2017年 12月 16日 ( 1 )

 

Modified Neer Impingement Testの診断力やいかに。

秋学期が終了しました!やった!今学期も最後までドタバタでした。日本に帰ってまいりました。
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さて、Subacromial Impingement Syndrome (SIS)についてぼけっと考えていたらこんな最新論文1 を見つけたのでまとめておきます。まさに今月発表のものだそうです。

SISは数ある肩の障害でも最も頻繁(肩の障害全般の44-65%)に起こると言われており、2 個人的な意見としてはPrimaryよりもSecondaryのほうが圧倒的にアスリートには多く、長期なリハビリを要する可能性が高いため、早期発見・早期介入がカギになるんじゃないかと思ってます。んで。よく使われる診断テストの中にNeer Impingement Test(下の動画参照)というのがあるんですが…非常に有名なテストである一方で、現場での診断力はというと、なかなか完璧とはいかないんですよね。


既存の論文からのDiagnostic valuesを見てみると(別途まとめるのが面倒くさかったので、私の授業のパワーポイントから失礼します)、Neer Impingement Testはどちらかというと確定力より除外力のほうが高そう?でもなんならもう一つの有名なHawkins-Kennedy Testのほうがまだ使えそう?うーん、どちらにしてもこれだけでSISの診断を確立できるようなものではなさそうです。
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では、このNeer Impingement Testの正確性をより高くするために、こんな風にModifyしてはどうか?と提案しているのが今回の論文なのです。疑問が多く出てきますのでネチネチ指摘していきたいと思います。

1. (Original) Neer Impingement Test
この論文によればNeer Testは「座位の状態の患者の腕を取り、片手で肩甲骨を支持しながらもう片手で受動的に腕を前方に挙上("elevate the effected arm from the ventral direction")。60-120°の外転時に痛みが出れば陽性」とあるのですが、これはちょっと分かりにくい表現ですし(肩を前方に挙上していったら屈曲の動きになると思うんですが、外転と表現されているあたりで混乱してしまいます)、私が知っているNeer Testとは少し異なるのです。Neer氏のオリジナルの描写を読む限りでは、「肩を腕ごと内旋してからの最大屈曲」をさせオーバープレッシャー、痛みが出るかどうか見るもののはずなんです。この論文で紹介されているNeer Testには引用が全くされておらず(これはちょっとまずいでしょう)、筆者らが解釈しているNeer Testが本来のNeer Testからズレがある可能性があります。これは後に大きなバイアスを生む可能性を含んでいます。
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2. Modified Neer Test
Step 1: Figure 1(↑)にあるように、肘を90°に屈曲させ、掌が下を向く状態を取る。ここで痛みがあることを確認する。

写真ではさながらHawkins-Kennedy Testの開始時のような恰好になっていますが、面白いことに「肘が90°、掌は下」という指定があるだけで、肩の状態が全く描写されていないんです。写真では肩が…ええと…90°の屈曲というよりは90°のScaptionをしているように見えるんですけど…実際のところどうなんでしょう?どうしてこの肝心な部分の説明が一切ないのか疑問です。この描写を読んでテストをやってみろと言われても、筆者たちと全く同じテストを再現できる自信が私にはありません

Step 2: Figure 2(↑)のように、肩を少し外転させてから90°外旋、そこからさらに腕を挙上する。これで痛みが軽減したり無くなれば陽性。痛みが増えたり、この状態が撮れなければ陰性。

…ん?外転してから外旋、そしてまた挙上?Arm elevation(腕の挙上)と言う言葉は曖昧なので、shoulder(肩関節の) flexion(屈曲)とかshoulder(肩関節の) abduction(外転)などとはっきり明記されるべきだと個人的には思います。"slightly abducted"だの(slightlyってどのくらいよ?)、"elevate the affected arm again"だの(これもどのくらい?)も、程度がわからない、解釈に苦しむ表現です。…というか、ここまでNeer Testの原型を留めていないなら、なぜModified Neer Testと呼ぶ必要があったのでしょう?全く違う名前でもよかったのでは?

続けます。被験者となったのは15-65歳の肩の痛みを訴えて来院してきた82人の患者(平均年齢不明、男50人、女32人、うち3人は両肩の痛みを訴えていたため、全部で85の肩を検証)で、一人の医師が一貫して患者を診察(Neer TestとModified Neer Testを使用)。その後にX-rayとMRAを行って最終診断を下した、とあるのですが、ここのところも不明瞭な点がいくつかあります。
「最終診断は以下の診断基準を使って下された」と書かれているところで、「SISの主な診断基準は腕の挙上に伴う痛み、インピンジメントサイン(説明がないのでこれが具体的に何を指すのかは不明)、painful arc、上腕骨大粗面の圧痛、肩峰下滑液包リドカイン注射、レントゲン(この二つはprocedureであって発見ではありません、何を意味するのかさっぱり分かりません。レントゲンは全員撮ったんでしょ?)、タイプIIかIIIの肩峰突起 + 硬化と、上腕骨大粗面と肩峰突起骨棘結成など」 と記述されており、これら全てがpresentならSISという判断をするのか、ひとつだけでもいいのか(だとしたら腕を挙げての痛みでSISというのは遅しく浅はかな診断である気もしますが)、何度読んでも測りかねます。「など」、と最後に含みを持たせているところも気になります。これらがどれだけ確実なSIS診断をもたらすのかという具体的な説明はなく、「本当にこの基準を使ってSIS患者を正しくidentifyできるの?」というのは疑問の残るところです。

一方で「Frozen shoulderの主な診断基準は痛みと能動的、受動的両方のROMの全体的な(特に内外旋)低下、レントゲンでは異常が見られず、且つMRIで関節包のthickeningが確認できること」とあります。最初の「痛み」っては少し広すぎかと思いますが、SISの診断基準よりは格段に理解しやすいです…相変わらず根拠は書かれていませんが。もっと言うとFrozen shoulderって正式な医学用語ではないと思うので、適切かつ具体的な診断名をちゃんと表記すべきでは?とも思うのですが…(個人的には「Frozen shoulderってつまるところ、Adhesive capsulitisでしょ?」と思って読んでいたのですが、考察のところで「Frozen shoulder = capsular adhesionという概念はエビデンスによって否定されており、capsular adhesionと言う言葉は使うべきではないという意見もある」と書かれており…これは知らなかった!目からうろこです。どういう「エビデンス」なのか、あとで読んでみなくてはです)。
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結果はどどーんと張っちゃいます。こんな感じです。論文のデータを元に2x2テーブルを作って、そこからLikelihood ratioと、ついでに95%CIも計算してみました(本文中で求められていたのが感度、特異度と+/- Predictive valuesのpoint valueのみだったので)。SIS有の患者数がNeer Testが41人、Modified Neer Testでは40人と、全く同じ被験者グループを検証したはずなのに人数が違っているのは非常に奇妙です。どこか数字にミスがあるのではと思います…。このままの数字を解釈すると、Modified版のほうが除外力を兼ね備えたまま確定力が格段に向上しているような結果に見えます。興味深い記述としては、「Frozen shoulderと診断された14人、15の肩のうち、Neer Testは全員陽性(つまり偽陽性)で、Modified Neer Testは全員陰性(真陰性)だった」、つまり、SISと混同されがちなFrozen shoulderも、Modified Neer Testを使えば正しく鑑別できちゃったぞってことでしょうか。

結論では「Modified Neer TestはSISとFrozen shoulderの鑑別ができる、信頼性と正確性の高い素晴らしいテストである」とまとめられていますが、信頼性は一回も報告されていないのでここも???という感じです。計測できたとしたらintra-rater reliabilityだと思うんですけど(計測者が一名しかいないので)、測ったという記述もなければ、その数字の報告もありません。測っていないものをあるかのように報告している論文は初めてなので、ここ、誰も指摘しなかったのかな?と個人的にハラハラしてしまいます。

うーん、テスト自体は面白いし、外旋を使って痛みがなくなるか見ることで、他の肩の障害と区別をつけられるのではないかっていう発想はいいんですけどねぇ。やっぱり文章の正確性、研究のデザインやエビデンスの引用に穴がありすぎかな。こんなテストもあるんだなーってくらいに頭に留めておいて、続報がでたらまたチェックしてみたいと思います。今、現段階で現場で使うって感じでもないかな。


さて、帰国早々ですが、明日は一日立川で講習です!時差ボケを元気で吹っ飛ばして楽しんできたいと思います。


1. Guosheng Y, Chongxi R, Guoqing C, Junling X, Hailong J. The diagnostic value of a modified Neer test in identifying subacromial impingement syndrome. Eur J Orthop Surg Traumatol. 2017;27(8):1063-1067. doi: 10.1007/s00590-017-1979-8.
2. Bhattacharyya R1Edwards K, Wallace AW. Does arthroscopic sub-acromial decompression really work for sub-acromial impingement syndrome: a cohort study. BMC Musculoskelet Disord. 2014;15:324. doi: 10.1186/1471-2474-15-324.
3. Neer CS. Impingement lesions. Clin Orthop Relat Res. 1983;173:70-77.

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  by supersy | 2017-12-16 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

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