2017年 07月 05日 ( 1 )

 

船橋EBP講習を終えて、と、「PRICE」から「POLICE」に見る急性障害マネジメント理念の変化。

先週末はおおすか整形・船橋整形さんの合同開催によるクローズドのEBP講習を一日おこなって参りました。

EBPの基礎の話と絡め、今回はAMIや腱障害へのリハビリアプローチなどを「EBP治療介入・臨床応用編」として掘り下げてきました。この内容は、今回いただいたフィードバックを元に改良して、近日中に公式EBP講習の一環として申請しBOC認定を取る予定です。臨床で活躍する皆さんにぜひ役立てていただきたい内容ですので、受講ご希望の方は都内で開催する際にぜひ!
b0112009_00053535.jpg
せっかくリハビリの話もするなら、実践あるのみ!…ということで、(↑)皆でドロップスクワットも!じゅっかいさんせっとぉぉぉ!日曜日に皆で汗じっとりかきました。

多くの皆様、ご参加ありがとうございました。また来年も、きっとお世話になります!
b0112009_00060675.jpg
今回は初めてのコンシンカイもカイサイしました!アメリカの講習会では講師と参加者が飲んでコミュニケーション、という文化はないのでいわば「懇親会デビュー」でした。主催・運営してくださった主要スタッフ(↑)の多くが同年代だったので色々な「同年代話」で盛り上がりました。主にスラムダンクと幽遊白書…。



ついでにというかなんというか。Back to the basic...ということで、今回は怪我の対応の基礎のお話も少しだけ。

「足首の捻挫に、アメリカではギプスをしないんですか?」と聞かれたことがありました。

私はびっくりして「日本ではするんですか?」と逆に聞き返してしまいましたが、そうお尋ねしてくれた方曰く「よくする」んだそうで。骨折はともかく、アメリカで足首の捻挫対応にギプス固定はしたことも見たこともありません。私個人が選ぶアプローチとしては、荷重ができれば松葉杖やウォーキングブーツを併用しながらストレスを調節して歩かせるのが基本。痛みで荷重が一切できなければ、U字コンプレッション・パッドとバンテージで圧迫して(↓)松葉杖2本で非荷重状態を作ります…が、(荷重はまだ不可でもとりあえず)動かせるならクライオ・キネティックスなど早期に導入してなるべく動かせます。
b0112009_10500528.png
b0112009_11011890.png
アメリカでは1970年代後半から2000年初頭にかけてRICE、またはその進化形のPRICEと言われるケガの救急処置のモデルがポピュラーになりましたが、2012年に発表されたこの論文1(↑ ちなみにこの論文は全文無料です)でBleakley氏らは「このモデルはエビデンスを伴わない」「より良いものにアップデートされるべき」と主張。この論文発表から5年たった2017年現在、PRICEまたはRICE「しか知らない」もしくは「に頼りきり」のマトモなクリニシャンはアメリカにはもういないのではないかと思います(状況によってPRICEやRICEのチカラを借りるのが適切なケースももちろんあります。取捨選択をしたうえでのこういった治療を否定するつもりは全くありません、念の為。実際、Grade IIIの足関節の捻挫においては、最長10日の膝下のキャストは有効であるとするシステマティック・レビューもあります2)。

さて、それではどんなモデルが現在より好ましいとされているのか?

この論文のタイトルには「Should we call the POLICE?」つまり、「『警察』を呼びましょうか?」なんて書かれていますが、実はこれ、「(新しいモデルを)『警察』と呼ぶのなんてどうでしょうか?」ともかけられていて、新たなモデルである『POLICE (= 警察)』という新たな略語を推奨したものでもあります。

PRICEは「Protection, Rest, Ice, Compression, Elevation」の略(RICEはそこからProtectionを抜いたもの)ですが、POLICEは「Protection, Optimal Loading, Ice, Compression, Elevation」の略です。大きく変わったのはR = Rest (休息)からOL = Optimal Loading (適切な負荷をかける)という点で、この変更は「受傷直後に少し非荷重・無負荷の時期を短期間設けるのはともかく、不必要に長期のimmobilization/unloadingは有害(harmful)であり、組織の形状や機能に悪影響を及ぼす」ことから、「早期mobilizationとloadingが回復のカギである(↓)」という理念に基づいています。1-3
b0112009_16053969.png
患部を甘やかしすぎることなく、早いうちから体重をかけて歩く。早いうちから動かす ― もちろん、これは負荷を早く多くかければかけるほど良いという単純なものではありません。キーワードはExcessive Loading (過度な負荷をかける)ではなく、Optimal Loading (適切な負荷をかける)なのですから、やりすぎず、しかしやらなすぎない、という境界線を見定めなければなりません。回復期にある組織に負荷をかけすぎるようなことがあってはせっかく形成されてきたcollagen cross-linkが破壊され、患部が再出血・腫脹の再発など、ケガそのものが悪化したりすることもあるでしょう。大切なのは患者ではなくプロである医療従事者が「今はここまでの負荷なら適切」と見極め、モニターして継続した回復を促すということなのです。

「休みっぱなし」でなく「動く」、「動いてよい」ということに楽しみを見出すのは患者だけでなく医療従事者もそうなのではと私は思うんですよね。従来の「Rest」に比べて、新たに加わった「Optimal Loading」という言葉は工夫の余地が大いにあって、ちょいとウキウキしませんか?どれくらいが適量かな?どういったloadingを提供しようかな?と考える、新たな知的好奇心の扉が開くというか。
b0112009_16060959.png
そういう意味では、近年アメリカで流行っているスクーターや膝に装着するタイプのハンズフリー・クラッチ(↑)は少し疑問なんですよねぇ…。よりselectiveな荷重が可能で確かに移動は楽そうだし、短期的に患者のHRQOLは向上するケースはあるのでしょうけど、アメリカにありがちな「便利さ・手軽さ」のみを追求していて、長い目で見ると身体には悪影響になっていることもあるような…。

(しかしアメリカは肥満人口が多すぎて、松葉杖すら使えない患者が多くいる(= 腕で自重をそもそも支えられない)のも事実ですが。この国の健康問題の根は、また別のところにあるのかも知れませんね…)

ちなみに今回、I = Iceの話は掘り下げませんでしたが、ケガの急性期でのアイシングに関しては私は必ずしも否定派ではありません。以前ブログでも書きましたが、世の中のどんな療法も使いどころさえ間違わなければ体に良い効果をもたらす可能性は十分に含んでいると考えています。アイシングは悪魔でもなければ神でもありません。問題は、ほとんどの場合は使う側の人間にあるんですよね。

1. Bleakley CM, Glasgow P, MacAuley DC. PRICE needs updating, should we call the POLICE? Br J Sports Med. 2012;46(4):220-221. doi: 10.1136/bjsports-2011-090297.
2. Petersen W, Rembitzki IV, Koppenburg AG, et al. Treatment of acute ankle ligament injuries: a systematic review. Arch Orthop Trauma Surg. 2013;133(8):1129-1141. doi:10.1007/s00402-013-1742-5.
3. Jones MH, Amendola AS. Acute treatment of inversion ankle sprains: immobilization versus functional treatment. Clin Orthop Relat Res. 2007;455:169-172.

[PR]

  by supersy | 2017-07-05 23:45 | Athletic Training | Comments(4)

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE

AX