沢山の人に支えられて/金縛りを理解する(完結)。

アメリカに来てから早6年半になるのです。そうなのです、考えてみればもうそんなに経つのです。
親元を離れて生活を始めてからつくづく思うのだけれど、
本当に沢山の人に支えられてヒトは生きているもんですね。
私を支えてくれる人が、えーと、ざっと数えて20人くらいはいるわけだから、
私も20人くらいの人を支えて生きていないと、ヨノナカの計算が合わなくなるなぁ。
ありがたいことです。本当に。

こんな風に思ったのは、今学期が今までにも増して本当に苦しくて、
今週なんか本当に体力的精神的に限界を超えたと思うほど疲労がピークに達していて、
すごかったんですよ、火曜日なんか。
前日の夜、課題に追われてほとんど寝られず、朝になったので授業にフラフラ向かおうとして
車に乗り込んだんですけれど、運転席に座って思ったのが、
“…, ok, where the hell am I supposed to go?(あれ、どこに行くんだっけ…)
数秒考えて、
“…oh, ok, I think I'm going to the UF.(あ、大学に行くんだったような気がする)
とは分かったものの、
“…how?(どうやって行くんだっけ?)
とかもう、もう一年以上通っている大学の行き方も分からなくなる始末。
脳みそが働いていないもいいトコロで、運転しながらも雲にフワフワ浮いているような気分で。
もう自分でもコレ以上は無理だ…と思いたくなるほどでした。
可笑しいんですよ、車を駐車場に停めて教室へ歩いて向かう最中でも、
変なものが視界に入るなぁと思ったら自分の腕だったり。視覚的刺激が情報として
アタマに入ってこないんですよね。人間疲れると本当におかしくなりますね。
今思い出すと笑えるんですけど、当時は笑う余裕もありませんでした。

素敵な週末を過ごして、元気がだいぶ回復してきました。仕事や学校のことを一度
アタマから無くして思いっきり楽しい時間を持つことも、バランスを取るには大事ですね!
楽しい週末のことはまた後で書くことにして、とりあえず金縛りの話を終わらせてしまいましょう。

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さて、それでは金縛りとは一体どういう状況なのか、というハナシなんですが、
b0112009_14491125.jpgまずは金縛りの定義から。
金縛り、というのは、驚くことに元々仏教用語なんだそうです。
←不動明王(ふどうみょうおう)が持つ能力のひとつとして、
敵や賊、転じて煩悩を身動きできないようにする修法、
「金縛法」(きんばく・かなしばりほう)というものが
あるらしいのですが、そこから由来されているのだとか。
転じて、主に就寝中、意識がはっきりしていながら
体を動かすことができない状況を指します。

とは言っても、金縛りというのは所謂俗称で、医学的には正式に睡眠麻痺というのだそう。
英語だとそのまま、Sleep Paralysis。Sleep Disorder(睡眠障害)の一種に分類されます。
ただ、古くから日本では心理現象の一種と信じられ、地縛霊が取り付いて起こるのだ、
などと説明されてきました。金縛りを心霊と結びつける考え方は世界各国でも同様で、
中国では鬼压身あるいは鬼压床(直訳で“幽霊に抑えつけられた身体・寝床”)、
アイスランドではマラ(雌馬の姿をした悪魔で、人間の身体の上に乗り窒息させようとする)、
ベトナムではマ・デ(幽霊が身体の中に入り込み、麻痺を起こす状態)、
トルコではカラバサン(睡眠中に人々を襲う、暗闇の抑圧者という生き物)、
ニューギニアではスク・ニンミヨ(神聖な樹木のことで、夜に人間のエキスを吸って
生きているが、たまに人間がその最中に目を覚ましてしまい、動けなくなる)、
メキシコではセメスビオ・エルムエトロ(死者の魂が乗り移った状態のこと)、
などと様々な名前がついています。

霊感が全く無い私には、これらが本当かどうかは分かりませんが、
しかしこの金縛り、生理学的・医学的に説明ができるのです。
以下、科学的な観点から、金縛りについてちょっと解説していきたいと思います。

まず、金縛りが起こるのはレム睡眠の最中。前回も書いたように、比較的浅い眠りの状態です。
カラダは眠っていますが、脳は活発に活動し、夢を見ているのもこの時です。
肉体的精神的疲労で脳が興奮をしている場合、通常よりも覚醒状態に近くなり、
カラダが休止状態にあるままで、寝ている本人の意識が戻ってしまうのです。
このとき、脳がカラダに“動け”と命令しても、筋肉にはそれが伝達されない状態にあります。
睡眠サイクルの最後に『ノンレム睡眠→レム睡眠→覚醒』という通常通りの手順を踏んで
睡眠から脱すれば、脳とカラダが同時に覚醒し、筋肉にも自然と力が入るようになり、
思ったとおりに体を動かすことができるわけです。しかし不規則な生活や過度の肉体疲労、
ストレスがたまった状態が続くと、脳の目覚めとカラダの目覚めが上手く噛み合わず、
不整合を起こしてしまうことがあります。これが金縛りなのです。
心霊現象や呪い、たたりのしわざではなく、原因は自分自身にあるのです。
b0112009_1453151.jpg
では、金縛り中に幽霊を見た・息苦しくなり圧迫感を感じた、という報告が後を後を絶たないのは?
実はこれも、科学的に説明が出来ます。
金縛りの最中、本人は目を開けているつもりでも実際は開いていない場合が多く、
幻覚(というか、夢、に限りなく近いのだと思います)を見るケースは珍しくありません。
意識があるのにカラダは動かない、というのはかなり異常な状態ですから、
恐怖でパニックになってしまったり、金縛り=心霊現象などと本人が連想してしまったりすると、
僅かに思い浮かんだことが増幅され、それが幻覚となって現れてしまうのです。
息苦しくなるというのも、前回説明したように、レム睡眠中特有の症状として、“自律神経系の
活動が不安定となり、血圧・心拍・呼吸が上がったり不規則になる”というものがありますから、
普段は気づくことの無かったこういった呼吸の乱れを初めて自覚しているだけ、とも言えます。
カラダが浮き上がったように感じ、所謂“幽体離脱”という経験をするヒトもいるそうですが、
これは幻覚と生理的現象のコンビネーションで起きます。
三半規管からの情報が脳に伝達されず、まるで重力を受けていないような感覚に陥ると、
“浮いている”と知覚し、自分で自分を空中から見ている幻覚を脳が作り上げてしまうのです。
ちなみに私はヒトに腹部にずっしりと座られているような圧迫感を感じました。本当にリアルな感覚なので、内部的刺激による感覚とはちょっと信じがたく思ってしまうヒトも多いだろうなと思います。
とはいえ、私の場合、金縛りに人生初めて遭ったわりには意外とパニックにはならず、
脳の錯覚のようなものに近いんだから、精神的に打破できるはず、
えーと、とりあえず落ち着こう、と自分にまず言い聞かせました。
私もどうしても、金縛り=幽霊がどどーんと登場、というイメージがあったのですが、
恐る恐る目を開けると何も怖いものは見えなかったので(恐らくですが本当に目を開けていたと思います…自分では)、とりあえず安心しました。でも、ビビリな私はやっぱりちょっと怖かったので、とりあえず目を閉じて、うーんとカラダを動かそうとしてみる。動かない。うううーん、やっぱり動かない。意識して深く呼吸をしてみて、圧迫感を跳ね返すようにお腹にチカラを入れてみる。
やっぱりどーにもこーにも動かないので、逆に全身のチカラを抜いてみる。そこからふっとチカラを入れる。こんなことを数回繰り返していたら、突然命令通りぎゅっと筋肉が収縮し、動けるようになりました。うわー、これが噂の金縛りかー、意外に手ごわかったぜー、なんて思っていたら、のんきにまた眠りに落ちたわけなんですが(笑)。

金縛りの解き方も色々と調べてみたのですが、やっぱりとにかく慌てない、というのが第一だそうです。慣れないヒトにとっては本当に怖いけれど、まずは落ち着く。感情をコントロールしないと、見なくていい怖いものまで見えちゃいますからね。思い切ってリラックスしてみましょう。
焦る必要はないので、解けるのを気楽に待ってみる、くらいの気分でいいのかも知れません。
落ち着いたら、声が出せるなら言葉を発してみる、というのもありましたが、はて、声を出すにも筋肉を使うからなぁ。触覚や聴覚による刺激をきっかけに解けるケースも多いらしいので、ヒトに声をかけられたり、風が頬に当たったり、シーツがカラダに触れたりといった事で感覚が戻ることもあるそう。また、“レム睡眠中で唯一動かせるのが目の筋肉なので、とにかく目を動かしてみる”というものもありました。幻覚が見えたら、意識的にしっかりと目を閉じて、ゆっくりと開けてみる、とか。これはちょっとアリかもしれません。もし次に金縛りに遭ったら…って、遭いたくはないですが、試してみたいと思います。

何より、生活リズムを正して、ストレスを感じずに生活するのが一番の予防法のようです。
徹夜や不規則な生活など、無理をするのは若者特有の傾向でもありますから、
統計的には年齢を重ねるごとに金縛りの経験も減っていくらしいです。

今回私は初めての経験でびっくりしたのですが、
友人たちと話してみると“ああ、俺も何回かあるよ”というヒトが多いのにもびっくりしました。
意外に皆経験してるんですね。そんなに大騒ぎするほどのことでもないのかな。
とりあえず、最近は母直伝のホットミルクで安眠を確保しています。
母に感謝。ぐっすり寝るのが一番です。今夜も、おやすみなさい。
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  by supersy | 2008-11-09 23:59 | Athletic Training | Comments(4)

Commented by daisuke at 2008-11-10 17:17 x
学校の行き方わかんなくなるくらい疲れてる脳ってなんかすごいですね…。
Commented by Jiden at 2008-11-12 12:53 x
お久ぶりで。20人どころか、百人以上の人々支えてきてるやあらへんのかな。特にアスレティックトレーナーとして。
Commented by かや at 2008-11-12 17:39 x
かなりの過労状態だったんだね。
でも車運転中に事故んなくてよかったね。 どっちのライン走るんだっけ?とか,ブレーキどれだっけ?とか,やばい要因はいっぱいあったけど・・・。
まあ,回復してこうやってブログを書けるようになってよかったx2。
Commented by さゆり at 2008-11-17 23:19 x
>daisukeくん
とりあえずなんかすごいよね。

>Jiden
おおJiden!久しぶり。
そうか、そういう風に考えればそうなのかな。そうだといいけどな。

>賀屋先生
普段は疲れてるときは“気をつけて運転しないと!”と気合を入れるようにしてますが、今回はその元気すらなかったです。おーこわい。

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