Shinsplints。

本日2度目の更新です。さて、今日の話題にも少し出てきたShinsplints。
自分の中でタイムリーな話題でもあったので、これについて少し書いてみようと思います。
日本語でも同様にシンスプリントと呼ばれるこの怪我。実はShinsplintsというのは非常に曖昧な、言ってみれば素人用語であります。一応Medial Tibial Stress Syndromeという正式な医学用語もあるのですが、これも知っているとちょっと格好良いというだけで、要は、shinに起こる痛み、というほどの定義しかありません。
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さて、英語でいう“shin”とは何なのか?
というと、日本語では脛(スネ)という言葉が一番近いように思います。
膝から足首までの間、前脛に起こる痛み。
なので、疲労骨折、筋肉の炎症・肉離れ、それからAnterior Compartment Syndtome等、
色々なものが痛みの原因として考えられてしまいます。
つまり、医者にシンスプリントですね、と言われたところでそれは診断でも何でもない、
ただ脛が痛いんですね、と言われているようなもの。単なるa description of symptomsなのであって、本当の原因を探らなければ意味がないことになります。Shinsplints、使い勝手が良いようで、結構厄介なtermなのです。

ではせっかくですから、原因となるものを全て挙げてみてしまいましょう。

Stress Fracture(疲労骨折)
 これはある意味clean cutですが、疲労骨折の診断はなかなかそれでやりにくい。
 というのも、疲労骨折はX-ray(レントゲン)で出ないケースが多いからです。
 いや、正確に言うと、“すぐには”出ないんです。
 ボキっと思い切り折ったような骨折ならもちろんX-rayで一発で分かりますが、
 実は皆さんが思ってるよりX-rayってこう、何ていうか、sensitiveなんですよ。
 例えば手首や指のhair line fracture、みたいにminorな骨折だと、
 部位の腫れがひどかったら上手く出ないこともある。疲労骨折だと更に厄介で、
 痛みが出てすぐには出ず、数週間して撮ってやっと出る、ってことがあるんですね。b0112009_14372247.jpg
←これは一応、X-rayで確認できたケースの
 疲労骨折なんですけども…。
 白い矢印のところ。分かりますか?
 分からないですよね(笑)。
 こういう風に折れてないですもんね(↓)。
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疲労骨折って、X-rayで出たとしてもこんな感じなんです。そう、まずほとんど、露骨に折れてないんです。ボキっとした骨折ではなく、過度なストレスによる骨のdegeneration、と言ったほうが近いのでしょうか。Stress Reaction(疲労性骨障害)と別けて用語を使う人もいますが、私はこれも立派なStress Fractureの一種だと思っています。
ちなみに私コレやったこともあります。痛いです。
こういう骨折の場合で判断の基準になるのは、bone formationの有無。
つまり、新しい骨が形成されていると、その部分がちょっと厚くなって見えるから、
その濃さで判断することになるんです。でも、だからこそ、出るまでに数週間かかる。
ストレスをかけすぎて骨が薄くなる→骨が再形成される、
というプロセスの中の、ここを捕らえないと出ない(↑)。治り始めてからじゃないと出ない。
だから、数週間という時間がかかってしまう。X-rayは診断の基準にはしにくいわけです。
Bone scanのほうが、代謝が激しくなっている部位、所謂“hot spot”を捕らえられるので、
そういう意味では疲労骨折の診断に向いていると言えますが、これもperiostitis(骨膜炎)との区別が難しく、決定打にはなりません。periostitisについては、また後ほど。
b0112009_1501963.jpgLower legの骨はTibia(脛骨)とFibula(腓骨)の2本がありますが、疲労骨折を起こすのはダントツでTibiaのほうが多いです。TibiaはFibulaに比べてがっつり太く、体重の殆どを支えています。だからその分走る・跳ぶ度にストレスが加わるのです。一方Fibulaはnon-weight bearing boneと言われ、体重を支える役目は殆ど果たしていません。言ってしまうと、折っても歩くことができます。“バスケの試合の最中にfibulaを折ったけど、そのまま最後までプレーした”と言って来たコドモがBuchholzにいたのはびっくりしましたけど…。ATCとしてそんなことを許したら訴えられても文句は言えないと思いますが、でもまぁ、理屈ではそんなことも可能です。
ただ、傾向として、
 Flat Foot(偏平足)の人→fibulaに負担がかかりやすい
 High Arch(凹足??)な人→tibiaに負担がかかりやすい
というように、“余計に”ストレスをかけやすくなるパターンは実は足の形から予測できます。
Undergradでこれをならったときは、“なんで?逆じゃなくて?”と思ったのですが、
CKCで考えれば一発ですね。あのときはそこまで想像力がなかった。
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TibiaとFibulaをそれぞれ三等分して考えたとき(↑)に、Arnheimには、Stress Fractureは
“Runnerには下1/3で起こりやすい、バレエダンサーには真ん中1/3で起こりやすい”
と書いてあるのを昔丸暗記しましたが、今思うと何でなんだろう?
Runnerだとimpactがほぼ骨に対して平行に掛かり、単純に構造的に一番薄くなっている下部がやられる、バレエダンサーはtwistが入るから、雑巾を絞る要領と同じで、捻れて負荷がかかるのは真ん中。---というのが私のguessですが、皆さんどう思いますか?
 
Compartment Syndrome
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↑Lower LegのCross sectionの図(右)をよく見て欲しいのですが、筋肉、血管、神経を束ねるように幾つかのfascial sheath(図の黒い点線)があり、Compartmentと呼ばれるグループを作っています。
Anterior…Tibialis anterior, Extensor hallucis longus, Extensor digitorum longus,
    (Peroneus tertius), Deep peroneal nerve, Anterior tibial artery & vein
Lateral…Peroneus longus & brevis, Superficial peroneal nerve
Superficial Posterior…Gastrocnemius, Soleus, (Plantaris), Median cutaneous nerve
Deep Posterior…Popliteus, Flexor hallucis longus, Flexor digitorum longus, Tibialis posterior,
    Tibial nerve, Posterior tibial artery & vein, Peroneal artery & vein
筋肉と神経と血管が乱雑しているように見えるかもしれませんが、機能が近いモノたちが
それぞれ袋のようなもので包まれて、こういう4つの束(↑)になってそれぞれすっぽりヒトの足に埋まっているのです。
Anterior compartmentはDorsiflexors(背屈:爪先を持ち上げる運動)。
LateralはEvertors(外反:小指側を上げ足の裏を外に向ける運動)。
Deep & Superficial PosteriorはPlantor flexors(底屈:爪先を下げる運動)。
…と言う風に大別できます。
さて、これらを包んで区別している“袋のようなもの”が、先ほども書いたFascial sheath。
つまりは薄い薄い膜なのですが、それでも丈夫にできていて、水を通さない造りになっています。
例えばここで、この袋に、徐々に水を入れていったとするとどうなるでしょう。
袋はパンパンになり、compartment内の筋肉・神経・血管を圧迫し始めます。
神経が圧迫されれば、長いこと正座して足が痺れたときのように、
感覚がない・うまく足が動かせないなどといった感覚・運動障害が出てきます。
血管を圧迫してしまえばそこから下には血液の供給は行き渡りませんし、
それを頼りにしていた細胞たちは酸素不足になって、最終的には死んでしまいます。
これがまさに、Compartment Syndromeなのです。
袋内に異常に水分が溜まり、tissueを次々を壊死させてしまう非常に危ない症状です。
Life-threateningではありませんが、十分limb-threateningになることはあり得ます。
b0112009_1773777.jpgそういったPermanent disabilityを防ぐためにも、acute(急性)で起きた場合などは特に、immediate medical attentionを必要とし、病院に担ぎ込んで、もう文字通り袋をばさっと切って=Fascial sheathをreleaseして(左図←Fasciotomy surgery)溜まった液体を無理矢理出さなければいけない、ということもあります。実際以前、脛に大きな傷跡がある選手に、これどうしたの、と聞いてみたらAcute Anterior Compartment Syndromeでこの手術をしたときの跡だとのことでした。彼は脛を蹴られたときの内出血でそうなってしまったそう。ぬおお恐ろしい。

一方で長距離ランナーのような、コンスタントに足に負荷のかかるスポーツをしている人は、
以下のような(↓)コースを辿ってacuteではなくchronic(慢性的)に
この症状をdevelopしやすいです。

  ・運動による過度なストレス
     ↓
  ・筋肉たちが炎症を起こしその水分が溜まる
     ↓
  ・更にリンパも詰まって老廃物が滞る
     ↓
  ・徐々にcompartment内のinternal pressureが少しずつ上がってしまう
     ↓
  ・Compartment Syndrome

Chronicに関してはもう、なるべく早い段階で気が付いて治療するのがキー!
この負のchainを断ち切るのです。
Compartment Syndromeで最も起こりやすいのがAnterior、次にDeep posterior
しかしこのAnterior compartment syndromeのincidenceはダントツで、
更にchronicの場合はneurological symptoms(Anteriorの場合だと例えば
drop footや足の甲のnumbness)が出にくいこともあり、部位・症状から言っても
他のshinsplints(特にStress fracture)等と混同されることが多いそうです。
こうなったらshiny skinとか、そういった情報に頼るしかないんだろうか…。
(足がパンパンに腫れ上がると、皮膚が引っ張られてテカテカに光って見えるのです。
 写真を載せようかとも思いましたが、あまりに怖いので、気になる人は
 “Compartment syndrome”でイメージ検索してみて下さい)
internal pressureを数値で測れるnon-invasiveの機械とか発明されないかなぁ。

ふがふが。ここまで一生懸命書いていたら夜中(朝?)になってしまいました。
仕事がないと思うと好きに時間が使えていいのですが、ちゃんと寝る時間には寝ないと…。
続きはまた明日upします!
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  by supersy | 2008-08-21 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

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