2017年 03月 04日 ( 1 )

 

チーム医療の実践のために知っておくべきこと、その1。

さて、今回からはInterprofessional Practice/Educationというテーマで10文献まとめます。これも今、AT教育では『主流』『王道』となってきているキーワードですね。
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#1 Molyneux, 2001
こちらはUKの文献、16年も前のQualitative研究です。古いですけど、丁寧にまとめられています。 「ここまで(80年代、90年代)に出版されてきたInterprofessional Practice関係の文献は『実現は大変だ』『こんな風にゴタゴタした』『こうすれば上手くいくんじゃないか?』という内容ばかりだったが、筆者はとても素晴らしい経験ができたので、それを共有したいと思います」という流れで、とある脳卒中患者に対してInterprofessional Teamでリハビリをしたらこんなにうまくいきました、その秘訣はどうやらこういうところだったんじゃないでしょうか、ってことをまとめています。

今回の「サンプル」はリハビリチームに参加したOT2名、PT2名、Speech Language TherapistsにSocial Workerがそれぞれ1名の合計6名。彼らに対してまずは45分~1時間ほどの個別のsemi-structured interviewを、そしてmember-checkingを行ったうえで、focus groupをして出てきたアイデアについてさらに語ってもらう…という形式を取ったようです。Focus group→in depth interviewのほうが「フツー」の流れなんじゃないかなと思ったけど、まぁそこは目をつぶっちゃっていいんでしょうか。…で、出てきた3つのthemesというのが…

1. Personal qualities and commitment of staff
メンバー全員が望んでこのチームに入ったというmotivation & commitmentがあったこと、そしてお互いが「臨機応変でなければいけない、柔軟でいよう」という意志があったこと。それから非常に興味深いことにこのチームに医師がおらず、dominateしようとする存在がなかったことから、安全感が生まれた、というのもありました。妬みの感情が無く(メンバーは全員女性だったそうなんですが…「意外」と言ってしまうとイケナイかな)、上下関係が生まれずにお互いがお互いの能力に自信を持てたこと、そしてだからこそお互いの仕事の境界線を動かしてもいいという冒険心も生まれたそうです。医師がいなかったからうまくいったというのは…意外なようで全く意外じゃない、どちらかというとすごくわかりますね(笑)。医師がいると、何となくみんな医師の機嫌を損ねてはいけないと顔色を窺っちゃうんですよね。

2. Communication within the team
少数精鋭のチームで、同じオフィスに全員が勤務しており、頻繁にコミュニケーションの場を設けたこと…詳しく言うと、一週間に一回のcase conferenceをおこない、それに対してメンバー全員が出席するよう最大限の努力をしたことも大事だったようです。全員が発言する機会があり、無駄な脱線は極力避けた、というのも頷けます(私は実りの無いダベリだけのmeetingが大嫌いなので)。患者のcentral noteも設け、そこにそれぞれがやったことを記録していったのも良かった、と。

3. Development of creative working methods
「どうしたらうまくいくのかわからなかった」ことこそが成功のカギだった、というのは面白いstatementですね。ガイドラインがなかったからこそ、全員が常にどうしたらいいか考えながら自由にやることができたそうです。最初こそお互いのtraditional roleを守ろうと動いていたそうなのですが、あれ、もうちょっとこんな感じでもいいのかもね、あら、じゃあ私もこれやりましょうか?とオープンに考え、とにかく患者を真ん中に置いて動いてみたことがよかったのでは、というコメントが多く出ました。

まぁまとめると、あれですね、スタッフになる人物は1) motivated, 2) committed, 3) experienced and 4) willing to be flexibleな人がいい…というのは言われれば当たり前な気もしますね。それぞれが、自分の専門性は何かわかった上で、それを壊す勇気がある、というのかな。わかってないと壊せないし、自我が確立されていなければ壊すことは怖いし。こういう仕事のスタイルはギョーカイの新人には向かなくて、きちんと経験摘んできている同士だからできることなのかな、と思います。ひとつの共通するベースで働く、チームでミーティングを頻繁に開く、どうコミュニケーションを取るかについて共通理解を設けておく…ここらへんも特に驚くようなことではないのですが、「医師がいなかったことで『平等感』が生まれた」というのはいやはやなんとも。これが成功の大きな要因のひとつだったというなら、医師アリでも成功するためにはどんなことを心がければいいのか興味が沸きますね。
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#2 Sumsion & Lencucha 2009
この論文はタイトル通り、Inpatient unitsにてInterprofessional teamの一員として働く12人のOTへのインタビューを通じて、Patient-Centered Practiceをする上でのbarriers (障壁)とfacilitatorsとは何か?それを実践している身として、どんなことを感じているのか?などについてまとめた研究です。こちらもQualitative, カナダの研究チームによる報告ですね。Rich description, member checking, audit trailをtrustworthinessの証明として使用。で、出てきたThemeをConcept Mapにしたものがこれ。
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●Facilitators
- Team cohesion, autonomy and consultation
責任とアイデアを共有すること、そしてこの研究ではinterprofessional teamのリーダーに医師がいたらしいのですが、その医師がその他のメンバーの専門性と知識を信頼し、彼らのclinical judgementを受け入れるとチームの活動が円滑に進みやすかった述べられています。大事なのは意味のある目標(meaningful goals)に向かって進むことなので、そのためにチーム内でのconsultingを頻繁に行い、お互いの抱える問題を声にして話し合い、collective planningを行うことは欠かせません。

- System enablers
この病院には地域と組織の両方のレベルでpatient-centered careをプッシュする風潮があり、community resourceがあったというのも特筆すべきことかなと。"client planning committee"という委員があり、患者こそがdecision makersであるべきだ、という理念を徹底させていたりとか (つまり成功図が見え、比較的ステップが明確な状態で仕事に臨めるんじゃないかなと)、あとは例えば患者さんをもっとよく知るために、一週間に一度一緒にお茶でもしに喫茶店にいったりすることも「仕事」と好意的にとらえてくれるような環境があると、確かにこういったコンセプトは実現しやすいですよね。

- Family collaboration and support
患者の家族にも目標を理解し、セラピストが何をやっているのか理解してもらうことは非常に大事。家族がいると患者の態度も変わったりもしますしね。となれば、家族も巻き込んだ透明性のあるコミュニケーションは当然欠かせません。

●Challenges
- Differing perspectives and paradigms
患者がdecision makerである以上、患者がしたい、やりたいと思うこととセラピストが「本当はこれができるはずなのに」と感じることにギャップがある場合はなかなか難しいそう。あとは、セラピスト間にも良くも悪くも職業別の「傾向」があり、例えば本文によればnurseとpsychiatristは(古い医療モデルである)medical modelに頼り、比較的自分たちが主導権を握ったままの医療を実践してしまうことが多い(今回のcontextとは反する)ので、それらの医療従事者が「現場仕切り役」だとpatient-centered careが実践しにくく感じる、という感想もあったそう。Assessmentの完了を「目標」においてしまっている医療従事者との仕事も(もちろんそれは患者の目標ではないので)非常にしづらかったのだそう。

- Competitive framework and boundaries
チームのメンバーが自分の領域を守るのにやっきになったり、物理的距離があって直接会う機会を設けるのが難しいというのも成功への障壁のひとつ。

- System barriers
「患者とコーヒーを飲みに行く余裕」はあっても、やはりそれなりの期間内に目標を達成しなければいけないというプレッシャー、そして、他のチームメンバーも忙しいのでvisitをどうスケジュールするかなどの時間的苦労はやはり多いようです。患者さんに経済的制限があり、思うように治療に通えない、そしてそれが理由でニーズを満たせない、というのも選択肢が限られてきてしまいますし、それから、このサービスを受けたい患者のwaitlistが長い(患者が希望してからこういった治療が実現するまで一年かかるそうです)ことも大きな障壁になったそう。どうやら慢性スタッフ不足もあるようですね。

- Family goals
家族の向いている方向、見ているものがチームや患者のそれと異なることも十分あり得ますし、文化的な違い(過保護だったり、家族がそうであるように、チームにも24時間体制のサポートを求めたり)が原因で理想的な治療が提供できないこともあったそう。

チームもシステムも家族も、facilitatorにもなる可能性もchallengeになる可能性もあるというのは面白いですよね。「新しいアプローチがしたいです、これ、古いシステムにでもぎゅぎゅっと詰めれば入るでしょ、ではなくて、新しいアプローチを試みる際には構造そのものを変える必要がある」というのにはうんうんと頷いてしまいました。medical modelからpatient-centered careへ、ってのがそもそもかなりのparadigm shiftだもんなぁ。職員の仕事の評価の仕方もがらりと変えなければいけないから、組織の人間全員がon boardじゃないと実現はかなり難しいのではないかと思いました。まぁ、今時medical modelで仕事してたらすぐクビになりそうなもんですけど…。それでもこの論文2009年発表ですもんね、そんなに前の話じゃないんだよなー。
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#3 Breitbach et al., 2015
次はNATA Executive Committee for Educationも中心になって書かれた、非常にAT教育の未来を語るうえで大事な論文です。アメリカAT界では2012年に正式に"Interprofessional Education (IPE)はProfessional/Post-ProfessionalレベルのAT教育で教えられるべき必修項目に入れましょう"と決まったわけですが、IPEの定義とはなんなのか、どう教え・実践されるべきものなんおか、これからの医療はどう変わっていくのか、などに共通理解を広め、深める目的でこのnarrative reviewがまとめられています。
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Uniprofessional practice/educationはともかく、Interprofessional practice (IPP)/education (IPE)とMultiprofessional practice/educationは異なるものなんですね。定義を並べて書いておきます。
Multiprofessional Education: members or students of 2 or more professions associated with health or social care, learning alongside with one another; parallel learning, rather than interactive learning
Interprofessional Education: an educational process whereby professions learn about, from, and with each other to improve collaboration and the quality of care
Multiprofessional Practice: Appropriate experts from different professions handle different aspects of a patient's care independently/ The patient's problems are subdivited and treated seperately, with each provider responsible fo rhis or her own area
Interprofessional Practice: health care provided in a coordinated manner by health professionals who share mutual goals, resources, and responsibility for patient care
"multiprofessional"は数さえあれば成り立つ、passiveなものでもあり得るのに対して、"interprofessional"は互いが互いから学びあい、協力し合う積極的な姿勢が無ければ成り立たないのが印象的です。IPPは医療ミス予防、patient advocacy(患者支援)の改善、医療費負担の軽減を実現させながら患者のアウトカムを最大限に引き出すには無くてはならないアプローチになってきているほか、医療従事者間の仕事に対する満足度、job retentionも向上するとも言われています。加えて、高齢化と慢性疾患の蔓延がますます増加していく社会で重要になる「予防医学」を実現するために、我々がもっと上達しなければいけない分野であるとも言えます。そして、IPPを実現していくためにはIPEを早い段階で取り入れ、学生のうちから他の医療従事者をcollaborative workをしていくのが当たり前であるという文化を植え付けることが大事になるわけです。逆に言うと、これからの若い学生は、こういった教育やトレーニングをしっかり受けている方が"employable"という風に見られることも意識して損はないかもしれませんね。

IPEに参加した学生は1) 他の医療従事者のscope of practice、2) 他の医療従事者の価値、3) patient-centered careのノウハウ、そして4) interprofessional teamで働くチームワークスキルがつくと言われています。お互いの仕事に対するネガティブなstereotypeを減らし、他の医療従事者とのコミュニケーションの自信が培われる、卒業後も自主的に学び続けるwillingnessが向上する、などの利点も。IPEを始めるタイミングに関しては文献によっても意見が分かれており、「学生にプロとしての自我がまずは芽生えるまで控えるべき」「いやいや早いうちからそれでもやるべきだって」の両方の主張があるそうな。共通して言えるのは、IPEを始めた段階では学びの環境はnon-threateningでどの専門の学生が何人ずつ…など、細かいバランス、細部にまで気を使った教育を提供することが大事ということ。他の医療従事者との「絡み」を楽しんでもらうことが第一歩。Didacticとclinicalの2つのphaseに分けてIPEをおこなうことが多いようです。IPEは彼らの日常業務に近ければ近いほどいい…ということなので、例えばケーススタディーに基づいてそれぞれの専門職が何をするか話し合う場合にも、学生が普段実習に出ている現場を意識し、いかにも「ありえそうな」症例をシナリオに使うことなんかが大事なんでしょうね。学生が医療の道を正式に歩み始める前に、他の医療受持者をshadowする機会を設けるというのも大事なのでは…なんて文章もありました。

IPE実践のためには教員自身も同様に他の学部の教員とお互いの領域を理解し合い、コラボしあう必要があります。ただ、多くの教員、そしてPreceptorもこういう訓練を受けていないという事実はどうしても障壁にもなり得る要素なわけで。単純に様々な業界の学生をていやっと同じ教室に入れればいいというわけではなく模擬症例などを使って何を学んでほしいのか、明確なSLOとそれを推し測るmeasureを持ってして意味ある学習体験をデザインしなければいけないわけですよね。これに関してこれ以上の明確なやり方は記述されていませんでしたが、こういったことを実現するにはadminの理解と協力も必要です。

効果的なIPPを行うには、まずはATが自分自身が何者なのかを他の医療従事者に明確に伝え示すことができる能力("ability to communicate the scope of our knowledge, skills, and abilities and value as part of the health care team with others")が必要不可欠。それから上でも言及したことですが、それぞれの役割の理解がしっかりしていない、誰かが場を支配しようとする、などがあるとconflictの原因になるとも書かれていました。相互理解、相互respectがあり、まめにコミュニケーションを取ることが成功の鍵であり、階級制度を持ち込んでしまうと失敗する、というのは肝に銘じておきたいですね。

個人的には「いつ」IPEを始めるべきなのかについてもう少し情報が欲しいです。もちろん、やりようによっては一年目からでもガンガン学べるのだろうとは思うのですけど、文章にもあったように「プロとしての自我」があることがやはり重要に思えるし、自我が無ければ「安全な学びの場」造りが難しいのではと思ってしまうからです。あとつくづく思うのは、以前どこかにも書いたかもですけど、AT学部がやっぱり適切なcollegeにいることが本当に大事だなと…。うちのように、College of Educationにいるようでは他の医療従事者、医療教育プログラムとのコラボレーションは難しいです。College of Health Scienceに一刻も早く移れるものなら移りたい…でもたぶんあと数年は無理だろうなぁ…。リソースの共有、哲学の共有、common languageの共有、理想的な教育にはやはり欠かせません。

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  by supersy | 2017-03-04 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

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