):28-39.
29. Robey JH, Boyle K. The role of prism glass and postural restoration in managing a collegiate baseball player with bilateral sacroiliac joint dysfunction: a case report. Int J Sports Phys Ther. 2013;8(5):716-728.

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  by supersy | 2016-02-18 18:30 | PRI | Comments(0)

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