Everyday is a Test.

お久しぶりです。
アメリカに戻ってきてはや20日。
最初の一週間は疲労と時差ぼけでぐったりしていましたが、それから何とか回復し、
8/7と8にGAのオリエンテーションをこなして、その週明け、8/11からいよいよ新たな高校での仕事が始まりました。Pre-season Football。Arenaも含めればこれでFootballの2-a-days(2部練)も通算4年目になります。また暑い夏がやってきたぞ、という感じです。

私が新しく働いている高校はBuchholz (びゅーほーるず) High School。
去年働いたHawthorneは小さな田舎の高校、という感じでしたが、BuchholzはCountyで一番大きな高校で、まるで別世界。Footballとヒトクチに言っても、Varsity、Junior Varsity、Freshmanの3チームが存在します。加えて、今度のAthletic Training Roomはもう以前のようなStorage Roomじゃありません。立派な部屋です。細長いので使い勝手は決して良くないのですが、それでも文句は言いません、前よかずっといいです。私の下には現在Athletic Training Studentが2人就いて働いています。Seniorの女の子が一人と、プログラムに入ったばかりのJuniorの男の子が一人(UFはAT Programが2年間なのです)。今までの仕事に加えて、彼らを教育し沢山経験させ、良いATに育てる、ということもACIとして大事な役割になってきます。
つまり、a whole different world、a whole different deal、なのです。
始まって数日。まだまだ能率の良い仕事というのを模索中です。

さて、前置きが長くなりましたが、何とか月・火・水・木と乗り切って、今日は金曜日。
今日が終われば週末。やっと一息つけるようになります。ここはしっかり頑張っておきたい。
今までは文字通り丸一日働いていましたが、今日はJV&FもVも午前中いっぱいの練習のみ。
1時半くらいには帰れるじゃん!とAT Staff全員密かに喜んでいたのですが、それでも今日からFull Gearでガチガチ当たり始めるので、まぁどんな怪我が飛び出るやら、と少し不安でもありました。

b0112009_3423434.jpgその不安は見事的中。
練習も中盤に差し掛かるころ、コーチが“Trainer!!!!”と叫ぶので
何事かと思ったら、一人の選手の小指が有らぬ方向を向いています。
ぬおおっ、Finger Dislocation(脱臼)。
(←写真はイメージ)

Finger DislocationはUndergrad時代に見たことがありました。
Seniorのある日、自分の担当ではなかったバスケットボールの試合を観戦に行ったとき、
アスリートではない大学の一般学生が私のところに来てこう聞いたことがありました。
“Are you a trainer?”
なので、あ、はい、今は非番ですけど学生トレーナーですよ、どうしました、と聞くと、
“実は今、外で友達とfootballをして遊んでいたんだけど…これ直せる?”と、連れてきた
友人の背中を押して前に出しました。見ると、うおぁっ、見事なまでのFinger Dislocation。
彼らはどうしていいかわからず、トレーナーがいるかもと思ってここまで来たらしいのです。
そして恐らくどこかで私の顔を見たことがあったのでしょう、声をかけてきたというわけです。
当時まだ私はcertifiedでもなかったのですぐにStaff ATCを呼んで、彼女が彼の指をひょいっと直すのを興味津々で見ていました。指の脱臼はまだ脱臼の中じゃカワイイもんですが、初めて目の前で見て、そのエグさに“結構度肝を抜かれるもんだわ”と妙に関心したのを覚えています。

そうなんです、その状況がまさに今目の前に。
そして私は今や学生トレーナーではなくACIの立場。私が直さなくてはいけません。
b0112009_374963.jpg
脱臼は“間接が外れたまま動かなくなってしまった”状態のこと。どの関節にも起こりえます。
(ちなみに亜脱臼は“一回外れたけどすぐ戻った”状態のこと。英語ではSudluxation)
肩、膝、指、顎、肘、股関節…。でもどこに起ころうとも、脱臼を治す方法は基本的に一緒です。
Proximal Jointを固定しDistal Jointを引っ張ってTraction Force(牽引力)をかけてやり、
Joint Spaceを広げてやった上でぱこりと戻すのです。
そうです、理屈は分かっています。
イメージも頭の中にあります。
ただ、実際やったことが一回もないんです!

冷や汗が出そうになったけれど、混乱している時間もありませんしそういう立場でもありません。
どんなことにだって“初めて”はある。これはもうやるしかない。
こんなのは見慣れた風景、といった表情を装って、
よしよし、大丈夫にしてやるからこっちおいで、と顔面蒼白気味な選手を引っ張ってきて、
彼の正面に自分が背を向けて立つようにして視界を遮り
(見えていると選手がパニックになる可能性があります、
誰だって自分の指が明後日の方向を向いているのを見たら気持ちが悪くなるでしょう)、
指を引っ張る。ぐ、全然動かない。もっともっと引っ張る。ぬぬぅ、まだ戻らない。
彼の手も汗をかいていて滑るので、Tシャツでさっと拭き、もう一回。
3度目にぐぐぐっと引っ張ったときに、ぱこり、指が戻りました。

その瞬間選手の顔にぱっと血の気が戻り、“うわっ、すごい、全然痛くない!"と笑顔。
“うひゃーうわーすげー!”とアドレナリン効果もあってかめちゃめちゃハイ(笑)。
周りに居合わせた選手たちも拍手喝采で大喜び。何人かからはハイタッチを求められました(笑)。
はいはいちょっと見せてね、と選手を落ち着かせて、ROMと痛みをチェック。
No pain, Perfect ROM, Brisk capillary refill, No neurological damage, Negative Tap Test。
うむ、完璧!
よし、戻っていいけど、練習終わったら絶対ATRに来なさいよ!と何回か念を押して、
選手はぴゅーーっと練習に戻っていきました。
と、共にぐったりしたのはこっちです。よ、良かった、上手くできた…。
とりあえず一安心です。初めてにしては我ながら大成功。しかし、自分の指の関節を引っ張ったら簡単にspaceが空くのに、脱臼を直すとなると半端じゃない強い力で引っ張らないとだめなんだなぁ…というのがやってみた感想。

まぁともあれ彼は平気だし、良かった良かった。
と、安心してまた仕事を続けていたその15分後。
一人の選手が手を押さえて私のところへ走ってくるので、
“どうしたー?怪我ー?”と聞くと、“指、お、折れてると思う…”という彼。
見ると、うわっ、折れてないけど、折れてないけどさ、明後日の方向、また脱臼ですよ!
“骨折じゃなくて脱臼だね、Alright I got you buddy, don't worry!”と笑顔で言いながら、
本当は少しばかり泣きたくなったのですが、それでもやるべきことをやるのが先!
さっきの反省を踏まえて、しっかり握って引っ張ってみる。むむ、足りないか。
頼むぞ、動いてくれ、これでどうだ、と2度目にもうちょっと強く引くと、ぱこり、おおっ、戻ったー。
“うわっ、すげー。折れてなかったんだね!元通りだー!”と、
共通しているのは戻した後選手がハイになること(笑)。分かったからちょっと落ち着きなさいっ。
また全部確認してみるも、全く問題無し。練習後に私のところに来るようにと同じ指示を出し、
練習に駆け戻っていく彼の姿を見ながらまた大きなため息。ふあー、よかったー。

横で見ていたATSに、“実はさっきのが初めてで、これが2回目なんだよね、やるの”と、
にっこり白状すると“でも完璧だった、すごい!”と目を真ん丸くして返してくれました。
今回本当に大事だと思ったのは、イメージをしっかり自分の中に持つこと。
SpineboardやCPR、こういった脱臼のReduction等、“練習をしたり教わったりは数多くするけれど、実際にやれるチャンスはなかなか無い”というものって、特にこの職業においては多くあると思います。そういったことでも、自分が実際そういう状況に置かれたらどう動くのか?をイメージとして頭の中に常に持っておき、常にあらゆる可能性を考えてそれらに対してreadyでいることってめちゃめちゃ大事です。
Undergrad時代にJasonが “You study for today or study for tomorrow? Everyday is a test.”と言っていた意味が今なら本当によく分かります。
いつ“テスト”されるか分からない、いや、毎日の仕事がまさにテストそのもの。
それが“現場で働く”ということなのです。

いやはや、今日は本当に貴重な体験をしました。
ちなみに練習の後コドモたちをそれぞれもう一回チェックしましたが、
若干の腫れがあるものの痛みは皆無で、状態は良好です。コーチにも仕事ぶりが素晴らしいと褒めてもらって、とりあえず最初の一週間は全力で頑張ったぞ!と言い切れます。
さて、週末も少しやることやって、しっかり休んで来週に備えますか。
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  by supersy | 2008-08-15 02:30 | Athletic Training | Comments(3)

Commented by カツ at 2008-08-16 04:15 x
お疲れ様~。
初めてなのに2連チャンで指の脱臼が来るとは大変だったね。
実際にやったことがなくても頭の中のイメージを実現できるのがプロだよね。
この調子で頑張れ!
Commented by タカシ at 2008-08-17 00:01 x
おつかれさん。
やっぱりイメージを持っておくっていうのは大事なんだね。

"Everyday is a test."

いいコトバですな。
Commented by さゆり at 2008-08-17 14:10 x
>カツさん
いやいや、本当にびっくりしました。The least expected thing can happenというマーフィーの法則の先を行くことを仕事場で常に意識しているのですが、指の脱臼2連続までは予測できませんでしたよ(笑)。でも上手くいってよかったです。これからももっともっと頑張ります!

>タカシさん
イメージは大事ですね!Visualizeしながら体に感覚を覚えさせる、スポーツも同じですよね。きっと、どの分野にもそれに近いものはあるんじゃないでしょうか。未来に降りかかってくるであろう“Test”たちに負けないためにも、もっと様々なしっかりしたイメージを膨らませていきたいですね!

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