2017年 03月 12日 ( 1 )

 

月刊トレーニングジャーナル4月号発売 & チーム医療の実践のために知っておくべきこと、その2。

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月刊トレーニング・ジャーナル4月号が発売になっています!連載11回目の今回は、「新しい臨床スタンダードは、新しい教育から」というキーワードと共にアメリカAT教育で取り入れられている様々な教育方法について書いています。理想の教育って、どんなものなんでしょう?私自身、今でも試行錯誤の毎日です。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。

ちなみに私の連載は次回5月号分で終了です!一年間、長いようであっという間でした。



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#4 Kraft et al., 2013
近年の医療はservice-orientedから、patient-centered, collaborative & interprofessional approachへと移り変わっています。この際、それだけ効果的な「コラボ」ができるかどうかでquality & safety of health careが提供できるか決まるわけですが、この論文ではスウェーデンのShort-term care (STC) unit (患者が退院してから自立した生活を送れるようになるためのリハビリ・ケアを行うintermediate stageのことを指すらしい)に勤務する4人のOT、3人のPT、3人のRN(女性)を対象に、個別に45-90分のsemi-structured interviewを行い(ちょっと幅が広すぎるのが気になる…)、IPPに関する現状について調査し、まとめたのが今回の論文です。

出てきたテーマは4つ。
1. Crossing Professional and Organisational Boundaries
興味深いと思ったのは「give & take」というメンバーの関係性と、互いが互いの代わりとなれるよう、メンバー同士が教え合い、育て合って「入れ替わり可能」な環境をつくるのがよい、とされているところです。ただ、それを実現するにはどうしてもextra timeがかかってしまうので、それを負担に感じるメンバーも出ることでしょう。お互いのことを、仕事の面だけでなくpersonalなレベルで知ること、そして医療界のhierarchial system (階級制度)を考慮し、尊敬した上で仕事を行うことも大事だと書かれています。これは、前回の論文の「階級制があっては成功しづらい、全員が平等な立場であることが大事」という意見と少し異なりますね。

2. Awareness of Own Professional Identity
それなりに経験を積み、能力と責任が取れるプロたちが自分の専門性を役割を理解して仕事に臨む、ということも大事です。これは先のstatementと矛盾する感じもしますが、私は「境界線はぼかして交わることがあっても、自分の役割の核となる部分は自分だけが担う仕事であるからして、そこは責任を持って全うする」ということなんだと理解しています。あまりに駆け出しだと自分に自信が無くて迷いが出てしまう(=核が揺れる)ことから、こういったコラボ業務はまだ向かないのでは、とも書いてあります。

3. Information and Knowledge Transfer
情報をいかに共有するかは他の論文でも散々論じられていることですね。ここでも強調されているのはやはり「頻繁」に行われるミーティング、そしてそれに対してメンバーがきちんと集い、意見交換おこなうこと。daily reportでも、electrical reportでも、約束事を決め、それをこまめに実践することです。これらの効果的な実践にはsupervisionとfeedbackがあったほうがいい、という一文も興味深かった。この論文では実際の業務中、Assistant Nurse (AN)が忙しくてミーティングに参加する時間があまり取れなかったこと、そして彼らはmedical recordを読むスキルに欠けていたため、時にこれらのコミュニケーションから取り残されていたことが「問題」として述べられています。どんな医療業務でも、SOAPノートやMedical abbreviationを読む能力は必要ということですね。

4. Balancing Between Patient, System and Process
患者さんの健康状態、法律、リハビリのバランスを上手く取ることというのは実に面白いテーマです。ここでは、「どれがひとつがdominantになってしまうとダメ、特に法律によってケア期間が定義されてしまうなど、dominantしやすい傾向にある」と書かれています。そういった「縛り」のせいで、提供できたケアが最善のものだったのか疑問に感じていた医療従事者もいたと。法律に起因する時間や経済的制限が大きなinhibitorになってしまうのは、どこの国も一緒ですね。

まとめのところで印象に残ったのは、コミュニケーションの欠如はとにかく様々な問題を引き起こす大きな大きな要因である、ということ。例えば自分のメンツや周りとの関係を気にして質問をすることを躊躇してしまう、という環境は問題が起きるのをクチを開けて待っているようなもんで。supervision (監視)が必要である、と最後に複数回強調されているのだけど、どういう監視が理想的なんだろう?チームの中のリーダーが監視するの?それとも総合的に「チーム医療監視役」という人を設けるべきなのかな?以前の論文から受けた「spontaneousなのがいい」というのとはだいぶ逸れた、「管理」「監視」推しの厳しめの意見がこの論文では論じられているけれど、そちらが本当に理想なんだろうか?それから「駆け出しの医療従事者には向かない」とも何度も言及されていたけれど、「この子ならもうコラボ開始しても大丈夫!」という判断はどこでしたらいいんだろう?「準備」と早めるのに有効な教育やトレーニング法には、どんなのがあるんだろう?新たな疑問も多く出てくる研究でした。

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#5 Arvinen-Barrow & Clement, 2015
この論文の著者であるArvinen-Barrow & Clement氏らは「スポーツリハビリに臨むmultidisciplinary approachは『2層』であるべきだ」という信念を持っており、Primary rehab teamとSecondary rehab teamに患者を取り囲む周りの人間を分類、それぞれがそれぞれに合った役割を埋めていくものである、と主張しています。Primary rehab teamは怪我をした選手と直接、長時間を共に過ごすプロ集団、つまりPT, AT, physicians, surgeonsによって構成されており (direct interactions)、Secondary rehab teamにはその他の医療従事者や専門家 (S&C Coach, biomechanists, sport psychology consultants, sport nutritionists)と一般の人 (coaches, family members, friends, teammates)が関わっているそうです(direct and indirect interactions)。

さて、この研究ではATがこのArvinen-Barrow & Clementの提案するmultidisciplinary approachを採用することに対してどう感じているか、実際に現場でどういったmultidisciplinary approachを体験しているかについてオンラインアンケート調査を行いました。対象となったのはランダムに選ばれたNATA会員2000人(教育者と臨床者を区別もしなかった模様…在住国もランダムなのでは?)。ちなみに調査に使われたアンケートは「ATと最低でも10年のトレーニング・臨床経験のあるsport psychology consultantsに事前に見てもらってface & content validityを確認したもんね」と書かれていますが、他のvalidity、例えばcriterion or construct validityは未確認のまま。論文では「初期の研究はこんなもんである」みたいなことが書いてありますが、うーん、どうなのかなー。いろいろ緩い感じがするけどなー。途中の「リハビリ時にはどのくらいの頻度でmultidisciplinary teamを構成して取り組んでいますか?」という質問に「全く使わない」と答えた人は「アンケートにご協力ありがとうございました」で強制終了する用に作られており、仮に「1%(100回に1回)」とでも答えていれば最後まで回答可能だそうです。

さて、アンケートをメールで受け取った2000人のうちその19.65%にあたる、393人から回答(低く聞こえるかもしれませんが、この手のアンケートで20%のresponse rateは一般的と言っていいでしょう。しかし、よりIPP意識の高いATが回答する確率が高いと考えれば、sample biasがないとはいえません)。男女比は45.8%:54.2%, 男性平均年齢は39.48 ± 10.87歳、女性平均年齢は33.65 ± 9.76歳、ATとしての平均勤務13.3 ± 19.99年。

ケガをした選手が、リハビリをしていく中でmultidisciplinary teamへのアクセスがあることは…という質問に対し、27.5%が『重要だと思う』、44.9%が『非常に重要だと思う』と回答(合計72.4%)。Multidisciplinary teamを構成すべきメンバーは?という質問のTop 10回答は
1. Athletic Trainer (99.4%); 2. Injured Athlete (97.2%); 3. Physician (94.6%); 4. Athletic Coach (84.7%); 5. S&C Coach (78.8%); 6. Parents/Family (74.9%); 7. Surgeon (65.8%); 8. (Sport) Nutritionist (62.4%); 9. Sport/Exercise Psychology Consultant (58.8%); 10. Teammate (52.5%)
…という風になっています。

Primary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. Athletic Trainer (98.80%); 2. Injured Athlete (91.70%); 3. Physician (81.50%); 4. Athletic Coach (60.70%); 5. Surgeon (50.00%)
Secondary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. S&C Coach (49.50%); 2. Athletic Coaches (46.70%); 3. (Sport) Nutritionist (46.00%); 4. Sport/Exercise Psychology Consultant (43.20%); 5. Teammates (42.90%)…となっています。リハビリにおいて最も重要な、最も患者と密にコミュニケーションを取っているべきPrimary point personは?という質問では77.8%がAthletic Trainer、15.4%がPhysicianと答えたそう。

実際の経験はというと、64.9%のATがmultidisciplinary team approachを採用したことがあると回答、割合でいうと、毎回、毎患者ではなく、時間にすると全体の業務の66.7%ほど。総じて多くのATはmultidisciplinary team approachをポジティブなもの、価値があるものだととらえており、コミュニケーションを密にして全員が"on the same page"でいることが大事であると感じているようです。コミュニケーションのツールとしてはemail (n = 187)、電話(n = 157)、顔を合わせてのミーティング(n = 149)、携帯のメール(n = 121)などが一般的。回答したATの約半数(55.3%)が今のリハビリアプローチが最適であり、満足していると答えた一方で、 44.7%が「改善の余地あり」と感じており、具体的には他のプロらと仕事できるアクセス(Sport psychologistやSport Nutritionistなどが特に『不足』気味)や、決まったreferralの形態、共通したelectronic record、そして他のプロとのコミュニケーションの頻度・質を高めることなどが課題として挙げられたそうです。

さて、このアンケートの結果のほとんどは著者の予想というか、propose通りでしたけれども、指摘すべきは「Athletic Coachesが(著者らの提案したSecondary rehab teamではなく)Primary teamのメンバーとして挙げられていた」というところでしょうか。コーチは選手の大きな支えになることもあれば妨げになることもあるので、これは解釈が難しいところです。著者は「コーチはあまりその介入が直接的だとやはり問題を増やす可能性は否定できない」とし、アンケート結果を無視する形で「コーチはsecondary rehab teamのメンバーに留めるべきだ」と述べています。ふーむ…。私はコーチによってはPrimaryであるべきだと思うけど、これは人柄なども大きな要因だし、一概には言えないんじゃないかなーと思ったり。

あと、ここでは書かれていないんですけど、"Physiotherapist"の需要がPrimary teamでは12位(25.00%)、Secondary teamでは21位(14.30%)とかなり低かったこと。リハビリの専門家なのに?と少し疑問です。もしかしたらこれが要因かな、と思い当たるのは、このアンケートはアメリカで行われたものなのに(アンケートの回答者99.2%がアメリカ在住)、Physiotherapistという欧州でよく使われる呼称が使われていたこと。これは他のいくつかの名前、例えばSports therapist、Sport/Exercise Psychology Consultantという名前にも同じことが言えます。存在しない呼称、混乱させるような呼称は回答者が選ばなかった理由になりえると思います。そもそもこのPrimary vs Secondary Rehab Teamというコンセプトはこの著者らが打ち立てたものであり、アンケートでもその定義がきちんと共有されているようにも感じられなかった。このアンケートそのもののvalidity、そして回答ATのランダムさが少しこの研究の問題点かな。興味深くはあるんだけど、あんまりわくわくは読めませんでした。

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#6 Arvinen-Barrow & Clement, 2017
同じ研究者らにより、同じアンケートを同じ形式でSport Psychology Consultant(SPC)対象で行ったのがこの研究。ちょっと疑問なのがSPCだけでなく、Sport psychology studentにもアンケートを配布したというとことかな…そういえば前回のアンケートもあくまで対象は「NATA会員」だったから学生も含まれていたということ?学生メンバーってかなりの割合を占めていたはず…となると、それってどうなのよー。前の論文で「経験が浅い子はIPPに向かない」という報告もあったし、若い子の意見を入れてしまうと反IPPに結果が偏ることもあるのでは?

アンケートを受け取った1245人のうち、5.0%にあたる62人から回答(ひくっ!途中までしか回答しなかったresponseは分析に含まなかったそう)。男女比は56.5%と43.5%で、平均年齢は38.2 ± 11.1歳、臨床経験は10.4 ± 9.98年。71.0%はアメリカ在住、25.8%はヨーロッパ在住(これも多いなぁ、回答者のバラツキは前回の研究と変わらないか、質は落ちている印象)。

ケガをした選手が、リハビリをしていく中でmultidisciplinary teamへのアクセスがあることは…という質問に対し、平均回答は『非常に重要だと思う』。Multidisciplinary teamを構成すべきメンバーは?という質問のTop 10回答は
1. Sport/Exercise Psychology Consultant (91.8%); 2. Athletic Coaches (88.5%); 3. S&C Coach (80.3%); 4. The Injured Athlete & Athletic Trainer (同率・78.7%); 6. Physician (72.1%); 7. (Sport) Nutritionist (67.2%); 8. Parents/Family (62.3%); 9. Physical Therapist (59.0%); 10. Teammate (54.1%)
…という風になっています。それぞれ自分の職業が一位になっているのはごく自然として、こちらではコーチ、S&Cコーチの順位が高いのが面白いなーと…ここをon the same pageにしておくことが選手の精神状態に多大な影響を与えるからかなーと勝手に考察。逆にAT、Physician、PTなどの順位は低めです。ちなみにここではPhysiotherapistからPhysical Therapistに呼称を直してますね。Sport Therapistというよくわからない職種はそのままだけど。

Primary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. The Injured Athlete (91.50%); 2. Sport/Exercise Psychology Consultant (86.45%); 3. Athletic Trainer (72.9%); 4. Athletic Coach (64.4%); 5. S&C Coach (49.2%) …これはATのそれとほぼ一緒ですね。一番違うのはSPCが2位にランク入りしていること。
Secondary rehab teamに入っているべきTop 5は
1. (Sport) Nutritionist & Teammates (同率・49.1%); 3. S&C Coach (47.40%); 4. Massage Therapist (42.10%); 5. Parents/Family (40.40%)…となっています。これもほとんど一緒…Massage Therapistが入っているのはびっくり&意外。患者はマッサージがあると満足しやすい、精神的に落ち着いたりリラックスしたりがあるから?やはり精神的要素がちょっと強めなような。リハビリにおいて最も重要な、最も患者と密にコミュニケーションを取っているべきPrimary point personは?という質問では29.0%が「AT」、次いで12.9%が「患者自身」、8.1%が「SPC」、6.5%が「PT」「Physician」と答えたそう。ここは全然違いますね!ATとして他業種者さんにそれでもATという職業を一番高い割合で回答してもらっているのは嬉しく思うけど、全体としてはかなりばらつきあり。患者自身がPrimary point personというのは私からしたら怖い回答だけどな…Patient-centered careと患者自身に舵を取らせる医療とは違うと思うんだけど…。

実際の経験はというと、64.5%のSPCがmultidisciplinary team approachを採用したことがあると回答。これはATの64.9%とほぼ一緒ですね。実践したことのあるSPCのうち、50.0%が「改善の余地あり」と感じており、具体的に改善すべき点は 1) もっと患者を真ん中に置くこと; 2) procedureやmeetingをもう少し形式立てて行うこと; 3) お互いの仕事について、チーム内での教育の機会があること; 4) physicalとpsychosocialという患者のケア要素をもっと混ぜ合わせること…などが挙げられたそうです。これは全然違って面白い!

さて、これとひとつ前の研究で明らかになったのは、ATはSPCをSecondary rehab teamの一員であるべき、と思っている一方で、SPCはSPCをPrimary rehab teamのメンバーであるべき、選手や他業種のプロともっと密にコミュニケーションを取るべきである、と考えているということ。このギャップは興味深いですね。文章では「ATは生理的な回復に重きを置くのでphysicianやsurgeonなど、他医療従事者をPrimaryに置く傾向があり、SPCはあくまで『たまに来る人』、indirectなメンバーという認識なのでは」なんてありましたけれど、個人的な考察だと、「ATたちからしたら、SPCは本来Primaryであるべきだと感じてはいるものの、何しろavailabilityに限りがあり、現実的にそういった人材を身近に置いておけない環境があるため、それらを考慮した上でのSecondaryなのではないか」というところもあるんじゃないかと思いますよ。SPCさんたちは理想としては、そりゃーチームの身近にずっといてほしい。Primaryになってくれればこんな素晴らしいことはない。でもうちみたいな小さ目のNCAA Division-Iでは今のところそんな可能性はしばらくないからなぁ。

さて、同じアンケートを別職種で使い結果を比べる、ということのできる面白い論文群でした。次回に続きます。

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  by supersy | 2017-03-12 12:00 | Athletic Training | Comments(0)

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