KT-2000。

大学院生は一学期3つの授業・9単位を取ることになるわけですが、
解剖以外に私が取っているもうひとつのクラスがOrthopaedic Considerations in Athletic Training。略してOrtho。
この授業もとっても面白くて、毎回何らかのスペシャリストをゲストスピーカーに招いて
レクチャーやhands-onのラボを行なう、というものです。だから、授業をする場所も時には病院のリハビリ施設、会議室、プールの中、教室、Biomechanics labなどと様々。例えばPilatesとかAquatic Rehab、X-rayとMRIの読み方、Prehab、customizedの靴底の作り方など、毎回違ったテーマで授業が行なわれるんです。この構成、ナイス!!!!

で。
ちょっと前の話なんですけれども、KT-2000のレクチャーをしてくれたPTの方がいました。
KT-1000は話にだけ聞いて知っていたものの、Texas Stateにはひとつもなかったし、
TibiaのAnterior translationを測るものでしょ、くらいにしか理解してなかったので、
知らないうちにKT-2000に進化してたのね!とびっくり。
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ご存知の方も多いでしょうが、どどん、これがKT-2000です(↑)。
この機械何に使うかというと、Anterior tibial translation on femurのdegreeをmm(ミリメーター)で測るものなんですが、もっと詳しく言うと、どれくらいのforceでどれくらいのtranslationが起こるのか、をmeasureすることができます。これ、後になって大事になってきます。
あ、anterior tibial translationを測るんだからターゲットにしているpopulationはACL patientなのは、いいですよね。Eval processに使うことも可能ですが、主にACL reconstructionの手術をした患者のリハビリ経過の確認に使われます。

b0112009_9433235.jpgさて、その使い方ですが、
細かく書くとキリがないので、
至って簡略に説明したいと思います。

→まずは患者を寝かせ、膝を20-35°曲げた状態でブロックで固定します。下のブロックはLat. malleoliを、上のブロックは膝の少し上に位置するようにし、hamstringがリラックスするようにしましょう。KT-2000を脛に置き、Joint lineと機械の矢印が一致するように調節します。

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※正しい位置にKT-2000を置かないと、全ての結果をskewすることになるので注意!
ここでPTの彼が、“External roration癖のあるヒトとかちょっと困るんだけど、なるべくそれがminimalになるように足を置いてね。Thighにストラップを巻いて(↓)制限する方法もあるよ。あと、Patella hypermobilityがあるヒトも厄介なんだけど…これはどうしようもないので、なるべく動かさないようにチカラを真っ直ぐかけるしかないね。”と言っていました。
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それからStrapを巻き、膝蓋骨を固定して目盛りを合わせ、
バー(一番最初の写真で銀色の棒のように見えるのがそうです)を掴んで徐々に上方に
引っ張り上げていきます。15lbs, 20lbs, 30lbsでのそれぞれのtranslationの値を記録し、
更にManual maxという、とにかく思いっきり引けるところまで引っ張り上げてどれだけ動くか見る、という数値も入手します。その後、それぞれの数値を比べ、injured sideがuninjuredに比べて3mm以上のexcessive translationがあるとマズイ、という目安になっています。

この一連のテストを、手術前、術後6週間、12週間、6ヶ月、12ヶ月で行い、
願わくば手術前の数値より手術後のほうがはるかに少ないtranslationでありますように、
そして左右対称に限りなく近い数値でありますように、というわけです。
ちなみに手術後6週間の段階ではmanual maxをするには早すぎるので、
partial testというカタチで行なうそうです。まぁ、言われてみればそりゃそうだ。

で、今回初めて実際KT-2000をお互いに使いあってみることになったのですが…。これ、使うの、めっちゃ難しい。練習相当しないと正確な数値が出せなさそう、というのが正直な感想。
実際Athletic Trainig Roomにコレを常備している、という学校の方いますか?
うちの大学病院のSports Medicine Rehabの施設では本当に頻繁に使っていて、クリニックとかでは確かに需要があるというか、使う目的が分かるなと思うのですが、ATRではどうなんだろう。
もちろんあったって良いとは思うんですけど、実際どれくらい用いられてるものなんでしょうね??

b0112009_1021595.jpgちなみにそのPTの彼が言うには、手術でAllograftを使ったかAutograftを使ったかでKT-2000の結果に異なる傾向が出るそうです。

この左のグラフは私が適当にイメージとして描いたものなのであくまでただの参考にしてほしいんですけれど、Autograftを使った患者の膝では、かけるチカラに比例してanterior translationがlinearに増えていくのに対し、Allograftではチカラが少ないうちはtranslationがあまり見られないのに対し、一定以上のチカラがかかると一気にtranslateしてしまう、という風になるのだそう。

手術後のTissue Failureを避けるにはAutograftとAlloのどちらがより好ましいのか?
どこの腱を使うのがベストなのか?
それとも夢の人工靭帯がついにそろそろ完成されるのか?
(↑これは一番可能性が低そうですけども、少なくとも近い将来では)
もう長いことこの分野でこういったことは議論されてきていて、
恐らく私たちの永遠のテーマになっていくんでしょうけども、
それを決めるひとつの要素にもなりかねない面白いデータだと思いました。

差し迫った需要はないかなぁとも思う一方で、とても興味深い機械です、KT-2000。
KT-2000の使い方を詳しく説明してるサイトをみつけました。興味のある方はこちら
KT-2000だけでなく、PCL ACL injuriesにおけるtibial translationを幅広くカバーしています。
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  by supersy | 2008-04-18 23:59 | Athletic Training | Comments(5)

Commented by かける at 2008-04-20 12:46 x
ほーー!!こんなんあるんですね!!知らんかった!!!
自分もACL負傷者の1人なんでやってみたいですねー!!
自分でpositive anterior drawerできます・・・笑
それにしても使ってみたい・・・・
Commented by ケニー at 2008-04-21 12:06 x
KT-2000はうちのドクターがf/uの時もってきますよー。おもろい音しますよね。きゅいーんって。KTで疑問なのは、ant translationがどれくらいあるとsignificantなのかですよね。術後KTの数値ががっつり高かったら、リハビリ良好でもまた再建するのか?って思っちゃいますよね。ant translationが無いにこした事はないですけど、立て続けに膝を手術するのもどうかとおもいますし。
人工靭帯と言えば、昔使ってた人工靭帯(なんの素材か忘れました)は手術後の復帰がめちゃめちゃ早かったらしいですね。でもなんかすぐ切れちゃって結局また手術するはめになってたらしいっすね...
Commented by かや at 2008-04-23 22:07 x
これやりましたよ(正確にはやられました)。(時代的にKT-1000かと)
これで「完全断裂!」の宣告を受けたし,術後に「緩んでないよ!」との結果ももらいました。ACLの。
Commented by さゆり at 2008-04-24 09:13 x
>かけるくん
そう、そんなにメジャーな機械でもないと思うのよね。
まぁ要はLachmanと同じメカニズムを起こさせてるんだけどもさ。
しかしATでACLないヒト多いねぇ、ケニーもだしねぇ(笑)。

>けに
そう、そこが疑問だったというか、これで出た数値はどれだけfunctionalなの?って思っちゃうのよね。一応10mmが絶対値らしくて、これがACL ruptureの決め手になるから、手術後にこの数字が出たら手術は大失敗でしたってことになるよね。graftがゆるくて何にもなってないと。この場合病院側が負担してもう一回、とかなるんだろうか。肩のinstabilityがあるヒトでもRCリハビリして安定性を戻すのと一緒でさ、perturbation trainingして膝の筋肉のactivation patternを普通に戻すことができれば関節そのものの緩さは克服できるとは思うんだよね。もちろんケニーの言うとおり無いに越したことはないけど。
Commented by さゆり at 2008-04-24 09:17 x
長いので続き。

人工の素材はGore-texだね。80年代に“夢の素材”と言われしめて、でも数ヶ月で見事に切れてしまうという、儚い夢で終わったアレね(笑)。もちろん今でも新素材の研究はされているんだろうけど、今のところオススメできる人工靭帯はありません!と医者も断言していました。人工靭帯作るのってペースメーカーとかより簡単そうだと思うんだけど、やっぱり人体って奥が深いのね。

>賀屋先生
おお、そうなんですか!
なんだ、皆ACL切ってるなぁ、私だけ仲間はずれですか(笑)?

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