2013年 12月 28日 ( 1 )

 

Thoracic Outlet Syndrome(胸郭出口症候群)の診断について考察する。その1。

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Thoracic Outlet Syndrome (胸郭出口症候群)ってご存じですか?
一般の方はあまり馴染みのない名前かも知れませんね。

●Thoracic Outlet
そもそも『胸郭出口』とは鎖骨と第一肋骨の間あたりの一般的なスペースのことを指します。
このスペースは文字通り多くの組織達の出口になっていて、例えば、
 - Brachial Plexus (腕神経叢)
 - Subclavian Artery & Vein (鎖骨下動静脈)
等の非常に重要な組織たちが、頚椎からあるいは心臓から腕に向かって伸びる、
文字通り『出口』になっており、それぞれが腕の神経系を支配/血液を供給しています。
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●その出口、が、せまい。
この出口を設計した人にひとつだけ文句を言うならば、
実はこのスペース、かなりギリギリに計算されて出来ているという点。
言い換えると、とにかく狭い!このスペースに何かが起きて、空間の一部をoccupyするようなことがあれば、前述した神経や動静脈はあっという間に圧迫されてしまい、様々な問題を引き起こすことになります。
この、「空間が何らかの理由で狭まり、neurovascular bundleに圧迫が起こってしまっている状態」を総称してThoracic Outlet Syndrome(TOS)と呼びます。
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この圧迫が起こり得る部位は大きく分けて三箇所あり、
 - Between anterior and middle scalene muscles (一番上、首周り、筋肉の間)
 - Though the costoclavicular space (真ん中、鎖骨の下)
 - Under the pectoralis minor muscle (一番下、小胸筋の下)
これらの場所では特にトンネルが狭くなっています。ここに更にストレスが加わると…具体的には、例えばScalene muscleが筋肥大やspasm、炎症を起こしていたり、瘢痕組織を伴っていたり、それから姿勢が悪かったり、日常生活の中で特定の動作(i.e. 腕を上げる)を多用していたりすると、慢性的にこのトンネルが狭まり、圧迫されて様々な神経系もしくは血管の問題を引き起こすことになるわけです。
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●Generalすぎる?
しかし、この総称、専門家の間では
「もはやbroadすぎて効果的ではない、どの組織が影響されているかに基づいて
もっと細かい名前を設けるべきだ」という見解が広まっており、今では:
  1. Neurogenic TOS (NTOS) - brachial plexus
  2. Venous TOS (VTOS) - subclavian vein
  3. Arterial TOS (ATOS) - subclavian artery
の3つに分類すべきという考えが一般的になってきています。
統計的に言うと、TOSの患者の殆ど(>95%)はこの1のNeurogenicに当てはまるそうで、
次に多いのがVenousの3%、そして最も稀なのがArterialの1%未満だそうです。1

●Signs & Symptoms
Sander氏の研究に会ったテーブルによれば、50人のTOS患者の主訴の統計は以下のとおり。NTOS、VTOS、ATOS全て混ざっています。元のテーブルはランダムでしたが、順番は私が多い順に並び替えてみました。
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種類別に特徴的なもの(highlighted in red)を見ていくと…
 1. NTOS: 手、腕、肩、首の痛み、感覚以上と、weakness。頭痛を伴う場合があるのと、
  あと面白いのは、Raynaud's phenomenonが起こる場合もあるんですって。
  これは知らなかった。でも言われてみれば、神経系の異常だものね。
  Raynaud'sの映像は、ちなみにこちら。
 2. VTOS: 腕の腫れや変色(チアノーゼ)が典型的な特徴。
  痛みは伴わないことも多いんですって。
  肩や胸部の静脈が膨張し、膨らんで見えることも。
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 3. ATOS: 末端に血流が上手く回らないので、痛み、変色(チアノーゼ)、感覚異常、
  冷えなんかが、(肩や首でなく)末端の指に見られるというのが特徴的。
  同様に、末端の脈拍が微弱だったり、触診できなかったりすることも。

●病歴からも判断可能?
患者さんのHistoryからも判別材料に使える事柄は幾つかあるようです。
やっぱり問診は大事ですよね!
 1. NTOS患者のほとんどがneck traumaのhistoryがある。
  (交通事故や、職業柄の首にかかる慢性的なストレスなど)

 2. VTOSは決戦を併発している場合が多く(effort thrombosis or Paget-Schroetter
  diseaseとも呼ばれる。つまるところ上肢に起こるDVT。これは少しだけ以前に
  言及したことがあります→こちら)なので、患者が血栓の原因となる、
  慢性的なrepetitive overhead activityをしている場合が多い。
  それこそ水泳とか野球とか、ですかね。

 3. ATOSはspontaneous(明確な原因がなく、自発的に始まる)。
  特に特定の病歴はないが、患者の殆どがCervical rib(*鎖肋骨)と呼ばれる不完全な肋骨、
  もしくは第一肋骨の変形等、bony abnormalityを持っている。
  逆に言うと、X-rayで比較的簡単に判別が可能。

*Cervical rib = 第七頚椎から不完全に形成された短い肋骨状の骨。先天的で、人口の約0.2%(500人に一人)に見られる慢性的異常。そのうちの75%が片側のみ(↓下写真)、25%は両側に確認されるという。2
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…そんなわけで、こうして症状やHistoryを見ていくと、三種それぞれが大分異なるconditionなんだってことが明確になってくるでしょ?治療法だってもちろん違うのだから、TOSでも、vascular TOSでもなく、きちんと1) Neurogenic, 2) Venous, 3) Arterialと判別できる能力を持つことはもはやクリニシャンとして必須!
長くなってしまったので、今回はここまで。
次回はprovocative testsについてまとめてみます。
久しぶりに、明日に続く!

1. Sanders RJ, Hammond SL, Rao NM. Diagnosis of thoracic outlet syndrome. J Vasc Surg. 2007;46(3):601-604.
2. Rahman ML, et al. Cervical rib surgery: a study of 20 cases. J Teach Assoc. 2004;17(1):10-12.

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  by supersy | 2013-12-28 22:30 | Athletic Training | Comments(0)

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