2017年 12月 11日 ( 1 )

 

PRI Advanced Integration 4日目とそれに関連する文献色々。

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AIの一日目に、相棒のケニーと一緒にPRI Director's Dedication Awardsという非常に名誉ある賞を頂きました。これはPRIに大きな貢献をした人に与えられるもので、年に1-3人の受賞者が発表される(該当者がいない年もある)のですが、過去の受賞者を見てみると、Susan Henning, Joe Belding (2012); Kyndall Boyle, James Anderson, Michael Cantrell (2014); Jason Masek, Michal Niedzielski (2015); Jennifer Poulin, Lori Thomsen (2017)とまぁ、PRI Home of Fame(殿堂入り)といってもいいくらいの面子が並んでいて、恐縮しかありません。ありがたいことです。

仲間内で(賞を上げあって)何やってるんだ、と失笑されるかもしれませんが、私は未だにPRIを他人様のものだと強く思っていて、自分が内部の人間であるという認識は全くありません。PRI講習会に私自身が参加することは、Ronの頭の中を少し覗ける貴重な時間を分けてもらえることであり(そしてそれはあくまで私の知的探求心に基づく120%趣味の行為であり)、自分がPRI講師として活動させてもらう機会に恵まれているのもたまたまそういう話が出たときに私がいたからで(むしろ「これでがっつりPRIを勉強し続ける理由ができた!ラッキー!」と思い、利用させてもらうくらいの心づもりでいました)、別に私に代わる人材などこれからいくらでも出てくるでしょう。何ならPRIから「アンタはもういいから、これからは他の人にやってもらうわ」と言われるようなことがあれば「そうですか!今までありがとうございました」と講師の草鞋を脱いでイチ受講者に戻る準備はいつでもできています。

しかし、今回この賞を頂いて…それからこの日の夜にはRonがPRI講師を全員食事に招待し、感謝会を開いてくれたのですが、これもまた心温まる会合で、本当にもうすっかり名実ともに家族になったと言ってもいいのかなぁという気分になりました。PRI講習、日本で開催できたらきっと面白いだろうなぁ、と考え、その実現まで膨大な時間とエネルギーを費やしてきたのは、あくまで「私がそうしたかったから」なのですが、それをRonばかりか、PRIコミュニティーが認め、感謝をしてくれているという実感は素直に嬉しいものでした。「いつでもやめろと言われたらやめよう」ではなく、「いつまでも家族の一員として恥じない仕事をしよう、そしてそのプロセスを楽しもう」と考えを改めました。これからも一層帯を締めて頑張っていこうと思います。

しかし何より最も言及されるべきはケニーの存在、彼の努力と尽力っぷりです。私もPRIに対してそれなりの貢献はしてきたのかもしれませんが、彼のそれとは比べ物になりません。PRIに間違いなく最も精通している日本人、且つ、私の14年(+?)来の友人であり、共にATとして成長をしてきた仲間…。彼のことは兄弟というのも、親友というのもなんだかいまいちしっくりこないのです。親友と呼ぶにはあまりに私が彼に対して抱く尊敬の念が大きすぎるのかもしれません。渡米してから16年、これでも私は私なりに必死にここまで休むことなく勉強してきたつもりなのですが、彼は「さゆりさんたぶんこれ好きっすよ」「さゆりさんこの本おススメっすよ」といつでも私の2-3歩先を歩んでいて(そして彼がそういうものはたいがい私は大好きになり)、私にinspirationと道しるべを与え続けてくれた存在だからです。私にとってはまぁ、ちょっとした仏ですよ。神的存在。

だから、今回これだけの名誉な賞を、他でもないケニーと一緒に受け取れたということがもしかしたら私は一番光栄に感じているかもしれません。若いころ、気の合う仲間と「いつか何かでっかいことしようぜ!」と盛り上がることは誰にでもあることなのかもしれませんが、そういう仲間と実際に10年後くらいに「でっかいこと」ができる機会なんて、滅多にないでしょう?

相変わらずマイペースな私ですが、つながるご縁に感謝してこれからも頑張っていこうと思います。



さて。AIは終わって昨晩Corpusに帰ってきましたが、もうひとつだけそれに関係する内容で読む機会があった興味深い論文1 があるので、忘れないうちにまとめておきます。
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これは講習内で出た論文ってわけではないのですが、歩行と呼吸のphase-lockingについてケニーと盛り上がっていた時にケニーが見つけてきて「面白そうやん!」となったので(これがあるので気がある友人と一緒にいると勉強が終わらない止まらない)。

1) 歩行・走行時の矢状面での体幹屈曲によって起こる「ふいご(bellows)」効果
2) 慣性の法則によって生まれる「内臓ピストン(visceral piston)」効果
3) 多くの体軸筋(axial muscles)が呼吸とロコモーションの二役を担っていること(トカゲやトリ、イヌなどは、走っている最中はこれらの筋肉は呼吸筋としての活動を停止し、走行に貢献するんだそう。役割がスイッチで文字通り切り替わるんですね)
…などの要素から、呼吸とロコモーションは機械的、神経的相互作用してphase-lockし合い、Locomotor-respiratory coupling (LRC)を生み出す、そしてだからこそ四足歩行、ギャロップ歩行する哺乳類は1:1の割合でstride:breathを行うのだ…というのは、この前回の記事でも書きましたね。
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しかし人間は二足歩行なので、少しばかり力の作用の仕方が違ってきますよね。例えばfoot-strikeの際にズシンと地面からの力を受け、内臓の下降(downward displacement of the abdominal viscera)と胸郭の圧迫(compression of the thorax)、それから立脚初期から中期にかけてのアームスイングもそこに上から圧迫を足すんでしょうけども、全体的に四足歩行の動物と比べると、bellows効果やvisceral piston効果など、機械的・筋神経的相互作用は少ないような気がします。つまるところ、人間のロコモーション時にそれほどphase-lockingは見られないのでは?という説を唱えている人たちがいるのです。この説を「支持する」研究として、「トレッドミルで走行中、step-driven flow(歩行そのものによってもたらされる、体内の空気の流れ)はtidal volumeの1-2%程度にしかならない。これは、trivialと言えるくらいの量で、どうやらロコモーションは呼吸に影響をほとんど及ぼさないようである」というもの2 が紹介されていました。ふーむ。しかしこのclaimに対して今回の論文の著者らは「トレッドミルでジョギング中、腕を脇に休めるようにし、アームスイングをさせなかったことはこの結果に大いに影響を与えた可能性がある」と論じ、この「結論」に異議を唱えています。だから、今回の論文ではしっかり腕の振りも付けて走ってもらって、呼吸とロコモーションの関係性をもう一度見つめなおしてみよう!というわけです。

で。この研究では14人の被験者(平均36±2歳、男5人、女9人; うち、7人が一週間に最低20マイルは走るというレクリエーショナル・ランナー、7人は運動はしているがランニングはしていない人達)を対象に(人数は少なく、ランナーvs 非ランナーとグループ分けをされているわけでもないし、少し行き当たりばったりなsubject selectionという感じ。もう少し明確な比較目的などあればよかったかと思う)、「30分間走り続けられる各自お好みのペース」を選んでもらい、5分間のウォームアップののち、5分間ジョギング。その間の呼吸を計測。
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結果なんですが。被験者の全員に高い頻度(high frequency)で起こるstep-driven oscillations in flowがあることが判明。foot-strikeの直後に吸気衝動が、その直後の身体が最も加速する際に呼気衝動が起こるんだそうで、それぞれ動く空気量は-12.7±4.5%と10.7±3.2% (of total ventilation, = 2.5-3.0% tidal volume per step during 2:1 step her breath rhythm)と、前述の研究2 よりかなり高い結果になっています。例えば軽く息を吐いた時にズシン、とfoot-strikeが起こって吸気衝動が生まれれば、空気の流れが逆流し、吐いていた息が吸い込まれるくらい勢いがあって強いものなんだとか。

Stride:breathの比率は個人差が大きく、しかも走りながらペースを変化させる人も少なくなかったようですが、どんなロコモーション・呼吸パターンを見せた人たちでも、やはり「好きなタイミングで呼吸をさせた」場合のほうがstep-driven oscillation in flowに逆らわず、利用するように(=エネルギーの無駄を最小化して、最も効率良く)走行・呼吸をすることが多かったのだそうです。その際、LPCとしては2:1が最も多く、このテンポが一番効果的であるのではないか、というのが今回の研究の考察です。

被験者群にバラつきがあり、sample sizeも小さいので気を付けて解釈されるべき研究だとは思いますが、理想的なエネルギー消費、ついてはより長い距離を呼吸筋を披露させずに走る方法として、2:1の走行:呼吸のリズムが最適かもしれない、という結論は非常に興味が沸きますね。続報があったらまた読んでみたいです。面白かった!

1. Daley MA, Bramble DM, Carrier DR. Impact loading and locomotor-respiratory coordination significantly influence breathing dynamics in running humans. PLoS One. 2013;8(8):e70752. doi: 10.1371/journal.pone.0070752.
2. Banzett RB, Mead J, Reid MB, Topulos GP. Locomotion in men has no appreciable mechanical effect on breathing. J Appl Physiol (1985). 1992;72(5):1922-1926.

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  by supersy | 2017-12-11 23:30 | PRI | Comments(0)

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